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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1164913
審判番号 不服2004-16948  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-15 
確定日 2007-09-27 
事件の表示 平成 5年特許願第102044号「カード式貯蓄・再プレーシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年11月 1日出願公開、特開平 6-304322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年4月28日の出願であって、平成16年6月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年7月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年8月11日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年8月11日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「硬貨・紙幣等の貨幣を投入することにより投入金額を記入したカードを発行するカード発行手段と、
カードを投入することにより遊技機でプレイするためのパチンコ玉、メダル等の物品を貸し出すとともにカードを回収する物品貸出手段と、
物品を投入することにより計数して物品を回収し、投入したカードに物品の数量を記入するとともに物品を所定の換算比率で加算金額に直し、該加算金額をカードの残金額に合算して記入する物品計数加算手段と、
カードを投入することにより景品を払い出すとともにカードを回収する景品交換手段とからなり、
前記物品貸出手段により回収したカードを、搬送手段によりカード発行手段に搬送回収することを特徴とするカード式貯蓄・再プレーシステム。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-242683号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?ナの記載が図示とともにある。
ア.「【産業上の利用分野】「本発明は、遊技場の管理設備装置に関し、特に、遊技者が遊技場に設置された遊技機により遊技を行なって獲得した獲得有価価値を使用して景品交換可能な遊技場の管理設備装置に関する。」(段落【0001】)
イ.「【従来の技術】この種の遊技場の管理設備装置として従来から一般的に知られているものに、たとえば、遊技者が遊技の結果獲得した賞品玉などの獲得有価価値を、遊技場に設置されている所定の場所(たとえば景品交換所)で遊技者が希望する商品などの景品に交換してもらうというシステムがあった。」(段落【0002】)
ウ.「近年ではいわゆるプリペイドカードと呼ばれる、予め所定の有価価値を特定可能な情報が記録された記録媒体を使用して遊技が可能な遊技機が設置された遊技場が提案されている。かかる遊技場の遊技機においては、この記録媒体を遊技機に挿入することにより、その記録媒体に記録された有価価値の範囲内で遊技を行なうことが可能である。」(段落【0004】)
エ.「【発明が解決しようとする課題】前述の獲得有価価値に関する問題を解決すべく、遊技用の記録媒体に、獲得有価価値を併せて記録することが考えられる。しかし、その場合には記録媒体を購入した遊技場と、記録媒体を使用した遊技場、さらにはその記録媒体を用いて有価価値を獲得した遊技場など、関連する遊技場が多数にわたり、それらの間での費用の精算などについて複雑な問題が生ずる。」(段落【0005】)
オ.「かかる問題を解決するために、獲得有価価値を記録させる記録媒体たる景品カードを、遊技用の記録媒体とは別に設けることが考えられる。景品カードに獲得有価価値を特定可能な情報を記録して、遊技の精算時に遊技者に払出すようにすれば、遊技用の記録媒体と獲得有価価値を特定するための記録媒体たる景品カードとが明確に区別でき、前述のような複雑な問題は生じない。」(段落【0006】)
カ.「図1は、本発明に係る遊技場の管理設備装置における、遊技カード(請求項1における「第1の記録媒体」)と、景品カード(請求項1における「第2の記録媒体」)との流れを模式的に示す図である。図1において、遊技カードまたは景品カードは、矢印の方向に流れる。」(段落【0011】)
キ.「遊技カードは、カード販売機などによって遊技客に対し販売される。遊技カードには、予め定められた金額に相当する有価価値(たとえば1000円、3000円、5000円など)を示す情報が記録されており」(段落【0012】)
ク.「遊技客は、この遊技カードを遊技場に持参し、パチンコ機などの遊技機に設けられた遊技カード用の読取装置にこの遊技カードを挿入する。挿入された遊技カードが有効なものであり、かつ記録された有価価値が残存している場合には、パチンコ機は遊技開始可能な状態となる。また、それ以前に獲得していた景品カードをパチンコ機に挿入することにより、同様に遊技可能な状態となる。」(段落【0013】)
ケ.「遊技の結果、遊技カードもしくは景品カードに残存していた有価価値が消費される場合と、新たな有価価値が獲得される場合とがある。第1の場合、すなわち遊技カードまたは景品カードに残存していた有価価値が消費され、残りの得点が「0」となった場合には、遊技機は遊技不能な状態となる。このとき、遊技カードは遊技客に対して返却される。一方、景品カードはパチンコ機によって回収される。回収された景品カードは、後述するように再使用される。」(段落【0014】)
コ.「遊技の結果新たな有価価値が獲得された場合には、以下のような処理が行なわれる。まず、遊技カードに残りの得点がある場合には、その残りの得点が、新たに遊技カードに書込まれる。
そして、この遊技カードはパチンコ機から払出されて、遊技客により受取られる。新たな有価価値、すなわち景品得点がある場合には、パチンコ機は自己の貯留していた景品カードに、今回新たに獲得された景品得点を書込む。この景品カードはパチンコ機から払出され、遊技客によって受取られる。」(段落【0015】)
サ.「遊技客は、景品カードをカード精算機に投入することにより、残得点に見合った金額の払戻しを受けることができる。なお、遊技カードについても、精算によって残金額の払戻しを受けられるようにしてもよい。」(段落【0016】)
シ.「図6は、パチンコ機100の、カードの受払いを行なう部分の模式的側面図である。・・・挿入された景品カード600を貯留しておくためのカード貯留部126が設けられている。カード貯留部126の最下部には、貯留された景品カードのうちの最下部の1枚を繰出すためのカード繰出ローラ130と、カード繰出ローラ130を駆動するためのカード繰出モータ129とが設けられている。」(段落【0033】)
ス.「図12は、表示窓601内に文字が形成された状態(a)と、文字が消去された状態(b)とを示す表示窓601の模式図である。・・・表示窓601上には所望の数字列が形成される。この数字列を用いて、たとえば持玉数等の獲得有価価値を表示することができる。」(段落【0043】)
セ.「この獲得有価価値の表示は、磁性層605(図10)の磁化を取除くことにより、完全に消去することができる。その状態を図12(b)が示す。この場合磁性層605に引付けられる鉄粉は存在しないため、表示ドットは形成されず、鉄粉609は表示窓601内を自由に移動する。」(段落【0044】)
ソ.「遊技用カードが適正でかつ残額がある場合には、残額の範囲内で遊技可能とし、発射玉センサ152の発射玉検出ごとに残額から減額され、入賞玉やファール玉の発生により得点が加算される場合には、遊技終了時に景品用カードに書込むべき持点情報として、残額とは区別して処理される。」(段落【0050】)
タ.「遊技の結果精算された得点データが、書込ヘッド137によって、景品カード600の裏面のデータトラック603に書込まれる。制御はステップS12に進む。ステップS12においては、書込ヘッド133によって、景品カード600の表示トラック602に、獲得得点などが可視表示される。」(段落【0067】)
チ.「挿入されたカードが遊技カードである場合には、精算時、・・・遊技カード上に記録された残額を、遊技に使用した結果減額された新たな残額に更新する。更新された残額が記録された遊技カードは、カード挿入口104から排出される。なお、本実施例では、残額が0となった場合でもカード挿入口104から排出されるように構成されている。」(段落【0073】)
ツ.「挿入された景品カードが適正なものである場合には、カード精算機400は、景品カードを景品カード収納部408に収納する。そして、景品カードから読取った獲得持点に対応する玉数を、玉数表示404に表示する。また、相当する金額を金額表示405に表示する。」(段落【0076】)
テ.「カード精算機400は、紙幣ストック部410に収納されていた紙幣から、払出しに必要な数の紙幣を取出し、紙幣払出装置411を用いて、紙幣払出口409から遊技客に対して払出す。また、精算に硬貨が必要な場合には、硬貨払出装置413が、必要な硬貨を硬貨払出口412に排出する。」(段落【0077】)
ト.「図14に示されるカード回収システムは以下のように動作する。・・・パチンコ機100からベルトコンベア504上に落下した景品カードは、ベルトコンベア504によって回収部505内に搬送される。回収部505内に集められた景品カードは、揚送リフト506によってカードタンク500に揚送される。景品カードは、カードタンク500に一時貯留される。」(段落【0085】?【0086】)
ナ.「図14に示されるように、カード販売機で景品カードと同様の構造のカードを遊技カードとして販売する場合には、カードタンク500からカード販売機に対して配給レール509を設けて景品カードをカード販売機に供給するようにしてもよい。」(段落【0088】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載ソは、遊技用カードに関する記載であるが、景品カードを用いても遊技可能(記載ク参照)な以上、「発射玉センサ152の発射玉検出ごとに残額から減額され」る点は、景品カードにも共通する(ただし、景品カードの場合には残額ではなく、持点である。)。そして、「発射玉」は遊技者に貸し出された玉であるから、パチンコ機は玉貸出手段を兼ねている。
記載コによれば、遊技カードが使用された場合に、パチンコ機貯留の景品カードに景品得点(獲得有価価値)を書込んだ上で払い出すのだから、パチンコ機は景品カード発行手段、及び景品カードに対しての獲得有価価値書き込み手段をも兼ねており、獲得有価価値は「書込ヘッド137」及び「表示書込ヘッド133」により書き込まれる。すなわち、機械読取可能な書き込みだけでなく、可視表示される。
引用例1には、遊技カード及び景品カードを用いたプレーシステムが記載されているということができ、そのシステムには遊技カードのためのカード販売機、パチンコ機(玉貸出手段、残額0の景品カード回収手段、景品カード発行手段、遊技カードに対しての残額更新手段及び景品カードに対しての獲得有価価値書き込み手段を兼ねている。)及びカード精算機が含まれる。そして、遊技カード又は景品カードにより再度遊技できる以上、そのシステムは再プレーシステムであり、さらに景品カードに獲得有価価値を書き込むことからカード式貯蓄・再プレーシステムということができる。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技カード販売機、パチンコ機及びカード精算機からなり、遊技カード及び景品カードを用いたカード式貯蓄・再プレーシステムであって、
前記パチンコ機は玉貸出手段、持点0の景品カード回収手段、景品カード発行手段、遊技カードに対しての残額更新手段及び景品カードに対しての獲得有価価値書き込み手段を兼ねており、
前記玉貸出手段は遊技カード又は景品カードが挿入されることにより遊技を可能とし、発射玉検出ごとに残額又は持点から減額する手段を有し、
景品カードに対しての獲得有価価値を書き込むに際して、獲得有価価値を加算して書き込むとともに、可視表示されるように構成したカード式貯蓄・再プレーシステム。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
機能上、引用発明1の「遊技カード」と「景品カード」を併せたものが、本願発明の「カード」に相当し、引用発明1の「遊技カード販売機」を「カード発行手段」と称することには何の問題もなく、本願発明の「カード発行手段」とは「硬貨・紙幣等の貨幣を投入することによりカードを発行する」点で共通する。
引用発明1の「玉貸出手段」は本願発明の「カードを投入することにより遊技機でプレイするためのパチンコ玉、メダル等の物品を貸し出す物品貸出手段」に相当する。
本願発明の「物品の数量」又は「加算金額」は、「獲得有価価値」の限度では引用発明1の「獲得有価価値」と変わりがなく、引用発明1の「可視表示」は本願発明の「記入」と異ならないから、引用発明1の「獲得有価価値書き込み手段」と本願発明の「物品計数加算手段」は、獲得有価価値記入手段の限度で一致する。
引用発明1の実施例(記載テ)では、精算において紙幣又は硬貨と交換されており、これが本願発明の「景品」に相当するから、引用発明1の「カード精算機」は本願発明の「景品交換手段」に相当し、「カードを投入することにより景品を払い出す」点において一致する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「硬貨・紙幣等の貨幣を投入することによりカードを発行するカード発行手段と、
カードを投入することにより遊技機でプレイするためのパチンコ玉、メダル等の物品を貸し出す物品貸出手段と、
カードに獲得有価価値を記入する獲得有価価値記入手段と、
カードを投入することにより景品を払い出す景品交換手段とからなるカード式貯蓄・再プレーシステム。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉「カード発行手段」につき、本願発明では「投入金額を記入」としているが、引用発明1では投入金額を記入するかどうか不明な点。
〈相違点2〉本願発明の「物品貸出手段」が「カードを回収する」としているのに対し、引用発明1では「持点0の景品カード」は回収するものの、遊技カードを回収するとはしていない点。
〈相違点3〉「獲得有価価値記入手段」につき、本願発明が「物品を投入することにより計数して物品を回収し、投入したカードに物品の数量を記入するとともに物品を所定の換算比率で加算金額に直し、該加算金額をカードの残金額に合算して記入する物品計数加算手段」としているのに対し、引用発明1には「物品を投入することにより計数して物品を回収」する手段は存在しないし、記入内容も異なる。なお、相違点3に係る本願発明の構成、特に「投入したカードに・・・カードの残金額に合算して記入」により、引用発明1の「遊技カード」及び「景品カード」の機能が1枚のカードにより実現されていることが読み取れ、これは相違点3に含まれる。
〈相違点4〉「景品交換手段」につき、本願発明が「カードを回収する」としているのに対し、引用発明1では「カードを回収する」かどうか明らかでない点。
〈相違点5〉本願発明が「前記物品貸出手段により回収したカードを、搬送手段によりカード発行手段に搬送回収する」としているのに対し、引用発明1は同構成を有さない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点3について
本願発明と引用発明1の最も重要な相違点は相違点3、特に「遊技カード」及び「景品カード」の機能を1枚のカードにより実現するかどうかの点であるから、まず相違点3から判断する。
引用例1の記載エには、遊技用の記録媒体に、獲得有価価値を併せて記録することが記載されており、これは遊技カードと景品カードの機能を1枚のカードにより実現することにほかならない。引用発明1がそれを採用しなかった理由は、「関連する遊技場が多数にわたり、それらの間での費用の精算などについて複雑な問題が生ずる。」ためであるが、逆にいうと、特定の遊技場のみでのカード使用を前提とする場合や、異なる遊技場間の精算ルール及び精算手段が確立している場合には、「複雑な問題」は生じず、遊技用の記録媒体に獲得有価価値を併せて記録することを妨げる理由はなく、カードを1枚とする方が、遊技場にとっても遊技者にとっても好都合な面が多いことは明らかである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-15655号公報(以下「引用例2」という。)に、「カード本体10の表面には中央部に表示部11があり、表示部11は上下方向に残金表示窓12と持玉表示窓13が配設され、残金表示窓12は、投入された金額から貸玉購入金額を減算した残金の金額を液晶表示するものであり、持玉表示窓13は、貸玉金額に相当する玉数から遊技盤上で発射される玉数を減算し、ファール玉の数および入賞球一個当たりの換算景品球の数を加算した持玉数を液晶表示するものである。」(段落【0022】)との記載があるところ、「ファール玉の数および入賞球一個当たりの換算景品球の数」は「獲得有価価値」といえるから、引用例2には「遊技カード」及び「景品カード」の機能を1枚のカードにより実現することが記載されているということができる。
そうである以上、引用発明1を出発点として遊技カードと景品カードの機能を1枚のカードにより実現することが、当業者にとって想到容易であることは明らかである。
ところで、引用発明1では、遊技カード又は景品カードの何れを用いても遊技可能であるから、これらカードを1枚にした場合において、遊技者が関心を寄せる情報は、遊技可能回数(一度も入賞しない場合の遊技回数)である。引用発明1では、発射玉検出ごとに残額から減額しており、それは遊技カード購入金額すべてが引用例2記載の「貸玉金額」に割り当てられていることを意味する。引用発明1において景品カードを用いる場合には、遊技開始時の持点相当額が、引用例2記載の「貸玉金額」に該当する。そうである以上、引用発明1の遊技カードと景品カードを1枚のカードにまとめるに際し、遊技可能回数、すなわち、残金額相当数(物品数に換算した数)に物品数を加算した数をカードに記入することは設計事項というべきである。
本願発明の「物品を所定の換算比率で加算金額に直し、該加算金額をカードの残金額に合算」した金額は、遊技可能回数を金額に換算した金額であるが、物品数として表示するか、金額として表示するかは設計事項というよりない。さらにいうと、引用例1には「遊技カードについても、精算によって残金額の払戻しを受けられるようにしてもよい」(記載サ)とあるところ、遊技カードも精算対象とする場合には、精算可能合計額は遊技可能回数を金額に換算した金額であるから、遊技者は最終的に景品との交換を目標として遊技することを考慮すれば、交換価値に当たる金額表示には十分な合理性がある。したがって、「物品を所定の換算比率で加算金額に直し、該加算金額をカードの残金額に合算」したものを、遊技者に可視表示する(記入する)ことは当業者にとって想到容易である。
残る検討項目は「物品を投入することにより計数して物品を回収」する点、及び「投入したカードに物品の数量を記入する」点である。前者については次のとおりである。引用発明1は「発射玉検出ごとに残額又は持点から減額する」のであるから、いわゆる封入式を前提としたシステムと解され、封入式である限り、「物品を投入することにより計数して物品を回収」することはあり得ない。しかし、封入式でなければ、引用発明1の「遊技カード」及び「景品カード」が使用不可能というわけではない。封入式でない場合には、遊技に当たり一定量の遊技球を借りて遊技を行うのであり、カード残額は遊技球借用前の残額から借用遊技球相当額を減じた額であるから、遊技終了時の遊技可能回数(借用可能な球数)は、カード残額相当数に遊技終了時の存在球数を加算した数である。そうである以上、カード残額に加算すべきは遊技終了時の存在球数であるから、遊技終了時の存在球(本願発明では、投入される物品)を投入することにより計数して球を回収することは、封入式を採用しない場合の設計事項というべきである。実際、「物品を投入することにより計数して物品を回収」することは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-96058号公報の段落【0012】?【0013】に記載されている。
後者について検討するに、記入される「物品の数量」は今回の遊技後に残存する物品数量であり、遊技可能回数ではない(遊技可能回数は、同数量に残額を数量に換算した数値を加算したもの)から、必ず表示しなければならないといった性質のものではないが、残存物品を計数した場合、計数値に誤りがないことを遊技者は確認したいであろうし、物品数量を表示すれば、その数値が大きい場合には遊技者には達成感が得られ、少ない場合には次回遊技に対しての意欲をかきたてることができるから、「投入したカードに物品の数量を記入する」ことは設計事項というよりない。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点1について
引用例1には、「景品カードと同様の構造のカードを遊技カードとして販売する」(記載ナ)ことが記載されている。もとより、遊技カードはプリペイドカードの一種であり、プリペイドカードには発行対価を可視表示することが一般的であるから、景品カードと同様の構造のカードを遊技カードとする際には、景品カードに可視表示するのと同様の手段を用いて、「投入金額を記入」することは設計事項というべきである。
そればかりか、(1)で述べたように遊技カードと景品カードを1枚のカードにまとめる場合には、景品カードと同様の構造のカードを用いるのが自然であり、なお一層「投入金額を記入」することは設計事項である。

(3)相違点2,5について
引用例1の記載チには「本実施例では、残額が0となった場合でもカード挿入口104から排出される」とあるけれども、残額が0となった遊技カードを遊技者に返却しなければならない合理的理由はない。もちろん、遊技カードはプリペイドカードの一種であり、多くのプリペイドカードでは、おおまかな残額が利用者に分かるように、残額が所定値以下になるごとに、パンチ穴をあける方法が採用されており、かかる方法を採用すれば、カードを初期状態に復帰することが困難であるから、非回収とすることも考えられる。
しかし、引用発明1では、景品カードの再利用を図っているのだから、引用発明1を出発点として、遊技カードと景品カードを1枚のカードにまとめた場合には、再利用を妨げる理由がない限り、回収して再利用すべきである。そして、景品カードと同様の構造のカードを用いれば、パンチ穴をあけなくとも、必要な情報を遊技者が視認可能とできるのだから、再利用を妨げる理由は見あたらない。
また、引用例1の記載ト,ナには、回収した景品カードをカードタンクに一時貯留した上で、カードタンクからカード販売機に対して景品カードをカード販売機に供給することが記載されているのだから、「物品貸出手段により回収したカードを、搬送手段によりカード発行手段に搬送回収する」こと自体は引用例1にも記載されているというべきである。
以上のとおりであるから、相違点2,5に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というよりない。

(4)相違点4について
(3)で述べたとおり、物品貸出手段にてカードを回収することは設計事項である。そして、引用発明1の精算機において精算した際にも、遊技カードの残額や景品カードの持点が0になることは十分予測され、残額又は持点が0となったカードを回収することの技術的意義は物品貸出手段と同じである。そうである以上、相違点4に係る本願発明の構成を採用することも設計事項というよりない。

(5)本願発明の進歩性の判断
相違点1?5に係る本願発明の構成を採用することは設計事項である又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例1に記載された引用発明1以外の技術、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-18 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-16 
出願番号 特願平5-102044
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小田倉 直人
渡部 葉子
発明の名称 カード式貯蓄・再プレーシステム  

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