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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47B
管理番号 1166376
審判番号 無効2006-80105  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-06-05 
確定日 2007-10-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第3358173号発明「置棚」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3358173号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
特許出願:平成9年12月25日(特願平9-368696号)
設定登録:平成14年10月11日(特許第3358173号)

異議の申立て1:平成15年2月14日(異議2003-70437)
異議申立人:アイリスオーヤマ株式会社
異議の申立て2:平成15年4月9日(異議2003-70437)
異議申立人:アイリスオーヤマ株式会社
異議の決定:平成15年11月18日 (維持決定:確定)

別件無効審判1請求:平成15年4月8日(無効2003-35060)
請求人:アイリスオーヤマ株式会社
審 決:平成15年11月18日 (請求不成立:確定)

別件無効審判2請求:平成15年4月8日(無効2003-35130)
請求人:アイリスオーヤマ株式会社
審 決:平成15年11月18日 (請求不成立 )
東京高裁へ出訴:平成15年12月25日
(平成15年(行ケ)第587号)
判決言渡:平成16年11月8日(結論:審決を取り消す)
無効理由通知起案:平成16年12月15日
意見書及び訂正請求書の提出:平成17年2月10日
審 決:平成17年5月10日 (訂正を認める、請求不成立)
知財高等へ出訴:平成17年6月16日
(平成17年(行ケ)第10520号)
判決言渡:平成18年6月21日(結論:請求棄却)
上告受理申立:平成18年7月10日
(平成18年(行ノ)第10034号)
上告受理却下の決定:平成18年10月20日
(平成18年(行ヒ)第276号)
審決の確定登録:平成18年10月26日

本件無効審判請求:平成18年6月5日
請求人より上申書提出:平成18年6月30日
答弁書提出:平成18年8月28日
弁駁書提出:平成18年10月25日

第2.請求人の主張
1.請求人は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次の点を挙げ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
[無効理由1]:本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、仮に平成17年2月10日付けの訂正が認められたとしても、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[無効理由2]:本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、仮に平成17年2月10日付けの訂正が認められたとしても、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.請求人はさらに、平成18年10月25日付け弁駁書において、訂正後の本件請求項1ないし3に係る発明は、依然として、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:本件特許第3358173号公報
甲第2号証:平成17年5月10日付け無効2003-35130号審決
甲第3号証:平成15年(行ケ)第587号判決
甲第4号証:特開平9-308532号公報
甲第5号証:米国特許第913,204号明細書(1909年)
甲第6号証:米国特許第2,815,257号明細書(1957年)

第3.被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次の点を挙げ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
理由1:平成17年(行ケ)第10520号の判決(判決言渡:平成18年6月21日)は、訂正後の本件の請求項1に係る発明は甲第4号証発明と同一ではなく、甲第4号証発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないと判断している。
理由2:甲第5号証の発明は、訂正後の本件請求項1ないし請求項3に係る発明の構成である「当該固定棚の先端の支持部に対して上記外管をその伸縮に応じて摺動自在に挿通」するという構成とは全く異なる。また、甲第6号証には、訂正後の本件請求項1ないし請求項3に係る発明の構成である「所定枚数の取替棚を前後の外管上に掛止」するという構成を示唆する記載は一切見当たらないから、請求人の主張は失当である。
[証拠方法]
乙第1号証:平成17年(行ケ)第10520号判決

第4.本件発明
本件の請求項1ないし3に係る発明については、上記第1.に記載したとおり、別件無効審判2(無効2003-35130号)が請求され、平成17年2月10日付けで訂正請求がなされ、平成17年5月10日付けで「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決がなされ、この審決は、平成18年10月26日に確定した。
したがって、本件の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年2月10日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 左右の支脚間に前後に架橋した棚受用横桟上に適宜着脱自在な取替棚を掛止してなる置棚において、上記棚受用横桟は外管に内管を伸縮可能に挿通してなると共に、上記外管の伸縮方向に一定長を有する単一部材の固定棚は、その後方裏面に設けた取付孔に内管側の支脚を嵌入すると共に、当該固定棚の先端の円形孔からなる支持部に対して上記外管をその伸縮に応じて摺動自在に挿通して該固定棚を水平に支持し、所定枚数の取替棚を前後の外管上に掛止したことを特徴とする置棚。
【請求項2】 外管の内管挿通側の先端には、固定棚の外管支持部と当接する抜止部を設け、外管の最大伸長を規制した請求項1記載の置棚。
【請求項3】 固定棚および取替棚は、上下方向の通気孔を有する請求項1または2記載の置棚。」

第5.無効理由に対する判断
1.請求人の提出した証拠の記載事項
(1)甲第4号証には次の事項が記載されている。
(1a)「左右の柱部材1…と;該柱部材1…に固着可能な左辺部材2・右辺部材3と;該左辺部材2と右辺部材3とを左右連結する伸縮パイプ材4…と;左右一方に櫛歯状の複数本の突出部8…を有すると共に左右他方に開口する差込孔部10…を並設した基本板6を二枚以上順次連結して、一の基本板6の上記突出部8…を隣り合う他の基本板6の上記差込孔部10…に、差込深さ調整可能に差込み、平面板状に形成されて、上記伸縮パイプ材4…に支持される伸縮棚板部5と;から構成されたことを特徴とする棚構造。」(請求項1)、
(1b)「【発明の実施の形態】 以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1と図2は、本発明の棚構造に係る実施の一形態を示し、この棚構造は、設置場所のスペースに応じて伸縮するものであって、左右一対の柱部材1,1と、柱部材1,1に固着可能な左辺部材2・右辺部材3と、左辺部材2と右辺部材3とを左右連結する一対の伸縮パイプ材4,4と、複数枚の基本板6…から形成されて伸縮パイプ材4,4に支持される伸縮棚板部5と、から構成され、基本板6及び左右辺部材2,3は、プラスチックにて形成されている。なお、図1では、棚構造の左側の要部を示している。
左右辺部材2,3はその後方部に、柱部材1,1挿入用の筒部11,11が夫々設けられている。・・・
さらに、左辺部材2と右辺部材3は、夫々内方側に開口する複数の嵌合受部24…が並設され、この嵌合受部24…に基本板6の(後述する)突出部8…又は短突出部9…が嵌め込まれる。
また、伸縮パイプ材4は、外筒15と内筒16とを有すると共に、その両端部19,19にL字型のキャップ部材17,17がビス18…やかしめ等にて外嵌状に連結されている。そして、左右辺部材2,3の前後端部に形成された切欠受部20,20に、上記キャップ部材17,17の両端部21,21を落し込んで(引っ掛けて)、伸縮パイプ材4が左右辺部材2,3に橋架状に連結される。
基本板6は、図2と図3の平面図及び図4の左側面図に示すように、左右中間の平板部7と、平板部7の左右一方(図例では右側)に形成された櫛歯状の複数本の突出部8…と、左右他方(図例では左側)に開口して複数並設された差込孔部10…と、を有している。
そして、この一の基本板6の櫛歯状突出部8…を、隣り合う他の基本板6の差込孔部10…に、(図8に示す如く)差込深さ調整可能(スライド移動可能)に差込み、基本板6を2枚以上順次連結して平面板状に伸縮棚板部5が形成されている。
また、基本板6の前後、つまり、平板部7前後部の両側面に弯曲鍔状の弯曲掛止部23,23が設けられ、この弯曲掛止部23,23にて一対の伸縮パイプ材4,4を抱えるようにして引っ掛けて、伸縮棚板部5が載置状に支持されている。
さらに、基本板6の平板部7には、複数本の突出部8…の間の間隙部Mの延長線上に配置するように、細長形状の水切り窓部22…が貫設されている。・・・」(段落【0009】?【0018】)
(1c)「図8は、図2から図6のように、基本板6…の全体の左右長さを短縮させる場合の方法を説明する図であり、・・・基本板6…をパイプ材4,4から取外して、基本板6,6の相互が(図8の(ロ)のように)折曲げて、孔部10から奥方へ突出部8を矢印Fのように差込んでゆき、所望の全体左右長さままで短縮してから、図8の(ハ)のように、矢印Gのように、基本板6,6の相互を同一平面状となるように揺動する。・・・その後、柱部材1,1間を短縮して、パイプ材4,4に載置する。
逆に、全体左右長さを伸長したいときには、図8の(ニ)(ハ)(ロ)(イ)と逆に作動すれば良い。
いずれにせよ、図8の(ロ)(ハ)のように一旦折曲げ状で、伸縮作動して後に、凹溝27を形成する前後壁部28, 28の弾性変形により、突出部8の圧接保持を行って、複数枚の基本板6…の全体左右長さの伸長・短縮の作動と保持を容易として、パイプ材4,4の長さ(柱部材1,1間の間隔寸法)に合わせ得る。」(段落【0019】?【0022】)、
(1d)「また、図1と図2に示す如く、一対の伸縮パイプ材4,4に支持される伸縮棚板部5は、その両端部である左右の基本板6,6の短突出部9…と突出部8…とを、(上述の)左辺部材2の嵌合受部24…と右辺部材3の嵌合受部24…に嵌め込んで支持固定されている。・・・」(段落【0023】)、
(1e)「・・・図2と図5(イ)と図10は伸縮棚板部5の伸長状態を示し、伸縮パイプ材4,4が伸びきった状態である。このとき、基本板6の突出部8…の中間から先端にかけてが、隣り合う他の基本板6の短突出部9…に位置するよう設定されている。・・・
そして、伸縮パイプ材4,4を縮めると共に、パイプ材4,4に摺動させて伸縮棚板部5を縮めて、図5(ロ)と図6に示す如く、短縮状態とする。・・・」(段落【0024】?【0026】)、
(1f)「・・・図7(ロ)は、柱部材1を左右二対設けたものであり、勉強部屋Aに設置した場合を示している。つまり、左辺部材2及び右辺部材3に、夫々柱部材1挿入用の二つの筒部11,11を設け(図5参照)、4本の柱部材1…で伸縮棚板部5を支持するものである。・・・
この場合、伸縮棚板部5上の物品が比較的重い物(本34や雑誌35など)でも、4本の柱部材1…にて確実かつ安定して支持することができる。また、基本板6の枚数を増やし、比較的長い伸縮棚板部5を形成して───即ち、物品の載置面積を大きくする───たくさんの物品を載置することもできる。」(段落【0030】?【0031】)、
(1g)「【発明の効果】 本発明は上述の如く構成されるので、次に記載する効果を奏する。
(請求項1によれば)柱部材1…を立てることにより伸縮棚板部5が支持される───即ち、壁面間を利用することなく取付け可能である───ため、あらゆる室内の所望の位置に設置可能であり、例えば、洗濯場所、洗面所、台所、勉強部屋等の整理棚用として用いることができる。
また、同じ形状の基本板6を利用することができるので、製作が容易である。また、所定枚数の基本板6…からなる伸縮棚板部5にて伸縮調整可能であるが、基本板6の枚数を増減することによって、より伸縮調整範囲を広げることができ、より設置スペースや整理する物品の量に対応した棚を設けることができる。
また、一の基本板6の突出部8…が、隣り合う他の基本板6の差込孔部10…内に差込深さ調整可能(スライド移動可能)に差込まれるため、伸縮棚板部5を伸長状態から短縮状態にしても、一の基本板6の突出部8は同じ本数のままであり、従って、外見上スッキリとした意匠となる。つまり、短縮状態となっても、基本板6,6同士の重なり部分が見えず、外見上スッキリしている。」(段落【0033】?【0036】)
(1h)図2、6、10には、右辺部材から数えて2枚目の基本板6が、伸縮パイプ材4,4の外管に掛け止められていることが示されている。
これらの記載及び図面の記載によれば、甲第4号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「左右の柱部材1,1に前後に架橋した伸縮パイプ材4,4上に適宜着脱自在な基本板6を掛止してなる置棚において、上記伸縮パイプ材4,4は外筒に内筒を伸縮可能に挿通してなり、左右の柱部材1,1を、左辺部材2・右辺部材3の後方部に設けた柱部材挿入用の筒部11に嵌入すると共に、左辺部材2・右辺部材3に伸縮パイプ材4,4を連結し、所定枚数の水切り窓部22を有する基本板6を二枚以上連結して平面板状に形成した伸縮棚板部5を、前後の伸縮パイプ材4,4上に掛止した棚構造。」

(2)甲第5号証には、次のような事項が記載されている。
(2a)本発明は、延長テーブルにおける改良に関し,テーブル天板の部品を互いに摺動可能に取り付けられる安価で単純、且つ便利な装置を提供することを目的とする。(1頁左欄8行?13行)
(2b)図を参照して説明する。Aは、複数の部分に分かれたテーブル天板を示し、端部に位置する部分には脚部Bが接続されている。管CおよびDがテーブルの一端の脚部Bに接続されており、管EおよびFがテーブルの反対側の端部の脚部に接続されており、後者の管は管CおよびD内に摺動可能に配設される。設定ネジGは管EおよびFを管CおよびDに対して固定した構造とするためのものである。支柱Hは、管Dの先端部を適切な位置に保持する役割を果たし、斜めに張った支柱Jは管CおよびDと、EおよびFをテーブルの脚部に隣接して接続する。上記の説明から、設定ネジGを緩めると、テーブルの二つの端部に位置する部分が離れ、図示しない追加の薄板を通常の周知の方法で挿入できるようになることは明らかである。(1頁左欄23行?右欄45行)
(2c)天板と、天板用の支持部材とを備えた延長テーブルにおいて、天板の各端部に位置する一対の脚部と、脚部の上端に設けられた結合部と、この結合部の下部に位置するように前記脚部に設けられた付加的な結合部と、先に記載の結合部から内側に向かって突出する入れ子型部材と、後に記載の結合部から前記入れ子型部材へ延在する支柱と、前記支柱から突出する付加的な入れ子型部材と、前記入れ子型部材すべてを相対的に動かないように結合するための手段とを有する延長テーブル。(1頁右欄48行?61行)
(2d)

これらの記載によれば、甲第5号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「左右の脚部B間に前後に架橋した入れ子型部材を有するテーブルにおいて、上記入れ子型部材は、外管CおよびDに内管EおよびFを伸縮可能に挿通してなり、上記外管Dの伸縮方向に一定長を有する天板Aは、その後方裏面に外管D側の支脚を取付け、先端側裏面に位置する支柱Hは、管Dの先端部を適切な位置に保持し、上記内管Fの伸縮方向に一定長を有する天板Aは、その後方裏面に内管F側の脚部Bを取付け、天板Aを水平に支持し、入れ子型部材の伸長により分離した左右の天板A間に追加の薄板を挿入可能であるテーブル。」

(3)甲第6号証には、次のような事項が記載されている。
(3a)本発明は、延長可能なテーブルにおける、相互に摺動可能な一対の天板部材間の金属製ガイド接続機構に関する。このテーブルにおいて、テーブルの脚部と支持枠は、調整または延長不可能で、固定した永久的な形状を有し、テーブル中心で当接可能であり、または引き出して薄板を挿入することにより長尺にすることができる摺動式の天板部材を支持する。(1欄8行?15行)
(3b)本発明の主な目的は、単純、安価、且つ非常に容易に適用および操作可能な構造を有するテーブル天板用の、新規であり且つ改良された金属製の摺動可能な接続機構もしくはテーブルスライドであって、テーブルの固定枠の端部に固着される端部鍔部を有する長尺の管状部材は、反対側の端部に小径の入れ子型管状部材を係合し、異なる寸法のテーブル枠に対応可能なようにされている。長尺の管状部材は、一対の摺動可能な管状ブラケットを備え、それぞれは、可動テーブル天板のうちの一方の下側に固定するための平板を有する。前記スライドは、一台のテーブルに一つ必要であるが、希望があれば、複数個適用可能である。(1欄16行?31行)
(3c)本発明を実施するに当たり、側部材12および14と端部材16および18からなる固定した箱型枠によって相互に固定して結合された従来の脚部材10を備える。・・・特に注目すべき点は、部材12、14、16および18からなる枠は、堅固な箱状の部材であり、その目的は、上記枠に対して摺動可能であり、テーブルスライドに連結してその上に支持される2枚の天板20及び22を水平位置に支持することである。(1欄44行?56行)
(3d)テーブル天板部材20および22を、図1において点線で示すようにテーブルの端方向に移動させると、テーブルの中央に隙間ができ、そこに薄板を挿入して、円滑な平面の延長テーブル天板を形成することができる。(1欄57行?61行)
(3e)本発明のテーブルスライドは、その一端に足または鍔26を設けた長手の中空管24を備え、この足または鍔はネジ28のような何らかの好都合な手段によって枠部材16に取り付けられる。これにより、管状部材24はテーブル天板部材20および22のすぐ下に水平に位置することになり、また、この管状部材は枠部材16および18の間の距離よりわずかに短い。
より小径で短い管状部材30は同様の足または鍔32を備え、締結具34によって端部材18に固定され、テーブル天板部材20、22の下側においてまっすぐで連続的な支持部を形成するように管24の開口端と直線的に並ぶ。このような支持部は、テーブルスライドを設置する際、異なる寸法のテーブルに適合するように調整可能となっている。管状部材24は、全体を符号36で示す、同じ形の一対の摺動ブラケットを備える。各ブラケットは、管状部材24に摺動可能に取り付けると共に、正接して配置される平板42を備え、それは、図1および2に明確に示すようにテーブル天板20および22それぞれに固定するための締結具44を備える。(1欄62行?2欄15行)
これらの記載及び図面の記載によれば、甲第6号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「側部材12および14と端部材16および18からなる固定した箱型枠に脚部材10を固定し、箱型枠上に2枚の摺動可能な天板部材20、22を支持し、摺動により形成された左右の天板間の隙間に追加の薄板を挿入可能である延長可能なテーブルにおいて、箱型枠の端部材16および18に長尺の中空管24と小径で短い管状部材30からなる長さ調整可能なテーブルスライド(金属製ガイド接続機構)を取り付け、長尺の中空管24に取り付けた、円筒形のスリーブ40を備える摺動ブラケットに前記天板部材20、22を取り付け、天板部材をテーブルスライドに沿って摺動させる、延長可能なテーブル。」

2.対比、判断
[無効理由1について]
(1)請求項1に係る発明について
平成17年(行ケ)第10520号判決(乙第1号証)においては、本件請求項1に係る発明(前記判決における「訂正発明1」)と甲第4号証に記載の発明(前記判決における「甲第5の1発明」)との相違点の認定について次のように判示された。
「第1次判決[当審注 本件における甲第3号証]・・・は,訂正前発明1の「固定棚」について,「本件発明1(判決注 訂正前発明1)の『固定棚』に関する…請求項の記載及び本件明細書(判決注 訂正前明細書)の記載を検討すると,固定棚を複数部材から構成することを積極的に排除する記載は認められず,かえって,段落【0016】には,『適用しようとする収納空間に応じて,外管2aの長さや,その伸縮範囲,すなわち固定棚3の長さを変更できることはもちろんである。』とも記載されている。これらに照らせば,本件発明1においては,『固定棚』につき,複数部材により構成して長さを変更することができるようにすること,すなわち伸縮範囲を変更可能な構成を採用することが排除されているものとはいえない…。したがって,本件発明1の『固定棚』は,(一体成型されるなどした)単一の部材からなるものに限定されてはいないというべきであって,…引用発明1(判決注 甲5の1発明)における右辺部材3と1枚又は複数枚の基本板6の一体化されたもの(引用例1〔当審注 甲第4号証〕・・・の図2,6,10の例では,右辺部材3と右側及び中央の2枚の基本板6とが一体化されたもの)も含まれるというべきである。」(17頁20行?18頁10行)と判示しているから,第1次判決は,甲5の1発明において「右辺部材3と1枚の基本板6の一体化されたもの」も訂正前発明1の「固定棚」に当たる旨の認定をしているということができる。・・・
しかし、甲5の1発明における右辺部材3と1枚の基本板6が一体化されたものは,右辺部材3と1枚の基本板6という二つの部材から成っており,右辺部材3と複数枚の基本板6が一体化されたものは,右辺部材3と複枚の基本板6という三つ以上の部材から成っているから,「単一部材」から成るものでないことは明らかである。したがって,これらの甲5の1発明における右辺部材3と基本板6が一体化されたものは,「単一部材」から成る訂正発明1の「固定棚」とは,「単一部材」から成るかどうかという点において相違することは明らかである。また,訂正発明1と甲5の1発明は,「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」であるかどうかという点においても,相違する・・・。」(「第4 当裁判所の判断」3(2))。
すなわち、上記判決においては、本件請求項1に係る発明と甲第4号証に記載の発明を対比すると、甲第4号証に記載の発明における、右辺部材3と基本板6が一体化されたものは本件請求項1に係る発明の「固定棚」に相当すると認められるが、本件請求項1に係る発明の「固定棚」とは「単一部材」から成っていない点、及び「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」ではない点において相違すると認定している。
そして、これらの相違点の判断について、上記判決は次のように判示している。
「・・・甲5の1発明の基本板6については,(1)基本板6の相互間の差込深さを調整することで伸縮棚板部5の全長が調整できること,(2)基本板6を同じ形状のものとすることで製作が容易となることが認められる。
甲5の1発明の右辺部材3と1枚の基本板6が一体化されたものを「固定棚」と考えた場合には,基本板6自体の長さを変えることによって,固定棚の長さを変えることができるが,基本板6は,取替板としても使用される。そうすると,固定棚の長さとしては適切な長さでも,取替板としては適切な長さではない(長すぎる又は短すぎる)ということが起こり得るから,取替板としても適切な長さという制約があり,固定棚の長さを自由に設定できるというものではない。また,甲5の1発明の右辺部材3と複数の基本板6が一体化されたものを「固定棚」と考えた場合には,上記のとおり,基本板6の相互間の差込深さを調整することで伸縮棚板部5の全長が調整できるから,基本板6自体の長さを変えなくても,固定棚の長さを変えることができるが,その場合には,固定棚の長さを変えることができるのは,差込深さを調整することができる範囲に限られることになるから,固定棚の長さを自由に設定できるということはない。
これに対し,訂正発明1では,「固定棚」は,甲5の1発明の右辺部材3に相当する部分を含む「単一部材」で構成され,かつ,前記のとおり「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」からなっていることにより「支脚間に棚受用横桟を架橋した状態では棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない」から,「取替板」とは別個の形状のものであることが明らかである。そのため,訂正発明1では,固定棚の長さの設定に上記の甲5の1発明のような制約はなく,固定棚の長さを自由に設定することができるから,「適用しようとする収納空間に応じて,外管2aの長さや,その伸縮範囲を調整し,収納空間の寸法に応じて置棚のサイズを調整」するという,甲5の1発明にはない作用効果を奏することができる。
このように,訂正発明1は,作用効果において,甲5の1発明とは異なるものである。
そして,甲5の1発明において訂正発明1の「固定棚」に相当する「右辺部材3と基本板6が一体化されたもの」を「単一部材」で構成すると,それを「取替板」として使用できないことになるから,甲5の1発明における「右辺部材3と基本板6が一体化されたもの」を「単一部材」で構成することには阻害要因がある。また,甲5の1発明における「右辺部材3と基本板6が一体化されたもの」の基本板6の「先端の支持部」を「円形孔」とすると,やはり,それを「取替板」として使用できないことになるから,甲5の1発明における「右辺部材3と基本板6が一体化されたもの」の基本板6の「先端の支持部」を「円形孔」とすることにも阻害要因がある。」(「第4 当裁判所の判断」4)。
上記判決に判示されたとおりの理由により、請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるとすることも,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(2)請求項2、3に係る発明について
請求項2、3に係る発明は、請求項1に係る発明を特定するに必要な事項をすべて備えた上で、更に、限定を加えるものであるから、いずれも、上記(1)で述べたのと同様な理由により、甲第4号証に記載された発明であるとすることも,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

[無効理由2について]
(1)請求項1に係る発明について
(1)請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と甲第4号証に記載の発明とを対比すると、上記平成17年(行ケ)第10520号判決(乙第1号証)に示されたとおり、甲第4号証に記載の発明において、右辺部材3と基本板6が一体化されたものは「固定棚」に相当すると認められるが、本件請求項1に係る発明の「固定棚」とは「単一部材」から成っていない点、及び「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」ではない点において相違する。

そこで、甲第5号証及び甲第6号証に相違点に係る事項が示されているか否かについて検討する。
甲第5号証には、左右の脚部B間に前後に架橋した入れ子型部材(管CとE、及び管DとF)を有し、入れ子型部材の伸長により分離した左右の天板間に追加の薄板を挿入可能であるテーブルが記載されているが、左右の天板は、本件請求項1に係る発明で規定するような先端の支持部を有するものでない。
なお、甲第5号証記載のテーブルにおいては、外管Dの先端部を保持する支柱Hが設けられており、支柱H上端には外管Dを挿通する円形孔が形成されていると見ることもできるが、支柱Hが内管側の天板Aに固定されたものであるとすることはできない。すなわちFig.1において支柱Hの上方に記載されている天板が内管を取り付けた側の天板Aであり、支柱Hがこの天板Aに固定されているとすると、支柱Hには隣接して設定ネジが設けられているから、外管Dを、支柱Hの円形孔に対して摺動させる(Fig.1において左側へ伸長させる)ことができず、入れ子型部材を伸長させることができなくなるからである。
そうすると、甲第5号証の図面(Fig.1)の記載によれば、入れ子型部材を伸長すると、左右の天板が中央で分離し、追加の薄板は内管の上方に位置すると認められ、内管側の支脚を取り付けた天板に対して、外管を振動自在に支持することも、追加の薄板を外管に掛止することも示されていない。
また、甲第6号証には、脚部材10の上部に固定された箱型枠(12、14、16及び18)に取り付けたテーブルスライドに沿って摺動可能な天板を設け、左右に分離した天板間に適宜追加の板を挿入するテーブルが記載されているが、天板は裏面に支脚を取り付けたものではなく、固定棚に相当する部材を有していない。したがって、天板裏面に円筒形のスリーブ40、すなわち円形孔を備える摺動ブラケット36を取り付けることが記載されているが、該摺動ブラケット36に設けられた円形孔は、請求項1に係る発明の固定棚の先端に設けた「円形孔」には相当しない。さらに、テーブルスライドを構成する「中空管24」と該中空官24に挿通される「管状部材30」は、異なる寸法のテーブルに適合するように、すなわち、箱型枠に適合するように調整可能となっているものであって、箱型枠に取り付けた後は伸縮するものではなく、甲第6号証に記載の発明は、天板の支持部に対して、入れ子型部材をその伸縮に応じて摺動自在に挿通させるものではない。
したがって、甲第5号証又は甲第6号証に記載された発明は、前記相違点に係る構成を示唆するものではない。

さらに、「円形孔」に着目してみても、そもそも甲第4号証に記載の発明は、基本板を「取替板」として使用できるよう、伸縮可能な横桟に対して着脱自在とするものであるから、上記判決で判示されたとおり、請求項1に係る発明の「固定棚」に相当する「右辺部材3と基本板6が一体化されたもの」の基本板6の「先端の支持部」を「円形孔」とすることには阻害要因があり、甲第6号証に、天板に固定された摺動ブラケットの円形孔にテーブルスライドを挿通する技術が記載されているとしても、この技術を甲第4号証に記載の発明の「先端の支持部」に適用することが当業者において容易になしうるとすることはできない。

そして、本件請求項1に係る発明は、後方に内管側の支脚を取付けた単一部材の固定棚に設けた円形孔からなる支持部に外管を伸縮に応じて挿通し、単一部材の固定棚から伸長する外管上に取替板を掛止する内管側の支脚を取付けたことにより、単一部材の固定棚は、先端の円形孔からなる支持部に外管を挿通された外管で水平状態に支持され、取替棚は横桟の外管のみで支持されるため、「ガタツキがなく、外管の径に見合って十分な積載荷重を確保することができる」等の明細書記載の特有の作用効果を奏するものである。

したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)請求項2、3に係る発明について
請求項2、3に係る発明は、請求項1に係る発明を特定するに必要な事項をすべて備えた上で、更に、限定を加えるものであるから、いずれも、請求項1に係る発明と同様に理由により、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第6.むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-15 
結審通知日 2006-11-17 
審決日 2006-12-08 
出願番号 特願平9-368696
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A47B)
P 1 113・ 113- Y (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 陵司渋谷 知子  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 西田 秀彦
山口 由木
登録日 2002-10-11 
登録番号 特許第3358173号(P3358173)
発明の名称 置棚  
代理人 濱田 俊明  
代理人 安江 邦治  
代理人 羽切 正治  

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