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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1163404
審判番号 不服2004-19325  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2007-08-30 
事件の表示 平成10年特許願第203328号「ゲルマニウム健康治療具」拒絶査定不服審判事件〔平成12年2月2日出願公開、特開2000-33126号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成10年7月17日の出願であって、平成16年8月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年9月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月18日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成16年10月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。

「インジウムを1x1016から5x1021個/cm3含むP型ゲルマニウムを有し、波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射する当接体と、この当接体を皮膚に接触した状態で固定する止め具と、を備えることを特徴とするゲルマニウム健康治療具。」

(2)補正の目的の適否

上記補正は、平成16年6月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明における「インジウム」の含有量の数値範囲に限定を加えるとともに、「当接体」の態様について「波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射」するとの限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

ア.引用例

原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、特開昭58-1465号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「本発明は、人体の自律神経の調整等をはかるため、人体の皮膚の経穴経絡、痛み等の部位に当接して用いる、ゲルマニウム半導体を含有する健康用皮膚当接片に関する。」(第1ページ左下欄第8行?第11行)
(イ)「本発明者は、特願昭53-41757号において、すでに人体の皮膚に当接して用いるためのゲルマニウム半導体片を提案した」(第2ページ左上欄第13行?第15行)
(ウ)「ゲルマニウム半導体は、単結晶、多結晶の何れでも、また純粋のゲルマニウムに+5または+3の原子価をもつ不純物を付け加えたN型またはP型の何れでもよい。」
(第2ページ右上欄第4行?第7行)
(エ)「かような当接片1は、たとえば、人体の経穴経絡、痛み等の部位に当接した状態で、絆創膏等によつてその当接状態を固定して用いるものである。」(第2ページ右下欄第3行?第5行)

また、上記記載(ウ)において、ゲルマニウムに+3の原子価をもつ不純物を付け加えたものが、P型のゲルマニウム半導体を意味していることは明らかである。
上記記載事項(ア)?(エ)を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ゲルマニウムに+3の原子価をもつ不純物を付け加えたP型のゲルマニウム半導体を含有し、人体の自律神経の調整等をはかるため、人体の経穴経絡、痛み等の部位に当接した状態で、絆創膏等によつてその当接状態を固定して用いる健康用皮膚当接片。」

イ.対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「P型のゲルマニウム半導体」が前者の「P型ゲルマニウム」に相当する。
また、前者の「インジウム」が、「P型ゲルマニウム」において+3の原子価をもつ不純物に相当することは明らかであるから、両者は「+3の原子価をもつ不純物を含む」点で共通している。
さらに、後者の「人体の自律神経の調整等をはかる」ことは、前者の「治療」に含まれるから、後者において、「健康用皮膚当接片」が、「P型のゲルマニウム半導体を含有」し「人体の自律神経の調整等をはかるため」に「人体の経穴経絡、痛み等の部位に当接した状態で、絆創膏等によつてその当接状態を固定して用いる」ものであることは、前者において、「ゲルマニウム健康治療具」が、「P型ゲルマニウムを有」「する当接体と、この当接体を皮膚に接触した状態で固定する止め具と、を備え」たものであることと変わりはない。

したがって、両者は、本願補正発明の記載ぶりに従って表現すると、次の点で一致する。

「+3の原子価をもつ不純物を含むP型ゲルマニウムを有する当接体と、この当接体を皮膚に接触した状態で固定する止め具、とを備えるゲルマニウム健康治療具。」

そして、両者は次の点で相違する。

P型ゲルマニウムを有する当接体に関して、本願補正発明のものは、+3の原子価をもつ不純物としてインジウムを1x1016から5x1021個/cm3含み、波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射するものであるのに対し、引用発明のものは、+3の原子価をもつ不純物としてどの原子をどの程度の量含有させているのか、また、波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射するのか否かが明らかではない点。

ウ.当審の判断

上記相違点について検討する。
ゲルマニウムを材料としてP型の半導体を形成する際に、+3の原子価をもつ不純物としてインジウムを用いることは常用される技術にすぎないから、引用発明においても、上記不純物としてインジウムを選択することは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、また、本願補正発明においてインジウムの含有量を1x1016から5x1021個/cm3の範囲に数値限定したことに関し、本願明細書の記載をみても、その技術的意味の裏付けを欠き、その数値範囲に臨界的意義を認めることもできないから、インジウムの含有量を上記範囲とした点は、ゲルマニウム健康治療具としての効果等を考慮し、当業者がその最適化又は好適化を図る過程で適宜なし得る設計的事項の域を出ないものというべきである。
また、本願補正発明における「波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射する」という事項は、請求項に記載された機能・特性によって「当接体」という物を特定するものであって、その「波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射する」との機能・特性は、P型ゲルマニウムがインジウムを1x1016から5x1021個/cm3含むことによって奏されるものと理解される。
一方、本願明細書には、インジウムを1x1016から5x1021個/cm3含むP型ゲルマニウムを有する当接体が波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射することに関し、その推測される放射メカニズムが概説されているに止まり、上記特定波長の遠赤外線の放射が確実に起こり、さらに医療的効果を奏することを十分に裏付けるに足る説明やデータ等は示されていないから、本願補正発明における「波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射する」という作用効果が格別なものであるとはとうていいうことはできず、ここに進歩性を認めることはできない。

なお、審判請求人は、当審の審尋に対する回答書及び原審の拒絶理由通知に対する意見書において、インジウムを所定量含有するP型ゲルマニウムが遠赤外線を放射するメカニズム等について資料を添付して説明し、その効果を主張しているが、それら回答書等での主張は、いずれも本願請求項に係る「ゲルマニウム健康治療具」によるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づくものではないから、採用することはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「インジウムを1x1015から1x1022個/cm3含むP型ゲルマニウムを有する当接体と、この当接体を皮膚に接触した状態で固定する止め具と、を備えることを特徴とするゲルマニウム健康治療具。 」

4.引用例

原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、上記「2.(3)ア」に記載したとおりである。

5.対比・判断

本願発明は、本願補正発明の特定事項のうち、「インジウム」の含有量に関する数値範囲の限定を緩和するとともに、「当接体」の態様について「波長100ミクロン帯の遠赤外線を放射」するとの限定を省略するものである。
そうすると、本願発明に上記限定を付加する本願補正発明が、上記「2.(3)ウ」で述べたように当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-28 
結審通知日 2007-07-03 
審決日 2007-07-17 
出願番号 特願平10-203328
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61N)
P 1 8・ 575- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏稲村 正義  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 中田 誠二郎
鏡 宣宏
発明の名称 ゲルマニウム健康治療具  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 長谷川 芳樹  

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