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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B66B
審判 訂正 5項独立特許用件 訂正しない B66B
管理番号 1169735
審判番号 訂正2006-39079  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-05-22 
確定日 2007-12-13 
事件の表示 特許第3502270号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.経緯
特許第3502270号に係る発明についての出願は、平成10年7月13日に特許出願され、平成15年12月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成18年5月22日に本件審判の請求がなされ、当審において、平成18年7月12日付けで、期間を指定して訂正拒絶の理由を通知したところ、これに対し、平成18年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、「特許第3502270号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを認める、との審決を求める。」(以下、本件審判請求書に添付した訂正明細書を「訂正明細書」という。)というもので、次の訂正事項1、2のとおり訂正することを求めるものである。(なお、第5.以下、「訂正明細書」は、平成18年8月8日付け手続補正書により補正された訂正明細書を指すものとする。)

1.訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】 昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、
この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、
かごガイドレール、
上記巻上機の駆動により、上記かごガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降するかご、
上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、
上記重りガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降する釣合重り、
上記昇降路内に設置され、上記巻上機から上記巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールを支持するレール支持梁、
上記ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、及び上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かごと上記釣合重りとを吊り下げる主ロープを備えていることを特徴とするエレベータ装置。」を、
「【請求項1】昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、
この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、
かごガイドレール、
上記巻上機の駆動により、上記かごガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降するかご、
上記かごに設けられている回転自在のかご吊り車、 上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、
上記重りガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降する釣合重り、
上記釣合重りに設けられている回転自在の重り吊り車、 上記昇降路内に設置され、上記巻上機から上記巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールを支持するレール支持梁、
上記ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、 上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かご吊り車を介して上記かごを吊り下げるとともに上記重り吊り車を介して上記釣合重りを吊り下げる主ロープ、及び 上記ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材を備え、 上記返し車は、上記巻上機の綱車から上記かご吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在のかご側返し車と、上記巻上機の綱車から上記重り吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在の重り側返し車からなり、 上記レール支持梁は、上記かごの重量及び釣合重りの重量が上記かご側返し車、上記重り側返し車、及び上記一対の綱止め部材を介して上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールに作用することによる下向きの力により上記上向きの力を相殺させることを特徴とするエレベータ装置。」と訂正する。

2.訂正事項2
特許明細書の【発明が解決しようとする課題】の段落【0012】の
「【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係るエレベータ装置は、昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、かごガイドレール、巻上機の駆動により、かごガイドレールに案内されて昇降路内を昇降するかご、上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、重りガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する釣合重り、昇降路内に設置され、巻上機から巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、かごガイドレール及び重りガイドレールを支持するレール支持梁、ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、及び巻上機の綱車及び返し車に巻き掛けられ、かごと釣合重りとを吊り下げる主ロープを備えたものである。また、この発明に係るエレベータ装置は、昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、昇降路内に設置され、巻上機から巻上機支持台に作用する上向きの力を受けるかごレール支持梁及び重りレール支持梁、かごレール支持梁に支持されているかごガイドレール、巻上機の駆動により、かごガイドレールに案内されて昇降路内を昇降するかご、かごガイドレールと間隔をおいて設置され、重りレール支持梁に支持されている重りガイドレール、重りガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する釣合重り、ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、及び巻上機の綱車及び返し車に巻き掛けられ、かごと釣合重りとを吊り下げる主ロープを備えたものである。」を、
「【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係るエレベータ装置は、この発明に係るエレベータ装置は、昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、かごガイドレール、上記巻上機の駆動により、上記かごガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降するかご、上記かごに設けられている回転自在のかご吊り車、上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、上記重りガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降する釣合重り、上記釣合重りに設けられている回転自在の重り吊り車、上記昇降路内に設置され、上記巻上機から上記巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールを支持するレール支持梁、上記ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かご吊り車を介して上記かごを吊り下げるとともに上記重り吊り車を介して上記釣合重り車を介して上記釣合重りを吊り下げる主ロープ、及び上記ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材を備え、上記返し車は、上記巻上機の綱車から上記かご吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在のかご側返し車と、上記巻上機の綱車から上記重り吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在の重り側返し車からなり、上記レール支持梁は、上記かごの重量及び釣合重りの重量が上記かご側返し車、上記重り側返し車、及び上記一対の綱止め部材を介して上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールに作用することによる下向きの力により上記上向きの力を相殺させるものである。 また、この発明に係るエレベータ装置は、昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、昇降路内に設置され、巻上機から巻上機支持台に作用する上向きの力を受けるかごレール支持梁及び重りレール支持梁、かごレール支持梁に支持されているかごガイドレール、巻上機の駆動により、かごガイドレールに案内されて昇降路内を昇降するかご、かごガイドレールと間隔をおいて設置され、重りレール支持梁に支持されている重りガイドレール、重りガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する釣合重り、ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、及び巻上機の綱車及び返し車に巻き掛けられ、かごと釣合重りとを吊り下げる主ロープを備えたものである。」(審判請求書に添付した訂正明細書)と訂正する。

第3.訂正拒絶理由の概要
平成18年7月12日付けで通知した訂正拒絶の理由の理由1ないし2の概要は、以下のようなものである。

1.理由1
本件訂正に含まれる訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するが、訂正明細書の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に刊行された刊行物である実公昭63-4058号公報および実願昭56-198591号(実開昭58-99273号)のマイクロフィルムにより、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであって、訂正事項1は特許法第126条第5項の規定に適合しないので、訂正事項1を含む本件訂正は認められない。

2.理由2
訂正事項2は、「【課題を解決するための手段】この発明に係るエレベータ装置は、」なる記載を「【課題を解決するための手段】この発明に係るエレベータ装置は、この発明に係るエレベータ装置は、」と誤記を含む記載に訂正しようとするものであり、特許法第126条第1項ただし書き第1号ないし第3号のいずれの事項を目的とするものでない。
(なお、審判請求書第4頁第23行ないし第5頁第26行の記載は、訂正明細書第4頁第24行ないし第5頁第24行の記載と対応していない。)

第4.訂正拒絶の理由に対する意見書での主張概要と手続補正
1.訂正拒絶の理由に対する意見書での主張概要
請求人は、 平成18年8月8日付け意見書において、概ね以下の(1)、(2)のように主張している。
(1)ア.「刊行物2記載の発明、技術思想について・・・立設部材(2)は中間部をブラケット(2a)により昇降路(1)の周壁に支持され、立設されています。しかも、ブラケット(2a)は、第2図を見れば明らかなとおり、立設部材(2)を建物躯体と結合するものであると推考できます。このため、立設部材(2)の重量による下向きの力はブラケット(2a)を介して昇降路(1)の周壁に作用しているか、または、支持部材(7)の上面に作用しているかについては不明であると解釈するのが妥当であります。
従いまして、「支持部材(7)の上面には立設部材(2)の重量による下向きの力が作用している」という技術思想が開示されていると解釈することまでは、論理的に飛躍があるものと考えます。・・・刊行物2において、立設部材(2)にかごの重量や釣合重りの重量を負担させるとの記述はどこにもなく、そのような思想は、記載も示唆もされていません。」(平成18年8月8日付け意見書第5頁第3行から第25行)
イ.「立設部材(2)の重量による下向きの力はブラケット(2a)を介して昇降路(1)の周壁に作用しているか支持部材(7)の上面に作用しているかについては不明であると解釈するのが妥当である以上、支持部材によって上向きの力と下向きの力とが相殺されているという技術思想が開示されていると解釈することは、さらに論理的に飛躍があるものと考えます。・・・刊行物2は、支持部材(7)にかかる上向きの力は、アンカーボルトの使用を避けるとはいうものの、究極的には建物に伝えられるという思想に基づくものであると同時に、かごの重量も建物によって支持されることを前提としています。力学的な事実の問題としては、これらは、建物を介して相殺されることになりますが、刊行物2には、そもそも、これらが相殺されるという技術思想は記載も示唆もされていません。」(平成18年8月8日付け意見書第6頁第8行から第26行)
ウ.「刊行物2記載の発明は、アンカーボルトを埋設する手数をなくすために、支持部材(7)を介して上向きの荷重を建物に伝達させるという発明であると解釈されます。
すなわち、支持部材(7)は、巻上機に作用する上向きの力を、立設部材(2)及びブラケット(2a)を介して昇降路(1)の周壁に伝達させる機能を持たせたものとして記載されているものであり、それ以上の何ものでもなく、支持部材において、巻上機に作用する上方向の荷重と立設部材に作用している下方向の力とが釣り合っていることなど、一切記載されておらず、示唆もされていません。・・・刊行物2に開示されているのは、巻上機に加わる上向きの力を建物、つまり昇降路の周壁に伝達するという技術思想が示されているにすぎず、レール支持梁にて上向きの力と下向きの力とを相殺するという技術思想までは開示されていないものであります。」( 平成18年8月8日付け意見書第7頁第12行から第8頁第7行)

(2)「刊行物1記載の発明に対して刊行物2記載の技術思想を適用する点について・・・付言すれば、刊行物2に記載されたエレベータ装置は釣合重りを有さずにかごを駆動する巻胴式のエレベータ装置を対象としているものであり、刊行物1に記載されたエレベータ装置と全く対象を異にしており、しかも、巻上機の設置の仕方が全く異なるものでありますから、単純には刊行物2に示されたものを刊行物1に示されたものに適用して考えることはできないものであります。さらに、刊行物1及び刊行物2ともに、かごガイドレール及び重りガイドレールは昇降路の周壁に支持された構造をとり、建物に荷重をかけることを前提としている以上、訂正発明における、かごガイドレール及び重りガイドレールをレール支持梁で支持する構成とし、かごの重量及び釣合重りの重量がかご側返し車、重り側返し車、及び一対の綱止め部材を介してかごガイドレール及び重りガイドレールに作用する下向きの力と、巻上機に作用する上向きの力とを相殺させるという技術解決手段(技術思想)までは、例え当業者と言えども容易に推考できないものと思料致します。」( 平成18年8月8日付け意見書第8頁第15行から第9頁第13行)

2.手続補正の内容とその適否
平成18年8月8日付け手続補正書による補正は、平成18年5月22日付け審判請求書に添付した訂正明細書の訂正事項2に係わる「この発明に係るエレベータ装置は、この発明に係るエレベータ装置は、」なる記載を、「この発明に係るエレベータ装置は、」なる記載に補正し、平成18年5月22日付け審判請求書に添付した訂正明細書の段落【0017】の「図1010」なる記載、段落【0022】の「図8R>8」なる記載を、それぞれ、「図10」、「図8」に補正するものである。
そして、特許明細書の記載、平成18年5月22日付け審判請求書の記載からみて、この補正は極めて明らかな誤記の補正であるから、平成18年8月8日付け手続補正書による補正を認める。

第5.訂正の適否についての判断
1.上記訂正事項について、訂正の目的の適否について検討する。
(1)訂正事項1
訂正事項1は、「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台・・・を備えていることを特徴とするエレベータ装置。」を「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台・・・上記かごに設けられている回転自在のかご吊り車、・・・上記釣合重りに設けられている回転自在の重り吊り車、・・・上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かご吊り車を介して上記かごを吊り下げるとともに上記重り吊り車を介して上記釣合重り車を介して上記釣合重りを吊り下げる主ロープ、及び
上記ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材を備え、
上記返し車は、上記巻上機の綱車から上記かご吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在のかご側返し車と、上記巻上機の綱車から上記重り吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在の重り側返し車からなり、
上記レール支持梁は、上記かごの重量及び釣合重りの重量が上記かご側返し車、上記重り側返し車、及び上記一対の綱止め部材を介して上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールに作用することによる下向きの力により上記上向きの力を相殺させることを特徴とするエレベータ装置。」とし、要するに、主ロープの配置、レール支持梁の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件
次に、上記訂正事項1に関し、訂正明細書の請求項1に係る発明について独立特許要件の検討を行う。

2-1.訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、
この巻上機支持台上に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、
かごガイドレール、
上記巻上機の駆動により、上記かごガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降するかご、
上記かごに設けられている回転自在のかご吊り車、
上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、
上記重りガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降する釣合重り、
上記釣合重りに設けられている回転自在の重り吊り車、
上記昇降路内に設置され、上記巻上機から上記巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールを支持するレール支持梁、
上記ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、
上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かご吊り車を介して上記かごを吊り下げるとともに上記重り吊り車を介して上記釣合重り車を介して上記釣合重りを吊り下げる主ロープ、及び
上記ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材を備え、
上記返し車は、上記巻上機の綱車から上記かご吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在のかご側返し車と、上記巻上機の綱車から上記重り吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在の重り側返し車からなり、
上記レール支持梁は、上記かごの重量及び釣合重りの重量が上記かご側返し車、上記重り側返し車、及び上記一対の綱止め部材を介して上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールに作用することによる下向きの力により上記上向きの力を相殺させることを特徴とするエレベータ装置。」

2-2.刊行物1記載の発明
(1)実公昭63-4058号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「第3図ないし第5図はこの考案の一実施例を示す。
図中、同一又は相当部分は同一符号で示し、図において4aは鞍形に形成され、鞍部が右側かご用レール4の背面に固定され、脚部が右壁1eに固定されたレールブラケツト、7は右側かご用レール4に対向する部位よりもかご出入口5a側のかご5底部に設けられたかご用つり車、8は同様に左側かご用レール3に対向する部位よりもかご出入口5a側のかご5底部に設けられ、かご用つり車7に対して間口方向に並設されたかご用つり車、9は鞍形断面を有し、脚部を昇降路1側へ向け、鞍部を右壁1eに固定されて立設されたおもり用レール、11は断面がコ字状に形成されたつり合おもりで、凹所をおもり用レール9に対向させて昇降自在に係合されている。12はつり合おもりの頂部に設けられたおもり用つり車、13は昇降路1の底部に設けられた巻上機、13aはこの巻上機13のシーブで、直径d1の平盤状に形成され、回転軸を間口方向へ向けて右壁1e面と右かご用レール4の背面の間に配設されたものである。14は少なくともシーブ13aよりも上部で、かご5が最上階から更に上方へ行過ぎたとしてもかご用つり車7と干渉しない高さに設けられた半径r1の第1のつり車で、回転軸に直交する回転面がシーブ13aの回転面と同一面であり、かつ、第1のつり車14の回転軸とシーブ13aの回転軸の水平投影面における距離S11がそれぞれの半径の和(r1+d1/2)よりも小さくなるように配設されている。15は第1のつり車14よりも後壁1d側でかつ、回転面が同じになるように配設された半径r2の第2のつり車で、その回転軸とシーブ13aの回転軸の水平投影面上における距離S12がそれぞれの半径の和・・・よりも小さくなるように配設されている。17はシーブ13aに下側から巻き掛けられた主索で、一側が立ち上げられて第1のつり車14に上側から巻き掛けられ、更にかご用つり車7,8に下側から巻き掛けられて立ち上げられ、最上部のレールブラケツト3aに固定され、他側が第2のつり車15に上側から巻き掛けられ、更におもり用つり車12を介して止め板17aに固定されている。19は一端が手前の右壁1eに固定されて昇降路1側へ屈曲され、更に、後壁1d側へ屈曲されて途中右側かご用レール4の背面に固定されて他端がおもり用レール9に固定された支持材で、右側かご用レール4の反対側の面に第1のつり車14及び第2のつり車15及びつな止め板17aが取り付けられている。
上記構成のロープ式エレベータにおいて、巻上機13のシーブ13aが、第3図の矢印C方向へ回転すると主索17がかご5側からつり合おもり11側へ送られてかご5を上昇させ、逆に、第2図の矢印D方向へ回転すると主索17がつり合おもり11側からかぎ5側へ送られてかご5を下降させるものである。」(第2頁第4欄第19行から第3頁第5欄第30行。「かぎ5」は「かご5」の誤り。)

(2)ここで、上記記載事項ア.及び第1図ないし第5図から、次のことがわかる。

ア.上記記載事項(1)ア.における「13は昇降路1の底部に設けられた巻上機、13aはこの巻上機13のシーブで、・・・ある。」から、ロープ式エレベータにおいて、シーブ13aを有する巻上機13は、昇降路の底部に設置されていることがわかる。

イ.上記記載事項(1)ア.における「3はレールブラケツト3aを介して適当箇所左壁1fに固定されて立設された左側かご用レール、4はこの左側かご用レール3と対向して立設され、レールブラケツト4aを介してレール支持梁2に固定された右側かご用レール5は左側かご用レール3及び右側かご用レール4にそれぞれ両側部を案内されて昇降するかご・・・である。」から、かご用レール3、4を備えていること、かご用レール3、4に案内されて昇降するかご5を備えていることがわかる。

ウ.上記記載事項(1)ア.における「7は右側かご用レール4に対向する部位よりもかご出入口5a側のかご5底部に設けられたかご用つり車、8は同様に左側かご用レール3に対向する部位よりもかご出入口5a側のかご5底部に設けられ、かご用つり車7に対して間口方向に並設されたかご用つり車」から、かご5には、かご用吊り車7,8が設けられていることがわかる。

エ.上記記載事項(1)ア.における「9は鞍形断面を有し、脚部を昇降路1側へ向け、鞍部を右壁1eに固定されて立設されたおもり用レール、11は断面がコ字状に形成されたつり合おもりで、凹所をおもり用レール9に対向させて昇降自在に係合されている。」、及び、第4図から、おもり用レール9が、左側かご用レール3、右側かご用レール4と間隔をおいて設置されていること、つり合おもり11は、おもり用レール9に案内されて昇降することがわかる。

オ.上記記載事項(1)ア.における「12はつり合おもりの頂部に設けられたおもり用つり車」から、つり合いおもり11におもり用つり車12が設けられていることがわかる。

カ.上記記載事項(1)ア.における「19は一端が手前の右壁1eに固定されて昇降路1側へ屈曲され、更に、後壁1d側へ屈曲されて途中右側かご用レール4の背面に固定されて他端がおもり用レール9に固定された支持材で、右側かご用レール4の反対側の面に第1のつり車14及び第2のつり車15及びつな止め板17aが取り付けられている。」から、支持材19は右側かご用レール4及びおもり用レール9に固定されていること、第1のつり車14及び第2のつり車15が支持材19に取り付けられていること、したがって、第1のつり車14及び第2のつり車15は、右側かご用レール4及びおもり用レール9により支持されていることがわかる。また、右側かご用レール4の背面、おもり用レール9に固定された支持材は、右壁1eに固定されていることがわかる。

キ.上記記載事項(1)ア.における「17はシーブ13aに下側から巻き掛けられた主索で、一側が立ち上げられて第1のつり車14に上側から巻き掛けられ、更に、かご用つり車7,8に下側から巻き掛けられて立ち上げられ、昇降路頂部18に固定され、他側が立ち上げられて第2のつり車15及び第3のつり車16に上側から巻き掛けられ、更に、おもり用つり車12に下側から巻き掛けられて立ち上げられ、昇降路頂部18に固定されている。」から、主索17は、シーブ13a及び第1のつり車14に巻き掛けられ、更に、かご用つり車7,8を介してかご5を吊り下げるとともに、おもり用つり車12を介してつり合いおもり11を吊り下げていることがわかる。

ク.上記記載事項(1)ア.における「17はシーブ13aに下側から巻き掛けられた主索で、一側が・・・最上部のレールブラケツト3aに固定され、他側が・・・止め板17aに固定されている。」、「19は・・・一端が手前の右壁1eに固定されて・・・途中右側かご用レール4の背面に固定されて他端がおもり用レール9に固定された支持材で、・・・つな止め板17aが取り付けられている。」、及び、第3図、第4図から、つな止め板17aは右側かご用レール4に支持されて、主索17の端部は、レールブラケット3a、つな止め板17aに固定されていることがわかる。また、レールブラケット3aは左側かご用ガイドレール3を壁に固定するものであるから、左側かご用ガイドレール3に取り付けられた綱止め部材としての機能を有していることがわかる。よって、レールブラケット3a、つな止め板17aは、それぞれ綱止め部材として機能していることがわかる。

ケ.上記記載事項(1)ア.における「17はシーブ13aに下側から巻き掛けられた主索で、一側が立ち上げられて第1のつり車14に上側から巻き掛けられ、更にかご用つり車7,8に下側から巻き掛けられて立ち上げられ、最上部のレールブラケツト3aに固定され、他側が第2のつり車15に上側から巻き掛けられ、更におもり用つり車12を介して止め板17aに固定されている。19は一端が手前の右壁1eに固定されて昇降路1側へ屈曲され、更に、後壁1d側へ屈曲されて途中右側かご用レール4の背面に固定されて他端がおもり用レール9に固定された支持材で、右側かご用レール4の反対側の面に第1のつり車14及び第2のつり車15及びつな止め板17aが取り付けられている。」から、つり車は、シーブ13aからかご用つり車7,8に至る主索17が巻き掛けられている第1のつり車14、シーブ13aからおもり用つり車12に至る主索17が巻き掛けられている第2のつり車15からなることがわかる。

(3)刊行物1記載の発明
上記記載事項(1)、(2)から、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。

「昇降路の底部に設置されているシーブ13aを有する巻上機、
かご用レール3、4、
巻上機の駆動により、かご用レール3、4に案内されて昇降路内を昇降するかご5、
かご5に設けられているかご用吊り車7,8、
左側かご用レール3、右側かご用レール4と間隔をおいて設置されているおもり用レール9、
おもり用レール9に案内されて昇降路内を昇降するつり合おもり11、
つり合いおもり11に設けられているおもり用つり車12、
右側かご用レール4の背面、おもり用レール9を固定するとともに右壁1eに固定されている支持材19、
右側かご用レール4及びおもり用レール9により支持されている第1のつり車14及び第2のつり車15、
シーブ13a及び第1のつり車14に巻き掛けられ、かご用つり車7,8を介してかご5を吊り下げるとともに、おもり用つり車12を介してつり合いおもり11を吊り下げている主索17、及び
左側かご用ガイドレール3、右側かご用レール4に支持され、主索17の端部に固定されている一対の綱止め部材、
つり車は、シーブ13aからかご用つり車7,8に至る主索17が巻き掛けられている第1のつり車14、シーブ13aからおもり用つり車12に至る主索17が巻き掛けられている第2のつり車15からなる、
ロープ式エレベータ。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2-3.刊行物2記載の発明
(1)実願昭56-198591号(実開昭58-99273号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「2.実用新案登録請求の範囲
昇降路を昇降するかごに連結された主索が上記昇降路の下部に設置された巻上機に巻き掛けられたものにおいて、上記昇降路に設けられた立設部材の下端に一部が固定され他部には上記巻上機が装着された支持部材を備えたことを特徴とするベースメント形エレベータ。」(明細書第1頁第4行から第10行。)

イ.「3.考案の詳細な説明
この考案はベースメント形エレベータの改良構造に関するものである。
まず、第1図によって従来のベースメント形エレベータを説明する。
図中、(1)はエレベータの昇降路で、(1a)はこれの頂部、(1b)は産部、(2)は昇降路(1)に互いに離れて立設されたレールで、(2a)はこれの中間部を昇降路(1)の周壁に支持したブラケット、(3)はレール(2)に移動可能に係合されたかご、(4)は頂部(1a)に枢着された案内車、(5)は底部(1b)にアンカーボルト(5a)によって固定された巻上機で、(5b)はこれの巻胴(5b)に一端が固定されて巻き掛けられて上方に延び案内車(4)に巻き掛けられ、他端でかご(3)を吊持した主索である。
すなわち、巻上機(5)が付勢され主索(6)を介してかご(3)が駆動されて、かご(3)はレール(2)に案内されて昇降する。そして巻上機(5)に常時上方向の荷重が作用するために強固なアンカーボルト(5a)が必要となる。また底部(1b)は一般に防水モルタルによって仕上げられていて、アンカーボルト(5a)の埋設に煩雑な手数が掛かる不具合があった。
この考案は上記の欠点を解消するもので、昇降路の下部に巻上機が簡易な手段によって設置されたベースメント形エレベータを提供しようとするものである。
以下、第2、第3図によってこの考案の一実施例を説明する。
図中、第1図と同符号は相当部分を示し、(7)は形鋼材が底部(1b)に横たえられてなる支持部材、(2)は支持部材(7)の上面に下端が接して配置され取付金具(2b)を介して固定されて立設されたレールからなる立設部材、(5)は支持部材(7)が立設部材(2)の相互間外へ延長された箇所にボルト(5c)によって固定された巻上機である。
すなわち、巻上機(5)に作用する上方向の荷重は支持部材(7)を介して立設部材(2)、ブラケット(2a)によって支持される。このため巻上機(5)の固定のためのアンカーボルトの埋設等の手数を省くことができる。また、支持部材(7)によってレールと巻上機(5)の相対位置が自動的に決定されるので、巻上機(5)を容易に所定位置に設置することができる。
なお、この実施例における立設部材(2)が建築駆体の柱、他のエレベータ機器からなるものであっても第2、第3図の実施例とほぼ同様な作用が得られることは明白である。
以上説明したとおりこの考案は、昇降路の下部に配置された巻上機を昇降路に設けられた立設部材の下端に一部が固定された支持部材の他部に装着したので、巻上機に作用する上方向の荷重が支持部材を介して立設部材によって支持されるため、簡単な構造で容易に巻上機を設置することができる安価なベースメント形エレベータを実現するものである。
4.図面の簡単な説明
第1図は従来のベースメント形エレベータを示す要部縦断面概念図、第2図はこの考案によるベースメント形エレベータの一実施例を示す第1図相当図、第3図は第2図の要部横断平面図である。
(1)…昇降路、(2)…立設部材、(3)…かご、(5)…巻上機、(6)…主索、(7)…支持部材
なお、図中同一部分または相当部分は同一符号により示す。」(明細書第1頁第11行から第4頁第6行。「(1b)は産部」は「(1b)は底部」の誤り。)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしイ.及び、第1図ないし第3図から、次のことがわかる。

ア.上記記載事項(1)イ.における「(7)は形鋼材が底部(1b)に横たえられてなる支持部材、(2)は支持部材(7)の上面に下端が接して配置され取付金具(2b)を介して固定されて立設されたレールからなる立設部材、(5)は支持部材(7)が立設部材(2)の相互間外へ延長された箇所にボルト(5c)によって固定された巻上機である。」、及び、第2図から、支持部材(7)は、昇降路の底部(1b)に設置されていること、巻上機(5)は、支持部材(7)が立設部材(2)の相互間外へ延長された箇所に設置されていることがわかる。また、立設部材(2)はレールからなるものであることがわかる。
また、上記記載事項(1)イ.における「(2)は昇降路(1)に互いに離れて立設されたレールで、(2a)はこれの中間部を昇降路(1)の周壁に支持したブラケット、」なる記載から、ブラケット(2a)は、レールの中間部を昇降路(1)の周壁に支持していることがわかる。

イ.上記記載事項(1)イ.における「第1図によって従来のベースメント形エレベータを説明する。図中、(1)はエレベータの昇降路で、・・・(2)は昇降路(1)に互いに離れて立設されたレールで、・・・(3)はレール(2)に移動可能に係合されたかご、(4)は頂部(1a)に枢着された案内車、(5)は底部(1b)にアンカーボルト(5a)によって固定された巻上機で、(5b)はこれの巻胴(5b)に一端が固定されて巻き掛けられて上方に延び案内車(4)に巻き掛けられ、他端でかご(3)を吊持した主索である。」、及び、「以下、第2、第3図によってこの考案の一実施例を説明する。図中、第1図と同符号は相当部分を示し、」なる記載から、第2、3図に係るベースメント形エレベータは、レール(2)、巻上機(5)の駆動によりレール(2)に案内されて昇降路内を昇降するかご(3)を備えていることがわかる。

ウ.上記記載事項(1)イ.における「巻上機(5)が付勢され主索(6)を介してかご(3)が駆動されて、かご(3)はレール(2)に案内されて昇降する。そして巻上機(5)に常時上方向の荷重が作用するために強固なアンカーボルト(5a)が必要となる。・・・この考案は上記の欠点を解消するもので、昇降路の下部に巻上機が簡易な手段によって設置されたベースメント形エレベータを提供しようとするものである。」、及び、「巻上機(5)に作用する上方向の荷重は支持部材(7)を介して立設部材(2)、ブラケット(2a)によって支持される。このため巻上機(5)の固定のためのアンカーボルトの埋設等の手数を省くことができる・・・この考案は、昇降路の下部に配置された巻上機を昇降路に設けられた立設部材の下端に一部が固定された支持部材の他部に装着したので、巻上機に作用する上方向の荷重が支持部材を介して立設部材によって支持されるため、簡単な構造で容易に巻上機を設置することができる安価なベースメント形エレベータを実現するものである。」なる記載から、支持部材(7)は巻上機(5)に作用する上方向の荷重を受けることがわかる。

エ.上記記載事項(1)イ.における「(2)は支持部材(7)の上面に下端が接して配置され取付金具(2b)を介して固定されて立設されたレールからなる立設部材」なる記載から、レールからなる立設部材(2)は支持部材(7)の上面に接して配置されていることがわかる。

オ.上記記載事項(1)イ.における「巻上機(5)が付勢され主索(6)を介してかご(3)が駆動されて、かご(3)はレール(2)に案内されて昇降する。そして巻上機(5)に常時上方向の荷重が作用するために強固なアンカーボルト(5a)が必要となる。また底部(1b)は一般に防水モルタルによって仕上げられていて、アンカーボルト(5a)の埋設に煩雑な手数が掛かる不具合があった。
この考案は上記の欠点を解消するもので、昇降路の下部に巻上機が簡易な手段によって設置されたベースメント形エレベータを提供しようとするものである。」、「昇降路の下部に配置された巻上機を昇降路に設けられた立設部材の下端に一部が固定された支持部材の他部に装着したので、巻上機に作用する上方向の荷重が支持部材を介して立設部材によって支持されるため、簡単な構造で容易に巻上機を設置することができる」なる記載、及び、上記記載事項(2)エ.における「レールからなる立設部材(2)は支持部材(7)の上面に接して配置されている」から、巻上機に作用する上方向の荷重は、支持部材(7)の立設部材(2)と接する個所において上方向の力となって働いているが、立設部材(2)が上方向に移動しないことは当然であるから、立設部材(2)には下方向の力が作用して前記上方向の力と釣り合っていること、つまり、上向きの力と下向きの力とが相殺されていることがわかる。

(3)刊行物2記載の発明
上記記載事項(1)、(2)から、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。

「昇降路の底部(1b)に設置されている支持部材(7)、
この支持部材(7)の立設部材(2)の相互間外へ延長された箇所に設置されている巻上機(5)、
支持部材(7)の上面に接して配置されて、ブラケット(2a)により、中間部を昇降路(1)の周壁に支持されている、レールからなる立設部材(2)、
上記巻上機(5)の駆動により、レール(2)に案内されて昇降路内を昇降するかご(3)を備え、
支持部材(7)においては、立設部材(2)に作用している下向きの力と、巻上機(5)に作用する上方向の力とが相殺されるベースメント形エレベータ。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

2-4.対比
訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「シーブ13a」、「巻上機」、「かご用レール3、4」、「かご5」、「かご用吊り車7,8」、「おもり用レール9」、「つり合おもり11」、「おもり用つり車12」、「第1のつり車14及び第2のつり車15」、「主索17」、「左側かご用ガイドレール3、右側かご用レール4に支持され、主索17の端部に固定されている一対の綱止め部材」、「第1のつり車14」、「第2のつり車15」、「ロープ式エレベータ」が、訂正発明における「回転可能な綱車」、「巻上機」、「かごガイドレール」、「かご」、「かご吊り車」、「重りガイドレール」、「釣合重り」、「重り吊り車」、「回転自在の返し車」、「主ロープ」、「ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材」、「かご側返し車」、「重り側返し車」、「エレベータ装置」に相当する。
したがって、両発明は、
「昇降路の底部に設置され、回転可能な綱車を有する巻上機、
かごガイドレール、
上記巻上機の駆動により、上記かごガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降するかご、
上記かごに設けられている回転自在のかご吊り車、
上記かごガイドレールと間隔をおいて設置されている重りガイドレール、
上記重りガイドレールに案内されて上記昇降路内を昇降する釣合重り、
上記釣合重りに設けられている回転自在の重り吊り車、
上記ガイドレールにより支持されている回転自在の返し車、
上記巻上機の綱車及び上記返し車に巻き掛けられ、上記かご吊り車を介して上記かごを吊り下げるとともに上記重り吊り車を介して上記釣合重り車を介して上記釣合重りを吊り下げる主ロープ、及び
上記ガイドレールにより支持され、それぞれが上記主ロープの端部に固定されている一対の綱止め部材を備え、
上記返し車は、上記巻上機の綱車から上記かご吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在のかご側返し車と、上記巻上機の綱車から上記重り吊り車に至る上記主ロープが巻き掛けられている回転自在の重り側返し車からなる、エレベータ装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点>
訂正発明においては「回転可能な綱車を有する巻上機」は「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台」上に設置されており、「上記昇降路内に設置され、上記巻上機から上記巻上機支持台に作用する上向きの力を受け、上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールを支持するレール支持梁」を備え、「上記レール支持梁は、上記かごの重量及び釣合重りの重量が上記かご側返し車、上記重り側返し車、及び上記一対の綱止め部材を介して上記かごガイドレール及び上記重りガイドレールに作用することによる下向きの力により上記上向きの力を相殺させる」という構成を備えているのに対し、刊行物1記載の発明においては、巻上機は昇降路の底部に設置されているが、訂正発明における巻上機支持台とレール支持梁からなる部材に相当する部材を有しておらず、右側かご用レール4及びおもり用レール9は支持材19を介して右壁1eに固定されている点。

2-5.判断
刊行物2記載の発明と訂正発明とを比較すると、刊行物2記載の発明の「昇降路の底部(1b)」、「支持部材(7)」、「立設部材(2)」、「巻上機(5)」、「レール(2)」、「かご(3)」、「ベースメント形エレベータ」は、訂正発明の「昇降路の底部」、「巻上機支持台」、「かごガイドレール」、「巻上機」、「かごガイドレール」、「かご」、「エレベータ装置」に相当する。

したがって、刊行物2記載の発明には、「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台、この巻上機支持台に設置されている巻上機、上記巻上機の駆動により、かごガイドレールに案内されて昇降路内を昇降するかごを備え、巻上機支持台においては、レールに作用している下向きの力と、巻上機に作用する上方向の力とが相殺されるエレベータ装置。」が示されている。

また、かごガイドレール及び重りガイドレールを昇降路の壁に固定するのでなく、エレベータ装置自身の部材によってガイドレールを支持する構造のエレベータ装置は本件特許出願前に周知の技術的事項(特開平7-228454号公報、特開平8-198550号公報、特開平3-98985号公報、特開平1-156289号公報参照、建設省住宅局建築指導課監修,「ホームエレベーターの本 -ホームエレベーターのある住まいの計画と設計- 1989年版」,日本建築センター,平成元年6月10日発行,p.24。)である。

したがって、刊行物1記載の発明に対して刊行物2記載の発明とともに上記周知の技術的事項を適用し、回転可能な綱車を有する巻上機を「昇降路の底部に設置されている巻上機支持台」上に設置する構成とするとともに、かごガイドレール及び重りガイドレールをレール支持梁で支持する構成とすることで、かごの重量及び釣合重りの重量がかご側返し車、綱止め部材を介してかごガイドレール及び重りガイドレールに作用する下向きの力がレール支持梁に作用するものとし、レール支持梁においてかごガイドレール及び重りガイドレールを介して下向きに作用する力と巻上機に作用する上向きの力とが相殺されるように、上記相違点に係る訂正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

なお、請求人は、上記第4.1.(1)ア.のように「立設部材(2)は中間部をブラケット(2a)により昇降路(1)の周壁に支持され、立設されています。しかも、ブラケット(2a)は、第2図を見れば明らかなとおり、立設部材(2)を建物躯体と結合するものであると推考できます。このため、立設部材(2)の重量による下向きの力はブラケット(2a)を介して昇降路(1)の周壁に作用しているか、または、支持部材(7)の上面に作用しているかについては不明であると解釈するのが妥当であります。」と主張しているが、力学的に、レールに設けられたブラケットは主に水平方向の荷重を担うものであることを考慮すれば、立設部材(2)の重量による下向きの力は支持部材(7)の上面に作用していると理解すべきである。

また、請求人は、上記第4.1.(2)のように、「刊行物2に記載されたエレベータ装置は釣合重りを有さずにかごを駆動する巻胴式のエレベータ装置を対象としているものであり、刊行物1に記載されたエレベータ装置と全く対象を異にしており、しかも、巻上機の設置の仕方が全く異なるものでありますから、単純には刊行物2に示されたものを刊行物1に示されたものに適用して考えることはできないものであります。」と主張するが、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明の両者とも、巻上機を昇降路内底部に配置したエレベータ装置に関するものであるから、同一の技術分野に属するものであって、その組み合わせ又は置換を妨げる理由はない。

また、訂正発明を全体として検討しても、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明及び上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

したがって、訂正発明は、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2記載の発明、上記本件特許出願前に周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合しないので、上記訂正事項1を含む本件訂正は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-29 
結審通知日 2006-10-04 
審決日 2006-10-18 
出願番号 特願平10-197317
審決分類 P 1 41・ 575- Z (B66B)
P 1 41・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 関 義彦
深澤 幹朗
登録日 2003-12-12 
登録番号 特許第3502270号(P3502270)
発明の名称 エレベータ装置  
代理人 丸山 隆  
代理人 高橋 省吾  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 伊達 研郎  

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