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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1170088
審判番号 不服2004-7372  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 特願2000-243522「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月19日出願公開、特開2002- 52137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成12年8月11日の出願であって、平成16年3月9日付けで拒絶の査定がされたため、同年4月12日付けで本件審判請求がされるとともに、同年5月10日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成19年8月10日付けで新たな拒絶理由を通知したところ、請求人は同年10月11日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年10月11日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、
前記回転リールの回転駆動を開始させるためのスタートスイッチと、
前記回転リールの回転駆動を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチ及び前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの回転及び停止を制御すると共に、予め定めた抽選確率に基づいて入賞か否かの入賞判定の抽選を行うことにより、一定確率で入賞図柄の抽選を行うための制御装置とを備え、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行うための入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段による抽選結果が前記入賞である場合に当該入賞図柄の入賞フラグが成立し、前記入賞フラグ成立中に、前記回転リールが停止した状態で、予め設定した所定の方向の有効入賞ライン上に前記入賞フラグ成立中の入賞図柄が揃うことを条件として入賞が確定して遊技者に利益を付与するように設定された遊技機において、
前記制御装置は、
前記ストップスイッチを操作した後、所定時間内に停止可能な前記回転リールの円周上の連続する所定数の引き込み可能図柄の中に、入賞フラグ成立中の入賞図柄が含まれているような場合には、有効入賞ライン上に入賞フラグ成立中の入賞図柄を引き込んで停止させるとともに、
一方、かかる所定数の引き込み可能図柄の中に、入賞フラグ成立中の入賞図柄が含まれていないような場合には、有効入賞ライン上に、前記入賞図柄を引き込んで停止することができないように形成され、
前記入賞には、遊技者に利益を付与する小役入賞と、この小役入賞よりも大きな利益を遊技者に付与する特別入賞とを備え、
前記入賞抽選手段の抽選により前記特別入賞の入賞フラグが成立したが、前記回転リールの有効入賞ライン上の停止図柄が、前記特別入賞の入賞図柄と一致せずに入賞を確定させられない場合、その後の遊技に前記特別入賞の入賞フラグ成立の権利が持ち越されるように設定され、一方、前記小役入賞の入賞フラグが成立した遊技で入賞を確定させられない場合、前記小役入賞の入賞フラグ成立の権利は、その後の遊技への持ち越しはないように設定され、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも備え、
前記特別遊技として、低純増特別遊技と、前記低純増特別遊技よりも遊技者に大きな利益を付与可能な高純増特別遊技とを少なくとも備え、
前記通常遊技が行われる遊技期間中には、予め定められた所定の契機により開始され、予め定められた所定の遊技回数の範囲内において前記特別遊技に入賞確定することにより、その特別遊技の前記高純増特別遊技への移行を保証するための高純増移行期間が設けられ、
前記制御装置は、
前記高純増移行期間中でない場合には、前記高純増移行期間への移行の可否を決定するとともに、前記高純増移行期間中の場合には、当該高純増移行期間として定められた遊技回数の加算の可否を決定するための移行加算手段を備え、
前記移行加算手段は、前記入賞抽選手段の抽選結果、前記特別入賞の入賞フラグが成立し、かかる入賞フラグ成立中、所定の遊技回数内で、当該入賞が確定しないことを条件として、前記高純増移行期間への移行または加算の可否を決定することを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した特開平10-155980号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?キの記載が図示とともにある。
ア.「複数の図柄を表示可能な図柄表示部と、特定領域と、特定入賞装置と、特別装置作動領域と、始動入賞口と、大入賞口を配置し、遊技球が前記特定領域を通過することに関連して前記図柄表示部に当たり図柄が表示されると当たりとなって、前記特定入賞装置が遊技者にとって不利な状態から有利な状態になり、遊技球が特定入賞装置を介して特別装置作動領域を通過することによって権利発生となり、権利発生中に遊技球が前記始動入賞口を通過することにより、前記大入賞口が遊技者にとって不利な状態から有利な状態になる遊技機であって、
前記当たりは大当たりと小当たりを含み、それらの大当たりと小当たりの生起確率は第1確率状態とその第1確率状態より低い第2確率状態に変更可能であり、
前記第1確率状態で小当たりが得られたときより、前記第2確率状態で小当たりが得られたときの方が、前記特定入賞装置が遊技者にとって有利となるように設定してあることを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「本実施例のパチンコ機1の正面図(図1)は、良く知られた、所謂、第3種の確率変動形式のパチンコ機であって、・・・遊技板3のほぼ中央部には、複数の図柄(本実施の形態では、0?9の図柄)を変動可能な3箇所の図柄表示部L1、L2、L3を有する図柄表示器Lが設置してあり、遊技球が特定領域22を通過すると、当たり(大当たり又は小当たり)か否かを判定すると共に、図柄表示器Lの図柄表示部L1、L2、L3の図柄が変動開始して、所定時間後に停止する。」(段落【0006】)
ウ.「当たり(大当たり又は小当たり)と判定されたときには、停止図柄として予め設定の図柄(例えば、各図柄表示部L1、L2、L3の図柄が全て同じ図柄)を表示する。前記大当たりは、各図柄表示部L1、L2、L3の図柄が、「111」「333」「555」「777」「999」のときであり、この大当たりは、第2確率状態(低確率時)には1/556、第1確率状態(高確率時)には1/55.6で生起するように設定してある。一方、各図柄表示部L1、L2、L3の図柄が「000」「222」「444」「666」「888」のときは「小当たり」であり、第2確率状態(低確率時)には1/556、第1確率状態(高確率時)には1/55.6で生起するように設定してある。以上のように、大当たりと小当たりは、第1確率状態の方が第2確率状態より高確率に設定してある。」(段落【0007】)
エ.「前記「大当たり」又は「小当たり」が生起すると、下記の条件で、遊技者にとって不利な状態から有利な状態となるように、開閉可能な特定入賞装置(以下、普通電動役物という。)23が開成する。「大当たり」のときには、第2確率状態(低確率時)と第1確率状態(高確率状態)において、共に、普通電動役物23が5.8秒間、開成する。一方、「小当たり」のときには、普通電動役物23は、第2確率状態(低確率時)には5.8秒間であるが、第1確率状態(高確率状態)においては0.5秒間、開成する。そして、前記普通電動役物23を通過した遊技球が、その下に設置の特別入賞装置30の特別装置作動領域29を通過すると「権利」が発生する。」(段落【0008】)
オ.「(2)当たりに対する救済方法2(図6、図7参照)。
本救済方法は、最初に当たりが生じても、権利が発生しない場合の救済であり、次回の当たりを早期に実現可能にし、当たりが生じたときには大当たりとすると共に権利を発生させて16回のラウンドを可能とするものである。尚、本救済方法2は、第1実施の形態における図3に対応する制御フローを図6に、図4に対応する制御フローを図7に図示すると共に、図3、図4と同じステップには同じ符号を付して説明を略す。」(段落【0025】)
カ.「図6において、電源が投入されたとき、図3における設定の他にフラグFを初期化する。このフラグFは、後述する第2回目の当たりにおいて大当たりを保証すると共に権利発生を強制的に行って救済措置をなす。次に、図7について説明すると、大当たりか小当たりかを判定し(S10)、何れかであるときにはフラグFの判定を行う(S33)。最初の当たりのときにはフラグFはゼロであるため、ステップ11へ進んで処理を行う。しかし、フラグFが1のときには、後述のステップ30?32で詳述するように、大当たりを強制的に実現するため、ステップ34で大当たり図柄を表示すると共に、大当たりの条件設定を行う(S13)。」(段落【0026】)
キ.「ステップ30?32について説明すると、最初の当たりが生じても権利が発生しない時にはステップ30へ進む。このステップ30では、権利回数カウンタKiの値が0であるか否か、即ち、最初の権利が発生しなかったか否かを判定する(S30)。そして、権利回数カウンタKiが0でないときには、既に、1回目の権利発生の恩恵を受けている遊技者であるため、ステップ23へ進んで第2確率状態(電源投入状態)に設定する。一方、最初の権利が発生しないときには、権利回数カウンタKiの値に1を加算して(S31)、フラグFを1に設定する(S32)。そして、当たりを第1確率状態に設定し(S24)、2回目の大当たりが比較的早期に発生可能に設定する。」(段落【0027】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載ア?キを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数の図柄を表示可能な図柄表示部と、特定領域と、特定入賞装置と、特別装置作動領域と、始動入賞口と、大入賞口を配置し、遊技球が前記特定領域を通過することに関連して前記図柄表示部に当たり図柄が表示されると当たりとなって、前記特定入賞装置が遊技者にとって不利な状態から有利な状態になり、遊技球が特定入賞装置を介して特別装置作動領域を通過することによって権利発生となり、権利発生中に遊技球が前記始動入賞口を通過することにより、前記大入賞口が遊技者にとって不利な状態から有利な状態になる遊技機であって、
前記当たりは大当たりと小当たりを含み、それらの大当たりと小当たりの生起確率は第1確率状態とその第1確率状態より低い第2確率状態に変更可能であり、
前記第1確率状態で小当たりが得られたときより、前記第2確率状態で小当たりが得られたときの方が、前記特定入賞装置が遊技者にとって有利となるように設定してあり、
フラグFが1であれば、第1確率状態であるか第2確率状態であるかに関係なく、大当たり又は小当たりと判定された場合に、大当たり図柄が表示されることを保証するように構成されている遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「大当たり」及び「小当たり」は、特定領域を通過することに関連して、図柄表示部に当たり図柄が表示される(当たりの確率が定まっているから、抽選によると解される。)のであるから、本願発明の用語に従えば「特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技」に該当し、「大当たり」は「小当たり」よりも遊技者に大きな利益を付与可能であるから、「大当たり」及び「小当たり」が本願発明の「高純増特別遊技」及び「低純増特別遊技」にそれぞれ相当する。当然、本願発明でいう「通常遊技」も、遊技として備えている。
引用発明1では「フラグFが1であれば、・・・大当たり又は小当たりと判定された場合(審決注;引用発明1では、同判定がされれば、大当たり又は小当たりの状態に移行するから、本願発明の「特別遊技に入賞確定」に該当する。)に、大当たり図柄が表示されることを保証するように構成されている」のだから、「フラグFが1」の期間(これが「予め定められた所定の契機により開始され」ることは明らかである。)は、本願発明の「予め定められた所定の契機により開始され、前記特別遊技に入賞確定することにより、その特別遊技の前記高純増特別遊技への移行を保証するための高純増移行期間」に相当し、同期間が「通常遊技が行われる遊技期間中」に設けられていることも明らかである。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも備え、
前記特別遊技として、低純増特別遊技と、前記低純増特別遊技よりも遊技者に大きな利益を付与可能な高純増特別遊技とを少なくとも備え、
前記通常遊技が行われる遊技期間中には、予め定められた所定の契機により開始され、前記特別遊技に入賞確定することにより、その特別遊技の前記高純増特別遊技への移行を保証するための高純増移行期間が設けられた遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明の遊技機が、
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、
前記回転リールの回転駆動を開始させるためのスタートスイッチと、
前記回転リールの回転駆動を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチ及び前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの回転及び停止を制御すると共に、予め定めた抽選確率に基づいて入賞か否かの入賞判定の抽選を行うことにより、一定確率で入賞図柄の抽選を行うための制御装置とを備え、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行うための入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段による抽選結果が前記入賞である場合に当該入賞図柄の入賞フラグが成立し、前記入賞フラグ成立中に、前記回転リールが停止した状態で、予め設定した所定の方向の有効入賞ライン上に前記入賞フラグ成立中の入賞図柄が揃うことを条件として入賞が確定して遊技者に利益を付与するように設定された遊技機において、
前記制御装置は、
前記ストップスイッチを操作した後、所定時間内に停止可能な前記回転リールの円周上の連続する所定数の引き込み可能図柄の中に、入賞フラグ成立中の入賞図柄が含まれているような場合には、有効入賞ライン上に入賞フラグ成立中の入賞図柄を引き込んで停止させるとともに、
一方、かかる所定数の引き込み可能図柄の中に、入賞フラグ成立中の入賞図柄が含まれていないような場合には、有効入賞ライン上に、前記入賞図柄を引き込んで停止することができないように形成され、
前記入賞には、遊技者に利益を付与する小役入賞と、この小役入賞よりも大きな利益を遊技者に付与する特別入賞とを備え、
前記入賞抽選手段の抽選により前記特別入賞の入賞フラグが成立したが、前記回転リールの有効入賞ライン上の停止図柄が、前記特別入賞の入賞図柄と一致せずに入賞を確定させられない場合、その後の遊技に前記特別入賞の入賞フラグ成立の権利が持ち越されるように設定され、一方、前記小役入賞の入賞フラグが成立した遊技で入賞を確定させられない場合、前記小役入賞の入賞フラグ成立の権利は、その後の遊技への持ち越しはないように設定され」た遊技機であるのに対し、引用発明1はかかる遊技機ではない(実際はパチンコ機である。)点。
〈相違点2〉「高純増移行期間」につき、本願発明が「予め定められた所定の遊技回数の範囲内」と定めているのに対し、引用発明1にはこのような限定がない点。
〈相違点3〉本願発明の「制御装置」(遊技機である以上、引用発明1も「制御装置」は当然有している。)が「前記高純増移行期間中でない場合には、前記高純増移行期間への移行の可否を決定するとともに、前記高純増移行期間中の場合には、当該高純増移行期間として定められた遊技回数の加算の可否を決定するための移行加算手段を備え」、かつその「移行加算手段」が「前記入賞抽選手段の抽選結果、前記特別入賞の入賞フラグが成立し、かかる入賞フラグ成立中、所定の遊技回数内で、当該入賞が確定しないことを条件として、前記高純増移行期間への移行または加算の可否を決定する」と限定しているのに対し、引用発明1にはかかる限定がない点。ただし、当然のことながら「高純増移行期間中でない場合には、高純増移行期間への移行」という限度での「移行加算手段」は引用発明1の制御装置にも備わっている。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
相違点1に係る本願発明の構成を備えた遊技機は、いわゆるスロットマシン(パチスロと称されることも多い。)として周知であり、周知のスロットマシンにおいては、特別入賞の1つであるビッグボーナスの入賞フラグに対して入賞を確定させられない場合、その後の遊技にビッグボーナス入賞フラグ成立の権利が持ち越されるように設定されている。
また、上記周知のスロットマシンにおいて、複数種類のビッグボーナスを用意した遊技機も、例えば特開2000-5381号公報に見られるように周知であり、複数種類のビッグボーナスのうち、遊技者により有利なものが本願発明の「高純増特別遊技」に、そうでないビッグボーナスが本願発明の「低純増特別遊技」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明1(パチンコ機)と周知のスロットマシンは、どちらも遊技として「高純増特別遊技」と「低純増特別遊技」を備えた遊技機であるから、周知のスロットマシンにおいて、引用発明1同様に高純増移行期間を設定し、同期間には、特別遊技(ビッグボーナス)に入賞確定することにより、その特別遊技の高純増特別遊技への移行を保証することは当業者にとって想到容易である。
このことを、引用発明1を出発点として見れば、引用発明1の遊技機を周知のスロットマシンに置き換えることに等しいから、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用例1の記載オ?キによれば、「フラグFが1」とすること、すなわち高純増移行期間を設ける目的は、遊技者の救済にある。
ところで、相違点3に係る本願発明の構成のうち、「前記入賞抽選手段の抽選結果、前記特別入賞の入賞フラグが成立し、かかる入賞フラグ成立中、所定の遊技回数内で、当該入賞が確定しないことを条件として、前記高純増移行期間への移行または加算の可否を決定」との構成を採用(そのことの容易性は次項で述べる。)し、「低純増特別遊技」及び「高純増特別遊技」として複数種類のビッグボーナスを採用(そのことの容易性は前項で述べたとおりである。)した場合、「高純増移行期間」への移行はビッグボーナスフラグ成立時であるから、相違点2における「遊技回数」は、ビッグボーナスフラグ成立時における遊技回数となる。そして、ビッグボーナスフラグ成立時における遊技回数が多い場合が、遊技者救済対象となることは明らかである。
ここで、遊技者をどれだけ救済するかは遊技機設計に当たっての設計事項にすぎず、遊技特典の1つである「高純増移行期間」を、ビッグボーナス入賞確定までとするか、それともビッグボーナスフラグ成立時における「予め定められた所定の遊技回数の範囲内」とするかは設計事項というべきである。
そうである以上、引用発明1を出発点として、相違点2に係る本願発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
前項で述べたように、引用発明1において高純増移行期間を設ける目的は、遊技者の救済にあり、周知のスロットマシンにおいて、ビッグボーナスフラグ成立時における遊技回数が多い場合が、遊技者救済対象となることは明らかである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用し、特別遊技をビッグボーナスとした場合、救済対象を、「前記入賞抽選手段の抽選結果、前記特別入賞の入賞フラグが成立し、かかる入賞フラグ成立中、所定の遊技回数内で、当該入賞が確定しないことを条件」とすること、すなわち、同条件が成立時が高純増移行期間中でない場合に、高純増移行期間への移行することは設計事項というべきである。
また、当審における拒絶の理由に引用した特開平10-155980号公報(以下「引用例2」という。)には、「確率変動機において、確率向上期間中に確率変動図柄が表示されると、確率向上期間を延長することにより、遊技者の興趣を高めようとする弾球遊技機」(段落【0004】)との記載があり、要するに「確率向上期間」への移行要因が同期間中に発生した場合に、期間延長する技術が記載されている。引用例2記載の「確率向上期間」と「高純増移行期間」は、同一ではないけれども、遊技者にとって有利な期間であることには変わりがない。
上記のとおり、引用例2には、遊技者にとって有利な期間である「確率向上期間」への移行要因が同期間中に発生した場合に、期間延長する技術が記載されているのだから、同じく遊技者にとって有利な期間である「高純増移行期間」につき、同期間発生要因が同期間中に発生した場合に同期間の期間延長をすることは当業者にとって想到容易である。
以上を総合すれば、「前記入賞抽選手段の抽選結果、前記特別入賞の入賞フラグが成立し、かかる入賞フラグ成立中、所定の遊技回数内で、当該入賞が確定しないことを条件として、」「前記高純増移行期間中でない場合には、前記高純増移行期間への移行の可否を決定するとともに、前記高純増移行期間中の場合には、当該高純増移行期間として定められた遊技回数の加算の可否を決定するための移行加算手段を備え」ることは当業者にとって想到容易である。
最後に「移行の可否を決定」及び「加算の可否を決定」につき検討するに、何らかの条件が成立した場合に、無条件に遊技者に利益を与えるか、それとも上記条件成立を、利益を受けるための抽選権利とするかは設計事項であり、後者であれば「移行の可否を決定」及び「加算の可否を決定」と表現されることになる。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-26 
結審通知日 2007-11-01 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願2000-243522(P2000-243522)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
土屋 保光
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  

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