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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200680217 | 審決 | 特許 |
無効200680138 | 審決 | 特許 |
無効200680169 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 一部無効 発明同一 A45D |
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管理番号 | 1167889 |
審判番号 | 無効2006-80259 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-12-11 |
確定日 | 2007-10-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3789386号発明「シートタイプ化粧品及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3789386号の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3789386号に係る発明についての出願は、平成14年4月26日に出願され、平成18年4月7日に特許権の設定登録がされたものであって、その後、平成18年12月11日に請求人諏訪幸朗より無効審判が請求され、これに対して、被請求人三昭紙業株式会社より平成19年3月6日付で答弁書が提出されるとともに、同日付で訂正請求がなされ、さらに請求人より平成19年4月12日付で弁駁書が提出され、被請求人より平成19年7月6日に答弁書(第2回)が提出され、平成19年7月19日に口頭審理が行われたものである。 2.訂正の適否に対する判断 (1)訂正の内容 本件訂正は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。) ・訂正事項a 特許請求の範囲を下記の通り訂正する。 「【請求項1】 吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。 【請求項2】 吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。 【請求項3】 吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して多層の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止することにより、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。 【請求項4】 シートロールから繰り出された吸水性を有するシート材を長手方向に沿って二つ折りにして、シート状フィルムロールから繰り出された疎水性を有するシート状フィルムをシート材内に挟み込んで3層構造の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止したことを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。」 ・訂正事項b 明細書の段落【0006】を下記の通り訂正する。 「【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記目的を達成するために、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品を基本手段として提供する。」 ・訂正事項c 明細書の段落【0007】を下記の通り訂正する。 「【0007】 また、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品とその製造方法を提供する。」 ・ 訂正事項d 明細書の段落【0010】を下記の通り訂正する。 「【0010】 【発明の実施の形態】 以下図面に基づいて本発明にかかるシートタイプ化粧品及びその製造方法の各種実施形態を説明する。本発明では、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品、及び吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品とその製造方法を基本手段としている。」 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 ・訂正事項aについて 上記訂正事項aは、訂正前の請求項1、請求項2、請求項6に「吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持している」を付加し、さらに訂正前の請求項2、請求項6に記載されていた「疎水性を有するシート状フィルムを介挿して」に「各々」を付加して「疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して」とするとともに、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項5を削除して、訂正前の請求項6を訂正後の請求項3に、訂正前の請求項7を訂正後の請求項4とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。 また、上記訂正事項aの内「吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持している」を付加する訂正は、特許明細書の段落【0009】に「かかるシートタイプ化粧品によれば、利用者が包装体を開封して化粧料が含浸されたシート材の一端部を指先でつまんで引くことにより、該シート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離して、シート材を1枚ずつ取り出して使用に供することができる。シート状フィルムはシート材を1枚ずつ取り出し可能とする機能とともに該シート材の強度を保持する機能を有している。」と記載されているから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、上記訂正事項aの内、「疎水性を有するシート状フィルムを介挿して」に「各々」を付加して「疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して」とする訂正は、特許明細書の段落【0011】に「図1?図4は本発明によるシートタイプ化粧品の製造方法の第1実施例を、一例として目もと用として利用するシートタイプ化粧品を製造する際の工程例として示している。図中の1,1はシート材として吸水性を有する不織布シートであり、2,2は疎水性を有するシート状フィルムである。図示例では9枚の各不織布シート1,1間に8枚のシート状フィルム2,2が各々介挿され、これら不織布シート1,1とシート状フィルム2,2との多層の積層体が構成されている。」と記載されているから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ・訂正事項bないしdについて 上記訂正事項bないしdは、訂正事項aの訂正に伴い発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから明りょうでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項aないしdは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 3.本件発明 上記2.のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 (1)本件発明1 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。」 (2)本件発明2 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。」 (3)本件発明3 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して多層の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止することにより、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。」 4.当事者の主張 (1)請求人の主張 請求人は、審判請求書において、訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開(甲第1号証はその公開公報)がされた先願(特願2001-193010号) の願書に最初に添付した明細書又は図面記載された発明と同一であり、しかも本件特許発明の発明者が上記先願明細書等に記載された発明の発明者と同一ではなく、また、本件特許出願の時においてその出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、本件の訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである旨主張している。 また、請求人は訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許出願前に頒布された甲第2号証?甲第15号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである旨主張している。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2003-637号公報 甲第2号証:特開平11-130664号公報 甲第3号証:特開2000-198729号公報 甲第4号証:特開2001-89352号公報 甲第5号証:特開2000-325143号公報 甲第6号証:特開平11-228344号公報 甲第7号証:特開平11-266929号公報 甲第8号証:特表2001-500437号公報 甲第9号証:特開2000-119128号公報 甲第10号証:特開平9-239920号公報 甲第11号証:特開平10-316557号公報 甲第12号証:特開平8-198739号公報 甲第13号証:実願平3-59907号(実開平5-4178号)のCD-ROM 甲第14号証:特開2000-239993号公報 甲第15号証:特開平11-171742号公報 (2)被請求人の主張 一方、被請求人は、答弁書において、本件発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第2号証ないし甲第15号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1ないし3についての特許は、審判請求人が主張する無効理由によって無効とされるべきものではない旨主張している。 5.特許法第29条の2の無効理由について (1)先願明細書 特願2001-193010号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】同一素材、同一形状の複数枚のシートを1組として構成した貼付用シートであって、各シートをシートと異なる素材の間挿材を挟んで重ね合わせた状態で包装容器内に収納したことを特徴とする貼付用シート。 【請求項2】前記各シートは、シートと異なる素材の間挿材を挟んで重ね合わせた後に所定回数折り畳んだ状態で包装容器内に収納したことを特徴とする請求項1に記載の貼付用シート。 【請求項3】前記間挿材は、可撓性を有するシート状樹脂を素材とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付用シート。 【請求項4】同一素材の複数枚のシート材料を各シート材料の間にシート材料と異なる素材の間挿材を挟んだ状態で重ね合わせた後に、所定形状に打ち抜くことを特徴とする貼付用シートの製造方法。」(甲第1号証の【特許請求の範囲】参照、以下同様) (イ)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の複数枚のシートを1組として構成した貼付用シートでは、1組分の複数枚のシートを包装容器から同時に取り出すことができるものの、同一素材、同一形状の複数枚のシートが互いに重ね合わされた状態で取り出されるため、同一素材により同一形状に成形された各シートの端部を容易に区別することができず、各シートを互いに分離する作業が煩雑になる問題がある。 特に、ローション等の液体を予め含浸した化粧用シート等では、各シートが液体を介して互いに密着しており、各シートを分離する作業がさらに煩雑になる。また、複数枚のシートが互いに重ね合わされた後に折り畳まれている場合には、シートの端部と折り曲げ部との判別が困難で、各シートを互いに分離する前に折り畳まれた状態から拡げる作業も煩雑になる。 この発明の目的は、同一素材、同一形状の複数枚のシートを各シート間に間挿材を挟んで重ね合わせた状態を1組として収納容器内に収納することにより、収納容器から同時に一体的に取り出された複数枚のシートのそれぞれの端部を容易に区別することができ、各シートを容易に分離することができる貼付用シート及びその製造方法を提供することにある。」(段落【0007】?【0009】) (ウ)「(3)前記間挿材は、可撓性を有するシート状樹脂を素材とすることを特徴とする。 この構成においては、同一素材、同一形状の複数枚を1組としたシートが、各シート間に可撓性を有するシート状樹脂を素材とする間挿材を挟んで重ね合わせた状態で包装容器内に収納される。したがって、複数枚1組のシートの一部又は全部に液体が含浸されている場合でも、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材を介して各シートが確実に分離される。 (4)同一素材の複数枚のシート材料を各シート材料の間にシート材料と異なる素材の間挿材を挟んだ状態で重ね合わせた後に、所定形状に打ち抜くことを特徴とする。 この構成においては、同一素材の複数枚のシート材料のそれぞれの間に間挿材が挟まれた状態で所定形状のシートに打ち抜かれる。したがって、同一形状の複数枚のシートが、それぞれの間に間挿材を挟んだ状態に容易に形成される。」(段落【0015】?【0018】) (エ)「【発明の実施の形態】図1は、この発明の第1の実施形態に係る貼付用シートの構成を示す図である。第1の実施形態に係る貼付用シート1は、一例として不織布からなる2枚1組の第1シート2及び第2シート3を、両者の間に可撓性を有するシート状樹脂からなる間挿材4を挟んで重ね合わせた状態で、単一の収納容器5内に密封して収納されている。」(段落【0019】) (オ)「この後、収納容器5から取り出した貼付用シート1において、第1シート2及び第2シート3のそれぞれを間挿材4から分離することにより、これら第1シート2及び第2シート3のそれぞれを所定の部位に貼付することができる。 このとき、第1シート2及び第2シート3のそれぞれは、これらと異なる素材からなる間挿材4から分離されるため、同一素材の第1シート2と第2シート3とが直接接触している場合に比較して、第1シート2及び第2シート3の端部を見付け易く、第1シート2及び第2シート3のそれぞれを容易に1枚ずつに分離することができる。 また、貼付用シート1が化粧用シート等である場合には、ローション等の液体化粧料等が第1シート2及び第2シート3に含浸されている場合がある。この場合に、間挿材4が、一般に非吸水性であるシート状樹脂を素材として形成されているため、第1シート2及び第2シート3が間挿材4に液体化粧料を介して密着することがなく、液体化粧料を含浸した吸水性の第1シート2及び第2シート3を直接接触させることによって両者が液体化粧料を介して互いに密着した場合に比較して、第1シート2及び第2シート3のそれぞれを極めて容易に1枚ずつに分離することができる。 なお、間挿材4が、例えば、メッシュシート状樹脂を素材として形成されており、透水性を有する場合であっても、メッシュを構成する部分は非吸水性を有するため、全面が非吸水性を有するシート状樹脂を素材として形成された場合と同様に液体を含浸した第1シート及び第2シート3を間挿材4から容易に分離することができる。」(段落【0021】?【0024】) (カ)「図3は、上記貼付用シートの製造方法を説明する図である。この発明の第1の実施形態に係る貼付用シート1を製造する場合には、間挿材4の材料となるシート状樹脂41の上面側に第1シート2の材料となるシート材21を供給するとともに、シート状樹脂41の下面側に第2シート3の材料となるシート材31を供給し、シート状樹脂41を挟んだ状態でシート材21とシート材31とを打ち抜き位置51に搬送し、打ち抜き位置51に配置されている所定形状の打ち抜き型52により、シート材21及びシート材31をシート状樹脂41とともに所定形状に打ち抜くことにより、第1シート2と第2シート3との間に間挿材4を挟み込んだ状態でこれらを積層した1組の貼付用シート1が形成される。」(段落【0030】) 上記記載事項を総合すると、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明1?3」という。)が記載されているものと認められる。 【先願発明1】 「吸水性の複数枚のシート間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4を挟むとともに、吸水性の複数枚のシートに液体化粧料を含浸して、収納容器5内に密封して収納してなり、吸水性の複数枚のシートを非吸収性であるシート状樹脂からなる間挿材4から容易に分離することができる化粧用シート。」 【先願発明2】 「吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が挟まれた状態で所定形状のシートに打ち抜かれるとともに、吸水性の複数枚のシートの間に間挿材4を挟んで重ね合わせた状態に形成し、吸収性の複数枚のシートに液体化粧料が含浸された状態で収納容器5内に密封して収納してなり、吸水性の複数枚のシートを非吸収性であるシート状樹脂からなる間挿材4から容易に分離することができる化粧用シート。」 【先願発明3】 「吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4を挟んだ状態で重ね合わせ、これを所定形状のシートに打ち抜いて吸収性の複数枚のシートの間に間挿材4を挟んで重ね合わせた状態に形成し、吸収性の複数枚のシートに液体化粧料が含浸された状態で収納容器5内に密封して収納することにより、吸水性の複数枚のシートを非吸収性であるシート状樹脂からなる間挿材4から容易に分離することができる化粧用シートの製造方法。」 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について 本件発明1と先願発明1を対比すると、後者の「吸水性の複数枚のシート」は、その機能・構造からみて前者の「吸水性を有するシート材」に相当し、以下同様に後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は「疎水性を有するシート状フィルム」に、「挟む」は「介挿する」に、「液体化粧料」は「化粧料」に、「収納容器5」は「包装体」に、「密封して収納」は「密閉封止」に、「容易に分離することができる」は「容易に剥離する」に、「化粧用シート」は「シートタイプ化粧品」に、それぞれ相当する。 また、後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は、吸水性の複数枚のシート間に挟まれており、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が挟まれていない場合に比べれば吸水性の複数枚のシートの強度を保持していることは明らかであるから、後者も「疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持している」に相当する発明特定事項を備えているといえる。 そうすると、両者は、 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品。」の点で一致し、両者に相違点はない。したがって、両者は同一である。 (2-2)本件発明2について 本件発明2と先願発明2を対比すると、後者の「吸水性の複数枚のシート材料」及び「吸水性の複数枚のシート」は、その機能・構造からみて前者の「吸水性を有するシート材」に相当し、以下同様に後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は「疎水性を有するシート状フィルム」に、「挟まれた状態」は「介挿して構成した」に、「吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が挟まれた状態」は「多層の積層体」に、「所定形状のシートに打ち抜かれるとともに、吸水性の複数枚のシートの間に間挿材4を挟んで重ね合わせた状態に形成し」は「所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し」に、「液体化粧料」は「化粧料」に、「収納容器5」は「包装体」に、「密封して収納」は「密閉封止」に、「容易に分離することができる」は「容易に剥離する」に、「化粧用シート」は「シートタイプ化粧品」に、それぞれ相当する。 また、後者の「吸収性の複数枚のシート材料」の「複数枚」には、3枚以上の場合も含まれることは明らかであり、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4は吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に挟まれるのであるから、「吸収性の複数枚のシート材料」が3枚以上である場合には、吸水性の複数枚のシート材料間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が「各々」介挿されているといえる。 また、後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は、吸水性の複数枚のシートの間に挟まれており、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が挟まれていない場合に比べれば吸水性の複数枚のシートの強度を保持していることは明らかであるから、後者も「疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持している」に相当する発明特定事項を備えているといえる。 また、後者の「吸収性の複数枚のシートに液体化粧料が含浸された状態で収納容器5内に密封して収納」することと、前者の「この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止」することとは、「化粧品ユニットに化粧料が含浸された状態で、包装体内に密閉封止」する点で共通している。 そうすると、両者は、 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、化粧品ユニットに化粧料が含浸された状態で、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品。」の点で一致し、次の点で一応相違している。 相違点1:化粧料の含浸に関し、前者では、多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形した後に化粧料を含浸しているのに対し、後者では、化粧料の含浸がいつ行われるのか不明である点。 そこで、上記相違点1について検討する。 化粧料を含浸させるのは、積層体を所定の形状に打ち抜く前か、積層体を所定の形状に打ち抜いた後の何れかしかなく、多層の積層体を所定の形状に打ち抜く前に化粧料を含浸させると、打ち抜かれて不要となる部分にも化粧料が含浸されることになり化粧料が無駄になってしまうから、当業者がそのような無駄になることをするとは通常考えられないので、化粧料を含浸させるのは多層の積層体を所定の形状に打ち抜いた後であると考えるのが自然である。そうすると、上記相違点1は実質的な相違点とはいえず、両者は同一であるといわざるを得ない。 (2-3)本件発明3について 本件発明3と先願発明3を対比すると、後者の「吸水性の複数枚のシート材料」及び「吸水性の複数枚のシート」は、その機能・構造からみて前者の「吸水性を有するシート材」に相当し、以下同様に後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は「疎水性を有するシート状フィルム」に、「吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4を挟んだ状態」は「多層の積層体」に、「所定形状のシートに打ち抜いて」は「所定の形状に打ち抜いて」に、「吸収性の複数枚のシートの間に間挿材4を挟んで重ね合わせた状態に形成」は「化粧品ユニットを成形」に、「液体化粧料」は「化粧料」に、「収納容器5」は「包装体」に、「密封して収納」は「密閉封止」に、「容易に分離することができる」は「容易に剥離する」に、「化粧用シート」は「シートタイプ化粧品」に、それぞれ相当する。 また、後者の「吸収性の複数枚のシート材料」の「複数枚」には、3枚以上の場合も含まれることは明らかであり、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4は吸水性の複数枚のシート材料のそれぞれの間に挟まれるのであるから、「吸収性の複数枚のシート材料」が3枚以上である場合には、吸水性の複数枚のシート材料間に非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が「各々介挿」されているといえる。 また、後者の「非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4」は、吸水性の複数枚のシートの間に挟まれており、非吸水性であるシート状樹脂からなる間挿材4が挟まれていない場合に比べれば吸水性の複数枚のシートの強度を保持していることは明らかであるから、後者も「疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持している」に相当する発明特定事項を備えているといえる。 また、後者の「吸収性の複数枚のシートに液体化粧料が含浸された状態で収納容器5内に密封して収納」することと、前者の「積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止」することとは、「化粧品ユニットに化粧料が含浸された状態で、包装体内に密閉封止」する点で共通している。 そうすると、両者は、 「吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して多層の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、化粧品ユニットに化粧料が含浸された状態で、包装体内に密閉封止することにより、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。」の点で一致し、次の点一応で相違している。 相違点2:化粧料の含浸に関し、前者では、積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸しているのに対し、後者では、化粧料の含浸がいつ行われるのか不明である点。 そこで、上記相違点2について検討する。 化粧料を含浸させるのは、積層体を所定の形状に打ち抜く前か、積層体を所定の形状に打ち抜いた後の何れかしかなく、多層の積層体を所定の形状に打ち抜く前に化粧料を含浸させると、打ち抜かれて不要となる部分にも化粧料が含浸されることになり化粧料が無駄になってしまうから、当業者がそのような無駄になることをするとは通常考えられないので、化粧料を含浸させるのは多層の積層体を所定の形状に打ち抜いた後であると考えるのが自然である。そうすると、上記相違点2は実質的な相違点とはいえず、両者は同一であるといわざるを得ない。 したがって、両者は同一であるといわざるを得ない。 6.むすび 以上のとおり、本件発明1ないし3は、それぞれ先願発明1ないし3と同一であるから、他の無効理由および証拠を検討するまでもなく、本件発明1ないし3についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 シートタイプ化粧品及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。 【請求項2】吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品。 【請求項3】吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して多層の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止することにより、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持していることを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。 【請求項4】シートロールから繰り出された吸水性を有するシート材を長手方向に沿って二つ折りにして、シート状フィルムロールから繰り出された疎水性を有するシート状フィルムをシート材内に挟み込んで3層構造の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止したことを特徴とするシートタイプ化粧品の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は所定の化粧料を含浸した目もと用,フェイス用等の各種シートタイプ化粧品を構成するシート材間に、疎水性を有するシート状フィルムを介挿して積層することにより、使用者がシート材を1枚ずつ剥離する操作を容易にするとともに、介挿したシート状フィルムによって包装時の保形性と強度を高めたシートタイプ化粧品とその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来から化粧料を含浸したシートタイプ化粧品を用いて、目もとや顔面全体の肌の手入れを行う商品が市販されており、肌への湿潤作用を得るためには、吸水性を有するシート材に化粧料を充分に含ませることが必要である。このような目もと用,フェイス用等のシートタイプ化粧品として、化粧料を含浸した不織布または紙でなる吸水性の高いシート材を包装体内に積層して密封したパック型の商品が一般に提供されている。しかし化粧料を充分に含浸したシート材の複数枚を積層すると、シート材間の密着性が高くなって利用者が1枚ずつシート材を剥離する操作が行い難くなるという問題がある。 【0003】 そこで利用者が包装体からシート材を1枚ずつ取り出しやすくするため、一つの包装体内に化粧料を含浸したシート材を1枚だけ封入した1回分の使い切りタイプのパック型化粧品としたり、各シート材を1枚ずつ横方向又は縦方向に一定間隔ずらせて複数枚封入したパック型化粧品とする手段が用いられている。また、シートタイプ化粧品自体の強度が不足しているため、予め所定の形状に打抜かれた不織布シートでなるシート材を、同様な形状に成形されたプラスチック容器に載せて製品化する手段が用いられており、該プラスチック容器によってシート材に所望の保形性や強度を付与している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 前記したように所定の形状に打抜かれた吸水性を有するシート材を複数枚積層して化粧料を含浸させると、シート材間の密着性が高くなって該シート材を1枚ずつ剥離する操作が困難になるという課題がある。これに対処するため、一つの包装体内にシート材を1枚だけ封入する手段、もしくはシート材の複数枚を横方向又は縦方向に一定間隔だけずらせて包装体内に封入する手段もあるが、何れも1回分の使い切り化粧品としての使用形態を取らざるを得ないため、利用者の操作が煩瑣であるとともに1回分だけ使用するパック型化粧品としてのコストが高く、かつ、包装資材の無駄が多くなってしまうという難点がある。 【0005】 そこで本発明は上記の問題点を解決して、化粧料が含浸されたシート材を使用者が1枚ずつ剥離する操作が容易であるとともに、密閉された包装体内に多数枚のシート材を封入することを可能として使用者の便ならしめ、しかもプラスチック容器等を用いることなく保形性と強度を高めたシートタイプ化粧品とその製造方法を提供することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記目的を達成するために、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品を基本手段として提供する。 【0007】 また、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品とその製造方法を提供する。 【0008】 本発明のシートタイプ化粧品の他の製造方法例として、シートロールから繰り出された吸水性を有するシート材を長手方向に沿って二つ折りにして、シート状フィルムロールから繰り出された疎水性を有するシート状フィルムをシート材内に挟み込んで3層構造の積層体を構成し、該積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形して化粧料を含浸し、包装体内に密閉封止して製造する。 【0009】 かかるシートタイプ化粧品によれば、利用者が包装体を開封して化粧料が含浸されたシート材の一端部を指先でつまんで引くことにより、該シート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離して、シート材を1枚ずつ取り出して使用に供することができる。シート状フィルムはシート材を1枚ずつ取り出し可能とする機能とともに該シート材の強度を保持する機能を有している。また、包装体内に多数枚のシート材を封入することができるので、従来の1回分使い切りタイプ化粧品に比して利用者の操作が簡易化され、かつ、シートタイプ化粧品としての製造コストを下げることができる。 【0010】 【発明の実施の形態】 以下図面に基づいて本発明にかかるシートタイプ化粧品及びその製造方法の各種実施形態を説明する。本発明では、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿するとともに、吸水性を有するシート材に化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品、及び吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを各々介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形し、この化粧品ユニットに化粧料を含浸して、包装体内に密閉封止してなり、吸水性を有するシート材が疎水性を有するシート状フィルムから容易に剥離するとともに、疎水性を有するシート状フィルムによって吸水性を有するシート材の強度を保持しているシートタイプ化粧品とその製造方法を基本手段としている。 【0011】 図1?図4は本発明によるシートタイプ化粧品の製造方法の第1実施例を、一例として目もと用として利用するシートタイプ化粧品を製造する際の工程例として示している。図中の1,1はシート材として吸水性を有する不織布シートであり、2,2は疎水性を有するシート状フィルムである。図示例では9枚の各不織布シート1,1間に8枚のシート状フィルム2,2が各々介挿され、これら不織布シート1,1とシート状フィルム2,2との多層の積層体が構成されている。尚、上記不織布シート1として、化学合成繊維又は化学合成繊維+天然繊維を用いることができる。更に不織布シート1に代えて吸水性を有する紙を用いてもよい。 【0012】 具体的には、不織布シート1,1として、寸法が390mm×206mmの天然繊維でなる坪量30gのシート材を用いており、シート状フィルム2,2として、寸法が390mm×206mm、厚みが50μmのポリプロピレンフィルムもしくはポリエチレンフィルムを採用する。尚、シート状フィルム2,2の厚みは8μm?1000μmの範囲であれば使用可能である。 【0013】 図2は金属製の打ち抜き型3の形状例を示しており、該打ち抜き型3の寸法は4cm×8cmで全面に三日月型の孔部3a,3aが開口されている。図示例では孔部3a,3aを計12個設けてある。 【0014】 図3は上記打ち抜き型3を用いて、図1に示す不織布シート1,1とシート状フィルム2,2の積層体を打ち抜くことにより得られた化粧品ユニット4を示す外観図である。目もと用化粧品の場合には、化粧品ユニット4の寸法は略10mm?300mmの範囲にあることが好ましい。そして図4に示すように、該化粧品ユニット4を包装体6内に入れ、化粧料5を注入してから開閉自在なシール手段を用いて密封することにより、本発明による目もと用シートタイプ化粧品が完成する。なお、化粧品ユニット4としては、不織布シート1,1の間に1枚のシート状フィルム2を介挿させた積層体を包装体6内に入れ、化粧料5を注入するようにしてもよい。 【0015】 かかる第1実施例によれば、利用者は包装体6を開封して化粧料5が含浸された不織布シート1の一端部を指先でつまんで引くことにより、該不織布シート1が疎水性を有するシート状フィルム2から容易に剥離するため、不織布シート1を1枚ずつ取り出して使用に供することができる。シート状フィルム2は、シート材としての不織布シート1を1枚ずつ取り出し可能とする機能以外に、該不織布シート1の強度を保持する機能をも有している。使用後はシール手段により包装体6の開口部を閉止することにより、化粧料5の蒸発を防止して不織布シート1がなくなるまで繰り返し使用することができる。 【0016】 図5?図8は本発明の第2実施例を、同様に目もと用のシートタイプ化粧品を製造する際の工程例として示しており、図5(A)に示す11は不織布シートロール、12はシート状フィルムロールである。不織布シートロール11から図外の繰り出し装置によってシート材として吸水性を有する不織布シート1が順次繰り出され、シート状フィルムロール12から疎水性を有するシート状フィルム2が順次繰り出される。 【0017】 図5(B)に示したように、繰り出された不織布シート1は長手方向に沿う中心部分が二つ折りにされ、該不織布シート1内にシート状フィルム2が挟み込まれる。図6は図5(B)のA-A線に沿う断面図であり、二つ折りにされた不織布シート1内にシート状フィルム2が挟み込まれた3層の積層体が構成されている。 【0018】 第1実施例と同様に、不織布シート1として天然繊維でなる坪量30gのシート材を用いており、シート状フィルム2として、ポリプロピレンフィルムを採用する。図7は金属製打ち抜き型13の形状例を示しており、該打ち抜き型13には三日月型の孔部13aが1個だけ開口されている。 【0019】 図8は上記打ち抜き型13を用いて、不織布シート1とシート状フィルム2の積層体を打ち抜くことにより得られた3層構造の化粧品ユニット14を示す外観図である。この化粧品ユニット14を前記第1実施例で用いた包装体6(図4参照)内に入れ、化粧料5を注入してから密封することにより、第2実施例にかかる目もと用シートタイプ化粧品が完成する。なお、二つ折りにされた不織布シート1内にシート状フィルム2が挟み込まれた3層の積層体を多層積層させてから所定形状に打ち抜き、化粧品ユニット14を多層積層した状態で包装体6内に入れ、化粧料5を注入してもよいことはもとよりである。 【0020】 かかる第2実施例によれば、1枚のシート状フィルム2の表裏両面に不織布シート1,1が添着された化粧品が得られるので、利用者は包装体を開封して化粧料が含浸された不織布シート1の一端部を指先でつまんで引くことにより、該不織布シート1が疎水性を有するシート状フィルム2から容易に剥離するため、不織布シート1を1枚ずつ取り出して合計2回の使用に供することができる。なお、化粧品ユニット14を多層に積層した場合は第1実施例と同様に複数回にわたって使用することが可能である。シート状フィルム2は不織布シート1を1枚ずつ取り出し可能にするとともに該不織布シート1の強度を保持する機能を有している。 【0021】 図9は本発明にかかるシートタイプ化粧品を、目もと用の化粧品に代えてフェイス用のパックタイプ化粧品15に適用した例を示す平面図であり、このようなフェイス用のパックタイプ化粧品15を製作する際にあっても前記第1,第2実施例で説明した製造方法をそのまま適用することができる。 【0022】 【発明の効果】 以上詳細に説明したように、本発明にかかるシートタイプ化粧品によれば、吸水性を有するシート材間に疎水性を有するシート状フィルムを介挿して構成した多層の積層体を所定の形状に打ち抜いて化粧品ユニットを成形してあるため、シート材間の密着性が低下して該シート材を1枚ずつ剥離する操作がきわめて容易であり、利用者が包装体を開封してからシート材の一端部を軽くつまんで引くことにより、該シート材を1枚ずつ取り出して使用に供することができる。また、包装体内に多数枚のシート材を封入することにより従来の1回分使い切りタイプ化粧品に比して利用者の操作が簡易化され、シートタイプ化粧品としての製造コストは低廉となる利点がある。 【0023】 シート材間に介挿したシート状フィルムは、シート材を1枚ずつ取り出し可能にする機能とともに該シート材の強度を保持する機能をも発揮しており、簡単な包装形態であっても従来の成型されたプラスチック容器等を用いずに充分な強度を保持させることができる。更に本発明第2実施例に記載したように、一つの包装体内にシート材を2枚だけ封入して1回分又は2回分の使い切り化粧品としての使用形態を取ることもできる。 【0024】 従って本発明によれば、化粧料が含浸されたシート材を使用者が1枚ずつ剥離する操作を容易にし、密閉された包装体内に多数枚のシート材を封入することを可能として使用者の便ならしめるとともにシート材の保形性と強度を高めたシートタイプ化粧品とその製造方法を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明にかかるシートタイプ化粧品の製造方法の第1実施例を示す斜視図。 【図2】 第1実施例で用いた打ち抜き型の形状例を示す斜視図。 【図3】 第1実施例により積層した化粧品ユニット例を示す外観図。 【図4】 化粧品ユニットを包装体内に封入する工程を示す概要図。 【図5】 本発明の第2実施例を示す概要図。 【図6】 図5(B)のA-A線に沿う断面図。 【図7】 第2実施例で用いた打ち抜き型と積層体の形状例を示す概要図。 【図8】 第2実施例により積層した化粧品ユニット例を示す外観図。 【図9】 本発明をフェイス用のパックタイプ化粧品に適用した例を示す平面図。 【符号の説明】 1…不織布シート 2…シート状フィルム 3,13…打ち抜き型 4,14…化粧品ユニット 5…化粧料 6…包装体 11…不織布シートロール 12…シート状フィルムロール |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2007-08-08 |
結審通知日 | 2007-08-10 |
審決日 | 2007-08-21 |
出願番号 | 特願2002-125683(P2002-125683) |
審決分類 |
P
1
123・
161-
ZA
(A45D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩田 洋一 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
仲村 靖 川本 真裕 |
登録日 | 2006-04-07 |
登録番号 | 特許第3789386号(P3789386) |
発明の名称 | シートタイプ化粧品及びその製造方法 |
代理人 | 田中 幹人 |
代理人 | 谷藤 孝司 |
代理人 | 田中 幹人 |