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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1169611
審判番号 不服2005-20976  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-31 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 特願2001- 6779「設計支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-215685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年1月15日の出願であって、平成17年9月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年11月30日に手続補正がなされたものである。

第2 平成17年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「【請求項1】IFCフォーマットに対応した設計支援ソフトウェアを用いて設計を行うクライアント端末と、設計された設計情報をIFCフォーマットで記憶する第1のファイルと、予め設計物に必要な商品情報を収集する手段と、収集された商品情報の一部をインデックス情報として記憶する第2のファイルと、前記クライアント端末で設計された設計情報に基づいて必要とする商品を検索するための条件を設定する手段と、設定された条件をもとに前記第2のファイルを検索し、設定された条件に該当する商品情報を取得する手段と、取得した商品情報をIFCフォーマットで前記第1のファイルに書き込む手段と、前記第1のファイルに格納された設計情報及び商品情報に基づいて設計に関連する文書を作成する手段とを備えたことを特徴とする設計支援システム。」

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「設計支援ソフトウェア」及び「収集された商品情報を記憶する第2のファイル」について限定を付加するものであり、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-143918号公報(以下「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械等設計業務において使用されるCAD図面データに付加された複数の部品情報から部品情報リストを作成する部品情報リスト自動作成装置、及び作成された部品情報リストを利用して部品の発注を行う部品発注リスト自動作成装置に関する。

イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、部品情報リストの対象となる図面データの数は膨大なものとなりがちであり、従来のような人手による作成作業では、非常に手間がかかると共に、入力ミス等の問題もあった。
【0005】又、購入が必要な部品の発注も、従来の部品情報リストを用いて手作業により行われていたため、部品情報の検索・照会も煩雑で、手間がかかり、誤発注の問題もあった。
【0006】本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、部品情報リストの作成作業を自動化することのできる部品情報リスト自動作成装置を提供することを第1の課題とする。
【0007】又、部品の発注作業を自動化することのできる部品発注リスト自動作成装置を提供することを第2の課題とする。」

ウ 「【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、機械装置の製作に用いられる部品に関する部品番号、部品名、型式、メーカー、数量等の部品情報を含んだ部品情報リストを自動的に作成する部品情報リスト自動作成装置であって、機械設計業務に使用されるCAD図面データファイルから、所定の装置に対応した標識により、該所定の装置に係る部品に関する部品図面ファイルを選定する手段と、該選定された部品図面ファイルから前記部品情報リストの作成に必要な部品情報を抽出する手段と、前記所定の装置に係る部品が購入を必要とする部品か否かを示す情報を付加する手段とを備えたことにより、前記第1の課題を解決したものである。」

エ 「【0010】請求項2に係る発明は、機械装置の製作に用いられる部品のうち、購入するべき部品についての情報を含む部品発注リストを自動的に作成する部品発注リスト自動作成装置であって、請求項1の部品情報リスト自動作成装置によって作成された部品情報リストから、前記部品発注リストの作成に必要な情報を抽出する手段と、所定の形式で部品発注リストを作成する手段とを備えたことにより、前記第2の課題を解決したものである。」

オ 「【0013】図1は、本発明の一実施形態に係る部品情報リスト自動作成装置及び部品発注リスト自動作成装置システム全体の概略構成を示すブロック線図である。
【0014】コンピュータ10は、部品情報リストを自動的に作成するためのものであり、操作端末12より操作され、CAD図面データファイル14から、後で詳しく述べるように、部品図面ファイルを選定し、部品情報リストを作成し、データベース16を作成すると共に、必要に応じて部品情報リスト18としてプリントアウトする。
【0015】コンピュータ20は、部品発注リストを自動的に作成するためのものであり、操作端末22により操作され、部品情報リストのデータベース16を検索し、必要な情報を抽出して、所定の形式で部品発注リストを作成し、必要に応じて部品発注リスト24としてプリントアウトする。」

これらの記載ア?オ及び図面図1?4によれば、引用例1には、
「CAD図面データを記憶するCAD図面データファイルと、
前記CAD図面データファイルから必要な部品情報を抽出し、これに購入を必要とする部品か否かを示す情報を付加し、部品情報リストを作成する手段と、
前記部品情報リストの情報に基づいて部品発注リストを作成する手段とを備えた装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(2)同じく引用された、本願出願前の1997年2月25日に頒布された、今村誠他4名著「SGML文書管理と文書情報アクセス技術」、三菱電機技報社発行『三菱電機技報』、第71巻第2号第10-13頁(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

カ 「3.3広域検索技術
複数の企業によってネットワーク上で公開されている文書を横並びに検索するためには、文書の形式と文書中の用語に関して、企業間の差異、及びユーザが検索要求時に用いる用語との差異を吸収する必要がある。この節では、部品カタログを例として、“SGMLによる公開情報の形式の標準化”と“検索に必要な検索情報の自動抽出”により、部品ベンダを横断した広域検索が容易になることについて述べる。
3.3.1SGMLによる公開情報の形式の標準化
部品カタログの構成と内容項目は文書型定義によって厳密に規定できるので、SGMLで情報形式を標準化することにより、部品ベンダが提供するデータの形式を共通化できる。・・・(中略)・・・従来データベースで扱っていた属性情報を部品ベンダ側がSGML形式で埋め込み、ユーザ側がSGML文書解析によって自動抽出ことが可能になる。」(第13頁第1行?第17行)

キ 「3.3.2検索情報の自動抽出による広域検索の実現
試作中の部品情報広域検索システムの構成を図6に示す。
このシステムは、ネットワーク上のSGML形式の部品カタログを収集し、検索に必要な検索情報を自動抽出することにより、部品カタログデータベースを構築する。その結果、複数の部品ベンダが提供する最新の部品情報が一度に検索できる。」(第13頁第23行?第29行)

3.対比
引用発明における「装置」は、設計支援に関する技術分野に属する技術であり、本願補正発明と同様に、「設計支援システム」と総称することができる。
引用発明における「CAD図面データ」及び「CAD図面データファイル」は、それぞれ本願補正発明の、「設計情報」及び「設計支援ソフトウェアを用いて設計された設計情報を記憶する第1のファイル」に相当する。
また、引用発明により作成された部品発注リストは、購入すべき部品についての情報を含むことから、引用発明における「CAD図面データファイルから必要な部品情報を抽出し、これに購入を必要とする部品か否かを示す情報を付加し、部品情報リストを作成する手段」は、本願補正発明における「設計情報に基づいて必要とする商品を検索するための条件を設定する手段」に相当する。
引用発明における「部品発注リストを作成する手段」は、本願補正発明における「設計に関連する文書を作成する手段」に相当する。

以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは次の一致点、相違点がある。
【一致点】
「設計支援ソフトウェアを用いて設計された設計情報を記憶する第1のファイルと、
前記設計情報に基づいて必要とする商品を検索するための条件を設定する手段と、
設計に関連する文書を作成する手段とを備えた設計支援システム」

【相違点1】
本願補正発明は、「設計支援ソフトウェアを用いて設計を行うクライアント端末」を備えるのに対し、引用発明は、設計支援ソフトウェアを用いて設計を行うための構成を備えていない点。

【相違点2】
本願補正発明は、「予め設計物に必要な商品情報を収集する手段と、収集された商品情報の一部をインデックス情報として記憶する第2のファイル」及び「設定された条件をもとに第2のファイルを検索し、設定された条件に該当する商品情報を取得する手段と、取得した商品情報を前記第1のファイルに書き込む手段」を備えるのに対し、引用発明は、当該構成を備えていない点。

【相違点3】
本願補正発明は、「設計情報及び商品情報」に基づいて設計に関連する文書を作成するのに対し、引用発明は、「部品情報リストの情報」に基づいて設計に関連する文書を作成する点。

【相違点4】
本願補正発明は、設計支援ソフトウェア、第1のファイルに記憶する設計情報及び商品情報が、「IFCフォーマット」であるのに対し、引用発明は、「フォーマット」が特定されていない点

4.判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
設計支援ソフトウェアを用いて設計するにあたり、クライアント端末を用いることは、周知慣用の技術手段であるから、引用発明のシステムにおいても、設計支援ソフトウェアを用いて設計された設計情報を用いる以上、クライアント端末を備えることは自明のことである。

(2)相違点2について
引用発明と同様、設計支援技術分野に属する引用例2には、前記「第12.(2)」に摘記した箇所に、ネットワーク上で公開されている部品カタログを収集し、検索に必要な検索情報を抽出することにより、部品カタログデータベースを構築すること及び設定された条件をもとに前記部品カタログデータベースを検索することが記載されており、前記部品カタログデータベース及び検索情報を「ファイル」として記憶することは、技術常識であることから、同引用例2に記載された事項は、本願補正発明における、「予め設計物に必要な商品情報を収集する手段と、収集された商品情報の一部をインデックス情報として記憶する第2のファイル」及び「設定された条件をもとに第2のファイルを検索し、設定された条件に該当する商品情報を取得する手段」に相当する。
設計において、部品情報リストに基づいて部品カタログから商品情報を検索し、商品情報を取得することは、人為的な行為を含め、周知慣用の技術であり、引用発明の「設計支援システム」において、引用例2に記載された構成を単に寄せ集め、部品情報リストに含まれる「商品を検索するためにの条件」に基づいて、部品カタログデータベースを検索して、条件に該当する商品情報を取得すること、及び取得した情報を部品発注リストに付加すること、即ち、部品発注リストが記録されたファイルに書き込むことは、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)相違点3について
「設計に関連する文書」を作成するにあたり、得られた種々の情報の中から文書に付加する情報を選択することは、当業者が必要に応じて選択できる事項であり、引用発明において、「設計に関連する文書」中に、「設計情報」を含む「部品情報リスト」とともに、他の手段により得られた情報を付加することは、当業者が容易になし得たことである。

(4)相違点4について
情報形式を標準化することにより、各種のソフトウェアやアプリケーション間でデータの共有及び相互利用が可能になることは、引用例2の前記「第12.(2)カ」において摘記した箇所の記載からも明らかなように、周知の技術思想である。
そして、本願補正発明と同様、設計支援技術分野における標準化された情報形式として、IFCフォーマットは、例えば、以下の刊行物a,bに記載されているように周知である。
a.「建築設計CADデータ交換の現状」、株式会社建築知識発行『CAD&CGmagazine』、平成12年5月1日、第2巻第5号、第89頁
b.山本賢司著「実務で使えるデータ交換技術を目指して進化を続けるIFC」、日経BP社発行『日経CG』、平成11年4月8日、第144-147頁
したがって、引用発明及び引用例2に記載されたものにおいて、情報形式を、周知の「IFCフォーマット」に標準化することは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、これら各相違点に係る事項を総合しても、本願補正発明の効果に当業者が予測し得ない格別顕著なものは認められない。

以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成17年11月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項にかかる発明は、平成17年8月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】設計支援ソフトウェアを用いて設計を行うクライアント端末と、設計された設計情報を所定の共通フォーマットで記憶する第1のファイルと、予め設計物に必要な商品情報を収集する手段と、収集された商品情報を記憶する第2のファイルと、前記クライアント端末で設計された設計情報に基づいて必要とする商品を検索するための条件を設定する手段と、設定された条件をもとに前記第2のファイルを検索し、設定された条件に該当する商品情報を取得する手段と、取得した商品情報を前記設計情報と同じ共通フォーマットで前記第1のファイルに書き込む手段と、前記第1のファイルに格納された設計情報及び商品情報に基づいて設計に関連する文書を作成する手段とを備えたことを特徴とする設計支援システム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から具体的限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-19 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-06 
出願番号 特願2001-6779(P2001-6779)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 功田中 幸雄  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 脇岡 剛
原 光明
発明の名称 設計支援システム  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  

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