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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169568
審判番号 不服2004-22395  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-29 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 平成 8年特許願第309048号「遊技情報公開システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 2日出願公開、特開平10-146432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年11月20日の出願であって、平成16年9月24日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年10月29日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、補正前の特許請求の範囲は独立形式で記載された請求項1,2,5,6及び引用形式で記載された請求項3,4(両請求項とも請求項1,2を引用している。)からなっており、補正後のそれは独立形式で記載された請求項1,2及び引用形式で記載された請求項3?5(請求項4,5は請求項1,2を引用している。)からなっている。
請求人は本件補正について「請求項4を削除」(審判請求書3頁4?5行)と主張しており、そのことは当審も認める。
以上の事実によれば、本件補正前において請求項2を引用し、本件補正後にも存続する請求項は請求項3のみであり、本件補正後の請求項4,5は、請求項2を引用するものとして新設された請求項である。
請求人は「請求項5を請求項4、請求項6を請求項5とし・・・請求項4,5を独立項から請求項1ないし3の従属項に補正した」(審判請求書3頁5?20行)と主張するが、補正前の請求項5,6には「遊技客の操作により指定された遊技機の稼働情報として」との文言記載があるが、補正後の請求項4,5のうち請求項2引用部分(請求項2自体を含む。)には同文言がなく、それに代わるものとして「遊技客が遊技する遊技台の稼働情報」との文言が請求項2に存するにすぎない。そうである以上、補正前の請求項5,6を引用形式に書き改めたものが補正後の請求項4,5であると認めることはできない。
以上のとおり、補正前に独立形式で記載された請求項を、多数項引用形式の請求項に変更し、補正前の同請求項の限定事項を削除することは、請求項削除(平成18年改正前特許法17条の2第4項1号)、特許請求の範囲の減縮(同項2号)、誤記の訂正(同項3号)又は明りようでない記載の釈明(同項4号)の何れにも該当しない。
すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年1月28日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「各遊技台に対応して設けられたカードリーダと、
遊技台の稼働情報と前記カードリーダがIDカードから読取った個人情報とを対応させた状態で記憶管理する管理装置と、
外部操作に応じて前記管理装置が記憶している稼働情報を出力する情報提供端末機とを備え、
前記情報提供端末機は、カードリーダを有し、遊技客の操作により指定された遊技機の稼働情報を出力する際に、当該遊技機の稼働情報中に上記カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれていたときは、その個人情報に対応した稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に、前記遊技機の稼働情報を出力することを特徴とする遊技情報公開システム。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-238373号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?ツの記載又は図示がある。
ア.「多数台の遊技機からの遊技データを、当該遊技機での遊技客に割当てられたIDコードと対応付けた状態で集計管理するデータ管理手段と、
前記遊技客に対して当該遊技客に割当てられたIDコードと対応付けた状態で発行され、任意のデータを記録可能なデータ書込媒体と、
このデータ書込媒体に対し、前記データ管理手段による集計管理データのうち当該データ書込媒体のIDコードに対応したデータを記録可能なデータ記録端末とを備えたことを特徴とする遊技場用のデータ管理システム。」(【請求項1】)
イ.「従来のパチンコホールでは、・・・遊技客に対して、遊技による獲得パチンコ玉数(払出景品価額)、遊技した遊技機での出玉状態の変化傾向などの遊技実績を示す情報について全くフィードバックしていない。このため、遊技客側から自身の遊技実績を照会することは全く不可能であり、遊技客がこのような遊技実績を得ようとする場合には、専ら自身の記憶に頼って遊技実績を手帳などにメモ書きするという手段を採用することになる。」(段落【0003】)
ウ.「一般に、パチンコ遊技で利益を得るためには、過去の遊技実績を分析して利益が上がらない理由を検証・吟味することが望ましいとされているが、従来のようにパチンコホール側から遊技実績がフィードバックされない構成では、上記のような分析が困難になり、これが遊技客側のパチンコホール離れを促進する原因となる虞があった。」(段落【0005】)
エ.「本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、遊技客が遊技機で遊技した場合に、当該遊技に関する遊技実績を示すデータを特定の遊技客に対し簡便に提供することができて、遊技に対する興趣の向上、並びにこれに伴う遊技場の集客力の向上を実現できるようになる遊技場用のデータ管理システムを提供することにあり、また、遊技客が遊技により獲得した遊技媒体の数を、IDコードに対応付けた状態で記憶できるシステムを構築する場合に、その記憶遊技媒体数を示す預かりデータを遊技客に対し簡便に提供することができて、遊技客の便宜向上を図り得るようになる遊技場用のデータ管理システムを提供することにある。」(段落【0007】)
オ.「IDコードが割当てられた特定の遊技客に対しては、その遊技客が遊技した遊技機での遊技データつまり遊技実績を、データ記録端末を通じて簡便に提供できるようになる。この結果、上記のような遊技客にとって遊技に対する興趣が向上するようになり、このような遊技に対する興趣向上により、遊技場の集客力の向上を図り得るようになる。」(段落【0012】)
カ.「全体の概略構成を示す図1において、パチンコホール内には、多数台ずつのパチンコ遊技機1及び玉貸機2が並設されている。各遊技機1には、周知のアウト玉計数機3及びセーフ玉計数機4が付随して設けられ、また、各玉貸機2にはカードリーダ5が付随して設けられており、それら各計数機3、4及びカードリーダ5からの信号は、パチンコ遊技機1と1対1で対応するように設けられた制御部6に与えられる構成となっている。」(段落【0016】)
キ.「上記会員カード8は、貯玉システムにおいて実現されている周知構成のもので、パチンコホールを特定するための加盟店コード、会員を特定するために割当てられたIDコードある例えば8桁の会員NO.、例えば4桁の暗証NO.、カード有効年月を示す有効期限データなどが記録されており、その会員カード8がパチンコホールないで使用可能か否かを、上記加盟店コード及び会員NO.(必要に応じて暗証NO.)を利用して判断する構成となっている。」(段落【0021】)
ク.「本発明でいうデータ記録端末に相当する記帳端末機11は、パチンコホール内の複数箇所に設置されるもので、演算管理装置7とオンライン接続された制御部12、CRTディスプレイ或いはLCDディスプレイパネルなどより成るモニタ13、このモニタ13の画面上に設定された例えばマトリックス方式のタッチスイッチ14、前記会員カード8からデータを読み込むためのカードリーダ15、会員に対して会員カード8と共に発行される手帳16(本発明でいうデータ書込媒体に相当)が挿入された状態で、その手帳16に後述する個人遊技履歴データを記帳(印字)するためのプリンタ17(本発明でいう印字手段に相当)を備えた構成となっており、その動作内容については後述する。」(段落【0024】)
ケ.「遊技客は、上記個人遊技履歴データを手帳16に記帳する機能を得ようとする場合には、パチンコ遊技機1での遊技時において、自身の会員カード8を当該遊技機1に対応したカードリーダ5にセットした状態とするものである。」(段落【0025】)
コ.「演算管理装置7に設定されているデータファイルのうち、本発明の要旨に関係した部分のフォーマット例について図9?図13を参照して説明しておく。」(段落【0032】)
サ.「図11に示す遊技データファイルは、1営業日分における全パチンコ遊技機1での遊技データを、当該パチンコ遊技機1での遊技客(会員のみ)毎に記録したファイルである。この遊技データファイルは、営業日を示す年月日データ及びパチンコ遊技機1の台番号データに対応付けて、各会員カード8に記録された会員NO.と、その会員NO.と対応付けられた状態の前記遊技データΔPにより得られるアウト玉数、セーフ玉数、特賞回数、特賞チャンスのスタート回数、遊技開始時刻、遊技終了時刻の各データとを羅列した構成となっている。」(段落【0035】)
シ.「図12(a)、(b)に示すランキングデータファイルは、各会員毎の貯玉数並びに特賞回数(会員がパチンコ遊技機1を特賞状態とした累計回数)のパチンコホール内でのランキングを記録したファイルである。この場合、貯玉数ランキングデータファイル(図12(a)参照)は、貯玉数の順位、会員NO.、貯玉数、全会員の平均的な貯玉数からのずれを示す偏差値を羅列した構成となっている。また、特賞回数ランキングデータファイル(図12(b)参照)は、特賞の発生回数の順位、会員NO.、特賞回数、全会員の平均的な特賞回数からのずれを示す偏差値を羅列した構成となっている。」(段落【0036】)
ス.「図3?図6には、記帳端末機11が有する制御部12による制御内容が示されており、以下これについて説明する。・・・カードリーダ15がカードを受け入れたときには、そのカードが当該パチンコホールの会員カード8であるか否かを、カードリーダ15による読み込みデータに基づいて判断する(ステップB3)。」(段落【0048】)
セ.「前記ステップB3で「YES」と判断した場合、つまりカードリーダ15が受け入れたカードが当該パチンコホールの会員カード8であった場合には、その会員カードデータ8中の会員NO.を前記演算管理装置7へ送信し(ステップB6)、この後に、演算管理装置7からの受付許可信号若しくは受付拒否信号が入力されるまで待機する(ステップB7、B8)。」(段落【0050】)
ソ.「受付許可信号がアンサバックされたときには、モニタ13に対し図17に示すようなデータ選択画面を表示する(ステップB10)。」(段落【0051】)
タ.「図17のデータ選択画面中の文字a1 部分が押圧操作されて「遊技実績データ」が選択された場合(ステップB11で「YES」)には、図4に示す制御を実行する。図4において、ステップB11で「YES」と判断した場合に行われるステップB15では、モニタ13に対し図18に示すような遊技実績データ選択画面を表示する。」(段落【0055】)
チ.「データ信号SDがアンサバックされたときには、そのデータ信号SD中の記帳用データΔDをモニタ13に表示するデータ表示ステップB27を実行する。」(段落【0062】)
ツ.【図20】には「記帳用データ表示画面(2)」として「出玉グラフ」が図示され、出玉グラフとともに、遊技機を特定する「CR名画 117番台」との表示があり、大当り回数、スタート回数及び大当り確率が表示されている。【図21】には「記帳用データ表示画面(3)」として「獲得玉数ランキング」が図示され、年月日、獲得玉数(順位とともに)、平均及び偏差値が表示されている。

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載カ及び【図1】によれば、パチンコ遊技機と玉貸機は1対1の対応関係にある。
記載サの「遊技客(会員のみ)毎」及び記載シの「各会員毎」との文言から、「遊技データファイル」及び「ランキングデータファイル」が記載アのIDコードと対応つけて記憶されことは明らかである。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「多数台の遊技機からの遊技データを、当該遊技機での遊技客に割当てられたIDコードと対応付けた状態で集計管理するデータ管理手段と、
前記遊技客に対して当該遊技客に割当てられたIDコードと対応付けた状態で発行され、任意のデータを記録可能なデータ書込媒体と、
このデータ書込媒体に対し、前記データ管理手段による集計管理データのうち当該データ書込媒体のIDコードに対応したデータを記録可能なデータ記録端末とを備えた遊技場用のデータ管理システムであって、
各遊技機に玉貸機を1対1の対応関係にして設け、各玉貸機にカードリーダを設け、
前記データ管理手段は、遊技機の台番号データ及び前記IDコードと対応付けて記憶した遊技データファイル並びに貯玉数及び特賞回数のパチンコホール内でのランキングを前記IDコードと対応つけて記憶した貯玉数ランキングデータファイル及び特賞回数ランキングデータファイルを含む複数のファイルを記憶しており、
前記データ記録端末は、モニタ、このモニタの画面上に設定されたタッチスイッチ、カードリーダ及びプリンタを有し、タッチスイッチによる操作に応じて獲得玉数ランキング又は出玉グラフを前記モニタ画面に表示し、プリントするように構成された遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

4.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1では、遊技機(本願発明の「遊技台」及び「遊技機」の両方に相当)と玉貸機が1対1の対応関係にあるから、玉貸機に設けられたカードリーダは「各遊技台に対応して設けられたカードリーダ」といえる。
引用発明1の「遊技データファイル」は「遊技台の稼働情報」に関するファイルということができ、同じく「IDコード」は本願発明の「カードリーダがIDカードから読取った個人情報」に相当するから、引用発明1の「データ管理手段」は本願発明の「遊技台の稼働情報と前記カードリーダがIDカードから読取った個人情報とを対応させた状態で記憶管理する管理装置」に相当する。
引用発明1の「データ記録端末」において表示される「獲得玉数ランキング」及び「出玉グラフ」はどちらも「稼働情報」といえるから、引用発明1の「データ記録端末」は本願発明の「外部操作に応じて前記管理装置が記憶している稼働情報を出力する情報提供端末機」に相当し(「タッチスイッチによる操作」が「外部操作」に相当)、引用発明1において「モニタ画面に表示し、プリントする」ことは「出力」に該当する。このように、引用発明1は稼働情報を出力するのであるから、そのシステムを「遊技情報公開システム」ということには何の問題もない。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「各遊技台に対応して設けられたカードリーダと、
遊技台の稼働情報と前記カードリーダがIDカードから読取った個人情報とを対応させた状態で記憶管理する管理装置と、
外部操作に応じて前記管理装置が記憶している稼働情報を出力する情報提供端末機とを備え、
前記情報提供端末機は、カードリーダを有し、上記カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報を出力する遊技情報公開システム。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「遊技客の操作により指定された遊技機の稼働情報を出力する際に、」と特定しているのに対し、引用発明1では遊技機を指定していない点。
〈相違点2〉本願発明が「当該遊技機の稼働情報中に上記カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれていたときは、その個人情報に対応した稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に、前記遊技機の稼働情報を出力する」のに対し、引用発明1がかかる発明特定事項を有するとはいえない点。

5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
遊技客にとって有利な遊技機と不利な遊技機があること、及び遊技客に遊技機毎の稼働情報を提供することによりサービス向上を図ることは周知である。そのことは、例えば本願出願前に頒布された特開平8-187352号公報(拒絶の理由に引用された刊行物であり、以下「引用例2」という。)に「この発明は、当該遊技機の今後の遊技機の状況を予測して、ホールに設置された多数の遊技機のうちのいずれの遊技機で遊技するかの選択を容易にするため、時間の変化に関連付けられた遊技状態を、特定の会員にのみ表示する遊技情報表示装置に関するものである。」(段落【0002】)と、特開平7-275487号公報に「入力された台番号に関し、前記第3の選択画面において選択された稼働情報が表示手段7において表示される。」(段落【0033】)と、及び特開平6-246051号公報に「従来、遊技機からの各種情報を遊技店内を管理する管理装置が収集して記憶し記憶情報を基に演算を行って各種遊技情報を算出し、この遊技情報に基づいて釘調整や遊技店を管理することが行われている。また、算出した遊技情報を遊技店の管理者だけでなく、遊技店内に設けられた表示装置によって遊技者が見られるようにし、遊技機を選択するための情報サービスを行うシステム、例えばデータ表示装置システムが開発されている。」(段落【0003】)とそれぞれ記載されていることによって裏付けられる。
引用発明1は、基本的には遊技客本人に関する遊技データ(獲得玉数ランキング等)を出力するものであるが、獲得玉数ランキングを例にとれば、実施例では本人の獲得玉数だけでなく、順位、平均及び偏差値を出力している。
遊技機選択に当たり、獲得玉数の平均は重要な指標となることが明らかであるから、上記周知の事実にかんがみ、引用発明1を遊技機選択にも利用できるように、遊技機毎の獲得玉数ランキングを出力することは当業者にとって想到容易といわなければならない。
また、引用発明1の「出玉グラフ」も遊技機選択の重要な指標となることが明らかであり、遊技機選択に資するように「出玉グラフ」を出力するためには、遊技客本人が使用していない(データ管理手段に記憶されていない)遊技機の「出玉グラフ」を出力することを想定しなければならないから、IDコードのみに基づいて「出玉グラフ」を出力することはできない。ここで、引用発明1の「遊技データファイル」は、遊技機の台番号データ及び前記IDコードと対応付けて記憶してあるのだから、遊技機毎に「出玉グラフ」を出力することに技術的困難性がないことは明らかである。
そして、遊技機毎に出力するために、遊技機を「遊技客の操作により指定」することは設計事項である。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
ここでは、稼働情報が獲得玉数ランキングの場合と出玉グラフの場合に分けて検討する。
【稼働情報が獲得玉数ランキングの場合】
(1)で述べたように、引用発明1の実施例では、遊技客本人の獲得玉数だけでなく、順位、平均及び偏差値を出力している。獲得玉数の平均は遊技客本人の獲得玉数を含めて算出されるから、「他の遊技客に対応する稼働情報」には該当しないけれども、遊技客本人の獲得玉数と平均が出力されれば、他の遊技客の平均もある程度推測できる。すなわち、引用発明1について「個人情報に対応した稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に出力する」とまではいえないにせよ、「個人情報に対応した稼働情報を遊技客全体に対応する稼働情報と識別可能に出力する」とはいえるものであり、「個人情報に対応した稼働情報」と識別可能な情報が「他の遊技客に対応する」情報なのか、「遊技客全体に対応する」情報なのかの相違があるだけである。
(1)でも述べたように、遊技機毎の稼働情報は遊技機選択の指標となるものであり、獲得玉数は遊技客の技量等にも左右される(遊技者本人の獲得玉数が多ければ、平均を引き上げる結果になり、少なければ引き下げる結果になる。)から、遊技機選択に当たっては、遊技客本人を除いた獲得玉数が重要な指標となることはたやすく理解できる。
そうであれば、引用例1に接した当業者であれば、相違点1に係る本願発明の構成を採用した際に、獲得玉数ランキングを出力するに当たり、遊技客本人を除いた獲得玉数(その平均でもよい)を出力することには何の困難性もないといわざるを得ない。
そして、元来引用発明1は、遊技客本人の遊技データを出力するものであるから、遊技客本人を除いた遊技データを出力するに当たっても、遊技客本人の遊技データ(本願発明の「カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報」に相当)を出力することは当然であり、これを他の遊技客に対応する稼働情報(本願発明の「他の遊技客に対応する稼働情報」に相当)と識別可能とすることは設計事項に属する。

【稼働情報が出玉グラフの場合】
引用例2には(1)で摘記した記載があり、「出玉グラフ」は「時間の変化に関連付けられた遊技状態」を示すグラフである。そして、引用例2には「会員カードに記載された会員番号がホール側の会員登録装置に会員番号として登録されていると判断すると、初めて画像表示装置100に、図2に示すように、会員カード挿入時以前の過去の遊技状態が表示される。そして、この遊技状態の表示は、遊技者がイジェクトスイッチ111を操作して会員カードを排出させるまで継続される。」(段落【0029】)との記載があり、「会員カード挿入時以前の過去の遊技状態」は通常、会員本人以外の遊技状態であるから、会員カードを排出させるまで継続して表示される遊技状態は、会員本人以外の遊技状態と会員本人の遊技状態を併せた遊技状態である。
そうであれば、引用発明1を出発点として、遊技機選択に資するように、引用例2記載の技術を適用することにより、会員本人の遊技状態(IDコードに対応する出玉グラフ)だけでなく、それ以外の遊技状態を出力することは当業者にとって想到容易というべきである。
その場合、引用発明1は「遊技客側から自身の遊技実績を照会する」(引用例1の記載イ)ことを目的としたものであるから、IDコードに対応する出玉グラフ(本願発明の「カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報」に相当)とそれ以外のグラフ(本願発明の「他の遊技客に対応する稼働情報」に相当)を識別可能に出力することは設計事項というべきである。

以上のとおり、稼働情報が獲得玉数ランキング又は出玉グラフのどちらであっても、「IDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に、前記遊技機の稼働情報を出力する」ことは当業者にとって想到容易であり、相違点1に係る本願発明の構成を採用した場合には、指定された遊技機に対して、データ管理手段(管理装置)が記憶している範囲内で、遊技客本人が使用した履歴がある場合もない場合も想定されるから、「当該遊技機の稼働情報中に上記カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれていたときは、」との条件を付すことは設計事項というべきである。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-17 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-05 
出願番号 特願平8-309048
審決分類 P 1 8・ 57- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
土屋 保光
発明の名称 遊技情報公開システム  
代理人 佐藤 強  

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