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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1166472
審判番号 不服2004-836  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-13 
確定日 2007-10-29 
事件の表示 特願2000-117890「各種伝送モードを使用するオーディオ情報拡布のための受信器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-349666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1995年1月12日(パリ条約による優先権主張1994年1月12日、米国)を国際出願日とする出願である特願平7-519169号の一部を平成12年4月19日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月5日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月3日付けで手続補正がなされたが、同年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「チューナの入力端子において放送信号を受信するように接続がとられ、かつ出力端子を有するチューナと、
該チューナの出力端子に接続される入力部を有し、かつ出力端子を有する暗号解読器と、
該暗号解読器へ機能的に接続される使用者インタフェースと、
該暗号解読器の出力端子へ接続される入力ポートを有し、かつ出力ポートを有し、受信されたオーディオデータを記憶するメモリと、
該メモリの出力ポートへ接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有する圧縮解除回路と、
該圧縮解除回路の出力端子へ接続される入力端子を有し、かつ記憶されたオーディオデータからのオーディオアナログ信号を提供する出力端子を有するデジタル-アナログ変換器とから構成され、
データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し、前記使用者インタフェースが指示にしたがってメモリからデータ項目を検索し、メモリに記憶されたデータの項目の中でデジタル形式で前記デジタル-アナログ変換器に提供されるべきものを選択する圧縮データを含む情報拡布信号を受信する受信器。」
に補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「変換器」を「デジタル-アナログ変換器」に限定し、「前記使用者インタフェースがメモリに記憶されたデータの項目の中で変換器に提供されるべきものを選択させる、」を「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し、前記使用者インタフェースが指示にしたがってメモリからデータ項目を検索し、メモリに記憶されたデータの項目の中でデジタル形式で前記デジタル-アナログ変換器に提供されるべきものを選択する」に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第92/12599号パンフレット(以下、「引用例1」といい、対応する日本の公表特許公報である特表平6-501601号公報を「対応公報」という。)、及び特開平2-41091号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「Technical Field The present invention relates generally to an audio and video transmission and receiving system, and more specifically to such a system in which the user controls the access and the playback operations of selected material. 」(第1頁第3?7行)
(日本語訳:「技術分野
本発明は、概括的にはオーディオおよびビデオ送受信システムに関し、詳細には、選択されたデータのアクセスならびにプレイバック作業をユーザーが制御するようなシステムに関する。」(対応公報第3頁右下欄第3?6行))

B.「With respect to the transmission and receiving systems set forth in Figs. 1a-1g, the requested material may be fully compressed and encoded, partly decompressed at some stage in transmission system 100, or fully decompressed prior to transmission. The reception systems 200 may either buffer the requested material for later viewing, or decompress in real time the requested material as it is distributed by transmission system 100. Alternatively, the reception systems 200 of the present invention may perform a combination of buffering and non-buffering by buffering some of the requested material and decompressing the remainder of the requested material for immediate viewing as it is distributed by transmission system 100. 」(第7頁第28行?第8頁第3行)
(日本語訳:「図1a-1gに記載した送受信システムに対する依頼データは、完全に圧縮およびコード化されてもよいし、送信システム100のいずれかの段階で部分的に圧縮解除されてもよいし、送信前に完全に圧縮解除されてもよい。受信システム200は、後で視聴するために依頼データを緩衝記憶することもできるし、送信システム100によって情報分配されるときに依頼データをリアルタイムで圧縮解除することもできる。あるいは、本発明の受信システム200は、依頼データのいくらかを緩衝記憶し、緩衝記憶の残りは送信システム100による情報分配時にすぐに視聴するために圧縮解除することによって、緩衝記憶と非緩衝記憶を組合せることもできる。」(対応公報第5頁左上欄第16?24行))

C.「The transmission system 100 of the present invention also preferably includes conversion means 113 for placing the items from source material library 111 into a predetermined format as formatted data. In the preferred embodiment, after identification encoding is performed by identification encoder 112, the retrieved information is placed into a predetermined format as formatted data by the converter 113. The items stored in source material library 111 and encoded by identification encoder 112 may be in either analog or digital form. Converter 113 therefore includes analog input receiver 127 and digital input receiver 124. If items have only one format, only one type of input receiver 124 or 127 is necessary.
When the information from identification encoder 112 is digital, the digital signal is input to the digital input receiver 124 where it is converted to a proper voltage. A formatter 125 sets the correct bit rates and encodes into least significant bit (lsb) first pulse code modulated (pcm) data. Formatter 125 includes digital audio formatter 125a and digital video formatter 125b. The digital audio information is input into a digital audio formatter 125a and the digital video information, if any, is input into digital video formatter 125b. Formatter 125 outputs the data in a predetermined format.
When the retrieved information from identification encoder 112 is analog, the inforamtion is input to an analog-to-digital converter 123 to convert the analog data of the retrieved information into a series of digital data bytes. Converter 123 preferably forms the digital data bytes into the same format as the output of formatter 125.
Converter 123 preferably includes an analog audio converter 123a and an analog video converter 123b. The analog audio converter 123a preferably converts the retrieved audio signal into pcm data samples at a fixed sampling rate. The analog video converter 123b preferably converts the analog video information, retrieved from identification encoder 123, into pcm data also at fixed sampling rates. 」(第10頁第36行?第11頁第35行)
(日本語訳:「本発明の送信システム100は、好ましくは、項目の定様式データとして、原データライブラリ111から所定様式に変換する変換手段113も包含する。好適実施例では、識別エンコーダ112によって識別後にコード化を実施し、回収された検索情報は変換器113によって定様式データとして所定の様式にされる。原データライブラリ111に記憶され、識別エンコーダ112によってコード化された項目は、アナログまたはデジタル形式のものである。変換器113は、従って、アナログ入力受信機127と、デジタル入力受信機124とを備えている。アイテムの様式が一種類だけの場合、必要なのは一タイプの入力受信機124または127だけである。
識別エンコーダ112からの情報がデジタルの場合、それが適当な電圧に変換されると、デジタル入力受信機124にデジタル信号が入力される。フォーマッタ125が正しいビット速度を設定し、最下位ビット(lsb)第一パルスコード変調(pcm)データにコード化する。フォーマッタ125には、デジタルオーディオフォーマッタ125aとデジタルビデオフォーマッタ125bが含まれる。デジタルオーディオ情報はデジタルオーディオフォーマッタ125aに入力され、デジタルビデオ情報は、あれば、デジタルビデオフォーマッタ125bに入力される。フォーマッタ125は、所定の様式でデータを出力する。
識別エンコーダ112から検索された情報がアナログであるとき、検索された情報のアナログデータを一連のデジタルデータバイトに変換するため、情報はアナログ-デジタル変換器123に入力される。変換器123は、好ましくは、デジタルデータバイトを、フォーマッタ125の出力と同じ様式に形成する。
変換器123は、好ましくは、アナログオーディオ変換器123aと、アナログビデオ変換器123bを包含する。アナログオーディオ変換器123aは、好ましくは、検索されたオーディオ信号を、固定サンプリング率でpcmデータサンプルに変換する。アナログビデオ変換器123bは、好ましくは、検索されたビデオ信号を、固定サンプリング率でpcmデータに変換する。」(対応公報第5頁右下欄第8行?第6頁左上欄第4行))

D.「In a preferred embodiment of the present invention, many forms of communication channels may be employed. Distribution of information is by common carrier communication channels whenever possible. These channels include common telephone service, ISDN and Broadband ISDN, DBS, cable television systems, microwave, and MAN. 」(第28頁第7?12行)
(日本語訳:「本発明の好適実施例では、数多の形態の通信路を利用できる。情報の分配は、電信電話通信路によれば、いつでも可能である。これらの通信路には、一般電話サービス、ISDNと広帯域ISDN、DBS、ケーブルテレビシステム、マイクロ波、MANがある。」(対応公報第9頁右下欄第1?4行))

E.「Fig. 6 illustrates a block diagram of a preferred implementation of the reception system 200 according to the present invention. The reception system 200 is responsive to user requests for information stored in source material library 111. The reception system 200 includes transceiver 201 which receives the audio and/or video information transmitted by transmitter 122 of the transmission system 100. The transceiver 201 automatically receives the information from the transmitter 122 as compressed formatted data blocks.
The transceiver 201 is preferably connected to receiver format converter 202. The receiver format converter 202 converts the compressed formatted data blocks into a format suitable for playback by the user in real time.
In the reception system 200 of the present invention, the user may want to play back the requested item from the source material library 111 at a time later than when initially requested. If that is the case, the compressed formatted data blocks from receiver format converter 202 are stored in storage 203. Storage 203 allows for temporary storage of the requested item until playback is requested.
When playback is requested, the compressed formatted data blocks are sent to data formatter 204. Data formatter 204 processes the compressed formatted data blocks and distinguishes audio information from video information.
The separated audio and video information are respectively decompressed by audio decompressor 209 and video decompressor 208. The decompressed video data is then sent simultaneously to compressed dijital video output converter 211 and analog video output converter 213. The decompressed audio data is sent simultaneously to digital audio output converter 212 and analog audio output converter 214. The outputs from converters 211-214 are produced in real time.
The real time output signals are output to a playback system such as a TV or audio amplifier. They may also be sent to an audio/video recorder of the user. By using the reception system 200 of the present invention, the user may utilize the stop, pause, and multiple viewing functions of the receiving device. Moreover, in a preferred embodiment of the present invention, the output format converters may be connected to a recorder which enables the user to record the requested item for future multiple playbacks. 」(第30頁第3行?第31頁第7行)
(日本語訳:「図6は、本発明による受信システム200の好適実施例のブロック図である。受信システム100は、原データライブラリ111に記憶された情報に対するユーザーの依頼に応する。受信システム200には、送信システム100の送信機122によって送信されたオーディオおよび/またはビデオ情報を受信する送受信機201が含まれる。送受信機201は、送信機122からの情報を、圧縮定様式データブロックとして自動受信する。
送受信機201は、好ましくは、受信機様式変換器202に接続する。受信機様式変換器202は、圧縮定様式データブロックを、ユーザーがリアルタイムでプレイバックするのに適した様式に変換する。
本発明の受信システム200では、ユーザーは、当初の依頼時間よりも後の時間で原データライブラリ111からの依頼項目をプレイバックしたいかもしれない。そのような場合、受信機様式変換器202からの圧縮定様式データブロックは、記憶装置203に記憶される。記憶装置203は、プレイバックが要求されるまで、依頼項目を一時記憶できる。
プレイバックが要求されると、圧縮定様式データブロックはデータフォーマッタ204に送られる。データフォーマッタ204は、圧縮定様式データブロックを処理して、オーディオ情報とビデオ情報を区別する。
分離されたオーディオおよびビデオ情報は、それぞれ、オーディオ圧縮解除器209とビデオ圧縮解除器208によって圧縮解除される。その後、圧縮解除されたビデオデータは、圧縮デジタルビデオ出力変換器211とアナログビデオ出力変換器213に、同時に送出される。圧縮解除されたオーディオデータは、デジタルオーディオ出力変換器212とアナログオーディオ出力変換器214に、同時に送出される。
テレビまたはオーディオ増幅器のようなプレイバックシステムに、リアルタイム出力信号が出力される。これらの信号は、ユーザーのオーディオ/ビデオレコーダにも出力される。本発明の受信システム200を使用することにより、ユーザーは、受信装置の停止、一時停止、多重視聴機能を使用できる。更に、本発明の好適実施例では、出力様式変換器を、後でまとめてプレイバックするために依頼項目を記録できるレコーダに接続することもできる。」(対応公報第10頁左上欄第20行?右上欄第19行))

上記Dの記載によれば、引用例1のものは、「ケーブルテレビシステム」にも適用されるものであり、その場合、「受信システム200」内の「送受信機201」が受信する信号は、放送信号であるものと解される。
よって、上記A?Eの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「送受信機201の入力端子において放送信号を受信するように接続がとられ、かつ出力端子を有する送受信機201と、
該送受信機201の出力端子に接続される入力部を有し、かつ出力端子を有する受信機様式変換器202と、
ユーザー/コンピュータインタフェース207と、
前記受信機様式変換器202の出力端子へ接続される入力ポートを有し、かつ出力ポートを有し、受信された圧縮定様式データブロックを記憶する記憶装置203と、
該記憶装置203の出力ポートへデータフォーマッタ204を介して接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有するオーディオ圧縮解除器209と、
該オーディオ圧縮解除器209の出力端子へ接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有するアナログオーディオ出力変換器214とから構成される、圧縮定様式データブロックを含む放送信号を受信する受信システム200。」

(引用例2)
F.「従来の技術
VTR等の録画装置の普及によりテレビジョン放送信号等を録画することが多く行われており、CATV等の有料放送であっても自由に録画しうる状態になっている。かかるCATVの有料放送では信号が暗号化されて放送され、特定のデコーダを有する者のみが復号して視聴することができる。
有料放送のテレビジョン信号を記録する場合には、暗号化(スクランブル)されて送られたテレビジョン信号をそのまま記録するか、一旦復号化(デスクランブル)して通常の映像信号にしてから記録するかのいずれかであった。」(第1頁右下欄第4?16行)

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「受信システム200」は、本願補正発明における「受信器」に対応する構成である。そして、引用例1記載の発明における「受信システム200」内の「送受信機201」も、本願補正発明における「受信器」内の「チューナ」も、「放送信号受信部」であるということができる。
次に、引用例1記載の発明における「ユーザー/コンピュータインタフェース207」は、本願補正発明における「使用者インタフェース」に相当する。
また、引用例1記載の発明における「圧縮定様式データブロック」は、「オーディオデータ」を含むものであり、本願補正発明における「オーディオデータ」に対応する。そして、引用例1記載の発明における「受信された圧縮定様式データブロックを記憶する記憶装置203」は、本願補正発明における「受信されたオーディオデータを記憶するメモリ」に対応する構成である。
次に、引用例1記載の発明において、「オーディオ圧縮解除器209」は、「データフォーマッタ204」を介してであるが、「記憶装置203」に接続されていることには変わりなく、引用例1記載の発明における「オーディオ圧縮解除器209」と、本願補正発明における「圧縮解除回路」は、ともに、「メモリへ接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有する圧縮解除回路」であるということができる。
さらに、引用例1記載の発明における「アナログオーディオ出力変換器214」は、圧縮解除されたオーディオデータをアナログオーディオ信号として提供する構成であると解され、さらに、引用例1の上記Cの記載によれば、引用例1記載の発明において、送信側から送られてくる信号は、デジタル信号でありかつ圧縮された信号であると解されるから、圧縮解除されたオーディオデータをアナログオーディオ信号として提供する上記「アナログオーディオ出力変換器214」は、「デジタル-アナログ変換器」として機能する構成であると解され、実質的に、本願補正発明における「デジタル-アナログ変換器」に対応する構成である。
そして、本願補正発明における「情報拡布信号」は、単に「放送信号」を上位概念化した表現にすぎないと解され、引用例1記載の発明において「圧縮定様式データブロックを含む放送信号を受信する」ことは、本願補正発明において「圧縮データを含む情報拡布信号を受信する」ことに相当する。

よって、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「放送信号受信部の入力端子において放送信号を受信するように接続がとられ、かつ出力端子を有する放送信号受信部と、
使用者インタフェースと、
入力ポートを有し、かつ出力ポートを有し、受信されたオーディオデータを記憶するメモリと、
該メモリへ接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有する圧縮解除回路と、
該圧縮解除回路の出力端子へ接続される入力端子を有し、かつ記憶されたオーディオデータからのオーディオアナログ信号を提供する出力端子を有するデジタル-アナログ変換器とから構成される、圧縮データを含む情報拡布信号を受信する受信器。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「放送信号受信部」が、本願補正発明においては「チューナ」であるのに対し、引用例1記載の発明における「送受信機201」は、「チューナ」として機能する構成を含むかどうか明らかでない点。

相違点2:本願補正発明は、「チューナの出力端子に接続される入力部を有し、かつ出力端子を有する暗号解読器」を有し、使用者インタフェースが「暗号解読器」へ機能的に接続され、かつ、メモリの入力ポートが「暗号解読器」の出力端子へ接続されるものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

相違点3:本願補正発明においては、「圧縮解除回路」の入力端子が「メモリの出力ポート」へ接続されているのに対し、引用例1記載の発明においては、「オーディオ圧縮解除器209」の入力端子が「記憶装置203」に対して「データフォーマッタ204」を介して接続されている点。

相違点4:本願補正発明は、「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し、使用者インタフェースが指示にしたがってメモリからデータ項目を検索し、メモリに記憶されたデータの項目の中でデジタル形式でデジタル-アナログ変換器に提供されるべきものを選択する」ようなものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

(4)判断
そこで、上記相違点1?4について検討する。

(相違点1について)
一般に、複数の放送局からの放送信号を受信する受信機に、放送局を選択するための「チューナ」機能部分を設けることは、周知の技術にすぎない。
したがって、引用例1記載の発明における「送受信機201」を「チューナ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

(相違点2について)
上記引用例2に記載されているように、一般に、CATV等の有料放送において、信号を暗号化して放送し、受信側では、復号化(デスクランブル)すなわち暗号解読して記録するようにすることは、ごく普通に行われていることである。
そして、受信側の使用者が、暗号解読する権限を受ける契約をし、使用者インタフェースを介して暗号解読器を動作させて暗号解読を行い、もって、暗号解読された放送信号を記録するようにすることは、有料放送を受信するシステムにおいて適宜になされる態様の一つにすぎない。
さらに、上記相違点1で検討したように、引用例1記載の発明における「送受信機201」を「チューナ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるので、その場合、チューナの出力端子に「暗号解読器」を接続して暗号化された受信信号を解読させ、その解読された信号をメモリに記憶するようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。
してみれば、引用例1記載の発明において、上記引用例2に記載された技術を参酌し、「チューナの出力端子に接続される入力部を有し、かつ出力端子を有する暗号解読器」を設け、使用者インタフェースを「暗号解読器」へ機能的に接続し、かつ、メモリの入力ポートを「暗号解読器」の出力端子へ接続するように構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

(相違点3について)
引用例1記載の発明においては、引用例1の上記Eの記載によれば、「オーディオ情報とビデオ情報を区別する」ために「データフォーマッタ204」が用いられているが、放送信号が「オーディオ情報」のみからなるような場合に、「記憶装置203」の出力ポートを、上記「データフォーマッタ204」を介することなく直接に「オーディオ圧縮解除器209」の入力端子に接続することは、当業者が適宜になし得ることにすぎないものと認められる。
よって、本願補正発明のように「圧縮解除回路」の入力端子を「メモリの出力ポート」へ接続するように構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

(相違点4について)
一般に、放送信号を記録する場合、使用者がその記録内容に対してジャンル分けを示す情報を付加しておき、後の再生時の検索に使用するようにすることは、例えば、特開平6-22273号公報の段落【0008】の「・・・このとき、必要に応じてキーパッド7から入力した番組情報1のタイトル名やジャンル名などの番組識別情報を入力し、再生時の検索に利用することができる。・・・」との記載等に見られるように、周知の技術にすぎない。
そして、上記周知の技術において、記録をデジタル信号で行っているような場合には、検索して抽出する信号は「デジタル形式」となることは、当業者にとって明らかである。
よって、引用例1記載の発明において、上記周知の技術を参酌し、「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し、使用者インタフェースが指示にしたがってメモリからデータ項目を検索し、メモリに記憶されたデータの項目の中でデジタル形式でデジタル-アナログ変換器に提供されるべきものを選択する」ようなものとすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明、及び上記周知の技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1,2に記載の発明、及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成16年2月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年9月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「チューナの入力端子において放送信号を受信するように接続がとられ、かつ出力端子を有するチューナと、
該チューナの出力端子に接続される入力部を有し、かつ出力端子を有する暗号解読器と、
該暗号解読器へ機能的に接続される使用者インタフェースと、
該暗号解読器の出力端子へ接続される入力ポートを有し、かつ出力ポートを有し、受信されたオーディオデータを記憶するメモリと、
該メモリの出力ポートへ接続される入力端子を有し、かつ出力端子を有する圧縮解除回路と、
該圧縮解除回路の出力端子へ接続される入力端子を有し、かつ記憶されたオーディオデータからのオーディオアナログ信号を提供する出力端子を有する変換器とから構成され、
前記使用者インタフェースがメモリに記憶されたデータの項目の中で変換器に提供されるべきものを選択させる、圧縮データを含む情報拡布信号を受信する受信器。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「デジタル-アナログ変換器」を「変換器」とし、さらに、「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し、前記使用者インタフェースが指示にしたがってメモリからデータ項目を検索し、メモリに記憶されたデータの項目の中でデジタル形式で前記デジタル-アナログ変換器に提供されるべきものを選択する」を「前記使用者インタフェースがメモリに記憶されたデータの項目の中で変換器に提供されるべきものを選択させる、」としたものであって、本願補正発明に施された特定の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明、及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1,2に記載の発明、及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載の発明、及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-02 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-21 
出願番号 特願2000-117890(P2000-117890)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 成瀬 博之
長島 孝志
発明の名称 各種伝送モードを使用するオーディオ情報拡布のための受信器  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  

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