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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580244 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1166231
審判番号 無効2005-80126  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2007-09-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2784879号「スロットマシン」の特許無効審判事件についてされた平成18年 1月 4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10061号 平成18年 3月30日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2784879号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
【1】手続の経緯
平成 5年11月29日 出願(特願平5-297120号)
平成10年 5月29日 設定登録(特許第2784879号)
平成17年 4月21日 本件無効審判請求
平成17年 7月20日 答弁書
訂正請求
平成17年10月14日 弁駁書
平成18年 1月 4日 審決(請求項1に係る発明についての特許を
無効とする。)
平成18年 2月13日 知的財産高等裁判所出訴
(平成18年(行ケ)第10061号)
平成18年 3月10日 訂正審判請求(訂正2006-39036号)
平成18年 3月30日 決定言渡(特許庁が無効2005-80126
号事件について平成18年1月4日にした審決
を取り消す)
平成18年 4月17日 訂正請求(訂正審判請求みなし取り下げ)
平成18年 6月15日 弁駁書


【2】当事者の主張
〔1〕審判請求書における請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、平成17年4月21日付け審判請求書において、「特許第2784879号の請求項1の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求し、審判請求書において甲第1?8号証を提示し、以下の無効理由1.?3.を主張している。

1.本件特許発明(請求項1)は、甲第1号証に記載された発明と同一(実質同一)であり、しかも、本件特許発明の発明者は、甲第1号証に記載された発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願時において、本件特許の出願人は、甲第1号証に係る特許出願の出願人と同一でもないことから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

2.本件特許発明(請求項1)は、甲第7号証に記載された発明、並びに、甲第2号証?甲第6号証に記載されている周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の事項のうち「特別の遊技」については、その用語がそれ自体では明確ではなく、明細書又は図面中にその用語についての定義又は説明がないことから、本件特許は、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものである。

《証拠方法》
甲第1号証:特願平5-47288号(特開平6-238035号)明細書に代わる特開平6-238035号公報
甲第2号証:「パチスロ大図鑑 2001 回胴式遊技機歴史総覧」(株式会社白夜書房、平成13年(2001年)5月12日発行)、96?98頁及び100?101頁)
甲第3号証:実公昭50-10873号公報
甲第4号証:特開昭63-5778号公報
甲第5号証:特開平4-327877号公報
甲第6号証:特開平4-307086号公報
甲第7号証:特開平5-76637号公報
甲第8号証:特開昭58-185184号公報


〔2〕答弁書における被請求人の主張
被請求人は、平成17年7月20日付け答弁書において、「特許第2784879号についての無効審判請求は成り立たない、審判費用は請求人が負担する、との審決を求める。」という趣旨で、本件特許発明が、特許法第29条の2の規定及び同法第29条第2項の規定に違反するものではなく、また、本件特許が、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものではなく、無効とされるべきものではないと答弁し、同日付けで訂正請求を行っている(被請求人は、平成18年4月17日付けで、平成18年3月10日になされた訂正審判の請求書(訂正2006-39096号)に添付された訂正明細書を援用した新たな訂正請求を行っている。)。


〔3〕平成17年10月14日付け弁駁書における請求人の主張
請求人は、平成17年10月14日付け弁駁書において、「被請求人が平成17年7月20日付訂正請求書にて行った訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書、特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項、及び、同条第4項の要件を満たさないものであるから、認められない。」としつつ、本件特許発明は、特許法第29条第2項及び第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件特許は、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号及び同項第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。


〔4〕平成18年6月15日付け弁駁書における請求人の主張
請求人は、平成18年6月15日付け弁駁書において、「被請求人が平成18年3月10日付で提出した訂正審判(訂正2006-39036)の請求書に添付された訂正明細書・・・を援用した訂正請求による訂正・・・後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明・・・は、特許法第29条第2項及び第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。また、本件訂正後の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。さらに、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第5項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていない。よって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号及び同項第4号に該当し、無効とすべきものである。」と主張している。


【3】訂正の適否
〔1〕平成18年3月10日になされた訂正審判の請求書に添付された訂正明細書を援用した、平成18年4月17日付け訂正請求による訂正は、次のとおりである。
1.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段と、この図柄記憶手段に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段と、この図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すメダル払出手段と、上記図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段とからなり、上記メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにしたことを特徴とするスロットマシン。」を、
「フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段と、この図柄記憶手段に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段と、この図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、上記図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段とからなり、上記メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えたことを特徴とするスロットマシン。」に訂正する。

2.訂正事項b
段落【0013】の「【課題を解決するための手段】本発明は、上記した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。請求項1記載の発明は、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段(131)と、この図柄記憶手段(131)に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段(132)と、この図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すメダル払出手段(160)と、上記図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段(170)とからなり、上記メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにしたことを特徴とする。」を、
「【課題を解決するための手段】本発明は、上記した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。請求項1記載の発明は、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段(131)と、この図柄記憶手段(131)に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段(132)と、この図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、上記図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段(170)とからなり、上記メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えたことを特徴とする。」に訂正する。

3.訂正事項c
段落【0014】の「【作用】請求項1記載の発明によれば、図柄判定手段によって、停止した図柄の組合せが、図柄記憶手段(131)に記憶されている、予め定めた所定の図柄の組合せと一致するか否かが判断される。メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、入賞図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出す。」を、
「【作用】請求項1記載の発明によれば、図柄判定手段によって、停止した図柄の組合せが、図柄記憶手段(131)に記憶されている、予め定めた所定の図柄の組合せと一致するか否かが判断される。メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴う入賞図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出す。」に訂正する。

4.訂正事項d
段落【0015】の「一方、特別遊技手段(170)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合に、遊技者にメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる。このように、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるから、所定の条件が整って、特別図柄の出現する抽選確率が高抽選確率となっても、入賞図柄の出現にともなうメダルの払出枚数は増加せず、ひいては期待値を増加させることがない。」を、
「一方、特別遊技手段(170)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴わない特別図柄の組合せである場合に、遊技者にメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる。このように、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるから、所定の条件が整って、特別図柄の出現する抽選確率が高抽選確率となっても、入賞図柄の出現にともなうメダルの払出枚数は増加せず、ひいては期待値を増加させることがない。」に訂正する。

5.訂正事項e
段落【0016】の「このため、入賞図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができる。したがって、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。また、メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせる。」を、
「このため、入賞図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができる。したがって、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。また、メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴わない 「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせる。」に訂正する。

6.訂正事項f
段落【0029】の「したがって、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせの出現する抽選確率が10倍に向上しても、上記と同様に、払い出されるメダルの枚数が0枚で、この組み合わせの抽選確率が1/3.5とすると、
期待値=0÷3×(1/3.5)=0.0000000となり、
「フルーツ1」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/25とすると、
期待値=15÷3×(1/25)=0.2000000となり、
「フルーツ2」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が5枚で、この組み合わせの抽選確率が1/15とすると、
期待値=5÷3×(1/15)=0.1111111となり、
「チェリー」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が4枚で、この組み合わせの抽選確率が1/300とすると、
期待値=4÷3×(1/300)=0.0044444となり、
「リプレイ」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が3枚で、この組み合わせの抽選確率が1/7.3とすると、
期待値=3÷3×(1/7.3)=0.1369863となる。」を、
「したがって、「BAR」「BAR」「BAR」 の組み合わせの出現する抽選確率が10倍に向上しても、上記と同様に、払い出されるメダルの枚数が0枚で、この組み合わせの抽選確率が1/3.5とすると、
期待値=0÷3×(1/3.5)=0.0000000となり、
「フルーツ1」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/25とすると、
期待値=15÷3×(1/25)=0.2000000となり、
「フルーツ2」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が5枚で、この組み合わせの抽選確率が1/15とすると、
期待値=5÷3×(1/15)=0.1111111となり、
「チェリー」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が4枚で、この組み合わせの抽選確率が1/300とすると、
期待値=4÷3×(1/300)=0.0044444となり、
「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となるため、払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し、この組み合わせの抽選確率が1/7.3とすると、
期待値=3÷3×(1/7.3)=0.1369863となる。」に訂正する。

7.訂正事項g
段落【0033】の「したがって、各図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができるので、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。また、メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、入賞によるメダルの払い出しに加えて、再遊技が可能が可能となったことで、遊技結果に幅ができ、更に興趣あるスロットマシンの遊技が可能となる。」を、
「したがって、各図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができるので、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。」に訂正する。

8.訂正事項h
【図3】のレギュラーの払い出し枚数が「6」とあるのを、「0」に訂正する。

〔2〕訂正の適否の判断
1.訂正事項aによる訂正は、「所定の図柄の組合せ」について、もとの請求項1の「入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出す」を「メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し」に訂正し、これにより、「所定の図柄の組合せ」について、メダルの払い出しが伴わない「図柄の組合せ」を「複数の組合せ」とするとともに、その内の一つを「リプレイの図柄の組合せ」とするものであり、また、「特別図柄の組合せ」について、もとの請求項1に、「乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えた」との事項を付加する訂正をし、これにより、「特別図柄の組合せ」についての「抽選確率データ」を限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b?hによる訂正は、上記訂正事項aによる訂正に関連してなされた明りょうでない記載の釈明或いは誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記訂正は、何れも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2.ところで、平成18年4月17日付け訂正請求による訂正において、もとの請求項1の「入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出す」を「メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し」と訂正することは、平成17年7月20日付け訂正請求による訂正においても同様になされているところ、
請求人は、平成17年7月20日付け訂正請求による訂正について、平成17年10月14日付け弁駁書において、「被請求人が平成17年7月20日付訂正請求書にて行った訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書、特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項、及び、同条第4項の要件を満たさないものであるから、認められない。」と主張し、その理由として、「リプレイの図柄の組合せが、メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せである」との事項が、願書に添付した明細書又は図面には一切記載されていないからであるということを指摘しており、また、平成18年4月17日付け訂正請求による訂正についても、平成18年6月15日付け弁駁書の「(3-6)付言」(12頁7行?13頁18行)の項において、上記と同様の主張及び指摘をしているから、以下、上記主張及び指摘について検討する。
(a)願書に添付した明細書又は図面の記載において、上記訂正事項aについての訂正の根拠となる、段落【0005】の「「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となるため、払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し」との記載、及び、本発明にかかるスロットマシンの期待値を示す図である【図3】の表中の「リプレイ」の図柄の組合せ時のメダルの「払い出し枚数」の欄の「3」との記載をみると、
段落【0005】には、本発明が解決しようとする課題、即ち、「特別の遊技、例えばシングルボーナスゲームを行わせるための特別図柄の組み合わせ・・・が出現する抽選確率を通常よりも高抽選確率・・・に変更した場合に、・・・メダルの払出枚数が増加してしまい、期待値が予め定めた範囲を超えることとなる。」(段落【0007】の記載を参照。)との課題を有する従来のスロットマシンについて、「メダルを3枚投入した場合」における各図柄の組合せの「期待値」についての説明が記載されているところ、
段落【0005】の上記「「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となるため、払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し」との記載における「払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し」の技術的意義については、「「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となる」、つまり、3枚のメダルを投入した場合と同一のゲームが可能となるのであるから、遊技者に対するメダルの収支という観点からみると、「「リプレイ」の組み合わせ」時には、3枚のメダルが払い出されてそれら3枚のメダルがそのまま投入されたことと同等の利益が与えられたものということができるので、当該「「リプレイ」の組み合わせ」の場合の「期待値」を算出するためには、実際にはメダルが払い出されないものの、「払い出されるメダルの枚数が3枚」と設定しなければならないという意味においてのものであることは明らかである。
一方、【図3】の表にも、本発明について、「メダルを3枚投入した場合」における各図柄の組合せの「期待値」に関して記載されているのであり、当該【図3】の表の内容について検討するにあたり、上記従来のスロットマシンについて明らかであることも含めて考慮すると、当該表中における「リプレイ」の図柄の組合せ時のメダルの「払い出し枚数」の欄の「3」の技術的意義については、本発明のスロットマシンが、上記従来のスロットマシンと同様に、「リプレイ」の図柄の組合せ時においては、遊技者に対するメダルの収支という観点からみると、3枚のメダルが払い出されてそれら3枚のメダルがそのまま投入されたことと同等の利益が与えられたものということができるので、当該「リプレイ」の図柄の組合せの場合の「期待値」を算出するためには、実際にはメダルが払い出されないものの、メダルの「払い出し枚数」を「3枚」と設定しなければならないという意味においてのものであり、このような「3枚」という「換算」すべき数値として、「払い出し枚数」の欄に「3」と記入されたものにすぎないのであって、実際のメダルの払い出し枚数を意味するものでないことは明らかである。(因みに、「リプレイ」の図柄の組合せ時において、遊技者に実際に3枚のメダルが払い出されるものであるとした場合には、遊技者に対するメダルの収支という観点からみると、そのときの遊技者の利益は6枚と考えられるから、【図3】の表中における「リプレイ」の図柄の組合せ時のメダルの「払い出し枚数」の欄には、「6」と記入されていなければならないものと認められる。)
(b)ところで、段落【0013】の「図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すメダル払出手段(160)・・・は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにした」との記載、段落【0014】の「メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、入賞図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出す。」との記載、及び、段落【0016】の「メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせる。」との記載によれば、「入賞図柄の組合せ」である場合に遊技者に対してメダルを払い出す手段としての「メダル払出手段160」が、「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせると記載されているのみであり、メダルの払い出しを行うことについては明記されておらず、
また、段落【0024】の「メダル払出制御手段133は、上記図柄判断手段132にもとづいて、停止した図柄の組合せが入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出す制御を行う手段であって、例えば、投入メダル数が3枚の場合に、「7」「7」「7」の組合せでは、15枚、「フルーツ1」の組合せでは15枚、「フルーツ2」の組合せでは5枚、「チェリー」の組合せでは4枚のメダルの払い出しを制御し、「リプレイ」では、前回ゲームである、メダルを3枚投入したゲームを再び行わせる制御を行う。」との記載によれば、「メダル払出手段160」を構成し、「入賞図柄の組合せ」である場合に遊技者に対してメダルを払い出す制御を行う手段としての「メダル払出制御手段133」が、「7」「7」「7」の組合せ,「フルーツ1」の組合せ,「フルーツ2」の組合せ,「チェリー」の組合せである場合においてはメダルの払い出しを制御するものの、「リプレイ」では、前回ゲームを再び行わせる制御を行うと記載されているのみであり、メダルの払い出しを制御することについては明記されていない。
(c)即ち、段落【0023】の「遊技者に対してメダルを払い出す入賞図柄の組合せ・・・には、・・・ビッグボーナスゲームを行わせるための「7」「7」「7」、フルーツ(例えばオレンジ)の組み合わせである「フルーツ1」、フルーツ(例えばリンゴ)の組み合わせである「フルーツ2」、チェリーの組み合わせである「チェリー」、再遊技を行わせるための「リプレイ」の5種類の組み合わせがあり、特別図柄の組合せには、シングルボーナスを行わせるための「BAR」「BAR」「BAR」の組合せがある。」との記載によれば、遊技者に対してメダルを払い出す「入賞図柄の組合せ」には、「リプレイの組合せ」も含まれると記載されているところではあるが、
既に、(a)(b)で述べているように、「リプレイの組合せ」については、「リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となる」ため、メダルの収支という観点からみると、遊技者には、3枚のメダルが払い出されてそれらのメダルがそのまま投入されたことと同等の利益が与えられることになると考えられ、しかも、「入賞図柄の組合せ」の場合に遊技者に対してメダルを払い出すものとしての「メダル払出手段160(メダル払出制御手段133)」が、「リプレイ」では、前回ゲームを再び行わせると記載されているのみであり、メダルの払い出しを行うことについては明記されていないことを考慮すると、
段落【0023】に、遊技者に対してメダルを払い出す「入賞図柄の組合せ」のうちの1つに「リプレイの組合せ」も含まれることが記載されているとしても、当該記載の意味としては、当該「リプレイの組合せ」である場合には、遊技者に対して実際にメダルの払い出しは行われず、上記「払い出されるメダルの枚数が3枚と換算」と同様の意味として捉えるのが相当と考えられる。
(d)尚、平成18年4月17日付け訂正請求により、段落【0016】の「メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせる。」との記載における「「リプレイ」の図柄の組合せ」については、「メダルの払い出しを伴わない「リプレイ」の図柄の組合せ」と訂正(訂正事項eを参照。)され、段落【0029】の「「リプレイ」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が3枚で」との記載における「払い出されるメダルの枚数が3枚で」については、「払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し」と訂正(訂正事項fを参照。)され、段落【0033】の「また、メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、入賞によるメダルの払い出しに加えて、再遊技が可能が可能となった」との記載における「入賞によるメダルの払い出しに加えて」については、当該記載部分を削除する訂正(訂正事項gを参照。)が行われている。
(e)結局、請求人の平成17年10月14日付け弁駁書、及び、平成18年6月15日付け弁駁書における主張及び指摘は、採用できない。

3.以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書に規定する目的を満たすものであり、かつ、特許法第134条の2第5項の規定において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


【4】訂正後の請求項1に係る発明
以上のように、平成18年4月17日付け訂正請求は、適法なものであるので、訂正後の請求項1に係る発明は、該訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段と、この図柄記憶手段に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段と、この図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、上記図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段とからなり、上記メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えたことを特徴とするスロットマシン。」(以下、「本件訂正発明」という。)


【5】当審の判断
〔1〕甲各号証の記載
1.請求人が提出した甲第1号証(特願平5-47288号(特開平6-238035号)明細書に代わる特開平6-238035号公報)には、スロットマシンに関して、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】周面に複数のシンボルが表された複数個のリールを有し、すべてのリールが停止して所定の停止ライン上に特定のシンボルの組合せが成立したとき、通常のゲームから特別ゲームへ移行させるよう構成されたスロットマシンにおいて、前記停止ライン上に2種以上設定された特定のシンボルの組合せのいずれかが成立したか否かを判別する判別手段と、各特定のシンボルの組合せの成立に対して払い出されるメダルの払出枚数が記憶された記憶手段と、前記判別手段が停止ライン上にいずれかの特定のシンボルの組合せが成立したことを判別したとき、そのシンボルの組合せに対応するメダルの払出枚数を前記記憶手段より読み出してその払出枚数に応じたメダルの払出を実行させる制御手段とを有し、前記記憶手段には、いずれかの特定のシンボルの組合せに対するメダルの払出枚数としてゼロが設定されて成るスロットマシン。」(特許請求の範囲)
(b)「【従来の技術】従来この種のスロットマシンでは、通常のゲーム実行時に停止ライン上に特定のシンボルの組合せが成立すると、このシンボルの組合せに対して所定のメダルの払出を行った後、通常のゲームから高配当のメダル払出が保証される特別ゲーム(以下「ボーナスゲーム」という)へ移行させている。」(段落【0002】)
(c)「【発明が解決しようとする課題】ところで現在のスロットマシンは、法規制により、通常のゲーム(ボーナスゲームへ移行する直前までのゲームを示す)におけるメダルの払出枚数の期待値を所定の値以内におさめることが義務づけられており、この所定の期待値に基づいてボーナスゲームへ移行させるシンボルの組合せや通常の入賞にかかるシンボルの組合せが出現するよう制御されている。このため、遊戯者の関心や射幸心を高めるためにボーナスゲームの出現率を高く設定しようとすると、他の通常の入賞にかかるシンボルの組合せが出現する確率やメダルの払出枚数を変更する必要があり、プログラムの大幅な変更が必要となるなどの問題がある。」(段落【0004】)
(d)「この発明は、上記問題に着目してなされたもので、特定のシンボルの組合せの成立に対してメダルを払い出さずにボーナスゲームへと移行させることにより、通常のゲームにおけるメダルの払出枚数の期待値を一定値に保ったまま頻繁にボーナスゲームを出現させて、遊戯者のゲームに対する関心や射幸心を高めることのできるスロットマシンを提供することを目的とする。」(段落【0005】)
(e)「【作用】すべてのリールが停止したとき、2種以上の特定のシンボルの組合せのうち、メダルの払出枚数がゼロに設定された特定のシンボルの組合せが停止ライン上に成立すると、メダルが払い出されることなく、通常のゲームから特別ゲームへ移行する。このような構成であるので、通常のゲームにおけるメダル払出枚数の期待値を一定に保持したまま特別ゲームを頻繁に出現させることが可能である。」(段落【0007】)
(f)「【実施例】図1は、この発明の一実施例であるスロットマシン2の外観を示す。このスロットマシン2は、周面に複数のシンボルがそれぞれ表示された3個のリール1a,1b,1cを備え、機体の前面には、リール表示窓3,メダルの預け枚数表示器4,払出枚数表示器5,メダル投入口6,始動レバー7,停止スイッチ8a,8b,8c,メダル投入スイッチ9,切換スイッチ10,精算スイッチ11,メダル排出口12,メダル受け皿13などが設けられている。」(段落【0008】)
(g)「前記リール表示窓3には3個の各リール1a,1b,1cが位置し、このリール表示窓3より各リール1a,1b,1cの回転状態が透視可能であると共に、リール1a,1b,1cを停止させたとき、各リールの3駒分のシンボルが上、中、下、斜めの各停止ラインL1?L5上に整列して並ぶようになっている。これら停止ラインL1?L5は、メダルの投入枚数に応じて順次有効化するものであって、1枚のメダルが投入されたときは停止ラインL1が、2枚のメダルが投入されたときは停止ラインL1?L3が、3枚のメダルが投入されたときは停止ラインL1?L5が、それぞれ有効ラインとなり、有効ライン上で整列したシンボルの組合せがいずれか入賞にかかるものであれば、所定の枚数のメダルが払い出される。」(段落【0009】)
(h)「このスロットマシンでは、通常のゲームにおいて、有効となったいずれかの停止ライン上に図2に示すようなシンボルの組合せが成立したとき、ボーナスゲームへ移行して、1?5回のボーナスゲームを実行できるよう構成してある。このボーナスゲームでは、メダルを1枚投入することによって3個のリール1a,1b,1cが一斉に始動し、各停止ボタン8a,8b,8cの操作によって対応するリール1a,1b,1cを順次停止させたとき、いずれかの停止ライン上に所定のシンボルの組合せが成立すると、高配当のメダル払出が行われるものである。」(段落【0014】)
(i)「図2は、このボーナスゲームの設定例を示すもので、数字「7」のシンボル49の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき15枚のメダルが払い出された後、5回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームA」という)。」(段落【0015】)
(j)「またリンゴのシンボル50の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき8枚のメダルが払い出された後、2回のボーナスゲームが実行できるようになっており(以下これを「ボーナスゲームB」という)、パイナップルのシンボル51の組合せが成立したときは、投入メダル1枚につき5枚のメダルが払い出された後、1回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームC」という)。一方、サクランボのシンボル52の組合せが成立したときは、メダルの払出が行われずにボーナスゲームへ移行し、4回のボーナスゲームが実行できるようになっている(以下これを「ボーナスゲームD」という)。」(段落【0016】)
(k)「上記各ボーナスゲームの内容(実行可能なボーナスゲームの回数など)は、上記に限らず自由に設定して良いが、このうち少なくとも1種類のボーナスゲームについては、メダルの払出を行わずにボーナスゲームへ移行するような内容のものとする。」(段落【0017】)
(l)「前記ボーナスゲームA?Dにかかる各シンボル49?52の組合せは、それぞれ制御部による引込み停止制御(詳細は後述する)により有効ライン上に成立するよう、それぞれの出現確率a,b,c,d(単位はいずれも%)が設定されている。これらの出現確率は、具体的には後述する乱数発生器29が出力する乱数値の範囲を割り当てることにより設定されるもので、図中の「当り条件」の欄には、各ボーナスゲームA?Dごとに乱数値の範囲が設定される。」(段落【0018】)
(m)「通常のゲームにおけるメダルの払出枚数の期待値を一定値に保つためには、前記ボーナスゲームA,B,Cの出現確率a,b,cは固定する必要があるが、ボーナスゲームDについては、シンボル52の組合せの成立に対してメダルの払出が行われないため、その出現確率dを自由に変更できるのである。」(段落【0019】)
(n)「ROM17には、機械動作の制御手順を示すプログラムや各リール1a,1b,1cのシンボルの配列テーブルなどと共に、ボーナスゲームに関する情報として、前記の図2に示した内容のテーブルが格納されている。CPU16は制御・演算の主体であって、前記ROM17のプログラムやデータに従ってRAM18に対するデータの読み書きを行い、入出力各部の動作を一連に制御する。」(段落【0021】)
(o)「前記バス19には出力ポート21を介してリール駆動部23やホッパ駆動部24が、表示インターフェイス22を介して表示回路25が、それぞれ接続されている。リール駆動部23はCPU16からの指令をうけて各リール駆動用のステッピングモータ26(図4に示す)の動作を制御する。ホッパ駆動部24は、同様にCPU16からの指令をうけて機体内部のホッパ(図示せず)を駆動し、所定枚数のメダルをメダル排出口12よりメダル受け皿13に放出させる。また表示回路25は前記預け枚数表示器4,払出枚数表示器5などを表示動作させる。」(段落【0024】)
(p)「前記スタート信号は、CPU16内の抽選部31にも与えられる。この抽選部31はいずれかのボーナスゲームA?Dにかかるシンボルの組合せが成立するよう引込み停止制御を行うか否かを決定するためのもので、スタート信号を受けて前記乱数発生器29の出力した乱数値を取り込み、この乱数値がROM17内に記憶させた乱数値の範囲に含まれるか否かを各ボーナスゲームA?D毎に判断し、その結果をリール制御部30に出力する。」(段落【0028】)
(q)「判定部32は、有効ライン上に停止したシンボルがボーナスゲームA?Dまたは他の通常の入賞のいずれかにかかるシンボルであるかどうかを判定し、その判定結果を出力する。」(段落【0032】)
(r)「つぎのステップ10で全てのリール1a,1b,1cが停止したかどうかがチェックされ、この判定が「YES」となると、つぎにCPU16は、有効ライン上にボーナスゲームA?Dまたはその他の入賞にかかるシンボルの組合せが成立しているかどうかをチェックする(ステップ11?ステップ15)。」(段落【0039】)
(s)「前記したシンボル49の組合せが成立しているときは、ステップ11が「YES」となり、CPU16はホッパ駆動部24を駆動させて、投入メダル1枚につき15枚のメダルを払い出した後、5回のボーナスゲームを実行させる(ステップ16,17)。」(段落【0040】)
(t)「シンボル50の組合せが成立しているときは、ステップ11が「NO」,ステップ12が「YES」となって、CPU16は投入メダル1枚につき8枚のメダルの払出を行った後、2回のボーナスゲームを実行させる(ステップ18,19)。」(段落【0041】)
(u)「シンボル51の組合せが成立しているときは、ステップ11,12が「NO」,ステップ13が「YES」となって、CPU16は投入メダル1枚につき5枚のメダルの払出を行い、1回のボーナスゲームを実行させる(ステップ20,21)。」(段落【0042】)
(v)「シンボル52の組合せが成立しているときは、ステップ11?13は「NO」,ステップ14が「YES」となり、CPU16はメダルの払出を行うことなく、ステップ22で4回のボーナスゲームを実行させる。」(段落【0043】)
(w)「上記ステップ17,19,21,22では、CPU16は、ゲームの制御プログラムをボーナスゲーム用に切り換え、前述した内容のボーナスゲームを設定された回数分実行させる。」(段落【0044】)
(x)「一方、ステップ11?ステップ14の判定がいずれも「NO」であってステップ15が「YES」のとき、すなわちボーナスゲームにかかるシンボルの組合せは成立していないが、他の入賞にかかるシンボルの組合せが成立したときは、ステップ23で該当する枚数のメダルを払い出した後、ゲームを終了する。」(段落【0045】)
(y)「【発明の効果】この発明は上記のごとく、2種以上の特定のシンボルの組合せのうち、いずれかの特定のシンボルの組合せに対するメダルの払出枚数としてゼロを設定し、その特定のシンボルの組合せが停止ライン上に成立したとき、メダルを払い出すことなく、通常のゲームから特別ゲームへ移行させるようにしたから、通常のゲームにおけるメダル払出枚数の期待値を一定に保持したまま特別ゲームを頻繁に出現させることが可能となり、遊戯者の関心や射幸心を高めることができるという顕著な効果を奏する。」(段落【0046】)
(z)そして、上記(q)(段落【0032】)の「判定部32は、有効ライン上に停止したシンボルがボーナスゲームA?Dまたは他の通常の入賞のいずれかにかかるシンボルであるかどうかを判定し」との記載、及び、上記(r)(段落【0039】)の「CPU16は、有効ライン上にボーナスゲームA?Dまたはその他の入賞にかかるシンボルの組合せが成立しているかどうかをチェックする」との記載により、「CPU16」内に「ボーナスゲームA?D」にかかる「出現確率a?d」の外に「その他の通常入賞」にかかる「出現確率」が備えられていることは自明であり、また、上記(w)(段落【0044】)の「ステップ17,19,21,22では、CPU16は、ゲームの制御プログラムをボーナスゲーム用に切り換え」との記載により、「CPU16」内にゲーム制御プログラム切り換え手段が備えられていることは自明である。そして、スロットマシン2における複数のシンボルが順次高速で移動表示することも自明である。
これら(a)?(z)の記載等及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「機体の前面に設けたリール表示窓3に3個のリール1a,1b,1cの周面に表示された複数のシンボルを順次高速で移動表示した後、該3個のリール1a,1b,1cの回転を停止させて、該停止表示態様が特定のシンボルの組合せである場合に、遊戯者に所定数のメダルを払い出したり通常のゲームから特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)に移行するようにしたスロットマシン2において、
特定のシンボルの組合せを記憶するROM17と、
このROM17に記憶されたシンボルの組合せが、停止したシンボルと一致しているか否かを判断するCPU16内の判定部32と、
このCPU16内の判定部32の判断にもとづいて、停止したシンボルの組合せが、上記特定のシンボルの組合せのうち、メダルの払い出しが伴うシンボルの複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わないシンボルの組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わないシンボルの組合せとして、一の組合せであるサクランボのシンボル52の組合せがあり、停止したシンボルがメダルの払い出しを伴うシンボルの組合せの場合には、CPU16からの指令を受けてホッパ駆動部24から遊戯者に対してメダルを払い出し、
上記CPU16内の判定部32の判断にもとづいて、停止したシンボルの組合せが、上記特定のシンボルの組合せのうちのサクランボのシンボル52の組合せである場合に、遊戯者に対してメダルを払い出すことなく、特別ゲーム(ボーナスゲームD)を行わせるCPU16内のゲーム制御プログラム切り換え手段とからなり、
乱数発生器29が出力する乱数値を取り込み、この乱数値がROM17内に記憶された乱数値の範囲に含まれるか否かを特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)またはその他の通常入賞毎に判断するためにCPU16内の抽選部31で用いる特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)とその他の通常入賞にかかる出現確率を備え、特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)とその他の通常入賞にかかる出現確率のうちのメダルを払い出すことなく特別ゲーム(ボーナスゲームD)を行わせる出現確率を自由に変更できるようにしたスロットマシン2。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)

2.同じく、甲第2号証(「パチスロ大図鑑 2001 回胴式遊技機歴史総覧」(株式会社白夜書房、平成13年(2001年)5月12日発行)、第六章、「1992?1995 4号機 黎明期」には、スロットマシンに関して、以下の記載がある。
(a)「リプレイ(再遊技) 4号機より義務付けられた機能。コインを投入しなくても、レバーを叩くだけで遊技可能となる。」(096頁下段1?5行)
(b)「92年6月。イリーガルな爆裂連チャン機に対する「大粛正」が全国各地で展開されている中、次世代を担う新要件パチスロ『4号機』がエレクトロコインジャパン(当時)より発表された。『チェリーバー』である。」(097頁下段1?6行)
(c)「チェリーバー 記念すべきパチスロ史上初の4号機。他社に先駆けていち早く検定を通過し、92年の12月にホールデビューを果たした。レギュラーボーナスを搭載していないAタイプ(これも史上初の試み)なのだが、コインを増やす手段としてビッグの他にシングルボーナスとその集中役を搭載しており、純Aタイプが主流だった当時においては、従来のゲーム性に加えて一発逆転の要素も持ち合わせた、言わば新機軸のマシンであった。「チェリーボーナス」と称される集中役は、突入確率が約910?1365分の1。集中突入時はシングルボーナスが約4.4分の1という高確率(通常時は44分の1)で揃い続ける。」(098頁1段1行?2段1行)

3.同じく、甲第3号証(実公昭50-10873号公報)には、遊戯器械に於けるリプレー装置に関して、以下の記載がある。
「本案は所要の硬貨を投入後・・・各ドラムの始動用スイツチ及停止スイツチの操作に依つて所要時間内に各ドラムを廻転し又は停止させてその外周面に所定の得点数に該当する所要の物品の絵又は図形等の所要数を描出せるドラム中の一駒の絵を器体の各開口部へ夫々露出させて之等の露出せる絵又は図形等の保持せる得点数の合計数の多寡に依つてゲームの等級を定めてその勝負を楽しく愉快にしかも健康的に競い合うことのできる遊戯器械に於て之等のドラムの外面に描出せる最高得点数に該当する所要の物品の絵又は図形等を器体の開口部へ全部露出させたときには・・・別に硬貨を入れないでも再度ゲームを楽しみに行つてゲーム心を一層そゝらせることのできるような大当り装置であるリプレー装置を得ることを目的とするものである。」(1欄16?35行)

4.同じく、甲第4号証(特開昭63-5778号公報)には、スロツトマシンに関して、以下の記載がある。
(a)「1.所定枚数のメダルの投入後のスタートレバーの操作によって複数の回転リールを回転させ、この回転リールの回転を停止スイッチの操作によって停止させ、その停止時に回転リール表面に描かれた絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すスロッシマシンにおいて、回転リールの絵柄に特定絵柄を設け、回転リールの停止時にこの特定絵柄が表われた時には、メダルの投入なしにスタートレバーの操作が行なえるように形成した・・・スロットマシン。・・・」(【特許請求の範囲】)
(b)「第2図に示したのは、このような各種の判定を示したフローチャートである。この図において、メダルの投入が行なわれて、ゲームがスタート可能となった時を「スタート」とする。このような状態でスタートレバー26の操作を行なう(ステップ40)。すると各回転リール12が回転を開始することとなる(ステップ41)。この時に、各回転リール12に対応する停止スイッチ30を投入することによって、各回転リール12の回転が停止することとなる(ステップ42)。するとまず停止した各回転リール12の絵柄13の組み合わせが、あらかじめ設定したメダルの払い出しに対応する組み合わせであるか否かが、判定装置によって判定される(ステップ43)。その判定の結果、メダルの払い出しを行なうような組み合わせである場合には、対応枚数のメダルを、図示しないメダル払出装置によって、払い出して(ステップ44)、1ゲームが終了することとなる。また、判定の結果、メダルの払い出しを行なうような組み合わせでない場合は、次に回転を停止した回転リール12の絵柄13中に、引き分けとなるような特定絵柄があるか否かが、判定装置によって判定される(ステップ45)。その結果、特定絵柄がない場合には、1ゲームが終了することとなる。また特定絵柄がある場合には、メダル投入後の状態、即ちステップ45の前に戻って、新たなメダルの投入なしに再ゲームが行なえることとなる。」(3頁右上欄10行?右下欄3行)
(c)「なお以上の説明において、ステップ43において、停止した各回転リール12の絵柄13の組み合わせが、あらかじめ設定したメダルの払い出しに対応する組み合わせでない場合のみ、ステップ45で特定絵柄が有るか否かが判断されるとして説明したが、・・・」(4頁左上欄10?20行)

5.同じく、甲第5号証(特開平4-327877号公報)には、スロツトマシンに関して、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】1ゲームあたりの投資価値の入力操作によって発生されたスタート許可信号を受けた後、さらにスタート操作信号の入力に応答してシンボル列の移動表示を開始させるスタート制御手段を備えるとともに、シンボル列の移動停止時にシンボル表示窓に特定のシンボルが現れるか、あるいは特定のシンボルの組み合わせが生じたときには再ゲーム信号を発生させ、この再ゲーム信号によって前記スタート許可信号を得て前記投資価値の入力操作がなくてもゲームの実行が可能となるサービス入賞を設けた・・・スロットマシン。・・・」(【特許請求の範囲】)
(b)「図5において、第1リール5は「☆」シンボルを表示窓4に出した状態で停止している。このように、ゲームが終了した時点でいずれかのリールにより「☆」シンボルが表示窓4に表示されたときにはサービス入賞となる。サービス入賞が得られると、・・・次回にはコインを投入しなくても、全ての入賞ラインを有効化させた状態(3枚のコインを投入したのと等価な状態)で1回のゲームを行うことが可能となる。」(段落【0008】)
(c)「・・・始動制御部22は、コインセンサー20からのスタート許可信号を受けた後、スタートレバー10が操作されたときにスタート信号を出力する。このスタート信号は、リール制御部24,乱数サンプリング部25に入力される。リール制御部24は、スタート信号を受けてリールごとに設けられたステッピングモータを一斉に駆動し、これにより第1?第3リール5?7が一斉に回転を開始する。また乱数サンプリング部25は、前記スタート信号の入力により所定範囲内の乱数列中から1個の乱数をサンプリングし、その値を入賞判定部26に入力する。」(段落【0009】)
(d)「入賞判定部26は、乱数サンプリング部25から入力された乱数値を入賞確率テーブル27と対照し、実行されたゲームについての入賞の種類(ハズレ,サービス入賞も含む)を決定する。入賞確率テーブル27は、第1入賞確率テーブル27Aと第2入賞確率テーブル27Bとから構成され、そのいずれか一方が切換えスイッチ28を介して入賞判定部26に接続される。第1,第2入賞確率テーブル27A,27Bは、概念的に図2(A),(B)のように表される。サンプリングされる乱数の数値範囲を「0?999」とすると、第1入賞確率テーブル27Aでは「0」?「299」がハズレのグループに割り当てられ、「300?499」がサービス入賞グループ、「500?799」が小入賞グループ、「800?949」が中入賞グループ、「950?999」が大入賞グループとなっている。また、第2入賞確率テーブル27Bでは、ハズレグループが「0?199」、サービス入賞グループが「200?499」であり、他のグループは第1入賞確率テーブル27Aと同様である。」(段落【0010】)
(e)「入賞判定部26は、上記入賞確率テーブル27との対照により入賞の種類を決定し、その入賞の種類を表すデータはリール制御部24に入力される。そしてストップボタン11?13が操作され、停止信号発生部18からストップ信号がリール制御部24に供給されるとリールの停止制御が開始される。このリール停止制御は、入賞判定部26で決められた入賞の種類が満たされるようなシンボルの組み合わせが入賞ライン上に現れるように、各リールの回転を監視しながら行われる。リール5?7が停止すると、入賞判定部26はリール制御部24からのデータを参照してシンボルの組み合わせを確認する。この確認の結果、大入賞,中入賞,小入賞,サービス入賞が得られているときには、これらの入賞の種類を表す入賞信号がホッパー制御部29に入力される。ホッパー制御部29は、入賞の種類ごとに配当コインの枚数を対応づけた入賞配当テーブル30を参照し、大,中,小のいずれかの入賞の場合には規定枚数の配当コインを払い出すようにホッパー装置31の駆動を制御する。また、入賞確認の結果、サービス入賞が得られているときには、ホッパー制御部29は再ゲーム信号をコイン検出信号発生部32に供給する。これによりコイン検出信号発生部32は、3枚のコイン投入が行われたのと等価な信号をコインカウンタ21に入力し、また始動制御部22にはスタート許可信号が入力される。・・・」(段落【0011】)
(f)「コイン検出信号発生部32は、再ゲーム信号を受けた後、・・・3枚分のコイン検出信号を発生する。このコイン検出信号は、始動制御部22にスタート許可信号として入力されるから、次のゲームはコインを消費せずに、コインを3枚投入したのと同じ条件で再ゲームすることが可能となる。・・・」(段落【0016】)

6.同じく、甲第6号証(特開平4-307086号公報)には、スロツトマシンに関して、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】1ゲームあたりの投資価値の入力によって発生されたスタート許可信号を受けた後、さらにスタート操作信号の入力に応答してシンボル列の移動表示を開始させるスタート制御手段を備えるとともに、シンボル列の移動停止時にシンボル表示窓に特定のシンボルが現れるか、あるいは特定のシンボルの組み合わせが生じたときには再ゲーム信号を発生させ、この再ゲーム信号に基づいて前記スタート許可信号を得て投資価値の入力がなくてもゲームの実行が可能となるスロットマシン・・・。」(【特許請求の範囲】)
(b)「【産業上の利用分野】本発明は、ゲーム開始に先立つ投資価値の入力操作(例えばコインの投入操作)を行わなくてもゲームの実行が可能となる再ゲーム機能をもったスロットマシンに関するものである。」(段落【0001】)
(c)「【従来の技術】特開昭63-5778号公報には、コインを投入してゲームを行った結果、特定のシンボルが表示窓に現れたときには、次回のゲームについてはコインの投入なしにゲームが実行できるようにしたスロットマシンが開示されている。このような再ゲーム機能を付加することは、スロットマシンゲームに入賞とハズレの他に引き分けに相当するランクを設定したことになり、スロットマシンにギャンブル性だけでなく遊技性をもたせる上で有効である。」(段落【0002】)
(d)「・・・リール5?7が停止すると、入賞判定部26はリール制御部24からのデータを参照してシンボルの組み合わせを確認する。この確認の結果、大入賞,中入賞,小入賞が得られているときには、これらの入賞の種類を表す入賞信号がホッパー制御部29に入力される。ホッパー制御部29は、入賞の種類ごとに配当コインの枚数を対応づけた入賞配当テーブル30を参照し、規定枚数の配当コインを払い出すようにホッパー装置31の駆動を制御する。」(段落【0010】)
(e)「入賞確認の結果、サービス入賞が得られているときには、入賞判定部26は再ゲーム信号を発生してこれをクレジット制御部32に入力する。クレジット制御部32は再ゲーム信号が供給される度に、その個数をクレジットカウンタ33に積算する。・・・再ゲーム信号発生部34は、再ゲームボタン16が操作されたときにクレジット制御部32に再ゲームスタート信号を入力し、これによりクレジット制御部32は始動制御部22にスタート許可信号を与える。・・・」(段落【0011】)

7.同じく、甲第7号証(特開平5-76637号公報)には、電子ゲーム機に関して、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】メダルなどの遊技媒体を賭けてゲームが実行された後、そのゲーム結果に応じて前記遊技媒体の払出数が決定される電子ゲーム機であって、・・・2個以上の第1の可動体と、・・・前記第1の可動体の中間位置に配置される第2の可動体と、各可動体を個別に駆動しかつ所定の位置に前記シンボルが停止するよう各可動体を停止させる駆動部と、各可動体につき前記停止位置に停止したシンボルを検出するシンボル検出部と、前記シンボル検出部により検出された第1,第2の各可動体のシンボルを組み合わせ・・・に基づいて、遊技媒体の払出数を決定する演算部とを備えて成る電子ゲーム機。」(【特許請求の範囲】)
(b)「【作用】メダルなどの遊技媒体を賭けてゲームが実行されると、各可動体が駆動部により駆動され、かつ駆動部により停止されて所定の停止位置にいずれかシンボルが停止し、各シンボルはそれぞれシンボル検出部によって検出される。前記シンボル検出部により検出された各シンボルから演算式が設定され、・・・遊技媒体の払出数が決定される。・・・」(段落【0006】)
(c)「このスロットマシンでは、前記演算結果Pが一定の数値に達すると、以後複数回のゲームをメダルの投入なしで行えるボーナスゲームを設定している。この実施例では、前記演算結果Pが30≦P<50ならば3回、50≦P<70であれば8回,P≧70であれば15回のゲームが行えるように設定されており、・・・。」(段落【0015】)
(d)「図3は、前記リール1a,1b,1cに描かれた各シンボルを表したものである。各リールには、それぞれ20個のシンボルが等配列に表されており、両端のリール1aおよびリール1bには「0」?「9」の数値に関わるシンボルが、中間のリール1cには演算符号に関するシンボル「+」,「-」,「×」,「÷」が、・・・等配列に表されている。この実施例では、各リール1a,1bには、「0」,「1」が各7個、「2」,「7」が各4個、他の数字は各3個ずつランダムに配されている。また、リール1cにおいては、「+」,「-」が各6個、「×」,「÷」が各4個ランダムに配されているが、・・・」(段落【0017】)

8.同じく、甲第8号証(特開昭58-185184号公報)には、スロツトマシンのリ-ル駆動方法に関して、以下の記載がある。
(a)「(1)リール毎にモータが設けられており、これらのモータを任意に停止させることができるスロツトマシンにおいて、通常のゲーム中はモータが高速回転し、ボーナスゲーム中はモータが低速回転するようにした・・・リ-ル駆動方法。(2)前記モータはパルスモータである・・・リ-ル駆動方法。」(特許請求の範囲)
(b)「従来から各種の特長をもつたスロツトマシンが市販されており、例えば・・・ある特定の絵柄が並ぶと、少なくとも次回のゲーム(ボーナスゲーム)は1個のリールに特定の絵柄が出ると、一定数のメダルが排出されるもの等がある。これらのうちボ-ナスゲ-ムの機能をもつたスロツトマシンは、入賞し易くしようとするものであるが、リールは高速回転しているから、やはり入賞することが困難であつた。」(1頁右下欄14行?2頁左上欄5行)
(c)「そして、スタートスイツチ22がONすると、ゲームプログラムが実行され、先ずソフト的に発生させたパルスをモ-タ制御回路26?28に供給する。これにより、パルスモ-タ29?31は回転を開始し、一定時間後に定速回転となる。通常のゲームではパルスモ-タ29?31は高速回転し、ボーナスゲーム中は周波数の低いパルスを用いることによつて低速回転する。」(3頁左上欄1?9行)


〔2〕対比・判断(特許法第29条の2の規定違反について検討)
1.本件訂正発明と甲第1号証記載の発明との対比
本件訂正発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「機体の前面」,「リール表示窓3」,「遊戯者」,「スロットマシン2」,「ROM17」,「CPU16内の判定部32」,「CPU16からの指令を受けるホッパ駆動部24」,「CPU16内のゲーム制御プログラム切り換え手段」が、本件訂正発明の「フロントパネル」,「表示部」,「遊技者」,「スロットマシン」,「図柄記憶手段」,「図柄判断手段」,「メダル払い出し手段(或いは、メダル払出手段)」,「特別遊技手段」にそれぞれ相当し、
また、甲第1号証記載の発明の「3個のリール1a,1b,1cの周面に表示された複数のシンボル」が、本件訂正発明の「複数の図柄」に相当することは明らかであるから、甲第1号証記載の発明の「3個のリール1a,1b,1cの回転を停止」,「シンボルの組合せ」,「特定のシンボルの組合せ」が、本件訂正発明の「図柄の移動表示を停止」,「図柄の組合せ」,「予め定めた所定の図柄の組み合わせ(或いは、所定の図柄の組合せ)」にそれぞれ相当し、
さらに、甲第1号証記載の発明の「特別ゲーム(ボーナスゲームD)」が、本件訂正発明の「特別の遊技」に相当することは明らかであるから、甲第1号証記載の発明の「通常のゲームから特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)に移行するようにした」が、本件訂正発明の「特別の遊技を行わせたりする」に相当し、これに関連して、甲第1号証記載の発明の「特別ゲーム(ボーナスゲームD)」に移行する組合せである「サクランボのシンボル52の組合せ」が、本件訂正発明の「特別図柄の組合せ」に相当し、
そして、甲第1号証記載の発明の「乱数発生器29」,「乱数発生器29が出力する乱数値を取り込み、この乱数値がROM17内に記憶された乱数値の範囲に含まれるか否かを特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)またはその他の通常入賞毎に判断する」,「CPU16内の抽選部31」,「特別ゲーム(ボーナスゲームA?D)とその他の通常入賞にかかる出現確率」が、本件訂正発明の「乱数発生手段」,「乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断する」,「入賞抽選手段」,「抽選確率データ」にそれぞれ相当するから、
両者は、
「フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、
予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段と、
この図柄記憶手段に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段と、
この図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、
上記図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段とからなり、
乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データを備えたスロットマシン。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
「メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せ」について、本件訂正発明が、「一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せと」があるのに対し、甲第1号証記載の発明では、一の組合せである特別図柄の組合せ(サクランボのシンボル52の組合せ)はあるものの、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せがあるのか否か定かでない点。
<相違点2>
上記相違点1に関連して、本件訂正発明が、「メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにした」のに対し、甲第1号証記載の発明では、メダル払い出し手段(CPU16からの指令を受けるホッパ駆動部24)がそのような機能を有するのか否か定かでない点。
<相違点3>
「抽選確率データ」について、本件訂正発明が、「入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備え」ているのに対し、甲第1号証記載の発明では、抽選確率データ(出現確率)のうちの特別の遊技(特別ゲーム(ボーナスゲームD))を行わせる抽選確率データ(出現確率)を自由に変更できるものの、「通常抽選確率データ」と「高抽選確率データ」とを備えているのか否か定かでない点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
相違点1について検討するために甲第2?7号証をみると、甲第2号証には、92年6月にエレクトロコインジャパン(当時)より発表され、92年の12月にホールデビューを果たしたパチスロ「4号機」(「チェリーバー」)から、コインを投入しなくてもレバーを叩くだけで遊技可能となるリプレイ(再遊技)の機能が義務付けられたこと(記載事項(a)?(c)を参照。)が記載されており、
これによれば、1992年当時(甲第1号証記載の発明が開発・設計された時期とほぼ同時期と認められ、しかも、本件の出願前。)において、本件訂正発明のように、「リプレイの図柄の組合せ」を設けて「リプレイ」を行わせるようにすることが、周知の事項であったことが伺われるところ、
例えば、甲第3号証には、所要の硬貨を投入後所要数のドラムを始動用スイツチ及び停止スイツチの操作に依つて廻転又は停止させて、その外周面に描出せる所要の物品の絵又は図形等を器体の各開口部へ夫々露出させて之等の露出せる絵又は図形等の保持せる得点数の合計数の多寡に依つてゲームの等級を定め、最高得点数に該当する所要の物品の絵又は図形等を器体の開口部へ全部露出させたときには、別に硬貨を入れないでも再度ゲームを楽しみに行つてゲーム心を一層そゝらせることのできるような大当り装置であるリプレー装置を得るようにした遊戯器械が記載され、また、甲第4号証には、回転リールの絵柄に特定絵柄を設け、回転リールの停止時にこの特定絵柄が表われた時には、メダルの投入なしにスタートレバーの操作が行なえるように形成したスロットマシン(記載事項(a)を参照。)が記載され、また、甲第5号証には、1ゲームあたりの投資価値の入力操作によって発生されたスタート許可信号を受けた後、さらにスタート操作信号の入力に応答してシンボル列の移動表示を開始させるスタート制御手段を備えるとともに、シンボル列の移動停止時にシンボル表示窓に特定のシンボルが現れるか、あるいは特定のシンボルの組み合わせが生じたときには再ゲーム信号を発生させ、この再ゲーム信号によってスタート許可信号を得て投資価値の入力操作(コインの投入)がなくてもゲームの実行、即ち、全ての入賞ラインを有効化させた状態(3枚のコインを投入したのと等価な状態)で1回のゲームを行うことが可能となるサービス入賞を設けたスロットマシン(記載事項(a)(b)を参照。)が記載され、また、甲第6号証には、シンボル列の移動停止時にシンボル表示窓に特定のシンボルが現れるかあるいは特定のシンボルの組み合わせが生じたときには再ゲーム信号を発生させ、この再ゲーム信号に基づいてスタート許可信号を得て投資価値の入力操作(コインの投入操作)がなくてもゲームの実行が可能となるスロットマシン(記載事項(a)(b)を参照。)が記載され、さらに、甲第7号証には、リール1a,1bに描かれた数値のシンボルとリール1cに描かれた演算符号のシンボルとの組み合わせにより演算を行い、その演算結果Pが一定の数値に達すると、以後複数回のゲームをメダルの投入なしで行えるボーナスゲームを設定したスロットマシン(記載事項(a)?(d)を参照。)が記載されていることからみて、
甲第1号証記載の発明が開発・設計された時点において、本件訂正発明のように、「リプレイの図柄の組合せ」を設けて「リプレイ」を行わせるようにしたスロットマシンが、従来から周知のものであったことは明らかである。
ところで、甲第4号証に記載のスロットマシンは、メダルの払い出しを行なうような組み合わせでない場合は、次に回転を停止した回転リール12の絵柄13中に引き分けとなるような特定絵柄があるか否かが判定装置によって判定され、特定絵柄がない場合には1ゲームが終了し、特定絵柄がある場合にはメダル投入後の状態即ちステップ45の前に戻って新たなメダルの投入なしに再ゲームが行なえることとなるものであって、「再ゲーム」入賞の際には、メダルの払い出しが行なわれないもの(記載事項(b)(c)及び第2図のフローチャートを参照。)であり、また、甲第5号証に記載のスロットマシンは、ホッパー制御部29が、入賞の種類ごとに配当コインの枚数を対応づけた入賞配当テーブル30を参照して、大,中,小のいずれかの入賞の場合には、規定枚数の配当コインを払い出すようにホッパー装置31の駆動を制御し、また、サービス入賞が得られているときには、再ゲーム信号をコイン検出信号発生部32に供給することで、3枚のコイン投入が行われたのと等価な信号をコインカウンタ21に入力して、始動制御部22にスタート許可信号を入力するようにしたものであって、「サービス入賞」の際には、コインの払い出しが行なわれないもの(記載事項(e)(f)及び図3のフローチャートを参照。)であり、さらに、甲第6号証に記載のスロットマシンは、入賞判定部26がリール制御部24からのデータを参照してシンボルの組み合わせを確認し、大入賞,中入賞,小入賞が得られているときには、これらの入賞の種類を表す入賞信号が、ホッパー制御部29に入力され、ホッパー制御部29が、入賞の種類ごとに配当コインの枚数を対応づけた入賞配当テーブル30を参照し、規定枚数の配当コインを払い出すようにホッパー装置31の駆動を制御し、サービス入賞が得られているときには、入賞判定部26は再ゲーム信号を発生して、これをクレジット制御部32に入力するようにしたものであって、「サービス入賞」の際には、コインの払い出しが行なわれないもの(記載事項(d)(e)及び図3のフローチャートを参照。)であるから、
甲第1号証記載の発明が開発・設計された時点において、本件訂正発明のように、「リプレイ」の際に、メダル或いはコインの払い出しを行なわないようにしたスロットマシンが、従来から周知のものであったことも明らかである。
そして、相違点1に係る「メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せ」に「一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せと」があるとの発明特定事項については、甲第1号証記載の発明に対して、その開発・設計当時、スロットマシンに普通に採用されて技術常識といえる「リプレイ」という入賞を設定するとともに、当該「リプレイ」の入賞のメダル払い出し態様を、これも、その当時、スロットマシンにメダル払い出し態様として普通に採用されて技術常識といえる「メダルの払い出しが伴わない」との態様に設定したにすぎないものといわざるをえない。
したがって、相違点1に係る「メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せ」に「一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せと」があるとの発明特定事項については、甲第1号証記載の発明において、メダルの払い出しが伴わない図柄の組合せに関して、周知技術を単に付加したものに相当するといわざるをえないから、当該発明特定事項の点において、本件訂正発明が、甲第1号証記載の発明に比して、格別のものであるということができない。
<相違点2について>
相違点2について検討する前に、本件訂正発明における「メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにした」について検討すると、
例えば、本件特許明細書の段落【0020】の「スロットマシン10内部の適宜箇所には、スロットマシン10を電気的に制御する電気的制御装置130が設けてある。この電気的制御装置130は、CPU(中央演算装置)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等からなるマイクロコンピュータにより構成されている。」との記載、同じく、段落【0022】の「そして、電気的制御装置130の出力側には、メダルを遊技者に払い出すホッパー装置140と、・・・が接続されている。電気的制御装置130は、・・・この図柄判断手段132の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すメダル払出制御手段133と、・・・を備える。」との記載、同じく、段落【0024】の「上記メダル払出制御手段133は、上記図柄判断手段132にもとづいて、停止した図柄の組合せが入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出す制御を行う手段であって、例えば、・・・メダルの払い出しを制御し、「リプレイ」では、前回ゲームである、メダルを3枚投入したゲームを再び行わせる制御を行う。」との記載によれば、
本件訂正発明において、「リプレイ」時に、「図柄判断手段132」にもとづいて行われる「メダル払出制御手段133」による「前回ゲームである、メダルを3枚投入したゲームを再び行わせる制御」は、「マイクロコンピュータ」により構成された「電気的制御装置130」に依拠するものと認められる。
ところで、甲第1号証記載の発明も、メダル払出手段(ホッパ駆動部24)が、CPU16からの指令を受けて駆動されるものであるから、電気的制御装置に依拠するメダル払出手段としては、本件訂正発明のものに比して、格別の差異はないものということができるところ、
例えば、甲第5号証に記載のスロットマシンも、入賞配当テーブル30を参照して、大,中,小のいずれかの入賞の場合には、規定枚数の配当コインを払い出すようにホッパー装置31の駆動を制御するホッパー制御部29が、コインの払い出しが行なわれないサービス入賞が得られているときには、再ゲーム信号をコイン検出信号発生部32に供給することで、3枚のコイン投入が行われたのと等価な信号をコインカウンタ21に入力して、始動制御部22にスタート許可信号が入力されるようにしたもの(記載事項(e)(f)及び図3のフローチャートを参照。)であって、上記「ホッパー制御部29」は、サービス入賞後の再ゲーム信号を供給しているものであるから、メダル払出手段(ホッパー制御部29)に再遊技を行わせるようにすることは、スロットマシンにおいて従来から行われていることであり、
しかも、甲第1号証記載の発明におけるCPU16からの指令を受けて駆動されるメダル払出手段(ホッパ駆動部24)に再遊技の駆動制御を行わせるようにすることは、上記CPU16による駆動制御のプログラムを設計する上で、当業者が適宜決定する程度の事項にすぎないものと認められるから、
相違点2に係る「メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにした」との発明特定事項の点において、上記<相違点1について>の検討を併せ考慮すると、本件訂正発明が、甲第1号証記載の発明に比して、格別のものであるということができない。
<相違点3について>
甲第2号証には、92年6月にエレクトロコインジャパン(当時)より発表され、92年の12月にホールデビューを果たしたパチスロ「4号機」(「チェリーバー」)が、コインを増やす手段としてビッグの他にシングルボーナスとその集中役を搭載しており、「チェリーボーナス」と称される集中役は、突入確率が約910?1365分の1。集中突入時はシングルボーナスが約4.4分の1という高確率(通常時は44分の1)で揃い続けるものであること(記載事項(b)(c)を参照。)が記載されており、
これによれば、1992年当時(甲第1号証記載の発明が開発・設計された時期とほぼ同時期と認められ、しかも、本件の出願前。)において、本件訂正発明のように、特別の遊技(シングルボーナス)が成立する抽選確率データとして、通常抽選確率データ(通常時の44分の1)と高抽選確率データ(約4.4分の1)とを備えることが、周知の事項であったことが伺われるところ、
例えば、甲第5号証に記載のスロットマシンは、入賞判定部26が、乱数サンプリング部25から入力された乱数値と入賞確率テーブル27とを対照して実行したゲームについての入賞の種類(ハズレ,サービス入賞も含む)を決定して、当該入賞の種類を表すデータをリール制御部24に入力し、その後、ストップボタン11?13の操作によりリール5?7が停止すると、入賞判定部26が、リール制御部24からのデータを参照してシンボルの組み合わせを確認して、その結果が大入賞,中入賞,小入賞,サービス入賞のときには、ホッパー制御部29にホッパー装置31の駆動を制御させるものにおいて、入賞確率テーブル27を、ハズレ及びサービス入賞の点でそれぞれ高確率或いは低確率となる第1入賞確率テーブル27A及び第2入賞確率テーブル27Bを備えているもの(記載事項(c)?(e)を参照。)であり、
また、特開平5-177041号公報(平成5年7月20日公開)には、通常時と確率向上時とを備えたスロットマシン(段落【0001】,【0032】?【0034】等の記載を参照。)が記載され、特開平5-277250号公報(平成5年10月26日公開)には、低確率と高確率とを備えたスロットマシン(段落【0011】,【0035】,【0077】等の記載を参照。)が記載され、特開昭60-148575号公報には、通常の停止絵柄組合せテーブル(通常テーブル)とアタリの組合せの出る確率を特別に高くした絵柄組合せテーブル(特別テーブル)とを備えたスロットマシン(特許請求の範囲,4頁右上欄12行?同頁右下欄4行等の記載を参照。)が記載されていることからも解るように、
甲第1号証記載の発明が開発・設計された時点において、本件訂正発明のように、「抽選確率データ」として、「通常抽選確率データ」と「高抽選確率データ」とを備えたスロットマシンが、従来から周知のものであったことは明らかである。
したがって、相違点3に係る「入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備え」との発明特定事項については、甲第1号証記載の発明において、抽選確率データのうちの特別の遊技を行わせる抽選確率データを自由に変更することに関して、周知技術を単に付加或いは置換したものに相当するといわざるをえないから、当該発明特定事項の点において、本件訂正発明が、甲第1号証記載の発明に比して、格別のものであるということができない。

3.効果・判断
本件訂正発明の効果は、願書に添付した明細書又は図面の記載において、段落【0032】の「【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1記載の発明によれば、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるから、特別図柄の出現する抽選確率が高確率となっても、入賞図柄の出現にともなうメダルの払出枚数は増加せず、ひいては期待値を増加させることがない。」との記載、及び、段落【0033】の「したがって、各図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができるので、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。」との記載によれば、当該諸効果は、本件訂正発明における「停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる」との発明特定事項に依拠するものと認められ、上記各相違点による新たな効果ではないものということができ、本件訂正発明における上記各相違点に係る発明特定事項については、甲第1号証記載の発明に既に内在されていた技術事項であるか、または、甲第1号証記載の発明における技術事項に対する周知慣用技術の単なる付加或いは置換によるものであって、課題解決のための具体化手段における微差であるといわざるをえないものであるから、本件訂正発明は、甲第1号証記載の発明と実質的に同一であるとするのが相当である。


【6】むすび
以上のように、本件訂正発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開された先願の願書に最初に添付された明細書又は図面(甲第1号証)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、この出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないのであるから、本件訂正発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号に該当し、その他の無効理由について検討するまでもなく、無効とすべきでものである。


審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スロットマシン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出したり特別の遊技を行わせたりするスロットマシンにおいて、
予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段と、
この図柄記憶手段に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段と、
この図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、
上記図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段とからなり、
上記メダル払出手段は、図柄判断手段の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、
乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えたことを特徴とするスロットマシン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スロットマシンに関し、特にメダルの払出条件を制御して遊技者及び遊技店の利益の公平を図るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のスロットマシンでは、フロントパネルに設けた表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、図柄の移動表示を停止させて、表示部の停止表示態様が予め定めた所定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に所定数のメダルを払い出すものが知られている。そして、メダルを払い出すための所定の図柄の組み合わせの中には、いわゆるボーナスゲームといわれる特別の遊技を行わせるための特定の図柄の組み合わせも含まれており、この特定の図柄の組み合わせであった場合には、所定数のメダルを払い出した後、例えばボーナスゲームを行わせている。
【0003】
また、遊技の興趣を高めるために、予め定めた所定の条件が整った場合には、特別の遊技、例えばボーナスゲームのうちシングルボーナスを行わせるための特別図柄の組み合わせ、例えば「BAR」「BAR」「BAR」が出現する抽選確率を通常よりも高確率、例えば通常の10倍の確率に変更している。このスロットマシンにおいては、遊技者がメダル1枚の投入に対して得られるであろうメダルの枚数、いわゆる期待値は、一定の範囲になるよう制御されている。これは、期待値があまりにも小さい場合には、遊技の興趣を著しく損ねる一方、期待値が大きすぎる場合には、いたずらに射幸心を煽るばかりでなく遊技店の利益も損なわれてしまい、健全な遊技が行えなくなるためである。したがって、期待値は、例えば、0.35?0.9の範囲内になるよう制御されている。
【0004】
上記した期待値について、更に詳しく説明すると、期待値は次式により表される。
期待値=払出枚数÷投入枚数×確率
例えば、メダルを3枚投入した場合に、ビッグボーナスを行わせるための図柄の組み合わせである「7」「7」「7」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/400とすると、期待値=15÷3×(1/400)=0.0125000(小数点以下8位四捨五入、以下の式において同様)となる。
【0005】
同様に、シングルボーナスを行わせるための図柄の組み合わせである「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が6枚で、この組み合わせの抽選確率が1/35とすると、
期待値=6÷3×(1/35)=0.0571429となり、
「フルーツ1」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/25とすると、
期待値=15÷3×(1/25)=0.2000000となり、
「フルーツ2」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が5枚で、この組み合わせの抽選確率が1/15とすると、
期待値=5÷3×(1/15)=0.1111111となり、
「チェリー」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が4枚で、この組み合わせの抽選確率が1/300とすると、
期待値=4÷3×(1/300)=0.0044444となり、
「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となるため、払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し、この組み合わせの抽選確率が1/7.3とすると、
期待値=3÷3×(1/7.3)=0.1369863となる。
【0006】
そして、各図柄の組み合わせの期待値を合計したものが、その遊技機における全体の期待値となり、上記した例では、図4に示すように、全体の期待値が0.5221847となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来のスロットマシンでは、所定の条件が整い、特別の遊技、例えばシングルボーナスゲームを行わせるための特別図柄の組み合わせ、例えば「BAR」「BAR」「BAR」が出現する抽選確率を通常よりも高抽選確率(例えば通常の10倍)に変更した場合に、この特別図柄の組み合わせに対しても所定数のメダルを払い出すため、この特別図柄の出現回数の増加に伴い、メダルの払出枚数が増加してしまい、期待値が予め定めた範囲を超えることとなる。
【0008】
上記した例によれば、図5に示すように、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が6枚で、この組み合わせの抽選確率が1/3.5とすると、期待値=6÷3×(1/3.5)=0.5714286となり、他の図柄の組み合わせの期待値に変更はないものとすると、全体の期待値は1.0364704となり、所定の範囲を超えてしまう。
【0009】
このため、期待値を所定の範囲内におさめるために、特別図柄の組合せである「BAR」「BAR」「BAR」以外の図柄の組み合わせ、例えば「フルーツ1」の図柄の組み合わせが出現する抽選確率を低く設定することが考えられる。上記した例によれば、図6に示すように、「フルーツ1」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率を変更して1/79とすると、期待値=15÷3×(1/79)=0.0632911となり、他の図柄の組み合わせの期待値に変更はないものとすると、全体の期待値は0.8997616となり、所定の範囲内に入る。
【0010】
しかし、この場合には、「フルーツ1」の図柄の組み合わせの出現する抽選確率が低くなることから、通常の遊技と比較して遊技内容が極めて不自然となり、遊技者に違和感を与え、遊技の興趣を損ねることとなる。また、所定の図柄の組み合わせが出現する抽選確率を低く抑えることなく、期待値を所定の範囲内におさめようとすると、シングルボーナスゲームを行わせるための特別図柄の組み合わせが出現する抽選確率を高めることができず、遊技の興趣を高めようとした意図に反することとなる。
【0011】
例えば、各図柄の組み合わせの期待値が上記した例によるとすれば、全体としての期待値を所定の範囲内、例えば、0.8998245となるようにするためには、図7に示すように、特別図柄の組み合わせである「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせの抽選確率を1/4.6としなければならず、通常遊技の約7.61倍の高確率としかすることができない。
【0012】
本発明は、上記した従来の技術の有する問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、遊技の興趣を損ねることなく、遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができるスロットマシンを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。請求項1記載の発明は、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段(131)と、この図柄記憶手段(131)に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段(132)と、この図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しが伴う図柄の複数の組合せと、メダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとがあり、更にメダルの払い出しが伴わない図柄の複数の組合せとして、一の組合せである特別図柄の組合せと、他の一の組合せであるリプレイの図柄の組合せとがあり、停止した図柄がメダルの払い出しを伴う図柄の組合せの場合には、メダル払い出し手段から遊技者に対してメダルを払い出し、上記図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技手段(170)とからなり、上記メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組み合わせが、予め定められたリプレイの図柄の組み合わせである場合には、再遊技を行わせるようにし、乱数発生手段から発生させた一の乱数値と比較して入賞を判断するために入賞抽選手段で用いる抽選確率データとして、通常抽選確率データと、この通常抽選確率データの抽選確率よりも特別図柄の組合せが出現する確率が高い高抽選確率データとを備えたことを特徴とする。
【0014】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、図柄判定手段によって、停止した図柄の組合せが、図柄記憶手段(131)に記憶されている、予め定めた所定の図柄の組合せと一致するか否かが判断される。メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴う入賞図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出す。
【0015】
一方、特別遊技手段(170)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴わない特別図柄の組合せである場合に、遊技者にメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる。このように、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるから、所定の条件が整って、特別図柄の出現する抽選確率が高抽選確率となっても、入賞図柄の出現にともなうメダルの払出枚数は増加せず、ひいては期待値を増加させることがない。
【0016】
このため、入賞図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができる。したがって、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。また、メダル払出手段(160)は、図柄判断手段(132)の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、メダルの払い出しを伴わない「リプレイ」の図柄の組合せである場合には、遊技者に対して再遊技を行わせる。
【0017】
【実施例】
図1,2は、本発明の一実施例を示すものであり、図1はスロットマシンの正面図、図2は電気的制御装置の概略ブロック図を各々示す。図1中、10はスロットマシンを示し、このスロットマシン10は、前扉の表面にフロントパネル20を設けている。
【0018】
上記フロントパネル20のほぼ中央部には、図1に示すように表示部30を構成する3個の表示窓31?33を横並びに形成している。各表示窓31?33の内部には、各回転リール40?42の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓31?33には、回転リール40?42を回転させることにより、上下方向に3個の図柄を所定間隔で高速で移動表示させることができる。また、表示窓31の向かって左横には、有効となるラインを表示する有効ライン表示部50が設けてある。
【0019】
上記スロットマシン10の表面には、図1に示すように、表示窓33の向かって右斜め下方に、メダルを投入するメダル投入口60を設け、メダル投入口60の向かって右側にはクレジットメダルの枚数を表示するクレジット表示部70が設けてある。また、表示窓31の向かって左斜め下方には、各表示窓31?33に表示された図柄の移動表示を開始させるためのレバー状のスタートスイッチ80と、各表示窓31?33の下方に位置するとともに、各表示窓31?33に移動表示されている図柄の移動表示を各々個別に停止させるためのボタン状の3個のストップスイッチ90?92とを設けている。さらに、上記したストップスイッチ92の向かって右側には、クレジットメダルを投入するためのボタン状のクレジット投入スイッチ100と、クレジットメダルを排出させるためのボタン状の精算スイッチ110とが、スロットマシン10の表面に配置されている。
【0020】
また、上記スロットマシン10の表面下方には、図1に示すように、排出されたメダルが溜まり込むメダル排出皿120が設けられている。スロットマシン10内部の適宜箇所には、スロットマシン10を電気的に制御する電気的制御装置130が設けてある。この電気的制御装置130は、CPU(中央演算装置)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等からなるマイクロコンピュータにより構成されている。
【0021】
図2に示したブロック図により、電気的制御装置130のうち遊技制御を行う部分の概略構成を説明する。この電気的制御装置130の入力側には、クレジットメダルを遊技メダルとして投入するためのクレジット投入スイッチ100と、回転リール40?42の回転を開始させるスタートスイッチ80と、各回転リール40?42の回転を停止させるストップスイッチ90?92とが接続されている。
【0022】
そして、電気的制御装置130の出力側には、メダルを遊技者に払い出すホッパー装置140と、遊技者に特別の遊技(例えばシングルボーナスゲーム)を行わせる特別遊技実行手段150とが接続されている。電気的制御装置130は、予め定めた所定の図柄の組合せを記憶する図柄記憶手段131と、この図柄記憶手段131に記憶された図柄の組合せが、停止した図柄と一致しているか否かを判断する図柄判断手段132と、この図柄判断手段132の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すメダル払出制御手段133と、上記図柄判断手段132の判断にもとづいて、停止した図柄の組合せが、上記所定の図柄の組合せのうちの特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別遊技実行制御手段134とを備える。
【0023】
なお、上記したメダル払出制御手段133とホッパー装置140とからメダル払出手段160が構成され、特別遊技実行制御手段134と特別遊技実行手段150とから特別遊技手段170が構成されている。上記の予め定めた所定の図柄の組合せは、遊技者に対してメダルを払い出す入賞図柄の組合せ又は遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせる特別図柄の組合せからなる。本実施例では、例えば入賞図柄の組合には、ビッグボーナスゲームを行わせるための「7」「7」「7」、フルーツ(例えばオレンジ)の組み合わせである「フルーツ1」、フルーツ(例えばリンゴ)の組み合わせである「フルーツ2」、チェリーの組み合わせである「チェリー」、再遊技を行わせるための「リプレイ」の5種類の組み合わせがあり、特別図柄の組合せには、シングルボーナスを行わせるための「BAR」「BAR」「BAR」の組合せがある。
【0024】
上記メダル払出制御手段133は、上記図柄判断手段132にもとづいて、停止した図柄の組合せが入賞図柄の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出す制御を行う手段であって、例えば、投入メダル数が3枚の場合に、「7」「7」「7」の組合せでは、15枚、「フルーツ1」の組合せでは15枚、「フルーツ2」の組合せでは5枚、「チェリー」の組合せでは4枚のメダルの払い出しを制御し、「リプレイ」では、前回ゲームである、メダルを3枚投入したゲームを再び行わせる制御を行う。
【0025】
上記特別遊技実行制御手段134は、上記図柄判断手段132にもとづいて、停止した図柄の組合せが特別図柄の組合せ、例えば「BAR」「BAR」「BAR」の組合せである場合に、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技、例えば「JAC」ゲームを1回だけ行わせる制御を行う。この[JAC]ゲームは、例えば「JAC」「JAC」「JAC」を揃えると、15枚のメダルを払い出すことができる。
【0026】
つぎに、上記構成にもとづいて動作するスロットマシン10における期待値を図3にもとづいて説明する。この期待値は、上記したように期待値=払出枚数÷投入枚数×確率の式で表され、本実施例では、0.35?0.9の範囲になるように制御されている。
【0027】
この期待値を、例えばメダルを3枚投入した場合について算出すると、図3に示すように、ビッグボーナスを行わせるための図柄の組み合わせである「7」「7」「7」の組み合わせに対して、メダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/400とすると、
期待値=15÷3×(1/400)=0.0125000
となり、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせに対しては、特別遊技手段170によって、メダルの払い出しを行わずに、直ちにシングルボーナスの遊技、例えば「JAC」「JAC」「JAC」を揃えることにより15枚のメダルを払い出す、いわゆる「JACゲーム」を行わせる。
【0028】
したがって、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせに対して払い出されるメダルの枚数が0枚で、この組み合わせの抽選確率が1/35とすると、期待値=0÷3×(1/35)=0.0000000となり、一方、ここで、いわゆる10倍役物の状態となって、シングルボーナスを行わせるための「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせの抽選確率を通常より10倍高確率の1/3.5とした場合であっても、期待値は変更されず、上記した値のままである。具体的には、特別遊技手段170によって、この「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせに対してはメダルの払い出しを行わずに、直ちにシングルボーナスの遊技、例えば「JACゲーム」を行わせる。
【0029】
したがって、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせの出現する抽選確率が10倍に向上しても、上記と同様に、払い出されるメダルの枚数が0枚で、この組み合わせの抽選確率が1/3.5とすると、
期待値=0÷3×(1/3.5)=0.0000000となり、
「フルーツ1」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が15枚で、この組み合わせの抽選確率が1/25とすると、
期待値=15÷3×(1/25)=0.2000000となり、
「フルーツ2」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が5枚で、この組み合わせの抽選確率が1/15とすると、
期待値=5÷3×(1/15)=0.1111111となり、
「チェリー」の組み合わせに対してメダル払出制御手段133によって払い出されるメダルの枚数が4枚で、この組み合わせの抽選確率が1/300とすると、
期待値=4÷3×(1/300)=0.0044444となり、
「リプレイ」の組み合わせに対しては、実際には、リプレイが成立したゲームにおいて投入されたメダル枚数と同一のメダル枚数を投入した場合と同一のゲームが可能となるため、払い出されるメダルの枚数が3枚と換算し、この組み合わせの抽選確率が1/7.3とすると、
期待値=3÷3×(1/7.3)=0.1369863となる。
【0030】
したがって、「BAR」「BAR」「BAR」の組み合わせの期待値は、常に「0.0000000」であるから、入賞図柄の組合せの抽選確率を変更せずに、全体の期待値の合計は0.4650418となって、所定の範囲内におさまることとなる。なお、所定の条件が整うと、特別図柄、例えば「BAR」「BAR」「BAR」の出現する抽選確率が高確率となるスロットマシンとしては、図8に示すように、例えば乱数を順次発生させる乱数発生手段200と、スタートスイッチ80からのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段200から順次発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する確率抽選手段201と、この確率抽選手段201により抽選された乱数値により、通常抽選確率か通常抽選確率より特別図柄の出現する確率が高い高抽選確率かの判定を行い、当該判定結果が通常抽選確率の場合には通常抽選確率判定信号を出力するとともに、高抽選確率の場合には高抽選確率判定信号を出力する確率判定手段202と、前記通常抽選確率201における通常抽選確率データと、高確率における高抽選確率データとを記憶する抽選確率データ記憶手段203と、前記確率判定手段202からの通常抽選確率判定信号の入力を条件に、前記抽選確率データ記憶手段203に記憶された通常抽選確率データを選択するとともに、高抽選確率判定信号の入力を条件に、前記抽選確率データ記憶手段203に記憶された高抽選確率データを選択する確率選択手段204と、前記乱数発生手段200から順次発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する入賞抽選手段205と、この入賞抽選手段205により抽選された乱数値と前記確率選択手段204により選択された通常抽選確率データ若しくは高抽選確率データとに基づいて、入賞を判定し、入賞信号を出力する入賞判定手段206と、この入賞判定手段206からの入賞信号に基づいて、遊技機を制御する遊技制御手段207とを備えたものが考慮される。
【0031】
また、上記実施例においては、通常抽選確率又は高抽選確率のいずれの状態においても、停止した図柄の組合せが特別図柄の組合せである場合に、特別遊技手段170によって、遊技者に対したメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせると説明した。しかし、異なる実施例においては、特別遊技手段170は、高抽選確率の状態においてのみ、停止した図柄の組合せが特別図柄の組合せである場合に、遊技者に対したメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるものであってもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1記載の発明によれば、停止した図柄の組合せが、予め定めた所定の図柄の組合せのうち、特別図柄の組合せである場合には、遊技者に対してメダルを払い出すことなく、特別の遊技を行わせるから、特別図柄の出現する抽選確率が高確率となっても、入賞図柄の出現にともなうメダルの払出枚数は増加せず、ひいては期待値を増加させることがない。
【0033】
したがって、各図柄の組み合わせが出現する確率を操作することなく、いわゆる期待値を所定の範囲内におさめることができるので、遊技の興趣を損ねることなく遊技者と遊技店との利益の公平を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るスロットマシンの正面図である。
【図2】
電気的制御装置の概略ブロック図である。
【図3】
本発明にかかるスロットマシンの期待値を示す説明図である。
【図4】
従来例の期待値を示す説明図である。
【図5】
シングルボーナスの確率を10倍に向上させた場合の期待値を示す説明図である。
【図6】
シングルボーナスの確率を向上させたままで、フルーツの確率を下げた場合の期待値を示す説明図である。
【図7】
期待値の範囲内でシングルボーナスの確率を向上させた場合の期待値を示す説明図である。
【図8】
特別図柄の出現する確率が高抽選確率となるスロットマシンの制御装置を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
10 スロットマシン 20 フロントパネル
30 表示部 31?33 表示窓
40?42 回転リール 50 有効ライン表示部
60 メダル投入口 70 クレジット表示部
80 スタートスイッチ 90?92 ストップスイッチ
100 クレジット投入スイッチ 110 精算スイッチ
120 メダル排出皿 130 電気的制御装置
131 図柄記憶手段 132 図柄判断手段
133 メダル払出制御手段 134 特別遊技実行制御手段
140 ホッパー装置 150 特別遊技実行手段
160 メダル払出手段 170 特別遊技手段
200 乱数発生手段 201 確率判定手段
202 抽選確率データ記憶手段 203 確率選択手段
204 入賞抽選手段 205 入賞判定手段
206 遊技制御手段
【図面】








 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-12-08 
結審通知日 2005-12-13 
審決日 2006-10-26 
出願番号 特願平5-297120
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斎藤 利久  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 三原 裕三
宮本 昭彦
藤田 年彦
塩崎 進
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2784879号(P2784879)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 薮 慎吾  
代理人 黒田 博道  
代理人 黒田 博道  
代理人 安富 康男  

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