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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B42F 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B42F 審判 訂正 発明同一 訂正する B42F 審判 訂正 2項進歩性 訂正する B42F 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B42F |
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管理番号 | 1166235 |
審判番号 | 訂正2007-390092 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2007-08-02 |
確定日 | 2007-10-05 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3421913号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3421913号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.本件特許についての手続の経緯 本件審判に係る特許第3421913号についての手続の概要は、次のとおりである。 ア.出願 :平成10年10月20日 (特願平10-298548号) イ.出願公開 :平成12年4月25日 (特開2000-118180号) ウ.補正書(自発)の提出 :平成12年12月28日 エ.拒絶理由の通知(発送日):平成14年11月19日 オ.意見書及び補正書の提出:平成15年 1月17日 カ.特許査定(発送日) :平成15年 3月18日 キ.登録 :平成15年 4月25日 (特許第3421913号) ク.特許公報発行 :平成15年 6月30日 ケ.本件訂正審判請求 :平成19年 8月 2日 2.本件審判請求の要旨 本件審判請求の要旨は、本件特許第3421913号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付された全文訂正明細書のとおりに訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1の 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。」 なる記載を、 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。」 と訂正する。 (2)訂正事項2 本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項2の 「 ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。」 なる記載を、 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。」 と訂正する。 (3)訂正事項3 本件特許明細書の段落【0007】1-9行の 「 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するため、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成を採っている。」 なる記載を、 「 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するため、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成を採っている。」 と訂正する。 (4)訂正事項4 本件特許明細書の段落【0009】1-9行の 「 【発明の実施の形態】 また、本発明は、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成も採用される。」 なる記載を、 「 【発明の実施の形態】 また、本発明は、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に談合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成も採用される。」 と訂正する。 3.当審の判断 3-1 特許法第126条第1項ただし書き、第3項及び第4項の要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否)について (1)訂正事項1について ア.訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に対して、訂正事項1にて下線を付した事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そこで、以下、訂正事項1における限定事項を、(訂正事項1-1)?(訂正事項1-3)に分説して、各々の記載根拠について訂正前の本件特許明細書段落記載を参照する。 (訂正事項1-1) 「前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、」 当該訂正事項1-1は、訂正前の本件特許明細書の段落【0014】の、 「この図において、綴じ具10は、被固定面としての背表紙11の内面側にベース固定具14を介して固定されたベース13と、このベース13の左右両側部分に配置されて内方に押圧操作可能な一対の操作部材15と、前記ベース13の左右両側にそれぞれ支持されるとともに、前記操作部材15に一部が保持される軸ピン17と、この軸ピン17に下端側が係脱可能に設けられた左右一対の綴じ板20,21と、各綴じ板20,21の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合するパイプからなる綴じ部材としての綴じ桿23とを備えて構成されている。」 なる記載を根拠とするものである。 上記記載によれば、綴じ具10は左右一対の綴じ板20,21を備え、かつ、各綴じ板20,21の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿23を備えているものであり、訂正事項1-1は訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 (訂正事項1-2) 「前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、前記外側部材の短寸幅方向に沿って相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、」 当該訂正事項1-2は、訂正前の本件特許明細書の段落【0016】の、 「この外側部材32の一方の面から起立する方向に連設された複数の貫通部材33と、」、 同段落【0017】の、 「前記貫通部材33は、(中略)相対する一対の関係に設けられている。この貫通部材33は、外側部材32に連なる起立部36と、この起立部36の上端から内向き、すなわち相対する他方の貫通部材33に向かう方向に屈曲されたフック部37とからなり、」 なる記載を根拠とするものである。 すると、訂正事項1-2は、上記記載と対応するものであるから、訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 なお、訂正事項1-2における外側部材とは、被固定面の外側に位置する部材であるが、この点については、上記訂正事項1-2において貫通部材が外側部材から起立し、かつ、その貫通部材が下記の訂正事項1-3において被固定面としての背表紙及びベースの穴に挿通されることからして、外側部材が被固定面に対してベースと反対側の外側に位置することが把握できる。 よって、訂正事項1-2は訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 (訂正事項1-3) 「前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベースに設けられた相互に連通する位置関係の穴に挿通され、」 当該訂正事項1-3は、訂正前の本件特許明細書の段落【0014】の、 「被固定面としての背表紙11」、 同段落【0020】の、 「この状態では、背表紙11とベース13の固定面部26に設けられた穴29,30は相互に連通した位置関係となる。(中略)前記穴29,30内に貫通部材33を挿通させる。」 なる記載を根拠とするものである。 上記記載によれば、背表紙及びベースに相互に連通する位置関係の穴が設けられており、かつ、これらの穴に貫通部材が挿通されるものであるから、訂正事項1-3も訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 以上のように、訂正事項1は、訂正前の本件明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであると共に、当該訂正事項1は請求項1を減縮するものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ.訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2に対して、訂正事項2にて下線を付した事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そこで、以下、訂正事項2における限定事項を、(訂正事項2-1)?(訂正事項2-2)に分説して、各々の記載根拠について訂正前の本件特許明細書段落記載を参照する。 (訂正事項2-1) 「前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、」 訂正事項2-1は、前記訂正事項1-1と同じ内容であり、前記で参照したように、訂正前の本件特許明細書の【0014】記載を根拠とするものであって、訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 (訂正事項2-2) 「前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、」 当該訂正事項2-2は、訂正前の本件特許明細書の段落【0034】の、 「この一方、クサビ部材71は貫通部材70の穴75に挿抜可能な一対の挿通軸部78,78を備えた操作板79と、この操作板79に連設されるとともに、前記挿通軸部78,78の内側隣設位置に設けられたフック部80とを備えて構成されている。」 なる記載を根拠とするものである。 上記記載によれば、クサビ部材71は操作板79とフック部80を備えており、操作板79は貫通部材70に挿抜可能であり、フック部80は操作板79に設けられているから、クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成されているものであるから、訂正事項2-2は、訂正前の本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。 なお、訂正事項2-2は訂正前の本件特許明細書に第3実施例として記載された事項であるのに対して、訂正事項2-1が直接的に記載されているのは訂正前の本件特許明細書の第1実施例であるが、以下のごとく、訂正事項2-1は第3実施例にも共通する構成であって、訂正事項2-1、2-2は共に本件特許明細書の第3実施例の構成として把握できる。 訂正前の本件特許明細書の段落【0024】には、 「次に、本発明の前記以外の実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施例と同一若しくは同等の構成部分については、必要に応じて同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。また、綴じ具はベースを概略的に示すものする。」 と、さらに、同段落【0034】には、 「[第3実施例]図7ないし図9には、本発明の第3実施例が示されている。」 と記載されており、図8、図9にはベース13が記載されていることが認められる。 そして、訂正前の本件特許明細書記載の第3実施例では、綴じ具の説明は省略されているものの、綴じ具のうちのベースには第1実施例と同じ符号「13」が付されており、このベース13を含む第3実施例の綴じ具が、第1実施例の綴じ具と同一であることが把握できる よって、第1実施例にて記載された綴じ具の具体的構成である訂正事項2-1は、第3実施例にも共通する構成であり、よって、訂正事項2-1、1-2を含む訂正事項2の全体が第3実施例の構成であることを把握できる。 すると、訂正事項2は、訂正前の本件特許明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである。 以上のように、訂正事項2は、訂正前の本件明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであると共に、当該訂正事項2は請求項2を減縮するものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ.訂正事項3は、特許請求の範囲の記載が訂正事項1によって訂正されることに伴い、発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載に整合するように整理したものであり、明りようでない記載の釈明を行うものと認める。 エ.訂正事項4は、特許請求の範囲の記載が訂正事項2によって訂正されることに伴い、発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載に整合するように整理したものであり、明りようでない記載の釈明を行うものと認める。 したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、第3項及び第4項の要件を満たすものである。 3-2 特許法第126条第5項の要件(独立特許要件)について 次に、訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか検討する。 3-2-1 訂正明細書の請求項1ないし6に係る発明 本件審判請求書に添付した訂正明細書の請求項1ないし6に係る発明(以下、「訂正発明1ないし6」という)は、その訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項2】 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項3】 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられるとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項4】 前記貫通部材と前記クサビ部材には相対する傾斜面がそれぞれ形成され、これら傾斜面の相対位置を変化する一方向にクサビ部材を差し込んだときに固定力が次第に増大することを特徴とする請求項1,2又は3記載の綴じ具のベース固定構造。 【請求項5】 前記貫通部材は、当該貫通部材の延出方向と略直交する方向に開通する穴を備え、この穴内に前記クサビ部材が差し込まれたときに被固定面に固定力が付与されることを特徴とする請求項1,2又は3記載の綴じ具のベース固定構造。 【請求項6】 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能なクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材は、前記貫通部材に隣設した位置で前記外側部材に屈曲可能に連設され、このクサビ部材を屈曲させることで当該クサビ部材が前記貫通部材に係合可能に設けられ、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。」 3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明 審判請求人は、本件訂正を行うにあたり、独立特許要件を自身で検討した際に参照した刊行物として以下の刊行物1ないし6を提出している。 また、本件出願に関し、審査の過程で通知された拒絶の理由においては、本件訂正前の請求項1ないし3あるいは5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願である特願平9-365177号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、とする理由1と、 本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された米国特許第3262454号明細書(以下、「刊行物7」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とする理由2とが掲げられている。 先願明細書:特願平9-365177号(特開平11-180085号) 刊行物1:米国特許第1769120号明細書(1930年) 刊行物2:実公昭47-27535号公報 刊行物3:米国特許第5322037号明細書(1944年) 刊行物4:実願平4-90985号(実開平6-44412号) のマイクロフィルム 刊行物5:特開平10-290641号公報 刊行物6:実願平3-18847号(実開平4-114108号) のマイクロフィルム 刊行物7:米国特許第3262454号明細書(1966年) ア.先願明細書(特開平11-180085号)について 【特許請求の範囲】 「【請求項1】 ファイル表紙と、 前記ファイル表紙に取り付けられる綴具と、 前記ファイル表紙または前記綴具に形成される連結用孔と、 前記ファイル表紙または前記綴具に形成され前記連結用孔に嵌入される連結用突部と、 前記綴具を前記ファイル表紙に留め付けて固定するため、前記連結用孔に嵌入された前記連結用突部に着脱可能に係着される固定具とを含むファイルであって、 前記固定具を前記連結用突部から離脱させて前記連結用突部を前記連結用孔から抜き出すことにより前記綴具と前記ファイル表紙とが分離される、ファイル。 【請求項2】 前記綴具は、 裏面が前記ファイル表紙に当接される基板と、 前記基板の幅方向の一方側に軸支される第1の可動板と、 前記基板の幅方向の他方側に軸支される第2の可動板と、 ファイリング時に起立される前記第1の可動板および前記第2の可動板の間に設けられる綴杆とを含み、 前記連結用孔は、前記基板を厚み方向に貫通して形成され、 前記連結用突部は、前記連結用孔を通って前記基板の裏面から表面へ突き出るよう前記ファイル表紙に設けられ、当該突き出た部分に前記基板の厚み方向と略直交する方向に延びるようにして少なくとも前記連結用孔の最大開口長さよりも長い前記固定具を挿入して係着させるための固定具挿入孔が形成され、 さらに前記基板の表面には、前記固定具挿入孔に挿通された前記固定具が勝手に抜け出ないよう係止するための係止手段が形成される、請求項1に記載のファイル。 【請求項3】 前記係止手段は、前記固定具挿入孔から抜け出す方向への前記固定具の移動を規制するため前記基板表面から突出した係止突部として形成され、 さらに、前記基板には、前記固定具を前記係止突部の上を乗り越えさせて係止を離脱させるために抉るための凹部が前記係止突部と対向する位置に形成された、請求項2に記載のファイル。 【請求項4】 前記ファイル表紙は、背表紙部と、 前記背表紙部の幅方向両側にヒンジ部を介して接続される表表紙部および裏表紙部とを含み、 前記綴具は前記背表紙部の内側面に取り付けられ、 前記表表紙部および前記裏表紙部の内側には、前記綴具の幅方向両側を収納するための収納凹部が当該内側面を凹ませて形成され、 しかも前記収納凹部の前記背表紙部と対向する端縁部は、前記綴具の幅方向両側の前記背表紙部と反対側の端部に当接するよう形成された、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のファイル。 【請求項5】 前記端縁部は、ファイル表紙の他の部分の厚みよりも肉厚に形成された、請求項4に記載のファイル。」 段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明はファイルに関し、特に、ファイル表紙に綴具を取り付けてなるファイルに関する。」 段落【0003】 「【発明が解決しようとする課題】今日、資源のリサイクル等を図るため、異なる材質ごとに分別して廃棄することが社会的に要請されている。しかしながら、従来のファイルは、ファイル表紙と綴具との分離が容易でなかった。」 段落【0004】 「それゆえに、本発明の主たる目的は、異なる材質の部材ごとに分別して廃棄することが容易なファイルを提供することである。」 段落【0005】 「【課題を解決するための手段】本発明にかかるファイルは、ファイル表紙と、ファイル表紙に取り付けられる綴具と、ファイル表紙または綴具に形成される連結用孔と、ファイル表紙または綴具に形成され連結用孔に嵌入される連結用突部と、綴具をファイル表紙に留め付けて固定するため、連結用孔に嵌入された連結用突部に着脱可能に係着される固定具とを含むファイルであって、固定具を連結用突部から離脱させて連結用突部を連結用孔から抜き出すことにより綴具とファイル表紙とが分離される、ファイルである。本発明にかかるファイルでは、連結用孔に嵌入された連結用突部に固定具を係着させることにより、綴具がファイル表紙に留め付けられて固定される。固定具を用いることにより、綴具とファイル表紙とを確実に連結させることができる。しかも、固定具を連結用突部から離脱させて連結用突部を連結用孔から抜き出すことにより、綴具をファイル表紙から容易に分離することができる。」 段落【0006】 「また、本発明にかかるファイルは、ファイル表紙と、ファイル表紙から突き出るよう形成された連結用突部と、連結用突部を嵌入するための連結用孔を有する綴具と、連結用突部を綴具に留め付けて固定するため、連結用孔に嵌入された連結用突部に着脱可能に係着される固定具とを含むファイルであって、固定具を連結用突部から離脱させて連結用突部を連結用孔から抜き出すことにより綴具がファイル表紙から分離されるようにしてもよい。この場合には、ファイル表紙の連結用突部を綴具の連結用孔に嵌入させることにより、ファイル表紙に対する綴具の位置決めが行われる。そして、その連結用突部に固定具を係着させて連結用突部を綴具に固定することにより、綴具がファイル表紙に対して固定される。固定具を用いることにより、綴具とファイル表紙とを確実に連結させることができる。しかも、固定具を連結用突部から離脱させて連結用突部を連結用孔から抜き出すことにより、綴具をファイル表紙から容易に分離することができる。」 段落【0011】 「【発明の実施の形態】図1は本発明にかかるファイルの一例を示す斜視図であり、図2は、その分解斜視図である。図1に示すファイル10は、互いに異なる材質の材料でなる綴具12およびファイル表紙100を含む。まず、ファイル表紙100について説明する。ファイル表紙100は、たとえば厚紙や合成樹脂などで形成されるものであり、図5および図6に示すように、背表紙部102の幅方向両側にヒンジ部104,106を介して表表紙部108および裏表紙部110が一体に連設される。このヒンジ部104,106は、表表紙部108と裏表紙部110が開閉自在となるように、ファイル表紙100の高さ方向の一端部から他端部にわたって肉薄状に形成される。背表紙部102の内側面には、たとえば4つの連結用突部112が突き出るようにして形成される。連結用突部112は、図6に示すように、それぞれ略U字形状のものであり、背表紙部102と一体成形により形成される。そして、連結用突部112には、後述する固定具18を挿入して係着させるための固定具挿入孔114が背表紙部102の長手方向すなわちファイル10の高さ方向に背表紙部102の面方向と略平行に延びて形成される。」 段落【0012】 「連結用突部112は、後述する基板14の連結用孔16に嵌入した際に、連結用突部112の先端部が綴具12の基板14の表面側に突出するよう設けられる。そして、固定具挿入孔114は、連結用突部112の基板14の表面側に突出する先端部分において後述する固定具18を挿通させることができるようにファイル表紙100の厚み方向に長い長孔状に形成される。また、この実施形態では、連結用突部112は、背表紙部102の幅方向に所定の間隔をおいて2列に形成され、それぞれの列において背表紙部102の長手方向に所定の間隔をおいて2つ形成される。そして、背表紙部102の長手方向に並んだ2つの連結用突部112の固定具挿入孔114は、それぞれ長手方向に直線的に連通するよう形成される。」 段落【0013】 「なお、固定具挿入孔114の断面形状は、用いられる固定具の断面形状に適合し、本願の作用効果を得ることができる形状であれば、長円形状に限らず略円形状でもよく、さらにその他の形状でもよい。また、連結用突部112は、略U字形状の部材が、図7に示すように背表紙部102を貫通して設けられた取付孔102aに嵌め込まれて固着されてもよく、さらに図8に示すように連結用突部112の形成された板状部材112aを背表紙部102の外側面に固着して、連結用突部112を外側面から内側面へと挿通させて形成してもよい。」 段落【0016】 「また、第1の可動板26の内側面には、図2および図3に示すように、その長手方向に所定の間隔をおいてたとえば2本の綴杆34の一端部がそれぞれ固着される。この綴杆34は、書類等の綴じ穴に挿通して綴じ合わせるためのものである。綴杆34は、第1の可動板26を基板14と直交するように起立させた際には、図1に示すように、基板14の上方に所定の間隔をおいて、第2の可動板28の方へ向かって基板14と平行に延びるように形成される。この綴杆34は、その内部に棒状部材36を抜き差し自在に収納し得るように中空のパイプ状に形成される。また、綴杆34の先端部は、図9に示すように、押さえ板38に形成された受け部38aと嵌まり合うように略斜めに切り欠かれて形成される。棒状部材36は、略U字形状に形成され、その第1の可動板26と反対側には、綴杆34と略直交しかつ第1の可動板26と対向するように押さえ板38が配置される。そして、棒状部材36は、図2に示すように、第1の可動板26と反対側から押さえ板38を厚み方向へ貫通し、第1の可動板26へ向かって延びる状態で押さえ板38に取り付けられる。」 段落【0017】 「書類等の綴込操作時においては、まず、押さえ板38および棒状部材36が綴杆34から分離される。次に、綴じられるべき書類等が綴杆34の開放端側から挿入される。そして、棒状部材36が綴杆34に挿入され、押さえ板38によって、綴杆34の開放端側が閉鎖される。次に、第1の可動板26を図2に示す状態から図1に示す状態に起立させ、押さえ板38を第2の可動板28の内側に配置させる。このとき、第2の可動板28を外側へ回動させることにより、係止片28aと基材14との間に押さえ板38を導入することができる。そして、係止片28aを押さえ板38の基材14と反対側の縁部に係着させることにより、付勢部材32の付勢力により押さえ板38は固定され、第1の可動片26も起立した状態で固定されることになる。なお、この実施形態では、係止片28aは、押さえ板38に取り付けられている棒状部材36の押さえ板38と平行に延びる部分に係着するよう形成されている。ファイリングしていた書類等を取り出す際には、上述と逆の操作をすることにより取り出すことができる。」 段落【0018】 「また、このファイル10は、略U字形状の固定具18を含む。固定具18は、たとえば断面円形の金属線を略U字形状に折り曲げて形成したものであり、図10に示すように、2本の挿入部18aとそれらの一端部を連結する連結部18bとからなる。ただし、金属製のものに限るものではない。固定具18の挿入部18aは、図2および図3に示すように、基板14の表面側に突出した連結用突部112の固定具挿入孔114に、綴具12の長手方向の一端側から他端側へ向かって基板14の表面と略平行に延びるように挿通される。この場合、挿入部18aの長さは、連結用突部112が連結用孔16から勝手に抜け出るのを防止するため、少なくとも連結用孔16の最大開口長さよりも大きく形成される。なお、最大開口長さとは、連結用孔16の開口の最大長さであり、連結用孔16が矩形の場合はその開口部の対角線方向の長さであり、円形の場合には直径である。また、連結部18bは、連結用突部112の固定具挿入孔114の外側に延び出し形成されているので、固定具18の着脱操作時にタブ部として用いることができる。すなわち、タブ部としての連結部18bをつまみ持ったり引っかけたりして操作することにより固定具18の挿入や抜き出しが容易にできる。また、基板14の長手方向に所定の間隔をおいて嵌入される連結用突部112は、それぞれの固定具挿入孔114が基板14の長手方向に直線的に連通するように形成されているので、固定具18の抜き差しも直線的な操作で簡単に行える。そのため、綴具12をファイル表紙100に連結する際や分離する際の操作が容易である。」 前記段落【0003】?【0006】の記載からみて、先願明細書に記載される発明は、廃棄に際して、異なる材質の構成部材を容易に分離・分別し得るファイル構成を提供することにある。 前記段落【0011】の記載には、ファイル表紙100には、その表面から突き出るように4つの連結用突部112が形成されていることが記載されており、続く前記段落【0012】の記載には、基板14の連結用孔16に嵌入され、該基板14を挿通した連結用突部112の固定具挿入孔114に固定具18が挿通されることが記載されている。 また、固定具18の具体的構成としては、前記段落【0018】に「たとえば断面円形の金属線を略U字形状に折り曲げて形成」するものが記載されている。 そして、前記段落【0013】の記載によれば、基板14に連結用突部112を構成するに際し、連結用突部112の形成された板状部材112aを背表紙部102の外側面に固着する態様が示唆されている。 前記段落【0016】の記載によれば、書類等の綴じ穴に挿通して綴じ合わせるために用いる綴じ杆34は、第1の可動板26の内側面に固着されており、その内部に棒状部材36を抜き差し自在に収納し得る中空のパイプ状に形成されており、他方棒状部材36は、略U字形状に形成されており、押さえ板38を貫通し、第1の可動板26へ向かって延びる状態で押さえ板38に取り付けられるように構成されており、綴じ杆34と棒状部材36の両者の関係は、伸縮自在な関係をなしているといえる。 そして、前記段落【0017】の記載によれば、書類等を綴込んだ時には、第1の可動板26及び第2の可動板28は共に基板14に対して直立した状態となり、押さえ板38に配された棒状部材36はパイプ状の綴じ杆34内に収納された状態となり、書類等の綴じ込んだ状態が得られるものである。 前記各記載からみて、当該先願明細書には、以下の発明が記載されている。 「ファイル表紙と、 前記ファイル表紙に取り付けられる綴具と、 前記ファイル表紙及び前記綴具に形成される連結用孔と、 前記ファイル表紙及び前記綴具に形成され前記連結用孔に嵌入される連結用突部と、 前記綴具を前記ファイル表紙に留め付けて固定するため、前記連結用孔に嵌入された前記連結用突部に着脱可能に係着される固定具とを含むファイルであって、 前記ファイル表紙の背表紙部に取り付けられる綴じ具とからなるファイルに関し、 前記綴具は、 裏面が前記ファイル表紙に当接される基板と、 前記基板の幅方向の一方側に軸支される第1の可動板と、 前記基板の幅方向の他方側に軸支される第2の可動板と、 ファイリング時に起立される前記第1の可動板および前記第2の可動板の間に設けられる実質的に伸縮自在な綴杆とを含み、 前記連結用孔は、前記基板を厚み方向に貫通して形成され、 前記連結用突部は、前記連結用孔を通って前記基板の裏面から表面へ突き出るよう前記ファイル表紙(背表紙)の外側面に固着した板状部材に設けられ、当該突き出た部分に前記基板の厚み方向と略直交する方向に延びるようにして少なくとも前記連結用孔の最大開口長さよりも長い前記固定具を挿入して係着させるための固定具挿入孔が形成され、 さらに前記基板の表面には、前記固定具挿入孔に挿通された前記固定具が勝手に抜け出ないよう係止するための係止手段が形成されている、 綴じ具固定構造。」 (以下、「先願明細書記載発明」という。) イ.刊行物1について なお、以下の記載は当審の仮訳である。 2頁27?38行 「さて、図面を参照すると、符合10はルーズリーフバインダ全体を示しており、ルーズリーフバインダはバネ板11を有し、その断面形状はカーブしており、端部は内側に曲げられて、1対のトグル板13、14をバネ板のカーブ内の位置に保持する保持フランジ12を形成している。トグル板13、14は、それぞれプロング15、16と共に設けられており、これらはプロング15、16が一緒になって、通常の方法でバインダ内に紙を保持するためのリング17となる。」 2頁82行?3頁19行 「本発明の一実施例を示すために選択された構成では、クランプ板23が設けられており、その断面はカーブしており、また、クランプ板23はバネ板及びレバーの全長と実質的に同じ長さを有している。 表紙部材24は、下記のような方法でバネ板とクランプ板の間に挟むようにして取り付けられている。 クランプ板23の両端には、その内曲面から内側に向かって延びるようにループ部材25が設けられている。各ループ25の両端には足部26が設けられ、足部26はループの面内で横方向に延びており、好ましくはループの面の両端から横方向に延びる延長部27、28を有する。これらループは、好ましくは、ただし必須ではないが、クランプ板に溶接されている。(中略)ループ25は、表紙24の穴32とバネ板11の穴34を通過するのに十分な高さを有しており、また、キー35によって所定位置に保持されている。キー35は、好ましくは、符合36のように、その中央部分で内側に曲げられており、パーツを組立状態の関係に弾性的に保持するためのバネくさび部材を形成している。キーの内側端は、ループを通り抜けるのが容易なように尖っており、また、外側端は37にて示すように内側に曲げられて、ループからの引抜き手段を形成している。」 これらの記載からみて、当該刊行物1には、表紙24に固定される綴じ具が、バネ板11と、トグル板13、14に取り付けられたリング17とを備えた、いわゆるリング式ファイルが開示されている。 そして、当該刊行物1における綴じ具の固定構造は、表紙24の外側にクランプ板23が設けられ、クランプ板23にループ部材25が備えられ、ループ部材25が、表紙24の穴32とバネ板11の穴34を貫通しており、ループ部材25にキー35が挿入され、これにより綴じ具が表紙24に固定されている。 ここで、キー35は、中間部36が内側に曲がっており、バネくさび部材と呼称されているものの、弾性力によって固定状態を保持するもの、つまり、キー35は、板バネとして機能し、中間部36がループ部材25を押圧する力で綴じ具を固定状態に保持している。 ウ.刊行物2について 1欄19?21行 「この考案は、アルバムなどの写真貼着紙葉や、帳薄(「簿」の誤記と認められる。)類の紙葉を綴込むバインダーにおける紙綴込片の掛止部材の改良に関する。」 1欄22行?2欄3行 「以下、その構成を図面に示す実施例について説明すると、1は、中央部に、長さ方向に蟻溝形の直条溝2をあけた帯枠3を、また、左右両側に、底壁と内向縁4,5との間に、長さ方向に形成した直条溝6,7を設けた定尺の帯状台板で、軽金属や硬質プラスチックスなどの剛体で1体に成形する11は、この帯状台板1の中央帯枠3を跨いで、下部両端9,10を、前記直条溝6,7に摺動自在に嵌挿掛止した多数本の金属帯を弧状に屈曲並列し、片側下部で連結した肋骨状の紙綴混片である。12はこの紙綴込片11を、帯状台板1に、その前後両端部より挿入掛止する掛止部材で、硬質プラスチックスで成形し、その左右に設けた弾性挟持片13,14を内側に向つて弧状に屈曲させ、先部にフック15,16と、上部に上向ボス17,18を形成し、さらに、中央部に、前記帯状台板1の中央帯枠3の直条溝2に嵌挿する溝19を設けたチヤンネル形の直条挿込片20と、その左右両側部に、帯状台板1の内向縁4,5に嵌挿する挿入溝21,22を外側に形成した支片23,24とを1体に成形する。」 当該記載によれば、当該刊行物2に記載されたバインダーにおける紙綴込具は、綴じ具が帯状台板1と、肋骨状の紙綴込片11で構成されており、紙綴込片11は、両端において掛止部材12により帯状台板1に掛止されているものと認められる。 エ.刊行物3?5について これらの刊行物では、それぞれの図面に示されているように、ベルト端部同士を連結するためのバックルの周知技術が開示されている。 刊行物3には、猫の首輪のバックルが開示され、刊行物4には、トランクケース用のベルトのバックルが開示され、刊行物5には、ペット用バッグ付き胴輪に取り付けられるベルトのバックルが開示されている。 オ.刊行物6について 段落【0001】 「【産業上の利用分野】 本考案は、トリム等の固定対象部材をクリップを用いて車体等の被固定部材に固定するためのクリップによる固定構造に関する。」 段落【0013】 「図1は、本考案一実施例のクリップによる固定構造を示す側面図、図2は図1のA-A断面図、図3は実施例クリップを示す斜視図であって、図において1は固定対象部材としてのトリム、2はトリム1を固定する被固定部材としての車体パネルを示している。」 段落【0014】 「前記トリム1は、車体パネル2の室内側を覆い隠すために取り付けられるものであって、合成樹脂で形成されている。そして、このトリム1の取付面側には、ブラケット10(取付部)が一体に形成されている。このブラケット10は、その一側面のみを開口した箱型に形成され、トリム1と平行なクリップ取付面10aには、その開口面10b側から一定幅のスリット10cが形成されている。」 段落【0015】 「一方、前記車体パネル2には、長方形の取付孔2aが形成され、前記クリップ取付面10aと取付孔2aとの間に取り付けたクリップ3によりトリム1が車体パネル2に固定されている。」 段落【0016】 「前記クリップ3は、可撓性を有した合成樹脂材料により一体に成形されたもので、このクリップ3は、車体パネル2の取付孔2aに挿入される脚部30を有している。すなわち、前記脚部30は、前記取付孔2aに挿通可能な角筒状に形成されていて、その先端部は先細り状に形成されている。そして、この脚部30における側面中央部には、第1の係止部としての末広がり状に一対の係止片30a,30bが突出形成されていて、この係止片30a,30bが取付孔2aの前記取付孔2aの縁部に係止することでその脱却が阻止されるように構成されている。ちなみに、脚部30を取付孔2aに挿入する際には、係止片30a,30bが脚部30の内部に向かって弾性変形する。」 これらの記載からみて、当該刊行物6には、車体パネル2にトリムを取り付ける際に、トリム1のブラケット10と一体化するクリップ3をもって固定を図る構成が開示されている。 カ.刊行物7について なお、以下の記載は当審の仮訳である。 1欄8?10行 「この発明は、ルーズリーフ・バインダー、より詳細には、ルーズリーフ・バインダー・カバーのための手動で綴じ・外すことが可能なリングアセンブリー、に関する。」 1欄50?56行 「図1は、この発明の第1の形式を形成する、ルーズ・リーフ・バインダーについての遠近法による断片の見方である; 図2は、ジャケットを備えた2つの主コンポーネントの遠近法の分解組立図およびこの発明の第1の形式の形成である; 図3は、図2の中で例証されたコンポーネントについての拡大し、断片的、遠近法の見方である;」 1欄66行?2欄5行 「今、特に図1?4の中で示される発明の第1の形式を参照すると、完全なバインダーアセンブリー10は、本体前面カバーページ12、後部カバーページ14、および中間で接続するバック・エッジ16を持ったジャケットを含んでいる。 このバック・エッジの内部の面においては、実質的にバック・エッジの長さに延びる細長いプラスチック板かストリップ218がマウントされる。一定間隔で配置され、弾力があり、分離している多くのプラスチックリング250が、このストリップの露出した表面からジャケット内部に出ている。夫々のリングは挿入後にページ保持のためにオーバーラップする部分を有する。」 2欄16?54行 「基礎的な連結するコンポーネントを形成するためにストリップ218と共に協働する第2の延長ストリップ226は、バック・エッジの外側面に沿っている。エレメント226は、少しアーチ形の外形であって、バック・エッジ216の外部面に対して適合する内部表面が形成されている。また、エレメント218は、むしろ、わずかに内に曲げられている。 エレメント226は、一定間隔で配置された各々拡大した頭229およびより小さな首235からなる突出部を含んでいる。円盤状の頭は、エレメント218の穴231より直径がより小さい一方、スロット241により穴231と接続されている隣接した穴233より直径が大きく形成されている。スロットは首235よりも若干大きい直径を有する。頭229より若干大きい逆の凹み237は、頭を受けて、固着コンポーネントの適合が得られるように、正確な適合ができるように、穴233の上に設けられている。穴および接続スロットは、受けソケットを構成している。 これらのコンポーネントアセンブリは、基本的に、図3に矢印で示された動作を行う。 二つの延長された弾性エレメントは、バックエッジ216の反対側に位置付けられており、広がった頭229が穴231を通じて適合できるように、下のエレメントが上のエレメントから縦に若干オフセットされる。このエレメントが、一時的に一般に平らにされた条件に変形されるまでは、通常、頭は穴を全く通過しない。ストリップが変形された時に、頭は穴を通過する。穴233を越えて頭229を移動させるために、エレメント226は、エレメント218とバックエッジに関して縦に滑らせられる。変形圧力を取り去ると、曲がったエレメント226の固有の弾性力が、頭229を、適合接続のための逆の凹み237の中へ下方向に引っ張る。プラスチックの自然な弾性力は内部適合を保持し、ユニットの偶然の分解を防ぐ。 構造の分解の目的は、そのステップを逆転することで遂行される。つまり、ストリップを共に押し、エレメント226を後ろに滑らせて、ストリップの固有の弾性力による圧力を取り去ることで、頭229が穴231から抜き取ることが可能となる。」 これらの記載からみて、当該刊行物7には、本体前面カバーページ12、後部カバーページ14、および中間で接続するバック・エッジ16を持ったジャケットに、固定されて用いられる、ルーズリーフバインダーアセンブリー10が開示されている。 そして、当該刊行物7におけるルーズリーフバインダーのジャケットへの固定は、一方のストリップ226に設けられた首235と頭229からなる突出部を、ジャケットのバックエッジ16に設けられた穴を通し、他方のプラスチックリンク250を備えたストリップ218に設けられた穴231を通過させた後に、ストリップ同志を滑らせて、前記穴231に隣接する凹み237に適合させ、ストリップ226の弾性力により強固な接続関係を得るものである。 3-2-3 対比・判断 前掲先願明細書あるいは刊行物1ないし7と対比して、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正後の特許請求の範囲に記載された発明が、その特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。 ア.訂正発明と先願明細書記載発明との対比・判断 ア-1 訂正発明1について 訂正発明1と先願明細書記載発明とを対比すると、 訂正発明1においては、請求項記載に「ファイル」との明記はないものの、訂正明細書の段落【0002】を参照するに「ファイル」と同一視できる「綴じ具を備えてなるバインダー」を対象とする発明であって、綴じ具を固定する先を表す「背表紙」がファイルの「背表紙」であることが明らかであるから、先願明細書における「ファイル表紙の背表紙部」と、訂正発明1の「背表紙」とは、「綴じ具」を固定する先である点において共通するものであって、両者の「綴じ具」あるいは「綴具」が相当関係にあることも明らかである。 そして、訂正発明1の「ベース」は、綴じ部材を備えたものであって、他方先願明細書の「基板」が同様に綴じ部材として機能する綴じ杆を備えているものであるから、訂正発明1の「ベース」と先願明細書記載発明の「基板」とは共通する。 また、訂正発明1における「ベース固定構造」とは、「被固定面としての背表紙」を貫通する「貫通部材」が設けられた「外側部材」と、前記「貫通部材」に係合して当該「貫通部材」の脱落を規制する「クサビ部材」とを含むものであるのに対して、 先願明細書における「綴じ具固定構造」とは、前記段落【0013】に記載されているように、「ファイル表紙の背表紙部の外側面に固着される板状部材」と、これに設けられて「背表紙」の連結用孔を通って外側面から内側面に挿通する「連結用突部」と、当該「連結用突部」に設けられた「固定具挿入孔」へ挿通する「固定具」とからなるものである。 すると、先願明細書記載発明の「板状部材」及び「連結用突部」は、訂正発明の「外側部材」及び「貫通部材」に夫々相当し、先願明細書記載発明の「固定具」と訂正発明の「クサビ部材」は、いずれもが「固定具」である点で、その機能に照らして相当関係にあり、 先願明細書記載発明のこれら「板状部材」、「連結用突部」及び「固定具」は総体として、訂正発明1の「ベース固定具」に相当している。 さらに、訂正発明1の「綴じ具」は、「左右一対の綴じ板」と、「各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向の嵌合する綴じ部材としての綴じ桿」を備えていると記載されているのに対して、 先願明細書記載発明は、「第1の可動板」および「第2の可動板」を有し、これらの間に「実質的に伸縮自在な綴杆」を有するものであって、当該「実質的に伸縮自在な綴杆」は入れ子式、すなわちテレスコピックな構成であることが明らかである以上、 先願明細書記載発明の「第1の可動板」、「第2の可動板」及び「実質的に伸縮自在な綴杆」は、訂正発明1の「左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え」た構成にそのまま対応するものといえる。 以上の対比を前提とすると、先願明細書記載発明と訂正発明1とは、以下の一致点で一致しており、他方、以下の相違点において相違している。 (一致点1) 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制する「固定具」とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記「固定具」が前記「貫通部材」の所定位置に係合したときに前記「固定具」と被固定面との間にベースが固定される綴じ具のベース固定構造。」 (相違点1) 訂正発明1における「固定具」は、「上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材」を含むと特定され、「貫通部材」は、「外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、」と特定されているのに対して、 先願明細書記載発明の「固定具」及び「貫通部材」は、いずれも前記特定を有さず、また、それ故に、「固定具」と「貫通部材」とによる固定構造が前記特定とは異なる点。 前記相違点1について検討するに、なるほど先願明細書記載発明における「固定具」は、「外側部材」に設けられた複数の「貫通部材」の固定具挿入孔に挿入されて、「被固定面」に「ベース」を固定するものであって、前記段落【0003】あるいは【0004】に記載されているように、異なる材質の部材ごとに分別して廃棄することが容易なファイルを提供できるものであるものの、その実施態様に係る前掲段落【0018】に例示されるように、「断面円形の金属線を略U字形状に折り曲げて形成したもの」であって、「クサビ部材」を用いたものではない。 ここで、「クサビ」とは、一般に「一端を厚く他端に至るに従って薄く作った刃形のもの」であって、これをほぞ孔に差し込み、その形状に基づく大きな摩擦力で固定を図るものであることは周知慣用に属するものであるが、ファイル表紙に綴じ具を取り付けたファイルに関して、綴じ具をクサビ部材をもって固定するために、前記「貫通部材」と「クサビ部材」からなる構成とすることは、先願明細書に記載も示唆もなく、また、先願明細書以外に提示されている各文献のいずれにおいても記載も示唆もない。 そして、訂正発明1においては、前記「貫通部材」の構成特定と相俟って、訂正明細書の段落【0009】に記載されている、貫通部材がベースをも貫通する状態となるため、ベースの位置決めが容易になる他、ベースの固定状態の一層の安定化をも図り得るという顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明1は、先願明細書に記載された発明と同一のものであるとすることはできない。 ア-2 訂正発明2について 訂正発明2は独立形式で表現されているが、訂正発明1における 「前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」及び 「前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、」に代えて、 「前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」及び 「前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、」の構成を備えるものである。 してみると、前記「ア.訂正発明1について」における検討を踏まえて、前記訂正発明2と先願明細書記載発明とを対比した場合、以下の点で一致する一方、以下の相違点を有する。 (一致点2) 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制する「固定具」とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記「固定具」が前記「貫通部材」の所定位置に係合したときに前記「固定具」と被固定面との間にベースが固定される綴じ具のベース固定構造。」 (相違点2) 訂正発明2における「固定具」は、「上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材」を含むと特定され、「クサビ部材」は、「貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、」と特定されているのに対して、 先願明細書記載発明の「固定具」は、前記特定を有さず、また、それ故に、「固定具」と「貫通部材」とによる固定構造が前記特定とは異なる点。 前記相違点2について検討するに、既に、前記「ア.訂正発明1について」で検討したように、先願明細書記載発明における「固定具」は、「クサビ部材」を用いたものではない。 そして、前記相違点2に係る構成を備えることで、訂正発明2も、訂正発明1と同様に、貫通部材がベースをも貫通する状態となるため、ベースの位置決めが容易になる他、ベースの固定状態の一層の安定化をも図り得るという顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明2も、先願明細書に記載された発明と同一のものであるとすることはできない。 ア-3 訂正発明3について 訂正発明3は独立形式で表現されているが、訂正発明1における 「前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」、 「前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、」及び 「前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される」に代えて、 「前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられるとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」及び 「前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定される」の構成を備えるものである。 してみると、前記「ア.訂正発明1について」における検討を踏まえて、前記訂正発明3と先願明細書記載発明とを対比した場合、以下の点で一致する一方、以下の相違点を有する。 (一致点3) 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられる「固定具」とを含み、 前記「固定具」が前記「貫通部材」の所定位置に係合したときに前記「固定具」と外側部材との間に被固定面及びベースが固定される綴じ具のベース固定構造。」 (相違点3) 訂正発明3における「固定具」は、「上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材」を含むと特定されているのに対して、 先願明細書記載発明の「固定具」は、前記特定を有さず、また、それ故に、「固定具」と「貫通部材」とによる固定構造が前記特定とは異なる点。 前記相違点3について検討するに、既に、前記「ア.訂正発明1について」で検討したように、先願明細書記載発明における「固定具」は、「クサビ部材」を用いたものではない。 そして、前記相違点3に係る構成を備えることで、訂正発明3も、訂正発明1と同様に、貫通部材がベースをも貫通する状態となるため、ベースの位置決めが容易になる他、ベースの固定状態の一層の安定化をも図り得るという顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明3も、先願明細書に記載された発明と同一のものであるとすることはできない。 ア-4 訂正発明4あるいは5について 訂正発明4あるいは5は、訂正発明1ないし3を引用してさらに限定したものであるから、上記「ア.訂正発明1について」ないし「ウ.訂正発明3について」で述べたのと同じ理由により、いずれも先願明細書に記載された発明と同一のものであるとすることはできない。 ア-5 訂正発明6について 訂正発明6は独立形式で表現されているが、訂正発明1における 「前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」、 「前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、」及び 「前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される」に代えて、 「前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられるとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、」、 「前記クサビ部材は、前記貫通部材に隣設した位置で前記外側部材に屈曲可能に連設され、このクサビ部材を屈曲させることで当該クサビ部材が前記貫通部材に係合可能に設けられ、」及び 「前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定される」の構成を備えるものである。 してみると、前記「ア.訂正発明1について」における検討を踏まえて、前記訂正発明6と先願明細書記載発明とを対比した場合、以下の点で一致する一方、以下の相違点を有する。 (一致点4) 「 ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられる「固定具」とを含み、 前記「固定具」が前記「貫通部材」の所定位置に係合したときに前記「固定具」と外側部材との間に被固定面及びベースが固定される綴じ具のベース固定構造。」 (相違点4) 訂正発明6における「固定具」は、「上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材」を含むと特定され、さらに、前記「クサビ部材」が、「前記貫通部材に隣設した位置で前記外側部材に屈曲可能に連設され、このクサビ部材を屈曲させることで当該クサビ部材が前記貫通部材に係合可能に設けられ、」と特定されているのに対して、 先願明細書記載発明の「固定具」は、前記特定を有さず、また、それ故に、「固定具」と「貫通部材」とによる固定構造が前記特定とは異なる点。 前記相違点4について検討するに、既に、前記「ア.訂正発明1について」で検討したように、先願明細書記載発明における「固定具」は、「クサビ部材」を用いたものではない。 そして、前記相違点4に係る構成を備えることで、訂正発明6も、訂正発明1と同様に、貫通部材がベースをも貫通する状態となるため、ベースの位置決めが容易になる他、ベースの固定状態の一層の安定化をも図り得るとともに、訂正明細書の段落【0012】に記載されるように「クサビ部材が外側部材に一体的に備えられているため、前述の係合を解除した状態でクサビ部材が紛失する虞も少なくなる」という顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明6も、先願明細書に記載された発明と同一のものであるとすることはできない。 イ.訂正発明と各刊行物に記載される発明との対比・判断 イ-1 訂正発明1について 前記「3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明」における「イ.刊行物1について」に示したように、刊行物1には、表紙24に固定される綴じ具が、バネ板11と、トグル板13、14に取り付けられたリング17とを備えた、いわゆるリング式ファイルが開示されている。 他方、訂正発明1においては、「前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、」なる構成(以下、「テレスコピックな綴じ桿構成」という。)と、「前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、」及び「前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、」という構成(以下、「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」という。)を備えるのに対して、刊行物1に記載された発明では綴じ具がリングタイプであり、また、ループ部材25が表紙の上下両端にそれぞれ1つ設けられているだけであり、これらの点で少なくとも両者は相違している。 そして、これらの相違に基づき、訂正発明1は、上記のテレスコピックタイプの綴じ桿を備える綴じ具のベース固定構造において、相対する一対の関係に設けられた貫通部材にクサビ部材が係合することによって綴じ具のベースが確実に固定されるのに対して、刊行物1に記載される発明では、リングタイプの綴じ具を中央部のループ部材25だけで固定されていることから、訂正発明1の綴じ具の固定と比較して不安定なものといえる。 ここで、前記相違が、その他に提示された刊行物に記載されているか否かについて検討する。 前記「3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明」における「ウ.刊行物2について」に示したように、当該刊行物2に記載されたバインダーにおける紙綴込具は、綴じ具が帯状台板1と、肋骨状の紙綴込片11で構成されており、紙綴込片11は、両端において掛止部材12により帯状台板11に掛止されているものであるから、当該刊行物2に記載されたものにおいては、肋骨状の紙綴込片11の紙綴り状態を保持するために帯状台板1に掛止する掛止部材12を備えることが開示されているものの、いわゆるファイル表紙に対する当該紙綴じ具の固定構造に係るものとはいえない。 また、前記「3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明」における「エ.刊行物3?5について」に示したように、これら刊行物3?5には、ベルト端部同士を連結するためのいわゆるバックルの構造が開示されているものの、訂正発明1に係る「綴じ具のベース固定構造」におけるように、平板様をなしたファイル表紙の背表紙部に対して、「綴じ具」を固定する態様が記載されている訳ではなく、示唆もない。 さらに、前記「3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明」における「オ.刊行物6について」に示したように、当該刊行物6には、車体パネル2にトリムを取り付ける際に、トリム1のブラケット10と一体化するクリップ3をもって、固定を図る構成が開示されているものの、トリムの被取付部である車体パネルの取付孔2aに弾性変形可能な係止片30a,30bを備えた脚部30を挿入してクリップ3を固定した後、当該クリップ3にトリム1のブラケット10を一体化するものであって、技術分野が異なるに加えて、訂正発明1における「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」とは異なるものである。 また、前記「3-2-2 先願明細書及び刊行物に記載された発明」における「カ.刊行物7について」に示したように、当該刊行物7には、本体前面カバーページ12、後部カバーページ14、および中間で接続するバック・エッジ16を持ったジャケットに、固定されて用いられる、ルーズリーフバインダーアセンブリー10が開示されている。 しかしながら、当該ルーズリーフバインダーアセンブリーにおけるバインダー部分は、訂正発明1における「テレスコピックな綴じ桿構成」をなすものではなく、また、ファイル表紙の背表紙部に相当することは明らかなジャケットへの固定に際しては、一方のストリップ226に設けられた首235と頭229からなる突出部を、ジャケットのバックエッジ16に設けられた穴を通し、他方のプラスチックリンク250を備えたストリップ218に設けられた穴231を通過させた後に、ストリップ同志を滑らせて、前記穴231に隣接する凹み237に適合させ、ストリップ226の弾性力により強固な接続関係を得るものであって、「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」とは異なるものである。 以上のとおりであって、その他に提示された刊行物の記載を参照しても、前記相違点に係る構成を当業者が容易に想到し得るとはいえない。 そして、訂正発明1は、訂正明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明1は、刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 イ-2 訂正発明2について 訂正発明2は、前記「ア.訂正発明と先願明細書記載発明との対比・判断」の「ア-2 訂正発明2について」において確認したように、訂正発明1と構成要件が一部異なるものの、「テレスコピックな綴じ具桿構成」を備え、「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」を備える「綴じ具固定構造」に係るものであって、訂正発明1と刊行物1記載発明と対比した場合と概ね同じ相違点が存在する。 しかしながら、当該相違点に関して、残る刊行物2?7の記載を検討しても、当業者が容易に想到し得る程度の記載ないしは示唆があるものとはいえない。 そして、訂正発明2は、訂正明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明2は、刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 イ-3 訂正発明3について 訂正発明3は、前記「ア.訂正発明と先願明細書記載発明との対比・判断」の「ア-3 訂正発明3について」において確認したように、訂正発明1と構成要件が一部異なるものの、「テレスコピックな綴じ具桿構成」を備え、「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」を備える「綴じ具固定構造」に係るものであって、訂正発明1と刊行物1記載発明と対比した場合と概ね同じ相違点が存在する。 しかしながら、当該相違点に関して、残る刊行物2?7の記載を検討しても、当業者が容易に想到し得る程度の記載ないしは示唆があるものとはいえない。 そして、訂正発明3は、訂正明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明3は、刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 イ-4 訂正発明4あるいは5について 訂正発明4あるいは5は、訂正発明1ないし3を引用してさらに限定したものであるから、上記「イ.訂正発明1について」ないし「ウ.訂正発明3について」で述べたのと同じ理由により、いずれも刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 ウ-5 訂正発明6について 訂正発明6は、前記「ア.訂正発明と先願明細書記載発明との対比・判断」の「ア-5 訂正発明6について」において確認したように、訂正発明1と構成要件が一部異なるものの、「テレスコピックな綴じ具桿構成」を備え、「貫通部材とクサビ部材とからなる固定構造」を備える「綴じ具固定構造」に係るものであって、訂正発明1と刊行物1記載発明と対比した場合と概ね同じ相違点が存在する。 しかしながら、当該相違点に関して、残る刊行物2?7の記載を検討しても、当業者が容易に想到し得る程度の記載ないしは示唆があるものとはいえない。 そして、訂正発明6は、訂正明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、訂正発明6は、刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 3-2-4 まとめ また、他に、訂正発明1ないし6が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとすべき理由も発見しない。 したがって、訂正発明1ないし6は、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明である。 よって、本件訂正は特許法第126条第5項の要件も満たすものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き、第3項ないし第5項の規定に適合するので訂正を認める。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 綴じ具のベース固定構造 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項2】ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項3】ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられるとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【請求項4】前記貫通部材と前記クサビ部材には相対する傾斜面がそれぞれ形成され、これら傾斜面の相対位置を変化する一方向にクサビ部材を差し込んだときに固定力が次第に増大することを特徴とする請求項1,2又は3記載の綴じ具のベース固定構造。 【請求項5】前記貫通部材は、当該貫通部材の延出方向と略直交する方向に開通する穴を備え、この穴内に前記クサビ部材が差し込まれたときに被固定面に固定力が付与されることを特徴とする請求項1,2又は3記載の綴じ具のベース固定構造。 【請求項6】ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能なクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材は、前記貫通部材に隣設した位置で前記外側部材に屈曲可能に連設され、このクサビ部材を屈曲させることで当該クサビ部材が前記貫通部材に係合可能に設けられ、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定されることを特徴とする綴じ具のベース固定構造。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は綴じ具のベース固定構造に係り、更に詳しくは、綴じ具のベースを被固定面となる背表紙若しくは裏表紙等に固定する作業を極めて容易に行うことができ、且つ、綴じ具と表紙との分離を可能として分別廃棄又は綴じ具の再利用を促進することのできるベース固定構造に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、背表紙若しくは裏表紙の内面側に綴じ具を備えてなるバインダー類が市販されている。このバインダー類に用いられる綴じ具は、例えば、ベースと、このベースの左右両側に配置された一対の綴じ板と、これら綴じ板間に延びる綴じ桿とを備えて構成されている。 【0003】 前記ベースを背表紙に固定するに際しては、当該ベースと背表紙との同軸線位置に複数の穴を形成しておき、この穴を介してリベットで固定する、という構成が一般的に採用されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前記リベットを用いた固定方式では、専用のリベット打ち込み装置等の製造設備が不可欠となる他、固定位置を適性に保つための作業が要求されて製造効率を低下させるという不都合がある。また、バインダー類にあっては、表紙側は可燃物である一方、綴じ具側は耐荷重性能を維持すべく金属製のものが通常用いられているため、廃棄する場合には、これらを分別することが要求される。しかしながら、リベット固定方式では、両者の分離が困難であり、分別されないまま廃棄されているのが実情である。 【0005】 ところで、分別廃棄は、近時のゴミ処理問題若しくは自然環境を保護する観点から最近になって強く要請されているところであるが、抜本的には、ゴミを発生しないようにすることが一層好ましい。この点、例えば、バインダーに用いる綴じ具は、それ自体が使用不能になることは殆どなく、表紙側のみが老朽化して使用に耐えなくなるというのが一般的である。 【0006】 【発明の目的】 ここに、本発明の目的は、分別廃棄をもとより容易にできるようにする他、部品として利用する価値が依然として残されている部分、すなわち綴じ具の容易なる再利用を図れるようにし、ひいては廃棄物の総量規制にも資することのできる綴じ具のベース固定構造を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するため、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面を貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記貫通部材は、外側部材の一方の面から起立する方向に連設され、相対する一対の関係に設けられており、前記外側部材に連なる起立部と、この起立部の上端から相対する他方の貫通部材に向かう方向に屈曲されたフック部とからなり、 前記貫通部材は、前記被固定面としての背表紙及び前記ベース相互を連通する穴に挿通され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成を採っている。 【0008】 このような構成によれば、クサビ部材を貫通部材に対して着脱することによってベースを被固定面に着脱できるようになり、従って、従来のリベットによる固定方式に比べて、極めて容易にベースと被固定面との分離が可能となり、分別廃棄若しくは綴じ具の再利用を促進することができる。 【0009】 【発明の実施の形態】 また、本発明は、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合して当該貫通部材の脱落を規制するとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記綴じ具は、左右一対の綴じ板と、各綴じ板の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合する綴じ部材としての綴じ桿とを備え、 前記クサビ部材は、貫通部材に挿抜可能な操作板と、この操作板に設けられたフック部とを備えて構成され、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と被固定面との間にベースが固定される、という構成も採用される。このように構成すれば、貫通部材がベースをも貫通する状態となるため、ベースの位置決めが容易になる他、ベースの固定状態も一層安定化させることができる。 【0010】 更に、本発明は、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能に設けられるとともに、上面が押圧スライド操作部又は操作板となるクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定される、という構成を採り、これにより、前述の目的をよりよく達成しようとしたものである。 【0011】 前記ベース固定構造において、前記貫通部材と前記クサビ部材に相対する傾斜面をそれぞれ形成し、これら傾斜面の相対位置を変化する一方向にクサビ部材を差し込むことにより固定力を次第に増大させる構成の他、貫通部材の延出方向と略直交する方向に開通する穴を設け、この穴内に前記クサビ部材を差し込むことにより被固定面を固定する、という構成を採用することができる。これらの構成を任意に選択することで、貫通部材とクサビ部材との係合関係を任意に選択でき、綴じ具の種別若しくは形状等に応じた設計上の自由度を付与することができる。 【0012】 また、本発明は、ベース及び当該ベースに設けられた綴じ部材を備えた綴じ具を、所定のベース固定具を介して被固定面に着脱自在に固定するベース固定構造であって、 前記ベース固定具は、前記被固定面の外側面に位置する板片状の外側部材と、この外側部材の面から起立する方向に連設されて前記被固定面及びベースを貫通する貫通部材と、この貫通部材に係合可能なクサビ部材とを含み、 前記クサビ部材は、前記貫通部材に隣設した位置で前記外側部材に屈曲可能に連設され、このクサビ部材を屈曲させることで当該クサビ部材が前記貫通部材に係合可能に設けられ、 前記クサビ部材が前記貫通部材の所定位置に係合したときに前記クサビ部材又は貫通部材と前記外側部材との間に被固定面及びベースが固定される、という構成を採用することもできる。これにより、クサビ部材が外側部材に一体的に備えられるため、前述の係合を解除した状態でクサビ部材が紛失する虞も少なくなる。 【0013】 【実施例】 以下、本発明に係る綴じ具の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、特に明示しない限り、「左右」とは、図1に示される背表紙の短寸幅方向を基準として用いられ、「上下」とは背表紙の長手方向を基準として用いられる。 【0014】 [第1実施例] 図1には、本発明に係るベース固定構造がバインダーに適用された第1実施例の要部概略斜視図が示されている。この図において、綴じ具10は、被固定面としての背表紙11の内面側にベース固定具14を介して固定されたベース13と、このベース13の左右両側部分に配置されて内方に押圧操作可能な一対の操作部材15と、前記ベース13の左右両側にそれぞれ支持されるとともに、前記操作部材15に一部が保持される軸ピン17と、この軸ピン17に下端側が係脱可能に設けられた左右一対の綴じ板20,21と、各綴じ板20,21の相対面二箇所位置に固定されて相互にテレスコピックな関係で軸方向に嵌合するパイプからなる綴じ部材としての綴じ桿23とを備えて構成されている。ここで、前記綴じ板20,21は、操作部材15を内方に押圧操作することによってベース13から離脱できるようになっている。 【0015】 前記ベース13は、背表紙11の上下二箇所位置に固定される上下一対の固定面部26,26と、これら固定面部26間に傾斜面部26Aを介して連設された中間面部27とを備えて構成されている。各固定面部26の端部側、すなわち傾斜面部26Aと反対側には、図2に示されるように、下向きに切り起こされた爪部26Bが形成されており、この爪部26Bが背表紙11に形成された穴28に入り込んでこれの形成縁に係合可能に設けられ、これにより、ベース13全体の固定位置が決定できるようになっている。また、各固定面部26の領域内において、前記穴28よりも内側寄りの部分には、背表紙11及び固定面部26相互を連通する穴29,30が形成され、これらの穴29,30を利用してベース固定具14が装着可能に設けられている。 【0016】 前記ベース固定具14は、図2ないし図4に示されるように、背表紙11の外側面に面接触する状態で位置する長い板片状の外側部材32と、この外側部材32の一方の面から起立する方向に連設された複数の貫通部材33と、これら貫通部材33に係脱可能なクサビ部材35とを備えて構成されている。 【0017】 前記貫通部材33は、図4に明瞭に示されるように、外側部材32の長手方向両側に各二個設けられており、それらは外側部材32の短寸幅方向に沿って相対する一対の関係に設けられている。この貫通部材33は、外側部材32に連なる起立部36と、この起立部36の上端から内向き、すなわち相対する他方の貫通部材33に向かう方向に屈曲されたフック部37とからなり、フック部37の下面は、外側部材32の長手方向に沿う傾斜面38として形成されている。 【0018】 前記クサビ部材35は、下面が平坦面に設けられた下ブロック状部40と、この下ブロック状部40の上面側に連設されるとともに、上面が押圧スライド操作部となる上ブロック状部41とにより構成されている。下ブロック状部40の左右二箇所の上面、すなわち外側部材32の短寸幅方向に沿う左右二箇所の上面は、前記フック部37に形成された傾斜面38の傾斜角度に対応した相対面となる傾斜面42,42とされている。また、下ブロック状部40の幅寸法W1は、前記相対する起立部36,36間の内寸法W2よりも僅かに小さな寸法に設定され、これにより、クサビ部材35を貫通部材33,33間に位置するように差し込みでき、所定量差し込んだときに、前記フック部37の傾斜面38と下ブロック状部40の傾斜面42との相互密着が強められ、ひいては外側部材32とクサビ部材35の下面との間で背表紙11及び固定面部26に挟持力を作用せしめてベース13が固定可能となっている。なお、外側部材32の長手方向に沿うクサビ部材35の長さL1は、貫通部材33の同一方向長さL2よりも長く設定されており、クサビ部材の長さL1方向の略中央部位置にて前記固定に必要な挟持力が作用するようになっている(図2参照)。 【0019】 次に、本実施例におけるベース着脱要領について説明する。 【0020】 先ず、背表紙11に形成された穴28にベース13の爪部26Bを引っ掛けるようにして位置決めを行う。この状態では、背表紙11とベース13の固定面部26に設けられた穴29,30は相互に連通した位置関係となる。これと前後して、外側部材32を背表紙11の外面側に位置させるとともに、前記穴29,30内に貫通部材33を挿通させる。 【0021】 この後、図4中一点鎖線で示される矢印方向に向かってクサビ部材35を差し込んで当該クサビ部材35の傾斜面42を貫通部材33のフック部37に係合させればよい。この差し込みを行う初期の段階では、下ブロック状部40は緩やかにフック部37の下に入り込むが、差し込み量が増えるに従って摩擦抵抗が次第に増し、下ブロック状部40が、その中央部まで差し込まれた時に、以後の差し込みが行えなくなるようになっている。そして、このとき、クサビ部材35と外側部材32との間に、背表紙11及びベース13の固定面部26とを強固に挟み付ける力が作用し、クサビ部材35を前述とは反対方向に意図的に移動させない限り両者の固定状態を常に保持することとなる。 【0022】 従って、このような実施例によれば、クサビ部材35の下ブロック状部40を、フック部37の下に差し込むように操作して両者を係合させるだけでベース13の固定が行える一方、前記差し込み方向と反対の方向にクサビ部材35を移動させることでベース13の取り外しを行えるという効果を得る。 【0023】 なお、前記外側部材32は、長手方向に延びる一つの部材により構成したが、例えば、ベース13の各固定面部26に対応した大きさの二つの部材とし、これに貫通部材33をそれぞれ設けたものであってもよい。 【0024】 次に、本発明の前記以外の実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施例と同一若しくは同等の構成部分については、必要に応じて同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。また、綴じ具はベースを概略的に示すものする。 【0025】 [第2実施例] 図5及び図6には、本発明の第2実施例が示されている。この実施例は、外側部材32にクサビ部材50を一体的に設けるとともに、当該クサビ部材50を外側部材32の長手方向に沿う一端側にのみ設けてベース固定具14を形成したところに特徴を有する。 【0026】 これを更に詳述すると、ベース固定具14は、前記外側部材32と、この外側部材32の図5中左端側の一方の面に起立した起立係止部53と、外側部材32の図5中右端側に設けられた貫通部材55と、この貫通部材55よりも右側に設けられたクサビ部材50と、前記起立係止部53及び貫通部材55の間において、外側部材32から起立する方向に連設されるとともに、先端が鈎型形状に形成されたフック56とを備えて構成されている。 【0027】 起立係止部53は、外側部材32の短寸幅方向に沿って延びる起立片部53Aと、この起立片部53Aの上端に連設された水平爪片部53Bとからなり、その側端面が反転L字状をなす外観形状に設けられている。起立片部53Aは、図6に示されるように、背表紙11に形成された穴57を貫通して延び、前記水平爪片部53Bと相互に作用してベース13の一方の固定面部26の外縁領域を係合保持するように設けられている。 【0028】 前記貫通部材55は、起立方向と略直交する方向、すなわち外側部材32の長手方向に開通する係合穴55Aを備えた門型形状に設けられている。この貫通部材55は、図6に示されるように、背表紙11に形成された穴58を貫通して延びるとともに、固定面部26に形成された切欠凹部59内に位置するようになっている。 【0029】 前記クサビ部材50は、外側部材32の幅方向に沿って立設された基片部60と、この基片部60の上端に薄肉ヒンジ部60Aを介して連設された、上面視略凸型平面形状の回転操作板61と、この回転操作板61の両側に連設された一対の係合爪部63とを備えて構成されている。この係合爪部63の基部側はヒンジ部64を形成するように大きく切り欠かれた形状とされ、これにより、係合爪部63は、図6中二点鎖線で示されるように、回転操作板61に対して所定角度シフトする方向に屈曲可能となっている。なお、基片部60は、背表紙11に形成された穴65を貫通する位置にセットされる。 【0030】 前記フック56は、外側部材32の四箇所に配置されている。これらのフック56は、背表紙11に形成された穴66内に差し込まれたときに、背表紙11の内面側に係合して背表紙11との固定状態を安定化させる。 【0031】 以上の構成において、ベース13を固定する際には、先ず、外側部材32を背表紙11の外面側に位置させるとともに、前記起立係止部53、フック56、貫通部材55及びクサビ部材50をそれぞれ対応する穴57,66,58,60を貫通するように装着する。このとき、フック56は背表紙11の内面側に係合するため、外側部材32は装着位置がずれないように保たれる。 【0032】 次いで、ベース13の図6中左端側を起立係止部53に係合した位置にセットすると共に、前記クサビ部材50の回転操作板61を次第に倒伏させる。このとき、係合爪部63は、回転操作板61に対してシフトした傾斜姿勢とされて先端が貫通部材55の穴55A内に入り込むようになる。そして、回転操作板61の姿勢を略水平となる位置まで倒伏することで、係合爪部63が貫通部材55の穴55Aに完全に入り込み、これによってベース13の固定を終了する。なお、係合爪部63は、回転操作板61を起立方向に反転させることで穴55Aから脱出させることができる。 【0033】 従って、このような実施例によっても第1実施例と同様の効果を得る他、一個のクサビ部材50によって着脱操作部位を減少させて、着脱作業の迅速化を達成することができる。 【0034】 [第3実施例] 図7ないし図9には、本発明の第3実施例が示されている。この実施例は、第2実施例の貫通部材55と同様の貫通部材70を設けるとともに、この貫通部材70がベース13の固定面部26をも貫通するように設けられ、貫通部材70に係合するクサビ部材71をバックル型タイプとしたところに特徴を有する。すなわち、貫通部材70は、図9に示されるように、背表紙11に形成された穴73と固定面部26に形成された穴74とを貫通して延び、且つ、第2実施例における貫通部材55と同様の方向に開通する穴75を備えた形状に設けられている。この一方、クサビ部材71は貫通部材70の穴75に挿抜可能な一対の挿通軸部78,78を備えた操作板79と、この操作板79に連設されるとともに、前記挿通軸部78,78の内側隣設位置に設けられたフック部80とを備えて構成されている。フック部80の先端外側面は鈎状に形成されており、図8に示されるように、挿通軸部78が穴75に挿通された状態で、貫通部材70に脱落不能に係合するようになっている。この一方、フック部80を内側に強制的に弾性変位させることで、貫通部材70との係合が解除され、これによって、クサビ部材71を取り外してベース13を背表紙11から分離することが可能となっている。 【0035】 従って、このような実施例によっても前記第1及び第2の実施例と同様に、ベース13の着脱を容易且つ迅速に行うことが可能となる。 【0036】 [第4実施例] 図10及び図11には第4の実施例が示されている。この実施例は、第2実施例で示したクサビ部材50と同じように回転操作されるクサビ部材83を採用するとともに、このクサビ部材83を外側部材33と別体としたところに特徴を有する。 【0037】 これを更に詳述すると、クサビ部材83は、回転操作板84と、この回転操作板84の両側に設けられて貫通部材85に先端側が係合可能となる一対の係合爪部87とを備えて構成されている。係合爪部87は、その中間部にヒンジ部89を備えており、先端側が回転操作板84に対して姿勢変位可能に設けられている。ここで、ベース13の固定面部26には、二箇所領域が切り起こされた支持片部90が形成されており、この支持片部90の上端をヒンジ部として前記係合爪部87の上面基端側が引っ掛け可能とされ、これによってクサビ部材83が全体として回転可能に支持されている。なお、この実施例におけクサビ部材83は、第2実施例と同様の要領にて貫通部材85に係合させることができる。 【0038】 【0039】 【0040】 【0041】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、クサビ部材を着脱することによってベースを被固定面に対して着脱できるようになり、従って、従来のリベットによる固定方式に比べて、極めて容易にベースと被固定面との分離が可能となり、分別廃棄若しくは綴じ具の再利用を促進することができる、という従来にない優れた効果を奏することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 第1実施例に係るベース固定構造を示す概略斜視図。 【図2】 図1のA-A線に沿う矢視拡大断面図。 【図3】 図2のB-B線に沿う断面図。 【図4】 前記実施例におけるベース固定具の拡大分解斜視図。 【図5】 第2実施例におけるベース固定具を示す概略斜視図。 【図6】 第2実施例に係るベース固定構造を示す断面図。 【図7】 第3実施例に係るベース固定構造を示す要部概略斜視図。 【図8】 図7の平面図。 【図9】 図8のC-C線に沿う断面図。 【図10】 第4実施例に係るベース固定構造を示す要部概略斜視図。 【図11】 第4実施例に係るベース固定構造の全体を示す断面図。 【符号の説明】 10 綴じ具 11 背表紙(被固定面) 13 ベース 14 ベース固定具 32 外側部材 33 貫通部材 35 クサビ部材 50 クサビ部材 55 貫通部材 70 貫通部材 71 クサビ部材 83 クサビ部材 85 貫通部材 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2007-09-25 |
出願番号 | 特願平10-298548 |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(B42F)
P 1 41・ 856- Y (B42F) P 1 41・ 121- Y (B42F) P 1 41・ 853- Y (B42F) P 1 41・ 161- Y (B42F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 蔵野 いづみ |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 名取 乾治 |
登録日 | 2003-04-25 |
登録番号 | 特許第3421913号(P3421913) |
発明の名称 | 綴じ具のベース固定構造 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 森田 耕司 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 森田 耕司 |