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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1167027
審判番号 不服2004-7371  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2007-10-29 
事件の表示 特願2000-139431「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-314553〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成12年5月12日の出願であって、平成16年3月8日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月12日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年12月17日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、
前記回転リールの回転を制御すると共に、一定確率で入賞図柄の抽選を行うための制御装置とを備えた遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行うための入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段による抽選結果が前記入賞である場合に入賞フラグが成立し、前記入賞フラグ成立中に、前記回転リールが停止した状態で、予め設定した所定の方向の有効入賞ライン上に前記入賞フラグ成立中の入賞図柄が揃うことを条件として入賞が確定して遊技者に利益を付与するように設定され、
前記遊技機は、
前記入賞フラグ成立を遊技者に向かって演出可能な演出表示部と、
前記演出表示部の演出内容を変化させるために遊技者が操作可能な演出操作部とを備え、
前記制御装置は、前記演出表示部の演出内容を変化させるための演出操作制御手段を備え、
前記演出操作制御手段は、
所定の入賞フラグが成立し、且つ遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の回数を超えている場合、前記演出表示部に表示する演出内容を変化させて入賞フラグが成立していることを報知し、
所定の入賞フラグが成立し、且つ遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の前記回数を超えていない場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
所定の入賞フラグが成立せず、且つ遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の前記回数を超えている場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
所定の入賞フラグが成立せず、且つ遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の前記回数を超えていない場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
前記演出操作制御手段は、遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の前記回数を超えているか否かを報知しないことを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-107349号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?キの記載が図示とともにある。
ア.「複数種の図柄を変動表示可能な図柄変動表示装置と、前記図柄変動装置の図柄変動を開始するスタート釦と、そのスタート釦の操作に基づいて入賞フラグを発生させる入賞抽選手段と、前記図柄変動装置の変動図柄を前記入賞フラグに対応して予め設定の停止図柄で停止させるストップ釦とを備えた遊技機であって、
前記入賞フラグが成立しているときには、前記ストップ釦を通常操作順序で行うと、停止図柄が通常のゲームで示されない組合せとなり、変則順序で操作すると特別報知手段を介して報知することを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「本発明の一実施の形態を図面を参照して説明すると、図1(A)は遊技機(スロットマシン)の正面図である。このスロットマシン1は箱状の本体2と、この本体の前面に設けたフロントパネル3を備え、このフロントパネル3には、ほぼ中央に、3個の図柄表示窓5A、5B、5Cが並んで設けてある。そして、各図柄表示窓5A?5Cの奥には、ステッピングモータ等に回転する図柄変動表示装置として、3個の回転リール6A、6B、6Cが、それぞれその表面を各図柄表示窓に臨ませてあり、各図柄表示窓5A?5Cには、3個の図柄が縦列に表示可能である。又、前記各回転リール6A?6Cの表面には、例えば、「7」「ベル」等の複数種の図柄が表示されている。そして、各回転リールを変動表示させることにより、各図柄表示窓には、複数の図柄が上下方向に移動表示する。」(段落【0005】)
ウ.「入賞抽選手段により、今回のゲームが外れ(入賞フラグF=0)、小役(F=1)、或いは入賞フラグの成立(F=2)の選定を行う(S15)。この入賞抽選手段は、よく知られているもので、乱数等を介して、予め設定の値によって選定する。そして、後記で詳述するが、ストップ釦10A、10B、10Cの操作順序を選定する順序数Faを0に設定して(S16)、この処理を終了する。」(段落【0009】)
エ.「ストップ釦10A、10B、10C(或いは、ストップ釦10A、10C、10B)の順序で押したとき(変則順序)には、順序数Faは、1、101、201に変化し、ストップ釦10B、10C、10A(或いは、ストップ釦10C、10B、10A)の順序で押したときには、100、200、201に変化する。」(段落【0011】)
オ.「順序数Faが100でないときには、最初に、ストップ釦10Aが押され、通常操作順序であるから、ステップ35に進む。しかしながら、順序数Faが100であるときには、最初に、ストップ釦10B、10Cの何れかが押されたので、変則操作となるので、入賞フラグが成立(F=2)であるか否かを判定する(S33)。そして、入賞フラグが成立のときには、特別報知手段20を介して、ランプのように点灯したり、その旨を文字やキャラクターで報知したり、或いは、一時的又は時間毎に音声で報知して、その旨を遊技者に知らせる(S34)と共に特別表示数FRを1にセットする。」(段落【0012】)
カ.「ストップ釦10A、10B、10Cの通常順序操作を行うときには、入賞フラグが成立であることを特別報知手段20を介して報知しないが、停止図柄は通常のゲームには表示されない図柄の組合せを表示する。従って、ゲームを熟知している遊技者は、かかる停止図柄で入賞フラグが成立であることを推測できる楽しみがある。一方、変則順序でストップ釦を操作すると、特別報知手段20を介して報知するので、ゲームに熟知していない遊技者であっても不利益にならない。従って、ゲームに熟知している遊技者と熟知していない遊技者に対して、同じ機種として提供することができる。」(段落【0013】)
キ.「ストップ釦10A、10B、10Cの通常操作と変則操作をストップ釦の操作順序で変更しているが、例えば、ストップ釦10Aを通常より長く押したときには変則操作にする等、操作時間を介して区別したり、例えば、ストップ釦10A、10Bを同時に操作する等のように、通常とは異なる操作を行うことで区別してもよい。」(段落【0023】)

2.引用例記載の発明の認定
記載アの「図柄変動表示装置」は、具体的には記載イにあるとおり「3個の回転リール」であり、回転リールの周囲には当然複数の図柄が表示されている。
記載アの「通常操作順序」と「変則順序」の関係は、記載キのとおり、1つのストップ釦10A(通常操作で最初に操作される釦)の操作時間の長短に変更してもよい。その場合、ストップ釦10Aが長時間押され、かつ入賞フラグが成立している場合には、特別報知手段20は入賞フラグ成立を報知し、それ以外の場合には報知しない(入賞フラグが成立し、かつストップ釦10Aが長時間押された場合には、停止図柄が通常のゲームで示されない組合せとなるが、特別報知手段には報知されない。)。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「周囲に複数の図柄を表示した3個の回転リールからなる図柄変動表示装置と、前記図柄変動装置の図柄変動を開始するスタート釦と、そのスタート釦の操作に基づいて入賞フラグを発生させる入賞抽選手段と、前記図柄変動装置の変動図柄を前記入賞フラグに対応して予め設定の停止図柄で停止させる3個のストップ釦とを備えた遊技機であって、
前記入賞フラグが成立しているときには、前記ストップ釦の1つが通常時間だけ押されたときには、停止図柄が通常のゲームで示されない組合せとなり、前記ストップ釦の1つが通常より長く押されたときには、入賞フラグが成立していることを特別報知手段を介して報知し、前記入賞フラグが成立していない場合には、入賞フラグ成立については特別報知手段にて報知しない遊技機。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明と本願発明の「入賞抽選手段」は、「一定確率で入賞図柄の抽選を行う」点及び「入賞か否かの抽選を行う」点で一致し、同一手段と認めることができる。
引用発明においても「回転リールの回転を制御」することは明らかであり、その制御は抽選結果にも依存するから、「入賞抽選手段」を含めたものとして、本願発明の「制御装置」を備えることは明らかである。
引用発明が「前記入賞抽選手段による抽選結果が前記入賞である場合に入賞フラグが成立し、前記入賞フラグ成立中に、前記回転リールが停止した状態で、予め設定した所定の方向の有効入賞ライン上に前記入賞フラグ成立中の入賞図柄が揃うことを条件として入賞が確定して遊技者に利益を付与するように設定され」ていることは明らかである。
引用発明の「入賞フラグが成立」は本願発明の「所定の入賞フラグが成立」に相当し、同じく「特別報知手段」は「入賞フラグ成立を遊技者に向かって演出可能な演出表示部」に相当する。
引用発明の「ストップ釦の1つ」は、それを押す時間に応じて、入賞フラグ成立を報知したりしなかったりするのであり、入賞フラグ成立の報知は「演出内容」といえるから、本願発明の「前記演出表示部の演出内容を変化させるために遊技者が操作可能な演出操作部」に相当する。引用発明では、入賞フラグ成立を報知したりしなかったりするのであるから、「前記演出表示部の演出内容を変化させるための演出操作制御手段」を備える。同「演出操作制御手段」が「制御装置」に備わっていることについては、どこまでを「制御装置」と認識するかの問題であり、相違点にはならない。
引用発明において「ストップ釦の1つを通常より長く押」すことと、本願発明において「遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の回数を超えている」ことは、演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしているとの限度で一致する。そして、所定の入賞フラグが成立し、且つ上記所定条件を満たす場合には、「演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知」する点で、本願発明と引用発明は一致しており、同報知以前には、入賞フラグ成立の報知はされていないのだから、「演出内容を変化させて」との限定は相違点を構成しない。
さらに、「所定の入賞フラグが成立し、上記所定条件を満たさない場合」、「所定の入賞フラグが成立せず、上記所定条件を満たす場合」及び「所定の入賞フラグが成立せず、上記所定条件を満たさない場合」に共通して、「演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知」しないことも、本願発明と引用発明との一致点となる。
そして、引用発明では、上記所定条件を満たすか否かを「特別報知手段」(演出操作部)には報知していないのだから、「演出操作制御手段」が上記所定条件を満たすか否かを報知しないことも、本願発明と引用発明との一致点となる。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、
前記回転リールの回転を制御すると共に、一定確率で入賞図柄の抽選を行うための制御装置とを備えた遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行うための入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段による抽選結果が前記入賞である場合に入賞フラグが成立し、前記入賞フラグ成立中に、前記回転リールが停止した状態で、予め設定した所定の方向の有効入賞ライン上に前記入賞フラグ成立中の入賞図柄が揃うことを条件として入賞が確定して遊技者に利益を付与するように設定され、
前記遊技機は、
前記入賞フラグ成立を遊技者に向かって演出可能な演出表示部と、
前記演出表示部の演出内容を変化させるために遊技者が操作可能な演出操作部とを備え、
前記制御装置は、前記演出表示部の演出内容を変化させるための演出操作制御手段を備え、
前記演出操作制御手段は、
所定の入賞フラグが成立し、且つ前記演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしている場合、前記演出表示部に表示する演出内容を変化させて入賞フラグが成立していることを報知し、
所定の入賞フラグが成立し、且つ遊前記演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしていない場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
所定の入賞フラグが成立せず、且つ前記演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしている場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
所定の入賞フラグが成立せず、且つ前記演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしていない場合、前記演出表示部に表示する演出内容により入賞フラグが成立していることを報知せず、
前記演出操作制御手段は、前記演出操作部に対する操作内容が所定条件を満たしているか否かを報知しない遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉「演出操作部に対する操作内容」の「所定条件」につき、本願発明が「遊技者が所定時間内に演出操作部を操作した回数が所定の回数を超えている」こととしているのに対し、引用発明では「ストップ釦の1つが通常より長く押されたとき」としている点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
引用発明では、ストップ釦の1つを押す時間の長短により、異なる機能(通常操作と変則操作)を実現させている。ところで、1つの操作部材の操作によって、複数の機能を実現するに当たり、所定時間内の操作回数により、実現させるべき機能を区別することは、各種技術分野において採用されている周知技術である(例えば、従来からヘッドホンステレオのリモコンでは操作釦が少ないため、ある釦を所定時間内に1回押せば再生、2回押せば早送りといった仕様が採用されている。)。
そうであれば、引用発明において、通常操作と変則操作を区別するために、押す時間の長短に代えて、上記周知技術に従い所定時間内の操作回数を採用し、所定時間内に操作した回数が所定の回数を超えている場合を変則操作と認識して、入賞フラグが成立しておれば、その旨を特別報知手段にて報知し、所定時間内に操作した回数が所定の回数を超えていない場合又は入賞フラグが成立していない場合には、入賞フラグ成立を特別報知手段にて報知しないように変更することは設計事項というべきである。
また、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。この点請求人は「演出操作部(180)を所定時間内にできるだけ多数回、操作(例えば、指で叩く等)するという遊技者自身の努力によって得ることができたかのような感覚を遊技者に与えることができるという特有の効果を有しています。」(平成16年4月15日手続補正書(審判請求書の補正)5頁34?36行)等の主張をしているが、「所定の回数」は2回であってもよく、請求人が主張するような多数回には限定されないから、請求人が主張する作用効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-17 
結審通知日 2007-08-23 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2000-139431(P2000-139431)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小林 俊久
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  

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