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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01F |
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管理番号 | 1166375 |
審判番号 | 不服2005-10729 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-09 |
確定日 | 2007-10-16 |
事件の表示 | 特願2002-39009「木製防護柵」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月8日出願公開、特開2002-322622〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成14年2月15日の出願(国内優先 平成13年2月21日)であって、平成17年4月21日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その請求項1?7に係る発明は、平成16年9月17日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められ、その請求項6に係る発明は次のとおりである。 「車両通行域の路側部に所定間隔を置いて立設した複数の支柱と、各支柱の地上部前面で上下に所定間隔を置いて横架した複数の木材ビームとを備えて柵状に構成され、前記車両の接触ないし衝突を前面側から受け、前記車両の挙動を安全規準に適合させる木製防護柵であって、 前記木材ビームを直径180mm程度の間伐材とすると共に各木材ビームの位置関係が次記の通りであり、タイヤが最下段の木材ビームに直接衝突し、路面から最下段の木材ビームの下面までの間及びビーム間に夫々250mmを超える空間を設けないことを特徴とする木製防護柵。 (1)路面から最下段木材ビーム下面までの高さが、H1=50?250mmであること。 (2)各木材ビーム間の間隔が、H2=50?250mmであること。 (3)路面から最上段木材ビーム上面までの高さが、H3=650?1000mmであること。 (4)木材ビームの支柱から道路側への張り出し寸法が、K≧60mmであること。」 (以下「本願発明」という。) 第2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布されている刊行物である、特開平9-88026号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「防護柵」に関して、 (イ)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、道路、橋梁等の路側用、歩道用、公園、遊歩道等の防護柵に関するものである。」 (ロ)「【0008】上記課題解決手段において、木材製の円柱形の緩衝材を用いることにより、搭乗者や車両等が衝突時に受ける衝撃を回避または緩和することができる。また、緩衝材はボルト締めの構造であるから、メンテナンスを容易にできる。」 (ハ)「【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明する。まず、図1に基づいて第一実施例を説明すると、防護柵は、道路、橋梁等に施工されるコンクリート製の支柱1と、木材製の上下の円柱形緩衝材2a,2bとからなり、前記支柱1は、道路の路側3の取付け孔4に入れて固定するための支柱本体1aと、該本体1から突出した鉄筋製の脚体5と、前記緩衝材2a,2bを固定させるために支柱本体1aの上部に設けられた半円状の上受け体6と、支柱本体1aの下左右部に設けられた半円状の下受け体7とから形成され、…支柱本体1aの埋め込みナット11ヘ固定ボルト12a,12bによって前記緩衝材2a,2bが固定されている。」 (ニ)「【0012】なお、木材製の前記緩衝材2aは、腐食による品質の信頼性を得るために、第四級アンモニュウム塩を主成分とする安全性の高い防腐防蟻剤を木材の加圧式防腐処理を施し、鋼板ガードレールと同等の耐候性が期待できるようにしており、木材の持つソフト性と、衝突時の安全性に優れたものである。そして、円柱形緩衝材としての直径180mm、長さ2mの防腐加工した杉材の破壊荷重は3.8tで充分ゆとりのある値であった。」 (ホ)「【0018】また、図5は第三実施例の防護柵で、その特徴を説明すると、コンクリート製の支柱本体1aの上部に設けられた半円状の上受け体6及び上側の緩衝材2aが、支柱本体1aの下部の左右に設けられた半円状の下受け体7及び下側の緩衝材2bの位置より道路側の反対方向に傾斜した位置にある。また、前記支柱本体1aに形成された上受け体6と下受け体7に取り付ける木材製の上下の円柱形の緩衝材2a,2bを同じ太さにすることによって、車が衝突した場合に、車の下側部分だけが前記支柱本体1aの下受け体7に取り付けられた木材製の下の円柱形の緩衝材2bにのみ接触する事によって車や人体の被害を最小限に押えることができる。その他の構成及び作用は、前記第一実施例と同様である。」 と記載されており、 これらの記載および図面を参照すると、刊行物1は次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する刊行物1における構成・用語である。 「車両通行域(道路)の路側部(路側3)に所定間隔を置いて立設した複数の支柱(支柱1)と、各支柱の地上部前面で上下に所定間隔を置いて横架した複数の木材ビーム(木材製の上下の円柱形緩衝材2a,2b)とを備えて柵状に構成され、前記車両の接触ないし衝突を前面側から受け、前記車両の挙動を安全規準に適合させる(車両等が衝突時に受ける衝撃を回避または緩和することができる)木製防護柵であって、 前記木材ビームを直径180mm程度の木材とすると共に、タイヤが最下段の木材ビームに直接衝突する(車の下側部分だけが下の円柱形の緩衝材2bにのみ接触する)木製防護柵。」 (以下「刊行物1発明」という。) 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布されている刊行物である、「防護柵の設置基準・同解説、社団法人日本道路協会、平成10年11月30日、96,97,136頁」(以下、「刊行物2」という。)には、 (ヘ)96頁に、「橋梁用ビーム型防護柵 設計方法 1-1構造設計 (1)構成 橋梁用ビーム型防護柵は支柱と横梁を強度部材とし、横梁は1本の主要横梁と1本以上の下段横梁にて構成するものとする。なお、横梁は丸型、角型またはこれに類する形状を有し、閉断面でなければならないものとする。(2)設計緒元 橋梁用ビーム型防護柵は付表-1・1の設計緒元を満足しなければならない。」と記載され、付表-1・1には、 a.ブロックアウト量(mm)として25以上であること。 b.主要横梁上端高さ(cm)[路面から]が90(900mm)以上、100(1000mm)以下であること。 c.下段横梁中心高さ(cm)[地覆面から]が25(250mm)以上、60(600mm)以下であること。 が示されている。また、「注1 ブロックアウト量は、支柱の最前面から横梁最前面までの距離をいう。」との記載もある。 (ト)136頁に、「2、種別SCビーム型防護柵(丸ビーム,2本レールタイプ,アンカーボルト方式)ここでは,付図-18に示す構造寸法を有する種別SC橋梁用ビーム型防護柵においてアンカーボルト方式の定着部の設計計算例を示す。」と記載され、付図-18には、 d.路面と地覆面の差が250mmであること。 e.下段横梁の半径が130÷2=65mmであること。 f.主要横梁の中心と下段横梁の中心の間隔が660-330=330mmであり、主要横梁の半径が180÷2=90mmであること。が示されている。 ここで、上記cとeから、地覆面即ち接地面から下段横梁下面までの高さh1=(250-65)?(600-65)=185?535mmであること。 上記eとfから、主要横梁と下段横梁の間隔h2=330-65-90=175mmであること。 上記bとdから、地覆面即ち接地面から主要横梁上端までの高さh3=(900-250)?(1000-250)=650?750mmであること。 上記aから、横梁最前面の支柱最前面から道路側への張り出し寸法が、k≧25mmであること。 がいえるから、刊行物2には、次の技術が記載されているものと認める。 「各ビームの位置関係が次記の通りである防護柵。 (1)設置面から最下段ビーム下面までの高さが、h1=185?535mmであること。 (2)各ビーム間の間隔が、h2=175mmであること。 (3)設置面から最上段ビーム上面までの高さが、h3=650?750mmであること。 (4)ビームの支柱から道路側への張り出し寸法が、k≧25mmであること。」 第3.対比・判断 本願発明と刊行物1発明とを対比すると、両者は、 「車両通行域の路側部に所定間隔を置いて立設した複数の支柱と、各支柱の地上部前面で上下に所定間隔を置いて横架した複数の木材ビームとを備えて柵状に構成され、前記車両の接触ないし衝突を前面側から受け、前記車両の挙動を安全規準に適合させる木製防護柵であって、 前記木材ビームを直径180mm程度の木材とすると共に、タイヤが最下段の木材ビームに直接衝突する木製防護柵。」 である点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:木材ビームを、本願発明は、「間伐材」とするのに対し、刊行物1発明では「木材」とする点。 相違点2:本願発明が「各木材ビームの位置関係が次記の通りであり、路面から最下段の木材ビームの下面までの間及びビーム間に夫々250mmを超える空間を設けない木製防護柵。 (1)路面から最下段木材ビーム下面までの高さが、H1=50?250mmであること。 (2)各木材ビーム間の間隔が、H2=50?250mmであること。 (3)路面から最上段木材ビーム上面までの高さが、H3=650?1000mmであること。 (4)木材ビームの支柱から道路側への張り出し寸法が、K≧60mmであること。」とするのに対し、刊行物1発明では各寸法は不明である点。 相違点1について検討するに、本願明細書の段落【0034】にも「木材ビーム5,6は、天然木材丸太、特に直径180mm程度の間伐材が用いられる。製材品を用いることもできる。」と記載されているように、「間伐材」に限定することに特段の意味は無く、上記相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。 相違点2について検討するに、刊行物2には、 「各ビームの位置関係が次記の通りである防護柵。 (1)設置面から最下段ビーム下面までの高さが、h1=185?250mmであること。 (2)各ビーム間の間隔が、h2=175mmであること。 (3)設置面から最上段ビーム上面までの高さが、h3=650?750mmであること。 (4)ビームの支柱から道路側への張り出し寸法が、k≧60mmであること。」 の範囲で、相違点2に係る本願発明の構成と一致する技術が記載されているから、刊行物1発明に刊行物2記載の技術を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、格段の阻害要因もなく、当業者が容易になし得る設計事項にすぎないものと認められる。 そして、本願発明の有する効果も、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の技術から予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。 なお、請求人は、平成17年3月3日付けの手続補正書で、段落【0001】【発明の属する技術分野】を、出願当初の 「本発明は、橋梁、道路等の路側、歩道、駐車場、公園その他の遊歩道等において設置される木製防護柵に関するものである。…」から 「本発明は、道路の路側部に設置される木製防護柵に関するものである。…」と補正するとともに、審判請求書において、上記刊行物2は橋梁用防護柵に関するものであるので、これを本願の拒絶の理由に引用することは不適当である旨、縷々述べている。 しかし、本件出願の当初明細書には、「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁、道路等の路側、歩道、駐車場、公園その他の遊歩道等において設置される木製防護柵に関するものである。…」との記載があり、 請求人の、木製防護柵に関する別出願に係る、特開平9-88026号公報(上記刊行物1)には、「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、道路、橋梁等の路側用、歩道用、公園、遊歩道等の防護柵に関するものである。」との記載があり、 同じく、請求人の、木製防護柵に関する別出願に係る、特開平8-326023号公報(原査定の拒絶の理由に引用されたもの)には、「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、橋梁、道路等の路側用、歩道用、公園、遊歩道等の防護柵に関するものである。」との記載がある。 これらは即ち、木製防護柵は、道路の路側用に限らず橋梁用も含めて汎用されるものであることを請求人も認めていることに他ならない。してみると、上記刊行物2を引用することに何ら阻害要因は無いといえる。 第4.むすび 以上、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2記載の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものであるので、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-24 |
結審通知日 | 2005-11-22 |
審決日 | 2006-12-11 |
出願番号 | 特願2002-39009(P2002-39009) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大森 伸一、深田 高義 |
特許庁審判長 |
安藤 勝治 |
特許庁審判官 |
宮川 哲伸 西田 秀彦 |
発明の名称 | 木製防護柵 |
代理人 | 三好 秀和 |