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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680093 審決 特許
無効200680104 審決 特許
無効200680210 審決 特許
無効2008800061 審決 特許
無効2007800026 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A63F
管理番号 1170238
審判番号 無効2006-80042  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-13 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2640223号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2640223号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
主立った手続を箇条書きにすると次のとおりである。
・昭和63年5月31日 特願昭63-135022号出願(以下「原出願」という。)
・平成7年5月31日 原出願の分割出願として本件出願
・平成9年5月2日 特許第2640223号として設定登録(請求項1)
・平成18年3月13日 請求人大森幸子より請求項1の特許に対して本件無効審判請求
・同年5月29日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出(この訂正請求を、以下「本件訂正」という。)
・同年7月4日 請求人より弁駁書提出
・平成19年10月25日 被請求人より意見書提出

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
(1)本件訂正について
本件訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法134条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に適合しない。
さらに、訂正後の請求項1の記載は不明瞭であるから、本件訂正は特許法134条の2における訂正には該当しない。
(2)訂正前の発明の新規性(無効理由1)
本件特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、後記甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許は特許法29条1項3号の規定に反してされた特許であり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(3)訂正前の発明の進歩性(無効理由2)
本件発明は、甲第1号証及び後記甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法29条2項の規定に反してされた特許であり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(4)訂正後の発明に対する主張
仮に本件訂正が認められるとしても、後記甲第3号証を参酌すれば、本件発明は依然として新規性又は進歩性を欠如する。
(5)甲号各証
請求人の提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開昭63-49183号公報
甲第2号証:特開昭60-232189号公報
甲第3号証:実願昭60-113698号(実開昭62-24891号)のマイクロフィルム

2.被請求人の主張
本件訂正は適法であり、本件発明は新規性又は進歩性を欠如するものではない。
被請求人は、訂正が適法であることの証拠として、乙第1号証として平成12年(行ケ)第275号判決(判決言渡し 平成14年2月27日)及び乙第2号証として昭和56年(行ケ)第123号判決(判決言渡し 昭和58年3月23日)を提出している。

第3 訂正の許否の判断
1.訂正事項
本件訂正は、特許請求の範囲の訂正を訂正事項に含んでおり、訂正前後の請求項1の記載は次のとおりである。
(本件訂正前の請求項1)
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有するスロットマシンであって、
前記可変表示装置を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲームを開始し、所定条件の成立により前記ビッグボーナスゲームを終了させる遊技制御を行なう遊技制御手段とを含み、
前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されていることを特徴とする、スロットマシン。」
(本件訂正後の請求項1)
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有するスロットマシンであって、
前記可変表示装置を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲームを開始し、所定条件の成立により前記ビッグボーナスゲームを終了させる遊技制御を行なう遊技制御手段とを含み、
前記遊技制御手段は、プログラムに従って前記遊技制御を行なうマイクロコンピュータで構成され、前記ビッグボーナスゲームでなくかつボーナスゲームでもない通常のゲーム状態のときに、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた所定の表示態様になった場合に前記ボーナスゲームを発生させ、前記ビッグボーナスゲームが開始したときには、前記ボーナスゲームが発生する表示態様の数を増加させ、前記ビッグボーナスゲームの最中に実行されたゲーム数が30回に達する第1条件、または、前記ビッグボーナスゲームの最中に前記ボーナスゲームが3回発生する第2条件のいずれかが成立することにより、前記所定条件が成立したと判断して前記ビッグボーナスゲームを終了させるとともに、前記ボーナスゲームが発生する表示態様の数を前記通常のゲーム状態のときの数に戻し、
スロットマシンは、前記第1条件の成立で前記ビッグボーナスゲームが終了した後および前記第2条件の成立で前記ビッグボーナスゲームが終了した後のいずれにおいても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく前記通常のゲーム状態に復帰して遊技者が引き続き遊技が続行可能となり、かつ、前記第1条件の成立で前記ビッグボーナスゲームが終了して前記通常のゲーム状態に復帰するときには、前記マイクロコンピュータにより持ち点が0になっているか否かの判断を行なう持ち点判断プログラム部分に復帰する一方、前記第2条件の成立で前記ビッグボーナスゲームが終了して前記通常のゲーム状態に復帰するときには、前記持ち点判断プログラム部分以降のプログラム部分に復帰するように構成されていることを特徴とする、スロットマシン。」(下線が訂正箇所)

2.実質上特許請求の範囲を変更するか否かの検討
願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)には、【従来の技術】として「スロットマシンにおいて、従来から一般的に知られているものに、たとえば、回転リールなどから構成された可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲームが開始され、所定条件の成立によりそのビッグボーナスゲームが終了するように制御されるものがあった。そして、従来のスロットマシンにおいては、このビッグボーナスゲームが終了した段階で当該スロットマシンによる遊技が続行できないように構成されていた。」(段落【0002】)との記載、並びに【発明が解決しようとする課題】として「本発明は、ビッグボーナスゲーム終了後においても引続き遊技を続行できるようにしたいという要望があることを新たに発見し、その新たな発見に基づいて考え出されたものであり、その目的は、煩雑な操作を必要とすることなく前記要望に応えることのできるスロットマシンを提供することである。」(段落【0004】)との記載がある。
本件訂正前の請求項1の上記記載のうち「表示状態が変化可能な可変表示装置を有するスロットマシンであって、前記可変表示装置を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲームを開始し、所定条件の成立により前記ビッグボーナスゲームを終了させる遊技制御を行なう遊技制御手段とを含」むスロットマシンは、【従来の技術】として記載されていたスロットマシンにほかならないから、本件訂正前の請求項1に係る発明の特徴が「ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されていること」のみにあることは明らかであり、この特徴事項はまさに、上記課題を達成するに必要な構成であって、それ以外のものではない。
本件訂正後の請求項1には、「遊技制御手段は、プログラムに従って前記遊技制御を行なうマイクロコンピュータで構成され」及び「マイクロコンピュータにより持ち点が0になっているか否かの判断を行なう持ち点判断プログラム部分」との記載があり、これは遊技者の持ち点を用いて遊技を行うことを前提とするものであるが、「ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されていること」と持ち点を用いることには何の関係もない。
加えて、持ち点判断プログラム部分に復帰する場合と持ち点判断プログラム部分以降のプログラム部分に復帰する場合(厳密にいうと「持ち点判断プログラム部分以降のプログラム部分に復帰する」という場合、「持ち点判断プログラム部分に復帰する」ことを含むが、ここでは「持ち点判断プログラム部分よりも後のプログラム部分に復帰する」との趣旨に解する。)を比較すると、遊技者にとって、持ち点判断プログラム部分による持ち点判断時間は遊技続行の上で問題とならないほどの僅少な時間であることは明らかであって、段落【0004】記載の「煩雑な操作を必要とすることなく前記要望に応えること」とも関係がない。なぜなら、持ち点判断プログラム部分に復帰したとすると、持ち点判断を行うものの、同判断は何らかの操作を必要とするものではないからである。そして、第2条件の成立で通常のゲーム状態に復帰するに際し、持ち点判断プログラム部分以降のプログラム部分に復帰するとの構成は、専ら遊技者の持ち点を用いて遊技を行うことを前提とした上で、不要と思われる持ち点判断プログラム部分をとばすことにほかならず、そのように不要なプログラム部分をとばすという、訂正前の発明とは無関係な新たな技術思想を追加するものであるから、本件訂正は実質上特許請求の範囲を変更するものといわざるを得ない。もとより、特許請求の範囲を減縮すれば、減縮したことにより訂正前発明の目的がより具体化される、又は同目的の達成程度が変更されることは十分にあり、そのような訂正であれば特許請求の範囲の実質変更に該当しないことは当審も認めるが、本件訂正はそのようなものとは全く性質を異にしている。
被請求人は、本件訂正により、本件特許発明の目的・効果が訂正されていないと主張するが、訂正明細書において目的・効果を訂正しなければ、実質上特許請求の範囲を変更することに該当しないのだとすると、目的・効果を訂正さえしなければ、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がすべて、実質上特許請求の範囲を変更しないものとして許容されることになり、訂正目的の制限とは別に、実質上特許請求の範囲を変更しないことを訂正要件として定めたことの趣旨が没却されることとなるから、被請求人の主張を採用することはできない。
なお、平成12年(行ケ)第275号判決及び昭和56年(行ケ)第123号判決は、訂正又は補正事項が、訂正又は補正前発明の目的の範囲内であり、新たな技術的課題を解決する手段を追加したことに当たらないことを理由として、決定又は審決を取り消すべく判示した判決であり、本件とは事案を異にする。

3.訂正の許否の判断の結論
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法134条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に適合しない。
よって、本件訂正を認めない。

第3 本件審判請求についての判断
1.本件発明の認定
本件訂正が認められないから、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲【請求項1】、すなわち「第2 1」において「本件訂正前の請求項1」として記したとおりのものと認める。

2.甲第1号証の記載事項
甲第1号証(以下「甲1」と略記する。)には、以下のア?キの記載又は図示がある。
ア.「第1図に示すパチスロ機1は、ゲーム装置として回転可能に並置した3個の回転ドラム3を有し、それらの一側は前面カバーの可視窓2を通して視認される。各回転ドラム3の外周面には、周方向に多種の符合(所定の図形、記号、数字等)を連続的に付してあり、静止した状態下では、これらの符合のうち各回転ドラム3毎に上段、中段、下段の3個、計9個が同時に、正面の可視窓2から表示される。」(3頁左下欄1?9行)
イ.「スタートスイッチ7を操作すると、ゲーム装置が始動し、ドラム3が一斉に回転すると共に、回転表示器8Aが点灯し停止スイッチ8の操作が有効であることを表示する。そして、停止スイッチ8を操作すると、それに属するドラム3の回転が独立に停止し、対応する停止表示器8Aが消灯する。遊戯者が賭けたライン上に、回転ドラム3の予め定めた特定の組合せ(賞態様)の1つが並んだときは、その組合せの重みに従って約束された得点がデジタル式の得点表示器9に表示され、賞コイン排出装置(図示せず)により、受皿1Aに対応する数の賞コインが排出される。」(3頁右下欄16行?4頁左上欄8行)
ウ.「賞態様としては、「一般遊戯」の下で2、7、10、14、15単位の賞コイン数の支払がなされる場合と、“大ボーナス遊戯”及び“ボーナス遊戯”の下で15単位の賞コイン数の支払がなされる場合の2つに大別される。一般遊戯の状態から“大ボーナス遊戯”に移行する組合せは、この実施例ではダイヤの絵柄“☆”が3個揃ったときであり、“ボーナス遊戯”に移行する組合せは、数字の“7”が3個揃ったときである。」(4頁左上欄9?17行)
エ.「第4図はマイクロコンピュータを使用した制御装置の構成例であり、CPU30、ROM31及び不揮発性メモリから成るRAM32を有する。CPU30はROM31に書込んだプログラムに従って、入力ボート33より必要とされる外部データを取込んだり、あるいは又RAM32との間でデータの授受を行なったりしながら演算処理し、必要に応じて処理したデータを出力ボート34又は音声用IC(音声回路)35へ出力する。
第5図に示すように、プログラムは“投入コイン検出処理”“ゲーム開始処理”“ドラム回転処理”“ドラム停止処理”“判定処理”“賞コイン排出処理”“処理モード更新”の各処理を順次に行なう。」(5頁左上欄1?15行)
オ.「第2特別表示、即ち、“777”が揃ったときは、ボーナス遊戯が行ない得る。これは、3つのドラム3の絵柄が揃うかどうかではなく、停止させる1つのドラム3の特定絵柄“AAA”(他の絵柄と重なっている)が中央の賭ライン上に一致するかどうかの遊戯であり、一致した場合は、例えば15枚のコインが支払われる遊戯である。「第1特別表示」のとき、即ちダイヤが3つ“☆☆☆”が揃ったときは、「大ボーナス遊戯」に移行し大ボーナスの権利が発生する。この「大ボーナス遊戯」というのは、一定の条件下で上記の「ボーナス遊戯」に入ることが最大K回(ここではK=3)まで可能な遊戯である。ここでボーナス遊戯に入るための「一定の条件」というのは、大ボーナスの権利発生後、各ボーナス遊戯の前段階として到来する一般遊戯と同じ遊戯状態(権利付一般遊戯)に於て、そのゲーム数が計30回行なわれる迄の間に、3つの各ドラム3の特定絵柄、本例では“AAA”(他の絵柄と重なっている)が、遊戯者の賭けた1?5本の賭ライン上の一つに揃うことである。“AAA”が3つ揃うことによりプログラムは「ボーナス遊戯」に入り、「ボーナス遊戯」終了後まだK=3回に達していないときは、再び権利付一般遊戯に戻り、最大K=3回まで繰返す、最大K=3回までと表現したのは、もし権利付一般遊戯(30回)に於て、不幸にして“AAA”が-度も揃わなかった場合は、最大回数K回(K=3)に満ないときでも、その時点で大ボーナスの権利が消失し、通常の一般遊戯に戻ってしまうからである。」(5頁左下欄19行?6頁左上欄8行)
カ.「CPUは、賞コイン排出後、上記の「ボーナスフラグ」に入るためのボーナスフラグが立っているかどうかを見て(3.08)、「ボーナス遊戯」でなければ「一般遊戯」であるので、ステップ1.03に戻る。」(6頁左上欄9?13行)
キ.第6図には、ステップ3.05及びステップ3.06で入賞と判定された後、コイン排出(ステップ3.07)し、ステップ3.08で特別遊戯と判定された場合にステップ3.09の特別遊戯サブルーチンを実行し、ステップ3.10で特別遊戯と判定された場合に、ステップ1.01(タイマ設定)に戻ることが示されている。

3.甲第1号証記載の発明の認定
記載又は図示ア?キを含む甲1の全記載及び図示によれば、甲1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「外周面の周方向に多種の符合を連続的に付した3個の回転ドラムを有し、これらの符合のうち各回転ドラム毎に上段、中段、下段の3個、計9個が同時に正面の可視窓に表示されるように構成し、プログラムに従って投入コイン検出処理、ゲーム開始処理、ドラム回転処理、ドラム停止処理、判定処理、賞コイン排出処理、処理モード更新の各処理を順次行うように構成され、
スタートスイッチを操作すると、3個の回転ドラムが一斉に回転し、停止スイッチを操作すると、それに属するドラムの回転が独立に停止し、遊戯者が賭けたライン上に、回転ドラムの予め定めた特定の組合せの1つが並んだときは、その組合せの重みに従って約束された賞コインが排出されるパチスロ機であって、
一般遊戯において、“777”が揃ったときはボーナス遊戯に移行し、“☆☆☆”が揃ったときは大ボーナス遊戯に移行し、
大ボーナス遊戯においては、権利付一般遊戯が計30回行われるまでに、3回を限度として、“AAA”(他の絵柄と重なっている)が3つ揃うことによりボーナス遊戯に入り、権利付一般遊戯が30回行われると一般遊戯に戻るようにプログラムされているパチスロ機。」(以下「甲1発明」という。)

4.本件発明と甲1発明の対比
甲1発明の「3個の回転ドラム」は、それらが回転することにより外周面に付した符合が変化して可視窓に表示されるのだから、本件発明の「表示状態が変化可能な可変表示装置」に相当する。
甲1発明では「スタートスイッチを操作すると、3個の回転ドラムが一斉に回転し、停止スイッチを操作すると、それに属するドラムの回転が独立に停止」し、ゲーム開始処理、ドラム回転処理及びドラム停止処理はプログラムに従って行われるのだから、本件発明の「前記可変表示装置を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段」が甲1発明に備わっていることは明らかである。
甲1発明の「“☆☆☆”が揃ったとき」は本件発明の「前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合」に相当し、「ボーナス遊戯」及び「大ボーナス遊戯」は、本件発明の「ボーナスゲーム」及び「ビッグボーナスゲーム」にそれぞれ相当する。ここで、甲1発明の「ボーナス遊戯」が「遊技者にとって有利な状態」であることは自明である。
甲1には、大ボーナス遊戯中において、一般遊戯時よりもボーナスゲームの発生確率が向上することの直接的記載はない。しかし、一般遊戯時のボーナス遊戯移行条件が「“777”が揃ったとき」とされているのに対し、権利付一般遊戯時(大ボーナス遊戯中)のボーナス遊戯移行条件は「“AAA”(他の絵柄と重なっている)が3つ揃うこと」とされており、後者の発生確率が前者のそれよりも大きくないとすると、遊技者にとって「大ボーナス遊戯」の遊戯価値がなくなる。そればかりか、権利付一般遊戯が計30回行われるまでに、3回を限度としてボーナス遊戯に移行するのであるが、ボーナス遊戯に3回移行するとは限らないものの、3回移行する可能性が相当程度あるものと解さざるを得ない。そうでなければ、3回を限度とすることの技術的意義がなくなるからである。そして、権利付一般遊戯が30回行われるまでに、3回ボーナス遊戯に移行する可能性が相当程度ある以上、“AAA”が3つ揃う確率は、それを可能とする程度の数値でなければならない。
他方、一般遊戯が30回行われるまでに、3回ボーナス遊戯に移行する可能性が相当程度あるとすると、あまりにも頻繁にボーナス遊戯に移行することとなり、それはパチスロ機としては著しく不自然である。
そうである以上、甲1に直接的記載はないものの、大ボーナス遊戯中において(権利付一般遊戯時)は、一般遊戯時よりもボーナスゲームの発生確率が向上すると解するのが自然であるから、「遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲーム」は本件発明と甲1発明の一致点である。なお、仮にこれを相違点と捉えても、上記の理由から、権利付一般遊戯時のボーナスゲームの発生確率を、一般遊戯時のそれよりも向上させることは設計事項というべきであり、本件発明の新規性はともかくとして、進歩性を欠如することは明らかであって、審決の結論には影響を及ぼさない。そして、甲1発明の「大ボーナス遊戯」が所定条件(ただし、その条件が何であるかは、後記のとおり必ずしも明らかでない。)の成立により終了することは当然であり、本件発明の「遊技制御手段」は当然甲1発明にも備わっている。
甲1の記載カは第6図についての説明であるが、第6図にある「特別遊戯」との用語は記載カには見られず、「「ボーナス遊戯」でなければ「一般遊戯」である」と表現されている。ここで、甲1発明では、遊戯として「一般遊戯」、「権利付一般遊戯」及び「ボーナス遊戯」の3種類があるところ、被請求人は、一般遊戯には権利付一般遊戯が含まれ、第6図の「特別遊戯」は「ボーナス遊戯」の趣旨であって、「大ボーナス遊戯」を含まない旨主張している。
しかし、この主張は「権利付」との接頭辞を無視したものであり、接頭辞を無視することが許されるならば、記載カの「ボーナス遊戯」が、「大ボーナス遊戯」を含むと解する余地は十分ある。
そこで、どちらの解釈が妥当であるか検討するに、請求人主張のとおり、一般遊戯が権利付一般遊戯を含むと解すれば、権利付一般遊戯の回数が30回に達しているかどうかをステップ3.09の特別遊戯サブルーチン以外で判定しなければならないが、第6図にはそのような判定ステップは示されていない。
逆に、記載カの「ボーナス遊戯」が「大ボーナス遊戯」を含むと解すれば、ステップ3.10の「特別遊戯終了」判定は、ボーナス遊戯と大ボーナス遊戯に共通して行われることになり、格別不都合はない。そして、特別遊戯終了(大ボーナス遊戯を含む。)と判定されればステップ1.01に進み、一般遊戯を行うのであって、ステップ1.01に進む際に「係員による遊技再開のための操作が行なわれること」がないことは明らかであるから、「前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されている」ことも、本件発明と甲1発明の一致点である。
百歩譲って、甲1第6図の「特別遊戯」が「大ボーナス遊戯」を含まないと解した場合でも、「特別遊戯」には大ボーナス遊戯中のボーナス遊戯が含まれることは明らかである。ところで、甲1発明では、権利付一般遊戯が30回行われると、大ボーナス遊戯を終了し、一般遊戯に戻るのであるが、権利付一般遊戯が30回行われるまでに、3回ボーナス遊戯に移行した場合に、権利付一般遊戯が30回未満であっても大ボーナス遊戯を終了するのかどうか甲1には直接的記載がない。そこで場合分けをして検討する。3回ボーナス遊戯に移行すれば、権利付一般遊戯が30回未満であっても大ボーナス遊戯を終了する(3回目のボーナス遊戯終了により、大ボーナス遊戯を終了する。)場合には、3回目のボーナス遊戯終了が第6図ステップ3.10に該当するから、「前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されている」こととなる。権利付一般遊戯が30回に達した場合のみ大ボーナス遊戯を終了する場合には、「権利付一般遊戯(30回)に於て、・・・その時点で大ボーナスの権利が消失し、通常の一般遊戯に戻ってしまう」(記載カ)とあることから見て、「前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されている」こととなる。
結局、大ボーナス遊戯終了条件が上記どちらの場合であっても、「前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されている」ことは、本件発明と甲1発明の一致点である。
この点につきさらに検討すると、第2で述べたように、本件発明の課題は「従来のスロットマシンにおいては、このビッグボーナスゲームが終了した段階で当該スロットマシンによる遊技が続行できないように構成されていた。」(段落【0003】)との課題を解消することにあるが、かかる課題が真実存在したのかどうか極めて疑わしい。同課題は、原出願の当初明細書に記載されていないばかりか、同明細書に「本実施例では打止の制御については触れなかったが、遊技機の差数(取込んだ点数と付与した点数の差)が所定値に達したことや持点が所定値に達したことあるいはビッグボーナゲームが終了したこと等に基づいて打止とするようにしてもよい。」(原出願の公開公報である特開平1-303181号公報19頁左下欄7?12行)とあるほか、遊技機の差数が所定値に達したことや持点(又はコイン等の払い出し数)が所定値に達したことことをもって打止とすることが周知である(例えば、特開昭62-253092号公報7頁右上欄13?15行、特開昭63-21086号公報3頁右下欄17?18行及び特開昭62-270188号公報18頁右上欄末行?左下欄2行に記載されている。)ことを考慮すれば、原出願の出願時点では、複数ある打止条件の1つとしてビッグボーナゲーム終了を採用したスロットマシンが存在することが認識されていただけであり、それ以外の打止条件(ビッグボーナゲームが終了しても打止としない。)も従来から存することは、請求人も認識していたと解さざるを得ない。そして、ビッグボーナスゲーム終了後にそのまま遊技続行可能とすることには、何らの技術的障害がないことを考慮すれば、本件特許はありもしない課題をねつ造し、従来からのありふれた構成をあたかも新規な構成であるかに装うことによって獲得した特許であるとの疑念を拭いきることができない。
そして、甲1発明の「パチスロ機」を「スロットマシン」と称することができることはいうまでもない。
したがって、本件発明と甲1発明は、
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有するスロットマシンであって、
前記可変表示装置を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者にとって有利な状態となる確率が向上するボーナスゲームの発生確率が向上したビッグボーナスゲームを開始し、所定条件の成立により前記ビッグボーナスゲームを終了させる遊技制御を行なう遊技制御手段とを含み、
前記ビッグボーナスゲームが終了した後においても、係員による遊技再開のための操作が行なわれることなく遊技者が引続き遊技が続行可能となるように構成されていることを特徴とする、スロットマシン。」である点で一致し、両者に相違点は存在しない。
すなわち、本件発明は甲1発明そのものであるから、請求項1の特許は特許法29条1項3号の規定に反してされた特許である。

第4 むすび
以上によれば、本件特許は特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-07 
結審通知日 2007-11-09 
審決日 2007-11-20 
出願番号 特願平7-133866
審決分類 P 1 113・ 113- ZB (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
小林 俊久
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2640223号(P2640223)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 森田 俊雄  
代理人 塚本 豊  
代理人 中田 雅彦  
代理人 青木 俊明  
代理人 杉山 猛  
代理人 根本 恵司  
代理人 深見 久郎  
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