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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169570
審判番号 不服2004-24455  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-30 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 平成11年特許願第371824号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-170302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月17日に出願された特願平11-358696号の一部を、同月27日に特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成16年10月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月30日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月28日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年12月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものである。本件補正前の請求項は請求項1?5であり、そのうち独立形式で記載されたものは請求項1及び請求項2であり、他の請求項はこれら請求項に何らかの限定を加えたものである。そして、補正前の請求項2には「前記確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数を計数する確率変動連続カウンタ」及び「前記確率変動状態において、前記大当たり状態が生起した場合には、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かと、今回の大当たり状態が生起するまでに、前記確率変動連続カウンタが計数した確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数とに基づいて決定された内容を前記報知手段を介して遊技者に報知する報知制御手段」との発明特定事項があるところ、補正後の請求項1にはこれら発明特定事項がないから、補正後の請求項1は補正前の請求項1又はこれを引用する請求項に対応しなければならない。しかし補正前の請求項1には、遊技者に報知するに際し「前記非確率変動状態において、」との限定があるが、同限定が補正後の請求項1にはない。このように、補正前の請求項に存在した限定事項を削除することは、請求項削除(平成18年改正前特許法17条の2第4項1号)、特許請求の範囲の減縮(同項2号)、誤記の訂正(同項3号)又は明りようでない記載の釈明(同項4号)のいずれにも該当しない。
すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。

そうではあるが、本件補正は補正前の「確率変動状態となるか否かを報知する報知手段と、」(補正前の請求項1,2に共通する発明特定事項)を「確率変動状態となるか否かを前記図柄表示部に表示する遊技機であって、」と補正しているから、「報知手段」が「図柄表示部」であることを限定するものと認めることができ、これは特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものといえる。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示部を有し、その図柄表示部に大当たり図柄が表示されると遊技者にとって価値のある遊技状態となる大当たり状態が生起し、前記図柄表示部に表示された図柄種別或いは抽選手段の抽選結果に基づいて、前記大当たり状態の終了後に、前記大当たり状態を生起する確率が高くなる確率変動状態或いは前記大当たり状態を生起する確率が高くならない非確率変動状態となり、
前記大当たり状態に関連した所定時において、当該大当たり状態の終了後に、確率変動状態となるか否かを前記図柄表示部に表示する遊技機であって、
前記非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数を計数する非確率変動連続カウンタと、
前記大当たり状態が生起したか否かを判断し、前記大当たり状態が生起したと判断した場合に、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合に、今回の大当たり状態が生起するまでに、前記非確率変動連続カウンタが計数した非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数に対応した報知図柄を選択し、前記図柄表示部に表示するように制御する報知制御手段と
を備えたことを特徴とする遊技機。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-99135号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?チの記載が図示とともにある。
ア.「始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の結果が予め定められた所定の停止表示態様になった場合に予め定められた所定の遊技状態の獲得が可能な遊技機において、
前記可変表示遊技の結果の表示がなされるとともに、前記可変表示遊技以外の装飾表示がなされ、
前記所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度に関連させて、前記装飾表示の装飾表示パターンが変更されることを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「前記所定の遊技状態の発生に関連して、該所定の遊技状態が発生し易い状態となる特定遊技状態を発生可能であり、
該特定遊技状態の発生に関連して、前記装飾表示パターンが変更されることを特徴とする請求項1又は2記載の遊技機。(【請求項10】)
ウ.「【従来の技術】従来、パチンコ遊技機、アレンジボール遊技機、雀球遊技機、スロットマシーンなど、可変表示装置(例えば、液晶表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置、多数のLED(Light Emitting Diode)からなる表示装置、又は回転ドラムを使用した表示装置などが設置され、始動条件の成立に基づき可変表示遊技が行われ、その可変表示遊技の結果が所定の停止表示態様になった場合に所定の遊技状態(大当たりと呼ばれる特別遊技状態)の獲得が可能な遊技機が一般に知られている。・・・例えば、パチンコ遊技機では、3桁の図柄表示領域を有する可変表示装置が遊技領域に設置され、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき、その3桁の図柄表示領域に特別図柄(例えば、「0」?「9」と「A」?「F」などからなる表示図柄)を所定期間変動表示させた上で順次停止させる可変表示遊技が行われ、その可変表示遊技の停止結果である3桁の表示図柄が「7,7,7」等のぞろめになった場合に大当たりと呼ばれる所定の遊技状態を発生させるものが一般的である。」(段落【0002】?【0003】)
エ.「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の各演出表示における演出パターンは、毎回同じ演出パターンを表示するのみであったため、単調な演出表示になってしまい、遊技者にとって飽き易く、演出効果を十分に高めるものになっていなかった。」(段落【0006】)
オ.「この発明は、上記実情に鑑み、所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度の認識が可能で、多数の遊技者に平等な遊技台の選択基準ともなり得る、演出効果の十分に高められた演出表示を行う遊技機を提供することを目的とする。」(段落【0011】)
カ.「この請求項1記載の遊技機によれば、可変表示遊技がなされたときはその結果の表示がなされるとともに装飾表示がなされ、その装飾表示は、可変表示遊技結果として獲得された所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度に関連させて、その装飾表示パターンが変更されるので、単調な装飾表示(演出表示)にならずに、所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度に合わせた装飾効果を十分に高めることができ、遊技者の遊技上の興趣を高めることができる。また、所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度に合わせて装飾表示パターンが変更されることにより、所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度を的確に知ることができるので、所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度を知らずに必要以上の遊技を行って多大な不利益を受けてしまうことを回避できる。」(段落【0013】)
キ.「請求項10記載の遊技機によれば、前記所定の遊技状態の発生に関連して、該所定の遊技状態が発生し易い状態となる特定遊技状態の発生可能で、特に、該特定遊技状態の発生に関連して、前記装飾表示パターンが変更されるので、装飾パターンの変化を見ることにより、特定の遊技状態の発生を的確に認識できる。・・・ここで、特定の遊技状態は、例えば、特別図柄と普通図柄の可変表示遊技の確率変動、普通図柄の時短ゲームなどである。」(段落【0036】?【0037】)
ク.「このパチンコ遊技機はいわゆる第1種のもので、遊技盤1のガイドレール2で囲まれた遊技領域3には、特別図柄(特図)の可変表示装置4、特別変動入賞装置5、普図始動ゲート6,6、普通図柄(普図)の可変表示装置7、一般入賞口8,8、特図始動口9,9、特図始動口を兼ねた補助変動入賞部としての普通変動入賞装置10、風車と呼ばれる方向変換部材11,11,…、サイドランプ12,12、装飾LED13などが配設されている。・・・特図の可変表示装置4には、液晶画面やCRT(陰極線管)ディスプレーなどによって構成される可変表示部4a、及び、始動記憶表示器4b,4b,…などが設けられている。」(段落【0040】?【0041】)
ケ.「表示制御回路40が、役物表示制御回路20の制御の下で、可変表示装置4に、遊技の進行状態に応じて各種表示を行わせる。即ち、遊技が行われていないときには客寄せ用の呼び込み表示を、特別図柄の可変表示遊技時にはその遊技の標示とその遊技の流れに合わせた演出表示(装飾表示)を、それぞれ行わせるようになっている。」(段落【0053】)
コ.「特別図柄可変表示遊技の結果として、その停止図柄が大当たりを発生させる所定の停止表示態様(例えば、「1,1,1」、「2,2,2」、「3,3,3」などのぞろめ)となった場合は、大当たりと呼ばれる所定の遊技状態である特別遊技状態が発生されて、遊技者に獲得される。」(段落【0062】)
サ.「この大当たりの特別遊技が所定の停止図柄態様(例えば、「1」、「3」、「5」、「7」、「9」などの特定の図柄が3個揃ったぞろめ、即ち確率変動図柄)で発生したときには、その大当たりの特別遊技の終了後、例えば、その後に大当たりが2回発生するまで大当たりの発生確率が高確率となる確率変動状態が発生される。」(段落【0065】)
シ.「例えば、前回の大当り発生から現在までの特図の可変表示遊技の実行回数(変動回数と呼ぶ)、前回の大当り発生から現在までのリーチ表示態様の発生回数(リーチ回数と呼ぶ)、および、電源投入時から現在までの特別遊技状態の発生回数(大当り回数と呼ぶ)などに基づいて装飾表示パターンが変更される。」(段落【0068】)
ス.「停止図柄判定処理において、大当たり図柄以外の図柄での停止であれば外れ処理の処理NO.に、大当たり図柄での停止であればファンファーレ処理の処理NO.に、それぞれ変更されて、ゼネラルフロー(図3)の次のシーケンスでその変更された処理NO.に応じた、外れ処理(ステップS12)又はファンファーレ処理(ステップS13)が行われる。」(段落【0078】)
セ.「変動回数カウンタは前回の大当り発生或いは電源投入時から現在までの特図可変表示遊技の実行回数を書き込むカウンタである。」(段落【0085】)
ソ.「ステップS36では、ステップS35での比較の結果として、その抽出乱数は当たり値(大当たり値)か否かを判定し、当たり値でなければステップS37で外れ停止図柄を決定してステップS39に移行するが、当たり値であればステップS38で大当り停止図柄を決定してステップS39に移行する。」(段落【0092】)
タ.「図12には、図10の「遊技状態モード」データ中の2bitデータと表示内容との対応表を示し、図15には、図12の対応表に示されたリーチ外れ停止時の表示内容の表示画像を示す。・・・図15中、(a)は変動回数0?50回の場合の表示画像、(b)は変動回数51?300回の場合の通常図柄のリーチ外れ停止時の表示画像、(c)は変動回数51?300回の場合の確変図柄のリーチ外れ停止時の表示画像、(d)は変動回数301回以上の場合の表示画像である。」」(段落【0135】?【0136】)
チ.「リーチ外れ停止時において、「遊技状態モード」データ中の2bitデータが、データ「00」の場合、図15(a)に示すように、変動回数がまだ少ないことを示唆する例えばキャラクタ1と「まだまだこれからよ」の表示を、データ「01」の場合、図15(b)に示すように、変動回数が当りどころの回数であることを示唆する例えばキャラクタ2と「そろそろ当たるよ」の表示をする。データ「10」の場合、図15(c)に示すように、変動回数が大当りどころの回数であることを示唆し確変図柄でのリーチ外れによる遊技者の落胆を励ます例えばキャラクタ2と「アーおしい!次は当たるよ」の表示を、データ「11」の場合、図15(d)に示すように、変動回数が多いことを示唆し遊技者を励ます例えばキャラクタ3と「がんばれ!あきらめるな」の表示をそれぞれ行う。」(段落【0141】)

4.引用例記載の発明の認定
記載アの「所定の遊技状態の獲得」及び「所定の遊技状態の獲得に伴う遊技の実行進度」は、記載シの「大当り発生」及び「前回の大当り発生から現在までの特図の可変表示遊技(審決注;記載アの「始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技」のことである。)の実行回数」であってもよい。
記載イの「所定の遊技状態が発生し易い状態となる特定遊技状態」は記載サの「確率変動状態」であってもよい。
したがって、引用例には次のような遊技機が記載されていると認めることができる。
「可変表示装置を備え、始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の結果が予め定められた所定の停止表示態様になった場合に大当り発生となり、前記予め定められた所定の停止表示態様のうち、さらに特定の停止表示態様の場合には、大当たり終了後、その後大当たりの発生確率が高確率となる確率変動状態となる遊技機において、
前記可変表示遊技の結果の表示がなされるとともに、前記可変表示遊技以外の装飾表示がなされ、前記確率変動状態の発生に関連して、装飾表示パターンを変更し、
前回の大当り発生から現在までの始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の実行回数を計数する変動回数カウンタを備え、
始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の結果が前記所定の停止表示態様以外のリーチ外れとなった場合には、変動回数カウンタの計数値に応じて前記装飾表示の装飾表示パターンを変更する遊技機。」(以下「引用発明」という。)

5.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「可変表示装置」は補正発明の「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示部」に相当し、「可変表示遊技の結果が予め定められた所定の停止表示態様」になること(引用発明)と「図柄表示部に大当たり図柄が表示される」こと(補正発明)に相違はなく、引用発明における「大当たり」が「遊技者にとって価値のある遊技状態」であることは自明である。
補正発明と引用発明の「確率変動状態」に相違はなく、引用発明においても「図柄表示部に表示された図柄種別或いは抽選手段の抽選結果に基づいて、前記大当たり状態の終了後に、前記大当たり状態を生起する確率が高くなる確率変動状態或いは前記大当たり状態を生起する確率が高くならない非確率変動状態」となるものである。
引用発明では「確率変動状態の発生に関連して、装飾表示パターンを変更し」ており、装飾表示パターンを変更するか否かは、確率変動状態となるか否かを表示することと等価であるから、「前記大当たり状態に関連した所定時において、当該大当たり状態の終了後に、確率変動状態となるか否かを前記図柄表示部に表示する」ことは補正発明と引用発明の一致点である。
引用発明における「リーチ外れとなった場合」は、大当り発生よりも遊技者に不利な結果であり、補正発明における「確率変動状態にならないと判断した場合」は、大当たり状態生起との前提のもとで、確率変動状態になる場合よりも遊技者に不利な結果である。また、引用発明の「前回の大当り発生から現在までの始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の実行回数」は、上記の意味で可変表示遊技が遊技者に不利となる結果の連続回数である。すなわち、補正発明の「非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数」と引用発明の「前回の大当り発生から現在までの始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の実行回数」は、遊技者に不利な結果となった連続回数である点で一致し、引用発明の「変動回数カウンタ」と補正発明の「非確率変動連続カウンタ」は「遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタ」の限度で一致する。
そして、「確率変動状態にならないと判断した場合に、今回の大当たり状態が生起するまでに、前記非確率変動連続カウンタが計数した非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数に対応した報知図柄を選択し、前記図柄表示部に表示する」こと(補正発明)と「始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の結果が前記所定の停止表示態様以外のリーチ外れとなった場合には、変動回数カウンタの計数値に応じて前記装飾表示の装飾表示パターンを変更する」こと(引用発明)は、「遊技者に不利な結果となった場合に、その不利な結果の連続回数に対応した報知図柄を選択し、図柄表示部に表示する」との限度で一致する。なお、引用発明において「装飾表示パターンを変更する」ことが、変更後の装飾表示パターンに該当する報知図柄の選択により実行されることは自明であり(引用例の記載チを参照。)、また引用発明が「報知制御手段」と称しうる手段を備えることも自明である。
したがって、補正発明と引用発明は、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示部を有し、その図柄表示部に大当たり図柄が表示されると遊技者にとって価値のある遊技状態となる大当たり状態が生起し、前記図柄表示部に表示された図柄種別或いは抽選手段の抽選結果に基づいて、前記大当たり状態の終了後に、前記大当たり状態を生起する確率が高くなる確率変動状態或いは前記大当たり状態を生起する確率が高くならない非確率変動状態となり、
前記大当たり状態に関連した所定時において、当該大当たり状態の終了後に、確率変動状態となるか否かを前記図柄表示部に表示する遊技機であって、
遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタと、
遊技者に不利な結果となった場合に、その不利な結果の連続回数に対応した報知図柄を選択し、図柄表示部に表示するように制御する報知制御手段と
を備えた遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉「遊技者に不利な結果」につき、補正発明のそれは「前記大当たり状態が生起したか否かを判断し、前記大当たり状態が生起したと判断した場合に、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合」であるのに対し、引用発明のそれは「リーチ外れとなった場合」である点。なお、「遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタ」の相違は、上記相違点に必然的に付随する相違点にすぎないから、別途独立した相違点ではない。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
引用例の記載エ?カによれば、従来の演出が遊技者にとって飽き易かったことにかんがみ、遊技の実行進度の認識が可能となり、多数の遊技者に平等な遊技台の選択基準ともなり得る、演出効果の十分に高められた演出表示を行うことを目的として引用発明が発明されたものである。また、引用例の記載チによれば、変動回数が多いほど遊技者を励ますことができるように、装飾表示パターンを変更している。
前項で述べたように、引用発明の「前回の大当り発生から現在までの始動条件の成立に基づいて行われる可変表示遊技の実行回数」は遊技者に不利な結果となった連続回数である点で一致し、引用発明はかかる不利な結果の連続回数を報知することにより上記目的を達成するものである。
そして、補正発明の「非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数」も、不利な結果の連続回数であることは当業者に自明であり、かかる連続回数も「遊技の実行進度」に該当するから、引用例に接した当業者であれば、かかる連続回数を遊技者が認識することが、上記引用発明の目的達成に好都合であることはたやすく認識できるといわなければならない。また、「非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数」が多いことは、遊技者にとって不利な状態が長く継続することを意味するから、引用例の記載チに倣い、「非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数」が多いほど遊技者を励ますことが、遊技機として有用なことも明らかである。
そうであれば、「遊技者に不利な結果」として、引用発明の「リーチ外れとなった場合」に代えて、又は「リーチ外れとなった場合」に加えて、「大当たり状態が生起したと判断した場合に、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合」を採用することは当業者にとって想到容易というべきである。当然、「大当たり状態が生起したと判断した場合」は、「前記大当たり状態が生起したか否かを判断」することが前提であり、「非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数を計数する非確率変動連続カウンタ」を備えることは前項で述べたように必然的結果である。
したがって、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
なお請求人は、「本願の出願前においては、遊技機自身で確変大当たりと通常大当たりを区別してデータを計数することは禁止されていたはずである。従って、遊技機で確変大当たりと通常大当たりを区別してデータを採ることは本願の出願前に、周知技術ではないだけでなく、知られていなかったはずである。」(平成16年12月28日付け手続補正書(方式)8頁27?30行)と主張するが、遊技機自身で確変大当たりと通常大当たりを区別してデータを計数することを禁止するということは、かかる計数が世に知られていることを逆に物語るものである。かかる技術が公知であるかどうかに関係なく、上記のとおり相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。
以上のとおりであるから、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項及び同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月7日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示部を有し、その図柄表示部に大当たり図柄が表示されると遊技者にとって価値のある遊技状態となる大当たり状態が生起し、前記図柄表示部に表示された図柄種別或いは抽選手段の抽選結果に基づいて、前記大当たり状態の終了後に、前記大当たり状態を生起する確率が高くなる確率変動状態或いは前記大当たり状態を生起する確率が高くならない非確率変動状態となる遊技機であって、
前記大当たり状態に関連した所定時において、当該大当たり状態の終了後に、確率変動状態となるか否かを報知する報知手段と、
前記非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数を計数する非確率変動連続カウンタと、
前記非確率変動状態において、前記大当たり状態が生起した場合には、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かと、今回の大当たり状態が生起するまでに、前記非確率変動連続カウンタが計数した非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数とに基づいて決定された内容を前記報知手段を介して遊技者に報知する報知制御手段と
を備えたことを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
本願発明の「報知手段」は「図柄表示部」であっても構わず、「今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否か・・・に基づいて」とあるのは、「今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合」を含んでおり、以下その場合に限って検討をすすめる。
「第2[理由]5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示部を有し、その図柄表示部に大当たり図柄が表示されると遊技者にとって価値のある遊技状態となる大当たり状態が生起し、前記図柄表示部に表示された図柄種別或いは抽選手段の抽選結果に基づいて、前記大当たり状態の終了後に、前記大当たり状態を生起する確率が高くなる確率変動状態或いは前記大当たり状態を生起する確率が高くならない非確率変動状態となる遊技機であって、
前記大当たり状態に関連した所定時において、当該大当たり状態の終了後に、確率変動状態となるか否かを報知する報知手段と、
遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタと、
遊技者に不利な結果となった場合に、その不利な結果の連続回数に対応した報知図柄を選択し、図柄表示部に表示するように制御する報知制御手段と
を備えた遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉「遊技者に不利な結果」につき、本願発明のそれは「非確率変動状態において、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合」であるのに対し、引用発明のそれは「リーチ外れとなった場合」である点。なお、「遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタ」の相違は、上記相違点に必然的に付随する相違点にすぎないから、別途独立した相違点ではない。

そこで、上記相違点について検討するに、「第2[理由]6」で述べたとおり、「遊技者に不利な結果」を「大当たり状態が生起したか否かを判断し、前記大当たり状態が生起したと判断した場合に、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否かを判断し、確率変動状態にならないと判断した場合」とすること(付随的に「遊技者に不利な結果となった連続回数を計数するカウンタ」を備えることを含む。)は当業者ににとって想到容易である。その場合、遊技者に不利な結果の連続回数とは、今回の大当たり状態が生起するまでに、非確率変動状態を生起する大当たりの連続した回数であって、この回数が1以上であれば「非確率変動状態において、」に該当する。そして、連続回数が1以上の場合に、不利な結果の連続回数に対応した報知図柄を選択表示することは当然である。
なお、「今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になるか否か・・・に基づいて」との記載を、今回の大当たり状態の終了後に確率変動状態になる場合にも、非確率変動状態なる場合とは異なる報知図柄を選択表示するとの趣旨に解する(その場合は、補正却下理由が1つ追加される。)としても、引用例にはファンファーレ処理(記載ス参照)の記載があり、要するに遊技者に不利な状態を脱した場合の演出も記載されているのだから、上記解釈をしても進歩性の判断には影響を及ぼさない。
以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-17 
結審通知日 2007-10-24 
審決日 2007-11-06 
出願番号 特願平11-371824
審決分類 P 1 8・ 57- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎池谷 香次郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 野村 伸雄
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 山本 尚  
代理人 中山 千里  

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