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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B23K
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B23K
管理番号 1164346
審判番号 無効2005-80301  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-21 
確定日 2007-08-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3644997号「レーザ加工装置」の特許無効審判事件についてされた平成18年8月15日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10432号平成19年1月31日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3644997号の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第3644997号の請求項1乃至6に係る発明についての出願は、平成7年3月6日に特許出願され、平成17年2月10日に特許の設定登録がなされた。
2 これに対して平成17年10月21日に請求人レーザーテック株式会社より請求項1乃至6に係る発明の特許について無効審判の請求がなされ、被請求人から平成18年1月20日付けで答弁書及び訂正請求書が提出され、平成18年4月24日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、平成18年4月24日に第1回口頭審理が実施された。
3 その後書面審理とされ、平成18年5月24日付けで被請求人より、平成18年6月6日付けで請求人より、それぞれ上申書が提出された。
4 平成18年8月15日に本件請求項1乃至6に係る特許を無効とする旨の審決(以下「一次審決」という。)がされた。
5 平成18年9月22日に当該審決の取消しを求める訴(平成18年(行ケ)第10432号)が知的財産高等裁判所に提起されたところ、平成18年12月20日に、訂正審判(訂正2006-39200号、平成19年2月26日にその取下登録がされた。)が請求され、それを受けて、平成19年1月31日に、知的財産高等裁判所において一次審決を取り消すとの決定がなされた。
6 平成19年2月19日付けで訂正請求がなされた。
7 これに対して、請求人から平成19年3月16日付けで審判事件弁駁書が提出され、被請求人から平成19年5月7日付けで審判事件答弁書(第2回)が提出されたものである。

第2 訂正について
1 訂正の内容
平成19年2月19日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許第3644997号の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。
なお、下線は対比の便宜のために当審で付したものである。
(1)訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に高出力エネルギーの加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズとを同一光軸上に切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、
この対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する顕微鏡手段と、
この顕微鏡手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上の位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して高出力エネルギーの加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段とを具備したことを特徴とするレーザ加工装置」を、
「試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に該欠陥を加工する高出力エネルギーを有する加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと、
前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズと、
前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、
この対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する共焦点レーザ顕微鏡観察手段と、
この共焦点レーザ顕微鏡観察手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段と、
を具備したことを特徴とするレーザ加工装置。」
と訂正する。

(2)訂正事項b
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された、
「前記レーザ加工手段は、前記欠陥に前記加工用レーザ光を照射するレーザ光源と、前記欠陥の位置を確認するする可視照明光を出射する照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上に前記観察用対物レンズに切換えて前記顕微鏡手段により欠陥を検出し、この欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記欠陥に対し前記加工用レーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。」を、
「前記レーザ加工手段は、前記欠陥に前記加工用レーザ光を照射するレーザ光源と、前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光を出射するスリット用照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、前記対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に前記観察用対物レンズに切換えて前記共焦点レーザ顕微鏡観察手段により前記試料上の前記欠陥を検出し、この欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記欠陥に対し前記加工用レーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。」
と訂正する。

(3)訂正事項c
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項d
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項e
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された、
「前記共焦点レーザ顕微鏡は、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を前記観察用対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えたことを特徴とする請求項4記載のレーザ加工装置。」を、
「前記共焦点レーザ顕微鏡観察手段は、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を前記観察用対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。」
と訂正するとともに、これを請求項3とする。

(6)訂正事項f
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載された、
「前記対物レンズ切換え手段は、前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズを前記同一光軸上に切換え可能に回転するレボルバからなり、高倍率から低倍寧までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズと前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。」を、
「前記対物レンズ切換え手段は、前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズを前記共通光軸上に切換え可能に回転するレボルバからなり、高倍率から低倍率までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズと前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。」
と訂正するとともに、これを請求項4とする。

(7)訂正事項g
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】に記載された、
「本発明は、試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に高出力エネルギーの加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズとを同一光軸上に切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、この対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する顕微鏡手段と、この顕微鏡手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上の位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して高出力エネルギーの加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段とにより構成している。」を、
「本発明は、試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に該欠陥を加工する高出力エネルギーを有する加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと、前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズと、前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、この対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する共焦点レーザ顕微鏡観察手段と、この共焦点レーザ顕微鏡観察手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段とにより構成している。」と訂正する。

(8)訂正事項h
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】中の2箇所の「第3実施例」、及び【0040】中の「第3実施例」を、「参考例」と訂正する。

(9)訂正事項i
【図面の簡単な説明】における、「【図3】本発明の第3実施例の概略構成を示す図。」を、「【図3】本発明の参考例の概略構成を示す図。」と訂正する。

(10)訂正事項j
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】中の「以上、実施例に基づいて説明したが、本発明中には以下の発明が含まれる。」を、「以上述べた実施例及び参考例の特徴を簡潔にまとめると以下のようになる。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
(1)訂正事項aについて
ア 「同一光軸上に切換え」を「前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え」とする訂正事項については、観察用対物レンズと加工用対物レンズとを切換える「光軸」が、前記三つの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸であることを明りょうにするとともに限定するものであり、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、本件特許明細書の段落【0028】、【0042】、【0043】の記載内容からみて、光軸が試料と垂直をなすことは、入射光と反射光とがまったく同一の経路を通ることから自明な事項である。そして、観察用対物レンズと加工用対物レンズとを「同一光軸上に切換え」るものであるから、前記三つの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす「共通光軸」上にて切換えるものであることも自明である。したがって、上記訂正事項は本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 「顕微鏡手段」を「共焦点レーザ顕微鏡観察手段」とする訂正事項は、訂正前の請求項1の「顕微鏡」が「共焦点レーザ顕微鏡」であると限定するとともに、試料の欠陥を観察する手段であることを明らかにしようとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、上記訂正事項は、本件特許明細書の段落【0022】、【0025】の記載に基づいてなされたものであるから、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 「前記光軸上に位置された」を「前記共通光軸上に位置された」とする訂正事項は、「前記光軸」を上記アの訂正事項に整合させるものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
同様に、「前記光軸上の位置された」を「前記共通光軸上に位置された」とする訂正事項は明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。
また、「高出力エネルギーの加工用レーザ光を照射して」を「前記加工用レーザ光を照射して」とする訂正事項は、既に前段で規定されている事項との重複を避けるためであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
末尾の「レーザ加工装置」を「レーザ加工装置。」とする訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項は、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

なお、請求人は、平成19年3月16日付け審判事件弁駁書において、明細書又は図面には、共通光軸が、「前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす」ものである点について記載されておらず、また明細書から明らかなものではない旨主張している(弁駁書第3頁第8?20行参照)。
しかしながら、本件特許明細書には請求項1に、観察用対物レンズと加工用対物レンズとを「同一光軸上に切換え可能」にすることが記載されているから、上述のとおり、観察用対物レンズと加工用対物レンズとを前記三つの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて切換えるものであることも自明であり、上記事項が本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないとすることはできない。

(2)訂正事項bについて
ア 「前記欠陥の位置を確認するする可視照明光」を「前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光」とする訂正事項は、本件特許明細書の段落【0015】の「試料3上のレーザ光の照射位置を確認するための可視照明光を出射する照明光源24」との記載、段落【0026】の「まず、レーザ光源ユニット22の照明光源24より可視照明光を出射する。すると、この可視照明光は、ミラー27で反射され、ハーフミラー28、29、結像レンズ30を介してミラー31で反射され、光軸14に入射され、1/4波長板12、対物レンズ7を通して試料3表面に照射され、後述のレーザ加工部分の確認を行う。」との記載、及び段落【0027】の「この状態で、レーザ光源ユニット22の矩形スリット25の開口幅を適当な大きさに調整して、試料3面の加工範囲を設定するとともに、この加工範囲を確認する。」との記載に基づいてなされたものであるから、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当しない。
また、当該訂正は「可視照明光」の技術的意義を、本件特許明細書中において明りょうに記載されている「加工用レーザ光の照射位置を確認する」との事項に特定するためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、「可視照明光」が確認を行う対象である位置として「欠陥の位置」を、「欠陥に対する加工用レーザ光の照射位置」とすることは、文言上その対象が変わっているが、訂正前の「欠陥の位置」を確認することが、実質的に発明の詳細な説明に整合していないことから、発明の詳細な説明に整合するようにした結果としての表現上の差異であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとまでいうことはできない。
なお、「確認するする」を「確認する」とする訂正事項は、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
イ 「照明光源」を「スリット用照明光源」とする訂正事項は、「照明光源」から照射される可視照明光の照射範囲がスリットの開口により設定される旨を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、上記訂正事項は、本件特許明細書の段落【0015】の記載に基づいてなされたものであるから、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 「前記光軸上」を「前記共通光軸上」とする訂正事項は、前記訂正事項aのウに同じであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 「顕微鏡手段」を「共焦点レーザ顕微鏡観察手段」とする訂正事項は、前記訂正事項aのイに同じであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
オ 「欠陥を検出し」を「前記試料上の前記欠陥を検出し」とする訂正事項は、「欠陥」が前記試料上の前記欠陥であることを明らかにしようとしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、上記訂正事項は、本件特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0025】の記載に基づいてなされたものであるから、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

なお、請求人は、上記審判事件弁駁書において、概略、「出願時の明細書では、欠陥の検出、対物レンズの切換え(加工用対物レンズを光軸上に配置)、可視照明光による加工範囲の設定、加工用レーザ光の照射の順番で実施されているのに対して、訂正発明2では、欠陥の検出、可視照明光による加工範囲の設定、対物レンズの切換え(加工用対物レンズを光軸上に配置)、加工用レーザ光の照射の順番で実施されており、明細書と訂正発明2とで対物レンズを切換える順序が異なっております。従いまして、出願時の明細書には、「前記試料上の前記欠陥を検出し、この欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記欠陥に対し前記加工用レーザ光を照射すること」については、開示されておりません。」(弁駁書第7頁第15?24行参照)として、訂正発明2は出願時の明細書に対して新規事項の追加に該当する旨を主張している。
しかしながら、請求人が主張する上記記載部分は、本件訂正の訂正事項には含まれておらず、また、本件特許明細書には記載されている事項であるから、上記訂正事項bが、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないとすることはできない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

(4)訂正事項dについて
訂正事項dは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

(5)訂正事項eについて
「共焦点レーザ顕微鏡」を「共焦点レーザ顕微鏡観察手段」とする訂正事項は、共焦点レーザ顕微鏡手段が試料の欠陥を観察する手段であることを明らかにしようとしたものである。また、引用する請求項を「1又は2」とする訂正事項は、上記(3)、(4)による請求項の削除に伴って引用する請求項を整合させるためのものである。
したがって、訂正事項eは、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(6)訂正事項fについて
「前記光軸上に切換え」を「前記共通光軸上に切換え」とする訂正事項は、「前記光軸」を上記(1)アの訂正事項に整合させるものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、「低倍寧」を「低倍率」とする訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。 そして、両訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(7)訂正事項g?jについて
訂正事項g?jは、特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と、発明の詳細な説明との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

以上のとおり、本件訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項の規定により準用する平成6年改正前特許法第126条第2項及び第3項の規定を満たすから、当該訂正を認める。

第3 請求人の主張の概要
請求人は、下記の甲第1号証乃至甲第7号証を提出し、本件特許の請求項1乃至6に係る発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張している(以下「無効理由1」という。)。
また、請求人は、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと主張している(以下「無効理由2」という。)。

[甲号各証]
甲第1号証:米国特許第4728770号明細書
甲第2号証:特開平5-188318号公報
甲第3号証:特開平6-331945号公報
甲第4号証:特開平4-253586号公報
甲第5号証:特開平6-313849号公報
甲第6号証:特開平5-228678号公報
甲第7号証:特開平4-49680号公報

第4 被請求人の主張の概要
被請求人は、上記主張に対して、本件特許の請求項1乃至4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである旨を反論している。

第5 本件発明
本件の請求項1乃至4に係る発明(以下「本件発明1」乃至「本件発明4」という。)は、平成19年2月19日付けの訂正請求書によって訂正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に該欠陥を加工する高出力エネルギーを有する加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと、
前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズと、
前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、
この対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する共焦点レーザ顕微鏡観察手段と、
この共焦点レーザ顕微鏡観察手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段と、
を具備したことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ加工手段は、前記欠陥に前記加工用レーザ光を照射するレーザ光源と、前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光を出射するスリット用照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、前記対物レンズ切換え手段により前記共通光軸上に前記観察用対物レンズに切換えて前記共焦点レーザ顕微鏡観察手段により前記試料上の前記欠陥を検出し、この欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記欠陥に対し前記加工用レーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記共焦点レーザ顕微鏡観察手段は、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を前記観察用対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記対物レンズ切換え手段は、前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズを前記共通光軸上に切換え可能に回転するレボルバからなり、高倍率から低倍率までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズと前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。」

第6 無効理由1について
1 甲号各証に記載された発明(事項)
請求人の提出した証拠方法のうち、甲第1号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第3号証及び甲第4号証の記載内容は以下のとおりである。

(1)甲第1号証(米国特許第4728770号明細書)
甲第号証には、以下の事項が記載されている。なお、明細書の記載については、請求人が提出した審判請求書に添付された甲第1号証の翻訳文を使用した。
ア 発明の名称「2軸光学システム」
イ 明細書第3欄第60行?第5欄第14行
「Yキャリッジ上には、レーザビームによって修正される対象となるターゲット、例えば集積回路ウエハ24が載置される。キャリッジ14の上にあるのは、ステージの上下動のためのマイクロメータスクリュー28が設けられている鉛直移動ステージ26である。ステージ26に取り付けられ、鉛直方向に移動するプレート30は、可視観察システム32及びレーザシステム34の2つのそれぞれの光学システムの一部である。図1及び図2に示されている観察システムは、例えば、倍率20倍、ワーキングディスタンス10mm、開口数0.40を有するニコン RELDW20×のような、高倍率、高開口数、高解像度、長ワーキングディスタンスの顕微鏡対物レンズ36を備えている。ターゲットの観察される領域は、ランプ38、コンデンサーレンズ40、ビームスプリッタ42によって、対物レンズ36を介して照明される。ターゲットから反射されて戻ってきた光は、対物レンズ、ビームスプリッタを通って、ペンタプリズム46に入射するようミラー44で反射される。ペンタプリズム46によってその方向を変えた光は視野レンズ48に入射し、好ましくは10?30倍の線形倍率でターゲット領域の一次像が形成される。この像は、レンズ50によってコリメートされ、光はミラー52によって反射され、ビデオスクリーン57上に像を生成するビデオカメラ56のレンズ54に入射する。ビデオカメラが示されているが、フィルムの像が要求されるときに、写真カメラを使用できることは明白である。
なお、レンズ50からの光はコリメートされるため、対物レンズ36の焦点をターゲット上にはっきりと合わせるために必要とされる要素36?50を備えている可視観察システムの上下方向の移動は、レンズ50、54の再フォーカスを必要としない。さらに、このように配置された要素36?54を備える光学系及びカメラ56により、ビデオレシーバ57上に表示される像は鉛直方向で左右に正しいものとなる。
図2、3に示されているレーザあるいはエネルギーシステムは、レーザ光源58を含んでいる。レーザ光源58は、集積回路ウエハを取り扱うなどの用途においては、Questek R 2000のような193nmのエキシマレーザである。レーザ光源からの出力は、コンデンサレンズ60により集光され、ピンホール62を通り、ミラー64に入射する。これらの3つの要素は、ハウジング10に対して固定されている。UVビームは、ミラー64によって下方に向けられ、ビームを対象物24上に集光させるUV対物レンズ66に受光される。焦点距離40mmのUV対物レンズを使い、ピンホールと対物レンズ間を360mmとしたとき、対象物上で10μmのスポットを生成するため、例えば、ピンホールの直径は80μmにすることができる。対物レンズの比ロ径は、望ましくは約f/1である。UV対物レンズはプレート30上に取り付けられ、顕微鏡対物レンズ36及びそれに関連する光学要素とともに、同時に移動する。
図2は、パルスUVエネルギーを受けるために予め選択されたスポットの上に配置されたUV対物レンズとともに、最も左側の位置にあるキャリッジ14と光学系32、34を示している。この位置は、Newport CorporationのモデルDM-13のような差動マイクロメータ68によって、始めに設置されている。最初に観察システムを通じて選択スポットを観察するため、キャリッジ14は第2の差動マイクロメータ70に対して接する位置14’になるよう手動又は電動で右側に移動される。最も左側の位置から最も右側の位置までのキャリッジ14の移動距離は、観察システムの可動部の鉛直軸とUV対物レンズの鉛直軸の間の距離である。マイクロメータの精度は、2つの軸が1μm以内でターゲットのスポット上に位置することができる程度である。
検査及び処理を行なうためのウエハ24や他の対象物体はキャリッジ22上に配置され、観察システムの対物レンズ36によりターゲット上の関心ある領域に近接して焦点合わせするため、観察システムが最も右側にあるときの観察領域に移動させられる。ターゲットが載置されたX-Y移動器は、検査され、及び/又はエネルギービームを用いて処理される領域の中心を発見するため操作された後、保持される。そのような領域が発見されたとき、キャリッジは、UV対物レンズの焦点が同じ中心に正確に合う位置に、手動又は電動で移動させられる。レーザは所定のパルス数動作し、追加の放出エネルギーが必要か否かを決定するため、キャリッジは初期の観察位置に戻り、関心ある領域の中心の像がビデオスクリーン上で検査される。ターゲット上の選択された部分は、示されていない、マイクロマニピュレータ上に運ばれた道具や他の装置によって処理が行われ、他の関心ある領域に対して処理が繰り返される。」
ウ 図1?図3の記載によれば、キャリッジ14は、集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上にて、顕微鏡観察レンズ36からレンズ50に到る光学システムとUV対物レンズ66とを切換え可能に配置していることが看取できる。

上記ア、イの摘記事項及び図1?図3の記載からみて、甲第1号証には、以下の発明(以下、「引用発明1」乃至「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]
「修正される対象である集積回路ウエハ24の関心ある領域を観察し、レーザシステム34により該集積回路ウエハ24上の関心ある領域に該関心ある領域を処理するレーザビームを照射して該関心ある領域を処理する2軸光学システムにおいて、
前記集積回路ウエハ24を高解像度で観察する顕微鏡観察レンズ36と、
UV対物レンズ66と、
前記集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上にて、顕微鏡観察レンズ36からレンズ50に到る光学システムとUV対物レンズ66とを切換え可能に配置するキャリッジ14と、
このキャリッジ14により前記集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上に位置された前記顕微鏡観察レンズ36を介して前記集積回路ウエハ24の関心ある領域を検出する可視観察システム32と、
検出された前記集積回路ウエハ24の関心ある領域に対し、前記キャリッジ14により前記集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上に位置された前記UV対物レンズ66を介してレーザビームを照射して処理を施す手段とを具備した2軸光学システム。」
[引用発明2]
「引用発明1において、
前記関心ある領域に前記レーザビームを照射するレーザ光源58を備え、前記キャリッジ14により前記集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上に前記顕微鏡観察レンズ36に切換えて前記集積回路ウエハ24上の前記関心ある領域を検出した後、前記キャリッジ14により前記顕微鏡観察レンズ36から前記UV対物レンズ66に切換えて前記関心ある領域に対し前記レーザビームを照射する2軸光学システム。」

(2)甲第6号証(特開平5-228678号公報)
ア 段落【0002】
「【従来の技術】レーザリペア装置は、図3に示すように、波長1.06μm 、出力エネルギ1パルス当り数mJから数十mJ、パルス幅数nsのレーザ光を出射するレーザ発振器1、エキスパンダ2、ダイクロイックミラー3、スリット4、スリット照明光源5、ダイクロイックミラー6、対物レンズ7、落射照明光源9、CCDカメラ10、ディスプレイ11、XYステージ14等から構成されている。」
イ 段落【0004】?【0005】
「スリット4は4枚のミラー研磨されたナイフエッジを直角に組み合わせた構造となっており、開口部は矩形となるようにしてある。ステッピングモータによりナイフエッジが平行移動し、開口サイズが任意の大きさに変えられるようになっている。また、レーザ光軸を中心としてスリット4が回転できるようになっている。
このスリット4により任意の矩形状に整形されたレーザ光とスリット照明光源5から出射したスリット照明光は、レーザ光を100%近く反射し、可視域の波長のスリット光を50%程度反射させる特性を有するダイクロイックミラー6で反射されて、対物レンズ7に入射し、試料12上に集光される。」
ウ 段落【0007】?【0008】
「落射照明光源9は試料12を反射像として観察するための光源である。試料12の反射像はCCDカメラ10で撮像され、ディスプレイ11で試料12を観察することができる。
次に、レーザリペア装置による欠陥を修正加工する方法について述べる。図4に欠陥を修正加工する時の操作フロー及びそれに伴う動作フローを示す。図5(a)に示すような欠陥21の全体がディスプレイ上の視野内に見えていると想定する。まずスリット4の開口サイズ(以後スリットサイズと呼ぶ)を欠陥の大きさより少し大きめのサイズに調整する。次にXYステージを微調して、欠陥21をスリット像20の位置に目合せする。この時、試料12のパターンエッジ23とスリット像20のエッジが平行になっていなければスリット4を回転させて平行になる様にする。この様な欠陥21への目合せ操作が完了したら、レーザを出射させ修正加工する。最大スリットサイズより大きい欠陥を修正加工する場合は、欠陥へのスリット像目合せ、レーザの出射という操作を繰り返して行う。」

上記ア?ウの摘記事項及び図3の記載からみて、甲第6号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「欠陥21にレーザ光を照射するレーザ発振器1と、スリット照明光を出射するスリット照明光源5と、前記レーザ光と前記スリット照明光の照射範囲を設定するスリット4とを備え、スリット4の開口サイズを欠陥の大きさより少し大きめのサイズに調整し、欠陥21をスリット像20位置に目合わせした後、前記欠陥に対し前記レーザ光を照射すること。」

(3)甲第7号証(特開平4-49680号公報)
ア 第3頁右上欄第5?6行
「第1図は、請求項1の発明のレーザ加工方法を実現するレーザ加工装置の一例」
イ 第3頁右上欄第11行?左下欄第13行
「そして、走査用レーザ12からの半導体ウェハ1の上記のレーザ加工点2aで反射するレーザ光13aをビームエキスパンダ14およびXY偏向手段15を介してミラー16で反射させたのちビームスプリッタ17.18および対物レンズ19を介して半導体ウェハ1のパターン面1aに入射させ、そのパターン面1aからの反射光13bを対物レンズ19およびビームスプリッタ18.17を介して対物レンズ19の共焦点位置に配したピンホール21を通過させたのち受光器22に入射させ、受光器22の出力を検出制御部23に供給して、まず、走査用レーザ12からのレーザ光13aが半導体ウェハ1のパターン面la上に焦点を結ぶように駆動機構24によりXYZステージ11を対物レンズ19の光軸方向であるZ方向に動かした上で、検出制御部23からXY偏向手段15にXY偏向信号を供給することにより走査用レーザ12からのレーザ光13aを半導体ウェハ1のパターン面la上においてZ方向に垂直なXY力方向走査させて、検出制御部23において受光器22の出力と上記のXY偏向信号とから半導体ウェハ1上の上記のレーザ加工点2aの位置を検出する。」
ウ 第3頁右下欄第1?5行
「その動かした位置で加工用レーザ25からのレーザ加工点2aで吸収されるレーザ光26をビームスプリンタ18および対物レンズ19を介してレーザ加工点2aに照射してレーザ加工点2aに所期の加工を施す。」
エ 第3頁右下欄第18?19行
「第2図は、請求項2の発明のレーザ加工方法を実現するレーザ加工装置の一例である。」
オ 第4頁左上欄第2?13行
「照明用光源27からの照明光28aをミラー16で反射させたのちビームスプリッタ17.18および対物レンズ19を介して半導体ウェハ1のパターン面la上に照射し、そのパターン面1aからの反射光28bを対物レンズ19およびビームスプリッタ18.17を介してCODカメラなどのビデオカメラ29に入射させることによってパターン面1aをビデオカメラ29により撮影し、そのビデオカメラ29の出力をパターン認識部31に供給することによってパターン認識部31において半導体ウェハ1上の上記のレーザ加工点2aの位置を検出する。」
カ 第4頁左上欄第19行?右上欄第3行
「その動かした位置で加工用レーザ25からのレーザ加工点2aで吸収されるレーザ光26をビームスプリッタ18および対物レンズ19を介してレーザ加工点2aに照射してレーザ加工点2aに所期の加工を施す。」

上記ア?カの摘記事項及び第1図の記載からみて、甲第7号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「走査用レーザ12と、この走査用レーザ12から出射されたレーザ光13aをXY方向に走査させるXY偏向手段15と、このXY偏向手段15により走査された前記レーザ光13aを対物レンズ19を介して半導体ウエハ1のパターン面1aに入射させ、そのパターン面1aからの反射光13bを検出する受光器22とを備えているレーザ加工装置。」

(4)甲第3号証(特開平6-331945号公報)
ア 段落【0006】
「図16及び図17に基づいて、欠陥箇所の検査・修正を行う従来の欠陥修正装置の一例を説明すると、装置本体1上には、検査すべき液晶表示パネル(以下、単にパネルと略記する)2を支持すると共に、所定位置に固定させるパネル固定部3が設けられている。このパネル固定部3は、装置本体1の水平面における所定の直交方向に移動可能な、X-Yステージ4上に設けられており、欠陥観察修正部8’におけるレーザ照射用顕微鏡システム13の下方を、パネル2のサイズ分だけ自由に動けるようになっている。X-Yステージ4には、ジョイスティック25からの信号が入力されるステージ制御部24が備えられており、作業者はジョイスティック25を操作することで、X-Yステージ4をXY方向に操作できるようになっている。このようなX-Yステージ4、ジョイスティック25、ステージ制御部24等にて移動手段が構成されている。」
イ 段落【0010】
「上記レーザ照射用顕微鏡システム13は、反射照明13b、例えば2.5倍及び50倍の対物レンズ13g・13c、これら対物レンズ13g・13cの視野を映すCCDカメラ13aを有しており、対物レンズ13g・13cにて拡大された視野画像は、このCCDカメラ13aを通し、装置本体1の上に設けられた画像モニタ17に表示されるようになっている。」
ウ 段落【0012】
「このような装置において、検査・修正を行う際、作業者は、まず、パネル2を点灯させると共に透過照明41を点灯させ、パネル2を目視して点灯不良箇所を検出し、この検出箇所をサインペン等にてマーキングする。次いで、マーキングを目印に、点灯不良箇所を、ジョイスティック25を使い、勘に頼り、試行錯誤に周囲を模索しながら、対物レンズ13gの視野(約φ1mm)内に追い込む。このようにして、低倍率の視野内に追い込んだならば、50倍(視野φ180μm)の対物レンズ13cの視野位置に対応する中央部に移動させた後、レンズレボルバを回転させて対物レンズ13gから対物レンズ13cに切り換える。そして、点灯不良を引き起こしている原因である配線パターンのショート等の欠陥箇所を観察し、不良原因の解析や、レーザを用いた修正を行う。」

上記ア?ウの摘記事項及び図面の記載からみて、甲第3号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「点灯不良箇所を2.5倍の対物レンズ13gの視野内に追い込み、50倍の対物レンズ13cの視野位置に対応する中央部に移動させた後、レンズレボルバを回転させて対物レンズ13gから対物レンズ13cに切り換え、点灯不良を引き起こしている原因である欠陥箇所を観察すること。」

(5)甲第4号証(特開平4-253586号公報)
ア 段落【0011】?【0012】
「図2に示すように、レーザ加工装置は、被加工物23を搭載・固定し、必要な加工形状の軌跡を描いて移動するテーブルを有するワークステーション24と、このワークステーション24の動作を制御するワークステーション制御装置27と、加工用レーザ光を出射するレーザ発振器11とを備えている。レーザ発振器11から出射された加工用レーザ光は、第1のハーフミラー13を透過し、スリット14を通過し、第2のハーフミラー15で反射され、集光レンズ20によって被加工物23に集光照射されるようになっている。なお、集光レンズ20としては、倍率の異なる複数の集光レンズ20a,20b,20cが用意されており、符号20はこれらを代表して表わすものとする。これらの集光レンズ20a,20b,20cは、レボルバ37に収納され、そのうちの1つが選択的に加工用レーザ光の光路上に挿入されるようになっている。また、レボルバ37は昇降駆動器22によって加工用レーザ光の光軸方向に移動されるようになっている。また、レーザ発振器11はレーザ制御装置25によって制御されるようになっている。
また、レーザ加工装置は、照明手段として、スリット照明用光源12と通常照明用光源16とを備えている。スリット照明用光源12の出射照明光は、第1のハーフミラー13で反射され、スリット14、第2のハーフミラー15、集光レンズ20を経て被加工物23に照射されるようになっている。また、通常照明用光源16の出射照明光は、第3のハーフミラー17で反射され、第2のハーフミラー15を透過し、集光レンズ20を経て被加工物23に照射されるようになっている。」

上記アの摘記事項及び図1、2の記載からみて、甲第4号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「スリット照明用光源12の出射照明光、通常照明用光源16の出射照明光、加工用レーザ光は、集光レンズ20を経て被加工物23に照射されるようになっており、集光レンズ20は、倍率の異なる3つの集光レンズ20a,20b,20cが用意されており、該集光レンズ20a,20b,20cを選択的に加工用レーザの同一光路上挿入するレボルバ21を備えていること。」

2 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「集積回路ウエハ24」は本件発明1の「試料」に、以下同様に「レーザビーム」は「加工用レーザ光」に、「顕微鏡観察レンズ36」は「観察用対物レンズ」に、「UV対物レンズ66」は「レーザ加工用対物レンズ」に、「レーザシステム34」は「レーザ加工手段」に、「2軸光学システム」は「レーザ加工装置」に、それぞれ相当する。
第1回口頭審理において、被請求人は顕微鏡に対物レンズが含まれ撮像ユニットがある場合はモニターも含まれる旨陳述していることから、甲第1号証における「顕微鏡観察レンズ36」から「ビデオスクリーン57」に至る光学システムは、本件発明1の「顕微鏡」に相当するものと解される。
また、引用発明1の「可視観察システム32」は、顕微鏡観察手段という限りにおいて本件発明1の「共焦点レーザ顕微鏡観察手段」と共通しており、引用発明1の「関心ある領域」と本件発明1の「欠陥」は、共に観察されレーザ加工を施される対象であるから、「関心ある領域」である点で共通している。
そして、引用発明1の「集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上」は、試料と垂直をなす光軸上である限りにおいて本件発明1の「前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上」と共通している。
さらに、引用発明1における「集積回路ウエハ24と垂直をなす光軸上にて顕微鏡観察レンズ36からレンズ50に到る光学システムとUV対物レンズ66とを切換え可能に配置するキャリッジ14」は、試料と垂直をなす光軸上にて観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズとを切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段という限りにおいて、本件発明1における「対物レンズ切り換え手段」と共通している。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりと認められる。
[一致点1]
「試料の関心ある領域を顕微鏡で観察し、該試料上の関心ある領域に加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと、
レーザ加工用対物レンズと、
前記試料と垂直をなす光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、
この対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の関心ある領域を検出する顕微鏡観察手段と、
この顕微鏡観察手段により検出された前記試料の関心ある領域に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段と、
を具備したレーザ加工装置。」である点。
[相違点1]
本件発明1では、レーザ加工される試料上の関心ある領域が、欠陥であるのに対して、引用発明1では、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本件発明1では、加工用レーザ光が、高出力エネルギーを有するものであり、レーザ加工用対物レンズが、前記高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いものであるのに対し、引用発明1では、そのように特定されていない点。
[相違点3]
本件発明1では、対物レンズ切換え手段が、前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置するのに対して、引用発明1では、観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズとを前記試料と垂直をなす光軸上にて切換え可能に配置しているものの、切換え可能に配置している光軸上がそのような共通光軸上とはされていない点。
[相違点4]
本件発明1では、顕微鏡観察手段が、共焦点レーザ顕微鏡観察手段であるのに対して、引用発明1では、そのように特定されていない点。

上記相違点1?4について検討する。
[相違点1について]
甲第1号証には「レーザビームによって修正される対象となるターゲット」(第3欄第61?62行、翻訳文第1頁第4行)、「ターゲット上の関心ある領域」(第4欄第67?68行、翻訳文第2頁第10行)、「エネルギービームを用いて処理される領域」(第5欄第2?3行、翻訳文第2頁第12?13行)と記載されており、これらの記載を総合して勘案すると、「処理される領域」は、修正されるものであると認められる。
そして、試料の欠陥をレーザ光により修正することは、従来周知の事項(例えば、甲第5号証の段落【0002】?【0003】、甲第6号証の段落【0008】参照)である。
そうすると、引用発明1に上記従来周知の事項を適用して相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
甲第1号証には「レーザ光源58は、集積回路ウエハを取り扱うなどの用途においては、Questek R 2000のような193nmのエキシマレーザである。」(明細書第4欄第31?33行、翻訳文第1頁第25?26行)と記載されていることから、用途に適したレーザ光を用いていることは明らかである。
そうすると、引用発明1において、レーザ光によって欠陥を加工しようとするならば、欠陥に加工を施すことができる程度の高出力エネルギーを有するものを採用することは当業者が容易になし得たことである。
また、甲第1号証において、図1から「顕微鏡観察レンズ36」と「UV対物レンズ66」とが別体であることは明らかであり、「観察システムは、例えば、倍率20倍、ワーキングディスタンス10mm、開口数0.40を有するニコン RELDW20×のような、高倍率、高開口数、高解像度、長ワーキングディスタンスの顕微鏡対物レンズ36を備えている。」(明細書第4欄第2?6行、翻訳文第1頁第8?10行参照)、「焦点距離40mmのUV対物レンズを使い、ピンホールと対物レンズ間を360mmとしたとき、対象物上で10μmのスポットを生成するため、例えば、ピンホールの直径は80μmにすることができる。対物レンズの比ロ径は、望ましくは約f/1である。」(明細書第4欄第39?44行、翻訳文第1頁第30?33行参照)との記載から「顕微鏡観察レンズ36」と「UV対物レンズ66」とは異なる性能を持つものであると解される。
そして、レーザ加工用対物レンズが観察用対物レンズを兼用しないものであるなら、観察用対物レンズに求められる性能を具備する必要性はないから、レーザ光により損傷し難いものを選択することは当業者にとって容易になし得たことである。

[相違点3について]
まず、本件発明1における「共通光軸」について検討する。
本件発明1において、共通光軸とは、前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸(以下「光軸A」という。)、前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸(以下「光軸B」という。)及び前記レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸(以下「光軸C」という。)が交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなすものとされている。
上記光軸A?Cに関して、平成19年5月7日付け審判事件答弁書(第2回)の第4頁第24行?第5頁第17行には、
「(イ)しかしながら、訂正発明1には、「光軸A、光軸B及び光軸Cが交わって合流し得る位置」とあるのみで、ミラー31で光軸を合流させることについては一切記載されていない。この点について、請求人は、第1及び第2の実施例に記載されているミラー31を挿脱させるものと一方的に解釈しているにすぎない。第1及び第2の実施例は、あくまで全反射ミラーを使用した-実施例にすぎず、例えば第3の実施例(参考例)に示すようにハーフミラーを使用することも勿論可能であり、全反射ミラーをハーフミラーにすることについては、当業者にとっては周知の技術である。そして、例えば、全反射ミラー31に代えて、ハーフミラーを使用すれば、ミラーの挿脱は必要ないため、顕微鏡観察、レーザ加工、モニタとしての機能が失われることもなく、光が試料まで到達するかどうかは問題とならない。
また、今回の訂正は、観察用対物レンズと加工用対物レンズとが切り換わる位置を明確に特定すべくなされたものであり、それは、時間的に同時期にそれぞれの光軸がそれぞれ光軸として機能していたかどうかということはそもそも問題としていない。
訂正発明1には、光軸Aについて、「前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出するときの光軸」としており、試料の欠陥を検出するときに光軸として機能していればよく、光軸Bも「前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸」とあるように、レーザ加工を施すときに光軸として機能しておればよく、光軸Cについても同様である。
以上のように、訂正発明1では、あくまで共通光軸の「位置」を特定したにすぎず、ミラー31によって、レーザ光が試料まで到達するとか、実際に交わって合流するかどうかといったことを意味するものではない。」
と記載されている(下線は当審で付与)。
上記記載によれば、光軸A、光軸B及び光軸Cは、いずれも、それぞれが光軸として機能しているときの光軸であると解され、光軸A?Cのいずれかが光軸として機能しているときには、他はその光軸として機能しないことを許容するものと解される。
そして、光軸A?Cが交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす共通光軸と試料との位置関係は、どの光軸が光軸として機能しているかによらず一定で変化しないものである。
これに対して、甲第1号証では、観察用対物レンズを介して試料を観察するときは、キャリッジ14を、キャリッジ14上の可視観察システム32とビデオカメラ56のレンズ54との光軸が一致する位置に移動させて観察を行う。したがって、引用発明1における「観察用対物レンズを介して試料を観察するときの光軸」は、試料上の観察される位置からキャリッジ14上の顕微鏡観察レンズ36、ミラー44、レンズ50と、ミラー52を経てビデオカメラ56のレンズ54に到る光軸ということができる。一方、UV対物レンズを介してレーザ加工を照射するときは、キャリッジ14を、キャリッジ14上のUV対物レンズとレーザ光源58との光軸が一致する位置に移動させて照射を行う。したがって、引用発明1における「レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸」は、レーザ光源58からコンデンサレンズ60、ピンホール62、ミラー64からUV対物レンズ66を経て試料上の照射される位置に到る光軸ということができる。
そして、試料上の観察される位置と照射される位置とは同位置であるから、引用発明1においても、試料を観察するときの光軸として機能しているときの「観察用対物レンズを介して試料を観察するときの光軸」と、レーザ加工を施すときの光軸として機能しているときの「レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸」とは、甲第1号証の図1?3の記載を参照すれば、試料上の観察される位置(照射される位置)と該位置に垂直な軸線上のミラー44が挿入される位置との間で交わって合流し得るということができる。
また、前記交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす光軸と試料との位置関係は、試料を観察するとき及びレーザ加工を施すときによらず一定で変化しないものである。
そうすると、引用発明1も、前記交わって合流し得る位置と前記試料との間に存在し、かつ、前記試料と垂直をなす光軸上にて前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズとを切換え可能に配置するものであるということができ、この光軸を共通光軸とすることは単に表現上の差異にすぎない。
また、本件発明1は、さらに、レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸と交わって合流し得る位置と規定されているが、レーザ加工用対物レンズを介して試料の状態をモニタすることは従来周知の事項であり(必要であれば、甲第6号証を参照)、引用発明1に上記従来周知の事項を付加することにより、前記交わって合流し得る位置を、さらに、レーザ加工用対物レンズを介して前記試料の状態をモニタするときの光軸と交わって合流し得る位置とすることは当業者が容易になし得たことである。

なお、被請求人は上記答弁書(第2回)の第6頁下から3行?第7頁第10行において、
「これに対して、甲第1号証は、可視観察システムとレーザシステムの各光学系とがそれぞれ別個独立に構成されており、観察時からレーザ加工時への切換えにおいては、可視観察システムの光軸を構成する光学要素、すなわち42と44と46と48と50との全てが移動してしまう。したがって、例えば、甲第1号証における観察用光軸は、レーザ加工時では、レーザ加工用光軸の外側に存在することになる(甲第1号証、Fig.2)。言い換えると、甲第1号証は、レーザ加工時には、観察用の光軸は別のところに存在する。このため、甲第1号証では、レーザ加工時には、観察時の光軸とレーザ加工時の光軸とが合流することなどありえず、ゆえに、訂正発明1でいう共通光軸なるものは存在しない。
このように、レーザ加工時であっても、顕微鏡観察時であっても、或いはモニタ時であっても、合流し得る位置が決して変わることのない(その位置以外に存在することはない)共通光軸を有する訂正発明1と、レーザ加工時には合流し得る位置が存在しない甲第1号証とはそもそも大きく異なる。」と主張している。
しかしながら、上述のとおり、引用発明1においても、試料を観察するときの光軸として機能しているときの「観察用対物レンズを介して試料を観察するときの光軸」と、レーザ加工を施すときの光軸として機能しているときの「レーザ加工用対物レンズを介してレーザ加工を施すときの光軸」とは、試料上の観察される位置(照射される位置)と該位置に垂直な軸線上のミラー44が挿入される位置との間で交わって合流し得るということができるものである。
被請求人は、甲第1号証はレーザ加工時には観察用の光軸は別のところに存在すると主張するが、甲第1号証の可視観察システムは、レーザ加工時には、試料と垂直をなす光軸から外れた位置にあって観察システムとして機能していないのであるから、レーザ加工時における可視観察システムの光軸は被請求人が主張するところの観察用の光軸とはいえないものである。したがって、レーザ加工時には観察用の光軸が別のところに存在するということはできない。
また、本件発明1も、被請求人が主張するように、時間的に同時期にそれぞれの光軸がそれぞれ光軸として機能していたかどうかということは問題としていないのであるから、引用発明1における、試料を観察するときの光軸として機能する光軸、及びレーザ加工を施すときの光軸として機能する光軸が、レーザ加工時であっても、顕微鏡観察時であっても合流し得る位置が決して変わることがないことについては本件発明1と同じである。したがって、甲第1号証はレーザ加工時には合流し得る位置が存在しないということはできない。
よって、被請求人の上記主張は採用することができない。

[相違点4について]
甲第7号証に記載された、走査用レーザ12から出射されたレーザ光13aをXY偏向手段15によりXY方向に走査させ、この走査された前記レーザ光13aを対物レンズ19を介して半導体ウェハ1のパターン面1aに入射させ、そのパターン面1aからの反射光13bを共焦点位置に配したピンホール21を通過させて受光器22で検出するようにした観察用の光学系は、「共焦点レーザ顕微鏡」と表現できるものである。
そうすると、甲第7号証には、顕微鏡観察手段を共焦点レーザ顕微鏡観察手段とすることが記載されているとすることができ、引用発明1に甲第7号証に記載された事項を適用して上記相違点4に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本件発明1の作用効果についてみても、引用発明1、甲第7号証に記載された事項及び従来周知の事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明1は、引用発明1、甲第7号証に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と引用発明2とを対比すると、両者の構成には、上記2(1)に示したのと同様の対応関係があり、また、引用発明2の「レーザ光源58」は本件発明2の「レーザ光源」に相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明2とは、上記一致点1に加えて、以下の点で一致する。
[一致点2]
「前記レーザ加工手段は、前記関心ある領域に前記加工用レーザ光を照射するレーザ光源を備え、前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上に前記観察用対物レンズに切換えて前記顕微鏡観察手段により前記試料上の前記関心ある領域を検出した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記関心ある領域に対し前記加工用レーザ光を照射すること。」
そして、上記相違点1?4に加えて、以下の点で相違する。
[相違点5]
本件発明2では、レーザ加工手段が、前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光を出射するスリット用照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、この欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えるものであるのに対し、引用発明2では、そのように特定されていない点。

上記相違点1?4については、上記2(1)で検討したとおりである。
そこで、上記相違点5について検討する。
[相違点5について]
本件発明2と甲第6号証に記載された事項とを対比すると、後者の「試料12」は前者の「試料」に、以下同様に、「欠陥21」は「欠陥」に、「レーザ光」は「加工用レーザ光」に、「レーザ発振器1」は「レーザ光源」に、「スリット照明光」は「可視照明光」に、「スリット照明光源5」は「スリット用光源」に、「スリット4」は「スリット」に、それぞれ相当する。
また、「スリット4の開口サイズを欠陥の大きさより少し大きめのサイズに調整し、欠陥21をスリット像20位置に目合わせした後、前記欠陥に対し前記レーザ光を照射すること」ことから、スリット照明光が欠陥に対するレーザ光の照射位置を確認するものであり、欠陥に対しスリットの開口幅を可変してスリット照明光を照射して加工範囲を設定した後、欠陥に対しレーザ光を照射していることは明らかである。
してみると、甲第6号証には、「欠陥に加工用レーザ光を照射するレーザ光源と、前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光を出射するスリット用照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、前記欠陥に対し前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記欠陥に対し前記加工用レーザ光を照射すること。」が記載されているとすることができる。
そして、対物レンズ切換え手段によりどのタイミングで観察用対物レンズからレーザ加工用対物レンズに切換えるかは、レーザ加工前であれば当業者が適宜選択し得る事項であって、加工範囲を設定した後とすることも適宜選択できた事項にすぎない。
したがって、引用発明2に甲第6号証に記載された事項を適用して上記相違点5に係る本件発明2の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本件発明2の作用効果についてみても、引用発明2、甲第6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明2は、引用発明2、甲第6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明2とを対比すると、両者は、上記相違点1?5に加えて次の点で相違し、その余の点では一致する。
[相違点6]
本件発明3では、共焦点レーザ顕微鏡観察手段が、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を前記観察用対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えたものであるのに対し、引用発明2では、そのように特定されていない点。

上記相違点1?5については、上記2(1)、(2)にて検討したとおりである。
そこで、上記相違点6について検討する。
[相違点6について]
本件発明3と甲第7号証に記載された事項とを対比すると、後者の「走査用レーザ12」は前者の「観察用レーザ光源」に、以下同様に、「レーザ光13a」及び「反射光13b」は「観察用レーザ光」に、「XY方向に走査させるXY偏向手段15」は「二次元走査させる二次元走査機構」に、「受光器22」は「光検出器」に、それぞれ相当する。
また、甲第7号証記載の「対物レンズ19」が、レーザ光を微小スポットに絞り込むためのものであることは明らかであり、観察用レーザ光を絞り込むという点に限り、本件発明3の「観察用対物レンズ」と共通している。
してみると、甲第7号証には、「共焦点レーザ顕微鏡観察手段は、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えるレーザ加工装置。」が記載されているとすることができる。
したがって、引用発明2に甲第7号証に記載された事項を適用して上記相違点6に係る本件発明3の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本件発明3の作用効果についてみても、引用発明2、甲第6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明3は、引用発明2、甲第6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4と引用発明2とを対比すると、両者は、上記相違点1?6に加えて次の点で相違し、その余の点では一致する。
[相違点7]
本件発明では、対物レンズ切換え手段が、回転するレボルバからなり、高倍率から低倍率までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズと前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズを備えているのに対し、引用発明2では、そのように特定されていない点。

上記相違点1?6については、上記2(1)?(3)にて検討したとおりである。
そこで、上記相違点7について検討する。
[相違点7について]
本件発明4と甲第3号証に記載された事項とを対比すると、後者の回転する「レボルバ」は、対物レンズを切り換える手段である限りにおいて、前者の「対物レンズ切換え手段」と共通し、同様に、本件発明6と甲第4号証に記載された事項とを対比すると、後者の「レボルバ」は、対物レンズを切り換える手段である限りにおいて、前者の「対物レンズ切換え手段」と共通するものである。
してみると、引用発明2における対物レンズ切換え手段としてのキャリッジ14の移動態様として回転するものを採用し、レボルバとなすことには格別困難性はない。
また、本件発明4と甲第3号証に記載された事項とを対比すると、後者の「2.5倍の対物レンズ13g」及び「50倍の対物レンズ13c」は、倍率の異なる複数の観察用対物レンズである限りにおいて、前者の「高倍率から低倍率までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズ」と共通し、本件発明6と甲第4号証に記載された事項とを対比すると、後者の「倍率の異なる複数の集光レンズ20a,20b,20c」は、倍率の異なる複数の対物レンズである限りにおいて、前者の「高倍率から低倍率までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズ」及び「前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズ」と共通している。
したがって、甲第3号証乃至甲第4号証には、観察及びレーザ加工に用いる「倍率の異なる複数の対物レンズ」が記載されているとすることができる。
そして、観察に用いる「倍率の異なる複数の対物レンズ」において、その倍率をどの程度のものとするかは当業者が適宜選択し得る事項にすぎず、また、レーザ加工に用いる「倍率の異なる複数の対物レンズ」として、加工の大きさに合うものを選択することも設計的事項にすぎない。
そうすると、引用発明2に甲第3号証乃至甲第4号証に記載された事項を適用して相違点7に係る本件発明4の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本件発明4の作用効果についてみても、引用発明2、甲第3、4、6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明4は、引用発明2、甲第3、4、6、7号証に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 無効理由2について
無効理由2の概要は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「高出力エネルギーの加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズ」及び「前記試料を高解像度で観察する対物レンズ」については、特許を受けようとする発明が不明確であるというものである。

上記無効理由2について検討する。
本件発明1における「加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズ」及び「前記試料を高解像度で観察する対物レンズ」との記載は、対物レンズがレーザ加工用と観察用の両方の性質を有する必要性のないことに起因して、レーザ加工用対物レンズ及び観察用対物レンズとして求められる一般的な性能を表現したものにすぎない。
したがって、上記請求項1の記載により特許を受けようとする発明が明確でないとまでいうことはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本件発明1乃至4は、引用発明1乃至2、甲第6号証、甲第7号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項、並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明1乃至4についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
レーザ加工装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に該欠陥を加工する高出力エネルギーを有する加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、
前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと前記加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズとを前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上にて切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、
この対物レンズ切換え手段により前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する顕微鏡観察手段と、
この顕微鏡観察手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段とを具備したことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ加工手段は、前記欠陥に前記加工用レーザ光を照射するレーザ光源と、前記欠陥に対する前記加工用レーザ光の照射位置を確認する可視照明光を出射するスリット用照明光源と、前記加工用レーザ光と前記可視照明光の照射範囲を設定するスリットとを備え、前記対物レンズ切換え手段により前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上に前記観察用対物レンズに切換えて前記顕微鏡観察手段により前記試料上の前記欠陥を検出し、この欠陥に対して前記スリットの開口幅を可変して前記可視照明光を照射して加工範囲を設定した後、前記対物レンズ切換え手段により前記観察用対物レンズから前記レーザ加工用対物レンズに切換えて前記欠陥に対して前記加工用レーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記顕微鏡観察手段は、前記観察用対物レンズを通した観察像を撮像する撮像ユニットを備え、該撮像ユニットで撮像された前記試料表面の欠陥画像と前記スリットを通して前記試料上の照射されたスリット像とをモニタに表示することを特徴とする請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記顕微鏡観察手段は、光学式顕微鏡と共焦点レーザ顕微鏡であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記共焦点レーザ顕微鏡は、観察用レーザ光源と、この観察用レーザ光源から出射された観察用レーザ光を二次元走査させる二次元走査機構と、この二次元走査機構により走査された前記観察用レーザ光を前記観察用対物レンズで微小スポットに絞り込み前記試料の表面で反射された前記観察用レーザ光を検出する光検出器とを備えたことを特徴とする請求項4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記対物レンズ切換え手段は、前記観察用対物レンズと前記加工用対物レンズを前記同一光軸上に切換え可能に回転するレボルバからなり、高倍率から低倍寧までの倍率の異なる複数の観察用対物レンズと前記試料上の加工の大きさに合う一つ以上の前記レーザ加工用対物レンズを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、試料にレーザ光を照射することにより試料を加工するレーザ加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体ウェハーなどの微小パターン試料の欠陥観察に顕微鏡を使用し、この顕微鏡観察で欠陥部分を見付けると、加工用レーザ光を試料の欠陥部分に照射してマーキングを施すなどのレーザ加工装置が用いられている。
【0003】
しかして、従来、この種のレーザ加工装置では、特開平2-204746に開示されるように顕微鏡観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズを共用していて、まず、顕微鏡観察として対物レンズを介して試料上の欠陥の有無を観察し、この顕微鏡観察により欠陥部分を見付け出すと、加工用レーザ光を顕微鏡観察に用いたと同様の対物レンズを介して試料の欠陥部分に照射してレーザ加工を実行するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように顕微鏡観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズを共用したレーザ加工装置では、一般に、顕微鏡観察の際に、試料の微細な欠陥をも見付け出すため、光学性能の高い、いわゆる高解像で高コントラストの高価な観察用対物レンズを使用している。
【0005】
ところが、このように高解像で高コントラストの観察用対物レンズを使用したものでは、レーザ加工の際に出力エネルギーのかなり大きなレーザ光が、観察用対物レンズを通過するようになるため、この時のレーザ光により対物レンズを破損してしまうことが多々あり、このため高価な観察用対物レンズを頻繁に取替えるような必要が生じ、経済的に極めて不利になるという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、観察用対物レンズの破損を防止でき、経済的に有利にできるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料の欠陥を顕微鏡で観察し、該試料上の欠陥に該欠陥を加工する高出力エネルギーを有する加工用レーザ光を照射して該欠陥を加工するレーザ加工装置において、前記試料を高解像度で観察する観察用対物レンズと前記加工用レーザ光により損傷し難いレーザ加工用対物レンズとを前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上にて切換え可能に配置する対物レンズ切換え手段と、この対物レンズ切換え手段により前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する顕微鏡観察手段と、この顕微鏡観察手段により検出された前記試料の欠陥に対し、前記対物レンズ切換え手段により前記顕微鏡の前記試料と垂直をなす光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介して前記加工用レーザ光を照射してレーザ加工を施すレーザ加工手段とにより構成している。
【0008】
【作用】
この結果、本発明によれば、試料の欠陥検出は、対物レンズ切換え手段により光軸上に観察用対物レンズを位置させ、この観察用対物レンズを介して顕微鏡観察により試料の欠陥を検出し、試料の欠陥を検出すると、今度は光軸上にレーザ加工用対物レンズを位置させ、このレーザ加工用対物レンズを介してレーザ光を照射しレーザ加工を施すようになる。これにより、試料の微細な欠陥に対しては高解像で高コントラストの観察用対物レンズを用いた顕微鏡観察により精度よい検出を実現でき、その後のレーザ加工では、レーザ加工用対物レンズが用いられ、高出力エネルギーのレーザ光が照射されることから、高解像で高コントラストの観察用対物レンズをレーザ光の照射により破損するようなことを回避できる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に従い説明する。
(第1実施例)
図1は、本発明を観察用顕微鏡として共焦点レーザ顕微鏡を使用した例の概略構成を示している。
【0010】
図において、1は顕微鏡本体で、この顕微鏡本体1には、X-Yステージ2を設けていて、このステージ2上に試料3を載置している。この場合、X-Yステージ2は、X-Yステージコントローラ4によりX、Y方向に移動制御されるようにしている。
【0011】
顕微鏡本体1のX-Yステージ2に対向してレボルバ5を設け、このレボルバ5に対物レンズとして顕微鏡観察用対物レンズ6とレーザ加工用対物レンズ7を設けていて、これら観察用対物レンズ6とレーザ加工用対物レンズ7をCPU20の指示による外部操作により光軸上に切換えられるようになっている。図示例では、観察用対物レンズ6が光軸上に位置している状態を示している。また、観察用対物レンズ6は、高解像で高コントラストの高価なものが用いられ、且つ観察倍率を変えるため高倍率から低倍率までの数種類の異なる倍率のものを備え、また、レーザ加工用対物レンズ7は、試料3上の加工する大きさに合わせたものを少なくとも1個以上備えている。
【0012】
8は、共焦点レーザ顕微鏡観察用のレーザ光源で、このレーザ光源8のレーザ光は、ミラー9で反射され、偏向ビームスプリッタ10を通して二次元走査機構11により対物レンズ6、1/4波長板12および結像レンズ13を結ぶ光軸14に入射され、対物レンズ6で微小スポットに絞り込まれるとともに、二次元走査機構11での二次元走査により試料3表面を走査されるようにしている。そして、この試料3表面から反射されたレーザビームは、対物レンズ6、1/4波長板12および結像レンズ13を通して二次元走査機構11まで戻され、偏向ビームスプリッタ10で反射されて集光レンズ15よりピンホール16を通して光検出器17で検出されるようにしている。
【0013】
この場合、二次元走査機構11は、CPU20の指示が与えられる走査制御ユニット18によりレーザ光の試料3表面上での走査が制御されるようにしている。また、1/4波長板12は、試料3からの反射光を効率よく検出するため、偏向ビームスプリッタ10と組み合わせて使用するものである。
【0014】
そして、光検出器17で検出された結果は、画像処理ユニット19に送られ、ここでCPU20の指示により画像処理が施され、ディスプレイ21に表示される。
【0015】
一方、22はレーザ光源ユニットで、このレーザ光源ユニット22は、加工用レーザ光を出力するレーザ発振器23、試料3上のレーザ光の照射位置を確認するための可視照明光を出射する照明光源24、レーザ光と可視照明光による照射範囲を設定する開口幅を可変可能にした矩形スリット25を有していて、これらレーザ発振器23、照明光源24および矩形スリット25をCPU20の指示が与えられるレーザ光源ユニットコントローラ26により制御されるようにしている。
【0016】
そして、レーザ光源ユニット22の照明光源24から出射された可視照明光は、ミラー27で反射され、ハーフミラー28、29を介して結像レンズ30に入射され、1/4波長板12と結像レンズ13の間に配置されるミラー31に入射される。この場合、ミラー31は、CPU20の指示により1/4波長板12と結像レンズ13を結ぶ光軸14上に対して挿脱できる構成になっていて、対物レンズ6が光軸14上に位置する(図示の状態)、共焦点レーザ顕微鏡観察の場合は、ミラー31は、光軸14から外れ、対物レンズ7が光軸14上に位置するレーザ加工の場合は光軸14上に挿入されるようになっている。
【0017】
そして、ミラー31で反射された可視照明光は、対物レンズ7を通して試料3表面に照射され、矩形スリット25の像を試料3表面に結像させるようにしている。そして、試料3での反射光は、試料3に入射したとまったく同様な経路を通ってハーフミラー29まで戻され、ここで反射されて撮像ユニット32に入射されるようにしている。
【0018】
また、33は、光学顕微鏡観察用の光源で、この光源33からの可視照明光も、ハーフミラー28で反射され、ハーフミラー29、結像レンズ30を通してミラー31に入射され、ここで反射されて、対物レンズ7を通して試料3表面に照射されるようになっている。そして、この試料3での反射光も、試料3に入射したとまったく同様な経路を通ってハーフミラー29まで戻され、ここで反射されて撮像ユニット32に入射されるようにしている。
【0019】
ここでの光学顕微鏡観察は、レーザ加工用対物レンズ7を通した観察であり、レーザ加工される状態をモニタする程度のものである。
撮像ユニット32では、試料3で反射される矩形スリット像または光学顕微鏡用の観察像の撮像信号をモニタ34に送り、必要によりこれら像を重ね合わせた画像を表示するようにしている。
【0020】
また、この場合、撮像ユニット32からの撮像信号をCPU20またはディスプレイ21に送って、上述した共焦点レーザ顕微鏡による観察像とともに表示させるようにもしている。
【0021】
次に、このように構成した第1実施例の動作を説明する。
まず、試料3をX-Yステージ2上に載置し、ステージ2をX、Y方向に動かしながら任意の観察位置に試料3を移動させる。
【0022】
また、レボルバ5が操作され観察用対物レンズ6が光軸14上に位置され、共焦点レーザ顕微鏡観察による欠陥検査が行われる。この場合、ミラー31は、光軸14から外れた図示実線の位置に移動している。
【0023】
ここで、共焦点レーザ顕微鏡による欠陥検査は、まず、レーザ光源8よりレーザ光が出力される。すると、このレーザ光は、ミラー9で反射され、偏向ビームスプリッタ10を通して二次元走査機構11により対物レンズ6、1/4波長板12および結像レンズ13を結ぶ光軸14に入射され、対物レンズ6により微小スポットに絞り込まれるとともに、二次元走査機構11の二次元走査により試料3の表面を走査される。そして、この試料3表面からの反射ビームは、入射したとまったく同様な経路を通って偏向ビームスプリッタ10まで戻され、ここで反射されて集光レンズ15よりピンホール16を通して光検出器17で検出され、画像処理ユニット19で画像処理が施され、試料3の観察像がディスプレイ21に表示されるようになる。
【0024】
この場合、共焦点レーザ顕微鏡の観察は、最初に観察用対物レンズ6として倍率の低いものを使って概略的な検査を行い、怪しい部分が発見されると、高倍率の観察用対物レンズ6に切換えて細密な検査を行うようにする。
【0025】
このようにしてステージ2を動かし試料3の観察位置を移動させながら、共焦点レーザ顕微鏡観察による欠陥検査を行っていく。
そして、この検査の結果、試料3に欠陥が見付かると、CPU20の指示により、ミラー31が1/4波長板12と結像レンズ13を結ぶ光軸14上に挿入されるとともに、レボルバ5が操作され、今度はレーザ加工用対物レンズ7が光軸14上に位置される。
【0026】
この状態で、まず、レーザ光源ユニット22の照明光源24より可視照明光を出射する。すると、この可視照明光は、ミラー27で反射され、ハーフミラー28、29、結像レンズ30を介してミラー31で反射され、光軸14に入射され、1/4波長板12、対物レンズ7を通して試料3表面に照射され、後述のレーザ加工部分の確認を行う。この場合、その後の加工用レーザ光の照射により試料3の欠陥部分を加工してしまわないようにX-Yステージ2を僅かに動かして、試料3をレーザ加工に支障ない位置まで移動させる。また、試料3の欠陥位置は、X-Yステージ2の座標データとしてX-Yステージコントローラ4を介してCPU20に送り、図示しないフロッピーディスクなどの記憶媒体に記憶しておく。
【0027】
この状態で、レーザ光源ユニット22の矩形スリット25の開口幅を適当な大きさに調整して、試料3面の加工範囲を設定するとともに、この加工範囲を確認する。この場合の加工範囲の確認は、矩形スリット25の反射光が、試料3への入射したとまったく同様な経路を通ってハーフミラー29まで戻され、ここで反射され撮像ユニット32に入射され、矩形スリット像がモニタ34に表示されることにより行われる。
【0028】
そして、加工範囲を確認した時点で、レーザ光源ユニット22のレーザ発振器23より加工用レーザ光を1回発射する。すると、この発射された加工用レーザ光は、上述した照明光源24からの可視照明光と同様な経路を通って試料3表面に高いエネルギーで照射され、試料3表面の欠陥部に対しマーキングが行われることになる。
【0029】
この場合、試料3のマーキング部分を光学顕微鏡観察によりモニタすることができる。この場合、光源33から可視照明光を出力すると、この可視照明光は、ミラー31で反射され、対物レンズ7を通して試料3のマーキング部分に照射され、この部分からの反射光が、試料3に入射したとまったく同様な経路を通ってハーフミラー29まで戻され、撮像ユニット32に入射され、モニタ34に表示される。
【0030】
なお、ミラー31の挿入、対物レンズ6、7の切換え、レーザ加工位置確認用の照明光源24からの可視照明光の照射、X-Yステージ2の駆動による試料3の移動、X-Yステージ2の座標データの読み込みまでの一連の動作は、CPU20に制御プログラムを用意しておくことで、ワンタッチ動作で実現できる。
【0031】
従って、このような第1実施例によれば、試料3の欠陥検出では、レボルバ5の操作により光軸14上に観察用対物レンズ6を位置させ、この観察用対物レンズ6を介して共焦点レーザ顕微鏡により試料3の欠陥を検出し、試料3の欠陥を検出すると、レボルバ5の操作により、今度は光軸14上にレーザ加工用対物レンズ7を位置させ、このレーザ加工用対物レンズ7を介してレーザ光源ユニット22からのレーザ光を試料3に照射してマーキングを施すようにしている。これにより、試料3の微細な欠陥に対しては高解像で高コントラストの観察用対物レンズ6を用いた共焦点レーザ顕微鏡観察により精度よい検出を実現でき、その後のレーザ加工では、レーザ加工用対物レンズ7が用いられ、高出力エネルギーのレーザ光が照射されることから、高解像で高コントラストの観察用対物レンズ6をレーザ光の照射により破損するようなことを確実に防止することができるようになり、従来の観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズを共用したもののように、高解像で高コントラストの観察用対物レンズを使用した場合に、その後のレーザ光により対物レンズを破損してしまう恐れがあるものと比べ、高価な観察用対物レンズを頻繁に取替えるようなことがなくなり、経済的に極めて有利にできる。
(第2実施例)
図2は、本発明の第2実施例の概略構成を示すもので、図1と同一部分には同符号を付している。
【0032】
この場合、ハーフミラー28、29、結像レンズ30で構成されるレーザ加工用光学系と光学顕微鏡用光学系を兼用した光学ユニット37と平行に、ミラー38、ハーフミラー39、結像レンズ40で構成される光学顕微鏡専用の光学ユニット41を設け、これら光学ユニット37、41をミラー27と31を結ぶ光軸42上に挿脱できるようにしている。この場合、光学ユニット37、41は、図面上では、紙面に沿って図示矢印方向に移動するようにしているが、実際は、光軸42と撮像ユニット32の光軸43に対して直角方向、すなわち紙面に対して直角に交わる方向に移動できるようになっている。
【0033】
しかして、試料3の欠陥部をレーザ加工する際は、光学ユニット37を光軸42に挿入して試料3の欠陥部に対するマーキングを行い、その後にマーキング部分をモニタする際は、光学ユニット41を光軸42に挿入して光学顕微鏡観察を行うようにする。
【0034】
従って、このような第2実施例によれば、第1実施例と同様な効果を期待でき、さらにレーザ加工用光学系の光学ユニット37と光学顕微鏡専用の光学ユニット41とを別々に設けるようにしたので、出力エネルギーの大きな加工用レーザ光が使用されても光学顕微鏡専用の光学ユニット41の光学素子を損傷させることがなくなり、また、光学顕微鏡では、光源33から可視照明光の光路にハーフミラー28に代わってミラー38を設けることにより、十分な光量で試料3を照明することができ、より明るい光学顕微鏡によるモニタ像を得ることができる。(第3実施例)
図3は、本発明の第3実施例を示すもので、ここでは観察用顕微鏡として光学顕微鏡を使用した例の概略構成を示している。なお、図3では、図1と同一部分には同符号を付している。
【0035】
この場合、レボルバ5に対物レンズとして観察用対物レンズ6とレーザ加工用対物レンズ7を設けていて、これら観察用対物レンズ6とレーザ加工用対物レンズ7を光軸14上に切り換えられるようになっている。図示例では、観察用対物レンズ6が光軸14上に位置している状態を示している。
【0036】
そして、この光軸14に沿って、ハーフミラー45、結像レンズ46、プリズム47を配置し、このプリズム47を介して観察用対物レンズ6を通した観察像を撮像する撮像ユニット48と目視にて観察する接眼レンズ49を設けている。そして、撮像ユニット48には、撮像画像を表示するモニタ50を接続している。
【0037】
一方、レーザ光源ユニット22の照明光源24の可視照明光およびレーザ発振器23の加工用レーザ光は、ダイクロイックミラー(またはハーフミラー)51を通してハーフミラー45で反射され、対物レンズ7を通して試料3面に照射されるようになっている。
【0038】
しかして、この場合も、レボルバ5が操作され観察用対物レンズ6が光軸14上に位置され、光学顕微鏡観察による欠陥検査が行われる。この場合の光学顕微鏡による欠陥検査は、照明光源33からの可視照明光がレンズ52、ダイクロイックミラー(またはハーフミラー)51を通してハーフミラー45で反射され、対物レンズ6を通して試料3に照射され、この部分からの反射光が、ハーフミラー45、結像レンズ46、プリズム47を介して観察用対物レンズ6を通した観察像が撮像ユニット48により撮像され、モニタ50に表示されるとともに、接眼レンズ49を介して目視にて観察されるようになる。
【0039】
そして、試料3に欠陥が見付かると、上述したと同様にレーザ光源ユニット22の照明光源24より可視照明光が出射され、矩形スリット25により試料3面の加工範囲が設定され、その後、レーザ発振器23より加工用レーザ光が発射されると、この加工用レーザ光は、照明光源24からの可視照明光と同様な経路を通って試料3表面に高いエネルギーで照射され、試料3表面の欠陥部に対しマーキングが行われることになる。
【0040】
従って、このような第3実施例によれば、第1実施例と同様な効果を期待でき、さらに共焦点レーザ顕微鏡に代わって光学顕微鏡が用いられることにより、価格的に安価なものが得られる。
【0041】
なお、上述した実施例では、試料の欠陥部分に対するマーキングに付いて述べたが、欠陥部分を除去するリペアの際のレーザ加工にも適用することができる。以上、実施例に基づいて説明したが、本発明中には以下の発明が含まれる。
【0042】
(1)試料の欠陥を観察し、該試料の欠陥に対して加工用レーザ光を照射するレーザ加工装置において、観察用対物レンズとレーザ加工用対物レンズを光軸上に切換え可能に配設する対物レンズ切換え手段と、この対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記観察用対物レンズを介して前記試料の欠陥を検出する顕微鏡手段と、この顕微鏡手段により検出された前記試料の欠陥に対し前記対物レンズ切換え手段により前記光軸上に位置された前記レーザ加工用対物レンズを介してレーザ光を照射しレーザ加工を施すレーザ加工手段とを具備したことを特徴とするレーザ加工装置。
【0043】
このようにすれば、試料の微細な欠陥に対しては高解像で高コントラストの観察用対物レンズを用いた顕微鏡観察により精度よい検出を実現でき、その後のレーザ加工では、レーザ加工用対物レンズが用いられ、高出力エネルギーのレーザ光が照射されることから、高解像で高コントラストの観察用対物レンズをレーザ光の照射により破損するようなことを確実に回避でき、これにより高価な観察用対物レンズを頻繁に取替えるようなことがなくなり、経済的に極めて有利にできる。
【0044】
(2)(1)記載のレーザ加工装置において、前記顕微鏡手段は、共焦点レーザ顕微鏡である。
このようにすれば、(1)と同様な効果を期待でき、さらに共焦点レーザ顕微鏡が用いられることにより、微細な欠陥に対しても高解像で高コントラストの観察用対物レンズを用いた顕微鏡観察により精度の高い検出が実現できる。
【0045】
(3)(1)記載のレーザ加工装置において、前記顕微鏡手段は、光学顕微鏡である。
このようにすれば、(1)と同様な効果を期待でき、さらに共焦点レーザ顕微鏡に代わって光学顕微鏡が用いられることにより、価格的に安価なものが得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、試料の微細な欠陥に対しては高解像で高コントラストの観察用対物レンズを用いた顕微鏡観察により精度よい検出を実現でき、その後のレーザ加工では、レーザ加工用対物レンズが用いられ、高出力エネルギーのレーザ光が照射されるようになるので、高解像で高コントラストの観察用対物レンズをレーザ光の照射により破損するようなことを確実に防止することができ、これにより高価な観察用対物レンズを頻繁に取替えるようなことがなくなり、経済的に極めて有利にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の概略構成を示す図。
【図2】本発明の第2実施例の概略構成を示す図。
【図3】本発明の第3実施例の概略構成を示す図。
【符号の説明】
1…顕微鏡本体、2…ステージ、3…試料、4…X-Yステージコントローラ、5…レボルバ、6…顕微鏡観察用対物レンズ、7…レーザ加工用対物レンズ、8…レーザ光源、9…ミラー、10…偏向ビームスプリッタ、11…二次元走査機構、12…1/4波長板、13…結像レンズ、14…光軸、15…集光レンズ、16…ピンホール、17…光検出器、18…走査制御ユニット、19…画像処理ユニット、20…CPU、21…ディスプレイ、22…レーザ光源ユニット、23…レーザ発振器、24…照明光源、25…矩形スリット、26…光源ユニットコントローラ、27…ミラー、28、29…ハーフミラー、30…結像レンズ、31…ミラー、32…撮像ユニット、33…光源、34…モニタ、37…光学ユニット、38…ミラー、39…ハーフミラー、40…結像レンズ、41…光学ユニット、42、43…光軸、45…ハーフミラー、46…結像レンズ、47…プリズム、48…撮像ユニット、49…接眼レンズ、50…モニタ、51…ダイクロイックミラー(またはハーフミラー)、52…レンズ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-07-27 
結審通知日 2006-08-01 
審決日 2006-08-15 
出願番号 特願平7-45752
審決分類 P 1 113・ 534- ZA (B23K)
P 1 113・ 121- ZA (B23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 昌人  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
菅澤 洋二
登録日 2005-02-10 
登録番号 特許第3644997号(P3644997)
発明の名称 レーザ加工装置  
代理人 家入 健  
代理人 砂川 克  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 砂川 克  
代理人 岩瀬 康弘  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  

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