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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E02D
管理番号 1171286
審判番号 無効2005-80009  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-01-18 
確定日 2007-12-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3329737号「擁壁用ブロック及び同ブロックを使用した擁壁の構築方法」の特許無効審判事件についてされた平成17年8月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3329737号の請求項1、5、6に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3329737号の請求項4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
1.本件特許第3329737号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成10年7月31日(国内優先権主張:平成10年2月23日)に特許出願された特願平10-218265号(以下、「本件出願」という。)であって、その請求項1ないし8に係る発明について平成14年7月19日に設定登録され、その後、本件無効審判請求人小川建材工業株式会社(以下、「請求人」という。)により上記本件特許のうちの請求項1、4,5及び6に係る発明の特許に対して平成17年1月18日に本件無効審判〔無効2005-80009〕が請求されたものであり、当審は平成17年4月14日付けの訂正請求書による訂正を認めるとした上で、「特許第3329737号の請求項1、5及び6に係る発明についての特許を無効とする。特許第3329737号の請求項4に係る発明についての審判請求は成り立たない。審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。」との結論を内容とする平成17年8月17日付けの審決を請求人及び被請求人に送達した。
2.これに対し、被請求人は、前記審決についての審決取消訴訟〔平成17年(行ケ)第10708号審決取消請求事件〕を、平成17年9月27日に知的財産高等裁判所に提訴するとともに、平成17年12月26日に本件特許についての訂正審判請求書〔訂正2005-39235〕を提出した。
3.これを受けて、知的財産高等裁判所は、「当裁判所は、当事者の意見を聴いた上、本件特許を無効にすることについて特許無効審判において更に審理させることが相当であると認めるので、事件を審判官に差し戻すため、特許法第181条第2項により、審決を取り消す」ことを内容とする平成18年1月23日付けの決定をした。
4.そこで、当審に差し戻しされた前記無効審判についての審理をするに当たって、当審は、被請求人(訂正審判請求人)に対し、改めて無効審判における訂正の請求の意思の有無を質したところ、被請求人(訂正審判請求人)から平成18年2月13日に訂正請求書が提出され、請求人から平成18年3月31日に審判事件弁駁書が提出されたものである。

第2.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件の請求項1、4、5、6に係る発明の特許を無効とする理由として次のように主張するとともに下記甲第1号証?甲第3号証を提出した。
無効理由:本件の請求項1、4、5、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるか、或いは、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、これらの特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第1号証:土木系材料技術・技術審査証明報告書「構造用プレキャストコンクリートブロック積み上げ式擁壁「ゴールコン」」、財団法人土木研究センター、平成9年6月11日発行、(序、技術審査証明書、8?12頁、160(4)頁、161(5)頁)
甲第2号証:特開平8-27817号公報
甲第3号証:特開平8-218401号公報

しかしながら、請求人は弁駁書において、「訂正後の請求項1、5及び6に係る発明は、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」と主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は、訂正請求書において、本件の請求項1、4、5、6に係る発明について、請求人主張の無効理由はない旨を主張し、下記乙第1ないし4号証を提出している。

乙第1号証:参考資料(引張力及び圧縮力の応力分布図)
乙第2号証:参考資料(前壁と控え壁との関係を示す平面図)
乙第3号証:参考資料(充填・硬化材を示す正断面図)
乙第4号証:参考資料(充填・硬化材の流れを示す正断面図)

また、被請求人は、特に、訂正後の請求項4に係る発明は、本件無効審判の請求対象外である請求項2又は3に係る発明の従属項に訂正されたものであるから、本件無効審判の請求対象外とみなせるものである旨、主張している。

第3.訂正について
1.訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の旧請求項1を、以下のように訂正する。
「【請求項1】 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴とする擁壁用ブロック。」
訂正事項b:特許請求の範囲の旧請求項2を、以下のように訂正する。
「【請求項2】 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、 前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成したことを特徴とする擁壁用ブロック。」
訂正事項c:特許請求の範囲の旧請求項2又は請求項3を引用する旧請求項4を、以下のように訂正する。
「【請求項4】 控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の擁壁用ブロック。」
訂正事項d:特許請求の範囲の旧請求項1を引用する旧請求項4を更に引用する旧請求項7を、以下のように訂正する。
「【請求項7】 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。」
訂正事項e:特許請求の範囲の旧請求項1を引用する旧請求項4を引用する旧請求項5を更に引用する旧請求項7を、以下のように訂正する。
「【請求項8】 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。」
訂正事項f:特許請求の範囲の旧請求項1を引用する旧請求項4を引用する旧請求項6を更に引用する旧請求項7を、以下のように訂正する。
「【請求項9】 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となし、
前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。」
訂正事項g:特許請求の範囲の旧請求項8を、以下のように訂正する。
「【請求項10】 上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置することを特徴とする請求項7?9のいずれかに記載の擁壁の構築方法。」
訂正事項h:特許明細書の【0009】を、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴とする擁壁用ブロックを提供するものである。」
訂正事項i:特許明細書の【0012】を、次のように訂正する。
「マル1 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成したこと。」
訂正事項j:特許明細書の【0017】を、次のように訂正する。
「マル6 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。
マル7 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。
マル8 前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となし、前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。」
訂正事項k:特許明細書の【0018】を、次のように訂正する。
「マル9 上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置すること。」
訂正事項l:特許明細書の【0136】を、次のように訂正する。
「マル1 請求項1記載の本発明では、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成しているために、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間内にも充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔も一体化させることができる。」
訂正事項m:特許明細書の【0138】を、次のように訂正する。
「すなわち、硬化した充填・硬化材は、通常時においては、擁壁の後面(背面)側から前面(正面)側へ向って作用する土圧力等の外力による正の曲げモーメントに対して抵抗力を発揮させることができる一方、地震時においては、擁壁の前面側から後面側へ向って作用する地震力等によって生ずる負の曲げモーメントに対しても、通常時と同様に剛体としての抵抗力を発揮させることができる。
しかも、複数の鉄筋挿通孔中において硬化させた充填・硬化材と、節状部形成空間内において硬化させた充填・硬化材とを一体化させることができて、正・負の曲げモーメントに対する抵抗力と擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対する抵抗力を強力なものとすることができる。」
訂正事項n:特許明細書の【0148】を、次のように訂正する。
「マル7 請求項7?9記載の本発明では、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形しているために、鉄筋挿通孔内で硬化した柱状の充填・硬化材と、節状部形成空間内で硬化した節状部形成空間内で硬化した節状の充填・硬化材とが一体成形された剛体となり、外力に対して強い抵抗力を発揮する壁体となすことができる。」
訂正事項o:特許明細書の【0150】を、次のように訂正する。
「マル8 請求項10記載の本発明では、上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置しているために、節状部形成空間内に形成される節状部を、用心鉄筋により補強して、節状部が水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。」

2.訂正の適否
上記訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項b?gに係る訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、上記訂正事項h?oに係る訂正は、訂正事項a?gに関連してなされた明りょうでない記載の釈明に該当し、いずれの訂正も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4.審理の対象となる本件発明
上記のとおり、訂正が認められるから、訂正後の請求項1、4、5、6に係る発明は、平成18年2月13日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、4、5、6に記載された事項により特定されるものである。
ところで、訂正後の請求項4に係る発明は、訂正後の請求項2又は3に係る発明を引用する形式とされているところ、訂正後の請求項2又は3は無効審判が請求されていなかった訂正前の請求項2又は3に係る発明から実質的に変更されていないものであるから、訂正後の請求項4に係る発明については無効理由の対象とはならない。
ちなみに、請求人においても、弁駁書中で「訂正後の請求項1、5及び6に係る発明は、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」と主張している。
そうすると、本件の審理の対象となる発明は、請求項1、5及び6に係る発明であると言うことができ、ここで、請求項1に係る発明を「本件発明1」ということにし、また、請求項5、6の記載は、従属形式であるので、
請求項1を引用する請求項5に係る発明を「本件発明5A」とし、
請求項1を引用する請求項6に係る発明を「本件発明6A」とし、
各々を独立形式の記載に変えて、本件発明1とともに以下に示す。

1.本件発明1
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴とする擁壁用ブロック。」

2.本件発明5A
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしたことを特徴とする擁壁用ブロック。」

3.本件発明6A
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成し、
前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となしたことを特徴とする擁壁用ブロック。」

第5.無効理由の検討
1.甲号各証に記載された事項
甲第1号証(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載等がある。
(イ)「技術名称 構造用プレキャストコンクリートブロック積み上げ式擁壁「ゴールコン (開発の趣旨)鉛直壁高さ10mまでの擁壁の構築を可能とし、現場打ち鉄筋コンクリート擁壁と同等の構造性能を有し、かつ、施工が簡易で工期の短縮が図れる構造用プレキャストコンクリートブロック積み上げ式擁壁「ゴールコン」を提供する。」(技術審査証明書の上方)
(ロ)「1.審査証明対象技術 1.1技術の概要 「ゴールコン」は、鉄筋コンクリート擁壁の壁部分に積み上げ式の構造用プレキャストコンクリートブロック(以下、「ゴールコン」部材という)を使用し、基礎コンクリートに定着した鉛直鉄筋とゴールコン部材を中込めコンクリートにより一体化させた擁壁である。…「ゴールコン」部材は、…必要に応じ前面壁に意匠を施すことが可能である。また擁壁の控え部となる断面の形状・寸法により、500型、1000型、1500型、N1500型及びN2000型の5タイプがあり、それぞれに対して、基本型、端部調整型(1)、端部調整型(2)、角度調整型がある。」(8頁)
(ハ)160(4)頁「N1500タイプ」、及び161(5)頁「N2000タイプ」の図面の断面図をみると、
「控え部に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え部の上面に下方へ凹状の上側凹部を形成する一方、同控え部の下面に上方へ凸状の下側凹部を形成し、
前後仕切壁は、前後仕切壁の上端部を上側凹部の下面と同じ高さに位置させ、下端部を下側凹部の上面と同じ高さに位置させた擁壁用ブロック」及び
「鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロック」が開示されている。

そして、これらの擁壁用ブロックを上下方向に符合した場合に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側凹部と下段に位置する擁壁用ブロックの上側凹部とが節状部形成空間を形成すること、従って、下側凹部と上側凹部はそれぞれ上側節状部形成用凹部、下側節状部形成用凹部と呼べること、および、これら上・下側節状部形成用凹部同士がを鉄筋挿通孔を介して連通されることは明らかであるから、上記記載、図面及び当業者の技術常識によれば、刊行物1には以下の2つの発明が記載されているものと認める。

「前面壁と、同前面壁の後面より後方へ突出状に形成した控え部とを具備し、控え部には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え部に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え部の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え部の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さに位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロック」(以下、「刊行物1-1発明」という。)

「前面壁と、同前面壁の後面より後方へ突出状に形成した控え部とを具備し、控え部には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え部に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え部の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え部の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さに位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロック。」(以下、「刊行物1-5A発明」という。)

甲第2号証(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ニ)「【請求項1】前壁と、この前壁の背面側に突設形成された控え壁と、この控え壁に鉛直方向に開孔された鉄筋挿入孔と、を備え、この鉄筋挿入孔のうち、1個または複数個の鉄筋挿入孔は、その両端に開口された挿入口と、この両端の挿入口に連通した連通孔と、を有し、かつ、前記鉄筋挿入孔の連通孔内には、前記挿入口の孔径より縮径された小径部が設けられて成る擁壁用ブロック。【請求項2】前記連通孔には、上方側にしだいに拡径された上向きラッパ孔部と、この上向きラッパ孔部に接続され、下方側にしだいに拡径された下向きラッパ孔部が形成され、この上向きラッパ孔部と下向きラッパ孔部とに挟装された部分に小径部が配置されて成る請求項1に記載の擁壁用ブロック。【請求項3】前記控え壁の端部には、両側方向へ膨出した膨拡壁が設けられ、この膨拡壁には鉛直方向に鉄筋挿入孔が開孔され、この鉄筋挿入孔は、その両端に開口された挿入口と、この両端の挿入口に連通された連通孔と、を有し、かつ、この鉄筋挿入孔の連通孔内には、前記挿入口の孔径より縮径された小径部が設けられて成る請求項1または2記載の擁壁用ブロック。【請求項4】前記連通孔には、上方側にしだいに拡径された上向きラッパ孔部と、この上向きラッパ孔部に接続され、下方側にしだいに拡径された下向きラッパ孔部が形成され、この上向きラッパ孔部と下向きラッパ孔部とに挟装された部分に小径部が配置されて成る請求項3に記載の擁壁用ブロック。【請求項5】前記小径部は、前記鉄筋挿入孔の連通孔の略中央位置に設けられて成る請求項1または2に記載の擁壁用ブロック。【請求項6】前記小径部は、前記鉄筋挿入孔の連通孔の端部寄り位置に設けられて成る請求項1または2記載の擁壁用ブロック。【請求項7】前記小径部は、前記鉄筋挿入孔の連通孔の略中央位置に設けられて成る請求項3または4記載の擁壁用ブロック。【請求項8】前記小径部は、前記鉄筋挿入孔の連通孔の端部寄り位置に設けられて成る請求項3または4記載の擁壁用ブロック。【請求項9】少なくとも、前壁と、この前壁の背面側に突設形成された控え壁と、この控え壁に鉛直方向に開孔された鉄筋挿入孔と、を備えた第1擁壁用ブロックと、この第1擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第2擁壁用ブロックと、を備え、前記第1、第2擁壁用ブロックは、その両端の挿入口より縮径された小径部を有した鉄筋挿入孔をそれぞれ少なくとも一つ有しており、フーチング基礎の上面に、前記第1、第2擁壁用ブロックを積層配設して鉄筋挿入孔を上下に連通させ、これらの鉄筋挿入孔内にフーチング基礎のアンカー鉄筋と、このアンカー鉄筋に連結した連結鉄筋とを貫通させると共に充填材を充填固化させてフーチング基礎に各擁壁用ブロックを一体的に連結させて成る擁壁の構築構造。【請求項10】少なくとも、前壁と、この前壁の背面側に突設形成された控え壁と、この控え壁に鉛直方向に開孔された鉄筋挿入孔と、を備えた第1擁壁用ブロックと、この第1擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第2擁壁用ブロックと、この第2擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第3擁壁用ブロックと、を備え、前記第1、第2、第3擁壁用ブロックは、その両端の挿入口より縮径された小径部を有した鉄筋挿入孔をそれぞれ少なくとも一つ有しており、フーチング基礎の上面に、前記第1、第2、第3擁壁用ブロックを積層配設して鉄筋挿入孔を上下に連通させ、これらの鉄筋挿入孔内にフーチング基礎のアンカー鉄筋と、このアンカー鉄筋に連結した連結鉄筋とを貫通させると共に充填材を充填固化させてフーチング基礎に各擁壁用ブロックを一体的に連結させて成る擁壁の構築構造。【請求項11】少なくとも、前壁と、この前壁の背面側に突設形成された控え壁と、この控え壁に鉛直方向に開孔された鉄筋挿入孔と、を備えた第1擁壁用ブロックと、この第1擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された、第2擁壁用ブロックと、この第2擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第3擁壁用ブロックと、この第3擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された上段擁壁用の複数のブロックと、を備え、前記第1、第2、第3、上段擁壁用の複数のブロックは、その両端の挿入口より縮径された小径部を有した鉄筋挿入孔をそれぞれ少なくとも一つ有しており、フーチング基礎の上面に、前記第1、第2、第3、上段擁壁用の複数のブロックを積層配設して鉄筋挿入孔を上下に連通させ、これらの鉄筋挿入孔内にフーチング基礎のアンカー鉄筋と、このアンカー鉄筋に連結した連結鉄筋とを貫通させると共に充填材を充填固化させてフーチング基礎に各擁壁用ブロックを一体的に連結させて成る擁壁の構築構造。【請求項12】前記第1擁壁用ブロックの控え壁の端部には、両側方向へ膨出した膨拡壁が設けられ、この膨拡壁には鉛直方向に鉄筋挿入孔が開孔され、この鉄筋挿入孔は、その両端に開口された挿入口と、この両端の挿入口に連通された連通孔と、を有し、かつ、この鉄筋挿入孔の連通孔内には、前記挿入口の孔径より縮径された小径部が設けられて成る請求項9ないし11のいずれかに記載の擁壁の構築構造。」
(ホ)「【0017】【作用】本発明に係る擁壁用ブロックは、前壁の背面側に突設形成された控え壁の鉄筋挿入孔のうち、1個または複数個の鉄筋挿入孔は、その両端に開口された挿入口の孔径より縮径された小径部が設けられたことを特徴とするものであり、この擁壁用ブロックを積み上げ、上下連通した鉄筋挿入孔内に鉄筋を挿入し、充填材を充填固化したコンクリート部材に対し、ブロックは鉄筋挿入孔に設けた小径部により滑動することなく、その耐力を向上できることとなる。【0018】そして、フーチング基礎の上面に突設されたアンカー鉄筋の位置に第1擁壁用ブロックを積層させ、連通した各鉄筋挿入孔内にアンカー鉄筋や連結鉄筋を挿入させて充填材を充填固化させて擁壁の下層部を構築し、更にこの上面に第2、第3擁壁用ブロックを積層して擁壁を構築する。前記各ブロックの控え壁の鉄筋挿入孔内には、端部の挿入口より縮径された小径部が設けられているため、ブロックの相互で連通した鉄筋挿入孔内で固化したコンクリート部材に対しブロックが滑動することなく、フーチング基礎に一体に連設されたコンクリート柱として各積層されたブロックの前壁や控え壁を保持しつつ土圧による前壁の破壊などを防止でき、特に、もっとも前壁側に位置する控え壁に設けた鉄筋挿入孔を下段の大型ブロックから最上段のブロックまで直状の連通孔を形成させて連結鉄筋等を挿通させているので、擁壁全体で一つの剛体を形成でき、従来よりも更に高い擁壁高さに構築できる。」
(ヘ)「【0061】また、請求項10に係る擁壁の構築構造によれば、少なくとも、前壁と、この前壁の背面側に突設形成された控え壁と、この控え壁に鉛直方向に開孔された鉄筋挿入孔と、を備えた第1擁壁用ブロックと、この第1擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第2擁壁用ブロックと、この第2擁壁用ブロックの上面に、相互の鉄筋挿入孔が連通する様に積層配設された第3擁壁用ブロックと、を備え、前記第1、第2、第3擁壁用ブロックは、その両端の挿入口より縮径された小径部を有した鉄筋挿入孔をそれぞれ少なくとも一つ有しており、フーチング基礎の上面に、前記第1、第2、第3擁壁用ブロックを積層配設して鉄筋挿入孔を上下に連通させ、これらの鉄筋挿入孔内に基礎フーチングのアンカー鉄筋と、このアンカー鉄筋に連結した連結鉄筋とを貫通させると共に充填材を充填固化させて基礎フーチングに各擁壁用ブロックを一体的に連結させて成ることにより、任意段数ずつ積層された第1、第2、第3擁壁用ブロック内の上下連通した鉄筋挿入孔内には基礎フーチングに一体に連結されたコンクリート柱が形成され、かつ各擁壁用ブロックの少なくとも一つの鉄筋挿入孔内には小径部が設けられているため、前記コンクリート柱に対して各擁壁用ブロックが滑動することなく、断面性能に優れ、基礎と一体化した剛体として構造理論上の諸条件を満足する強固な擁壁を構築できることとなる。」

甲第3号証(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(ト)「【請求項4】前壁の後面より後方へ控え壁を突出させて形成すると共に、前壁の後面下部より後方へ底版を略水平に突出させて形成して、前壁の下部を控え壁と底版とに支えられた三辺固定版となし、控え壁には、単数又は複数の鉄筋挿通孔を上下方向に貫通させて形成し、同控え壁中には、鉄筋挿通孔の周囲に、前後方向に伸延して前壁と控え壁とを連結する前後方向連結鉄筋と、上下方向に伸延して控え壁と底版とを連結する上下方向連結鉄筋とを配筋して、前壁と控え壁と底版とを一体化した剛体構造となしたことを特徴とするもたれ式擁壁用ブロック。」
(チ)「【0016】図1及び図2に示すYは、本発明に係る第一実施例としてのもたれ式擁壁用ブロック(以下「ブロック」と略称する)Aを使用して築造したもたれ式擁壁であり、Cはフーチング基礎、Dは切土、Eは天端コンクリート、Fは連結鉄筋、Gはコンクリートやセメントモルタル等の充填固化材、Uは栗石やクラッシャーラン等の透水性の良い埋め戻し材である。【0017】ブロックAは、図3?図9に示すように、矩形板状の前壁1と、同前壁1の後面左右側部よりそれぞれ後方へ突出させて一体成形した矩形柱状の控え壁2,2と、前壁1の後面下部より控え壁2,2の後面よりも後方位置まで略水平に伸延させて一体成形した矩形板状の底版3とから形成している。【0018】そして、ブロックAは、図3?図9に示すように、各控え壁2,2の前方への仮想延長線上に位置する前壁1の部分に、左右幅方向に横長の鉄筋挿通孔4,4を上下方向に貫通させて形成し、各控え壁2,2にも、前後方向へ長い鉄筋挿通孔5,5を上下方向に貫通させて形成している。」
(リ)「【0039】すなわち、第二実施例としてのブロックAは図11?図14に示すように、基本形状を第一実施例のブロックAと同様に形成しているが、控え壁2,2には鉄筋挿通孔5,5を形成しておらず、また、底版3の後端面を控え壁2,2の後面に揃えて同一平面内にあるように形成している。【0040】そして、かかるブロックAは、図10に示すように、第一実施例のもたれ式擁壁Yと同様の手順でもたれ式擁壁Yを築造することができる。」
(ヌ)「【0048】すなわち、第四実施例としてのブロックAは、図22?図25に示すように、基本形状を第二実施例のブロックAと同様に形成しているが、前壁1と底版3とは直交状態に一体成形している。【0049】そして、かかるブロックAは、図21に示すように、フーチング基礎Cの後部上面に形成した傾斜載置面11上に、前記第一実施例のもたれ式擁壁Yの築造法と同様の手順で段積みして築造する。」

2.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1-1発明を対比すると、刊行物1-1発明の「前面壁」、「控え部」は本件発明1の「前壁」、「控え壁」に相当するから、両者は、
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁の上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロック。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したのに対し、刊行物1-1発明は、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さに位置させたものであって、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材が一体化されるか否かについては不明である点。

上記相違点1について検討する。
被請求人は、訂正請求書の「〔6〕独立特許要件について」の欄において、本件発明1の擁壁用ブロックでは、上側連通空間12に充填・硬化された充填・硬化材Cがその上側で一体化されると共に、下側連通空間13に充填・硬化された充填・硬化材Cを介して、隣接する鉄筋挿通孔中に充填・硬化された充填・硬化材Cがその下側でも一体化されるのに対し、刊行物1-1発明の擁壁用ブロックでは、上側で充填・硬化材が一体化されることがない旨、主張している(訂正請求書21頁参照)。しかしながら、本件発明1において、各段ごとに充填・硬化材を充填する際の区切り高さを前後仕切壁の上端部までとしたならば、上側で充填・硬化材が一体化されることがないものであるし、これとは逆に、刊行物1-1発明においても、各段ごとに充填・硬化材を充填する際の区切り高さを控え壁の上面までとしたならば、上側連通空間に充填・硬化された充填・硬化材がその上側で一体化されると共に、下側連通空間に充填・硬化された充填・硬化材を介して、隣接する鉄筋挿通孔中に充填・硬化された充填・硬化材がその下側でも一体化されるものとなる。そうすると、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるか否かという点に関しては、充填の仕方により左右されるというべきものであるから、この点に関して、本件発明1と刊行物1-1発明との間に差異はないものといえる。そして、このことに関連づけて、前後仕切壁の上端部の高さが有する技術的意義を考えてみるに、前後仕切壁の上端部の高さについては、上側連通空間が存在できるように、控え壁の上面より低い適当な位置とされれば、所期の目的を充分に果たすものといえるものであって、ここから、さらに、上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に設定するとか、或いは、逆に、上側節状部形成用凹部の下面よりも上方ではあるが控え壁の上面よりは低い位置にするといったことは、製造の容易さやコスト等々の諸事情を勘案して当業者が適宜に決定することのできる設計事項であるというべきである。このことは、下端部の高さについても同じことがいえる。
したがって、本件発明1の相違点1に係る構成は、当業者が必要に応じてなし得る程度の設計事項にすぎない。
そして、本件発明1の有する作用効果も、刊行物1-1発明のもの以上に格別なものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、本件発明1は、擁壁ではなく、擁壁ブロックに関するものであって、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材が上下にわたって一体化されるかについては、特定し得るものではないが、仮に、本件発明1が、各段ごとに充填・硬化材を充填する際の区切り高さを上側節状部形成用凹部の上面位置に限定して製造された擁壁に関するものであったとしても、各段ブロックの境界部分に要求されるのは、抜け止めとしての作用であって、この作用は上下節状部によって充分に達成されるものであるから、節状部より上下位置で充填・硬化材が連通することに格別の効果があるとは云えない。

(2)本件発明5Aについて
本件発明5Aと刊行物1-5A発明を対比すると、刊行物1-5A発明の「前面壁」、「控え部」は本件発明5Aの「前壁」、「控え壁」に相当するから、両者は、
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁の上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロック。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4:本件発明5Aは、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したのに対し、刊行物1-5A発明は、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さに位置させたものであって、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材が一体化されるか否かについては不明である点。

上記相違点4について検討する。
相違点4は、上記相違点1おける「本件発明1」を「本件発明5A」と、「刊行物1-1発明」を「刊行物1-5A発明」と読み替えたものと同じであり、その検討内容も同じである。
したがって、本件発明5Aは、刊行物1-5A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明6Aについて
本件発明6Aと刊行物1-1発明を対比すると、刊行物1-1発明の「前面壁」、「控え部」は本件発明6Aの「前壁」、「控え壁」に相当するから、両者は、
「前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁の上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロック。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点5:本件発明6Aは、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、弾積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したのに対し、刊行物1-1発明は、前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させ、下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さに位置させたものであって、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材が一体化されるか否かについては不明である点。

相違点6: 本件発明6Aは、「前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした」のに対し、刊行物1-1発明はそのような構成を有さない点。

上記相違点5、6について検討する。
相違点5は、上記相違点1における「本件発明1」を「本件発明6A」と読み替えたものと同じであり、その検討内容も同じである。

相違点6について
刊行物3には、第四実施例として、「前壁の下端部より控え壁の後端位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした擁壁用ブロック」が記載されている。
そして、刊行物3記載の発明も、本件発明6Aと同じ擁壁用ブロックという同一の技術分野に属するものであり、刊行物1-1発明に刊行物3記載の発明を適用して相違点6に係る本件発明6Aの構成とすることに何ら困難性はなく、また、その適用を阻害する要因も見当たらないから、当業者が容易になし得る事項にすぎない。
また、本件発明6Aの作用効果も、刊行物1-1発明および刊行物3記載の発明から当業者が容易に予測し得るものである。
したがって、本件発明6Aは、刊行物1-1発明および刊行物3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、5、6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
本件発明4の特許は、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判費用は、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、これを4分し、その1を請求人が負担し、残部を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
擁壁用ブロック及び同ブロックを使用した擁壁の構築方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴とする擁壁用ブロック。
【請求項2】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成したことを特徴とする擁壁用ブロック。
【請求項3】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に、左右方向に伸延する上下一対の梁体を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
上側の梁体は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、
下側の梁体は、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
さらに、上下側の梁体の間に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中間部同士を連通する中間部連通空間を形成したことを特徴とする擁壁用ブロック。
【請求項4】控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の擁壁用ブロック。
【請求項5】鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の擁壁用ブロック。
【請求項6】前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となしたことを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の擁壁用ブロック。
【請求項7】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。
【請求項8】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。
【請求項9】前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、
控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、
前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、
鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となし、
前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした擁壁用ブロックを使用し、
充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することを特徴とする擁壁の構築方法。
【請求項10】上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置することを特徴とする請求項7?9のいずれかに記載の擁壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、擁壁用ブロック及び同ブロックを使用した擁壁の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、擁壁用ブロックの一形態として、前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成したものがある。
【0003】
そして、かかる擁壁用ブロックを使用して擁壁を構築する際には、フーチング基礎上に複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みし、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築している。
【0004】
この際、フーチング基礎より上方へ伸延させたアンカー鉄筋を鉄筋挿通孔中へ下方より挿通すると共に、同鉄筋挿通孔中へ連結鉄筋を上方より挿通して、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材としてのコンクリートを打設することにより鉄筋コンクリート柱を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した擁壁用ブロックは、未だ、次のような課題を有している。
【0006】
▲1▼擁壁が水平方向の外力、例えば、土圧を受けると、同擁壁を構成する各擁壁用ブロック同士の接続面間に水平せん断力が作用するために、同水平せん断力に対する強い抵抗力を前記した鉄筋コンクリート柱にもたせる必要性があり、この場合、連結鉄筋の本数を多くして対応しているが、工費と工期が大きくなっている上に、通常の現場打ち擁壁と同程度の強い抵抗力のある擁壁は構築できない。本来、鉄筋コンクリート構造物においては、基本的にせん断力に対しては、コンクリートで対応させることが望ましく、各仕方書においてもそのことが明示されているが、これら仕方書の意図にかなった構築がなされていない。
【0007】
▲2▼地震時においては、その水平震度による水平力によって、極端な場合には、通常時であれば圧縮側であるはずの擁壁の前面側が引張力を受け、その背面側が圧縮力を受けて、通常時とは全く反対の力を受けることがあり、この場合、鉄筋コンクリート柱が上向き、又は、下向きの力を受けて滑動するようになり、擁壁が一体構造として機能しなくなって、所望の耐力を確保できない。
【0008】
▲3▼複数の擁壁用ブロックを段積みして擁壁を構築した際に、上下方向に隣接する擁壁用ブロック同士を、上下及び前後左右方向に対して、現場打ちされたコンクリート擁壁にも劣らないような剛体構造に構成することは、単に、連結鉄筋量を増大させても困難であり、連結鉄筋量が不経済なものとなって工費が嵩む。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して、段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に、上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴とする擁壁用ブロックを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、次の構成にも特徴を有する。
【0011】
【0012】
▲1▼前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおいて、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成したこと。
【0013】
▲2▼控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に、左右方向に伸延する上下一対の梁体を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、上側の梁体は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下側の梁体は、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、さらに、上下側の梁体の間に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中間部同士を連通する中間部連通空間を形成したこと。
【0014】
▲3▼控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成したこと。
【0015】
▲4▼鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしたこと。
【0016】
▲5▼前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となしたこと。
【0017】
▲6▼前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。
▲7▼前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部が、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。
▲8▼前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成し、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する擁壁の構築方法において、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となし、前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となした擁壁用ブロックを使用し、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形すること。
【0018】
▲9▼上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置すること。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
すなわち、本発明に係る擁壁用ブロックは、基本的構造として、前壁と、同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し、控え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成している。
【0021】
そして、かかる擁壁用ブロックは、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成している。
【0022】
このようにして、節状部形成空間内に鉄筋挿通孔中を通してコンクリートやモルタル等の充填・硬化材を充填して硬化させることにより、上下方向に隣接する擁壁用ブロック同士の間に節状部を成形することができ、同節状部が各擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対して強い抵抗力を発揮し、通常の現場打ち擁壁と同程度の強い抵抗のある擁壁を構築することができる。
【0023】
従って、節状部形成空間を形成する上・下側節状部形成用凹部の前後幅は、可及的に広幅に、すなわち、控え壁の後端縁部より前壁の後端縁部に至るまで広幅に形成することにより、節状部形成空間を前後広幅状となして、同節状部形成空間内に形成される節状部が、水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。
【0024】
そして、本発明にかかる擁壁用ブロックは、特徴的構造として、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、前後仕切壁は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成している。
【0025】
このようにして、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔も一体化させることができる。
【0026】
従って、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強力に抵抗させることができる。
【0027】
すなわち、硬化した充填・硬化材は、通常時においては、擁壁の後面(背面)側から前面(正面)側へ向って作用する土圧力等の外力による正の曲げモーメントに対して抵抗力を発揮させることができる一方、地震時においては、擁壁の前面側から後面側へ向って作用する地震力等によって生ずる負の曲げモーメントに対しても、通常時と同様に剛体としての抵抗力を発揮させることができる。
【0028】
そして、フーチング基礎に定着される連結鉄筋の量を削減することができるために、連結鉄筋量を経済的なものとすることができる。
【0029】
また、前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成している。
【0030】
このようにして、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔中にそれぞれ形成される鉄筋コンクリート柱同士を、連通孔中に形成されるコンクリート連結体により連結して、各鉄筋コンクリート柱を上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して強固に抵抗させることができる。
【0031】
また、擁壁用ブロックは、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に、左右方向に伸延する上下一対の梁体を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、上側の梁体は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下側の梁体は、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、さらに、上下側の梁体の間に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中間部同士を連通する中間部連通空間を形成している。
【0032】
このようにして、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間内、さらには、中間部連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔も一体化させることができる。
【0033】
従って、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、より一層強力に抵抗させることができる。
【0034】
また、上記した上・下側連通空間を具備する擁壁用ブロック、さらには、それに加えて中間部連通空間を具備する擁壁用ブロックに、上・下側節状部形成用凹部を形成している。
【0035】
このようにして、複数の鉄筋挿通孔中において硬化させた充填・硬化材と、節状部形成空間内において硬化させた充填・硬化材とを一体化させることができて、正・負の曲げモーメントに対する抵抗力と擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対する抵抗力を強力なものとすることができる。
【0036】
上記のように構成した擁壁用ブロックにおいて、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしている。
【0037】
このようにして、鉄筋挿通孔中において、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強い抵抗力を発揮させることができる。
【0038】
また、擁壁用ブロックは、前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設して、三辺固定版構造となしている。
【0039】
このようにして、かかる擁壁用ブロックを、少なくとも構築する擁壁の中間部の任意の位置に配置して、同擁壁用ブロックの底版上に埋戻し材を載置することにより、同埋戻し材を荷重として底版上に作用させることができて、同底版を介して擁壁を背面側へ転倒させようとする負の回転モーメントを生起させることができ、その分だけ抵抗転倒モーメントが増大されて転倒安全率を高め、擁壁の安全性を良好に確保することができる。
【0040】
しかも、埋戻し材が荷重として底版上に作用するために、擁壁全体の鉛直荷重を増加させることができ、その結果、擁壁各部の摩擦力を高めることができて、擁壁自体の滑動に対する安定性を向上させることができる。
【0041】
従って、フーチング基礎を小さくすることができて、擁壁構築場所の用地面積を小さくすることができて、工期や工費の大幅な削減が図れる。
【0042】
また、擁壁用ブロックを三辺固定版構造となしているために、同擁壁用ブロック自体の強度を良好に確保することができる。
【0043】
上記のように構成した擁壁用ブロックを使用して擁壁を構築する際には、単数若しくは複数の擁壁用ブロックを上方へ段積みし、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させた後、その上に単数若しくは複数の擁壁用ブロックを段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填・硬化させることを順次繰返して構築する。
【0044】
この際、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形することができる。
【0045】
このようにして、鉄筋挿通孔内で硬化した柱状の充填・硬化材と、節状部形成空間内で硬化した節状の充填・硬化材とが一体成形された剛体となり、外力に対して強い抵抗力を発揮する壁体となすことができる。
【0046】
特に、各擁壁用ブロックの接合部において、水平力に対するせん断抵抗面積の大きい節状部が形成されて、広範囲にわたって上下面が一体化された剛体構造の擁壁となすことができて、同擁壁は、水平力等による水平せん断力に対しては、通常の現場打ち擁壁と変わらない強い抵抗力を発揮する。
【0047】
また、上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置している。
【0048】
このようにして、節状部形成空間内に形成される節状部を、用心鉄筋により補強して、節状部が水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。
【0049】
しかも、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋が連結鉄筋の位置決め機能を果して、鉄筋挿通孔中の連結鉄筋へのかぶりを適正に確保することができる。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0051】
図1?図3に示すYは擁壁であり、同擁壁Yは、本発明に係る小型・中型・大型の擁壁用ブロックA1,A2,A3をそれぞれ所要個数だけフーチング基礎B上に段積みして構築している。
【0052】
まず、本発明に係る小型の擁壁用ブロックA1について、図4?図6を参照しながら説明する。
【0053】
すなわち、本発明に係る小型の擁壁用ブロックA1は、基本的構造として、前壁1と、同前壁1の後面左右側部より後方へ突出状に形成した左右一対の控え壁2,2とを具備し、同控え壁2,2にはそれぞれ上下方向に貫通する鉄筋挿通孔3,3を形成している。1aは排水孔である。
【0054】
そして、かかる擁壁用ブロックA1は、特徴的構造として、控え壁2の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部4を形成する一方、同控え壁2の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部5を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部4,5同士を鉄筋挿通孔3を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックA1の下側節状部形成用凹部5と、下段に位置する擁壁用ブロックA1の上側節状部形成用凹部4とが、上下方向に符合して節状部形成空間6を形成すべく構成している(図11参照)。図3において、7はアンカー鉄筋、8は連結鉄筋、9は緊結鉄線である。
【0055】
そして、鉄筋挿通孔3は、図6に示すように、上端開口部3aより中間部3bへ向けて漸次縮径状となし、同中間部3bより下端開口部3cへ向けて漸次拡径状となしている。
【0056】
また、中型の擁壁用ブロックA2は、図7及び図8に示すように、基本的には前記小型の擁壁用ブロックA1と同様に構成しているが、控え壁2をより後方へ突出状に形成して、同控え壁2に前後方向に隣接する二個の鉄筋挿通孔3,3を形成している点で異なる。
【0057】
ここで、中型の擁壁用ブロックA2上に小型の擁壁用ブロックA1を段積みした際には、中形の擁壁用ブロックA2の前側の鉄筋挿通孔3に、小型の擁壁用ブロックA1の鉄筋挿通孔3が上下方向に符合し、かつ、中型の擁壁用ブロックA2の上側節状部形成用凹部4の前半部に、小型の擁壁用ブロックA1の下側節状部形成用凹部5が上下方向に符合すべく構成している。
【0058】
また、大型の擁壁用ブロックA3は、図9及び図10に示すように、基本的には前記中型の擁壁用ブロックA2と同様に構成しているが、控え壁2をより後方へ突出状に形成して、同控え壁2に前後方向に隣接する三個の鉄筋挿通孔3,3,3を形成している点で異なる。
【0059】
ここで、大型の擁壁用ブロックA3上に中型の擁壁用ブロックA2を段積みした際には、大型の擁壁用ブロックA3の前側と中間の鉄筋挿通孔3,3に、中型の擁壁用ブロックA2の前後側の鉄筋挿通孔3,3がそれぞれ上下方向に符合し、かつ、大型の擁壁用ブロックA3の上側節状部形成用凹部4の略前半部に、中型の擁壁用ブロックA2の下側節状部形成用凹部5が上下方向に符合すべく構成している。
【0060】
次に、上記のように構成した小型・中型・大型の擁壁用ブロックA1,A2,A3を使用して擁壁Yを構築する方法について、図3、図11及び図12を参照しながら説明する。
【0061】
▲1▼フーチング基礎B上に、まず、擁壁Yの最下段に位置する一個の大型の擁壁用ブロックA3を据付ける。
【0062】
この際、フーチング基礎Bの上面より上方へ突出されたアンカー鉄筋7、7、7を上記擁壁用ブロックA3の鉄筋挿通孔3,3,3中に挿通させておく。
【0063】
そして、上記一段目の擁壁用ブロックA3上に、二個の大型の擁壁用ブロックA3、A3を段積みし、両ブロックA3、A3の鉄筋挿通孔3,3,3中に上方より連結鉄筋8、8、8を挿通して、各連結鉄筋8、8、8の下端部を前記アンカー鉄筋7、7、7の上端部に緊結鉄線9、9、9により連結する。
【0064】
続いて、三段積みした擁壁用ブロックA3、A3、A3の上下方向に符合する鉄筋挿通孔3,3,3中に充填・硬化材Cを充填して硬化させる。
【0065】
▲2▼その上に三個の中型の擁壁用ブロックA2,A2,A2を段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔3,3中に連結鉄筋8、8を挿通すると共に、充填・硬化材Cを充填して硬化させる。
【0066】
▲3▼その上に三個の小型の擁壁用ブロックA1,A1,A1を段積みして、上下方向に符合する鉄筋挿通孔3中に連結鉄筋8を挿通すると共に、充填・硬化材Cを充填して硬化させる。
【0067】
この際、充填・硬化材Cは、図11(a)(b)に示すように、鉄筋挿通孔3,3の上端開口部3a,3aまで充填して硬化させ、その後、図11(c)に示すように、その上に段積みした上段に位置する中型の擁壁用ブロックA2の下側節状部形成用凹部5と、下段に位置する中型の擁壁用ブロックA2の上側節状部形成用凹部4とにより形成される節状部形成空間6内に、上段に位置する擁壁用ブロックA2,A2の鉄筋挿通孔3,3中を通して充填して硬化させることにより、図11(d)に示すように、節状部形成空間6内にて節状部C1を成形することができる。
【0068】
このようにして、図12に示すように、鉄筋挿通孔3内で充填・硬化材Cが硬化して形成される柱状部C2と、節状部形成空間6内で充填・硬化材Cが硬化して形成される節状部C1とが一体成形された剛体となり、外力に対して強い抵抗力を発揮する壁体となすことができる。
【0069】
特に、図13に示すように、各擁壁用ブロックA1,A2,A3の接合部において、水平面積の大きい節状部C1が形成されて、各擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力P1,P2に対して強い抵抗力を発揮し、その結果、広範囲にわたって上下面が一体化された剛体構造の擁壁Yとなすことができて、同擁壁Yは、水平力等による水平せん断力P1,P2に対しては、通常の現場打ち擁壁と変わらない強い抵抗力を発揮する。
【0070】
しかも、鉄筋挿通孔3は、図3に示すように、上端開口部3aより中間部3bへ向けて漸次縮径状となし、同中間部3bより下端開口部3cへ向けて漸次拡径状となしているために、鉄筋挿通孔3中において、硬化した充填・硬化材Cを、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強い抵抗力を発揮させることができる。
【0071】
すなわち、図14に示すように、硬化した充填・硬化材Cは、通常時においては、擁壁Yの後面(背面)側から前面(正面)側へ向って作用する土圧力等の外力P3による正の曲げモーメントに対して抵抗力を発揮させることができる一方、地震時においては、擁壁Yの前面側から後面側へ向って作用する地震力等によって生ずる負の曲げモーメントに対しても、通常時と同様に剛体としての抵抗力を発揮させることができる。
【0072】
そして、節状部C1を形成したこと、及び、鉄筋挿通孔3の高さの中央部を縮径状となしたことにより、力学的に余剰となる連結鉄筋8は、所定の定着長さをとって、擁壁Yの高さの中間部へ定着させることができ、その結果、フーチング基礎Bに定着される連結鉄筋8の量を削減することができて、連結鉄筋量を経済的なものとすることができる。
【0073】
▲4▼ここで、図14中、N1-N1は中立軸であり、同中立軸N1-N1は、引張力も圧縮力も生じない中立面上に位置するが、これは、T型梁の場合、前壁1の前面縁からの距離Xで与えられ、以下の式によって求められる。
【0074】
〔腹部の圧縮応力を無視した場合〕
【0075】
【数1】

【0076】
〔腹部の圧縮応力を考慮した場合〕
【0077】
【数2】

【0078】
図15は、第2実施例としての中型の擁壁用ブロックA2の断面側面図であり、同擁壁用ブロックA2は、控え壁2に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間10を形成し、同鉄筋挿通空間10内に前後仕切壁11を設けて、前後方向に二個の鉄筋挿通孔3,3を形成している。
【0079】
そして、前後仕切壁11は、上端部11aを上側節状部形成用凹部4の下面4aよりも下方に位置させて、同上端部11aの直上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士を連通する上側連通空間12を形成すると共に、下端部11cを下側節状部形成用凹部5の上面5aよりも上方に位置させて、同下端部11cの直下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の下端部同士を連通する下側連通空間13を形成している。
【0080】
このようにして、鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化材Cを充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間12,13内にも充填・硬化材Cが充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化された充填・硬化材Cと一体化させることができる。
【0081】
従って、鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化した充填・硬化材Cを、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強力に抵抗させることができる。
【0082】
図16は、第2実施例としての大型の擁壁用ブロックA3の断面側面図であり、基本的には前記した中型の擁壁用ブロックA2と同様に構成しているが、鉄筋挿通空間10内に二枚の前後仕切壁11,11を設けて、前後方向に三個の鉄筋挿通孔3,3,3を形成している。
【0083】
このようにして、大型の擁壁用ブロックA3においても、中型の擁壁用ブロックA2と同様の効果が得られるようにしている。
【0084】
ここで、前後仕切壁11は、上端部11aより中間部11bに向けて漸次拡幅状に形成し、同中間部11bより下端部11cに向けて漸次縮幅状に形成している。
【0085】
このようにして、鉄筋挿通空間10内に形成される鉄筋挿通孔3が、上・下端開口部3a,3cに比して中間部3bが縮径状となるようにしている。
【0086】
図17は、第3実施例としての中型の擁壁用ブロックA2の断面側面図であり、同擁壁用ブロックA2は、控え壁2に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間10を形成し、同鉄筋挿通空間10内に、左右方向に伸延する上下一対の梁体14,15を架設状態に設けて、前後方向に二個の鉄筋挿通孔3,3を形成し、上側の梁体14は、上端面14aを上側節状部形成用凹部4の下面4aよりも下方に位置させて、同上端面14aの直上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士を連通する上側連通空間12を形成すると共に、下側の梁体15は、下端面15aを下側節状部形成用凹部5の上面5aよりも上方に位置させて、同下端面15aの直下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間13を形成し、さらに、上下側の梁体14,15の間に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の中間部同士を連通する中間部連通空間16を形成している。
【0087】
このようにして、鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化材Cを充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間12,13内、さらには、中間部連通空間16内にも充填・硬化材Cが充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化された充填・硬化材Cと一体化させることができる。
【0088】
従って、鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化した充填・硬化材Cを、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、より一層強力に抵抗させることができる。
【0089】
図18は、第3実施例としての大型の擁壁用ブロックA3の断面側面図であり、基本的には前記した中型の擁壁用ブロックA2と同様に構成しているが、鉄筋挿通空間10内に上下一対の梁体14,15を前後方向に間隔を開けて二組設けて、前後方向に三個の鉄筋挿通孔3,3,3を形成している。
【0090】
このようにして、大型の擁壁用ブロックA3においても、中型の擁壁用ブロックA2と同様の効果が得られるようにしている。
【0091】
ここで、上側の梁体14は断面台形状に形成すると共に、下側の張体15は断面逆台形状に形成している。
【0092】
このようにして、鉄筋挿通空間10内に形成される鉄筋挿通孔3が、上・下端開口部3a,3cに比して中間部3bが縮径状となるようにしている。
【0093】
なお、上記した第2・第3実施例において、前後方向に四個以上の鉄筋挿通孔3を形成する場合も、同様に行うことができる。
【0094】
図19及び図20は、第4実施例としての中型の擁壁用ブロックA2を示しており、同擁壁用ブロックA2は、上・下側節状部形成用凹部4,5を形成することなく、上・下側連通空間12,13を形成している。
【0095】
このようにして、上・下側連通空間12,13を大きく形成して、これら上・下側連通空間12,13内に充填・硬化剤Cを充填・硬化させることにより、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3内に形成される鉄筋コンクリート柱の上端部同士及び下端部同士を強固に連結して、水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。
【0096】
図21?図23は、第5実施例としての大型の擁壁用ブロックA3を示しており、同擁壁用ブロックA3は、前記した第1実施例としての大型の擁壁用ブロックA3と基本的構造を同じくしているが、前後仕切壁11,11の中央部にそれぞれ連通孔20,20を形成して、各連通孔20,20により、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3,3の中央部同士を連通している。
【0097】
このようにして、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3,3中にそれぞれ形成される鉄筋コンクリート柱同士を、連通孔20,20中に形成されるコンクリート連結体により連結して、各鉄筋コンクリート柱を上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して強固に抵抗させることができる。
【0098】
ここで、連通孔20の数や形成位置は、上記のものに限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0099】
図24?図26は、節状部形成空間6,6内に、それぞれ第一用心鉄筋21と第二用心鉄筋22を配設した構造を示している。
【0100】
そして、第一用心鉄筋21は、前後方向に伸延する複数の前後方向伸延鉄筋21aと、左右方向に伸延する複数の左右方向伸延鉄筋21bとにより、網状若しくは格子状に形成すると共に、上側節状部形成用凹部4内に横架可能としている。
【0101】
また、第二用心鉄筋22は、前後方向に伸延し、かつ、鉄筋挿通孔符合個所を山型に折曲した複数のベンドアップ筋22aと、左右方向に伸延する複数の左右方向伸延鉄筋22bとにより、網状若しくは格子状に形成すると共に、上側節状部形成用凹部4内に横架可能としている。
【0102】
このようにして、節状部形成空間6内に形成される節状部C1を、第一・第二用心鉄筋21,22により補強して、節状部C1が水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。
【0103】
特に、ベンドアップ筋22aは、山型に形成している部分が水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するために、その効果は大きなものとなる。
【0104】
しかも、網状若しくは格子状に形成した第一・第二用心鉄筋21,22が連結鉄筋8の位置決め機能を果して、鉄筋挿通孔3中の連結鉄筋8へのかぶりを適正に確保することができる。
【0105】
なお、本実施例では、第一用心鉄筋21と第二用心鉄筋22を両方配設しているが、これらは、土圧等の外力の大きさに応じて適宜所望の個所に配設することができ、それぞれ単独で使用することも、又は、重合させて併用することもできる。
【0106】
図27?図29は、第6実施例としての中型の擁壁用ブロックA’2を示しており、同擁壁用ブロックA’2は、前記第1実施例としての中型の擁壁用ブロックA2の前壁1の下端部より控え壁2の後方位置まで底版17を延設して、三辺固定版構造となしている。
【0107】
このようにして、図30に示すように、かかる擁壁用ブロックA’2を、少なくとも構築する擁壁Yの中間部の適当な位置に配置して、同擁壁用ブロックA’2の底版17上に埋戻し材Eを載置することにより、同埋戻し材Eを荷重として底版17上に作用させることができて、同底版17を介して擁壁Yを背面側へ転倒(回転)させようとする負の回転モーメントを生起させることができ、その分だけ抵抗転倒モーメントが増大されて転倒安全率を高め、擁壁Yの安全性を良好に確保することができる。
【0108】
しかも、埋戻し材Eが荷重として底版17上に作用するために、擁壁Y全体の鉛直荷重を増加させることができて、擁壁各部の摩擦力を高めることができ、擁壁Y自体の滑動に対する安定性を向上させることができる。
【0109】
その結果、フーチング基礎Bを小さくすることができて、擁壁構築場所の用地面積を小さくすることができ、工期や工費の大幅な削減が図れる。
【0110】
従って、図30に示すように、家屋や既設構造物Fへ隣接して道路G等の開設をする場合にも、フーチング基礎Bが既設構造物Fの基礎等に接触することがなく、所定の断面寸法を確保することができる。
【0111】
ここで、底版17の後方への延設長さは、本実施例のものに限定されるものではなく、任意に設定することができる。従って、底版17は、片持版として断面力に耐える位置まで延設することもできる。
【0112】
また、小型と大型の擁壁用ブロックA1,A3についても同様に底版17を設けることができる。
【0113】
そして、大型、そして、第1実施例?第5実施例の各形態のいずれの擁壁用ブロックにも適用可能なものである。
【0114】
次に、図31に示すように、第1実施例に係る擁壁用ブロックA1,A2,A3を使用して構築した擁壁Y1の場合と、図32に示すように、第1・第6実施例に係る擁壁用ブロックA1,A2,A’2,A3を使用して構築した擁壁Y2の場合とについて、下記の表1?表3に示す計算条件にて安定計算を行なうと、次のようになる。
【0115】
【表1】

【0116】
〔1〕擁壁Y1の場合Nは軸方向力(W)、Mrは抵抗モーメントである。
【0117】
【表2】

【0118】
(Xの算定式)
【0119】
【数3】

【0120】
〔2〕擁壁Y2の場合
【0121】
【表3】

【0122】
(Xの算定式)
【0123】
【数4】

【0124】
〔3〕軸方向力Nと抵抗モーメントMrの比較
【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
〔4〕以上の試算で明らかなように、第6実施例に係る擁壁用ブロックA’2を使用した場合には、滑動安全率と転倒に関する偏心距離eの値が良好となって、極めて効果が大きいことがわかる。
【0132】
さらに、底版17の前後幅Lwを大きく設定することにより、より一層効果を高くすることができる。
【0133】
なお、上記した第2?第6実施例において、中型の擁壁用ブロックA2で例示した形態は、大型の擁壁用ブロックA3にも応用可能なものであり、また、大型の擁壁用ブロックA3で例示した形態は、中型の擁壁用ブロックA2にも応用可能なものである。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0135】
【0136】
▲1▼請求項1記載の本発明では、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成し、前後仕切壁は、上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置させて、同上端部の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置させて、同下端部の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成しているために、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔も一体化させることができる。
【0137】
従って、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強力に抵抗させることができる。
【0138】
すなわち、硬化した充填・硬化材は、通常時においては、擁壁の後面(背面)側から前面(正面)側へ向って作用する土圧力等の外力による正の曲げモーメントに対して抵抗力を発揮させることができる一方、地震時においては、擁壁の前面側から後面側へ向って作用する地震力等によって生ずる負の曲げモーメントに対しても、通常時と同様に剛体としての抵抗力を発揮させることができる。
しかも、複数の鉄筋挿通孔中において硬化させた充填・硬化材と、節状部形成空間内において硬化させた充填・硬化材とを一体化させることができて、正・負の曲げモーメントに対する抵抗力と擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対する抵抗力を強力なものとすることができる。
【0139】
そして、フーチング基礎に定着される連結鉄筋の量を削減することができるために、連結鉄筋量を経済的なものとすることができる。
【0140】
▲2▼請求項2記載の本発明では、前後仕切壁に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中途部同士を連通する単数若しくは複数の連通孔を形成しているために、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔中にそれぞれ形成される鉄筋コンクリート柱同士を、連通孔中に形成されるコンクリート連結体により連結して、各鉄筋コンクリート柱を上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して強固に抵抗させることができる。
【0141】
▲3▼請求項3記載の本発明では、控え壁に、前後方向に伸延し、かつ、上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し、同鉄筋挿通空間内に、左右方向に伸延する上下一対の梁体を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し、上側の梁体は、上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて、同上端面の上方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に、下側の梁体は、下端面を控え壁の下面よりも上方に位置させて、同下端面の下方位置に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し、さらに、上下側の梁体の間に、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の中間部同士を連通する中間部連通空間を形成しているために、鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際には、前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連通する上・下側連通空間内、さらには、中間部連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されて、隣接する鉄筋挿通孔も一体化させることができる。
【0142】
従って、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、より一層強力に抵抗させることができる。
【0143】
▲4▼請求項4記載の本発明では、控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方、同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して、これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に、段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが、上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構成しているために、複数の鉄筋挿通孔中において硬化させた充填・硬化材と、節状部形成空間内において硬化させた充填・硬化材とを一体化させることができて、正・負の曲げモーメントに対する抵抗力と擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対する抵抗力を強力なものとすることができる。
【0144】
▲5▼請求項5記載の本発明では、鉄筋挿通孔は、上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし、同中間部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしているために、鉄筋挿通孔中において、硬化した充填・硬化材を、上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して、強い抵抗力を発揮させることができる。
【0145】
▲6▼請求項6記載の本発明では、前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで底版を延設しているために、かかる擁壁用ブロックを、少なくとも構築する擁壁の中間部の任意の位置に配置して、同擁壁用ブロックの底版上に埋戻し材を載置することにより、同埋戻し材を荷重として底版上に作用させることができて、同底版を介して擁壁を背面側へ転倒させようとする負の回転モーメントを生起させることができ、その分だけ抵抗転倒モーメントが増大されて転倒安全率を高め、擁壁の安全性を良好に確保することができる。
【0146】
しかも、埋戻し材が荷重として底版上に作用するために、擁壁全体の鉛直荷重を増加させることができ、その結果、擁壁各部の摩擦力を高めることができて、擁壁自体の滑動に対する安定性を向上させることができる。従って、フーチング基礎を小さくすることができて、擁壁構築場所の用地面積を小さくすることができて、工期や工費の大幅な削減が図れる。
【0147】
また、擁壁用ブロックを三辺固定版構造となしているために、同擁壁用ブロック自体の強度を良好に確保することができる。
【0148】
▲7▼請求項7?9記載の本発明では、充填・硬化材は、鉄筋挿通孔の上端開口部まで充填して硬化させ、その後、その上に段積みした上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と、下段に位置する擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とにより形成される節状部形成空間内に、上段に位置する擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中を通して充填して硬化させることにより、節状部形成空間内にて節状部を成形しているために、鉄筋挿通孔内で硬化した柱状の充填・硬化材と、節状部形成空間内で硬化した節状部形成空間内で硬化した節状の充填・硬化材とが一体成形された剛体となり、外力に対して強い抵抗力を発揮する壁体となすことができる。
【0149】
特に、各擁壁用ブロックの接合部において、水平力に対するせん断抵抗面積の大きい節状部が形成されて、広範囲にわたって上下面が一体化された剛体構造の擁壁となすことができて、同擁壁は、水平力等による水平せん断力に対しては、通常の現場打ち擁壁と変わらない強い抵抗力を発揮する。
【0150】
▲8▼請求項10記載の本発明では、上側節状部形成用凹部内に、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋を配置しているために、節状部形成空間内に形成される節状部を、用心鉄筋により補強して、節状部が水平せん断力に対して大きな抵抗力を発揮するようにしている。
【0151】
しかも、網状若しくは格子状に形成した用心鉄筋が連結鉄筋の位置決め機能を果して、鉄筋挿通孔中の連結鉄筋へのかぶりを適正に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る擁壁用ブロックを使用して構築した擁壁の一部の前方からの斜視図。
【図2】同擁壁の一部の後方からの斜視図。
【図3】同擁壁の断面側面図。
【図4】第1実施例としての小型の擁壁用ブロックの平面図。
【図5】同擁壁用ブロックの背面図。
【図6】図4のI-I線断面図。
【図7】第1実施例としての中型の擁壁用ブロックの平面図。
【図8】図7のII-II線断面図。
【図9】第1実施例としての大型の擁壁用ブロックの平面図。
【図10】図9のIII-III線断面図。
【図11】充填・硬化材の充填・硬化説明図。
【図12】充填・硬化材を硬化させて形成された柱状部と節状部よりなる構造体の斜視図。
【図13】節状部の水平せん断説明図。
【図14】擁壁に作用する外力によって生じる圧縮力と引張力の説明図。
【図15】第2実施例としての中型の擁壁用ブロックの断面図。
【図16】第2実施例としての大型の擁壁用ブロックの断面図。
【図17】第3実施例としての中型の擁壁用ブロックの断面図。
【図18】第3実施例としての大型の擁壁用ブロックの断面図。
【図19】第4実施例としての中型の擁壁用ブロックの平面図。
【図20】図19のIV-IV線断面図。
【図21】第5実施例としての大型の擁壁用ブロックの平面図。
【図22】図21のV-V線断面図。
【図23】図21のVI-VI線断面図。
【図24】第一・第二用心鉄筋を配置した中型の擁壁用ブロックの断面図。
【図25】第一用心鉄筋の平面図。
【図26】第二用心鉄筋の平面図。
【図27】第6実施例としての中型の擁壁用ブロックの平面図。
【図28】同擁壁用ブロックの背面図。
【図29】図27のVII-VII線断面図。
【図30】第6実施例に係る擁壁用ブロックを使用して構築した擁壁の断面側面説明図。
【図31】第1実施例に係る擁壁用ブロックを使用して構築した擁壁の説明図。
【図32】第1・第6実施例に係る擁壁用ブロックを使用して構築した擁壁の断面側面説明図。
【符号の説明】
A1 小型の擁壁用ブロック
A2 中型の擁壁用ブロック
A3 大型の擁壁用ブロック
B フーチング基礎
1 前壁
2 控え壁
3 鉄筋挿通孔
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-04-26 
結審通知日 2005-07-29 
審決日 2006-05-15 
出願番号 特願平10-218265
審決分類 P 1 123・ 121- ZD (E02D)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
木原 裕
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329737号(P3329737)
発明の名称 擁壁用ブロック及び同ブロックを使用した擁壁の構築方法  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 江崎 光史  

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