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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1170247
審判番号 不服2004-1775  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-26 
確定日 2008-01-07 
事件の表示 平成 9年特許願第528321号「半導体材料のウエファに形成された半導体素子のレーザ分割方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月14日国際公開、WO97/29509、平成11年 3月30日国内公表、特表平11-503880〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成9年1月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年2月9日、オランダ国)を国際出願日とする特許出願であって、その請求項1乃至7に係る発明は、平成15年9月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面(以下、「本件明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「レーザ放射を光学系により半導体ウエファに照射するとともにウエファをこのレーザ放射と相対的に形成すべき切込み溝に追従するパスに沿って移動させ、過熱によりハードウエア材料を局部的に蒸発させてウエファの表面に切込み溝を形成し、半導体材料のウエファに形成された半導体素子を分割する方法であって、レーザ放射をウエファに少なくとも2つのビームの形で照射するとともに、ウエファをこれらのビームと相対的に、これらのビームが同一のパス上を次々に走行するよう移動させる半導体素子の分割方法において、前記同一のパスを走行する少なくとも2つのビーム間に、少なくとも、ウエファから前記パスにおいて蒸発された半導体材料の本質的に完全な消失を可とするに十分な時間間隔を与えることを特徴とする半導体素子の分割方法。」

2 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭50-40695号(実開昭51-121592号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次のとおり記載されていると認める。
(1) 明細書1頁下から8行-2頁10行
「本考案は、例えば半導体のウェハ(薄板)をスクライビングするレーザ加工装置に係り、特にウェハの製作を短時間で簡単にできるようにしたレーザ加工装置に関する。
一般に半導体装置の多くはシリコンあるいはゲルマニウムを原料とする単結晶のウェハを基板としてその内部あるいは表面に作ったpn接合を利用するものである。
このウェハは、シリコンやゲルマニウムを、るつぼ等の中で溶融してインゴットとしたものにダイヤモンドカッターやレーザ光線で傷をつけ、厚さ0.1mm位の板状にしたものである。
このウェハを製作する際、その各々を分離する為にレーザによって縦横に傷をつけることをレーザスクライビングと言う。このレーザスクライビングは、レーザ発振器から発振されたレーザ光線を集合レンズを通過せしめて被加工物上に収束照射するようにして行なわれる。」
(2) 明細書4頁9行-6頁9行
「以下添付図面を参照して本考案の一実施例について説明する。
すなわち、第4図は本考案の組合せレンズ20の斜視図であり、この組合せレンズ20は複数の同一の焦点距離をもつ単位体21、21、…の端面を互いに接着させるようにして形成したものである。
上記単位体21は、第5図に示したように通常のレンズ30の中心部を光軸31と同一方向に端面が平行になるように切断したものである。
第6図は組合せレンズ21をレーザ加工装置に組込んだ状態を示す説明図であり、第1図と同一部分については同一符号が付されている。
レ一ザ発振器から発振されたレーザ光線2は上記組合せレンズ20の各単位体21を通ってそれらの焦点距離近傍に位置する被加工物4の表面上に別
個に収束し、各単位体21の教だけのスポット2a,2b,…を作る。
しかして、上記組合せレンズの各単位体21はその焦点距離が等しくなるように一定の曲率が与えられているので、上記被加工物4の表面上の各スポットは第7図に示す如く同一の大きさを有し、且つ、駆動テーブル3が摺動しうる方向に一直線に並んでいる。
今、駆動テーブル5の位置を調整して被加工物4の左端をスポット2dに合わせた後、駆動テーブル5を左側へ一定の速度で摺動させると被加工物4の表面には先ず、上記スポット2dによって照射された1条の溝ができ、次いでこの溝は順にスポット2c,2b,2aによって照射され、その深さを増していく。従ってこの溝は4回照射されることになり、第1図に示したような従来の方法での照射を4回実施したものと同様の効果が生じることになる。
また本考案の実施例で示した方法によれば、レーザ光線の出力を増大せしめても、従来の方法の様に溝の幅が広がってしまうということもなくなる。これは、レーザ発振器から発振されたレーザ光線のビームが組合せレンズ20によって、その単位体21の数と等しい数に細分され、この細分された細いビームが被加工面に照射されることとなるからである。」
また、ウェハをレーザ光線と相対的に形成すべき溝に追従するパスに沿って移動させ、過熱によりハードウエア材料を局部的に蒸発させてウェハの表面に溝を形成して半導体素子を分割していることは、上記記載(1)および(2)ならびに技術常識からして明らかである。

以上のとおりであるので、引用例には、次の「半導体素子の分割方法」が記載されていると認める。
「レーザ光線2を組合せレンズ20により被加工物4であるウェハに照射するとともにウェハをこのレーザ光線2と相対的に形成すべき溝に追従するパスに沿って移動させ、過熱によりハードウエア材料を局部的に蒸発させてウェハの表面に溝を形成し、シリコン又はゲルマニウムのウェハに形成された半導体素子を分割する方法であって、レーザ光線2をウェハに4つのビームの形で照射するとともに、ウェハをこれらのビームと相対的に、これらのビームが同一のパス上を次々に走行するよう移動させる半導体素子の分割方法。」(以下「引用例記載の発明」という。)。

3 対比
本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「レーザ光線」は、本件発明の「レーザ放射」に相当しており、以下同様に、「組合せレンズ」は「光学系」に、「ウェハ」は「半導体ウエファ」に、「溝」は「切込み溝」に、「シリコン又はゲルマニウム」は「半導体材料」にそれぞれ相当していることが明らかである。
また、本件発明の「少なくとも2つのビーム」は、「4つのビーム」を含んだものである。
したがって、両者は、次の「半導体素子の分割方法」で一致している。
「レーザ放射を光学系により半導体ウエファに照射するとともにウエファをこのレーザ放射と相対的に形成すべき切込み溝に追従するパスに沿って移動させ、過熱によりハードウエア材料を局部的に蒸発させてウエファの表面に切込み溝を形成し、半導体材料のウエファに形成された半導体素子を分割する方法であって、レーザ放射をウエファに4つのビームの形で照射するとともに、ウエファをこれらのビームと相対的に、これらのビームが同一のパス上を次々に走行するよう移動させる半導体素子の分割方法。」
そして、両者は、次の点で相違している。
本件発明では、同一のパスを走行する4つのビーム間に、少なくとも、ウエファから前記パスにおいて蒸発された半導体材料の本質的に完全な消失を可とするに十分な時間間隔を与えているのに対し、引用例記載の発明では、そのような時間間隔を与えているのか明らかではない点。

4 相違点の検討
上記相違している点について検討する。
まず、半導体ウエファの表面に切込み溝を形成するためのレーザ放射について、従来技術をみてみると、本件明細書に実施例として記載されているQスイッチYAGレーザを用いることは、例えば、特開昭51-78169号公報及び特公平1-45225号公報等に記載されているように従来周知であり、また、QスイッチYAGレーザを用いるときに、1?50KHzの範囲のパルスレーザとすることは、例えば、上記各周知例、特公平7-3899号公報及び原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第94/29069号パンフレット等に記載されているように普通に行われるものと認められる。
そうすると、引用例記載の発明におけるレーザ放射に、上記周知のQスイッチYAGレーザを採用し、発生するレーザを1?50KHzの範囲のパルスレーザとすることに何ら困難性は見当たらないというべきところ、かかるパルスレーザを用いる場合、パルス間の時間間隔の範囲は20?1000μsとなり、ウエファを4つのビームに対し、これらビームが同一パスを上記範囲の時間間隔で走行するように移動させることになると解される。
ところで、請求項2に記載の事項及び本件明細書2頁末行?3頁3行に記載の事項によれば、ウエファが2つ以上のビームに対し、これらビームが同一パスを10μsよりも長い時間間隔で走行するように移動すれば、パスにおいて蒸発された半導体材料の本質的に完全な消失を可とするに十分な時間間隔が与えられていると解されるところ、上記周知のパルスレーザを用いた場合のパルス間の時間間隔の範囲は、10μsよりも長いのであるから、上記周知のパルスレーザを引用例記載の発明におけるレーザ放射に用いた場合には、同一のパスを走行する4つのビーム間に、少なくとも、ウエファから前記パスにおいて蒸発された半導体材料の本質的に完全な消失を可とするに十分な時間間隔を与えることになると解するのが妥当である。
そうすると、上記相違している点は、上記周知のQスイッチYAGレーザを、普通に使用されている1?50KHzの範囲のパルスレーザとして用いることによって、当業者が容易になし得たものというべきである。

また、本件発明の奏する効果も、客観的に見れば、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

5 むすび
したがって、本件発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願の請求項2乃至7に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-05 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-07-25 
出願番号 特願平9-528321
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀本 孝  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 鈴木 孝幸
中島 昭浩
発明の名称 半導体材料のウエファに形成された半導体素子のレーザ分割方法  
代理人 杉村 興作  

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