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審決分類 審判 査定不服 3号その物の性質を専ら利用する物又はその物を取り扱う物 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D03D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D03D
管理番号 1169691
審判番号 不服2002-6450  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-15 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 平成10年特許願第533475号「エアバッグのための工業用織物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月23日国際公開、WO98/31854、平成13年 6月 5日国内公表、特表2001-507410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1998年 1月 12日(パリ条約による優先権主張1997年 1月20日、スイス国)を国際出願日とする出願であって、「エアバッグのための工業用織物」に関するものと認められる。
これに対し、平成13年 7月 9日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月17日に手続補正書が提出され、平成13年12月28日付けで拒絶の査定がされたものである。
そして、平成14年 4月15日に拒絶の査定を不服として審判請求がされたものであり、その後、平成18年 2月 3日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成18年 8月 7日に手続補正書が提出されたものである。

2.当審の拒絶理由の概要
当審において平成18年 2月 3日付けで通知した拒絶の理由の概要は、
「1.この出願は、明細書又は図面の記載に不備があるから、特許法第36条第6項及び同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない」及び、
「2.この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない」というものである。

3.当審の判断
3-1.手続補正後の明細書の記載事項
当審の拒絶理由に対して、本件出願人が平成18年 8月 7日付けで提出した手続補正書によって補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の欄には、次のとおり記載されている。
【特許請求の範囲】において、
「【請求項1】
ポリアミド製工業用織物であって、熱可塑性の太い繊維および細い繊維を具えるフィラメント糸からなり、このフィラメント糸の線密度が30?1000dtexの織物において、前記糸の前記太い繊維の線密度が5?14dtexであり、前記細い繊維の線密度が 1.5?5dtexであって、前記糸の前記太い繊維および前記細い繊維を1:1?1:5の混合比率で混合し、この多重繊維を空気で1m当たり25?40絡み合わせたことを特徴とする工業用織物。
【請求項2】
請求項1記載の織物のためのフィラメント糸の製造方法において、太い繊維のための孔(11)および細い繊維のための孔(12)を、交互に並べて配置した紡糸口金を用いることを特徴とするフィラメント糸の製造方法。」
発明の詳細な説明の欄において、
「【0009】
多重繊維を絡み合わせて用いることがさらに有利であり、1メートル当たり25?40node空気で絡み合わせることが最も適切である。」
「【0010】
混合糸は、紡糸口金を通した溶融紡糸により製造され、紡糸口金には太い繊維のための孔と細い繊維のための孔が交互に並べて配置されている。これは、太い繊維と細い繊維の混合を絡み合わせの前に行う際に有利である。・・・」
「【0014】【表1】項目欄に、「結節数(nodes/m)」」

3-2.特許法第36条第6項第2号違反について
拒絶理由の(2c)において、「請求項1の「この多重繊維に空気を1m当たり5?40nodes巻き込ませたこと」との発明特定事項に関し、この出願の願書に最初に添付した明細書の「多重繊維を撚り合わせて用いることがさらに有利であり、1メートル当たり空気を25?40nodes巻き込ませることが最も適切である。混合糸は、紡糸口金を通した溶融紡糸により製造され、紡糸口金には太い繊維のための孔と細い繊維のための孔が交互に並べて配置されている。これは、太い繊維と細い繊維の混合を撚り合わせの前に行う際に有利である。」(第3頁7?11行)及び「撚り(nodes/cm)」が「30」(第4頁、表1)との記載を参酌したとしても、前記「多重繊維に空気を・・・巻き込ませたこと」との発明特定事項の技術的事項が不明であり、また、実施例の「撚り」の項目の単位表記から、当該記載が「撚り合わせること」ないし「撚り」と同義であるとも解されるが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても「撚り」であるとも明らかとはいえず、さらに、「nodes」(node)の単位の意味及びその測定方法が、不明であるから、請求項1の前記発明特定事項の技術的事項が理解できない。」旨指摘しているものである。
上記拒絶の理由の指摘に対し、請求人は上記3-1.のとおり、請求項1に係る発明特定事項を補正して、補正事項(a)「この多重繊維を空気で1m当たり25?40絡み合わせたこと」を発明特定事項とするとともに、補正後の明細書の段落【0009】、段落【0010】及び段落【0014】のとおり補正するものである。
ところで、上記補正事項(a)の「多重繊維を空気で1m当たり25?40絡み合わせた」との記載は、「25?40」の数値の単位が何か不明であり、また、数値が「絡み合い」の何をカウントしたものか、さらに、その測定方法についても記載がなく、数値自体の意味するところが不明である。
そして、「1m当たり25?40絡み合わせた」(a1)とは、前後の記載から「多重繊維を絡み合わせた」その絡み合わせた内容を規定していると解せるが、「多重繊維を絡み合わせた」(a2)とは、多重繊維が絡み合っているということか、多重繊維を構成している太い繊維、細い繊維が絡み合わさっているということか、また、「絡み合わせる」のに空気を用いていることは明らかであるが、空気の適用の仕方、強さなど「絡み合わせる」方法が記載されていないため、「絡み合わせた」とはどのようにどの程度絡み合わさっていることなのか不明であり、絡み合わせた状態が特定できず、さらに、「絡み合わせた」ことをどのように測定したのかその測定方法も記載がないため1m当たり25?40絡み合わせたとはどのような状態のものをいうのかも不明である。
以上のとおり、(a2)の点が如何なることを意味するのか又は如何なる状態となることなのか、さらには、(a1)の点も特定できず、結局、補正事項(a)が明確ではない。

ところで、補正後の明細書によれば、「25?40」の数値は「25?40node」という意味であると伺われ、「node」は「結節」という用語で表される内容を意味するものであると解され、一応、「25?40」の数値は1メートル当たりに存在する結節数を意味し、本願明細書には「25?40結節絡み合わせた」ことが記載されているということができる。しかしながら、請求項1には上記補正事項(a)としか記載されておらず、上記したとおり補正事項(a)は不明である。例え、「25?40絡み合わせた」との記載の「絡み合わせた」が「結節」を意味するとしても、「結節」が絡み合わせたどのような状態を意味するものか特定できず、また、そのような結節の数をどのように測定するのか記載がなく、やはり、絡み合わせた状態が不明であり、依然として、発明が明確であるとはいえない。

また、本件請求人は、平成18年 8月 7日付けで提出した意見書において、「すなわち、「node(s)」という語句は、フィラメント糸の製造技術分野の当業者には、エアー交絡(フィラメント糸に空気を吹き付けてフィラメントの絡み合いを部分的に発生させる加工)によりフィラメントが絡み合った部分である「結節」を意味することは良く知られています。この「node(s)」を記述する他の言葉は「knot(s)」すなわち結び目であり、エアー交絡方法、node計測方法および装置は、当業者に良く知られています」と主張している。
しかしながら、主張の根拠となる資料等を何ら示すこともなく、しかも、「エアー交絡」によりフィラメント糸を「交絡」させ、嵩高な繊維としたり、繊維を不織布状にする技術が知られているところであるが、上記のとおり請求項の「多重繊維を1m当たり25?40絡み合わせた」との記載の本願発明にいう「絡み合わせた」との記載が、発明の詳細な説明の欄の「25?40node空気で絡み合わせた」との記載と一致しておらず、請求項にいう「絡み合わせた」が、単に嵩高な繊維とする「交絡」や不織布を製造する時のエアを使ったニードリングによる「交絡」といった意味の「交絡」を意味しているものか、「結節」というこの用語の意味するところ自体明確ではない「結節」なるものを生じさせるように「絡み合わせ」たことを意味しているものか、記載からは明確ではなし、「交絡」と「結節」が同じものであるなどとは到底認めることはできないから、やはり、補正事項(a)の点は明確であるとはいえない。
さらに、「25?40絡み合わせた」が、「多重繊維」に「1m当たり25?40」の「結節」を生じさせるという意味であったとしても、「1m当たり25?40」の「結節」を生じさせる方法および装置、その「結節」の測定方法および装置等については、本件出願人の主張によっても、また、本願明細書の記載をみても依然として不明である。

以上のとおりであるから、「1m当たり25?40」あるものが「絡み合わせ」であるか、また、該「絡み合わせ」とは具体的には何を意味するものであって、それは計数できるものか、さらには、その測定する方法も不明であるから、上記発明特定事項が不明であるので、結局、本件請求項1に係る発明が依然として明確ではない。

3-3.特許法第37条違反について
本願の請求項1に係る発明(「特定発明」ともいう)は、「工業用織物」に係る物の発明である。これに対して、本件請求項2に係る発明は「請求項1記載の織物のための」と特定しているものの「フィラメント糸の製造方法」に係る発明であり、特定発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明とも、特定発明と産業上の利用分野及び請求項に記載する事項の主要部が同一である発明ともいえない。
また、本件請求項2に係る「フィラメント糸の製造方法」の発明は、前記特定発明に係る「工業用織物」を製造する方法ではないし、また、その特定発明の「工業用織物」を使用する方法の発明、その「工業用織物」を取り扱う方法の発明、その「工業用織物」を生産する機械、器具、装置その他の物の発明、その「工業用織物」の特定の性質を専ら利用する物の発明又はその「工業用織物」を取り扱う物の発明のいずれにも当たらない。
したがって、いずれを特定発明にしても、特許法第37条第1項各号に掲げられた要件に該当するものとはいえないから、一の願書で特許出願をすることができるものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第2号及び同法第37条に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-15 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-06 
出願番号 特願平10-533475
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (D03D)
P 1 8・ 643- WZ (D03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 則義  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 川端 康之
澤村 茂実
発明の名称 エアバッグのための工業用織物  
代理人 杉村 興作  

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