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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E04H
管理番号 1168419
審判番号 無効2005-80272  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-09-12 
確定日 2007-11-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第2532820号発明「図書保管管理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2532820号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成 5年 7月20日 優先権主張(特願平5-179126)
平成 6年 3月28日 本件特許出願(特願平6-57208)
平成 8年 6月27日 特許登録
平成17年 9月21日 本件無効審判請求
平成17年11月28日 答弁書
平成18年 3月 6日 弁駁書

第2.本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下順に、「本件発明1」等という。)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】
図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫と、この書庫の各棚領域に収容されそれぞれが収容された棚領域に対応する寸法の複数の図書を収容する複数のコンテナと、この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と、取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより、前記記憶手段の記憶内容に基づいて、該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステーションに移送し、前記要求図書が取り出されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する取り出し制御手段と、返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより、該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに取り出し、前記返却図書が収容されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する返却制御手段とを具備してなることを特徴とする図書保管管理装置。
【請求項2】
前記複数のコンテナは、収容される図書の寸法に応じてそれぞれ大きさの異なる複数種類が用意されることを特徴とする請求項1記載の図書保管管理装置。
【請求項3】
前記書庫の複数の棚領域は、それぞれが同一寸法の前記コンテナを専用に収容する形状に構成されることを特徴とする請求項2記載の図書保管管理装置。
【請求項4】
前記書庫は複数の書棚を有し、各書棚それぞれが複数の棚領域に区分けされることを特徴とする請求項3記載の図書保管管理装置。
【請求項5】
前記書庫は複数の書棚を有し、各書棚単位で複数の棚領域に区分けされることを特徴とする請求項3記載の図書保管管理装置。」

第3.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1?5の特許を無効とするとの審決を求め、その無効理由として(その1)?(その3)を挙げて、証拠方法として次の甲第1号証の1?甲第6号証を提出している。
〈無効理由〉
(その1)
本件発明1?5は、甲第1号証の3(又は甲第2号証の3又は甲第3号証の3)に記載された発明である(特許法第29条1項3号)。
(その2の1)
本件発明1?5は、甲第4号証、及び甲第1号証の3(又は甲第2号証の3又は甲第3号証の3)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条2項)。
(その2の2)
本件発明1?5は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条2項)。
(その3)
本件発明1?5は、甲第6号証の記載からして冒認出願である(123条1項6号)。

〈証拠〉
甲第1号証の1:カリフォルニア州立大学オビアット図書館 第II期 プロジェクト仕様書に関する、1999年4月28日付けダグラス A デービスの公証付き陳述書、及びその訳文
甲第1号証の2:同陳述書に添付されたCONTRACTOR(請負業者)への通知、及び、その訳文
甲第1号証の3:同陳述書に添付されたプロジェクト仕様書及びその抄訳文
甲第2号証の1:カリフォルニア州立大学オビアット図書館 第II期 プロジェクト仕様書に関する、1999年4月29日付けジャック E ブルースの公証付き陳述書、及びその訳文
甲第2号証の3:同陳述書に添付されたプロジェクト仕様書
甲第3号証の1:カリフォルニア州立大学オビアット図書館 第II期 プロジェクト仕様書に関する、1999年4月26日付けケーニス A ロジャーソンの公証付き陳述書、及びその訳文
甲第3号証の2:同陳述書に添付されたCONTRACTOR(請負業者)への通知
甲第3号証の3:同陳述書に添付されたプロジェクト仕様書
甲第4号証:特開平5-151233号公報
甲第5号証:LIBRARY HI TEC、Consecutive Issue 20; Vol.5,No.4 Winter 1987年、表紙、目次、13?22頁掲載の論文のコピー、及びその抄訳文
甲第6号証:BETTER Storage、1993年 No.1 122、表紙、1?7頁、22?23頁のコピー

さらに、請求人は、弁駁書において甲第7号証?甲第10号証を挙げている。
甲第7号証:最高裁判所 昭和36年(オ)第1180号 昭和38年1月29日判決
甲第8号証:東京高等裁判所 昭和33年(行ナ)第40号 昭和36年4月27日判決
甲第9号証:最高裁判所 昭和53年(行ツ)第69号 昭和55年7月4日判決
甲第10号証:カリフォルニア州規則 第24章 第1節 第8条 4-350項 及びその訳文

第4.被請求人の主張
一方、被請求人は、答弁書において、本件審判請求は成り立たないとの審決を求め、特に、甲第1号証の3(甲第2号証の3又は甲第3号証の3も同じ内容である)が頒布された刊行物でないとして、概ね次のように主張する。
〈主張内容〉
(イ)「特許法29条第1項第3号にいう頒布された刊行物とは、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図画その他これに類する情報伝達媒体であって、頒布されたものを指す」(最高裁昭和55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁参照)ものであり、「頒布された刊行物」であるためには刊行物が現実に頒布されていたことが必要であるが、請求人はこの点について何ら立証していない。」(答弁書3頁18?23行)。
(ロ)「宣誓書の内容が真実であることを証明しているものではない。宣誓書は本人の正確な記憶に基づいて宣誓されたとは到底信じるに足りない。」旨(4頁1?13行参照)、「何らの理由もなく、本件無効審判請求前に宣誓書を作成した点も極めて不自然ある。」(同4頁24?27行)。
(ハ)「完成済みのプロジェクト仕様書が1年4ヶ月も経過した後に初めて公衆がみることができるようになった点も不自然である」(同4頁14?23行)。
(ニ)「ロジャーソンの甲第3号証の1の署名と、甲第1号証の3の署名が全く似ておらず、同一人か疑わしい」(同6頁15?18行)。
(ホ)「プロジェクト仕様書(甲第1号証の3)の複写物は公衆に対して頒布により公開する目的で複製されたものではない」旨(同7頁下1行?8頁15行)主張し、東京高裁平成13年(行ケ)第466号、平成16年2月27日付け判決を提示した。

第5.甲号証等記載の内容
(1)甲第1号証の1?3
(1-1)甲第1号証の1は、図書館プロジェクトマネージャーであったダグラス A デービスの公証付き陳述書であり、同陳述書には、1989年3月22日の時点で、いかなる公衆もプロジェクト仕様書(甲第1号証の3)のコピーを入手することができたことが述べられている。
(1-2)甲第1号証の2(又は甲第3号証の2)は、上記陳述書に添付された、カリフォルニア州立大学管理者のCONTRACTOR(請負業者)への通知であって、該通知には、上記プロジェクト仕様書が1989年3月22日以降、所要の保証金を払った後、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校で入手することができ、良好な状態で仕様書が返却された場合には、保証金が大学から返却される旨記載されている。
(1-3)甲第1号証の3(甲第2号証の3又は甲第3号証の3も同じ内容である)には、「プロジェクト仕様書 カリフォルニア州立大学 オビアット図書館 第II期」(訳文1頁)との表題とともに、次の事項が記載されている(注:記載事項については訳文を援用した)。

「図書館設備 - 自動保管取り出しシステム(ASRS)」(訳文4頁2行)の見出しに続いて、
(イ)「パート1 一般」(訳文4頁3行)の章には、
「1.01 業務の内容」(訳文4頁5行)、の項目中に、次の記載がある。
「A.含まれる業務
機器供給者は、
1.6基のミニロードスタッカクレーン。スタッカクレーンは、…容器挿入/引き出し機構を備えなければならない。…
2.棚の構造は、全部で13,260個の容器の収容位置を含む6通路分から構成される。…
5.仕切り、容器アドレス、及びセクターラベルを含む容器。…
7.6つのAS/RS通路端ワークステーション。…
9.コンピュータシステム、コントローラ、周辺機器、及びソフトウエアを含む、在庫チェック(インベントリ)コントロール、コンベアコントロール、及び図書館コンピュータシステムとのインターフェースを供給するためのASRSコントローラ。

からなる、自動保管取り出しシステム(AS/RS)を設計、製作、据付するための、全ての必要なエンジニアリングサービス、労務、材料及び機器を供給しなければならない。」(訳文4頁8行?5頁17行)、

「C.本章の用語の定義
1.本仕様書で文字「LCS」が用いられる場合は常に、LCSは「図書館コンピュータシステム」を意味すると理解されなければならない。
2.本仕様書で文字「ASRS」が用いられる場合は常に、ASRSは「自動保管取り出しシステム」を意味すると理解されなければならない。
3.本仕様書で文字「EAWS」が用いられる場合は常に、EAWSは「通路端ワークステーション」を意味すると理解されなければならない。」(訳文6頁9?18行)、

(ロ)「パート2 製品…」(訳文8頁12行)の章には、
「2.02 ASRSシステムの一般的記載」(訳文11頁1行)の項目中に、次の記載がある。

「A.AS/RSシステムのパラメータ

6.標準システム構成

c.段の数:34段 段の高さ:容器の深さ+次の容器の底面まで最大1.0インチ
7.24インチ×48インチの容器(内側寸法)の底面図を用いる。容器の要求数の分配は下記のようになる。
容器サイズ 要求個数
24インチ幅×48インチ長× 6.0インチ深さ 390
24インチ幅×48インチ長×10.0インチ深さ 7020
24インチ幅×48インチ長×12.0インチ深さ 5070
24インチ幅×48インチ長×15.0インチ深さ 390
24インチ幅×48インチ長×18.0インチ深さ 390 前容器数 13260

10.システムに保管される標準的なマテリアル:本、雑誌、印刷物…といった図書館マテリアル

12.保管されるパートの数
形式 全個数 個数/容器 容器の高さ
1.本と雑誌 950,000 96 10インチ
64 12インチ
64 15インチ

3.児童向図書 8,115 140 12及び
15インチ
4.テキスト 17,095 60 12インチ…」(訳文11頁2行?12頁21行)、

「B.マテリアルフロー…
1.…AS/RSアイテムの要求が、図書館コンピュータシステム(LCS)になされたとき、オーダー要求入力手順が、6つのAS/RSワークステーションの1つで開始される。
2.ワークステーションのオペレータは、要求されたアイテムを、自動的に取り出された容器から取り出し、もし、要求されたアイテムがランダムに保管される場合には、ASRSへ返却するアイテムをインプットする。…
3.要求が入力されたときには、…アイテムのバーコードナンバー…といった情報を含んだスリップが作られる。このスリップに印刷された情報を用いて、オペレータはETV配送車上のコンテナの中に、取り出されたアイテムを入れ、この配送車を図書館内の様々な届け先へ送り出す。
4.通常の要求と返却オペレーションに加えて、LCSとASRSとの間のアイテムの移送が可能である。…
5.ASRSアイテムがサーキュレイションエリアで図書館へ返却されるとき、それらのアイテムは、AS/RSワークステーションへ返却するため、サイズのカテゴリーごとに(例えば、ランダム保管アイテム)…、手動で棚載用台車に事前に格納される。次に、アイテムは、要求が入力されたとき、…AS/RS保管容器に返却される。」(訳文13頁4行?14頁8行)、

「C.AS/RSアイテムの識別…
ASRSに保管される全てのアイテムは、各種レベルにおける識別手段として、下記を用いる。…
b.バーコードナンバー
バーコードナンバーは、下記のように、14桁の番号のキーフィールドである。
3 0700 1014742 0
(注;上記「3」に対して、「ラベルタイプ(アイテムについては、常に’3’)」との表記がある。同様に、「0700」に対して「図書館識別番号…」との表記があり、また、「1014742」に対して「連番」との表記があり、「0」に対して「モジュラス10補完的チェック桁」との表記がある。)

1.このバーコードナンバーは、個々のアイテムを一意的に識別するため、LCSシステムによっても、ASRSシステムによっても両方に用いられる。このバーコードナンバーのラベルは、アイテムの内側カバー上に位置する…。

c.サイズ/通路コード
サイズコード、または通路コードが、各々のアイテムの上端にマークされる。ランダム保管アイテムは、サイズコード(例えば、A、B、またはC)を有し、一方不変ロケーションアイテムは、通路コード…を有する。サイズ/通路コードは、保管のためAS/RSへ返却する前に、図書館マテリアルを手動で事前仕分けするために用いられる。
d.バーコードの最後の2桁
サイズコード、または通路コードに加えて、アイテムバーコードの最後の2桁が、各々のアイテムの上端にマークされる。これらの2桁は、ASRSオペレータが、マテリアルを容器から出すオーダーをするのを容易にするために提供される。」(訳文14頁下3行?17頁6行)、

「D.フルの容器とフルのセクターの定義

2.最も低いレベルの保管の階層は、セクターである。次に高い保管の階層は、容器である。例えば、複数のセクターが容器を構成する。
3.セクターは「フル」、「フルでない」、または「空」の3つの状態のうち、1つの状態をとることができる。
4.オペレータが、例えば、キーボードを打って、セクターがフルであると宣言したときは、ASRSは、このセクターが「フル」であると判断する。ランダムロケーション保管においては、オペレータによってセクターがフルであると宣言されるまで、ASRSは、返却アイテムを、「フルではない」状態のセクターへ割り当てるようにする。

7.容器の全てのセクターがフルであるとき、ASRSは、容器が「フル」であると判断する。この定義によれば、「部分的にフル」の容器は、少なくとも1つの「フルでない」または「空」のセクターを有し、「空」の容器は、容器のセクターが全て空になっている。
8.ランダムロケーション保管においては、ASRSによって、以下の優先規則が用いられる。
a.「フルでない」セクターは、「空」のセクターよりも高い優先順位を有する。
b.同じ容器の中の全ての「フルでない」セクターは、同等の優先順位を有する。
c.「部分的にフル」の容器は、「空」の容器よりも、高い優先順位を有する。
d.「空」のセクターの数が少ない「部分的にフル」の容器は、「空」のセクターの数が多い「部分的にフル」の容器よりも、高い優先順位を有する。
e.「空」のセクターの数が同じである「部分的にフル」の容器は、同等の優先順位を有する。
9.要求されたアイテムがセクターから取り出されたときには、いつでも、要求されたアイテムが取り出される前は、「フル」と宣言されていたとしても、システムは、代わりのランダム保管アイテムを、このセクターへ入れることを許容する。」(17頁7行?18頁下8行)、

同じく「2.03 ソフトウエアの仕様」(訳文18頁下4行)の項目中に、次の記載がある。
「A.コントロールシステムの所掌範囲

2.機能概要線図…
15頁(注:訳文20頁)の線図CSUN-1は、ASRSの機能性の概要と共にLCSに関して目的とするシステム構成を表す。」(19頁5?8行)、

「B.ソフトウエア…
1.本章では、AS/RSコントロールシステム(ASRS)のための機能仕様を記載する。ASRSは、専用のコンピュータシステムであって、…その機能は、6つのAS/RSワークステーションにおけるオペレーションコントロール:つまり、オーダーの書き込みを要求、アイテムの返却、アイテムの移送、在庫チェック、及びセキュリティである。このシステムは、図書館のコンピュータシステム(LCS)とインターフェースを取るようになっている。」(訳文22頁下10?下1行)、

「C.要求手順…
… 1.オンライン公共アクセスカタログ(OLPAC)を用いる利用者は、貸し出しのため、ASRSにロケーションがあるアイテムを要求することができる。全ての要求は、ASRSターミナルターミナルを通して要求される非LCSアイテムを除いて、LCSを通して生じる。LCSは、借り手のIDナンバーを入力させて、利用者の要求を確認する。…確認プロセスが完了すると、アイテム要求のトランザクションが、インターフェースを介して、ASRSへ送信される。…
2.オーダー入力手順…
… a.LCS要求に対するAS/RSの応答
何れかのAS/RSに関して、確認された利用者のアイテム要求トランザクションを、インターフェースを介して受け取ると、直ちに、AS/RSは、要求されたアイテムを伴う容器の取り出しを自動的に開始する。
3.要求された容器の配送…
… a.通路端ワークステーション(EAWS)において、中に入った1以上の要求アイテムを伴って容器が配送される。…
4.要求アイテムの選択…
… a.EAWSオペレータは、アイテムを識別するため、アイテムナンバーの最後の2桁(各アイテムの上端にマークされている)を用いて、アイテムを容器から取り出す。…」(訳文23頁9行?25頁17行)、

「D.マテリアル返却手順…
… 1.EAWSにおける返却アイテムのスキャニング
a.AS/RSへの返却は、アイテムの光学的スキャニングで開始され、…ランダムに保管されるアイテムは、サイズグループ(例えば、A,B,またはC)によって分類され、…サイズグループは、アイテムナンバーの最後の2桁と共に、アイテムの上端に記載される。
… b.同様なスキャニングによって、インターフェースを介する、LCSへのアイテム返却トランザクションの送信が開始される。

3.ランダムロケーションの割り当て…
… a.インターフェイスを介したアイテム返却トランザクションの送信の開始と共に、同じスキャニング(第2.03.D.1章)によって、現在、EAWSにいる容器に対して、正しいサイズグループのランダムに保管されるアイテムを、アイテムがちょうど取り出された容器セクターに自動的に割り当てることを開始する。

c.オペレータがアイテムを挿入した後、ASRSは、オペレータにその容器をその保管ロケーションへ返却するように促す。

e.オペレータのオプションとして、容器が配送されたときに、アイテムを取り出さないで、アイテムをAS/RSへ返却することができる。この場合には、第2.02.D章に記載された優先順位を用いて、収容スペースが利用可能な(フルでない)容器を取り出す。」(訳文28頁2行?29頁下1行)。

また、甲第1号証の3の原文58頁の次に、「カリフォルニア州立大学、ノースリッジAS/RS-オビアット図書館の典型的な通路端ワークステーション」が、図面として記載されている。

(2)甲第2号証の1は、カリフォルニア州の州建築部(以前は、州建築事務所)、ロサンジェルス地域事務所の地域マネージャーであるジャック E ブルースの公証付き陳述書であり、同陳述書には、1988年8月25日にプロジェクト仕様書(甲第2号証の3)に州建築部のスタンプを押し、その日付が、本仕様書2頁右下のコーナーのスタンプによって示され、カリフォルニア州規則集 第24章 第1節 第8条 4-350項に従って、本仕様書が州建築部に提出された時点で公知文献であることが述べられている。

(3)甲第3号証の1は、プロジェクト仕様書(甲第3号証の3)を作成したエンジニアリング会社レオダリー社の副社長であるケーニス A ロジャーソンの公証付き陳述書であり、同陳述書には、1989年3月22日に、関心を持つ入札者が本仕様書を入手できるようになったこと、及び入札者には守秘義務が課せられなかったことが述べられている。

(4)甲第4号証は、本件出願前(優先日前)に日本国内で頒布された刊行物であり、図面と共に次のことが記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば大型図書館等において多量の図書の貸し出し及び返却の管理を容易に行なえるようにした図書入出庫管理装置に関する。」、
「【0003】そこで、従来では、例えば特公昭61-4723号公報に示されるように、図書を1冊単位で規格化された大きさのケースに収容し、このケースを複数個コンテナに収容してコンテナ単位で自動入出庫させることが考えられている。このように、図書を1冊単位毎に自動でコンテナから取り出しあるいは返却する際にケースに入れることにより、ハンドリングやロケーションの管理が容易になり、個別にて搬送する際にも図書を保護することができる。この場合、各ケースには、バーコードが付されており、どのケースがどのコンテナに収容されているかが全て記憶されている。
【0004】そして、図書の取り出しが要求されると、その図書の入ったケースを収容するコンテナが書庫から自動出庫され、さらにそのコンテナから所望の図書の入ったケースが自動出庫される。すると、図書館員は、自動出庫されたケースから図書を取り出して利用者に渡し、ここに図書の貸し出しが行なわれる。
【0005】また、図書が返却された場合、図書館員は、返却された図書を元のケースに収容し、そのケースを任意の空きのあるコンテナに自動入庫させる。すると、コンテナの入庫時に、そのコンテナに収容された全てのケースのバーコードが読み取られ、ケースの位置(ロケーション)を示す記憶内容が更新されて、ここに図書の返却が行なわれる。
【0006】しかしながら、上記のような従来の入出庫管理システムでは、図書とケースとが1対1に対応しているので、図書が返却される毎に大量の空きケースの中からその図書を収容すべきケースを探さなければならず、作業が非能率的になるという問題が生じている。すなわち、図書の貸し出しには、館内貸し出し(当日貸し出し当日返却)と館外貸し出し(当日貸し出し後日返却)とがあり、貸し出し件数が多いと空ケースも相当数になる。このため、ケースと図書とが常に固定した対応関係にあると、図書が返却された場合その相当数のケースの中から返却された図書に対応するケースを探し出さなければならず作業の効率が悪くなるとともに、多量の空ケースを常時カウンター付近に保管する必要も生じる。」
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の入出庫管理システムでは、図書とケースとの対応関係を保持する必要があり、そのためにせっかく自動化を図りながらも、その利点を十分に活かしきれないという問題を有している。
【0009】そこで、この発明は上記事情を考慮してなされたもので、図書とケースとの対応関係を固定的なものとせずに、返却された図書を任意のケースに収容して書庫に入庫することができ、貸し出し及び返却時の作業を容易化することができる極めて良好な図書入出庫管理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明に係る図書入出庫管理装置は、識別情報の付された図書と、この図書を収容する識別情報の付された自動搬送用のケースと、このケースを複数収容し得る書庫と、この書庫に収容された図書に対する収容位置情報を含む図書情報を、図書に付された識別情報と該図書が収容されるケースに付された識別情報とを組み合わせた情報とともに記憶する記憶手段と、この記憶手段の記憶内容に基づいて書庫から出庫すべき図書の収容されたケースを自動的に取り出して出庫する自動搬出手段と、書庫に入庫すべき図書に付された識別情報と該図書を収容し得る任意のケースに付された識別情報とを読み取って、該図書に対する新たな図書情報を生成する生成手段と、この生成手段で生成された図書情報に基づいて書庫に入庫すべき図書の収容されたケースを自動的に書庫に入庫する自動搬入手段とを備えるようにしたものである。」
「【0012】
【実施例】…図1は、この実施例で説明する図書入出庫管理システムの全体的な構成を示している。すなわち、図中11は例えば図書館の3階の書庫内に設置された書棚で、複数のコンテナ12,12,……が収容されている。これらコンテナ12,12,……には、それぞれ複数個のケース13,13,……が収容されている。各ケース13,13,……には、それぞれ1冊の図書が収容される。また、各ケース13,13,……は、規格化された一定の大きさのものが基準となっており、この基準の大きさに対して収納する図書の厚みによって幾種類かの厚みを有するものが用意されている。
【0013】ここで、上記書棚11の前面には、レール14に案内されて走行するスタッカークレーン15が設置されている。このスタッカークレーン15は、図書の出庫時に、書棚11からコンテナ12を取り出して出庫用ラックステーション16に移送するとともに、出庫用ラックステーション16に置かれたコンテナ12を、書棚11の元の位置に移送して入庫する動作を行なうものである。また、スタッカークレーン15は、図書の入庫時に、書棚11からコンテナ12を取り出して入庫用ラックステーション17に移送するとともに、入庫用ラックステーション17に置かれたコンテナ12を、書棚11の元の位置に移送して入庫する動作とを行なうものである。
【0014】これら出庫用及び入庫用ラックステーション16,17に沿って、エンドレスの搬送レール18が設置されている。この搬送レール18上には、複数のピッキング装置19,19,……が走行自在に支持されている。これらピッキング装置19,19,……は、出庫用ラックステーション16に設置されたコンテナ12から所望のケース13を取り出し、搬送レール18上を移動して2階向搬出口20及び1階向搬出口21のいずれかに移送する動作と、2階向搬入口22及び1階向搬入口23のいずれかに搬送されたケース13を、入庫用ラックステーション17に置かれたコンテナ12の空きスペースに収容する動作とを行なうものである。…
【0016】…1階向搬出口21に移送されたケース13は、図示しない垂直搬送機を介して図書館の1階に設置されたケース搬入口28に搬送され、搬送コンベア29を介してカウンターステーション30または1階ステーション31に移送される。そして、カウンターステーション30では、図書館員によってケース13から図書が取り出されて利用者への貸し出しに供され、1階ステーション31では、図書館員によってケース13から図書が取り出され利用者に渡されて閲覧に供される。この場合、空ケース13は、カウンターステーション30及び1階ステーション31にそれぞれ保管される。
【0017】また、返却された図書及び閲覧後の図書は、カウンターステーション30及び1階ステーション31で図書館員によってケース13に収容され、搬送コンベア29を介してケース搬出口32に移送された後、図示しない垂直搬送機を介して3階の1階向搬入口23に移送され、出庫と逆の過程によって書棚11へ返却される。」、
「【0018】図2は、上記出庫用ラックステーション16に運ばれたコンテナ12からピッキング装置19にケース13を取り出す状態を示している。すなわち、コンテナ12は、その図中前面及び上面の開放された略箱状に形成されており、それぞれ図書33を収容した複数のケース13,13,……が縦置きに配列されて収容されている。ここで、各ケース13,13,……は、図3に示すように、図中上面の開放された略箱状に形成されており、図書33を完全に覆うように形成されている。そして、各ケース13,13,……及び各図書33には、それぞれバーコード34,35が付されている。…」、
「【0020】ここで、図4は図1に示した図書入出庫管理システムの制御システムを示している。すなわち、図中39は中央処理装置で、例えばマイクロプロセッサ等を内蔵している。この中央処理装置39には、まず、バスライン40を介して、…ファイルアダプタ46を経て図書情報の記憶されたハードディスク47…が接続されている。
【0021】また、上記中央処理装置39には、…統括制御盤51…が接続されている。この統括制御盤51は、…前記スタッカークレーン15,ピッキング装置19,垂直搬送機及び搬送コンベア25,29等の動作を統括的に制御するもの…のである。」、
「【0026】上記のような構成となされた図書入出庫管理システムにおいて、以下、その動作を説明する。まず、図6は、図書33の貸し出し動作を説明するためのフローチャートである。すなわち、図書33の貸し出し動作は、利用者が貸し出しを要求する図書33を、カウンターステーション30の図書館員に伝えることから開始(ステップS1)される。すると、カウンターステーション30の図書館員は、ステップS2で、コンソール54を操作して要求された図書33のコードを入力する。
【0027】要求図書33のコードが入力されると、中央処理装置39は、ステップS3で、ハードディスク47に記憶された図書情報から要求図書33が書棚11に在庫しているか否か、つまり現在貸し出し中であるか否かを判別し、判別結果をディスプレイ55に表示する。…
【0028】…要求図書33が書棚11に在庫している(YES)場合には、中央処理装置39は、ステップS5で、統括制御盤51に要求図書33を書棚11から取り出すための搬出指令を発生する。すると、統括制御盤51の制御によって、…各スタッカークレーン15,ピッキング装置19,垂直搬送機65及び搬送コンベア25,29等が動作され、ステップS6で、要求図書33がケース13に収容された状態で書棚11からカウンターステーション30まで搬出されて、カウンターステーション30内に設定された搬入口から図書館員の手元に運ばれる。
【0029】そして、カウンターステーション30の図書館員は、ステップS7で、バーコードリーダ56により搬出されてきたケース13に付されたバーコード34を読み取る。すると、中央処理装置39は、ステップS8で、読み取られたバーコード34が要求図書33のコードに対応しているか否かを判別する。…
【0030】…読み取られたケース13のバーコード34が要求図書33のコードに対応していれば(YES)、図書館員は、ステップS11で、バーコードリーダ56により利用者の持つ利用者カードに付されたバーコードを読み取った後、ステップS12で、ケース13から図書33を取り出しバーコードリーダ56によりその図書33に付されたバーコード35を読み取る。すると、中央処理装置39は、ステップS13で、例えばハードディスク47内に設定された図書貸し出しリスト記憶領域に、利用者カードのバーコードデータと貸し出す図書33のバーコード35データとを登録するとともに、その図書33に対してハードディスク47内に記憶されているロケーションやケース13と図書33との対応コード等の図書情報を削除する。
【0031】その後、図書館員は、ステップS14で、図書33と利用者カードとを利用者に渡し、ステップS15で空ケース13を所定場所に保管して、ここに、貸し出し動作が終了(ステップS16)される。」、
「【0032】次に、図7は、図書33の返却動作を説明するためのフローチャートである。すなわち、図書33の返却動作は、利用者が返却する図書33と利用者カードとをカウンターステーション30に持ってくることから開始(ステップS17)される。すると、カウンターステーション30の図書館員は、ステップS18で、利用者の持ってきた図書33と利用者カードとを受け取り、ステップS19で、コンソール54を操作してその図書33のコードを入力する。このコード入力がなされると、中央処理装置39は、ハードディスク47内に設定された図書貸し出しリスト記憶領域から、その図書33の貸し出し登録を削除する。
【0033】そして、図書館員は、ステップS20で利用者カードを利用者に返却した後、ステップS21で、ケース保管場所から返却された図書33を収容するのに相応しい任意のケース13を選んで取り出し、バーコードリーダ56によりそのケース13に付されたバーコード34と図書33に付されたバーコード35とを読み取る。すると、中央処理装置39は、ステップS22で、ケース13から読み取ったバーコード34データと図書33から読み取ったバーコード35データとを組み合わせて、ハードディスク47に格納登録する。
【0034】次に、図書館員は、ステップS23で、図書33をケース13に収容しカウンターステーション30内に設定された搬出口にセットした後、ステップS24で、そのケース13の書棚11内における格納ロケーションを設定しハードディスク47に登録する。すると、中央処理装置39は、ステップS25で、統括制御盤51にケース13を書棚11に返却するための格納指令を発生する。そして、統括制御盤51の制御によって、…各スタッカークレーン15,ピッキング装置19,垂直搬送機65及び搬送コンベア25,29等が動作されて、ステップS26で、図書33がケース13に収容された状態で所定のコンテナ12に入れられ書棚11に入庫され、ここに、返却動作が終了(ステップS27)される。」、
「【0042】次に、図10は、上記実施例の入出庫管理システムに付加して好適する、コンテナ12単位の入出庫管理システムを示している。すなわち、書棚74からスタッカークレーン75によって出庫されたコンテナ12は、出庫用ラックステーション76,搬送コンベア77,コンテナ搬出口78及び図示しない垂直搬送機を介した後、2階向コンテナ搬入口79及び搬送コンベア80を介して2階ステーション26に搬送されるとともに、1階向コンテナ搬入口81及び搬送コンベア82を介してカウンターステーション30または1階ステーション31に搬送される。
【0043】また、カウンターステーション30または1階ステーション31のコンテナ12は、搬送コンベア83を介して1階向コンテナ搬出口84に搬送され、2階ステーション26のコンテナ12は、搬送コンベア85を介して2階向コンテナ搬出口86に搬送される。そして、1階向コンテナ搬出口84または2階向コンテナ搬出口86に搬送されたコンテナ12は、図示しない垂直搬送機を介して3階のコンテナ搬入口87に移送され、搬送コンベア88を介して入庫用ラックステーション89に移送された後、スタッカークレーン75により書棚74に入庫される。」。

したがって、上記記載事項、特に、前提となる従来技術、並びに、【図1】?【図9】の実施例や【図10】の実施例の記載事項らを総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲4発明)
「書棚11を有する書庫と、書庫内に設置された書棚11に複数の図書33を(ケース13とともに)収容する複数のコンテナ12と、この複数のコンテナ内の図書33の前記書庫内における格納ロケーションと各コンテナ12に収容された複数の図書に付されたバーコード35のデータとを(ケース13のデータとともに)対応させて記憶するハードディスク47と、中央処理装置39と、貸し出しが要求された図書33のコードを入力することにより、前記ハードディスク47の記憶内容に基づいて、該要求図書33が(ケース13とともに)収容されているコンテナ12を前記書庫から取り出してステーション(例えば、第10図の26,30,31)に自動的に移送し、前記要求図書33に対する格納ロケーションや各コンテナ12に収容されたケースと図書のデータを対応させて記憶していた前記ハードディスクの記憶内容を削除する制御手段と、返却が要求された図書に付されたバーコード35のデータとを(任意のケース13のデータとともに)入力し、該返却図書を収容したケース13の書棚11内における格納ロケーションをハードディスク47へ新たに記憶させることにより、前記返却図書が(ケース13とともに)収容されたコンテナを書棚11内における格納ロケーションに自動的に移送する手段とを具備する図書入出庫管理装置。」

(5)甲第9号証である最高裁・昭和55年7月4日判決には、次のことが判示されている。
「特許法29条第1項第3号にいう頒布された刊行物とは、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図画その他これに類する情報伝達媒体であって、頒布されたものを指すところ、ここに公衆に対し頒布により公開することを目的として複製されたものであるということができるものは、必ずしも公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなものに限られるとしなければならないものではなく、右原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され、かつ、その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整つているならば、公衆からの要求をまつてその都度原本から複写して交付されるものであつても差し支えないと解するのが相当である。」

(6)甲第10号証であるカリフォルニア州規則(第24章 第1節 第8条 4-350項)には、次のことが規定されている。
「法令サービス部による学校建物の建築の監理に関する記録は公開の記録であり、就業時間中閲覧に供される。法令で定める場合を除き、文書は州建築部の保管から持ち出すことはできない。」

第6.甲第1号証の3(甲第2号証の3又は甲第3号証の3らと内容が同じなので以下、これらを、単に「甲第1号証の3ら」という。)が、本件出願前に頒布された刊行物といえるか否かについて

被請求人は、要するに、甲第1号証の3らのプロジェクト仕様書につき、その存在自在や記載内容を争うのではなく、同甲第1号証の3らのプロジェクト仕様書が、本件の特許出願前に頒布された刊行物といえるか否かについて争っているといえるから、以下、この点につき検討する。

ところで、甲第1号証の1は、図書館プロジェクトマネージャーであったダグラス A デービスの公証付き陳述書であり、同陳述書には、プロジェクト仕様書(甲第1号証の3ら)が1989年3月22日の時点で、いかなる公衆も同仕様書のコピーを入手することができたことが述べられている。
そして、甲第2号証の1は、カリフォルニア州の州建築部(以前は、州建築事務所)、ロサンジェルス地域事務所の地域マネージャーであるジャック E ブルースの公証付き陳述書であり、同陳述書には、1988年8月25日にプロジェクト仕様書(甲第2号証の3)に州建築部のスタンプを押し、その日付が、本仕様書2頁右下のコーナーのスタンプによって示されているとともに、カリフォルニア州規則集 第24章 第1節 第8条 4-350項の規定(甲第10号証参照)に基づいて、本仕様書が州建築部に提出された時点で公知文献であることが述べられている。
また、甲第3号証の1は、プロジェクト仕様書(甲第3号証の3)を作成したエンジニアリング会社レオアダリー社の副社長であるケーニス A ロジャーソンの公証付き陳述書であり、同陳述書には、1989年3月22日に、関心を持つ入札者が本仕様書を入手できるようになったこと、及び入札者には守秘義務が課せられなかったことが述べられている。
さらに、甲第1号証の2(又は甲第3号証の2。内容が同じなので以下、「甲第1号証の2」という。)は、上記陳述書に添付された、カリフォルニア州立大学管理者のCONTRACTOR(請負業者)への通知であって、該通知には、上記プロジェクト仕様書が1989年3月22日以降、所要の保証金を払った後、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校で入手することができることが、良好な状態で仕様書が返却された場合には保証金が大学から返却されることと併せて記載されている。

そうすると、上記甲第1号証の1、甲第2号証の1、甲第3号証の1及び甲第1号証の2によれば、甲第1号証の3らのプロジェクト仕様書は、その原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され、かつ、その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される状況が整っていたということが推認でき、このような状況にあれば公衆からの要求をまってその都度原本から複写することができたということが推認できるから(甲第9号証判決参照)、甲第1号証の3らは、少なくとも当該仕様書が州建築部に提出された日より以降の1989年3月22日に、いいかえれば、本件特許出願の優先日(1993年7月20日)前の時点で頒布された刊行物であったということができる。

なお、被請求人は、答弁書において「特許法29条第1項第3号にいう頒布された刊行物とは、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図画その他これに類する情報伝達媒体であって、頒布されたものを指す」(最高裁昭和55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁参照)ものであり、「頒布された刊行物」であるためには刊行物が現実に頒布されていたことが必要であるが、請求人はこの点について何ら立証していない。」(3頁18?23行)と主張する。
しかしながら、上記判決(甲第9号証判決参照)は、上記文章に引き続いて「ここに公衆に対し頒布により公開することを目的として複製されたものであるということができるものは、必ずしも公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなものに限られるとしなければならないものではなく、右原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され、かつ、その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整つているならば、公衆からの要求をまつてその都度原本から複写して交付されるものであつても差し支えないと解するのが相当である。」と説示されているとおり、上記「頒布された刊行物」とは必ずしも現実に(例えば、具体的な第三者に対して)頒布されていた事実の存在が要件となるものではないから、被請求人の主張は採用できない。

また、被請求人は、答弁書において「プロジェクト仕様書(甲第1号証の3ら)の複写物は公衆に対して頒布により公開する目的で複製されたものではない」旨(7頁下1行?8頁15行)主張し、東京高裁平成13年(行ケ)第466号、平成16年2月27日付け判決を提示する。
しかしながら、公開の対象者が公衆(不特定多数の第三者)であるとはいっても、現実的には、例えば、特許公報などはその分野に関心のある者(当業者)のみが入手しようとするものであり、これと同様な理由から、上記プロジェクト仕様書は、不特定多数の第三者に公開されたといえるものであるとともに、上記判決は、書面の表紙に宛先として特定人の名前の記載があって、特定の顧客に対して作成されたことが明らかな事案に対して、仕様書の頒布性を否定したものであるから、本件に該当する事案につき判示したものでないことも明らかである。

さらに、被請求人は、答弁書において「宣誓書の内容が真実であることを証明しているものではない。宣誓書は本人の正確な記憶に基づいて宣誓されたとは到底信じるに足りない。」旨(4頁1?13行参照)や、「何らの理由もなく、本件無効審判請求前に宣誓書を作成した点も極めて不自然ある。」旨(4頁24?27行)主張する。
しかしながら、これらの宣誓書(甲第1号証の1、甲第2号証の1、甲第3号証の1は、「カリフォルニア州立大学管理者のCONTRACTOR(請負業者)への通知」(甲第1号証の2参照)について、それぞれの立場で述べたものであって、これらの陳述にも矛盾はなく、甲第1号証の3らが本件出願前に頒布された刊行物であるという点につき補強証拠に十分なり得るものである。特に、甲第3号証の1によれば、カリフォルニア州規則の、第24章、第1節、第8条、4-350項の規定(甲第10号証参照)に基づいて、プロジェクト仕様書(甲第1号証の3ら)が、1988年8月25日に州建築部に提出された時点で公知文献となった旨を陳述しているのであるから、甲第10号証は現在の州規則ではあるものの、甲第1号証の3らが頒布された刊行物であると推認することを十分に裏付けるに足るものである。

同様に、被請求人は、答弁書において「完成済みのプロジェクト仕様書が1年4ヶ月も経過した後に初めて公衆がみることができるようになった点も不自然である」旨(4頁14?23行)主張するが、設計会社(レオアダリー社)が州建築部に当該仕様書を提出しても、直ちに、州建築部内での必要な検討等が完了するともいえないし、同部内や議会の承認を得たりする等の手続き上の事情も考慮すれば、多少の年月が経過することは却って自然であって、不自然であるとまではいうことができない。
また同様に、被請求人は、答弁書において「ロジャーソンの甲第3号証の1の署名と、甲第1号証の3ら(又は甲第2号証又は甲第3号証)の署名が全く似おらず、同一人か疑わしい」旨(6頁15?18行)主張するが、これらの署名の全てが、例えば、甲第2号証(甲2の1)の宣誓書のように、その署名すべき箇所が書類上に明確に定められた書類へ行ったものではなく、そのような多様な書類への署名の表記態様は、仮に同一人によるものであっても、年月の経過による時期的なずれがある場合や署名に求められる状況に応じて(イニシャルによるものかフル・ネームによるものとするか等によっても)多少異なることもあり得るといえるから、全く同一の表記でないことをもって、直ちに疑わしいとまではいうことができない。

第7.対比・判断
最初に、無効理由(その2の1)について、検討する。

(1)無効理由(その2の1:特許法第29条2項)について
(1-1)本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比すると、
甲4発明の「格納ロケーション」が本件発明1の「収容位置」に相当し、以下、同様に、「図書に付されたバーコード35」が「図書コード」に、「ハードディスク47」が「記憶手段」に、「貸し出し」が「取り出し」に、「図書入出庫管理装置」が「図書保管管理装置」に、それぞれ相当するといえる。
また、甲4発明の書庫は書棚11を有するから、当該書棚11が(複数の)棚領域を構成することは明らかである。
同様に、甲4発明のコンテナは、書庫の各領域に収容された複数の図書を、その移送に際して収容することも明らかであり、また、甲4発明の「中央処理装置39」は、貸し出しが要求された図書を取り出すための制御手段と返却が要求された図書を返却制御する手段とを具備することも自明な事項である。
さらに、甲4発明の「この複数のコンテナ内の図書33の前記書庫内における格納ロケーションと各コンテナ12に収容された複数の図書に付されたバーコード35のデータとを(ケース13のデータとともに)対応させて記憶するハードディスク47」と、本件発明1の「この複数のコンテナの前記書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段」とは、共に「書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段」である点で共通するということができる。
そうすると、甲4発明の「貸し出しが要求された図書33のコードを入力することにより、前記ハードディスク47の記憶内容に基づいて、該要求図書33が(ケース13とともに)収容されているコンテナ12を前記書庫から取り出してステーション(例えば、第10図の26,30,31)に自動的に移送し、前記要求図書33に対する格納ロケーションや各コンテナ12に収容されたケースと図書のデータを対応させて記憶していた前記ハードディスクの記憶内容を削除する」点と、本件発明1の「取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより、前記記憶手段の記憶内容に基づいて、該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステーションに移送し、前記要求図書が取り出されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する」点とは、共に「取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより、前記記憶手段の記憶内容に基づいて、該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステーションに移送し、前記要求図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する」点で共通するといえる。
同様に、甲4発明の「返却が要求された図書に付されたバーコード35のデータを(任意のケース13のデータとともに)入力し、該返却図書を収容したケース13の書棚11内における格納ロケーションをハードディスク47へ新たに記憶させる」点と、本件発明1の「返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより、該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに取り出し、前記返却図書が収容されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する」とは、共に「返却が要求された図書の情報を入力することにより、前記返却図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する」点で共通するといえる。

そうすると、両者は、
「複数の棚領域を有する書庫と、この書庫の各棚領域に収容された複数の図書を収容する複数のコンテナと、書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段と、取り出しが要求された図書の図書コードを入力することにより、前記記憶手段の記憶内容に基づいて、該要求図書が収容されているコンテナを前記書庫から取り出してステーションに移送し、前記要求図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する取り出し制御手段と、返却が要求された図書の情報を入力することにより、前記返却図書に関する前記記憶手段の記憶内容を更新する返却制御手段とを具備する図書保管管理装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナに関して、本件発明1は「図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫」と「それぞれが収容された棚領域に対応する寸法の複数の図書を収容する複数のコンテナ」とを採用しているのに対し、甲4発明は、このような図書の寸法別に分類された複数の棚領域や棚領域に対応する寸法の図書を収容する複数のコンテナを用いていない点。
(相違点2)
要求図書の取り出し制御や返却図書の返却制御と書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する記憶手段に関して、本件発明1は、要求図書の取り出し制御に際しては「前記要求図書が取り出されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する」と共に、返却図書の返却制御に際しては「返却が要求された図書の寸法情報を入力することにより、該返却図書の寸法に対応する複数の前記コンテナの中から空きのあるコンテナを前記書庫から取り出して前記ステーションに取り出し、前記返却図書が収容されたコンテナに対する前記記憶手段の記憶内容を更新する」ものであるのに対し、甲4発明は、このような図書の寸法情報の入力や図書の寸法に対応するコンテナに対する記憶手段の記憶内容を更新する構成を具備していない点。

そこで、上記相違点1?2につき、以下を検討する。

(相違点1について)
ところで、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証の3らには、本件発明1と同一技術分野に属する技術である図書入出庫管理装置(図書館設備ー自動保管取り出しシステム(ASRS))において、24インチ幅×48インチ長の底面を有し、高さの異なる(6.0インチ?18.0インチ)5種類のコンテナ(容器)を用いることが記載されていると共に(訳文11頁19?27行)、複数の図書(本、雑誌等)がこれらの高さの異なるコンテナ(容器)にそれぞれ保管されることが記載されている(訳文12頁11?13頁1行)。
そして、複数の図書の内の「ランダム保管アイテム」と称する図書は、その寸法(サイズコード、例えば、A、B、またはC)によって分類されることが記載されている(訳文16頁下5行?17頁1行及び28頁8?9行)。
そうすると、甲第1号証の3らには、図書入出庫管理装置において、図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法の複数種類のコンテナ(容器)を用いることが記載されているということができる。
また、同甲第1号証の3らには、書架の構造に関して、「2.棚の構造は、全部で13,260個の容器の収容位置を含む6通路分から構成される。」(訳文4頁14?15行)、「段の数:34段 段の高さ:容器の深さ+次の容器の底面まで最大1.0インチ」(訳文11頁17?18行)と記載されており、これらの「容器の深さ+次の容器の底面まで最大1.0インチ」という高さを有する段が34段もあることから、これらの容器の寸法別に分類された複数の段が複数の棚領域を構成しているということができ、当該棚領域の集合体が書庫であるということができる。
以上のことから、甲第1号証の3らには、上述の図書入出庫管理装置において、図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法の複数種類のコンテナ(容器)を収容するための、図書の寸法別に分類された複数の棚領域を有する書庫が記載されているといえる。

してみると、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲4発明におけるその書庫の複数の棚領域と複数の図書を収容する複数のコンテナにつき、甲第1号証の3らに記載のものを適用することにより当業者が容易に想到し得たものといえる。

(相違点2について)
同じく、甲第1号証の3らには、自動保管取り出しシステム(ASRS)がコンピュータシステムからなること(訳文4頁6行)、容器が「容器(コンテナ)アドレス」を有すること(訳文4頁21行、24頁14行、27頁2行)、アイテム(図書)がバーコードナンバーやサイズコードを有すること(訳文13頁16?17行、14頁下3行?15頁下5行、16頁下5行?17頁1行、24頁14行及び28頁8?9行)が記載されている。
また、甲第1号証の3には、ランダムロケーション保管においては、空、部分的にフル、及び、フルのコンテナ(容器)取り出しの優先規則があること(訳文18頁3?15行)、AS/RS(自動保管取り出しシステム)は、要求された図書(アイテム)を伴うコンテナ(容器)の取り出しを自動的に開始すること(訳文24頁1?4行)、ランダムに返却保管される図書(アイテム)を、図書がちょうど取り出された容器セクターに自動的に割り当てること(訳文28頁下1行?29頁5行)らが記載されている。
そうすると、甲第1号証の3には、図書入出庫管理装置において、自動保管取り出しシステム(ASRS)らに使用されるコンピュータシステムが、複数の容器に関する「容器アドレス」、及び、複数の図書(アイテム)に関する「図書コード」(バーコードやサイズコード)等の情報を利用することが記載されているといえる。
そして、上記AS/RS(自動保管取り出しシステム)に上述の図書の取り出しや返却保管のための所定の動作を行わせるためには、空、部分的にフル、及び、フルの状態にある複数のコンテナが、言い換えれば、返却図書を収容可能な空きスペースのあるコンテナが、書庫内の何処にあるかを示すところの収容位置の情報のみならず、該収容位置のコンテナ内に収容されている図書らが如何なるものであるかを示すところの図書コードとを対応させた情報を、そのコンピュータシステムが記憶していることが必要であることは、当業者にとって自明な事項であるといえる。
してみると、相違点2に係る本件発明1の構成は、上記「相違点1について」で説示したところの甲4発明に甲第1号証の3らに記載の寸法別のコンテナ等の構成を適用するに際して、同じく甲第1号証の3らに記載の寸法別のコンテナ等の構成を用いたところの要求図書の取り出し制御、返却図書の返却制御、並びに書庫内における収容位置と各コンテナに収容された複数の図書の各図書コードとを対応させて記憶する手法を採用することにより、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。
(ちなみに、本件発明1の「コンテナに対する前記記憶手段の記憶内容」と規定された点の技術的意義が必ずしも明確でないが、本件特許明細書の段落【0051】には、どのコンテナも書棚における収容位置は固定されていることが記載され、同じく、段落【0056】には、図書コードとコンテナ固有のコンテナ番号とサブコンテナ固有のサブコンテナ番号とを組み合わせ、その組み合わせたデータをメモり等に登録する旨が記載されていることから、上記「コンテナ番号」は、実質的に、コンテナの書庫内における収容位置を特定する情報も含んでいるものであるということができ、本件発明1の「コンテナに対する前記記憶手段の記憶内容」と規定された点は、「特定のコンテナの書庫内における収容位置と、このコンテナに収容された図書の図書コードとを、それぞれ対応させて記憶した記憶手段の記憶内容」を実質的に意味するものと解することができ、この理解を前提として、上記のとおり判断した。)

したがって、本件発明1は、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(1-2)本件発明2について
本件発明2は本件発明1を引用する発明であるから、本件発明2と甲4発明とを対比すると、両者は上記一致点で一致するとともに、上記相違点1?2に加えて、次の点で相違する。

(相違点3)
本件発明2が「複数のコンテナは、収容される図書の寸法に応じてそれぞれ大きさの異なる複数種類が用意される」のに対し、甲4発明はこのような限定のない点。

(相違点3について)
上記相違点1において検討したように、甲第1号証の3らに、高さの異なる5種類のコンテナ(容器)が記載され(訳文11頁19?27行)、複数の図書(本、雑誌等)が高さの異なるコンテナ(容器)に保管されることが記載され図書(ランダム保管アイテム)は、寸法(サイズコード、例えば、A、B、またはC)によって分類されることが記載されており、図書入出庫管理装置において、図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法の複数種類のコンテナ(容器)を用いることが記載されているということができる。
そうすると、相違点3に係る本件発明2の構成は、甲4発明に甲第1号証記載のものを適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本件発明2は、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(1-3)本件発明3について
本件発明3は本件発明2を引用する発明であるから、本件発明3と甲4発明とを対比すると、両者は上記一致点で一致するとともに、上記相違点1?3に加えて、次の点で相違する。
(相違点4)
本件発明3が「書庫の複数の棚領域は、それぞれが同一寸法の前記コンテナを専用に収容する形状に構成される」のに対し、甲4発明はこのような限定のない点。

(相違点4について)
上記本件発明2の相違点3において検討したように、甲第1号証の3らには、図書入出庫管理装置において、図書の寸法別に分類された図書に対応する寸法の複数種類のコンテナ(容器)を用いることが記載されている。
そして、このような図書を収容する複数種類の寸法を有するコンテナ(容器)を、書庫の複数の棚領域がそれぞれが同一寸法のコンテナを専用に収容する形状のものと構成することは、当業者が当然に配慮して採用する設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明3は、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(1-4)本件発明4について
本件発明4は本件発明3を引用する発明であるから、本件発明4と甲4発明とを対比すると、両者は上記一致点で一致するとともに、上記相違点1?4に加えて、次の点で相違する。
(相違点5)
本件発明4が「書庫は複数の書棚を有し、各書棚それぞれが複数の棚領域に区分けされる」のに対し、甲4発明はこのような限定のない点。

(相違点5について)
甲第1号証の3ら(訳文12頁11?21行)には、
「12.保管されるパートの数
形式 全個数 個数/容器 容器の高さ
1.本と雑誌 950,000 96 10インチ
64 12インチ
64 15インチ

3.児童向図書 8,115 140 12及び
15インチ
4.テキスト 17,095 60 12インチ…」と記載されている。
そうすると、甲4発明において、このような多くのコンテナ(容器)を複数の書棚に収容しようとすれば、図書の収容効率を向上させるという周知の課題からして、「各書棚それぞれが複数の棚領域に区分けされる」ように構成することも、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明4は、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(1-5)本件発明5について
本件発明5は本件発明3を引用する発明であるから、本件発明5と甲4発明とを対比すると、両者は上記一致点で一致するとともに、上記相違点1?4に加えて、次の点で相違する。
(相違点6)
本件発明5が「書庫は複数の書棚を有し、各書棚単位で複数の棚領域に区分けされる」のに対し、甲4発明はこのような限定のない点。

(相違点6について)
甲4発明において、上述の甲第1号証の3ら(訳文12頁11?21行)に記載したような多くのコンテナ(容器)を複数の書棚に収容しようとすれば、図書の収容効率を向上させるという周知の課題からして、「各書棚単位で複数の棚領域に区分けされる」ように構成することも、当業者が採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明5は、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

そして、本件発明1?5の奏する効果も、甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された事項から当業者が予測することができたものであって、格別なものということができない。

第8.むすび
以上のとおり、他の理由及び証拠について検討するまでもなく、本件発明1?5は、本件特許出願の優先日(1993年7月20日)前の時点で頒布された刊行物であるところの甲第4号証及び甲第1号証の3らに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-25 
結審通知日 2006-11-01 
審決日 2006-11-14 
出願番号 特願平6-57208
審決分類 P 1 113・ 121- Z (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊波 猛  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
宮川 哲伸
登録日 1996-06-27 
登録番号 特許第2532820号(P2532820)
発明の名称 図書保管管理装置  
代理人 野河 信久  
代理人 束田 幸四郎  
代理人 柳橋 泰雄  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 津国 肇  

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