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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580341 審決 特許
無効200580033 審決 特許
無効200680198 審決 特許
無効200680168 審決 特許
無効2007800031 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特38条共同出願  B65D
管理番号 1167904
審判番号 無効2006-80171  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-04 
確定日 2007-10-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3079414号蓋開閉装置の特許無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。特許第3079414号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3079414号に係る発明についての出願は、平成7年3月8日に発明者松本有、出願人フォルムデザイン有限会社(登録名義人の表示の変更により、現在は株式会社フォルム。)として出願されたものであって、平成12年6月23日にその発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、平成18年9月4日付けで請求人株式会社松田技術研究所より無効審判の請求(無効2006-80171号)がなされ、平成18年11月24日付けで被請求人株式会社フォルムより答弁書及び訂正請求書が提出され、平成19年2月21日付けで請求人より弁駁書が提出された。
さらに、平成19年2月21日付けで請求人株式会社松田技術研究所より新たに無効審判の請求(無効2007-800031号)がなされ、平成19年5月14日付けで被請求人株式会社フォルムより答弁書が提出された。
上記2件の無効審判事件は、併合して審理を行うこととし、平成19年6月27日に口頭審理を行った。その後、平成19年7月19日付けで請求人より上申書が提出され、平成19年7月20日付けで被請求人より上申書が提出されたものである。

II.訂正の可否及び本件特許発明について
1.訂正の可否について
被請求人は平成18年11月24日付けで訂正請求を行っているので、その訂正の可否についてまず判断する。

(1)訂正請求の内容
[訂正事項1]
特許第3079414号における特許請求の範囲の請求項1に下線部の記載を追加し、以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】ボックス本体と蓋体との間にヒンジ機構を介在させて該蓋体を略垂直に起こした状態に開閉可能とする収納ボックスにおいて、該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持するよう形成し、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことを特徴とする蓋開閉装置。」
(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)

[訂正事項2]
特許第3079414号における発明の詳細な説明の段落番号【0005】の最終行に「保持すること」とあるのを、以下のとおりに訂正する。
「保持するよう形成し、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したこと」

[訂正事項3]
特許第3079414号における発明の詳細な説明の段落番号【0007】の最終行に「保持させる。」とあるのを、以下のとおりに訂正する。
「保持させる。
また、ヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構は、ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう把持部の大径孔に内挿された小球が、該把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体を介して該小球をガイドレール側に常時付勢させ、蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態が維持される。」

[訂正事項4]
特許第3079414号における発明の詳細な説明の段落番号【0012】の最終行に「量産することができる。」とあるのを、以下のとおりに訂正する。
「量産することができる。
加えて、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことによれば、小球と発条体を利用した簡単なスライドフックロック機構により蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態を維持することができる。」

[訂正事項5]
特許第3079414号における符号の説明の欄中「3…ボックス」とあるのを、「3…ボックス本体」に訂正する。

(2)訂正事項についての判断
[訂正事項1について]
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落番号【0010】の第4行目から第13行の「スライドフックロック機構は、蓋体2の開閉位置において、前記把持部9と前記ガイドレール8とに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部9の大径孔9Aおよび該ガイドレール8の小径孔8Aと、該ガイドレール8の小径孔8A内に一部介入されるよう該把持部9の大径孔9Aに内挿された該小径孔8Aよりも大径の小球10と、該小球10をガイドレール8側に常時付勢させるよう把持部9の外側から大径孔9Aを弾発状に閉塞させた発条体11とを形成している。」の記載に基づいて請求項1を減縮するものである。
したがって、この訂正は、特許法第134条の2第1項第1号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
また、訂正事項1はいずれも願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

[訂正事項2について]
訂正事項2は、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)に対応して発明の詳細な説明を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

[訂正事項3について]
訂正事項3は、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)に対応して発明の詳細な説明の作用の項を訂正するものであって、しかも、この訂正は、願書に添付した明細書の段落番号【0010】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項3は、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)に対応して発明の詳細な説明を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

[訂正事項4について]
訂正事項4は、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)に対応して発明の詳細な説明の効果の項を訂正するものであって、しかも、この訂正は、願書に添付した明細書の段落番号【0010】及び【0011】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項4は、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)に対応して発明の詳細な説明を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

[訂正事項5について]
訂正事項5は、符号3が「ボックス」となっている誤記を「ボックス本体」に訂正するものであって、しかも、この訂正は、願書に添付した明細書の段落番号【0008】の「ボックス本体3」の記載に基づくものである。
よって、訂正事項5は誤記の訂正を目的とするものであると認められる。

以上のとおり、上記各訂正は特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とし、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2の規定に適合するので当該訂正を認める。

2.本件特許発明
上記訂正により本件特許明細書は訂正されたので、本件請求項1及び2に係る発明(以下「本件特許発明1及び2」という)は、訂正後の特許明細書(以下、「本件特許明細書」という)の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
ボックス本体と蓋体との間にヒンジ機構を介在させて該蓋体を略垂直に起こした状態に開閉可能とする収納ボックスにおいて、該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持するよう形成し、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことを特徴とする蓋開閉装置。
【請求項2】
前記ヒンジアダプター部材の把持部と前記蓋体のガイドレールとの噛合断面形状が夫々略L字形状である請求項1記載の蓋開閉装置。」

III.無効2006-80171号及び無効2007-800031号における請求人及び被請求人の主張の概略

1.無効2006-80171号における請求人の主張
請求人の主張は、甲第1乃至12号証の2を提出して、本件特許発明1及び2は、以下の2つの理由により、特許を受けることができない旨主張するものであるが、その主張の内容は概略以下のとおりである。
(1)理由1:本件特許発明1及び2は、本件特許の出願日より前に、請求人によって特許出願が行われ、かつ甲第1号証に示すように、本件特許出願の後に公開が行われた願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2により無効理由を有している。
(2)理由2:本件特許発明1及び2は、本来、請求人代表者である松田真次の発明であって、被請求人は、特許を受ける権利を松田真次から承継せずに、出願が行われたものであり、特許法第49条第6号に規定する冒認出願であるから、無効理由を有している。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開平7-251774号公報
甲第2号証:特許第3373038号公報(甲第1号証に係る出願の特許公報)
甲第3号証の1、2、3、4:郵政省における打ち合わせ記録
(立証の趣旨)
請求人は、本件発明の技術的背景をなす二輪車用集配箱につき、郵政省からの委託に基づいて平成5年5月ないし12月にかけて開発を行い、かつ当該開発に基づく協議を継続していたが、前記開発の過程において、請求人代表者によって、本件発明の構成が発明されたこと。
甲第4号証:集配キャリーボックス開発企画書
(立証の趣旨)
甲第5号証に示すようなテストに先立ち、請求人は、既に平成5年9月当時、本件発明のベースをなす構成、即ち、ヒンジによって開閉可能であると共に、レールを把持することによってスライド可能な蓋の機構を既に企画し、かつ郵政省に提案していること。
甲第5号証:試作品の性能テストを行っている写真
(立証の趣旨)
甲第3号証の開発過程において、既に平成5年10月当時、試作品が作成され、そのテストが郵政省内において実施されたこと。
甲第6号証:「年内郵政業務用品開発計画」と題する書面
(立証の趣旨)
甲第5号証のテストを行った平成5年10月当時、請求人は、甲第4号証の企画を更に進化させ、蓋のスライド機構として、断面略L字型のガイドレールに対し、当該略L字型に噛合し得るような断面形状を有している把持部をヒンジに取り付けた構成を採用していること。
甲第7号証:「奨励用BOX・集配用キャリーBOX改良設変説明」と題する書面
(立証の趣旨)
請求人は、二輪車用集配箱の開発過程において、甲第6号証のガイドレールに対する把持部の構成を更に改良し、把持部と蝶番との間に取付面部を設けたことによるヒンジアダプターの構成を提案していること。
甲第8号証:陳述書
(立証の趣旨)
請求人が開発しかつ請求人代表者である松田真次が発明を行った二輪車用集配箱に関して、平成6年郵政省によって採用された蓋開閉装置を含む二輪車用集配箱の構成は、基本的に請求人が開発したものと見做していること。
甲第9号証:覚書
(立証の趣旨)
被請求人は、平成5年11月以降、請求人における二輪車用集配箱の開発に協力するに至ったが、その開発対象は、あくまで内側箱と外側箱の上下スライド用に使用するスライドハンドル部分に限定されており、本件発明に係るスライド可能な蓋の開閉構成は、何ら開発の担当範囲に該当していなかったこと。
甲第10号証:発注書
(立証の趣旨)
被請求人は、請求人が開発した二輪車用集配箱の試作品を第三者企業(山田化工株式会社)に発注しているが、このような発注に至るまでに、請求人が開発し、かつ代表者松田真次の発明に係る蓋開閉装置の構成を知悉するに至ったこと。
甲第11号証:特許第3079414号公報
(立証の趣旨)
請求人が開発した二輪車用集配箱の開発に、被請求人が協力し、かつ参加することを奇貨として、甲第1号証の特許出願よりも後に被請求人によって本件特許出願が行われたこと。
甲第12号証の1,2:無効2003-35333号審決、及び無効2003-35361号審決。

2.無効2007-800031号における請求人の主張
本件特許発明1及び2の基本構成は、請求人代表者である松田真次によって発明されており、別件無効審判事件における訂正請求を考慮したとしても、前記松田真次と被請求人代表者である松本有との共同による発明であって、前記松田真次の発明については、本来請求人が特許を受ける権利を有していることを考慮するならば、本件特許出願は、請求人との共同でなければ本来不可能であって、結局本件特許は特許法第38条、同第123条第1項第2号に基づく無効理由を有している。

〈証拠方法〉
甲第1号証の1?4:郵政省における打ち合わせ記録
(立証の趣旨)
請求人は、本件発明の技術的背景をなす二輪車用集配箱につき、郵政省からの委託に基づいて平成5年5月?12月にかけて開発を行い、かつ当該開発に基づく協議を継続していたが、前記開発の過程において、請求人代表者である松田真次によって、本件発明の基本的な構成部分が発明されるに至ったこと。
甲第2号証:集配キャリーボックス開発企画書
(立証の趣旨)
甲第3号証に示すようなテストに先立ち、請求人は、松田真次の発明に基づき、平成5年9月当時、本件発明のベースをなす構成、即ち、ヒンジによって開閉可能であると共に、レールを把持することによってスライド可能な蓋の機構を既に企画し、かつ郵政省に提案していること。
甲第3号証:試作品の性能テストを行っている写真
(立証の趣旨)
甲第1号証の開発過程において、既に平成5年10月当時、試作品が作成され、そのテストが郵政省内において実施されたこと。
甲第4号証:「年内郵政業務用品開発計画」と題する書面
(立証の趣旨)
甲第3号証のテストを行った平成5年10月当時、請求人は、松田真次の発明に基づき甲第2号証の企画を更に進化させ、蓋のスライド機構として、断面略L字型のガイドレールに対し、当該略L字型に噛合し得るような断面形状を有している把持部をヒンジに取り付けた構成を比較し、かつ郵政省に提案していること。
甲第5号証:「奨励用BOX・集配用キャリーBOX改良設変説明」と題する書面
(立証の趣旨)
請求人は、二輪車用集配箱の開発過程において、甲第4号証のガイドレールに対する把持部の構成を更に改良し、松田真次の発明に基づき、把持部と蝶番との間に取付面部を設けたことによるヒンジアダプターの構成を提案していること。
甲第6号証:陳述書
(立証の趣旨)
請求人が開発し、かつ請求人代表者である松田真次が発明を行った二輪車用集配箱は、平成6年郵政省によって採用されるに至っているが、当該採用前の試作品段階において既に水平方向にスライド自在であり、かつ垂直方向において直立ロック状態を保持し得る機能を有していたこと。
甲第7号証:覚書
(立証の趣旨)
被請求人は、平成5年11月以降、請求人における二輪車用集配箱の開発に協力するに至ったが、平成6年1月当時の被請求人が担当した開発対象は、あくまで内側箱と外側箱の上下スライド用に使用するスライドハンドル部分に限定されており、本件発明に係るスライド可能な蓋の開閉構成は、何ら開発の担当範囲に該当していなかったこと。
甲第8号証:発注書
(立証の趣旨)
被請求人は、請求人が開発した二輪車用集配箱の試作品を第三者企業(山田化工株式会社)に発注しているが、このような発注に至るまでに、請求人が開発し、かつ代表者松田真次の発明に係る蓋開閉装置に関する基本構成を知悉するに至ったこと。
甲第9号証:指示書
(立証の趣旨)
前記試作品の製造に際し、請求人は被請求人に対し、ガイドレールと把持部とが「ブレーキ」、即ち双方の摩擦抵抗に基づいて一定以上の力によりスライド可能となるような構成、更にはヒンジ機構部分に「ストッパー」、即ち蓋体をスライドせずに留着し得るような構成、ひいてはヒンジの回動において蓋体を垂直方向にした場合において、直立に起立させた場合の直立ロック状態を実現可能とするような指示を与えていたこと。
甲第10号証:試作品の写真
(立証の趣旨)
甲第8号証の発注に係る試作品においては、本件発明の後述する構成要件A、B1、B2、C1、C2、C3を充足しており、かつこれらの構成は何れも請求人代表者松田真次において発明していること。
甲第11号証:特開平7-251774号公報
(立証の趣旨)
請求人においては、自らの開発に基づいて特許出願を行っていたこと。
甲第12号証: パーツリスト
(立証の趣旨)
被請求人は、甲第9号証の指示等を考慮したうえで、「ストッパーボール」、即ち構成要件Dに係る小球、「ストッパースプリング」即ち構成要件Dに係る発条体の設計に至ったこと。
甲第13号証:特許第3079414号公報
(立証の趣旨)
請求人が開発した二輪車用集配箱の開発に、自らが協力し、かつ参加することを奇貨として、請求人との共同ではなく、被請求人は、単独にて本件特許出願を行ったこと。

3.無効2006-80171号における被請求人の主張
本件発明の構成要素における要部であるスライドフックロック機構に係る構成、すなわち、
(イ)蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構であること、
(ロ)蓋体の直立ロック状態を保持させるスライドフックロック機構であること、
(ハ)蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したスライドフックロック機構であること、等は、甲第1号証には全く存在せず、本件発明は、甲第1号証の存在によって特許法第29条の2に該当するものではなく、無効理由1による本件審判の請求は成り立たない。
また、蓋体が三通りの開閉方式による開き方(蓋体を回動させて開閉すること、蓋体を摺動させて開閉すること、蓋体を回動及び増動させて開閉すること、)をする構成にあっては、乙第1号証及び乙第2号証に示すように、被請求人が特許出願をした甲第1号証の出願日である平成6年3月15日よりもかなり以前(昭和52年3月19 日、昭和38年1月17 日)から、同様な概念を備えた発想が既に開示されていたので、上記発想は、平成5年の時点では、何ら新規なものではないことが明らかとなっている
本件発明の構成要素における要部であるスライドフックロック機構に係る構成(イ)、(ロ)、(ハ)の記載は、請求人の証拠には、全く存在せず、これらを示唆するような記載がないことからも、本件発明の要部は、松本有によって発明されたものである。
〈証拠方法〉
乙第1号証:実開昭52 - 39405号公報
蓋体が三通りの開閉方式による開き方(蓋体を回動させて開閉すること、蓋体を摺動させて開閉すること、蓋体を回動及び摺動させて開閉すること、)をする発想が、被請求人の特許出願日よりもかなり以前から開示されていたことを証明する。

乙第2号証:実公昭38 -427号公報
蓋体が三通りの開閉方式による開き方(蓋体を回動させて開閉すること、蓋体を摺動させて開閉すること、蓋体を回動及び摺動させて開閉すること、)をする発想が、被請求人の特許出願日よりもかなり以前から開示されていたことを証明する。

4.無効2007-800031号における被請求人の主張
本件発明の構成要素に於ける要部であるスライドフックロック機構に係る前記構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成は、1994年3月9日から3月15日までに127台完納した集配用キャリーボックスに既に採用されていたもので、この127台の使用により、(イ)(ロ)(ハ)を除く構成には、既に新規性が無くなっている。
本件発明の構成要素における要部であるスライドフックロック機構に係る構成(イ)(ロ)(ハ)の記載は、請求人の証拠には、全く存在せず、これらを示唆するような記載がないことからも、本件発明の要部は、松本有によって発明されたものである。

IV.当審の判断
請求人は、無効2006-80171号において、特許法第29条の2による無効及び冒認出願による無効を主張し、さらに無効2007-800031号において、共同出願違反による無効を主張している。
しかし、請求人は、平成19年6月27日の口頭審理において、特許法29条の2についての主張は維持しないと陳述し、主として共同出願違反による本件特許の無効を主張したので、まず、共同出願違反による無効の主張について判断を行う。
共同出願違反について判断するに当たって、発明者の意義について確認をしておく。
発明者とは、特許請求の範囲に記載された発明について、その具体的な技術手段を完成させた者をいう。ある技術手段を発想し、完成させるための全過程に関与した者が一人だけであれば、その者のみが発明者となるが、その過程において発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者が発明者となり、そのような者が複数いる場合にはいずれの者も発明者(共同発明者)となる。ここで、発明の特徴的部分とは、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち、従来技術には見られない部分、すなわち当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分をいう。
そこで、以下に検討するに当たって、まず本件特許発明の特徴的部分とはどの部分であるかについて検討し、しかる後、その特徴的部分の発明者は誰であるかについて検討を行うこととする。

1.本件特許発明の特徴的部分について
本件特許発明の基本的特徴点に関し、請求人は、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項のうち「該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態と」の部分が基本的特徴点であることを前提として本件特許の無効を主張しており、訂正がなされてもその基本的特徴点は変わらないものとしている。
一方、被請求人は、訂正前の本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項には新規性はなく、主として訂正によって付け加えられた構成、すなわち、「(イ)蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構であること、(ロ)蓋体の直立ロック状態を保持させるスライドフックロック機構であること、(ハ)蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したスライドフックロック機構であること」が本件特許発明の基本的特徴点であることを前提として本件特許は無効ではないと主張している。
そこで、本件特許発明の特徴的部分を特定するにあたり、(1)本件特許明細書の記載内容からの検討、(2)本件特許の審査経緯からの検討、(3)被請求人が主張する構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成に新規性があるか否かについての検討、の3つの観点から検討を行う。

(1)本件特許明細書の記載内容からの検討
本件特許発明1及び2は、上記の訂正された明細書に記載されているとおりである。そして、本件特許明細書には、以下のような記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】
本発明は、例えば郵便局集配係が自転車やオートバイの荷台に固定して使用する集配用キャリーボックス、または食品類宅配用のキャリーボックスさらにはアイスボックス等その他各種の収納ボックスの蓋開閉装置に関するものである。

【0002】【従来の技術】
従来、各種の収納ボックスの蓋開閉装置としては、単に公知のヒンジ機構を利用するだけで蓋体を略垂直に起こした状態に開蓋するものであった。

【0003】【発明が解決しようとする課題】
ところが従来においては、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させておく際に、蓋体自体の自重と外部からのはずみでボックス本体に蓋体がバタンと倒れてしまい、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態を保持することが困難であり、また、閉蓋の際には蓋を緩やかに閉めることができない。さらに、集配時に必要に応じて蓋体を開放状態で走行させることが不可能であるという問題点を有していた。

【0004】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態との間で無段階的に保持することができ、閉蓋のときには緩やかに閉められるようにすると共に、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させた状態で走行しても蓋が垂直した状態を保持することができる蓋開閉装置を提供することを目的とする。

【0007】【作用】
本発明に係る蓋開閉装置において、ヒンジアダプター手段は、蓋体をボックス本体に対しヒンジ機構との併用にてスライド移動させることで、蓋体を単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた状態と、蓋体を直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立状態を保持させながら開蓋させた状態と、開蓋された蓋体をボックス本体の側面に退避させて纏め込む状態との夫々の開閉状態の間を無段階に止め保持させる。
また、ヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構は、ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう把持部の大径孔に内挿された小球が、該把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体を介して該小球をガイドレール側に常時付勢させ、蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態が維持される。

【0012】【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態との間で無段階的に保持することができ、閉蓋のときには緩やかに閉めるようにできると共に、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させた状態で走行しても蓋が垂直した状態を保持することができる。しかも、スライドフックロック機構により通常の蓋体開閉使用では、蓋体の直立開蓋状態を安定に保持させておくことができ、一定以上の力を作用させるだけで容易に蓋体がスライドさせられて開蓋状態を変更させることができる。また、ヒンジアダプター部材を一体成形により安価に量産することができる。
加えて、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことによれば、小球と発条体を利用した簡単なスライドフックロック機構により蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態を維持することができる。

【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、蓋体とヒンジ機構との嵌合状態の強度耐久性を維持することができる。」

上記記載によれば、本件特許発明は、例えば郵便局集配係が自転車やオートバイの荷台に固定して使用する集配用キャリーボックスの蓋開閉装置に関するものであり、従来、蓋開閉装置としては、単に公知のヒンジ機構を利用するだけで蓋体を略垂直に起こした状態に開蓋するものであったが、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態を保持することが困難であったり、集配時に必要に応じて蓋体を開放状態で走行させることが不可能であるという問題点を有していたため、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態との間で無段階的に保持することができ、閉蓋のときには緩やかに閉められるようにすると共に、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させた状態で走行しても蓋が垂直した状態を保持することができる蓋開閉装置を提供することを目的とするものである。
そして、この目的を達成するため、特許請求の範囲請求項1及び2に記載した構成としたものである。
本件特許発明と本件特許明細書でいう従来技術との対比及び本件特許発明の目的の記載等から、本件特許発明の特徴的部分の背景をなす技術的着想は、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態の3つの状態に蓋を開けることができ、それぞれの開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持できる点にあるものと認められる。
そして、その着想を具体化した構成をなす本件特許発明の特徴的部分は、「該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持するよう形成し」の部分であるものと認められる。

(2)本件特許の審査経緯からの検討
本件特許発明の出願当初の特許請求の範囲は以下のようなものである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボックス本体と蓋体との間にヒンジ機構を介在させて該蓋体を略垂直に起こした状態に開蓋可能とする収納ボックスにおいて、該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となるよう該蓋体と該ヒンジ機構との間にヒンジアダプター手段を有することを特徴とする蓋開閉装置。
【請求項2】 前記蓋体の開閉位置において、該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるよう前記ヒンジアダプター手段にスライドフックロック機構を付与した請求項1記載の蓋開閉装置。
【請求項3】 前記ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配したガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する合成樹脂一体射出成形のヒンジアダプター部材である請求項1または2記載の蓋開閉装置。
【請求項4】 前記ヒンジアダプター部材の把持部と前記蓋体のガイドレールとの噛合断面形状が夫々略L字形状である請求項3記載の蓋開閉装置。
【請求項5】 前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とを有する請求項2ないし4のいずれか記載の蓋開閉装置。」

平成10年9月29日付けの拒絶理由通知(引用例1:実願昭50-124559号(実開昭52-039405号)のマイクロフィルム、引用例2:実願昭59-026391号(実開昭60-138007号)のマイクロフィルム、引用例3:実願昭62-004331号(実開昭63-114322号)のマイクロフィルム)に対して、平成10年12月7日付けで提出された手続補正書によって、本件特許明細書(平成18年11月24日付けの訂正請求前のもの)の特許請求の範囲に記載されたものに補正され、特許査定されたものである。そして、上記手続補正書と同日付けで提出された意見書の中で、以下のように主張している。

a:「・・・本願発明の最大の特徴とするところは、「蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段を、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材とし、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持する」点にあり・・・」(意見書の(2)(B)第3?15行)

b:「引用例1の構成は、「蓋体4を直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態とする機構」だけを開示したものであり、本願発明の最大の特徴とするところの「・・・」構成及び本願特有の作用効果が何ら開示されていません。」(意見書(3)第9?24行)

c:「引用例2は、「蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構」の具体的構成の特徴のみを開示したものであるのに対して、本願発明はこのようなスライドフックロック機構の構成のみに特徴があるのではありません。
換言すれば、本願発明のスライドフックロック機構は、「ガイドレールの小径孔内に一部介入れるよう把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるようスライド動作部の外側から大径孔を弾発的に閉塞させた発条体とでスライドフックロック機構を構成する技術」でなくとも、単に「蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構」でさえあれば他のロック機構によるものでも構わないのであります。」(意見書(4)第7?17行)

d:「また、引用例3に開示されている技術内容は、「スライド軸の外周に軸方向に沿って複数個の係合凹部を形成し、スライド軸を支持する支持孔の内面にスライド軸の外周に向けて弾発付勢されたロックボールが埋設収容され、各係合凹部をロックボールの半径に相当する深さとし、各係合凹部間にスライド軸外周面より段落ちしたロックボール滑動部を形成して、複数の係合凹部群の両端で規定される範囲は所定の移動量毎に係止されながら移動でき、規定範囲外に移動できないようにしたディテント機構を構成した」ものであります。
したがって、引用例3は、「蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構」の具体的構成の特徴のみを開示したものであるのに対して、本願発明はこのようなスライドフックロック機構の構成のみに特徴があるのではありません。すなわち、スライドフックロック機構そのものが本願発明を限定するものではありません。
換言すれば、本願発明のスライドフックロック機構は、「ガイドレールの小径孔内に一部介入れるよう把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるようスライド動作部の外側から大径孔を弾発的に閉塞させた発条体とでスライドフックロック機構を構成する技術」でなくとも、単に「蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構」でさえあれば他のロック機構によるものでも構わないのであります。」(意見書(5)第1?19行)

上記の経緯を考慮すれば、本件被請求人は、上記意見書で、本件特許発明において上記(イ)(ロ)(ハ)の構成は格別の特徴点ではなく他の点が特徴点である旨の主張をして、本件特許は特許査定されたものである。
それにもかかわらず、被請求人は、無効2006-80171号の無効審判請求後に訂正請求において、平成10年12月7日付け手続補正書によって特許請求の範囲から削除された上記(ハ)の構成を再び本件特許発明の構成として付け加えたうえで、上記(イ)(ロ)(ハ)の構成が本件特許発明の構成要素における要部であると主張するものである。
しかし、本件特許取得の経緯を考慮すれば、上記(イ)(ロ)(ハ)の構成のみが本件特許発明の構成要素における要部であるとは到底認められるものではない。
よって、上記(イ)(ロ)(ハ)のみを本件特許発明の構成要素における要部、すなわち特徴点であるとする、被請求人の主張は採用できない。

(3)本件特許発明の構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成に新規性があるか否かについての検討
被請求人は、本件特許発明の構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成は下記の2つの理由により新規性がなく、構成(イ)(ロ)(ハ)のみが本件特許発明の構成要素における要部であると主張している。

[理由1]蓋体が三通りの開閉方式による開き方(蓋体を回動させて開閉すること、蓋体を摺動させて開閉すること、蓋体を回動及び増動させて開閉すること、)をする構成は、乙第1号証(実開昭52-39405号公報)及び乙第2号証(実公昭38-427号公報)に示すように、本件出願前に公知の事項であり、何ら新規なものではない。

[理由2]本件特許発明において構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成は、1994年3月9日から3月15日までに127台完納した集配用キャリーボックスに既に採用されていたもので、この127台の使用により、(イ)(ロ)(ハ)を除く構成は、既に新規性がなくなっている。

[理由1について]
被請求人は、乙第1号証(実開昭52-39405号公報)及び乙第2号証(実公昭38-427号公報)を提示して、蓋体が三通りの開閉方式による開き方(蓋体を回動させて開閉すること、蓋体を摺動させて開閉すること、蓋体を回動及び摺動させて開閉すること、)をする構成は、本件出願前に公知の事項であると主張している。
そこで、各号証に記載されている事項について検討する。
乙第1号証(実開昭52-39405号公報)には、蓋体開閉機構が記載されているが、この機構は開閉する途中の状態において蓋体をスライドさせたり、回動させたりするものであって、三通りの開閉方式が独立して行えるものではなく、本件特許発明において構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成を開示しているものとはいえない。
また、乙第2号証(実公昭38-427号公報)には、洗濯機上蓋が記載されているが、この蓋の開閉は、三通りの開閉方式が独立して行えるものではなく、本件特許発明において構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成を開示しているものとはいえない。
しかも、上記各号証には郵便集配箱のような使用状態とは全く異なる状態で使用されるレコードプレーヤあるいは洗濯機を念頭においた技術であって、本件特許発明において構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成を開示しているものとは到底いえるものではなく、被請求人の主張は採用できない。

[理由2について]
被請求人は、甲第11号証に係る実施品として127台製造された集配用キャリーボックス(試行品)は、1994年3月9日から同年3月15日までに各郵政局物流センターに120台納品されたが、これには、本件発明のスライドフックロック機構に係る前記構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成が既に採用されており、この120台の使用により、(イ)(ロ)(ハ)を除く構成は、本件発明の出願時には既に新規性がなくなっていたものである、と主張している。
「集配用キャリーボックス(改良型)の郵便局に対するアンケート調査結果」と題する文書(請求人提出の平成19年7月19日付け上申書に添付された参考資料3、被請求人提出の平成19年7月20日付け上申書に添付された資料2)から、120台の集配用キャリーボックス試作品が平成6年3月下旬から平成6年4月30日にかけて、郵政省内の各郵便局の現場においてテストされたものと認められる。
しかし、このような正式に採用される前の試作品の試験的使用において、試作品の細部まで第三者に知られ得るような状態で公然と試験されることは通常考えられるものではない。また、試作品の細部まで第三者に知られ得るような状態で公然と試験されることを認めるような特段の取り決めがあったものとも認められない。
してみれば、120台の集配用キャリーボックス試作品が平成6年3月下旬から平成6年4月30日にかけて、郵政省内の各郵便局の現場においてテストされた事実があるとしても、本件特許発明の構成(イ)(ロ)(ハ)を除く構成がすべて公知となり、本件発明の出願時には既に新規性がなくなっていたとは認められない。
よって、被請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上3つの観点から検討したとおり、本件特許発明の特徴的部分の背景をなす技術的着想は、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態の3つの状態に蓋を開けることができ、夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持できる点にあるものと認められ、その着想を具体化した構成をなす本件特許発明の特徴的部分は、上記(1)本件特許明細書の記載内容からの検討で示した部分であるものと認められる。

2.本件特許発明の発明者について
(1)本件特許発明の開発経緯について
請求人が無効2007-800031号で提出した甲第1号証の1?4の郵政省における打ち合わせ記録によれば、請求人の株式会社松田技術研究所の代表者である松田真次は、二輪車用集配箱につき、郵政省からの委託に基づいて平成5年5月?12月にかけて当該開発に関して協議を行っていた。
同じく、甲第2号証は、上記協議の期間中である平成5年9月6日に郵政大臣官房財務部計画課業務用品係に対し(株)松田技術研究所代表取締役松田真次が提出した「集配キャリーボックス開発企画書」なる文書であり、その文書中の「集配キャリーボックス仕様一覧」の(2)蓋の項には「蓋は、特性ヒンジにより3通りの開閉方式が可能(詳細は別添図面の通り)」との記載があり、集配業務用トランクの図には、蓋が3通りの開閉方式で開閉される様子が図示されている。
同じく、甲第5号証は、1993年(平成5年)12月14日に(株)松田技術研究所が作成した「奨励用BOX・集配用キャリーBOX改良設変説明」なる文書であり、その中には集配キャリーボックスの詳細な改良・設計変更点が記載されており、上下スライド機構について、試作では3段式であったのを全自由ストップとすることが記載されている。
甲第7号証は、請求人である株式会社松田技術研究所と被請求人であるフォルムデザイン有限会社(現株式会社フォルム)との平成6年1月12日付けの覚書であって、その中には「郵政省大臣官房財務部計画課 発注による「集配用キャリーボックス」「同インナーボックス」及び「貯金保険用ボックス」の開発・試作・製造にフォルムデザイン(有)が参加をする。」及び「スライドハンドル部分は、フォルムデザイン(有)の開発製造したものを(株)松田技術研究所へ納入する。」との記載がある。
一方、被請求人は、本件特許発明の開発経緯については、構成要件(イ)(ロ)(ハ)は自らの発明であることを主張してはいるが、構成要件(イ)(ロ)(ハ)以外の構成についても株式会社フォルムの代表者である松本有のみが発明したと主張、立証しているものではない。

(2)発明者について
上記の各証拠及び両者の主張を検討すると、本件特許発明の開発は、請求人の株式会社松田技術研究所の代表者である松田真次が郵政省からの委託に基づいて開始され、蓋はヒンジにより3通りの開閉方式を可能とする点及び上下スライド機構について試作では3段式であったのを全自由ストップとする(無段階的にスライド調整可能とする)点は、1993年(平成5年)12月14日までに、株式会社松田技術研究所の代表者である松田真次によって発明されたものと認められる。
また、被請求人である株式会社フォルムの代表者である松本有が本件特許発明の開発に関与したのは平成6年1月12日付けの覚書によれば、スライドハンドル部分の開発に関してであり、被請求人が関与を始めた時期は覚書の日付より前の平成5年11月頃であったとしても、その技術的な内容に関しては部分的なものであるものと認められる。
よって、上記覚書以降の開発においては、株式会社フォルムの代表者である松本有の発明した部分があり得るとしても、本件発明の特徴的部分は主として株式会社松田技術研究所の代表者である松田真次によって発明されたものとみるべきであって、株式会社フォルムの代表者である松本有のみによって発明されたものということは到底できない。
してみれば、本件特許発明1及び2の特徴的部分については、請求人代表者である松田真次が発明した部分が主たる部分であることは明らかであり、無効審判事件における訂正請求によって追加された構成を考慮したとすれば、冒認出願であるとまではいえないとしても、前記松田真次と被請求人代表者である松本有との共同による発明であるというべきである。
よって、本件特許を受ける権利は、請求人の株式会社松田技術研究所の代表者である松田真次と被請求人の株式会社フォルムの代表者である松本有の両者の共有に係るものであるから、本来両者の共同でなければ特許出願をすることができないものである。
それにもかかわらず、本件特許は、発明者松本有、出願人フォルムデザイン有限会社(現株式会社フォルム)のみによって特許出願がなされているものであるから、本件特許は、特許法第38条に違反して特許されたものである。

V.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1及び2は、特許法第38条の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、請求人が主張する他の理由については判断するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蓋開閉装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体と蓋体との間にヒンジ機構を介在させて該蓋体を略垂直に起こした状態に開閉可能とする収納ボックスにおいて、該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持するよう形成し、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことを特徴とする蓋開閉装置。
【請求項2】
前記ヒンジアダプター部材の把持部と前記蓋体のガイドレールとの噛合断面形状が夫々略L字形状である請求項1記載の蓋開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば郵便局集配係が自転車やオートバイの荷台に固定して使用する集配用キャリーボックス、または食品類宅配用のキャリーボックスさらにはアイスボックス等その他各種の収納ボックスの蓋開閉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の収納ボックスの蓋開閉装置としては、単に公知のヒンジ機構を利用するだけで蓋体を略垂直に起こした状態に開蓋するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが従来においては、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させておく際に、蓋体自体の自重と外部からのはずみでボックス本体に蓋体がバタンと倒れてしまい、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態を保持することが困難であり、また、閉蓋の際には蓋を緩やかに閉めることができない。さらに、集配時に必要に応じて蓋体を開放状態で走行させることが不可能であるという問題点を有していた。
【0004】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態との間で無段階的に保持することができ、閉蓋のときには緩やかに閉められるようにすると共に、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させた状態で走行しても蓋が垂直した状態を保持することができる蓋開閉装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、本発明にあっては、ボックス本体と蓋体との間にヒンジ機構を介在させて該蓋体を略垂直に起こした状態に開閉可能とする収納ボックスにおいて、該蓋体がボックス本体に対し前記ヒンジ機構の状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となり、且つ蓋体の開閉位置において該蓋体が一定以上の力によりスライド可能となるスライドフックロック機構を付与したヒンジアダプター手段を前記蓋体と前記ヒンジ機構との間に配し、該ヒンジアダプター手段は、ヒンジ機構に取付固定される取付面部と、蓋体内壁面の該蓋体の開閉方向に配した一体リブ構造のガイドレールにスライド自在に嵌合するよう該取付面部に立設された把持部とを有する一体成形のヒンジアダプター部材であり、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構との併用にて蓋体をボックス本体に対しスライド移動させることで、蓋体を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態と、ヒンジ機構だけで蓋体を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態と、ヒンジ機構により開蓋された蓋体をヒンジアダプター手段によりボックス本体の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体を保持するよう形成し、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことを特徴とする。
【0006】
また、前記ヒンジアダプター部材の把持部と前記蓋体のガイドレールとの噛合断面形状が夫々略L字形状であるものとすることができる。
【0007】
【作用】
本発明に係る蓋開閉装置において、ヒンジアダプター手段は、蓋体をボックス本体に対しヒンジ機構との併用にてスライド移動させることで、蓋体を単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた状態と、蓋体を直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立状態を保持させながら開蓋させた状態と、開蓋された蓋体をボックス本体の側面に退避させて纏め込む状態との夫々の開閉状態の間を無段階に止め保持させる。
また、ヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構は、ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう把持部の大径孔に内挿された小球が、該把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体を介して該小球をガイドレール側に常時付勢させ、蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態が維持される。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明するに、図において示される符号1は、例えば郵便局集配係が自転車やオートバイの荷台に固定して使用する集配用キャリーボックス、または食品類宅配用のキャリーボックスさらにはアイスボックス等その他各種の収納ボックスであり、図1、図2に示す如く、該収納ボックス1は裏面に小物入れ2Aを装備した蓋体2と、トランク全高を可変にして収納量を変化できるように構成したボックス本体3と、該蓋体2と該ボックス本体3との間に介在させた蓋開閉装置4とから構成し、該蓋開閉装置4は該蓋体2を略垂直に起こした状態に開蓋可能とするヒンジ機構5と、該蓋体2がボックス本体3に対し前記ヒンジ機構5の開閉状態と独立かつ無段階的にスライド調整可能となるように該蓋体2と該ヒンジ機構5との間を連繋させたヒンジアダプター手段とから構成してある。
【0009】
例えば、前記ヒンジアダプター手段は、図3、図4に示す如く、合成樹脂一体射出成形のヒンジアダプター部材6で構成しており、ヒンジ機構5に取付固定される取付面部7と、蓋体2内壁面の該蓋体2の開閉方向に配した断面略L字型の一体リブ構造のガイドレール8にスライド自在に嵌合するよう該取付面部7に接手7Aを介して立設された嵌合穴形状が略L字型の把持部9とを形成することで、ヒンジアダプター部材6の把持部9と前記蓋体2のガイドレール8との噛合断面形状が略L字型状態で夫々連結するようにしている。また、把持部9の側面と取付面部7との間にはガゼットプレート7Bを設けている。
【0010】
また、図4、図5に示す如く、前記蓋体2の開閉位置において、該蓋体2が一定以上の力によりスライド可能となるよう前記ヒンジアダプター部材6にスライドフックロック機構を付与してある。例えば、スライドフックロック機構は、蓋体2の開閉位置において、前記把持部9と前記ガイドレール8とに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部9の大径孔9Aおよび該ガイドレール8の小径孔8Aと、該ガイドレール8の小径孔8A内に一部介入されるよう該把持部9の大径孔9Aに内挿された該小径孔8Aよりも大径の小球10と、該小球10をガイドレール8側に常時付勢させるよう把持部9の外側から大径孔9Aを弾発状に閉塞させた発条体11とを形成している。尚、13はボックス本体3側の蓋体ロック装置、14はボックス本体3内に配した収納用ネットである。
【0011】
次に、本実施例に係る蓋開閉装置の使用の一例を説明するに、例えば郵便局集配係が自転車やオートバイの荷台に固定して使用する集配用キャリーボックスの場合、前記ヒンジアダプター手段とヒンジ機構5との併用にて蓋体2をボックス本体3に対しスライド移動させることで、蓋体2を僅かに開いたままの状態で単に水平方向にスライドさせるのみで開蓋させた水平開蓋状態(図6参照)と、ヒンジ機構5だけで蓋体2を略直立に起立させてヒンジアダプター手段のスライドフックロック機構により直立ロック状態を保持させながら開蓋させた直立開蓋状態(図7参照)と、ヒンジ機構5により開蓋された蓋体2をヒンジアダプター手段によりボックス本体3の側面にスライド退避させて纏め込む纏込開蓋状態(図8参照)との夫々の開閉状態の間を無段階に変更しながら蓋体2を保持することができる。しかも、蓋体2を開放状態のままで走行させても何等支障は生じないのである。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、蓋体を垂直に起立させた開蓋状態と、蓋体を水平に移動させた開蓋状態と、蓋体をボックス本体の脇に纏めた開蓋状態との間で無段階的に保持することができ、閉蓋のときには緩やかに閉めるようにできると共に、自転車やオートバイの荷台に固定されている収納ボックスを開蓋させた状態で走行しても蓋が垂直した状態を保持することができる。しかも、スライドフックロック機構により通常の蓋体開閉使用では、蓋体の直立開蓋状態を安定に保持させておくことができ、一定以上の力を作用させるだけで容易に蓋体がスライドさせられて開蓋状態を変更させることができる。また、ヒンジアダプター部材を一体成形により安価に量産することができる。
加えて、前記スライドフックロック機構は、蓋体の開閉位置において、前記把持部と前記ガイドレールとに互いに同軸貫通状に開穿された該把持部の大径孔および該ガイドレールの小径孔と、該ガイドレールの小径孔内に一部介入されるよう該把持部の大径孔に内挿された該小径孔よりも大径の小球と、該小球をガイドレール側に常時付勢させるよう把持部の外側から大径孔を弾発状に閉塞させた発条体とで構成したことによれば、小球と発条体を利用した簡単なスライドフックロック機構により蓋体の開閉時における直立起立状態の維持と共にスライド途中の蓋体のガイドレールへの保持状態を維持することができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、蓋体とヒンジ機構との嵌合状態の強度耐久性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示した収納ボックス全体の斜視図である。
【図2】
同じく蓋開閉装置の要部を示す斜視図である。
【図3】
同じくヒンジアダプター部材の全体斜視図である。
【図4】
同じくヒンジアダプター部材の縦断面図である。
【図5】
同じくヒンジアダプター部材の全体側面図である。
【図6】
同じく収納ボックスの水平開蓋状態の全体斜視図である。
【図7】
同じく収納ボックスの直立開蓋状態の全体斜視図である。
【図8】
同じく収納ボックスの纏込開蓋状態の全体斜視図である。
【符号の説明】
1…収納ボックス 2…蓋体
3…ボックス本体 4…蓋開閉装置
5…ヒンジ機構 6…ヒンジアダプター部材
7…取付面部 8…ガイドレール
9…把持部 10…小球
11…発条体
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-09-03 
結審通知日 2007-09-05 
審決日 2007-09-19 
出願番号 特願平7-77247
審決分類 P 1 113・ 151- ZA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邊 豊英  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 豊永 茂弘
田中 玲子
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3079414号(P3079414)
発明の名称 蓋開閉装置  
代理人 中村 政美  
代理人 赤尾 直人  
代理人 中村 政美  
代理人 赤尾 直人  
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