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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169849
審判番号 不服2007-21284  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 特願2005-374967「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 1日出願公開、特開2007- 21175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成17年12月27日の出願であって(先の出願に基づく優先権主張 平成16年12月27日及び平成17年6月17日)、平成19年6月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年8月2日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1及び請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明4」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、平成19年2月9日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項4】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認めることができ、これを構成要件に分説すると次のとおりである。なお、請求項1については、審判請求理由における請求人の分説と実質的に同一であるが、請求人の符号H?Kは構成要件Gの具体的制御内容であるため、符号をG1?G4と改め、それに伴い請求人の符号Lを符号Hに改めた。
(本願発明1)
「A.特定表示列を含み上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列を備え、前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され、前記複数の表示列の各々に図柄を停止させる図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記各表示列の図柄停止位置の組からなる入賞ラインが複数設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与し、前記特定表示列に配列される複数種類の図柄には第1図柄、第2図柄、第3図柄、及び賞を構成しない図柄であるブランク図柄が含まれ、前記賞には、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第2図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第2賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第3図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第3賞とが含まれるスロットマシンであって、
B.前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段と、
C.前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段と、
D.前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段と、
E.前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段とを備え、
F.前記特定表示列において、前記第1図柄が配置されたコマを特定コマとしたとき、前記特定コマから上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄を配置し、前記特定コマから上に1コマ離れたコマに前記第3図柄を配置し、前記特定コマから下に3コマ又は4コマ離れたコマの少なくとも一方に前記第3図柄を配置し、前記特定コマと下に隣接するコマに前記ブランク図柄を配置し、
G.前記停止制御手段は、
G1.前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、
G2.前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させ、
G3.前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第3図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、
G4.前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の下段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記下段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3図柄が位置する場合、当該第3図柄を前記下段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる、
H.ことを特徴とするスロットマシン。」

(本願発明4)
「A.特定表示列を含み上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列を備え、前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され、前記複数の表示列の各々に図柄を停止させる図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記各表示列の図柄停止位置の組からなる入賞ラインが複数設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与し、前記特定表示列に配列される複数種類の図柄には第1図柄、第2図柄、第3図柄、及び賞を構成しない図柄であるブランク図柄が含まれ、前記賞には、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第2図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第2賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第3図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第3賞とが含まれるスロットマシンであって、
B.前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段と、
C.前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段と、
D.前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段と、
E.前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段とを備え、
F’.前記特定表示列において、前記第1図柄が配置されたコマを特定コマとしたとき、前記特定コマから上に3コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄を配置し、前記特定コマから上に2コマ離れたコマに前記第3図柄を配置し、前記特定コマから下に3コマ離れたコマに前記第3図柄を配置し、前記特定コマと上に隣接するコマ及び前記特定コマと下に隣接するコマに前記ブランク図柄を配置し、
G.前記停止制御手段は、
G1.前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、
G2’前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の上段又は中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記上段又は中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記上段又は中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させ、
G3.前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第3図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、
G4’.前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段又は下段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段又は下段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3図柄が位置する場合、当該第3図柄を前記中段又は下段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる、
H.ことを特徴とするスロットマシン。」
なお、構成要件G4及びH並びにG4’及びHにおいて「させ、ことをことを特徴とする」は明らかに誤記と考えられるため、構成要件G4及びG4’において「る」を補った。

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-263242号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?カの記載が図示とともにある。
ア.「【従来の技術】従来、この種の図柄合わせ遊技機としては、複数種の図柄をそれぞれに有する複数のリールを回転させて、ストップボタン等(可変表示停止装置)を操作して全てのリールを停止させるスロットマシンが知られている。このようなスロットマシンでは、遊技者が各リールの停止図柄を視認できる可変表示部における入賞ライン上に停止した図柄の組合せが、予め決められている入賞態様に係る図柄の組合せのいずれかであるかどうかにより、その入賞態様に応じて、遊技価値であるメダルを払い出したり、リプレイを許可したり、あるいは、一般遊技状態のときよりも遊技者が多くのメダルを獲得できるビッグボーナス(以下、「BB」と省略する。)ゲームやレギュラーボーナス(以下、「RB」と省略する。)ゲーム等を行う特別遊技状態に移行したりする等の特典が付与される。」(段落【0002】)
イ.「このようなスロットマシンでは、一般に、遊技者が所定のスタートレバーを操作することで、マイコン等で構成される入賞態様選択手段により任意の入賞態様を決定する内部抽選が行われる。この内部抽選で、所定の入賞態様(以下、適宜「役」という。)が当選した場合には、その当選役に係る図柄の組合せが揃いやすくなるように、リールの停止制御がなされ、その当選役に係る図柄を揃えることが可能となる。逆に、内部抽選で、いずれの役にも当選しなかった場合には、遊技者によるストップボタン等の操作タイミングにかかわらず、役に対応する図柄の組合せを揃えることはできない。具体的には、何らかの役が内部当選した場合、一般に、遊技者によるストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内(停止制御範囲内)に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて、いわゆる「引込み」と呼ばれる停止制御を行われ、その図柄が入賞ライン上に停止表示されることになる。一方、役が内部当選していない場合には、遊技者のストップボタンの操作タイミングでは何らかの役に係る図柄の組合せが入賞ライン上に揃ってしまうようなときに、いわゆる「蹴り飛ばし」と呼ばれる停止制御が行われ、その図柄が入賞ライン上に停止表示しないことになる。」(段落【0003】)
ウ.「前面パネル3には、可変表示部を形成する表示窓4、メダル投入口5、スタートレバー6、可変表示停止装置を構成する3つの停止ボタン7a,7b,7c、クレジット精算ボタン8、スピーカ9、メダル払出ロ10aを有するメダル受皿10、報知パネル11、ライン表示部12、ゲーム表示部13、カウント表示部14、BET操作部15などが設けられている。」(段落【0037】)
エ.「3つのリール16a,16b,16c(以下、適宜、それぞれを「左リール」、「中リール」、「右リール」という。)は、それぞれ、可変表示装置を構成するステッピングモータで構成された図示しないリール駆動モータによって回転駆動するようになっている。また、これらには、図4(a)から(g)に示す7種類の図柄が、所定の順序で21個プリントされている。なお、以下、図4(a)?(g)に示した図柄を、順に、「赤7」、「青7」、「縞7」、「スイカ」、「ベル」、「チェリー」、「リプレイ」という。」(段落【0039】)
オ.「表示窓4には、リール16a,16b,16cを横断する5本の入賞ラインILが描かれており、それぞれ、上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び、右斜め下並びの入賞ラインを示している。これら入賞ラインIL上に予め定められた入賞態様である役に係る図柄(入賞図柄)の組合せが揃う(以下、単に「役が揃う」という。)と、メダル受皿10にメダルが払い出されたり、リプレイが許可されたりする。」(段落【0040】)
カ.「表1に示すように、一般遊技状態では、入賞態様が「大当たり」と「小当たり」とに大別できる。一般遊技状態で「小当たり」となる入賞態様、いわゆる「小役」としては、「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる「チェリー役」、「スイカ-スイカ-スイカ」からなる「スイカ役」、「ベル-ベル-ベル」からなる「ベル役」、「リプレイ縞7-リプレイ」及び「リプレイリプレイリプレイ」からなる「リプレイ役」が定められている。そして、それぞれが入賞ラインIL上に揃うと、2枚、5枚、8枚、0枚のメダルが払い出される。なお、「リプレイ役」ではメダルの払出しが行われないが、同じメダル投入条件で次のゲームをやり直すことができる。」(段落【0047】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載ア,イは【従来の技術】についての記載であり、記載ウ?カは直接的には【従来の技術】の説明ではないけれども、【従来の技術】にも当てはまることは明らかである。
記載イの「ストップボタン」と記載ウの「停止ボタン」は同義であり、同ボタンがリールごとに存することは自明である。
したがって、引用例1に【従来の技術】として記載されたスロットマシンは次のようなものと認めることができる。
「3つのリールに赤7、青7、縞7、スイカ、ベル、チェリー及びリプレイの各図柄を配し、遊技者がスタートレバーを操作することで、入賞態様を決定する内部抽選を行い、内部抽選で、所定の入賞態様が当選した場合には、遊技者によるリールごとのストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて引き込み停止制御を行い、役が内部当選していない場合には、その図柄が入賞ライン上に停止表示しないように蹴り飛ばし停止制御を行うスロットマシンであって、
表示窓には、各リールの3つの図柄が表示され、上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び及び右斜め下並びの5本の入賞ラインが定められており、
前記役には小役として、「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる「チェリー役」、「スイカ-スイカ-スイカ」からなる「スイカ役」、「ベル-ベル-ベル」からなる「ベル役」、「リプレイ縞7-リプレイ」及び「リプレイリプレイリプレイ」からなる「リプレイ役」が定められているスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の各リールには複数の図柄が配されているから、3つのリールの図柄全体は本願発明の「可変表示が可能な複数の表示列」に相当する。そして、スロットマシンでは、可変表示を「上から下に向けて」行うことが通常であるから、この点は一致点とする(相違点としても、極めて軽微な設計事項程度の微差にとどまる。)。そして、1つ1つの図柄配置位置が本願発明の「コマ」に相当するから、「前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され」ることは、本願発明と引用発明1の一致点である。さらに、引用発明1の「5本の入賞ライン」は「上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び及び右斜め下並び」であるから、「図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与」することも本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「チェリー役」は「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる役であるから、引用発明1における左のリールの図柄全体及び「チェリー役」は、本願発明の「特定表示列」及び「前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞」にそれぞれ相当する。
本願発明の構成要件A?Eとの関係だけでみると、「チェリー役」を除く引用発明1の各役は「前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置」に特定図柄が停止するだけでなく「他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる」賞であるから、それら各役のうちの任意の2つが本願発明の「第2賞」及び「第3賞」に相当し、「第2賞」及び「第3賞」を構成するための、左リールの図柄が本願発明の「第2図柄」及び「第3図柄」に相当する。
引用発明1の「スタートレバー」及び「ストップボタン」は、本願発明の「前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段」及び「前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段」にそれぞれ相当する。
引用発明1では「入賞態様を決定する内部抽選を行」い、抽選結果に「ハズレ」が含まれることは自明であるから、本願発明の「前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段」は引用発明1に備わっている。
引用発明1では「遊技者によるリールごとのストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて引き込み停止制御を行」うのだから、本願発明の「前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段」は引用発明1に備わっている。
したがって、本願発明と引用発明1とは
「特定表示列を含み上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列を備え、前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され、前記複数の表示列の各々に図柄を停止させる図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記各表示列の図柄停止位置の組からなる入賞ラインが複数設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与し、前記特定表示列に配列される複数種類の図柄には第1図柄、第2図柄および第3図柄が含まれ、前記賞には、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第2図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第2賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第3図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第3賞とが含まれるスロットマシンであって、
前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段と、
前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段と、
前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段と、
前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段とを備えるスロットマシン。」である点で一致(要するに、「ブランク図柄」に関する構成を除く構成要件A及び構成要件B?Eにおいて一致)し、本願発明1と引用発明1は次の相違点1?3において、本願発明4と引用発明1は次の相違点1’?3’においてそれぞれ相違する。
〈相違点1〉特定表示列に配列される複数種類の図柄につき、本願発明1が「賞を構成しない図柄であるブランク図柄」を含み、第1図柄が配置されたコマ(特定コマ)と下に隣接するコマにブランク図柄を配置するのに対し、引用発明1がブランク図柄を含むとはいえない点。
〈相違点2〉本願発明1が「特定コマから上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄を配置し、前記特定コマから上に1コマ離れたコマに前記第3図柄を配置し、前記特定コマから下に3コマ又は4コマ離れたコマの少なくとも一方に前記第3図柄を配置」しているのに対し、引用発明1において、特定コマと第2図柄及び第3図柄はそのような配置になっているとはいえない点。
〈相違点3〉本願発明1の停止制御手段が「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、」、「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させ、」、「前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第3図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、」及び「前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の下段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記下段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3図柄が位置する場合、当該第3図柄を前記下段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる」、すなわち構成要件G1?G4の停止制御を行うのに対し、引用発明1がかかる停止制御を行うとはいえない点。
〈相違点1’〉特定表示列に配列される複数種類の図柄につき、本願発明4が「賞を構成しない図柄であるブランク図柄」を含み、第1図柄が配置されたコマ(特定コマ)と上下に隣接するコマにブランク図柄を配置するのに対し、引用発明1がブランク図柄を含むとはいえない点。
〈相違点2’〉本願発明4が「特定コマから上に3コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄を配置し、前記特定コマから上に2コマ離れたコマに前記第3図柄を配置し、前記特定コマから下に3コマ離れたコマに前記第3図柄を配置」しているのに対し、引用発明1において、特定コマと第2図柄及び第3図柄はそのような配置になっているとはいえない点。
〈相違点3’〉本願発明4の停止制御手段が「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、」「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の上段又は中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記上段又は中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記上段又は中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させ、」「前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第3図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、」「前記抽選情報が前記第3賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段又は下段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段又は下段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第3図柄が位置する場合、当該第3図柄を前記中段又は下段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる」、すなわち構成要件G1,G2’,G3及びG4’の停止制御を行うのに対し、引用発明1がかかる停止制御を行うとはいえない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)特定停止操作手段が最初に操作された場合の、入賞ライン選択の容易性その1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-346037号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のキ?シの各記載がある。
キ.「前記スロットマシンには、入賞を発生させるための前記遊技手順が報知される特定の入賞役(たとえば、図柄「ベル」の組合わせによる小役)が予め定められており、前記遊技制御手段は、入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段(たとえば、SC5)と、該決定手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されたか否かを判別する判別手段(たとえば、SC7)と、該判別手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されたと判別された場合に、前記遊技手順情報として、入賞を発生させるための遊技手順を設定する情報設定手段(たとえば、SC9)とを含み、該情報設定手段は、前記判別手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されなかった場合には、前記遊技手順情報として、予め定められた遊技手順(たとえば、順押しの順序)を通知する情報を設定する(たとえば、SC12)。」(段落【0023】)
ク.「当選フラグの設定状況に応じて入賞図柄または外れ図柄を引込む制御を“引込み制御”という。」(段落【0091】)
ケ.「小役1の図柄の組合わせは、「スイカ、スイカ、スイカ」である。小役2の図柄の組合わせは、「ベル、ベル、ベル」である。スロットマシン1では、この図柄「ベル」の組合わせによる小役が、押し順が限定される特定の入賞役として設定されている。以下、この小役を特に、“押し順限定役”という。(段落【0109】)
コ.「図4に示されるように、「ベル」は、すべてのリールにおいて、連続する5図柄以内に常に存在するように配列されている。このため、どの位置で目押しがされたとしても、リールの引込み制御によって「ベル」を引込むことが可能になっている。(段落【0110】)
サ.「小役3の図柄の組合わせは、「チェリー、任意、任意」であり、左リール4Lに「チェリー」が停止すると他のリールの出目にかかわらず有効ライン毎に2枚のメダルが払出される。このように、「チェリー」は、中リールおよび右リールの出目とは無関係に入賞を発生させるので、単図柄と呼ばれる。(段落【0111】)
シ.「押し順限定役(図柄「ベル」の組合わせによる小役)が内部当選した際の押し順のナビゲーションに従って“順押し(左、中、右の順)”以外でリール停止操作が行なわれた場合、「ベル、ベル、ベル」を入賞ラインに引込む際に、図柄配列の関係上、内部当選当選していない「チェリー」までが同時にいずれかの有効ラインに引込まれて複合入賞が発生してしまう可能性がある。そこでスロットマシン1では、押し順限定役が内部当選した際に押し順が順押し以外のものに決定された場合には、図柄配列の関係上、「チェリー」が入賞図柄として引き込まれてくる可能性がない中段の入賞ラインに「ベル」を引込むようにリールが制御される。」(段落【0112】

これら引用例2の記載によれば、引用例2に記載のスロットマシンは、「ブランク図柄」に関する構成を除く本願発明の構成要件A及び構成要件B?Eを備えたスロットマシンと認めることができる。そして、引用例2には、押し順限定役が内部当選した際に押し順が順押し以外(本願発明の構成要件G2,G4,G2’又はG4’における「特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された」に相当(厳密にいうと、「左、右、中」の押し順も「順押し以外」に該当するが、最初に操作される停止操作手段が中又は右であることを念頭においていることは明らかである。)である場合に限定されているとはいえ、「チェリー」(本願発明の「第1図柄」に相当)が入賞図柄として引き込まれてくる(当然、「特定表示列」に対応する左リール停止制御の問題である。)可能性がない入賞ライン(実施例では、中段のライン)に、押し順限定役の図柄を引き込み制御する技術が記載されている。
ところで、第1賞以外の賞が抽選により入賞した際に、同賞の図柄を特定表示列(引用例1,2に共通して左リールの図柄列)の上段、中段又は下段の図柄停止位置に停止し、かつ第1図柄(引用例1,2に共通して「チェリー」)を上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止させないことは、引用例2の記載シからみて設計事項であり、その際制御上考慮しなければならないのは、特定コマ(左リールの「チェリー」の位置)の上下2コマずつ、計4コマであり、それ以外のコマについては、上記制御を行う上で何の問題もない。
そうであれば、特定コマの上下2コマずつについては、「特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された」際に、引用例2記載の押し順限定役の図柄に限らず、中及び右リールの停止制御に当たって、左リールの第1図柄(チェリー)が引き込まれてくる可能性がない入賞ラインを選択し、中及び右リールの同入賞ライン上に入賞図柄(本願発明でいう、第2賞又は第3賞を構成する所定の図柄)を引き込むことは当業者にとって想到容易である。

(2)特定停止操作手段が最初に操作された場合の、入賞ライン選択の容易性その2
(1)で述べたことは次の事実によっても裏付けられる。
原査定の拒絶の理由に引用された「パチスロ必勝ガイド攻略年鑑2003」第6巻第3号(通巻第55号)56-63頁(株式会社白夜書房,2003年2月1日発行)(以下「引用例3」という。)の62頁左上部に「絵柄配列図」が示されている。左部分の1番、5番、17番等の絵柄を「リプレイ」、2番、9番等の赤色絵柄を「チェリー」と、中部分7番、10番、13番等の緑色絵柄(果物らしき絵が描かれている。)を便宜上「緑果物」と、それ以外の絵柄(薄く表示されているもの(「ブランク」ということにする。)は除く。)を「セブン」という。そして、「チェリー」と「緑果物」を総称して「フルーツ」ということにする。
引用例3の56頁には「各役払い出し表」が示されており、左から順に「チェリー、ANY、ANY」と揃うことが役の1つ(以下「チェリー役」という。)であることが示されているから、左の絵柄配列が本願発明の「特定表示列」に相当し、「チェリー」が「第1図柄」に相当することが読み取れる。同表には他の役として、左から順に「セブン、フルーツ、フルーツ」と揃うもの、及び左から順に「リプレイ、リプレイ、リプレイ」と揃うものが示されている。また、ブランク絵柄を揃えても払い出しのないことが注記されており、それゆえ「ブランク」は本願発明の「賞を構成しない図柄であるブランク図柄」と相違しない。
再び、62頁左上部の「絵柄配列図」に戻ると、左の絵柄配列(特定表示列)につき、9番チェリーの1つ上が「ブランク」、2つ上が「セブン」、1つ下が「リプレイ」、2つ下が「セブン」、2番チェリーの1つ上が「ブランク」、2つ上が「セブン」、1つ下が「リプレイ」、2つ下(21番)が「ブランク」となっている。すなわち、チェリー(第1図柄)の上下2コマには、「ブランク」、「セブン」又は「リプレイ」のいずれかが配されている。
そして、61頁左下部には「変則押しでフラグ察知」と題する囲み部があり、同部には「中・右リールをフリー打ち→停止型に注目」、「中段15枚テンパイ」(フルーツが中・右の中段に揃った図とともに)及び「上段リプレイテンパイ」(リプレイが中・右の上段に揃った図とともに)、「それ以外の停止型 チェリーor純ハズレorボーナス!!」などの記載がある。
上記囲み部において、注目すべき停止型とされる「リプレイ」又は「フルーツ」は、左リールに「リプレイ」又は「セブン」が揃うことにより役となる停止型であり、「リプレイ」及び「セブン」は、「ブランク」を除けば、特定表示列において特定コマの上下2コマ以内に配置された絵柄ばかりである。
ここで、フルーツが中・右の中段に揃った図に着目すると、左リールの「セブン」が中段に停止しても、チェリーは必ず2コマ以上離れているから、その際にチェリーが入賞することはあり得ないのに対し、例えばフルーツが中・右の上段に揃った場合には、左リール4番又は11番の「セブン」を上段に停止させると、2コマ下のチェリーが左リール下段に停止することになるから、チェリー役を排斥することを条件とした上で、これら「セブン」を上段に停止させることができない。同じく、リプレイが中・右の上段に揃った図に着目すると、左リールの「リプレイ」が上段に停止しても、チェリーは下2コマ以内に存在しないから、その際にチェリーが入賞することはあり得ないのに対し、例えばリプレイが中・右の中段に揃った場合には、左リール8番又は1番の「リプレイ」を中段に停止させると、1コマ上のチェリーが左リール上段に停止することになるから、チェリー役を排斥することを条件とした上で、これら「リプレイ」を上段に停止させることができない。
「それ以外の停止型 チェリーor純ハズレorボーナス!!」とされていることを考慮すれば、「セブン、フルーツ、フルーツ」と揃う役又は「リプレイ、リプレイ、リプレイ」と揃う役に入賞し、中・右リールが左リールよりも先に停止される際には、これらリールにおける「フルーツ」又は「リプレイ」の停止位置を、左リールのチェリー(第1図柄)が引き込まれてくる可能性がない入賞ライン上の位置として選択した上で、引き込み制御を行っていると解するのが自然である。

(3)相違点1及び相違点1’の想到容易性
以上述べたとおり、特定コマの上下2コマずつについては、「特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された」際に、中及び右リールの停止制御に当たって、左リールの第1図柄が引き込まれてくる可能性がない入賞ラインを選択し、中及び右リールの同入賞ライン上に入賞図柄(本願発明でいう、第2賞又は第3賞を構成する所定の図柄)を引き込むことは当業者にとって想到容易である。
ところで、左リールの第1図柄が引き込まれてくる可能性がない入賞ラインを選択するということは、実質的に入賞ラインが制限されることであるから、入賞ライン制限の対象となる入賞を少なくすることは設計事項というべきである。
また、引用例3に記載されたブランク図柄であれば、それが特定コマの上下2コマ以内にあっても、入賞ラインの制限に結びつかないことは自明である。
さらに、特定コマと上(又は下)に2コマ離れた位置に第1賞と異なる入賞図柄がある場合には、同入賞図柄が中段又は下段(又は上段)の何れに停止しても、第1賞を排斥できるのに対し、特定コマと上(又は下)に1コマ離れた位置に第1賞と異なる入賞図柄がある場合には、同入賞図柄が下段(又は上段)に停止した場合しか第1賞を排斥できない。このように、第1賞を排斥する上で、より深刻なのは特定コマの上下1コマの図柄であるから、そのうちの一方(当然、上側であっても下側であってもよく、本願発明1はそのうち下側を選択したものであり、進歩性判断の対象とはしていないが、請求項2に係る発明は上側を選択したものである。)又は両方を入賞ラインの制限に結びつかないブランク図柄にすることは設計事項というべきである。実際、引用例3の絵柄配列図によれば、左リールの第1図柄(チェリー)の上側1コマはブランクとなっている。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明1の構成を採用すること、及び相違点1’に係る本願発明4の構成を採用することは、いずれも当業者にとって想到容易である。

(4)相違点2の想到容易性
相違点1に係る本願発明1の構成を採用した場合、第1賞以外の図柄と第1図柄がともに表示される可能性があるのは、特定コマから上下に2コマ離れたコマ及び特定コマから上に1コマ離れたコマの計3コマである。
(3)でも述べたように、入賞ライン制限の対象となる入賞を少なくすることは設計事項であるところ、上記3コマをすべて異なる入賞に割り当てれば、3つの賞に対して入賞ライン制限をしなければならないから、3コマのうちの2コマを同一入賞図柄とすることは設計事項である。その場合、3コマのうち最も離れているのは、特定コマから上下に2コマ離れたコマであるから、これらを同一図柄とすることも設計事項である。
特定コマから上に1コマ離れたコマについては、同一図柄のコマをそれ以外にも配置することは設計事項であり、特定コマから3コマ以上離れておれば、どこに配置しようと自由であって、その位置を「特定コマから下に3コマ又は4コマ離れたコマの少なくとも一方」とすることも設計事項である。
3.では、本願発明の構成要件A?Eとの関係だけでみると、「チェリー役」を除く引用発明1の各役のうちの任意の2つが本願発明の「第2賞」及び「第3賞」に相当し、「第2賞」及び「第3賞」を構成するための、左リールの図柄が本願発明の「第2図柄」及び「第3図柄」に相当すると述べたが、構成要件F(相違点2に係る本願発明1の構成)との関係まで含めて考慮すれば、特定コマから上下に2コマ離れたコマに配した同一図柄が本願発明1の「第2図柄」に相当し、同図柄で構成される役が本願発明1の「第2賞」に相当し、特定コマから上に1コマ離れたコマに配した図柄が本願発明1の「第3図柄」に相当し、同図柄で構成される役が本願発明1の「第3賞」に相当することとなる。
すなわち、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(5)相違点3の想到容易性
相違点1,2の想到容易性については既に述べたとおりである。特定停止操作手段(特定表示列に対応する停止操作手段)が最初に操作されるか、他の停止操作手段が最初に操作されるかに応じて、停止制御態様が異なるのは、引用例2,3に接した当業者には自明である。そのために、最初に操作される停止操作手段が特定停止操作手段であるかどうかを検知できる手段が必要であることも自明であり、「前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると」との要件は、「前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作された場合」に等しい。
そして、本願発明1の構成要件G1及びG3における「図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定」とは、第1賞を排斥(構成要件G1及びG3でいう「前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず」に該当)するとの条件のもとで、第2図柄又は第3図柄が停止可能な位置を特定することにほかならないから、本願発明1の構成要件G1及びG3は、特定停止操作手段が最初に操作された場合に当然なすべき制御を具体的に記載したにすぎない。
また、相違点2に係る本願発明1の構成を採用した場合、第1賞を排斥するとの条件のもとで、第2賞当選時に第2図柄が停止可能な左リール(特定表示列)の位置は中段のみであり、同じく第3賞当選時に第3図柄が停止可能な左リールの位置は下段のみである。
本願発明1の構成要件G2及びG4は、特定停止操作手段以外の停止操作手段が最初に操作された場合(「・・・最初に操作されたことを検知すると」に等しい。)に、第2賞当選時の第2図柄又は第3賞当選時の第3図柄が停止可能な特定表示列の位置を含む入賞ライン上の図柄停止位置に、第2賞又は第3賞を構成する所定の図柄を引き込み(入賞ライン上の図柄停止位置から許容範囲にこれら図柄が位置することが引き込みの前提条件となることは自明である。このことは以下でも同様。)、この後、特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、特定表示列の第2図柄又は第3図柄を引き込むという、ごく当然の停止制御を記載したにすぎない。
すなわち、相違点3に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(6)相違点2’の想到容易性
相違点1’に係る本願発明4の構成を採用した場合、第1賞以外の図柄と第1図柄がともに表示される可能性があるのは、特定コマから上下に2コマ離れた2つのコマのみである。
上記2つのコマを異なる賞に割り当てることは設計事項であり、それらと同一図柄のコマを上記2つのコマ以外にも配置することも設計事項である。同一図柄の2つのコマをある程度離隔して配置すること、特定コマから3コマ以上離れておれば、どこに配置しようと自由であることから、特定コマから下に2コマ離れたコマと同一図柄を特定コマから上に3コマ離れたコマに配置することも、特定コマから上に2コマ離れたコマと同一図柄を特定コマから下に3コマ離れたコマに配置することも設計事項である。
3.では、本願発明の構成要件A?Eとの関係だけでみると、「チェリー役」を除く引用発明1の各役のうちの任意の2つが本願発明の「第2賞」及び「第3賞」に相当し、「第2賞」及び「第3賞」を構成するための、左リールの図柄が本願発明の「第2図柄」及び「第3図柄」に相当すると述べたが、構成要件F’(相違点2’に係る本願発明4の構成)との関係まで含めて考慮すれば、特定コマから上に3コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマに配した同一図柄が本願発明4の「第2図柄」に相当し、同図柄で構成される役が本願発明4の「第2賞」に相当し、特定コマから上に2コマ離れたコマと下に3コマ離れたコマに配した図柄が本願発明4の「第3図柄」に相当し、同図柄で構成される役が本願発明4の「第3賞」に相当することとなる。
すなわち、相違点2’に係る本願発明4の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(7)相違点3’の想到容易性
相違点1,2’の想到容易性については既に述べたとおりであり、相違点3’のうち、構成要件G1及びG2の想到容易性は、(5)で述べたと同様に、特定停止操作手段が最初に操作された場合に当然なすべき制御を具体的に記載したにすぎない。
(5)で述べたことを踏まえ、構成要件G2’及びG4’について検討する。
相違点2’に係る本願発明4の構成を採用した場合、第1賞を排斥するとの条件のもとで、第2賞当選時に第2図柄が停止可能な左リール(特定表示列)の位置は上段又は中段のみであり、同じく第3賞当選時に第3図柄が停止可能な左リールの位置は中段又は下段のみである。
本願発明4の構成要件G2’及びG4’は、特定停止操作手段以外の停止操作手段が最初に操作された場合に、第2賞当選時の第2図柄又は第3賞当選時の第3図柄が停止可能な特定表示列の位置を含む入賞ライン上の図柄停止位置に、第2賞又は第3賞を構成する所定の図柄を引き込み、この後、特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、特定表示列の第2図柄又は第3図柄を引き込むという、ごく当然の停止制御を記載したにすぎない。
すなわち、相違点3’に係る本願発明4の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(8)本願発明の進歩性の判断
以上述べたとおり、相違点1?4に係る本願発明1の構成及び相違点1’?4’に係る本願発明4の構成を採用することはすべて当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明1及び本願発明4は、引用発明1及び引用例2,3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明1及び本願発明4が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-11 
結審通知日 2007-10-16 
審決日 2007-10-30 
出願番号 特願2005-374967(P2005-374967)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
土屋 保光
発明の名称 スロットマシン  
代理人 大林 章  
代理人 矢代 仁  
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