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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09C
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09C
管理番号 1164622
審判番号 不服2005-5670  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-01 
確定日 2007-10-02 
事件の表示 特願2003-363862「記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する技術」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日出願公開、特開2005- 37867〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 一.手続の経緯および本願発明
本願は、2003年9月17日を出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術。」

二.当審の拒絶の理由の概要
当審において平成18年5月18日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりのものである。

「 理 由
(一).この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない。

…(中略)…
8.【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確である。
また、この記載は、特許を受けようとする発明を特定するために必要とする事項を不明確にしている。
…(中略)…

(二).本願請求項1に係る発明は、下記の理由により、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることを要件とする特許法第2条に規定する「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許を受けることができない。

1.本願請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)。」
前記事項の、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」についてみると、自然法則以外の社会科学、人文科学の定説(法則)あるいは人為的な取決を利用する部分には、自然法則を利用するものはない。
また、対語を羅列化するための「自然科学の定説」が具体的に開示されていないので、「自然科学を根拠にして」という記載のみから自然法則を利用するものであるとは認めることができない。
そして、前記社会科学、人文科学の定説を根拠にするもののほか、自然法則を対象とする部分があるとしても、自然法則を当該自然法則と対応する概念を対語として扱うものであり、この概念の領域に移行した対語を操作することはもはや自然法則を利用するものではない。また、自然法則を根拠とした定説は自然法則ではなくて自然法則以外の法則の概念に移行しているはずであり、この定説を根拠として対語を羅列するのに利用しても自然法則を利用することにはならない。
前記自然法則を根拠とし概念に移行した定説を利用することは、自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用することであり、このような自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用して、前記羅列化の操作をしても、どこにも自然法則を利用したものはなく、結局、請求項1に係る発明は、社会科学、人文科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然法則を利用したものはなく、全体として自然法則を利用した発明であるとはいえない。
請求人は、請求の理由の、本願発明が特許されるべき理由(a)本願発明の説明1において、2つ目は、本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することであり、これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法2条1項で定義された発明にあたる旨主張しているが、自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではないので、この主張は採用できない。
2.前記理由(一)8.?10.で指摘したように、請求項1に係る発明は、人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである。人間の精神活動を利用したものは自然法則を利用したものではない。
よって、請求項1に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法2条1項で定義された「発明」にあたらない。 」

三.請求人の主張
(1)請求人は、平成18年7月26日付け補正書を提出し、同日付けの意見書において、概略、次のように述べている。
「 (前略)…
【意見8】
発送番号043722の拒絶理由書(一)8に関して【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確であるとのことであるが、この発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである。不明確とのことであるなら、「技術」と手続補正することはやぶさかではない。

…(中略)…

【意見10】
発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関して【請求項1】には、「記号化した対語だけを用い」「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」とあるが、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、次ぎにいくつか意見を述べさせていただきます。
一、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由は、発送番号043722の拒絶理由書(一)1での拒絶理由とされたとおり、人文科学の定説に普遍的な法則がないとの前提にしている。既に【意見1】等でも述べさせていただいたとおりだが、更に違う側面から述べさせていただく。特許法第2条で、「自然法則を利用した」との定義がある。自然法則とは、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す(広辞苑 第五版)」とある。人文科学の範疇でもある心理法則において、自然法則が十分あり得ることを意味している。
よって、発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関しては、誤った認識の上での拒絶理由である。

二、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、【意見4】等で述べたとおりである。また、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体として云わんとする意味が不明確である。しかし、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、主体が人間であるとしているので、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体は恐らく人間としているということで、以下の意見を述べさせていただきます。
【0002】段落の「理論として証明する術」、【0004】段落の「各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめる」、【産業上の利用可能性】【0023】段落の「教育資材」の記載等に着目すれば、人間が主体とは言い切れない筈である。これは人間が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則を学習するための技術(道具)である。それは西尾正左衛門殿が発明した特許第27983号の亀の子たわしと何ら異なることはない技術(道具)である。

【意見11】
発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して既に対語を羅列化するということには、以下のように三種類に分類できることを、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1において、以下のように述べさせていただきました。
平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1「対語を羅列化するということには、三種類に分類できることをご説明し、同時にこの度の本願発明が特許されるべきものであることをご説明いたします。
先ず一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。これは特許法第29条第1項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第1項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。
以上のことから、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第1項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。」
上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1)のことを踏まえ、発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して、以下に意見を述べさせていただきます。
発送番号043722の拒絶理由書(二)1の下段にある「自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではない」とのことであるが、「自然法則を根拠にして羅列化する」ということは特許法2条の「自然法則を利用した」に該当する。
それは上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1)で説明させていただいたとおり、言語の羅列には三種類あることからである。
また、利用とは「利益になるように物を用いること。役に立つように用いること(広辞苑第五版)。役立つようにうまく使うこと。また、役に立たせること(大辞泉)。」である。【要約書】の【解決手段】において、「記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を基に、自然科学、社会科学、人文科学の定説で根拠付け、その記号化した対語を羅列する事で、限定的に、そしてコンパクトに理論化を可能とする」とは、つまり「自然科学、社会科学、人文科学の定説(法則)を利用し、その記号化した対語を羅列する事で理論化に役立たせる」ということであるからである。
もっと詳しく云えば、理論化を可能とするという利益のために、自然法則を利用して対語を羅列化することである。用いる言葉が違うだけのことであり、表現方法が違うというだけである。
また、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、「人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである」
とのことであるが、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1を踏まえていただきたいのと、先の【意見8】、【意見9】、【意見10】等を読んでいただきたい。

…(中略)…

【証拠方法】 学術書より証明する。」

四.当審の判断
A.拒絶の理由(一)の8.について
特許請求項の範囲の請求項1の末尾である「技術」は、(1)[史記貨殖伝]物事をたくみに行うわざ。技巧。「-を磨く」、(2)(technique)科学を実地に応用して自然の物事を改変・加工し、人間生活に役立てるわざ。「先端-」[株式会社岩波書店 広辞苑 第五版」と定義されていることから、わざ、技芸の意味を有しているが、わざ、技芸は、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念である。
これに対し、審判請求人は、【意見8】において、本件発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである旨主張している。
しかしながら、「技術」は上述のように物の発明と方法の発明の概念を含むものであるから、請求項1の末尾を「技術(方法)」から「技術」に補正したからといってカテゴリーが明確となるわけではない。
特許法第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とされ、特許法第2条第3項では「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。これらを考慮すれば、前記物の発明であると同時に方法の発明である発明に特許を付与することは権利の及ぶ範囲を不明確にするものであり、適切ではない。(審査基準第1部第1章2.2.2.1(3)参照)
したがって、本件の特許請求の範囲の請求項1に記載された「技術」に係る発明は、物の発明又は方法の発明のいずれの発明であるか特定できず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないので、依然として、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

B.拒絶の理由(二)の1.2.に対して
審判請求人は、【意見10】において、特許法第2条の「自然法則」に関して次の旨主張している。
「自然法則とは、自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す(広辞苑 第五版)」とある。人文科学の範疇でもある心理法則において、自然法則が十分あり得ることを意味している。」
また、拒絶の理由(二)の1.2.に対して、審判請求人は【意見11】において、次の旨主張している。
「対語を羅列化するということには、以下のように三種類に分類でき、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第1項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。
一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することであり、これは特許法第29条第1項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第1項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。」

【意見11】における主張の骨子は、【意見10】の点をふまえると、次の点にあると認められる。
広義での自然法則には、社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものが含まれるので、この規範法則に属さない社会法則、心理法則等は自然法則であって、この自然法則を根拠に対語を羅列化することは、自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義する自然法則を根拠にしているものである。

しかしながら、特許法第2条の「自然法則」は、前記広義での自然法則のことをいっているのではなく、端的にいえば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり(審査基準第2部第1章1.1(1)?(4)参照)、前記広義、狭義でいえば、狭義での自然界に関する法則である。したがって、社会法則、心理法則、経済の法則など、狭義の自然界に関する法則以外の法則は、特許法第2条の「自然法則」にはあたらない。
また、本願発明は、4つの思想を、世の中に認知されている定説に基づいて対語のみを用いて表現する行為又はその行為の結果得られる表現物につきるが、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるから、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきものではない。
よって、本願発明は、特許法第2条でいう「自然法則」を利用した「発明」ではないので、拒絶の理由(二)の1.2.の理由は、依然として解消していない。

なお、請求人は、学術書により証明するとして、平成18年7月26日付提出意見書の添付参考書籍として次のものを提出している。
(1 山田克哉著「宇宙のからくり」 出版社 講談社 1998年6月20日発行
2 八杉貞雄著「よくわかる 基礎生命科学 -生物学の歴史と生命の考え方-」 出版社 サイエンス社 2002年12月10日発行
3 御領 謙、菊地 正、江草浩幸 共著「最新認知心理学への招待」 出版社 サイエンス社 1993年7月25日発行)
しかしながら、前記書籍を参照しても、前記当審判断A.B.の判断をくつがえす理由は見いだせない。

五.むすび
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶をすべきものである。
また、本願発明は、特許法第第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2006-11-15 
結審通知日 2006-12-12 
審決日 2006-12-27 
出願番号 特願2003-363862(P2003-363862)
審決分類 P 1 8・ 14- WZ (G09C)
P 1 8・ 536- WZ (G09C)
P 1 8・ 537- WZ (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 恵雄  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 吉岡 浩
林 毅
発明の名称 記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する技術  

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