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審決分類 審判 全部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  H04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04B
管理番号 1167379
異議申立番号 異議1999-71645  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2007-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-27 
確定日 2007-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第2816349号「多重音声及び/又はデータ信号通信を単一又は複数チャンネルにより同時に行うための加入者RF電話システム」の特許請求の範囲第1項及び第4項に記載された発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、知的財産高等裁判所において、平成13年10月23日付けでした特許異議の決定を取り消す判決(平成17年(行ケ)第10173号、平成19年3月28日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。  
結論 特許第2816349号の特許請求の範囲第1項、第3項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
1.本件特許第2816349号の発明についての出願は、昭和61年2月26日(パリ条約による優先権主張1985年3月20日、米国)にされ、特許請求の範囲第1項、第4項に記載された発明は、平成10年8月21日にその特許権の設定登録がされた。

2.その後、本件の特許請求の範囲第1項、第4項に記載された発明についての特許に対して、平成11年4月27日に松尾義志美より本件特許異議の申立て(平成11年異議71645号)があり、平成11年8月10日付けで取消理由が通知され、これに対して平成12年2月17日付けで特許異議意見書が提出されると共に訂正請求がなされ、平成12年5月15日付けで2回目の取消理由が通知されたところ、これに対して平成12年11月22日付けで、平成12年2月17日付けの訂正請求は取り下げられ、特許異議意見書が提出されると共に新たな訂正請求がなされ、さらに、平成12年12月21日付けで訂正拒絶理由が通知され、これに対して平成13年7月9日付けで特許異議意見書が提出された後、平成13年10月23日付けで「特許第2816349号の特許請求の範囲第1項、第4項に記載された発明についての特許を取り消す。」との異議の決定がなされた。

3.上記異議の決定に対して、平成14年3月8日付けで「特許庁が平成13年10月23日に特許第2816349号に対する同庁平成11年異議71645号事件についてした取消決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成14年(行ケ)112号)が東京高等裁判所に提起された。(この訴えは、その後、平成17年4月1日、知的財産高等裁判所に回付され、平成17年(行ケ)第10173号に番号変更された。)

4.平成14年5月17日付けで、願書に添付した明細書の特許請求の範囲について訂正を求める審判の請求(訂正2002-39123号)がなされ、当該審判の請求に対し、平成14年8月30日付けで訂正拒絶の理由が通知され、平成15年3月24日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第1次訂正拒絶審決」という。)がなされた。

5.上記第1次訂正拒絶審決に対して、平成15年7月4日付けで「特許庁が訂正2002-39123号事件について平成15年3月24日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成15年(行ケ)第291号)が東京高等裁判所に提起され、平成16年12月9日に「特許庁が訂正2002-39123号事件について平成15年3月24日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決(以下「第1次高裁判決」という。)の言渡しがあり、この判決は確定した。

6.上記第1次高裁判決の確定をうけて、上記訂正を求める審判の請求に対する審理が再開され、平成17年2月4日付けで訂正拒絶の理由が通知され、平成17年8月5日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第2次訂正拒絶審決」という。)がなされた。

7.上記第2次訂正拒絶審決に対して、平成17年12月12日付けで「特許庁が訂正2002-39123号事件について平成17年8月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成17年(行ケ)第10837号)が知的財産高等裁判所に提起され、平成18年11月9日に「特許庁が訂正2002-39123号事件について平成17年8月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決(以下「第2次高裁判決」という。)の言渡しがあった。

8.上記第2次高裁判決を受けて、訂正2002-39123号事件について再度審理した結果、平成19年2月19日付けで「特許第2816349号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。」という審決がなされ、平成19年2月22日に謄本が送達され、この審決は確定した。

9.上記の訂正を認める審決の確定を受けて、知的財産高等裁判所は、平成19年3月28日に、審理中の平成17年(行ケ)第10173号事件について「特許庁が平成11年異議第71645号事件について平成13年10月23日にした決定を取り消す。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を言い渡し、この判決は確定したものである。

第2.特許異議の申立てについての判断
上記本異議事件に係る知的財産高等裁判所の判決を受けて、上記第1次高裁判決及び第2次高裁判決の拘束力の下に、本件特許異議の申立について以下に検討する。
1.異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 松尾義志美は、下記の甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件特許登録時の特許請求の範囲第1項及び第4項に記載の発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同特許請求の範囲第1項及び第4項に記載の発明の特許は取り消されるべきであると主張している。

(1)甲第1号証:特開昭60-32451号公報
(2)甲第2号証:特開昭58-51635号公報

2.当審の取消理由通知の概要
当審で通知した平成12年5月15日付け取消理由は、
平成12年2月17日付けの訂正請求における訂正後の明細書の請求項1に記載された発明は,刊行物1に記載された前記発明に基づき刊行物2?5に記載された前記発明を用いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおりであるから,この上記訂正請求に係る訂正は,特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので,当該訂正は認められない。
そして、本件特許第2816349号の請求項(前記訂正前の特許明細書の請求項)1,4に記載された第1,第2の発明は,その出願前に国内において頒布された刊行物1に記載された発明に基づき刊行物2?5に記載された発明を用いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとするものである。

刊行物1 「電子通信学会論文誌(J64-B)第9号」(昭和56年9月25日 電子通信学会発行 第1016頁?第1023頁「TD-FDMA移動通信方式の検討」)
刊行物2 特開昭54-60806号公報
刊行物3(甲第1号証) 特開昭60-32451号公報
刊行物4(甲第2号証) 特開昭58-51635号公報
刊行物5 「電子通信学会 通信方式研究会資料 CS 69-67(1969-12)」(1969年12月12日 電子通信学会発行 「自動車無線電話接続方式」)

3.本件発明
本件の異議の手続において平成12年11月22日付けで訂正請求がなされたが、その後、平成14年5月17日付けで訂正審判が請求され(訂正2002-39123号)、それが確定したことにより、本件決定で審理判断すべき特許請求の範囲は、前記訂正審判により訂正された特許請求の範囲第1項ないし第4項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、上記訂正後の特許請求の範囲第1項、第3項に記載された発明(第2項及び第4項は、それぞれ第1項及び第3項に従属する実施態様項であり、本件の発明の数は「2」である。)を、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)

<訂正後の特許請求の範囲>
「1.公衆通信用電話網の局用交換機から局線(14)経由で並行して受けた複数の情報信号を複数の無線周波数(RF)チャンネル経由で基地局から複数の移動加入者局、すなわち各々が前記複数の無線周波数(RF)チャンネルの任意の一つで受信できる複数の移動加入者局に並行して送信するために基地局で信号処理するディジタル電話システムであって、前記基地局が、
前記局線(14)からの受信情報信号をディジタル信号サンプルとして扱う交換手段(15)と、
各々が前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの選択された一つに関連づけられて動作し、前記交換手段(15)から受けた前記ディジタル信号サンプルを圧縮して多数の個別の圧縮信号を供給する各々が複数の圧縮手段(16)を内蔵する複数の信号圧縮手段(17)と、
前記複数の信号圧縮手段(17)の各々に接続され、その信号圧縮手段(17)からの前記圧縮信号をそれら圧縮信号の各々が前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの前記選択された一つにそれぞれ対応の送信チャンネル・ビット・ストリームの中の逐次的時間スロット位置を占めるように送信チャンネル・ビット・ストリームの形に逐次組み上げるチャンネル制御手段(18)と、
前記送信チャンネル・ビット・ストリームに応答して前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの選択された一つ経由の前記加入者局への送信用送信チャンネル信号を各々が発生する複数の周波数切換可能な送信手段(21)であって、前記基地局により選択された前記複数の無線周波数(RF)の任意の一つでそれぞれ送信できる複数の周波数切換可能な送信手段(21)と、
前記交換手段(15)に含まれ前記受信情報信号を前記信号圧縮手段(17)内の信号圧縮手段(16)にそれぞれ接続する切換手段(25)と、
前記局線(14)に結合可能であり前記局線のある一つ経由の呼接続要求信号に応答して前記圧縮手段(16)のどの一つをその呼接続要求信号対応の前記受信情報信号に関連づけるかと前記送信チャンネル・ビット・ストリーム中のどの時間スロットをその受信情報信号に用いるかとを表すスロット割当て信号を発生する遠隔接続中央処理ユニット(20)であって、どの時間スロットとどの無線周波数とが割当てずみであるかを示すメモリを維持し呼接続要求に応答してそのメモリを調べ他の局線に未割当ての圧縮手段(16)およびそれと対応の時間スロットへの接続をもたらす前記チャンネル制御手段(18)、すなわち前記スロット割当て信号対応の周波数で動作する前記チャンネル制御手段(18)への接続を形成するスロット割当て信号を発生する遠隔接続中央処理ユニット(20)であって、前記スロット割当て信号を前記交換手段(15)に供給するとともに、そのスロット割当て信号対応の割当て時間スロットおよび無線周波数を表す信号を前記チャンネル制御手段(18)および前記送信手段(21)経由で前記呼接続要求の宛先加入者局に伝達しその宛先加入者局による所要の時間スロットおよび無線周波数の設定に備える遠隔接続中央処理ユニット(20)と、
前記遠隔接続中央処理ユニット(20)に接続され前記スロット割当て信号に応答してそのスロット割当て信号の指示する前記圧縮手段(16)への接続を前記切換手段(25)に形成させる呼切換処理手段(24)と
を含むことを特徴とするディジタル電話システム。

2.前記送信チャンネル・ビット・ストリームにおける前記時間スロットが一定または可変のスロット長のシステムフレームに組上げ可能である請求項1記載のディジタル電話システム。

3.公衆通信用電話網の局用交換機から局線(14)経由で並行して受けた複数の情報信号を複数の無線周波数(RF)チャンネル経由で基地局から複数の移動加入者局、すなわち各々が前記複数の無線周波数(RF)チャンネルの任意の一つで受信できる複数の移動加入者局に並行して送信するために基地局で信号処理するディジタル電話システムであって、前記基地局が、
前記局線(14)からの受信情報信号をディジタル信号サンプルとして扱う交換手段(15)と、
複数の送信チャンネル回路であって、前記複数の無線周波数(RF)チャンネルの互いに異なる一つに各々が割り当てられ、前記交換手段(15)からそれぞれ受けた前記ディジタル信号サンプルを圧縮して多数の個別の圧縮信号を生ずる複数の圧縮手段(16)内蔵の信号圧縮手段(17)と、前記圧縮手段(16)に接続され前記圧縮信号をそれら圧縮信号の各々が送信チャンネル・ビット・ストリーム内逐次的時間スロット位置を占めるように送信チャンネル・ビット・ストリームの形に逐次組み上げるチャンネル制御手段(18)と、前記送信チャンネル・ビット・ストリームに応答して被変調副搬送波を生ずる変調手段(19)とを各々が有する複数の送信チャンネル回路と、
前記被変調副搬送波に応答して前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの選択された一つ経由の前記加入者局への送信用被変調信号を各々が発生する複数の周波数切換可能な送信手段(21)であって、前記基地局により選択された前記複数の無線周波数(RF)の任意の一つでそれぞれ送信できる複数の周波数切換可能な送信手段(21)と、
前記交換手段(15)に含まれ前記受信情報信号を前記圧縮手段(16)にそれぞれ接続する切換手段(25)と、
前記局線(14)に結合可能であり前記局線のある一つ経由の呼接続要求信号に応答して前記送信チャンネル回路のどの一つおよびどの時間スロット位置およびその送信チャンネル回路中の前記圧縮手段(16)のどの一つに前記呼接続要求信号対応の前記受信情報信号を関連づけるべきかを表すスロット割当て信号、すなわちその情報信号に周波数と時間スロット位置とを割り当てるスロット割当て信号を発生する遠隔接続中央処理ユニット(20)であって、前記周波数の各々についてどの時間スロットが割当てずみであるかを示すメモリを維持し呼接続要求に応答してそのメモリを調べ他の局線に未割当ての時間スロットを含む前記送信チャンネル回路のある一つとそれら未割当ての時間スロットの一つと前記送信チャンネル回路中の信号圧縮手段であって他の局線に未割当ての信号圧縮手段とへの接続を形成するスロット割当て信号を発生する遠隔接続中央処理ユニット(20)であって、前記スロット割当て信号を前記交換手段(15)に供給し、そのスロット割当て信号対応の割当て時間スロットおよび無線周波数を表す信号を前記チャンネル制御手段(18)および前記送信手段(21)経由で前記呼接続要求の宛先加入者局に伝達しその宛先加入者局による所要の時間スロットおよび無線周波数の設定に備える遠隔接続中央処理ユニット(20)と、
前記遠隔接続中央処理ユニット(20)に接続され前記スロット割当て信号に応答してそのスロット割当て信号の指示する前記圧縮手段(16)への接続を前記切換手段(25)に形成させる呼切換処理手段(24)と
を含むことを特徴とするディジタル電話システム。

4.前記送信チャンネル・ビット・ストリームにおける前記時間スロットが一定または可変の時間スロット長のシステムフレームに組上げ可能である請求項3記載のディジタル電話システム。」


4.当審の取消理由(第29条第2項)について
(1)引用刊行物の記載内容
当審で通知した取消理由で引用した刊行物には、以下のような事項が記載されている。

[刊行物1:「電子通信学会論文誌(J64-B)第9号」(昭和56年9月25日 社団法人電子通信学会発行 第1016頁?第1023頁「TD-FDMA移動通信方式の検討」)]
刊行物1は、「TD-FDMA移動通信方式の検討」に関する論文であって、その「あらまし」には、従来用いられてきた周波数分割マルチプルアクセス(FDMA)は、基地局送受信機台数の増加、高安定度の局部発振器の必要性などの幾つかの問題点を有し、これらの問題点を解決する一つの方法として、時分割マルチプルアクセス(TDMA)技術の導入を提案したものであり、大容量方式を構成するにはTDMAとFDMAを組み合わせたTD-FDMA方式とする必要があることが記載され、更に、「1.まえがき」の「更に、フレーム構成、回線制御技術など方式設計上の主要項目について検討し、大容量方式実現のためには、TDMAとFDMAを組み合わせたTD-FDMA方式とする必要があること、及び、その実現の可能性を示している。最後に、TD-FDMA移動通信方式の方式構成例を示している。」(第1016頁右欄第12行?第18行)及び「4.3最適多重度」の「以上示したように多重度が4?8チャネル/1波であるので、大容量システムを構成するには多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTime and Frequency Division Multiple Access(TD-FDMA)とする必要がある。」(第1020頁右欄第36行?第40行)という記載からみて、「4.5方式および装置構成例」における図7に示される基地局の構成例は、多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTD-FDMA方式の基地局の構成例とみるのが自然である。
「伝送帯域の狭帯域化のために、音声符号化速度は低い方が望ましいが、音声符号化技術の現状からは、公衆通信としての品質確保が可能な符号化速度の限界は、ADM(適応デルタ変調)を採用するとして32kbit/s程度、APC(適応予測符号化)などの新技術を採用するとして16kbit/sと考えられる。」(第1020頁左欄第31行?右欄第2行)という記載からみて、図7の「Coder/Decoder」(符号器/復号器)は、多数の個別の圧縮信号を供給する圧縮手段内蔵の信号圧縮手段ということができる。
図7の「Modulator」は中間周波に変調する変調器である。
「TD-FDMA方式においてV-chを指定するためには、搬送波周波数とタイムスロットの両者を指定する必要がある。簡易な指定法の一つとしては、各搬送波ごとにシステムを群分割して各搬送波ごとに固有のP-chとA-chを設置しタイムスロットのみを指定する方法もあるが、この方法では分割により一つの群における指定可能なV-ch数が減少するため、V-chの使用効率が低下する。従って、搬送波周波数とタイムスロットを効率良く指定する方法を採用する必要がある。このためには、P-chとA-chが任意の搬送波とタイムスロットを指定可能な構成とする必要がある。P-ch及びA-chの設置法としては、図5に示すように(i)制御チャネル専用の搬送波を設ける方法、(ii)制御チャネル専用のタイムスロットを設ける方法、(iii)V-chを制御信号の伝送に用いる方法がある。」(第1021頁左欄第8行?第23行)、「TD-FDMA方式では、図6(TD-FDMAにおけるフレームフォーマット)に示すように下りのV-chには制御信号を付加することが可能であり、通話に何ら影響を与えることなく、通話中チャネル切換信号および、送信出力制御信号を伝送することが可能である。」(第1022頁左欄第8行?第12行)、及び「送信系では、CPUからの指示によりMultiplexerで信号速度変換(32kbit/s→160kbit/s)多重化を行い、制御信号を付加してフレームを構成する。」(第1022頁右欄第9行?第12行)という記載からみて、図7の「Multiplexer」(マルチプレクサ)は、圧縮信号の各々がタイムスロット位置に逐次的に占めるようにフレームフォーマット(送信チャンネル・ビット・ストリーム)を形成するものである。
「交換機と制御装置(CPU)との間には制御線を設け、回線制御および多重化の指示はすべてCPUで行う。」(第1022頁右欄第7行?第9行)という記載からみて、制御装置(CPU)は、局線に結合可能であり局線のある一つ経由の呼接続要求信号に応答して符号器/復号器の圧縮手段のどの一つを受信情報信号に関連づけるかと送信チャンネル・ビット・ストリーム中のどの時間スロットを用いるかとを表すスロット割り当て信号を発生するものであり、図7の「Exchanger」(交換機)は、制御装置(CPU)により回線制御と多重化の指示がなされるから、スロット割り当て信号に応答してそのスロット割り当て信号の指示する圧縮手段へ接続する切換手段および呼切換処理手段を備えるものである。
図7には、「Similar」とその下に点線が縦に引かれ、これは、「Multipulexer,Modulator,Tx.等」を複数組備えることを示すものであり、また、「図7に示される基地局の構成例は、多数の搬送波を用いた搬送波周波数とタイムスロットの両者の指定を行うTD-FDMA方式の基地局の構成例とみるのが自然である」という上記認定事項から、各Tx.(送信手段)はそれぞれ異なる無線周波数チャンネル経由で加入者局に送信するための送信チャンネル信号を発生するものである。

そうすると、刊行物1には、公衆通信用電話網から局線経由で並行して受けた複数の情報信号を複数の無線周波数(RF)チャンネル経由で基地局から複数の移動加入者局に並行して送信するために基地局で信号処理するディジタル電話システムであって、
前記基地局が、
前記局線からの受信情報信号を扱う交換機と、
前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの一つに関連づけられ、前記交換機から受けた前記ディジタル信号サンプルを圧縮して多数の個別の圧縮信号を供給する圧縮手段内蔵の符号器/復号器と、
前記符号器/復号器に接続され、前記圧縮信号をそれら圧縮信号の各々が前記無線周波数(RF)チャンネルにそれぞれ対応の送信チャンネル・ビット・ストリームの中の逐次的時間スロット位置を占めるように送信チャンネル・ビット・ストリームの形に逐次組み上げる複数のマルチプレクサと、
前記送信チャンネル・ビット・ストリームに応答して中間周波を生ずる複数の変調器と、
前記中間周波に応答して前記無線周波数(RF)チャンネル経由で前記加入者局に送信するための送信チャンネル信号を発生する送信手段と、
前記交換機に含まれ前記受信情報信号を前記符号器/復号器内の圧縮手段にそれぞれ接続する切換手段と、
前記局線に結合可能であり前記局線のある一つ経由の呼接続要求信号に応答して前記圧縮手段のどの一つを前記受信情報信号に関連づけるかと前記送信チャンネル・ビット・ストリーム中のどの時間スロットを用いるかとを表すスロット割当て信号を発生する制御装置(CPU)であって、前記制御装置(CPU)に接続され前記スロット割当て信号に応答してそのスロット割当て信号の指示する前記圧縮手段への接続を前記切換手段に形成させる呼切換処理手段とを含むことを特徴とするディジタル電話システムが記載されている。

[刊行物2:特開昭54-60806号公報]
「本発明は、1周波数帯を複数端末で同時に使用可能とするもので、従来の方式に比し端末装置はその多重度分だけ多く使用できる。例えば多重度を24倍とすれば現在用いられている周波数帯数×24倍の端末を同時に制御し得るものである。この多重化技術は時分割技術を無線回路に応用することにより可能としたものである。」(第1頁右下欄第9行?第15行)
「第6図は本発明による親局装置の主要部分のブロック回路図で、15は親局装置内の周波数、タイムスロット制御回路を示す。図中15-1は受信電波から各タイムスロットを拾い出し並列に配列する展開回路、15-2は15-1とは逆に並列に到来する送出電波を各タイムスロットに割り当て同一周波数帯に直列にパルス列とする多重化回路を示している。15-3,15-5は端末側で使用する周波数とタイムスロットを指定する電波PSのアンテナ及び送信機を示す。15-4,15-6は同期用信号送出電波のアンテナ及び送信機を示す。15-7は制御回路15の中央処理装置でメモリ15-8内に各周波数帯及びタイムスロット使用状況をファイルしておき刻々変る各周波数帯及びタイムスロットの使用状況から現在用いられている周波数帯及びタイムスロット番号の指定、端末装置から到来する電波の復調並びに並列変換制御、及び15-2による多重化制御等を行うと同時に端末側から発信の場合は着信側の選択信号を受け交換装置11を経て接続を延長する制御を行う。」(第3頁左上欄第8行?右上欄第8行)

[刊行物3:特開昭60-32451号公報(甲第1号証)]
この刊行物3の第1図には、公衆通信用電話網に接続された局線からの受信情報信号をディジタル信号サンプルとして扱う「交換機1」を含むディジタル電話システム、が記載されている。

[刊行物4:特開昭58-51635号公報 (甲第2号証)、及び刊行物5:「電子通信学会 通信方式研究会資料 CS 69-67(1969-12)」(1969年12月12日 電子通信学会発行「自動車無線電話接続方式」]
これら刊行物4、5には、「通話チャネル」が割当てずみであるかを示す「記憶装置」を有し、呼接続要求に応答してその「記憶装置」を調べ他の局線に未割当ての「通話チャネル」への接続をもたらす割当て信号を発生する電話システム、が記載されている。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
本件発明1と引用例1に記載の発明とを対比すると、
両者は、基地局と加入者局との間における時間スロットを使用した通信に係るディジタル陸上通信システムという点において共通しているものの、
本件発明1は、「前記送信チャンネル・ビット・ストリームに応答して前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの選択された一つ経由の前記加入者局への送信用送信チャンネル信号を各々が発生する複数の周波数切換可能な送信手段(21)であって、前記基地局により選択された前記複数の無線周波数(RF)の任意の一つでそれぞれ送信できる複数の周波数切換可能な送信手段(21)」という発明の構成に欠くことができない事項を備えており、基地局に複数の送信手段(21)があり、それらの各送信手段が各々周波数切換可能なものであり、周波数切換は基地局による選択に応じてなされるものであるのに対して、刊行物1には、基地局の送信機「Tx.」が周波数変更可能な構成をもった送信機であるとの記載はないし、また基地局の送信機「Tx.」の周波数を切り換えて使用することの記載もないので、本件発明1と刊行物1記載の発明とは、その基地局に備えられている複数の送信手段(送信機)が周波数切換可能な送信手段(送信機)であるかどうかという点で相違している。
この相違点について検討すると、上記刊行物2ないし5、及び上記第2次訂正拒絶審決において、送信周波数を切換えることが本件出願前普通に知られていた周知技術であることを示すために引用した刊行物(特開昭55-147842号公報)には、基地局または基地局に相当する親局の送信機の周波数を切り換えることは記載も示唆もないから、刊行物2ないし5に記載の技術、及び上記周知技術を引用発明に適用しても、上記のごとく基地局の送信機を周波数切換可能とすることが容易想到であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1ないし5に記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2-2)本件発明2について
本件発明2は、「前記被変調副搬送波に応答して前記複数の無線周波数(RF)チャンネルのうちの選択された一つ経由の前記加入者局への送信用被変調信号を各々が発生する複数の周波数切換可能な送信手段(21)であって、前記基地局により選択された前記複数の無線周波数(RF)の任意の一つでそれぞれ送信できる複数の周波数切換可能な送信手段(21)」を発明の構成に欠くことができない事項として備えているものであり、本件発明1と、基地局に複数の送信手段(21)があり、それらの各送信手段が各々周波数切換可能なものであり、周波数切換は基地局による選択に応じてなされるものである点において同じであるので、上記(2-1)において検討した本件発明1と同様に上記刊行物1ないし5に記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.異議申立人の申立理由について
異議申立人が提出した甲第1、2号証のそれぞれは、当審の取消理由において挙示した刊行物3、4と同じものであるので、上記4で検討したごとく、本件発明1、2は、異議申立人が提出した上記甲第1、2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2007-09-25 
出願番号 特願昭61-39331
審決分類 P 1 651・ 856- Y (H04B)
P 1 651・ 121- Y (H04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 敏行  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 橋本 正弘
長島 孝志
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2816349号(P2816349)
権利者 インターデイジタル テクノロジー コーポレーション
発明の名称 多重音声及び/又はデータ信号通信を単一又は複数チャンネルにより同時に行うための加入者RF電話システム  
代理人 内原 晋  
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