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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04Q
管理番号 1165600
異議申立番号 異議2000-72020  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-15 
確定日 2007-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第2979064号「多重音声通信やデータ通信を単一又は複数チャンネルにより同時に行うための無線ディジタル加入者電話システム」の特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、知的財産高等裁判所において、平成13年10月23日付けでした特許異議の決定を取り消す判決(平成17年(行ケ)第10174号、平成19年3月28日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第2979064号の特許請求の範囲第1項ないし第4項に記載された発明についての特許を維持する。  
理由 第1.手続の経緯
1.本件特許第2979064号の発明についての出願は、昭和61年2月26日(パリ条約による優先権主張1985年3月20日、米国)に出願した特願昭61-39331号の一部を平成9年7月11日(パリ条約による優先権主張1985年3月20日、米国)に新たに出願(特願平9-236592号)したものであり、特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明(発明の数は6である。)は、平成11年9月17日にその特許権の設定登録がされた。

2.その後、本件の特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明についての特許に対して、平成12年5月15日に茨田三津江より本件特許異議の申立て(異議2000-72020)があり、平成12年10月3日付けで取消理由が通知されたところ、平成13年4月17日付けで本件特許に係る明細書を訂正(この訂正により、特許請求の範囲第1項、第2項、第3項及び第6項が訂正されるとともに、第4項が削除され、第5項及び第6項が第4項及び第5項に項番変更され、発明の数は5となる。)する請求がなされ、平成13年10月23日付けで「訂正を認める。特許第2979064号の特許請求の範囲第1項ないし第5項に記載された発明についての特許を取り消す。」との異議の決定がなされた。

3.上記異議の決定に対して、特許権者より、平成14年3月8日付けで「特許庁が平成13年10月23日に特許第2979064号に対する異議第2000-72020号事件についてした取消決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成14年(行ケ)第113号)が東京高等裁判所に提起された。(この訴えは、その後、平成17年4月1日、知的財産高等裁判所に回付され、平成17年(行ケ)第10174号に番号変更された。)

4.平成14年5月17日付けで、本件の願書に添付した明細書について訂正(この訂正は、上記異議決定時に訂正が認められた特許請求の範囲第1項ないし第3項及び第5項を追加訂正するとともに第4項を削除し、第5項を第4項に項番変更するものであり、発明の数は4となる。本件明細書のうち、特許請求の範囲以外の部分に訂正はない。)を求める審判の請求(訂正2002-39124号)がなされ、当該審判の請求に対し、平成14年8月30日付けで訂正拒絶の理由が通知され、平成15年3月24日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第1次訂正拒絶審決」という。)がなされた。

5.上記第1次訂正拒絶審決に対して、平成15年7月4日付けで「特許庁が訂正2002-39124号事件について平成15年3月24日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成15年(行ケ)第293号)が東京高等裁判所に提起され、平成16年12月9日に「特許庁が訂正2002-39124号事件について平成15年3月24日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決(以下「第1次高裁判決」という。)の言渡しがあり、この判決は確定した。

6.上記第1次高裁判決の確定をうけて、上記訂正を求める審判の請求に対する審理が再開され、平成17年2月4日付けで訂正拒絶の理由が通知され、平成17年8月5日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第2次訂正拒絶審決」という。)がなされた。

7.上記第2次訂正拒絶審決に対して、平成17年12月12日付けで「特許庁が訂正2002-39124号事件について平成17年8月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成17年(行ケ)第10838号)が知的財産高等裁判所に提起され、平成18年11月9日に「特許庁が訂正2002-39124号事件について平成17年8月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決(以下「第2次高裁判決」という。)の言渡しがあった。

8.上記第2次高裁判決を受けて、訂正2002-39124号事件について再度審理した結果、平成19年2月19日付けで「特許第2979064号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。」という審決がなされ、平成19年2月22日に謄本が送達され、この審決は確定した。

9.上記の訂正を認める審決の確定を受けて、知的財産高等裁判所は、平成19年3月28日に、審理中の平成17年(行ケ)第10174号事件について「特許庁が異議2000-72020号事件について平成13年10月23日にした決定のうち,特許第2979064号の特許請求の範囲第1項ないし第3項,第5項(ただし,平成13年4月17日付け訂正請求に係る特許請求の範囲)に記載された発明についての特許を取り消した部分を取り消す。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を言い渡し、この判決は確定したものである。

第2.特許異議の申立てについての判断
上記本異議事件に係る知的財産高等裁判所の判決を受けて、上記第1次高裁判決及び第2次高裁判決の拘束力の下に、本件特許異議の申立について以下に検討する。
1.異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 茨田三津江は、下記の甲第1号証ないし甲第7号証を提出して、本件特許登録時の特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明の特許は取り消されるべきであると主張している。

(1)甲第1号証:「TD-FDMA移動通信方式の検討」電子通信学会論文誌 ‘81/9 Vol.J64‐B No.9
(2)甲第2号証:「DIGITAL MOBILE RADIO TELEPHONE SYSTEM USING TD/FDMA SCHEME,IEEE International Conference on Communications Denver,Colorado June 14‐18,1981
(3)甲第3号証:「THE FULLY DIGITAL CELLULAR RADIO TELEPHONE SYSTEM CD900」 NORDIC SEMINAR ON DIGITAL LAND MOBILE RADIO COMMUNICATION 5‐7 Feb.1985,Espoo,Finland
(4)甲第4号証:「Digital Radio Concentrator System(DRCS)」NEC Res & Develop.,NO.76,Jan‐1985
(5)甲第5号証: 特開昭60-32451号公報
(6)甲第6号証: 特開昭53-84603号公報
(7)甲第7号証: 特開昭58-51635号公報

2.当審の取消理由通知の概要
当審で通知した取消理由は、
本件特許登録時の特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載されたそれぞれの発明は、下記に引用した刊行物1ないし刊行物5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるから、同特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載された発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同特許請求の範囲第1項ないし第6項に記載されたそれぞれの発明についての特許は、特許法第113条の規定により取り消されるべきであるとするものである。

刊行物1:「TD-FDMA移動通信方式の検討」 電子通信学会論文誌 ’81/9 Vol. J64-B No.9(甲第1号証)
刊行物2:「Digital Mobile Radio Telephone System Using TD/FDMA Scheme」 IEEE International Conference on Communications Denver Colorado, June 14-18 1981(甲第2号証)
刊行物3:特開昭60-32451号公報(甲第5号証)
刊行物4:特開昭53-84603号公報(甲第6号証)
刊行物5:特開昭58-51635号公報(甲第7号証)

3.本件発明
本件の異議の手続において平成13年4月17日付けで訂正請求がなされたが、その後、平成14年5月17日付けで訂正審判が請求され(訂正2002-39124号)、それが確定したことにより、本件決定で審理判断すべき特許請求の範囲は、前記訂正審判により訂正された特許請求の範囲第1項ないし第4項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、上記訂正後の特許請求の範囲第1項ないし第4項に記載された発明(本件の発明の数は「4」である。)を、各項に対応してそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)

<訂正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】無線周波数(RF)電話システムの複数の順方向及び逆方向搬送波周波数であって各々が互いに同期した複数の時間スロットを含むとともにアナログ音声信号1チャンネル分の関連の所定の帯域幅を有する複数の順方向及び逆方向搬送波周波数に複数の音声信号チャンネルを形成する市外通話同等の通話品質のディジタル陸上通信システムであって、基地局及び加入者局を含み、その基地局が、
電話網から複数の順方向ディジタル化音声信号を受けるとともに加入者局から少なくとも一つの逆方向ディジタル化音声信号を受ける複数の回線接続経路と、
前記順方向ディジタル化音声信号をそれぞれ圧縮して圧縮音声信号を生ずる複数の圧縮器と、
前記圧縮音声信号を単一の送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられた周波数/時間スロットに配置して多重化するマルチプレクサと、
前記順方向搬送波周波数の各々を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調して順方向被変調搬送波を生ずる複数の変調器と、
前記順方向被変調搬送波を少なくとも一つの加入者局にRF送信する送信機と、
前記ディジタル化音声信号を前記圧縮器の一つにそれぞれ導く交換手段と、
入来呼要求に応答して圧縮音声信号の占めるべき順方向の時間スロット及び周波数を指示する時間スロット/周波数割当て信号を発生しそれによって圧縮済みのディジタル化音声信号を前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の順方向の時間スロット及び周波数に割り当てる時間スロット/周波数割当て信号発生手段であって、時間スロット/周波数の割当て済みの状況に関する情報を記憶するメモリを含み前記入来呼要求に応答して前記メモリにアクセスする時間スロット/周波数割当て信号発生手段と、
前記時間スロット/周波数割当て信号に応答して入来ディジタル化音声信号を前記圧縮器経由で前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられたスロットに経路づけするように所要の接続を前記交換手段に完結させる手段と、
前記時間スロット/周波数割当て信号を表す情報を前記加入者局に送る手段とを含み、前記加入者局が、
前記逆方向ディジタル化音声信号を圧縮して逆方向圧縮音声信号を生ずる圧縮器と、
前記逆方向圧縮音声信号を送信チャンネル・ビット・ストリーム内の逐次的時間スロット、すなわち前記順方向の割当てスロットから同一時間スロット内における送信および受信の回避のための固定時間幅だけずれた時間スロットに配置するチャンネル・コントローラと、
前記逆方向搬送波周波数、すなわち前記順方向の割当て周波数から固定周波数幅だけずれた逆方向搬送波周波数を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調し逆方向被変調搬送波を生ずる変調器と、
前記逆方向被変調搬送波を前記基地局にRF送信する送信機と
を含むことを特徴とするディジタル陸上通信システム。
【請求項2】局線及び複数の加入者局と交信可能な基地局を有する市外通話同等の通話品質の陸上無線ディジタル多元接続通信システムであって、各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行うことのできる陸上無線ディジタル多元接続通信システムにおいて、
前記基地局における切換マトリクス及び各加入者局におけるセット・アップ手段であって、前記局線に接続され前記局線からの第1の順方向情報を第1の順方向信号として複数の圧縮器のある一つに導くとともに基地局圧縮解除器からの第2の逆方向信号を第2の逆方向情報として前記局線に導く前記切換マトリクス、及び第1の逆方向情報を第1の逆方向信号としてセット・アップするとともに加入者局圧縮解除器からの第2の順方向信号をユーザへの出力用の第2の順方向情報信号としてセット・アップする前記セット・アップ手段と、
前記基地局及び各加入者局における信号圧縮器であって、前記基地局切換マトリクスに接続され前記順方向周波数チャンネルの一つのある時間スロットに第1の圧縮済みの第1の順方向信号すなわち圧縮前の前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報を生ずるように加入者局で再構成できる第1の圧縮済みの順方向信号を発生する基地局信号圧縮器、及び前記加入者局セット・アップ手段に接続されそのセット・アップ手段からの第1の逆方向信号を圧縮するとともに圧縮前の前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報を生ずるように基地局で再構成できる圧縮済みの逆方向信号を発生する加入者局信号圧縮器と、
前記基地局及び各加入者局における信号圧縮解除器であって、前記基地局切換マトリクスに接続され前記加入者局から前記RFリンクの前記逆方向周波数チャンネル経由で受ける圧縮済みの逆方向信号を圧縮解除し前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報をもたらす第2の逆方向信号を前記基地局切換マトリクス用に発生する基地局信号圧縮解除器、及び前記加入者局セット・アップ手段に接続され前記基地局から前記RFリンクの前記順方向周波数チャンネル経由で受けた圧縮済みの順方向信号を圧縮解除するとともに前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報をもたらす第2の順方向信号を前記加入者局セット・アップ手段用に発生する加入者局信号圧縮解除器と、
前記圧縮済みの順方向情報信号及び逆方向情報信号への一つのチャンネル/時間スロット割当てをその情報信号を前記順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルの一つ経由で前記基地局及び加入者局の一つに伝送できるように行う割当て手段であって、チャンネル/時間スロット割当て済みの状況を記憶するとともに伝達すべき情報の基地局による受信に応答してその記憶を調べるメモリ手段を含む割当て手段とを含み、
前記加入者局が前記順方向情報信号および逆方向情報信号の一方を割当てチャンネル/時間スロット経由で受信し、その割当てチャンネルから固定周波数幅だけずれた周波数およびその割当て時間スロットから同一時間スロット内における送信および受信の回避のための固定時間幅だけずれた時間スロットを前記順方向情報信号および逆方向情報信号の他方に自動的に提供し、
前記基地局圧縮器に接続され前記圧縮済みの順方向信号を前記順方向周波数チャンネルにそれら順方向信号の各々がその順方向周波数チャンネル内の一つの時間スロットを占める形で印加するように組み上げる信号コンバイナと、
前記基地局及び加入者局における送信機及び受信機であって前記基地局と加入者局との間の前記RFリンク経由の直接通信をもたらす送信機及び受信機と
をさらに含む陸上無線ディジタル多元接続通信システム。
【請求項3】局線及び複数の加入者局と交信可能な基地局を備える市外通話同等の通話品質の陸上無線ディジタル多元接続通信を行う方法であって、各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行うことのできる陸上無線ディジタル多元接続通信方法において、
前記基地局における切換及び前記加入者局の各々におけるセット・アップを行う過程であって、前記局線に接続され前記局線からの第1の順方向情報を第1の順方向信号として複数の圧縮器のある一つに導くとともに基地局圧縮解除器からの第2の逆方向信号を第2の逆方向情報として前記局線に導く前記切換過程、及び第1の逆方向情報を第1の逆方向信号としてセット・アップするとともに加入者局圧縮解除器からの第2の順方向信号をユーザへの出力用の第2の順方向情報としてセット・アップするセット・アップ過程と、
前記基地局及び前記各加入者局における信号圧縮過程であって、前記順方向周波数チャンネルの一つのある時間スロットに第1の圧縮済みの順方向信号すなわち圧縮前の第1の順方向信号と実質的に同じ情報を生ずるように加入者局で再構成できる第1の圧縮済みの順方向信号を発生する基地局信号圧縮過程、及び、前記セット・アップ過程からの第1の逆方向信号を圧縮するとともに圧縮前の前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報を生ずるように基地局で再構成できる圧縮済みの逆方向信号を発生する加入者局信号圧縮過程と、
前記基地局及び各加入者局における信号圧縮解除過程であって、前記加入者局から前記RFリンクの前記逆方向周波数チャンネル経由で受ける圧縮済みの逆方向信号を圧縮解除し前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報をもたらす第2の逆方向信号を前記切換過程期間中の切換用に発生する基地局信号圧縮解除過程、及び前記基地局から前記RFリンクの前記順方向周波数チャンネル経由で受けた圧縮済みの順方向信号を圧縮解除するとともに前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報をもたらす第2の順方向信号を前記加入者局セット・アップ過程用に発生する加入者局信号圧縮解除過程と、
前記圧縮済みの順方向及び逆方向情報信号への一つのチャンネル/時間スロット割当てをその情報信号を前記順方向及び逆方向周波数チャンネルの一つ経由で前記基地局及び加入者局の一つに伝送できるように行う割当て過程であって、チャンネル/時間スロット割当て済みの状況を記憶するとともに伝達すべき情報の基地局による受信に応答してその記憶を調べるメモリ手段の維持を含む割当て過程とを含み、
前記加入者局が前記順方向情報信号および逆方向情報信号の一方を割当てチャンネル/時間スロット経由で受信し、その割当てチャンネルから固定周波数幅だけずれた周波数およびその割当て時間スロットから同一時間スロット内における送信および受信の回避のための固定時間幅だけずれた時間スロットを前記順方向情報信号および逆方向情報信号の他方に自動的に提供するようにし、
前記基地局信号圧縮過程からの前記圧縮済みの順方向信号を前記順方向周波数チャンネルにそれら順方向信号の各々がその順方向周波数チャンネル内の一つの時間スロットを占める形で印加するように組み上げる過程と、
前記基地局及び加入者局における送信過程及び受信過程であって前記基地局と加入者局との間の前記RFリンク経由の直接通信をもたらす送信過程及び受信過程と
をさらに含む陸上無線ディジタル多元接続通信方法。
【請求項4】局線及び複数の加入者局と交信可能な基地局を有する市外通話同等の通話品質の陸上無線ディジタル多元接続通信システムであって、各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行うことのできる陸上無線ディジタル多元接続通信システムにおいて、
前記基地局における切換マトリクス及び各加入者局におけるセット・アップ手段であって、前記局線に接続され前記局線からの第1の順方向情報を第1の順方向信号として複数の圧縮器のある一つに導くとともに基地局圧縮解除器からの第2の逆方向信号を第2の逆方向情報として前記局線に導く前記切換マトリクス、及び第1の逆方向情報信号を第1の逆方向信号としてセット・アップするとともに加入者局圧縮解除器からの第2の順方向信号をユーザへの出力用の第2の順方向情報信号としてセット・アップするセット・アップ手段と、
前記基地局及び各加入者局における信号圧縮器であって、前記基地局切換マトリクスに接続され前記順方向周波数チャンネルの一つのある時間スロットに圧縮済みの第1の順方向信号すなわち圧縮前の前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報を生ずるように加入者局で再構成できる第1の圧縮済みの順方向信号を発生する基地局信号圧縮器、及び前記加入者局セット・アップ手段に接続されそのセット・アップ手段からの第1の逆方向信号を圧縮するとともに圧縮前の前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報信号を生ずるように基地局で再構成できる圧縮済みの逆方向信号を発生する加入者局信号圧縮器と、
前記基地局及び各加入者局における信号圧縮解除器であって、前記基地局切換マトリクスに接続され前記加入者局から前記RFリンクの前記逆方向周波数チャンネル経由で受ける圧縮済みの逆方向信号を圧縮解除し前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報信号をもたらす第2の逆方向信号を前記基地局切換マトリクス用に発生する基地局信号圧縮解除器、及び前記加入者局セット・アップ手段に接続され前記基地局から前記RFリンクの前記順方向周波数チャンネル経由で受けた圧縮済みの順方向信号を圧縮解除するとともに前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報信号をもたらす第2の順方向信号を前記加入者局セット・アップ手段用に発生する加入者局信号圧縮解除器と、
前記圧縮済みの順方向情報信号及び逆方向情報信号の一つへのチャンネル/時間スロット割当てをその情報信号を前記順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルの一つ経由で前記基地局及び加入者局の一つに伝送できるように行う割当て手段であって、チャンネル/時間スロット割当て済みの状況を記憶するとともに伝達すべき情報の基地局による受信に応答してその記憶を調べるメモリ手段を含む割当て手段と、
前記基地局圧縮器に接続され前記圧縮済みの順方向信号を前記順方向周波数チャンネルにそれら順方向信号の各々がその順方向周波数チャンネル内の一つの内の時間スロットを占める形で印加するように組み上げる信号コンバイナと、
前記基地局及び加入者局における送信機及び受信機であって前記基地局と加入者局との間の前記RFリンク経由の直接通信をもたらす送信機及び受信機と
を含む陸上無線ディジタル多元接続通信システムに用いる加入者局において、
前記第1の逆方向情報信号を第1の逆方向信号としてセット・アップするとともに圧縮解除器からの第2の順方向信号をユーザへの出力用の第2の順方向情報信号としてセット・アップするセット・アップ手段と、
前記セット・アップ手段に接続されそのセット・アップ手段からの前記第1の逆方向信号を圧縮して圧縮前の前記第1の逆方向信号と実質的に同じ情報信号を生ずるように基地局で再構成できる圧縮済みの逆方向信号を発生する信号圧縮器と、
前記セット・アップ手段に接続され前記基地局から前記RFリンクの前記順方向周波数チャンネル経由で受けた圧縮済みの順方向信号を圧縮解除するとともに前記第1の順方向信号と実質的に同じ情報信号をもたらす第2の順方向信号をセット・アップ手段用に発生する信号圧縮解除器と、
前記基地局との間の前記RFリンク経由の直接通信をもたらす送信機及び受信機とを含み、
前記順方向情報信号および逆方向情報信号の一方を割当てチャンネル/時間スロット経由で受信し、その割当てチャンネルから固定周波数幅だけずれた周波数およびその割当て時間スロットから同一時間スロット内における送信および受信の回避のための固定時間幅だけずれた時間スロットを前記順方向情報信号および逆方向情報信号の他方に自動的に提供する
加入者局。」

4.当審の取消理由(第29条第2項)について
(1)引用刊行物の記載内容
当審で通知した取消理由で引用した刊行物には、以下のような事項が記載されている。
[刊行物1:「電子通信学会論文誌(J64-B)第9号」(昭和56年9月25日 社団法人電子通信学会発行 第1016頁?第1023頁「TD-FDMA移動通信方式の検討」)(以下「引用例1」という。)]
引用例1は、「TD-FDMA移動通信方式の検討」に関する論文であって、その「あらまし」には、従来用いられてきた周波数分割マルチプルアクセス(FDMA)は、基地局送受信機台数の増加、高安定度の局部発振器の必要性などの幾つかの問題点を有し、これらの問題点を解決する一つの方法として、時分割マルチプルアクセス(TDMA)技術の導入を提案したものであり、大容量方式を構成するにはTDMAとFDMAを組み合わせたTD-FDMA方式とする必要があることが記載され、更に、「1.まえがき」の「更に、フレーム構成、回線制御技術など方式設計上の主要項目について検討し、大容量方式実現のためには、TDMAとFDMAを組み合わせたTD-FDMA方式とする必要があること、及び、その実現の可能性を示している。最後に、TD-FDMA移動通信方式の方式構成例を示している。」(第1016頁右欄第12行?第18行)および「4.3最適多重度」の「以上示したように多重度が4?8チャネル/1波であるので、大容量システムを構成するには多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTime and Frequency Division Multiple Access(TD-FDMA)とする必要がある。」(第1020頁右欄第36行?第40行)という記載からみて、「4.5方式および装置構成例」における図7に示される基地局の構成例は、多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTD-FDMA方式の基地局の構成例とみるのが自然である。
「伝送帯域の狭帯域化のために、音声符号化速度は低い方が望ましいが、音声符号化技術の現状からは、公衆通信としての品質確保が可能な符号化速度の限界は、ADM(適応デルタ変調)を採用するとして32kbit/s程度、APC(適応予測符号化)などの新技術を採用するとして16kbit/sと考えられる。」(第1020頁左欄第31行?右欄第2行)という記載からみて、図7の「Coder/Decoder」(符号器/復号器)は、順方向ディジタル化音声信号をそれぞれ圧縮して圧縮音声信号を生ずる複数の圧縮器、及び移動機から圧縮済みの逆方向信号を圧縮解除する圧縮解除器ということができる。
「TD-FDMA方式においてV-chを指定するためには、搬送波周波数とタイムスロットの両者を指定する必要がある。簡易な指定法の一つとしては、各搬送波ごとにシステムを群分割して各搬送波ごとに固有のP-chとA-chを設置しタイムスロットのみを指定する方法もあるが、この方法では分割により一つの群における指定可能なV-ch数が減少するため、V-chの使用効率が低下する。従って、搬送波周波数とタイムスロットを効率良く指定する方法を採用する必要がある。このためには、P-chとA-chが任意の搬送波とタイムスロットを指定可能な構成とする必要がある。P-ch及びA-chの設置法としては、図5に示すように(i)制御チャネル専用の搬送波を設ける方法、(ii)制御チャネル専用のタイムスロットを設ける方法、(iii)V-chを制御信号の伝送に用いる方法がある。」(第1021頁左欄第8行?第23行)、「TD-FDMA方式では、図6(TD-FDMAにおけるフレームフォーマット)に示すように下りのV-chには制御信号を付加することが可能であり、通話に何ら影響を与えることなく、通話中チャネル切換信号および、送信出力制御信号を伝送することが可能である。」(第1022頁左欄第8行?第12行)、及び「送信系では、CPUからの指示によりMultiplexerで信号速度変換(32kbit/s→160kbit/s)多重化を行い、制御信号を付加してフレームを構成する。」(第1022頁右欄第9行?第12行)という記載からみて、図7の「Multiplexer」(マルチプレクサ)は、圧縮音声信号を単一の送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられた周波数/スロットに配置して多重化するものである。
「交換機と制御装置(CPU)との間には制御線を設け、回線制御および多重化の指示はすべてCPUで行う。」(第1022頁右欄第7行?第9行)という記載からみて、制御装置(CPU)は、入来呼要求に応答して圧縮音声信号の占めるべき順方向のスロット及び周波数を指示するスロット/周波数割当て信号を発生しそれによって圧縮済みのディジタル化音声信号を前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の順方向のスロット及び周波数に割り当てるスロット/割当て信号発生手段ということができるものであり、図7の「Exchanger」(交換機)は、制御装置(CPU)により回線制御と多重化の指示がなされるから、電話網から複数の順方向ディジタル化音声信号を受けるとともに加入者局から少なくとも一つの逆方向ディジタル化音声信号を受ける複数の回線接続経路を備え、前記スロット/周波数割当て信号に応答して入来ディジタル化音声信号を前記圧縮器経由で前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられたスロットに経路づけするように所要の接続を前記交換手段に完結させる手段を備えるものである。
図7には、「Similar」とその下に点線が縦に引かれ、これは、「Multipulexer,Modulator,Tx.等」を複数組備えることを示すものであり、また、「図7に示される基地局の構成例は、多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTD-FDMA方式の基地局の構成例とみるのが自然である」という上記認定事項から、各Tx.(送信手段)は、前記順方向被変調搬送波を少なくとも一つの移動機にRF送信するものであり、各Modulator(変調器)は、前記順方向搬送波周波数の各々を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調して順方向被変調搬送波を生ずるものである。
「公衆通信では、加入者線がいったん交換局に集中し各加入者間に回線を設定する。公衆移動通信においても同様に、各移動機は基地局との間に回線を設定する。回線の設定および移動機の制御は基地局が行う。すなわち、基地局がマルチプルアクセスの指示を行う制御局、移動機が従局となる。・・・全移動機に同時に指示を行えるので、移動機は指示されたタイムスロットのみゲート選択することにより自分の信号を受信できる。従って、下り回線はTDMモード(放送モード)となる。」(第1018頁左欄第30行?右欄第4行)という記載において、上記回線は、周波数とスロットから構成されるものであるから、基地局は、前記スロット/周波数割当て信号を表す情報を前記移動機に送る手段を備えているといえる。
「同時送受話の公衆移動通信では、使用周波数帯域を基地局から移動機への回線(下り回線)に用いる帯域と、移動機から基地局への回線(上り回線)に用いる帯域に分離し、両回線の周波数間隔を一定とする2周波方式が用いられる。」(第1018頁左欄第36行?第40行)、「(2)上り回線 クロック非同期のTDMAであるため、情報部の構成は、ワード単位もしくはサブフレーム単位とせざるを得ないが、後述するように回線使用効率の点でサブフレーム単位が適する。通常は図3に示すように、情報部の先頭に搬送波再生用ビット、クロック同期用ビット及び、サブフレーム検出用ユニークワードとで構成されるプリアンブルを付加し、一つのサブフレームを構成しバースト信号として指定されたタイムスロットに送出する。」(第1019頁右欄第3行?第12行)及び「移動機では、ダイバーシチの形式は回路の簡易なアンテナ切換形とし、切換時に発生する雑音の通話への影響を避けるため、切換は指定されたタイムスロット以外の情報部を受信している時刻に行う。受信系では、指定タイムスロットの情報部のみ信号速度の変換を行い、復号器で音声へ変換する。送信系では音声を符号化した後信号変換を行い、制御部で発生したプリアンブルを付加し、指定のタイムスロットにバースト信号として送信する。」(第1023頁左欄第11行?第19行)という記載からみて、移動機は、前記逆方向ディジタル化音声信号を圧縮して逆方向圧縮音声信号を生ずる圧縮器と、基地局から圧縮済みの順方向信号を圧縮解除する圧縮解除器と、前記逆方向圧縮音声信号を送信チャンネル・ビット・ストリーム内の逐次的時間スロットに配置するチャンネル・コントローラと、前記逆方向搬送波周波数、すなわち前記順方向の割当て周波数から固定周波数幅だけずれた逆方向搬送波周波数を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調し逆方向被変調搬送波を生ずる変調器と、前記逆方向被変調搬送波を前記基地局にRF送信する送信機を備えているものといえる。
そうすると、引用例1には、
無線周波数(RF)電話システムの複数の順方向及び逆方向搬送波周波数であって各々が複数のスロットを含むとともにアナログ音声信号1チャンネル分の関連の所定の帯域幅を有する複数の順方向及び逆方向搬送波周波数に複数の音声信号チャンネルを形成するディジタル陸上通信システムであって、基地局及び移動機を含み、その基地局が、
電話網から複数の順方向ディジタル化音声信号を受けるとともに移動機から少なくとも一つの逆方向ディジタル化音声信号を受ける複数の回線接続経路と、
前記順方向ディジタル化音声信号をそれぞれ圧縮して圧縮音声信号を生ずる複数の圧縮器と、
前記圧縮音声信号を単一の送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられた周波数/スロットに配置して多重化するマルチプレクサと、
前記順方向搬送波周波数の各々を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調して順方向被変調搬送波を生ずる複数の変調器と、
前記順方向被変調搬送波を少なくとも一つの移動機にRF送信する送信機と、
前記ディジタル化音声信号を前記圧縮器の一つにそれぞれ導く交換手段と、
入来呼要求に応答して圧縮音声信号の占めるべき順方向のスロット及び周波数を指示するスロット/周波数割当て信号を発生しそれによって圧縮済みのディジタル化音声信号を前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の順方向のスロット及び周波数に割り当てるスロット/割当て信号発生手段と、
前記スロット/周波数割当て信号に応答して入来ディジタル化音声信号を前記圧縮器経由で前記送信チャンネル・ビット・ストリーム内の動的に割り当てられたスロットに経路づけするように所要の接続を前記交換手段に完結させる手段と、
前記スロット/周波数割当て信号を表す情報を前記移動機に送る手段とを含み、
前記移動機が、
前記逆方向ディジタル化音声信号を圧縮して逆方向圧縮音声信号を生ずる圧縮器と、
前記逆方向圧縮音声信号を送信チャンネル・ビット・ストリーム内の逐次的時間スロットに配置するチャンネル・コントローラと、
前記逆方向搬送波周波数、すなわち前記順方向の割当て周波数から固定周波数幅だけずれた逆方向搬送波周波数を前記送信チャンネル・ビット・ストリームで変調し逆方向被変調搬送波を生ずる変調器と、
前記逆方向被変調搬送波を前記基地局にRF送信する送信機と
を含むことを特徴とするディジタル陸上通信システム
が記載されている。

[刊行物2:「Digital Mobile Radio Telephone System Using TD/FDMA Scheme」 IEEE International Conference on Communications Denver Colorado, June 14-18 1981]
刊行物2は、上記刊行物1と同一の著者によるものであり、その内容は上記刊行物1と同様のTDMA無線システムに関するものであるが、移動局の構成についてさらに詳しいブロックダイアグラムが示されている。(Fig.5参照)

[刊行物3:特開昭60-32451号公報]
刊行物3には、TDMA無線システムにおいて、制御回路が多重変換回路及び集線装置を制御し、任意のタイムスロットを任意の加入者に接続可能とすることが記載されている。

[刊行物4:特開昭53-84603号公報]
刊行物4には、TDMA無線システムにおいて、空きチャネル情報を、機能チャンネルを介して加入者局に伝送し、加入者局側においてチャネルを選択可能としたものが記載されている。

[刊行物5:特開昭58-51635号公報]
「通話チャネルと制御チャネルとを用いる移動通信方式に於いて、基地側に前記各通話チャネルの帯域幅、帯域外制御信号の適用の可否等を示すチャネル種別情報を記憶するメモリを設け、前記基地側は前記メモリを参照して空通話チャネルの選択を行ない、該選択した通話チャネルのチャネル番号及びチャネル種別情報を前記制御チャネルにより移動機に送出することを特徴とする移動通信方式。」(特許請求の範囲)
「メモリM1,M2にはそれぞれ第2図に示すように、各通話チャネルが空であるか塞であるかを示す空塞情報、及び各通話チャネルのチャネル種別を示すチャネル種別情報が通話チャネル対応に記憶されているものである。」(第2頁左上欄第7行?第11行)
すなわち、刊行物5には、空きチャネル情報をメモリに記憶するようにし、空きチャネル情報を制御チャネルを介して移動局に伝送するようにしたものが記載されている。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
本件発明1と引用例1に記載の発明とを対比すると、
両者は、基地局と加入者局(引用例1に記載の発明においては「移動機」)との間における時間スロットを使用した通信に係るディジタル陸上通信システムという点において共通しているものの、
本件発明1が具備している、複数の順方向及び逆方向搬送波周波数の各々が「互いに同期した複数の時間スロットを含む」という構成を引用例1に記載の発明が具備していない点で相違している。
この相違点について検討すると、上記刊行物2ないし5には、上記相違点に係る構成について記載も示唆もないから、刊行物2ないし5の技術を刊行物1記載の発明に適用したとしても、上記の、複数の順方向及び逆方向搬送波周波数の各々が「互いに同期した複数の時間スロットを含む」ように構成することが容易想到であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1ないし5記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない

(2-2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4の各々と引用例1に記載の発明とを対比すると、
本件発明2ないし4の各々が具備している「各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行う」という構成を引用例1に記載の発明が具備していない点で相違している。
この相違点について検討すると、上記刊行物2ないし5には、上記相違点に係る構成について記載も示唆もないから、刊行物2ないし5の技術を刊行物1記載の発明に適用したとしても、上記の「各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行う」ことを構成することが容易想到であるとはいえない。
したがって、本件発明2ないし4は、上記刊行物1ないし5記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.異議申立人の申立理由について
異議申立人が提出した甲第1、2、5、6、7号証のそれぞれは、当審の取消理由において挙示した刊行物1ないし5と同じものであるので、上記各甲号証の記載内容については、4-(1)を参照。
そして、上記甲第3号証および甲第4号証においても、上記本件発明1における、複数の順方向及び逆方向搬送波周波数の各々が「互いに同期した複数の時間スロットを含む」という構成、および本件発明2ないし4における「各々が互いに同期した複数の時間スロットに分割されている複数の順方向周波数チャンネル及び逆方向周波数チャンネルによる前記局線と前記複数の加入者局との間の無線周波数(RF)リンク経由で順方向情報信号及び逆方向情報信号の同時伝送を行う」という構成については、記載も示唆もないから、本件発明1ないし4は、異議申立人が提出した上記甲第1ないし7号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2007-09-18 
出願番号 特願平9-236592
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 敏行佐藤 聡史  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 長島 孝志
橋本 正弘
登録日 1999-09-17 
登録番号 特許第2979064号(P2979064)
権利者 インターデイジタル テクノロジー コーポレーション
発明の名称 多重音声通信やデータ通信を単一又は複数チャンネルにより同時に行うための無線ディジタル加入者電話システム  
代理人 内原 晋  
代理人 萩原 誠  
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