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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
判定200260107 審決 特許
判定2007600042 審決 特許
判定200660062 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G09G
管理番号 1165604
判定請求番号 判定2007-600040  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-05-18 
確定日 2007-09-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第1613208号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号装置は、特許第1613208号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
判定請求書によると、本件判定請求の趣旨は、「イ号図面及びその説明書に示すイ号装置は、特許第1613208号における特許請求の範囲1,2,3,4の各発明の技術的範囲に属する、との判定を求める」ものである。

第2 本件特許発明
上記のとおり、請求人は、本件判定請求に係る特許第1613208号(以下「本件特許」という。)の発明を「特許請求の範囲1,2,3,4の各発明」としている。
しかしながら、本件特許の特許公報(特公平2-61759号公報)に掲載された明細書(以下「本件特許明細書」という。)をみると、特許請求の範囲第2項ないし第4項は、発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した特許請求の範囲第1項を直接又は間接的に引用する引用形式で記載されているから、特許請求の範囲第1項に係る発明の実施態様が記載された実施態様項であるということができる。(昭和62年法律第27号による改正前の特許法第36条第4項及び同法施行規則第24条の2を参照。)
そうすると、特許発明の技術的範囲は、発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した必須要件項の記載に基づいて定めるべきである(この点に関し、東京高裁判決(昭和61年10月15日言渡:昭和60年(行ケ)第49号)では「登録実用新案の技術的範囲も、・・・必須要件項の記載に基づいて定めるべきであり、実施態様項の記載は必須要件項の記載の解釈の資料となるに過ぎない。」と判示されているところである。)から、本件判定請求に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲第1項に係る発明(以下「本件特許発明」という。)とする。
そして、本件特許発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものであり、これを構成要件毎に分説すると次のとおりとなる。

A:プログラム可能の計算手段(A-1)、文字図形データを記憶するメモリ手段(A-2)および文字図形を表示する表示手段(A-3)をそれぞれ有する複数個の図形表示装置
B:並びにそれら複数個の図形表示装置を並列に制御する制御装置を備え、
C:各前記表示手段の表示面を2次元的に密接配置してマルチスクリーンを構成するとともに、
D:前記制御装置により前記計算手段をそれぞれ介して前記メモリ手段を分散管理する
E:ことにより、前記マルチスクリーンを一体にして少なくとも1枚の表示画面として取扱い得るようにした
F:ことを特徴とするマルチスクリーン図形表示装置。

第3 イ号装置
判定請求書の「6.請求の理由」の「(1)判定請求の必要性」によると、請求人は、判定を請求するイ号装置を、被請求人が製造販売する「マルチスクリーン図形表示装置」であるとしている。
しかしながら、判定請求書並びにそれに添付されたイ号図面及びその説明書には、上記「マルチスクリーン図形表示装置」を特定するために必要な名称(製品名、形式名又は機器名)、及び、製造又は販売の事実の有無について明らかにされていない。
そこで、判定請求書に添付された甲各号証について検討する。
判定請求書によると、甲第8号証は、「ウインドウイング」という語が本件特許発明の出願時に技術用語として確立したものであることを主張するために挙げたもの(第53頁第14行?第18行を参照。)であると解されるし、また、甲第9号証?甲第12号証は、請求人が本件特許発明の有効性を主張するために挙げたもの(判定請求書の「6.請求の理由」の「(7)本件特許発明の有効性について」の項を参照。)であると解されるから、請求人がイ号装置を特定するために挙げたものは、以下の甲第1号証?甲第7号証及び甲第13号証?甲第14号証と認められる。

甲第1号証:平成12年9月26日付け「京都大学総合情報メディアセンター殿向け9面マルチPDPシステム 試験成績書」、株式会社富士通ゼネラル

甲第2号証:「42型ワイドプラズマディスプレイ 形名PDS4211J PlasmavisionW 取扱説明書」、株式会社富士通ゼネラル

甲第3号証:「42型で世界初!全世界のコンシューマ市場対応ディスプレイ プラズマビジョンW 新商品発表資料」、株式会社富士通ゼネラル広報宣伝部(NO.99-N10-11)、平成11年4月20日

甲第4号証:相田徹 他、「画素変換フィルタの一構成法」、FUJITSU GENERAL TECHNICAL JOURNAL 1999 No.2、p.3-8

甲第5号証:「システム仕様書」、平成12年
なお、甲第5号証の最終頁は、「日付」が「00/09/08」、「件名」が「京都大学総合情報メディアセンター殿」、「図名称」が「システム系統図(1F)」、「図番」が「KYC-AVLI」であって、欄外に「株式会社富士通ゼネラル」と記載された図(以下「システム系統図」という。)となっている。

甲第6号証:「京都大学向けPDPマルチシステム マルチパネル制御ユーティリティ Step1 操作説明書」、株式会社富士通ゼネラル、2000年7月、第1版

甲第7号証の1:IC基板の写真

甲第7号証の2:「PDS4211Jディジタル基板のIC配置図」

甲第13号証:「京都大学総合情報メディアセンターエントランスホール9面マルチPDPシステム操作説明書」

甲第14号証:「“アルビクス”・RS-232Cマルチプレクサ MUXシリーズ 取扱説明書 Ver.No.1.0」、株式会社本宏製作所アルビスク事業部

これらのうち、甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第13号証に「京都大学総合情報メディアセンター殿向け9面マルチPDPシステム」、「マルチPDPタッチパネル制御システム」、「京都大学向けPDPマルチシステム」「京都大学総合情報メディアセンターエントランスホール9面マルチPDPシステム」などと記載されていることからみて、本件特許の登録の抹消前の平成12年9月26日に被請求人による構成員数検査、外観・構造検査、寸法検査及び各機器を仮接続しての動作確認試験がなされ(甲第1号証を参照。)、請求人の施設である京都大学総合情報メディアセンター(なお、「沿革/京都大学学術情報メディアセンター」のウェブサイト< http://www.media.kyoto-u.ac.jp/about/history.php >によると、京都大学総合情報メディアセンターは、平成14年4月に京都大学学術情報メディアセンターに改組されている。)のエントランスホール(甲第13号証第1頁を参照。)に設置されたと認められる、「総合形式名」が「HE-INF0130」、「総合機器名」が「京都大学総合情報メディアセンター殿向け9面マルチPDPシステム」(甲第1号証第2/5頁を参照。)の装置について判定を求めていると解されるから、これを判定請求に係るイ号装置とする。

そして、当審では、甲第1号証?甲第3号証、甲第5号証?甲第6号証及び甲第13号証?甲第14号証に記載された事項の範囲で、イ号装置の構成を次のとおりに認める。

a:各プラズマディスプレイが、RS-232C端子からの制御信号が入力されてプラズマディスプレイの動作全般を制御する処理回路(a-1)、画面メモリ(a-2)及びプラズマディスプレイパネル(a-3)をそれぞれ有する、9個のプラズマディスプレイと
b:前記9個のプラズマディスプレイを前記RS-232C端子を介して並列に制御する制御装置を備え、
c:前記プラズマディスプレイパネルの表示面を2次元的に密接配置してマルチスクリーンを構成するとともに、
d:前記制御装置は、外部端子盤のRGB入力端子から入力されるRGB信号をRGB分配器により前記9個のプラズマディスプレイのRGB入力端子に分配して、
e:前記マルチスクリーンを一体にして1枚の表示画面として取扱い得るようにした
f:9面マルチPDPシステム。

ここで、上記イ号装置の構成は、下記の1?5に挙げたように検討したことにより認めたものである。

1 構成aについて
(1)システム系統図には「9面PDP表示機」が記載され、また、甲第1号証第3/5頁の「1.構成員数検査」の項に、「No.」が「1」の欄に、「品名」が「42インチプラズマディスプレイ」、「型式名」が「PDS4211J-H」及び「員数」が「9」と記載されているから、イ号装置は「9個のプラズマディスプレイ」を備えるものである。

(2)上記プラズマディスプレイが制御端子としてRS-232C端子を有することは、「PDS4211J」の取扱説明書である甲第2号証及び機種名に「PDS4211J-H」を含む「プラズマビジョンW」の新製品発表資料である甲第3号証の記載からみてとれる。
ここで、甲第3号証の「3:PCから電源オン・オフや入力モード切替が可能なリモート制御機能」(第4頁下から4行)という記載、甲第2号証の「システム化に対応 RS-232Cにより遠隔制御ができます。」(第6頁第18行?第19行)及び「RS-232C端子(RS-232C) パソコンで本機を制御するための端子です。パソコンのRS-232C端子と接続します。」(第12頁第6行?第7行)という記載、並びに甲第6号証の「PDPの起動・・・操作 1)MPCの「電源ON」ボタンを押します。すると、「電源ON」ボタンの色が変わり、PDPの電源が約1秒間隔・・・で左上のパネルから順に1台ずつ入っていきます。」(第5頁第1行?第10行)、「PDPの終了 操作 1)MPCの「電源OFF」ボタンを押します。すると、「電源OFF」ボタンの色が変わり、PDPの電源が約1秒間隔・・・で左上のパネルから順に1台ずつ切れていきます。」(第8頁第3行?第7行)、「○Audio設定画面(未使用) この画面はPDPのAudio関係を設定する画面です。」(第12頁第1行?第2行)、「○FAN設定画面 この画面はPDPの冷却FANの速度を設定する画面です。」(第13頁第1行?第2行)及び「○映像取込位置設定画面 この画面は映像の取込位置を設定する画面です。・・・〔1〕映像取込位置(水平)調整バー 〔2〕映像取込位置(垂直)調整バー 〔3〕水平サンプル数調整バー」(第14頁参照。なお、丸数字は亀甲括弧付きの数字に置き換えた。)という記載等からみて、上記プラズマディスプレイのRS-232C端子に入力される制御信号には、電源オン・オフを行うための回路の制御、入力モードの切替(甲第2号証第19頁の記載からみて、複数入力される映像信号の選択に相当する。)を行うための回路の制御、Audio関係の設定を行うための回路の制御、冷却FANの速度を設定するための回路の制御及び映像取込位置を設定するための回路の制御等、種々の制御項目が含まれるということができるから、当該制御信号は、プラズマディスプレイの動作全般を制御するための処理回路に入力されると解すべきである。
そうすると、上記「9個のプラズマディスプレイ」の「各プラズマディスプレイ」は「RS-232C端子からの制御信号が入力されてプラズマディスプレイの動作全般を制御する処理回路」(構成a-1)を有していると解すべきである。
なお、この点について、判定請求書に添付されたイ号図面においては、後述するようにRS-232C端子からの信号が直接映像信号プロセッサに入力されるように記載されているが、上記のとおり電源オン・オフ等を制御項目に含むような制御信号が、デジタル映像信号プロセッサのように映像信号処理に特化されているとみられるプロセッサに直接入力されると認定することはできない。

(3)上記プラズマディスプレイがRGB各256階調で表示可能なものであることは甲第2号証及び甲第3号証に記載されているところ、CRTのような振幅変調による階調表示が原理上できないプラズマディスプレイにおいては、256階調表示を行うために1フレーム期間を8つのサブフィールドに分割するサブフィールド方式による駆動を行うことが一般的であって、当該サブフィールド方式による駆動を行うには、1画面分の画像データを一時的に記憶するための画面メモリが必要であることは周知の事項であるから、上記「9個のプラズマディスプレイ」の「各プラズマディスプレイ」は「画面メモリ」(構成a-2)を有していると解すべきである。

(4)上記プラズマディスプレイにおける表示デバイスがプラズマディスプレイパネルであることは当然であるから、上記「9個のプラズマディスプレイ」の「各プラズマディスプレイ」は「プラズマディスプレイパネル」(構成a-3)を有するものである。

(5)したがって、イ号装置は「各プラズマディスプレイが、RS-232C端子からの制御信号が入力されてプラズマディスプレイの動作全般を制御する処理回路(a-1)、画面メモリ(a-2)及びプラズマディスプレイパネル(a-3)をそれぞれ有する、9個のプラズマディスプレイ」(構成a)を備えるものであるということができる。

2 構成bについて
システム系統図には「コントロールPC」及び「PDPマルチパネル制御BOX」が記載されているところ、これらにそれぞれ対応するものとして、甲第1号証第3/5頁の「1.構成員数検査」の項に、「No.」が「9」の欄に「品名」が「制御パソコン(モニター付き)」及び「型式名」が「6862-W8J」と記載され、また、「No.」が「2」の欄に「品名」が「PDP制御装置」及び「型式名」が「MUX-12」と記載されている。
ここで、上記「MUX-12」とは、甲第14号証に記載された「“アルビクス”・RS-232Cマルチプレクサ MUXシリーズ」のうちの「MUX-12」(甲第14号証第25頁を参照。)のことを指すと解されるところ、甲第14号証には、上記の「“アルビクス”・RS-232Cマルチプレクサ MUXシリーズ」が、1つの「(3)マスターチャンネルコネクター」と複数の「(4)スレーブチャンネルコネクター」とを有すること(第3頁を参照。)、及びその使用例として「パソコンとマルチプレクサをマスターチャンネルで接続し、スレーブチャンネル#2、3、4、5に制御する機器を接続」すること(第10頁第1行?第2行を参照。)が記載されている。
また、甲第6号証にも「2.4 MPCからの制御がPDPに反映されない ・RS232Cケーブルは正しく接続されていますか? パソコンとRS232Cマルチプレクサ間、RS232CマルチプレクサとPDP間それぞれの部分で、正しく接続されていることを確認してください。」(第23頁下から第8行?下から第5行)と記載されている。
これらを踏まえて、システム系統図の「コントロールPC」、「PDPマルチパネル制御BOX」及び「9面PDP表示機」の接続関係をみると、RS-232Cマルチプレクサである「PDPマルチパネル制御BOX」は、そのマスターチャンネルコネクターと「コントロールPC」のRS-232C端子とをRS-232Cケーブルで接続するとともに、その9個のスレーブチャンネルコネクターと9個のプラズマディスプレイの各RS-232C端子とをRS-232Cケーブルで接続していると認められるから、「コントロールPC」及び「PDPマルチパネル制御BOX」は、プラズマディスプレイのRS-232C端子を介して9個のプラズマディスプレイを並列に制御するものであると認められる。
したがって、イ号装置は「前記9個のプラズマディスプレイを前記RS-232C端子を介して並列に制御する制御装置」(構成b)を備えるものであるということができる。

3 構成c,e,fについて
システム系統図をみると、「9面PDP表示機」について、各プラズマディスプレイのプラズマディスプレイパネルの表示面を2次元的に密接配置してマルチスクリーンを構成することが読みとれる。
したがって、イ号装置は「前記プラズマディスプレイパネルの表示面を2次元的に密接配置してマルチスクリーンを構成する」(構成c)ものであるということができる。
また、甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第13号証の記載からみて、イ号装置が「前記マルチスクリーンを一体にして1枚の表示画面として取り扱い得るようにした」(構成e)「9面マルチPDPシステム」(構成f)であることも明らかである。

4 構成dについて
システム系統図をみると、「外部端子盤」における「RGB IN」に入力されたRGB信号は、「RGBセレクタ」及び「RGB分配器」を経て、「9面PDP表示機」にそのまま送られることが読みとれる。
そして、甲第2号証及び甲第3号証の記載から、各「PDS4211J」にRGB入力端子が設けられていることも明らかである。
したがって、イ号装置は、「前記制御装置は、外部端子盤のRGB入力端子から入力されるRGB信号をRGB分配器により前記9個のプラズマディスプレイのRGB入力端子に分配して」(構成d)いるものであるということができる。

5 イ号図面及びその説明書の採否について
なお、イ号装置の構成の認定にあたっては、判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書は採用の限りではないと判断した。その理由は以下のとおりである。

(1)イ号図面及びその説明書の的確性
判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書の第1頁?第4頁には、「(1)」?「(4)」の4つの図が記載されており、以下順に「イ号図面1」?「イ号図面4」という。

ア イ号図面2について
イ号図面2は「IC基板の写真から作成したIC配置図」とされており、この図は、甲第7号証の2の図とほぼ同様のものである。
ここで、甲第7号証の2の図について、判定請求書には「甲第7号証の1,2は、イ号装置のデジタル基板(PDS4211Jデジタル基板)の写真及びそれを基にして請求人において作成したIC配置図である。IC配置図では、写真中のICの種別及び各ICの配置並びに各ICの接続を写真に沿ってほぼ正確に画いている。」(第21頁下から2行?第22頁第3行)と記載されている。
しかしながら、甲第7号証の1の写真が、PDS4211Jデジタル基板の写真であるという根拠はどこにも示されていないし、仮にそうであったとしても、甲第7号証の1の写真からはICの種別(型番)及び各ICの接続を把握することはできない。特に、各ICの接続についていえば、上記写真の基板の裏面に実装され得るICの存否が不明であり、当該裏面における配線(基板が多層基板であるとすれば中間層の配線も含む。)がどのようになっているのかも不明である以上、上記写真からだけで把握することは困難であるというべきである。
したがって、甲第7号証の2の図の記載に基づくイ号図面2は、イ号装置を的確に記載したものとはいえない。

イ イ号図面1について
イ号図面1には「イ号装置を本件特許発明のブロック図に対応させて記載すると次の通りである。本ブロック図は、甲第5号証のシステム図を参照して甲各号証を総合的に検討して作成した。」と付記され、ここでいう「甲第5号証のシステム図」とは、システム系統図を指していると認められる。
そこで、イ号図面1とシステム系統図とを対比すると、イ号図面1では「制御装置1」と「LAN」及び「RGB」で接続された「親計算機22」が記載されているのに対し、システム系統図には「親計算機22」に相当するものが記載されていない。
仮に、システム系統図の「外部端子盤」における「RGB IN」にRGB信号を出力するものが計算機であるとしても、システム系統図にはLANの端子が記載されていないから、当該計算機と「コントロールPC」とはLANで接続されるものではない。
また、イ号図面1では「RS-232Cマルチプレクサ」と各「PDS4211J」内の「デジタル映像信号プロセッサ」とが直接接続されているのに対し、システム系統図からはそのようなことは読みとれない。
なお、イ号図面1に記載された各「PDS4211J」内の構成は、イ号図面2のIC配置図に準じていると考えられるが、既に検討したとおり、イ号図面2がPDS4211Jのデジタル基板の回路を的確に記載したものといえないから、「RS-232Cマルチプレクサ」と各「PDS4211J」内の「デジタル映像信号プロセッサ」とが直接接続されているかは明確ではない。
したがって、イ号図面1は、イ号装置を的確に記載したものとはいえない。

ウ イ号図面3、4について
イ号図面3は「イ号装置の画像データ処理を示すフローチャート 全体のフローチャート」とされている。
ここで、上記「(2)イ号図面1について」で検討したとおりイ号装置には「親計算機22」に相当するものが存在しないから、イ号図面3の「step3」の記載のうち「親計算機(22)から指令された全体図形データを作成し」の部分は、イ号装置について記載したものではない。
また、判定請求書には「ウインドウイング」について『「ウインドウイング」の語意については、甲第8号証の双方向コンピュータグラフィックの原理(第2版)の抜粋中に記載されているように、本件特許発明の出願時に技術用語として確立したものであった。このように、ウインドウイングは各図形表示装置が表示を担当する部分の図形データのみを切り出すことを指称する。』(第53頁第14行?第18行)と記載され、イ号図面3の「step4」には「各デジタル映像信号プロセッサ(2,5,8,11)は、命令された表示部分の図形をウインドウイングする」と記載され、イ号図面4の「step4」にも「ウインドウイング 高精細拡大/縮小フィルタ処理」と記載されているが、デジタル映像信号プロセッサが「ウインドウイング」つまり図形データの切り出しを行っているとする根拠が不明である。
したがって、イ号図面3、4は、イ号装置を的確に記載したものとはいえない。

エ イ号図面の説明書について
イ号図面の説明書は、イ号図面1?4の記載に基づいて説明されているから、少なくとも上記ア?ウで挙げた点と同様の点でイ号装置を的確に記載したものとはいえない。

(2)まとめ
したがって、判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書は、少なくとも上記の点で、判定請求に係るイ号装置を的確に記載したものであるとはいえないから、上記イ号装置の認定に供することができない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、当審による答弁指令に対して、その指定期間内に何らの答弁もしなかった。

第5 判定請求についての当審の判断
1 本件特許発明の技術的範囲の検討
イ号装置と本件特許発明との対比に先立ち、まず、本件特許発明の技術的範囲について検討する。

(1)本件特許発明の明確性
本件特許発明の構成要件Dは「前記制御装置により前記計算手段をそれぞれ介して前記メモリ手段を分散管理する」というものであるが、「介して」及び「分散管理」の意味が明確ではない。
そして、この点が明確ではないから、本件特許発明においては、構成要件A-2の「メモリ手段」に記憶される文字図形データがどのような処理を経て記憶されるものであるのか、具体的には、制御装置から各図形表示装置の計算手段に対して供給されるデータ信号がどのようなものであり、計算手段が制御装置から供給されたデータ信号をどのように処理して、メモリ手段に記憶される文字図形データとするのか明確ではない。
したがって、本件特許発明の構成要件Dについては、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して解釈することとする。(特許法第70条第2項を参照。)

(2)本件特許明細書の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には次の事項が記載されている。

ア 「(従来技術)従来の図形表示装置を大別すると、デイジタル方式のものとアナログ方式のものとに区分することができる。そのうち、デイジタル方式の図形表示装置は、通例、表示面に表示すべき画像データを画像メモリに記憶しておき、その画像データを画像メモリから繰返し読出して陰極線管等を用いた表示装置の表示面に所望の画像乃至図形を表示する。しかして、かかる態様の図形表示に際して、画面にちらつきのない表示を行なうには、毎秒30回程度の頻度にて画像メモリから画像データを読出して表示面に表示する必要がある。したがつて、高解像度の図形表示を行なうためには、高速読出しの可能な画像メモリと周波数帯域の広い図形表示装置とを用いる必要があり、表示可能な図形の解像度がそれら使用する装置の性能によつて制限される、という欠点があつた。一方、アナログ方式の図形表示装置には、複数台の画像モニタを2次元的に密接配置して、全体として1枚の大画面を表示し得るようにしたものがあるが、かかる構成の図形表示装置においては、個々の画像モニタ自身は図形信号の発生あるいは記憶等の図形処理機能を備えておらず、複数台の画像モニタにそれぞれ表示すべき図形信号の処理乃至管理は別途設けた画像処理装置によつて集中的に行なわれていた。したがつて、個々の画像モニタの画面にそれぞれ表示して互いに連続した図形を表示し得るようにあらかじめ処理した図形信号を作成してVTRやビデオデイスク等の再生可能な画像記録装置に格納しておき、その画像記録装置から再生した図形信号を区分して各画像モニタにそれぞれ表示させれば、連続した1枚の大画面による図形表示を行なうことができた。しかしながら、操作者が計算機との対話によつて図形信号を作成する計算機援用設計にかかる従来のアナログ式図形表示装置を適用した場合には、次に表示すべき図形信号を予測することは困難であり、操作者からの指示に基づき、表示すべき図形信号を実時間にて作成して、それぞれの画像モニタに分割表示させるための信号処理を前述したように別途設けた画像処理装置によつて集中的に行なう必要があつた。したがつて、表示図形の所要の大きさに応じて画像モニタの使用台数が増大すると、実用的な応答速度にて対話的に図形を作成することが困難になつた。このように、大画面を構成する個々の図形表示装置が図形処理機能を備えておらず、所要の図形信号処理を別途設けた画像処理装置によつて集中的に行なう必要がある従来のアナログ式図形表示装置には、この種画像処理装置の処理能力に制限があるために、応答速度の点にて実用上実現可能な範囲の表示図形の解像度が限定されるという欠点があつた。」(特許公報第3欄第4行?第4欄第11行)

イ 「本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去し、マルチスクリーンを構成する個々の図形表示装置に備えた画像メモリや表示手段の能力を超えた高解像度の図形表示を実時間にて達成し、マルチスクリーン全体にて有機的に図形表示を行ない得るとともに、上述した個々の構成要素の能力の点から従来は実現不可能であつた超高解像度グラフイツクスを効率よく実現し得るマルチスクリーン図形表示の装置および方法を提供することにある。」(同第4欄第13行?第22行)

ウ 「かかる目的にてなした本発明は、システムの構成者や利用者にとつてプログラマブルな計算機により個々に制御し得るとともに画像メモリを個々に内蔵した図形表示装置を複数台組合わせ、・・・制御装置によりそれぞれ制御してそれぞれの内蔵した画像メモリを一体として管理することにより、マルチスクリーン全体を1枚もしくは複数枚の表示画面として有機的に取扱い得るようにするとともに、個々の図形表示装置に図形データの発生・記憶等の図形処理機能を分散的にもたせ、全体として図形処理の効率を高めるようにしたものである。」(同第4欄第23行?第40行)

エ 「本発明マルチスクリーン図形表示装置は、・・・特に、電子計算機の端末や計算機援用設計におけるワークステーシヨン等に使用するに極めて好適のものである。」(同第4欄第41行?第5欄第11行)

オ 「表示計算機2,5,8,11はシステムの構成者や利用者にとつてプログラマブルなプログラム制御計算機、マイクロプログラム制御計算機もしくはデータ駆動型計算機よりなり」(同第5欄第22行?第25行)

カ 「各表示計算機2,5,8,11には、回線18を介して制御装置1から供給される図形データに基づき、図形信号発生等の図形処理を行なうためのプログラムを格納してある。」(同第5欄第39行?第42行)

キ 「制御装置1は、親計算機1、あるいは、キーボード19、タブレツト20、マウス21によつて入力される各種の指令や図形データ、さらには、制御装置1の内部にあらかじめ設定してあるパラメータに基づき、回線18を介し、各図形表示装置14,15,16,17に対して、マルチスクリーンに表示する全画面のうち、それぞれの表示面に表示すべき部分図形の指定を行なう。」(同第6欄第7行?第15行)

ク 「制御装置1は、親計算機22あるいは操作者からの指令に基づき、各図形表示装置内の表示器4,7,10,13が構成するマルチスクリーン全体を単一の表示面と見做して表示すべき図形のデータを作成し、その図形データを各図形表示装置14,15,16,17に並列に転送する。」(同第6欄第15行?第21行)

ケ 「各図形表示装置14,15,16,17においては、それぞれに内蔵した表示計算機2,5,8,11により回線18を介して転送されて来た上述の図形データを読取り、それぞれ表示を相当(当審注、「担当」の誤記であると解される。)する部分の図形データのみを切り出すいわゆるウインドウイングのデータ処理をそれぞれ行ない、それぞれ切り出した部分の画像データから表示可能の形態の図形信号を形成し、各自の画像メモリ3,6,9,12に書込んで記憶保持したうえで、繰返し読出して各自の表示器4,7,10,13の表示面上にそれぞれ表示する。」(同第6欄第21行?第32行)

コ 「各表示器による部分的図形表示が各図形表示装置毎に分散的に行なわれるので、マルチスクリーン全体として、個々の画像メモリ自体や個々の表示器自体の能力を超えた高解像度の図形表示を実時間にて迅速に行なうことが可能となり、従来、各構成要素自体の能力によつて築かれていたテクノロジーの壁を打破して、従来装置によつては到底実現不可能な超高解像度グラフイツクスの実現も可能となる。」(同第7欄第10行?第8欄第4行)

(3)判断
上記「(1)本件特許発明の明確性」において、本件特許発明が明確ではないとした点、すなわち、制御装置から各図形表示装置の計算手段に対して供給されるデータ信号がどのようなものであり、計算手段が制御装置から供給されたデータ信号をどのように処理してメモリ手段に記憶される文字図形データとするかについて、上記摘記事項ア?コを含め、本件特許明細書の発明の詳細な説明にも、明示的には記載されていない。
そこで、この点について、本件特許発明が達成しようとする目的を参酌しつつ論ずる。
上記摘記事項アによると、従来のデイジタル方式の図形表示装置においては、表示面に表示すべき画像データが記憶される画像メモリの読出し性能により表示図形の解像度が制限されるという欠点があり、また、従来のアナログ方式の図形表示装置においては、所要の図形信号処理を集中的に行う画像処理装置の処理能力により、表示図形の解像度が限定されるという欠点があったとされている。
そして、上記摘記事項イによると、本件特許発明の目的は、上記の従来の欠点を除去し、高解像度の図形表示を実時間にて達成するというものである。
ここで、図形表示装置において、画像メモリからの読出し又は画像処理装置における処理の頻度(フレームレート)は、一般に固定した値(例えば、「毎秒30回」(上記摘記事項アを参照。))とされるから、画像1枚(1フレーム)あたりのデータ量は、画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により制限されることになる。
また、上記1枚の画像を描画するための文字図形データのデータ形式としては、一般的に文字図形を点の集合で表現するラスタデータ(ビットマップデータ)、文字図形を点の座標データ及び描画属性(直線描画、曲線描画、閉図形描画等)により表現するベクトルデータ、及び、文字図形のラスターデータ又はベクトルデータをキャラクタジェネレータから読み出すためのキャラクタコードの3種類をもって、その全てのデータ形式が想定されるところ、これらデータ形式が異なると、文字図形データのデータ量と、当該文字図形データに基づいて描画される文字図形の解像度(画面上の点の数)との関係も異なるものとなる。
そうすると、本件特許発明が、上記のとおり表示する文字図形の解像度が画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により制限されるという従来の欠点を除去することを目的としている以上、本件特許発明において、制御装置が作成し、各図形表示装置の計算手段に対して供給する文字図形データについて、そのデータ形式がどのようなものとされているのかを検討しなければならない。
そこで、上記文字図形データのデータ形式が、ラスタデータである場合、ベクトルデータである場合及びキャラクタコードである場合のそれぞれについて、以下に検討する。

ア ラスタデータ
ラスタデータは、上記のとおり文字図形を点の集合で表現するものであって、一般に解像度とデータ量とは比例関係にあり、文字図形の解像度が高解像度になるにしたがってデータ量も増大することになるから、上記の従来の技術において、画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により表示図形の解像度が制限されるのは、記憶する画像データ又は処理する画像データが、解像度とデータ量とが相関関係にあるラスタデータであるという理由によるものと解される。
このことを踏まえて、本件特許発明において、制御装置が作成し各図形表示装置の計算手段に供給する文字図形データのデータ信号が、ラスタデータに係るものであるとすると、その文字図形データのデータ信号は「各図形表示装置14,15,16,17に並列に転送」(上記摘記事項クを参照。)されるのであるから、たとえ制御装置が転送した後のラスタデータについては各図形表示装置における画像メモリに分散して記憶されるのだとしても、制御装置には、転送する前のマルチスクリーン全体の画像のラスタデータを記憶する画像メモリ又は転送する前のマルチスクリーン全体の画像のラスタデータについての所要の画像処理(画像作成)を集中的に行う画像処理装置を設ける必要が生じることになるということができる。(なお、上記「マルチスクリーン全体の画像のラスタデータ」は、マルチスクリーン全体の解像度を有する画像のラスタデータであって、各図形表示装置がそれぞれ表示を担当する部分の画像をそれぞれ拡大表示することを前提とした画像(上記マルチスクリーン全体の解像度を有する画像よりも小さい解像度の画像)のラスタデータではない。この点に関しては、判定請求書にも「甲第12号証・・・では、メインメモリの情報量は固定されており、この情報量を分割してこれを拡大バッファメモリで数倍に拡大してブラウン管に表示するとすれば、その分割する分だけ各ブラウン管のそれぞれに表示される情報量は希釈化されてしまい高解像は得られない。これに対して、本発明では・・・情報の希釈化が生じることなく超高解像度が得られる。」(第72頁第4行?第10行)と記載されているところである。)
しかしながら、そのような制御装置に設けられるべき画像メモリ又は画像処理装置は、記憶する画像データ又は処理する画像データがラスタデータである以上、上記従来の技術と同様の理由で上記転送する前のマルチスクリーン全体の画像の解像度が制限されることになるから、本件特許発明の目的、すなわち、画像メモリの読出し性能又は所要の図形信号処理を集中的に行う画像処理装置の処理能力により表示図形の解像度が制限されるという従来の欠点を除去することは達成できないといえる。
なお、上記摘記事項クの記載から、親計算機が設けられる場合であっても、親計算機からの指令に基づいて制御装置が文字図形データを“作成”するものであると解すべきであるが、特許請求の範囲第4項の「電子計算機からの文字図形データを前記制御装置を介して前記複数個の図形表示装置に供給する」という記載から、親計算機自体がマルチスクリーン全体に表示すべきラスタデータを作成して制御装置に供給し、制御装置は単に当該供給されたラスタデータをそのまま各図形表示装置に並列に転送する場合を含むのであると解釈しても、親計算機内に従来のものと同様の画像メモリ又は画像処理装置を設けざるをえず、それらの能力により表示図形の解像度が制限されるから、やはり本件特許発明の上記目的を達成することはできないといえる。
また、上記摘記事項キに「制御装置1は、・・・各図形表示装置14,15,16,17に対して、マルチスクリーンに表示する全画面のうち、それぞれの表示面に表示すべき部分図形の指定を行なう。」と記載されているが、図形単位のデータ構造となっているベクトルデータとは異なり、一般にラスタデータにおいては、特定の図形を指定することは困難であるといえる。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載、特に発明の目的に関する記載を参酌すると、本件特許発明において、制御装置から各図形表示装置の計算手段に対して供給されるデータ信号として、ラスタデータに係るデータ信号は含まれないと解釈すべきである。

イ ベクトルデータ
上記摘記事項ア及びエに記載されている「計算機援用設計」において、通常、文字図形データとしてベクトルデータが使用されることは周知の事項である。
そして、ベクトルデータは、上記のとおり文字図形を点の座標データ及び描画属性により表現するものであって、そのデータ量は、最終的に描画される文字図形の解像度には依存しないものである。
してみると、本件特許発明において、制御装置に設けられるべき画像メモリが記憶する画像データ又は画像処理装置が処理する画像データをベクトルデータであるとすると、表示図形の解像度が画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により制限されることはないから、本件特許発明の上記目的を達成することができるということができる。
ここで、ベクトルデータは、ラスタデータとは異なりそのままでは一般的なラスタスキャン型の図形表示装置で表示することができないものの、「システムの構成者や利用者にとつてプログラマブルなプログラム制御計算機、マイクロプログラム制御計算機もしくはデータ駆動型計算機」(上記摘記事項オを参照。)であって「図形信号発生等の図形処理を行なうためのプログラムが格納してある」(上記摘記事項カを参照。)ものである計算手段が、制御装置から供給されるベクトルデータに基づいて「表示可能の形態の図形信号を形成」(上記摘記事項ケを参照。)する(例えば、ラスタライズ(ラスタデータに変換)する)と解釈することが可能である。
また、計算手段は「それぞれ表示を担当する部分の図形データのみを切り出すいわゆるウインドウイングのデータ処理」(上記摘記事項ケを参照。)をも行うものであるが、ベクトルデータのウインドウイングは、本件特許の出願時において周知(例えば、米国特許第3639736号明細書(特に明細書第2欄第1行?第13行)、特開昭47-45143号公報(特に第2頁左上欄第9行?第19行)又は特開昭54-104741号公報を参照。)であるから、本件特許発明の計算手段がベクトルデータのウインドウイングを行うものであると解釈することに何ら矛盾はないというべきである。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して、本件特許発明における構成要件A-2のメモリ手段に記憶される文字図形データは、制御装置が作成し供給するベクトルデータに係るデータ信号を計算手段がウインドウイングして表示可能な形態に変換したものを含むと解釈すべきである。

ウ キャラクタコード
上記摘記事項ア及びエに記載されている「計算機援用設計」において、文字図形データとして上記ベクトルデータ以外にキャラクタコードが使用されることも周知の事項である。
そして、キャラクタコードは、上記のとおり文字図形のラスターデータ又はベクトルデータをキャラクタジェネレータから読み出すためのものであって、そのデータ量が最終的に描画される文字図形の解像度に依存しない点で上記ベクトルデータと同様であるから、本件特許発明において、制御装置に設けられるべき画像メモリが記憶する画像データ又は画像処理装置が処理する画像データをキャラクタコードであるとしても、表示図形の解像度が画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により制限されることはなく、本件特許発明の上記目的を達成することができるということができる。
ここで、キャラクタコードは、そのままでは図形表示装置で表示することができないが、制御装置から供給されるキャラクタコードに基づいて、計算手段がキャラクタジェネレータとして動作し表示可能の形態の図形信号を形成すると解釈することが可能である。
また、キャラクタコードを使用した文字又は図形の表示において、表示すべき領域内のみのキャラクタコードを取り出す(切り出す)ことは、例えば文書のスクロール表示の際に行われており慣用技術に過ぎないから、本件特許発明の計算手段がキャラクタコードのウインドウイングを行うものであると解釈することに何ら矛盾はないというべきである。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して、本件特許発明における構成要件A-2のメモリ手段に記憶される文字図形データは、制御装置が作成し供給するキャラクタコードに係るデータ信号を計算手段がウインドウイングして表示可能な形態に変換したものを含むと解釈すべきである。

(4)まとめ
以上のことから、本件特許発明の構成要件Dの「前記制御装置により前記計算手段をそれぞれ介して前記メモリ手段を分散管理する」については、制御装置が各計算手段にマルチスクリーン全体の画像についてのベクトルデータ又はキャラクタコードに係るデータ信号を供給し、各計算手段がそれぞれ表示を担当する部分のベクトルデータ又はキャラクタコードを切り出し、それぞれ切り出した部分のベクトルデータ又はキャラクタコードから表示可能の形態の図形信号を形成し、それぞれのメモリ手段に記憶することを意味すると解すべきである。
そして、制御装置から各図形表示装置の計算手段に対して供給されるデータ信号がラスタデータに係る信号であるものは、本件特許発明の技術的範囲には属しないというべきである。

2 イ号装置が本件特許発明の構成要件を充足するか否かの判断
イ号装置の構成「RS-232C端子からの制御信号が入力されてプラズマディスプレイの動作全般を制御する処理回路」(a-1)について、そのような処理回路はプログラム可能な計算手段であるということができるから、本件特許発明の構成要件である「プログラム可能の計算手段」(A-1)を充足する。
また、イ号装置の構成「画面メモリ」(a-2)及び「プラズマディスプレイパネル」(a-3)は、それぞれ、本件特許発明の構成要件である「文字図形データを記憶するメモリ手段」(A-2)及び「文字図形を表示する表示手段」(A-3)を充足するから、イ号装置の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足するものであるといえる。
さらに、イ号装置の構成b,c,e及びfについても、それぞれ、本件特許発明の構成要件B,C,E及びFを明らかに充足するものであるといえる。
しかしながら、イ号装置の制御装置は「外部端子盤のRGB入力端子から入力されるRGB信号をRGB分配器により前記9個のプラズマディスプレイのRGB入力端子に分配して」(構成d)いるものであるところ、ここでいうRGB信号は、ベクトルデータ又はキャラクタコードに係る信号ではなく、画像を点の集合で表現するラスタデータに係る信号であるから、上記のとおり解釈した本件特許発明の構成要件Dを充足するものではない。
したがって、イ号装置は、本件特許発明の構成要件を充足するものではない。

3 均等の判断
最高裁判決(平成10年2月24日判決言渡:平成6年(オ)第1083号)は、特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中に、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、以下の要件をすべて満たす対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとしている。

(1)上記異なる部分が特許発明の本質的な部分でない。
(2)上記異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。
(3)上記異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において、当業者が容易に想到することができたものである。
(4)対象製品等が特許発明の出願時における公知技術と同一又は公知技術から当業者が容易に推考することができたものではない。
(5)対象製品等が特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。

そこで、イ号装置が上記要件(1)を満たすか否かについて検討する。
本件特許発明の目的は、表示する文字図形の解像度が画像メモリの読出し性能又は画像処理装置の処理能力により制限されるという従来の欠点を除去するというものであり、上記「1 本件特許発明の技術的範囲の検討」の「(4)まとめ」で解釈を示した本件特許発明の構成要件Dにおいて、制御装置が各計算手段に供給する文字図形データに係るデータ信号のデータ形式がベクトルデータ又はキャラクタコードであることが、上記本件特許発明の目的を達成するために必須の構成要件であるから、本件特許発明の構成中でイ号装置と異なる部分、すなわち、制御装置が各計算手段に供給する文字図形データに係るデータ信号のデータ形式がベクトルデータ又はキャラクタコードであることが、本件特許発明の本質的部分であることは明らかである。
したがって、イ号装置は、上記要件(1)を満たしていないから、他の要件について検討するまでもなく、本件特許発明と均等なものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号装置は、本件特許発明の構成要件を充足するものではないし、また、本件特許発明と均等なものであるともいうことができないから、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2007-09-18 
出願番号 特願昭59-9946
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 小川 浩史
中村 直行
登録日 1991-08-15 
登録番号 特許第1613208号(P1613208)
発明の名称 マルチスクリ-ン図形表示装置および方法  
代理人 渡邊 敏  
代理人 円城寺 貞夫  
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