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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B23Q
管理番号 1171340
審判番号 無効2004-80172  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-01 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第3550010号「クランプ装置」の特許無効審判事件についてされた平成17年 4月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成17年(行ケ)第10513号、平成17年9月12日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3550010号の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
1.本件特許第3550010号の請求項1?9に係る発明についての出願は、平成9年12月24日に出願されたものであって、平成16年4月30日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされた。
2.これに対して、平成16年10月1日に請求人パスカルエンジニアリング株式会社より、「特許第3550010号の請求項1?8の特許を無効とする。」との審決を求める無効審判請求がなされた。
3.平成16年12月7日付けで匿名の提出者により刊行物等提出書が提出された。
4.請求人より、平成17年2月25日付けで口頭審理陳述要領書が、平成17年3月4日付けで上申書が、それぞれ提出された。
5.被請求人より、平成16年12月24日付けで答弁書及び訂正請求書が、平成17年3月9日付けで口頭審理陳述要領書が提出された。
6.平成17年3月9日に第1回口頭審理が行われた。
7.さらに、被請求人より、平成17年3月16日付けで、平成16年12月24日付けの訂正請求を取り下げる旨の訂正請求書取下書が提出された。
8.平成17年4月26日に審決(以下、一次審決という。)がなされた。9.これに対して、被請求人より、平成17年6月3日付けで知的財産高等裁判所に審決取消訴訟(平成17年(行ケ)第10513号)が提起された。
10.平成17年8月30日付けで、「特許第3550010号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決を求める訂正審判請求(訂正2005-39153)がなされた。
11.平成17年9月12日に、知的財産高等裁判所において、一次審決を取り消す旨の決定がなされた。
12.被請求人により、平成17年10月3日付けで、訂正請求書が提出され、請求人より、平成17年12月19日付けで、弁駁書が提出された。
13.被請求人より、平成17年12月15日付けで、平成17年10月3日付け訂正請求を取り下げる旨の訂正請求書取下書が提出された。

第2.請求人の主張の概要
請求人は、証拠方法として甲第1?8号証を提示し、以下の理由により本件の請求項1?8に係る特許は無効とすべきであると主張する。
理由
本件特許の請求項1?8に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、甲第1?2号証記載の発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下、「無効理由」という。)
[証拠方法]
甲第1号証:ドイツ特許第4020981号公報
甲第1-1号証:甲第1号証の訳文
甲第2号証:特開平9-285925号公報
甲第3号証:特公平4-45250号公報
甲第4号証:実公昭51-13740号公報
甲第5号証:実公昭59-24430号公報
甲第6号証:特開平4-164506号公報
甲第7号証:実公平3-57374号公報
甲第8号証:実願昭60-109167号(実開昭62-19141号)のマイクロフィルム
なお、甲第3号証は、周知技術を示すものとして平成17年2月25日付けで口頭審理陳述要領書とともに、甲第4?7号証は周知技術を示すものとして平成17年3月4日付けで上申書とともに、甲第8号証は周知技術を示すものとして平成17年12月19日付けで弁駁書とともに、それぞれ提出されたものである。

第3.被請求人の主張の概要
被請求人は、以下の点から、本件発明1?8は、甲第1、2号証に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと主張する。
1.本件発明1について
(1)甲第1-1号証の段落「0005」及び段落「0006」の記載から見て、甲第1号証のクランプ装置が芯出しクランプ装置であることは明らかである。(第1回口頭審理調書の被請求人5の項)
(2)本件発明1と甲第1号証記載の発明との相違点は、以下のとおりである。
本件発明1は、駆動手段にプルロッドを半径方向へ移動可能に連結するとともに、そのプルロッド及び係合具をハウジングに対して半径方向へ移動可能に構成するのに対して、甲第1号証記載の発明は、そのように構成されていない点。(口頭審理陳述要領書のII)
(3)請求項1の相違点に係る構成に関して、甲第1号証は芯出しクランプ装置に関する技術であり、甲第2号証は芯ズレクランプ装置に関する技術であって、芯出しクランプ装置は芯ズレクランプ装置ではありえないことから、その両者を組み合わせることは容易ではない。
また、プルロッドがパレット側に設置されている甲第1号証に記載の技術とプルロッドがワーク側に設置されている甲第2号証に記載の技術は、それぞれ基本構成が異なるので両者を組み合わせることは容易ではない。(第1回口頭審理調書の被請求人4の項)
2.本件発明2?8について
(1)請求項2及び請求項3に記載の事項は、刊行物に示されているように周知であり、請求項5に記載の事項は甲第2号証に示され、請求項6及び請求項7に記載の事項は甲第1号証に示されている。(第1回口頭審理調書の被請求人3の項)
(2)甲第5号証に記載の押上げピストンは本件発明でいうサポート部材に相当するが、甲第3号証ないし甲第4号証に記載の押上げピストンは本件発明でいうサポート部材ではない。したがって、請求項4に記載の事項が周知であるとは言えない。(第1回口頭審理調書の被請求人6の項)
(3)請求項8に記載の事項は、損傷しやすいプルロッドを交換する等の点で相応の技術的意義を有する。(第1回口頭審理調書の被請求人7の項)
(4)本件発明2?8に係る、「環状部材」、「コレット」、「係合具を所定の力で支持する押上ピストン」、「環状隙間」、「アダプターブロック」、「プルロッドを駆動手段に着脱自在に連結すること」が、周知事項であることを裏付ける証拠はない。(口頭審理陳述要領書のVII)
(5)本件発明2?8は、本件発明1に従属するものであるから、本件発明1に進歩性があれば、これらの事項が周知事項であったとしても、本件発明2?8にも進歩性がある。(答弁書のD)

第4.本件発明
上記のとおり、平成16年12月24日付け、及び、平成17年10月3日付け訂正請求が取り下げられたので、本件発明1?8は、設定登録時の願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
〈本件発明1〉
「ハウジング(11)に設けた駆動手段(15)と、その駆動手段(15)によって軸心方向へ往復移動されるプルロッド(12)と、その軸心方向の基端へ向けてすぼまるように上記プルロッド(12)に設けたテーパ外周面(12a)と、そのテーパ外周面(12a)の外周空間に配置されて被固定物(1)の係合孔(2)へ挿入される係合具(14)と、その係合具(14)が基端へ変位するのを所定の支持力によって阻止すると共にその支持力よりも大きな力によって上記の係合具(14)が同上の基端へ変位するのを許容するサポート手段(29)とを備え、
上記の駆動手段(15)に上記プルロッド(12)を半径方向へ移動可能に連結するとともに、そのプルロッド(12)及び上記の係合具(14)を前記ハウジング(11)に対して半径方向へ移動可能に構成し、
上記プルロッド(12)を基端へ駆動することによって、上記テーパ外周面(12a)が上記の係合具(14)を半径方向の外方の係合位置(X)へ切換えて前記の係合孔(2)に係合させると共に同上の係合具(14)を前記サポート手段(29)に抗して基端へ変位させ、これにより、上記プルロッド(12)の駆動力を上記の被固定物(1)へ伝達可能に構成し、上記プルロッド(12)を先端へ駆動することによって同上の係合具(14)が半径方向の内方の係合解除位置(Y)へ切換わるのを許容する、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明2〉
「請求項1のクランプ装置において、
前記プルロッド(12)に環状部材(13)を軸心方向へ移動可能に外嵌して、その環状部材(13)の周壁に前記の係合具(14)を設けた、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明3〉
「請求項2のクランプ装置において、
前記の環状部材をコレット(13)によって構成して、そのコレット(13)の周壁によって前記の係合具(14)を構成した、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明4〉
「請求項1から3のいずれかのクランプ装置において、
前記のサポート手段(29)が、前記の係合具(14)を所定の力で支持する押上げピストン(60)を備える、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明5〉
「請求項2のクランプ装置において、
前記ハウジング(11)の先端部と前記の環状部材(13)の外周面との間に環状隙間(31)を設けて、上記ハウジング(11)に設けたクリーニング流体の供給口(40)を上記の環状隙間(31)へ連通させて構成した、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明6〉
「請求項1から3のいずれかのクランプ装置において、
前記サポート手段(29)が、前記の係合具(14)を先端へ向けて付勢する押圧バネ(27)を備える、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明7〉
「請求項1から6のいずれかのクランプ装置において、
前記ハウジング(11)の先端部に、前記の被固定物(1)を受け止めるアダプターブロック(22)を着脱自在に設けて、そのアダプターブロック(22)に前記プルロッド(12)を軸心方向へ移動可能に挿入した、ことを特徴とするクランプ装置。」
〈本件発明8〉
「請求項7のクランプ装置において、
前記プルロッド(12)を前記の駆動手段(15)に着脱自在に連結した、ことを特徴とするクランプ装置。」

第5.甲各号証記載の発明(事項)
(1)甲第1号証
甲第1号証(発明の名称「把持装置」、1992年1月16日公開)には、甲第1-1号証の訳文の段落を引用すれば以下のとおり記載されている。
(イ)段落[0001]
「[0001]
本発明は、請求項1の説明文による加工される材料の把持の為の装置に関するものである。」
(ロ)段落[0005]?[0006]
「[0005] この課題は、発明によれば請求項1の特徴の部に示された特徴により解決される。
締め付けセグメントがピラミッドの角で互いに分離している4辺ピラミッドとして接触面が特別にデザインされている時には、この締め付けセグメントは自由に運動が出来る為にこの締め付けセグメントは、締め付け動作の際に更に大きい穴にも適合することが出来る。従って本発明による把持装置を芯出し補助具として用いることが可能であり、この作業は締め付けヘッドの上端で円錐状にすることにより容易となる。
[0006] 締め付けセグメントの外面での力の方向を示す歯によって、それが材料の穴の壁面に食い込む時には形状によるロック作用が生まれる。歯の形状は、この場合、歯の尖端が締め付けセグメントの拡がる時に力の合力の方向を指すようにデザインされている。接触面の角度を適切に選ぶことにより大きな力の伝達が径方向に行なわれ、しかも接触面での自己ロックの現象の起きぬことが保障される。」
(ハ)段落[0012]?[0020]
「[0012] 図1は、その支持面2で材料3が確実に把持されている把持装置1を示す。
更に材料3の穴4の中に4つの切り離された締め付けセグメント5から成る締め付けスリーブ6が挿入され、前記締め付けセグメント5の内側で傾いた内面7は平面としてデザインされている。
[0013] 締め付けセグメント5は、ケーシング9の袋穴8の上に設けられ、その下端に各一つのカラー10を備えている。
[0014] 締め付けセグメント5の間に引っ張りロッド11が存在し、前記ロッドは締め付けセグメント5の傾斜した内面7の領域に締め付けヘッド12を備え、前記ヘッドは4つの平坦な接触面13を持ち、前記接触面は締め付けセグメント5の内面に等しい角度で傾いており、弾性セグメントと運動する。
[0015] 図2が示すように締め付けセグメント5は、角により囲まれたピラミッドの角14に沿って互いに分離している。引っ張りロッド11は、その下端でプランジャ15に接続されており、前記プランジャはシリンダ16の中に装入され、又スプリング17によりシリンダ16の接触面18に押し付けられ、前記締め付けヘッド12はその解除位置に在る。プランジャ15を作動させる作動油は、穴19を通して送られる。
[0016] 材料3の穴4の領域では、締め付けセグメント5はその外面に歯型部分20を備え、その歯型21は締め付け方向に見て下に傾いている。
[0017] 締め付けセグメント5をまとめて保持するのは、O-リングの形の弾性保持エレメント22であり、前記エレメントは締め付けセグメント5の環状溝29に嵌入し前記セグメントを引っ張りロッド11に押し付ける。
[0018] 締め付けロッド12の上端には、円錐のセクション24が設けられることにより材料3を把持装置1の中に嵌入することを容易にし、従って特に荷役機械を用いる時には有利である。袋穴8の中では皿バネのパケットの形のバランススプリング25が設けられ、その上にディスク26が支持されている。前記ディスクは、締め付けセグメント5のストツパの役割を果たし、ケーシング9の蓋27に押し付けられている。
[0019] 上記の装置により引っ張りロッド11を作動させると、締め付けセグメント5は径方向に拡がり、前記歯21は穴4の壁に食い込む。この時に初めて締め付けスリーブ6の軸方向の小さい移動が行なわれる。
[0020] 歯型部20と材料3との間の形状によるロック作用および材料3と支持面との間の摩擦によるロック作用により、材料3と把持装置1との間には極めて大きな把持力が生まれる。
プランジャ15およびそれと共に引っ張りロッド11が再び解除位置に戻ると弾性保持エレメント22は、穴4の外壁からの締め付けセグメント5の解除をそれが引っ張りロッド11に接触する迄行なう。」
(ニ)段落[0023]
「[0023]特許請求の範囲
1.加工材料を把持する際に材料の穴の中に嵌入する締め付けソケットは、傾斜した内面を備え、上記内面に対しテーパー付き把持ヘッドを持つ動力付き引き込みソケットが摺動作用を行い、しかも、
締め付けソケット(6)は、平坦内面(7)を示す締め付けセグメント(5)を備え、上記平坦内面と締め付けヘッド(12)の平坦な面(13)が摺動接触を行うことを特徴とする把持工具。
2.請求項1において、締め付けソケット(6)および締め付けヘッド(12)が少なくとも夫々2つの摺動接触面(7,13)を備えていることを特徴とする把持工具。
3.請求項1、又は2において、締め付けソケット(6)の締め付けセグメント(5)は、その端面(14)に沿った切り込みにより互いに分離されていることを特徴とする把持工具。
4.請求項1から3の何れかにおいて、締め付けセグメント(5)がその外面に歯型(20)を備えていることを特徴とする把持工具。
5.請求項4において、歯型(20)の歯(21)は、引っ張りロッド(11)の締め付け方向に傾斜していることを特徴とする把持工具。
6.請求項3から5の何れかにおいて、締め付けセグメント(5)が少なくとも1つの弾性保持エレメント(22)により互いに連結されていることを特徴とする把持工具。
7.請求項1から6の何れかにおいて、締め付けヘッド(12)がその上端においてテーパー状のセクション(24)を備えていることを特徴とする把持工具。
8.請求項1から7の何れかにおいて、プランジャ(15)および把持工具(1)を格納し、又は締め付けセグメント(5)とケーシング(9)との間にバランススプリング(25)を備えたケーシング(9)を持つことを特徴とする把持工具。」
「把持装置」は、「クランプ装置」に他ならないので、以上の摘記事項及び第1図の記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
『加工される材料を把持し、固定するためのクランプ装置において、
その上面を支持面2とした蓋27と、ケーシング9に設けたプランジャ15と、そのプランジャ15によって軸心方向へ往復移動される引っ張りロッド11と、その軸心方向の基端へ向けてすぼまるように上記引っ張りロッド11に設けたテーパ形状の接触面13と、その接触面13の外周空間に配置されて材料3の穴4へ挿入される歯型部分20および歯型21と、その歯型部分20および歯型21が基端へ変位するのを所定の支持力によって阻止すると共にその支持力よりも大きな力によって上記の歯型部分20および歯型21が同上の基端へ変位するのを許容するバランススプリング25およびディスク26とを備え、
上記引っ張りロッド11を基端へ駆動することによって、上記接触面13が上記の歯型部分20および歯型21を半径方向の外方の係合位置へ切換えて前記の穴4に係合させると共に同上の歯型部分20および歯型21を前記バランススプリング25およびディスク26に抗して基端へ変位させ、これにより、上記引っ張りロッド11の駆動力を上記の材料3へ伝達可能に構成し、上記引っ張りロッド11を先端へ駆動することによって同上の歯型部分20および歯型21が半径方向の内方の係合解除位置へ切換わるのを許容する、クランプ装置。』
(2)甲第2号証
甲第2号証(発明の名称「クランプ装置」、平成9年11月4日公開)には、以下のとおり記載されている。
(イ)段落【0001】
「【0001】【発明の属する技術分野】
この発明は、ワークピースや金型などの被固定物をワークパレットやテーブル等に固定するためのクランプ装置に関する。」
(ロ)段落【0006】?【0007】
「【0006】(請求項1の発明)ハウジング11の第1端に開口されたガイド孔17の第2端寄りの部分に環状の駆動部材20を軸心方向へ移動自在に挿入し、その駆動部材20の筒孔20aに第1の環状隙間21をあけて伝動スリーブ24を挿入し、その伝動スリーブ24を、上記の駆動部材20によって第2端へ向けて移動可能に構成すると共に復帰手段31によって上記の第1端へ向けて移動可能に構成し、
上記ガイド孔17の第1端部分に第2の環状隙間22をあけて操作具36を挿入し、その操作具36に対する上記の伝動スリーブ24の軸心方向への移動によって、その伝動スリーブ24の第1端部分に支持した係合具37を、同上の伝動スリーブ24の筒孔24b内に挿入されたロッド3の被係合部5に係合する係合位置Xとその被係合部5との係合が解除される係合解除位置Yとへ切換え可能に構成した。
【0007】(請求項2の発明) 請求項2の発明は、上記の請求項1の構成に次の構成を加えたものである。 前記ハウジング11にクリーニング流体の供給口47を設け、その供給口47を少なくとも前記の第2の環状隙間22を経て前記ガイド孔17の前記の第1端に連通させて構成した。」
(ハ)段落【0011】
「【0011】上記の図4の状態から上記の被固定物1を下降させていくと、まず、上記ロッド3の下端が伝動スリーブ24の筒孔24b内に挿入されていく。そのロッド3の挿入開始時において、ガイド孔17の軸心Aとロッド3の軸心Bとが心ズレしている場合には、前記2つの環状隙間21・22の存在によって上記の伝動スリーブ24および操作具36が水平方向へ移動することにより、上記の心ズレが自動的に修正される。
これにより、図5に示すように、上記ロッド3が伝動スリーブ24の筒孔24bへスムーズに挿入されると共に被固定物1の被固定面Rがベース7の支持面Sに受け止められる。」
(ニ)段落【0014】?【0015】
「【0014】本発明によれば、前記クランプ状態においては、被固定物1の六面のうちの被固定面Rを除いた五面を開放できる。このため、その被固定物がワークピースの場合には、上記クランプ状態のままで上記の五面を連続して加工でき、機械加工の能率が飛躍的に向上する。また、上記の被固定物が金型の場合には、その金型の周囲のスペースが狭められないので、金型交換時の作業性が向上する。 さらに、前述したように、クランプ装置のガイド孔の軸心と被固定物のロッドの軸心とが心ズレしている場合であっても、上記の心ズレを自動的に修正できるので、クランピング時の連結をスムーズに行える。 そのうえ、伝動スリーブの第1端部分に係合具を支持したので、その係合具とロッドの被係合部とをガイド孔の深さが浅い位置で係合できる。このため、上記ロッドは被固定物からの突出長さが短くなる。
【0015】(請求項2の発明) 請求項2の発明は次の作用効果を奏する。 上述したクランプ用の連結操作時に、図4中の破線矢印に示すように、供給口47へ供給されてきたクリーニング流体をガイド孔17の上端開口(第1端側の開口)から勢いよく吐出させる。すると、前記ロッド3の下部に付着している塵埃や切り粉等の異物が、上記の吐出されたクリーニング流体によって吹き飛ばされて清掃される。 さらに、上記ロッド3が伝動スリーブ24の筒孔24bへ挿入される途中時においては、その筒孔24bと同上ロッド3の外周面との隙間が狭められるので、その隙間を前記のクリーニング流体が勢いよく流れて、そのロッド3の外周面が十分に清掃される。このため、そのロッド3の被係合部5と前記の係合具37との係合ミスを防止できる。」
(ホ)段落【0019】?【0030】
「【0019】【発明の実施の形態】 以下、本発明に係るクランプ装置の一実施形態を図1から図5によって説明する。まず、図2から図4によって、上記クランプ装置によって被固定物がクランピングされる手順を説明する。
【0020】 図2において、符号1は、マシニングセンタによって加工されようとするワークピース(被固定物)1で、そのワークピース1の前後上下左右の六面のうちの上面に、予め基準面(被固定面)Rが機械加工される。次いで、その基準面Rに複数のメネジ穴2が形成され、その後、各メネジ穴2にプルボルト(ロッド)3が人手またはロボットによって着脱自在にネジ止めされる。そのプルボルト3の先端に、六角形のネジ回し用回転部分4と後述する被係合部5とが設けられている。
【0021】 図3において、符号7は、被固定物を支持するためのベースであるワークパレットである。そのワークパレット7には後述する貫通孔8が複数形成されており(ここでは2つだけ図示してある)、その貫通孔8の下開口に対応する位置にクランプ装置10のハウジング11が固定されると共に、同上の貫通孔8の上開口の周縁部分によって支持面Sが構成されている。
なお、上記の貫通孔8および支持面Sは、上述のようにワークパレット7に直接に形成したものに代えて、そのワークパレット7に取り付けたアダプターブロック(図示せず)に形成してもよい。この場合、そのアダプターブロックに前記ハウジング11を固定することが好ましい。
【0022】 上記パレット7に上記ワークピース1を固定するときには、同上の図3に示すように、まず、図2の姿勢のワークピース1を上下逆の姿勢にし(図4を参照)、その状態でプルボルト3・3を上記パレット7の貫通孔8・8内へ挿入すると共にそのパレット7の支持面Sによって上記ワークピース1の基準面Rを受け止める。次いで、上記クランプ装置10をクランプ駆動する。すると、上記ハウジング11内に設けた後述のクランピング機構によって上記プルボルト3・3が下向きに引っ張られて、上記のワークピース1が上記の支持面Sに固定される。引き続いて、上記パレット7がマシニングセンタ内へ搬入され、その後、そのワークピース1の六面のうちの基準面R以外の五面が上記マシニングセンタによって連続的に加工される。
【0023】 上記の加工が完了すると、まず、上記マシニングセンタからワークパレット7を搬出し、次いで、前述のクランプ状態を解除して上記パレット7から上記ワークピース1を取り外し、その後、そのワークピース1からプルボルト3・3を取り外すのである。
【0024】 次に、図1および図5によって、上記のクランプ装置10の詳細な構造を説明する。図1は、クランプ状態を示し、前記の図3中の矢印I部分の縦断面図である。図5は、クランプ解除状態を示し、上記の図1に相当する図である。主として図1に示すように、前記ワークパレット7の貫通孔8は、小径の上孔8aと大径の下孔8bとによって構成される。上記クランプ装置10の前記ハウジング11は、下ハウジング部分12と、上記の下孔8bに嵌入される上ハウジング部分13とからなる。これら上下のハウジング部分12・13が、複数の短ボルト14によって一体に組み付けられると共に、複数の長ボルト15によって上記ワークパレット7に固定されている。なお、上記ボルト14・15は、いずれも1本だけ図示している。
【0025】 上記ハウジング11内に上下方向へ延びるガイド孔17が形成される。そのガイド孔17は、上ハウジング部分13に形成した上孔18と下ハウジング部分12に形成した下孔19とによって構成され、その上孔18の上端(第1端)が上向きに開口される。なお、前記の図4中の符号Aは、上記ガイド孔17の軸心を示し、同上の図4中の符号Bは、前記プルボルト3の軸心を示している。
【0026】 上記ガイド孔17の下孔19には、環状の駆動部材であるピストン20が軸心方向へ保密移動自在に挿入される。そのピストン20の筒孔20aに第1の環状隙間21をあけて伝動スリーブ24が挿入される。上記ピストン20の上側で上下のOリング25・26の間に油圧作動室27が形成される。符号28は圧油の給排口で、符号29はダストシールである。そして、上記の作動室27へ圧油を供給すると、上記ピストン20によってフランジ24aを介して上記の伝動スリーブ24が下向きに移動される。これとは逆に、同上の作動室27から圧油を排出すると、上記の伝動スリーブ24及びピストン20が復帰バネ(復帰手段)31によって上向きに移動される。符号32はバネ室であり、符号33はバネ受けである。
【0027】 上記のガイド孔17の上孔18の下寄り部分には第2の環状隙間22をあけてリング状の操作具36が挿入され、その操作具36が、上記の伝動スリーブ24の上部に支持した複数のボール(係合具)37に外嵌される。より詳しく説明すると、その伝動スリーブ24の上端部分(第1端部分)に周方向へ間隔をあけて複数の連通孔38が貫通形成され、各連通孔38に上記ボール37が水平方向へ進退自在に挿入される。また、上記の操作具36の内周面には、テーパ状の第1面41とこれに連なる第2面42とが上下に形成される。
【0028】 上記の伝動スリーブ24内に筒状ガイド部材44が嵌入され、そのガイド部材44が調節バネ45によって上向きに付勢される。さらに、前記の下ハウジング部分12の下部にクリーニング流体の供給口47が設けられる。その供給口47は、前記バネ室32・伝動スリーブ24の通孔48・前記の第1の環状隙間21・前記の操作具36の下溝49・前記の第2の環状隙間22・同上の操作具36の上溝50・前記ガイド孔17の上端を順に通って前記パレット7の上孔8aの上端に連通されると共に、上記バネ室32と前記のバネ受け33の貫通孔33aと前記ガイド部材44の貫通孔44aと同上ガイド孔17の上端とを順に通って同上パレット7の上孔8aの上端に連通されている(図4参照)。
【0029】 以下、上記構成のクランプ装置10の作動を前記の図4及び図5と上記の図1とによって説明する。図4に示すように、前記ワークピース1に固定したプルボルト3を上記ハウジング11に挿入し始めるときには、クランプ装置10がクランプ解除状態へ操作されている。即ち、前記の給排口28から圧油を排出することにより、復帰バネ31によって伝動スリーブ24が上向きに移動され、前記の複数のボール37が前記の軸心Aから離れた係合解除位置Yへ切換えられている。
【0030】 さらに、同上の図4に示すように、前記の供給口47へクリーニング用の圧縮空気が供給されて、その圧縮空気が前述した経路でガイド孔17の上端から吐出されている(破線矢印参照)。このため、上記プルボルト3の下部に付着している塵埃や切り粉等の異物が、上記の吐出された圧縮空気によって吹き飛ばされて清掃される。」
(ヘ)段落【0031】?【0034】
「【0031】上記の図4の状態から上記ワークピース1を下降させていくと、まず、上記プルボルト3の下端の前記ネジ回し用回転部分4が前記のガイド部材44内に嵌入され、次いで、前記の被係合部5のフランジ部分6が上記ガイド部材44を下向きに押圧していく。上記のプルボルト3の挿入開始時において、ガイド孔17の軸心Aとプルボルト3の軸心Bとが心ズレしている場合には、2つの環状隙間21・22の存在によって前記の伝動スリーブ24および操作具36が水平方向へ移動して上記の心ズレが自動的に修正される。
【0032】これにより、図5に示すように、上記プルボルト3が伝動スリーブ24の筒孔24bへスムーズに挿入されると共にワークピース1の基準面Rがパレット7の支持面Sに受け止められる。上記プルボルト3の挿入の途中時においては、前記パレット7の上孔8aとプルボルト3の外周面との隙間や、伝動スリーブ24の筒孔24bと同上プルボルト5の外周面との隙間が狭められるので、その隙間を前記の圧縮空気が勢いよく流れて、そのプルボルト3の外周面が十分に清掃される。このとき、前記の被係合部5は、前記の操作具36の上溝50から求心方向へ吐出される圧縮空気によって強力に清掃される。このため、上記の被係合部5と前記ボール37との後述する係合時において、係合ミスを防止できる。
【0033】さらに、上記ワークピース1の基準面Rがパレット7の支持面Sに受け止められる直前では、これら両面R・S間の隙間が狭められてその隙間を上記の圧縮空気が勢いよく流れるので(図5中の二点鎖線矢印参照)、その圧縮空気によって上記の両面R・Sを強力に清掃できる。このため、上記パレット7に対してワークピース1を精度よく位置決めできる。
【0034】引き続いて、前記の作動室27へ圧油を供給して、前記ピストン20によって前記の復帰バネ31に抗して伝動スリーブ24を下向きに駆動する。すると、図1に示すように、上記の伝動スリーブ24の連通孔38に挿入された前記ボール37が、前記の操作具36の第1面41によって前記の軸心Aへ向けて押圧されて係合位置Xへ切換えられると共に前記の第2面42によって上記の係合位置Xにロックされる。これにより、上記ピストン20の駆動力が、伝動スリーブ24と上記ボール37と前記プルボルト3を順に介して前記ワークピース1へ伝達され、そのワークピース1がパレット7に固定される。」
以上の摘記事項及び第1図の記載からみて、甲第2号証には次の事項(以下、「甲第2号証記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
『ワークピースや金型などの被固定物をワークパレットやテーブル等に固定するためのクランプ装置であって、
駆動部材20に伝動スリーブ24を半径方向へ移動可能に連結するとともに、その伝動スリーブ24及び係合具37をハウジング11に対して半径方向へ移動可能としたクランプ装置。』
及び、
『ワークピースや金型などの被固定物をワークパレットやテーブル等に固定するためのクランプ装置であって、
ガイド孔17に操作具36及び係合具37を環状隙間22をあけて設け、下ハウジング部分12に設けたクリーニング流体の供給口47を上記の環状隙間22へ連通させたクランプ装置。』
(3)周知例
(i)甲第3号証
甲第3号証(発明の名称「シリンダ型油圧クランプ」、平成4年7月24日公告)には、以下のとおり記載されている。
(イ)公報第3欄第17?26行
「≪産業上の利用分野≫
本発明は、シリンダ本体から突出させたピストンロッドの先端部にクランプ具を設けた油圧シリンダのうちでも、クランプ具をピストンロッドの周面から径方向に突出させた状態でシリンダ本体に向けて油圧駆動することにより、シリンダ本体とクランプ具との間で被固定物を押圧固定する形式のシリンダ形油圧クランプに関し、油圧クランプのクランプ・アンクランプ操作が容易にできるようにする技術である。」
(ロ)公報第15欄第36行?第16欄第7行
「第10図は第2図相当図で、傾斜カム24を上方へ押圧する構造を次のように変形したものである。即ち、傾斜カム24の下部にピストン筒からなる押圧手段40を固定し、その押圧手段40をシリンダ本体9の上端壁9aとピストンロッド20との間に上下油密摺動自在に挿入してある。そして、クランプ作動油室14から押圧手段40へ加わる油圧力と接当ばね75の弾圧力とによって上方へ押圧される傾斜カム24を、その押圧手段40の下部に設けた外鍔部74で受け止めるように構成してある。
この場合、上記の傾斜カム24は、クランプ具8がクランプ作動するときにピストンロッド20に対して下降が許容される構造であればよく、接当ばね75を省略して上方への押圧力を油圧力だけでまかなうことも可能である。」
(ii)甲第4号証
甲第4号証(考案の名称「液圧クランプ装置」、昭和51年4月13日公告)の公報第2欄第10行?第3欄第5行には、以下のとおり記載されている。
「図中1はワーク2を取付けるためのベッドであり、このベッド1の下側に油圧クランプ装置3のシリンダ4が固着してある。5はこのシリンダ4に嵌合し上下方向に摺動するようにしたピストンで、このピストン5の両端にピストンロッド5a,5bが設けてあり、その一方のピストンロッド5aはシリンダ4の蓋体6にまわり止めピン7に係合してピストン5がまわらないようにして摺動自在に嵌合支持されており、他方のピストンロッド5bはシリンダ4の基部を貫通してベッド1の上側へ突出してある。そしてこの他方のピクトンロッド5bにはねじられ角が略90度の螺旋溝8が削設してあり、また端部にストッパ9が固着してある。10は上記ピストンロッド5bに摺動自在に嵌合した補助ピストンで、シリンダ4内の部分に上記ピストン5の径より小さな径のピストン部11が構成してある。12は上記ピストンロッド5bの端部に回転自在嵌合したクランパで、このクランパ12に固着したピン13がピストンロッド5bの螺旋溝8に係合している。14,15,16は0リングであり、また17,18は圧油供給部材である。なお19はクランパ支持台である。
本考案は以上のように構成されているから、第2図の状態で上側の圧油供給部材17から圧油を供給すると、最初は補助ピストン10がそのままの状態でピストン5だけが下降し、クランパ12が補助ピストン10によって相対的におしあげられ、このときにピストンロッド5bの螺旋溝8に案内されてクランパ12が略90°回転すると共にストッパ9に当接する。この状態を第2図の仮想線で示す。これからさらに圧油を供給するとクランパ12は補助ピストン10とストツパ9に固定された状態で下降してワーク2をクランプする」
(iii)甲第5号証
甲第5号証(考案の名称「ワーククランプ装置」、昭和59年7月19日公告)には、以下のとおり記載されている。
(イ)公報第2欄第1?23行
「以下本考案の一実施例を図面について説明する。1は治具2の下面に上向きに装着された油圧シリンダ、3はピストンロッドで、先端部には外側周部4にテーパを付してシリンダ側が先細となる当て金5をピストンロッド3の段部に球面座金6で押し当てて取付けている。7はクランプバーで、ピストンロッド3と同じ軸線上で油圧シリンダ1のピストンロッド3およびシリンダ本体20のそれぞれに進退可能に嵌挿し且つシリンダ側の端部にピストン8よりも若干小径の鍔部9を突設してシリンダ室上端面に係合させるようになし、先端側の外側周部には軸方向の切欠き溝10を削設して拡径可能とせるスリープ11を嵌挿取付けると共に、スリープ11と当て金5間の環状部12には適宜間隔をおいてシリンダ軸線と直角に通孔13を穿設してこれに鋼球14を嵌挿し、この鋼球14を介してスリープ11と当て金5を係合させている。
なお図中、15はクランプバー7上端の閉蓋とスリープ11の抜け止めを図るキヤツプ、16はスリープ11の回り止めねじ、17は治具2の適宜位置に配設された当て駒で、ワークの加工基準面となる。」
(イ)公報第2欄第23?第3欄第8行
「本実施例は前記するような構成であるから、治具2から突き出たクランプバー7にワーク18の穴19を差し込んでワークを治具2上の当て駒17に載せ、ついで切換弁(図示せず)により油圧シリンダ1のロッドが側に圧油を供給しヘッド側をタンクに接続すれば、ピストン8は下方に押され、クランプバー7は逆に上方へ押されてシリンダ上端面に鍔部9で係合して停止する。よって、鋼球14は下降する当て金5により外側方へ押し込まれてスリープ11を拡径しワーク18の穴19内周面にスリープ拡径部を圧接させる。従つて、ピストンロッド3とクランプバー7は当て金5、銅球14、スリーブ11およびワーク18を介して一体化しワーク18を強固に把持すると共に、ピストン8と鍔部9の受圧面積差に基づく推力で当て駒17にワーク18をクランプするに至る。このクランプの解除は、シリンダ1のヘッド側に圧油を供給しロッド側をタンクに接続すればよい。即ち、ピストンロッド3の上昇で当て金5とスリープ11の間隔は鋼球14の直径より大となるので、ワーク押付け力が零となってスリーブ11は縮径し、クランプ解除となる。」
(iv)甲第7号証
甲第7号証(考案の名称「ワーククランプ装置」、平成3年12月27日公告)の公報第4欄第25行?第6欄第34行には、以下のとおり記載されている。
「〔実施例)
本考案の一実施例を第1図乃至第4図に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施例は、旋盤の主軸に装着したワーククランプ装置1に内径が僅かに異なる2種類のワークをクランプする場合を示す。図示しない旋盤の主軸前端部には、円盤状の装着部材2がボルト3…で同軸上に固定されている。また、旋盤に内蔵された引込装置の引込捧4が、この装着部材2の軸心を貫通して前方側に連絡部5を突出させている。図示しない引込装置は、油圧シリンダからなり、ピストンロッドに連結した引込棒4を軸方向に往復移動させることができる。このため、引込捧4の連絡部5は、装着部材2の前方側において引き込み又は引き戻しの動きを行う。また、この引込捧4にはキー溝6が形成され、装着部材2に蝶着した止めねじ7の先端がこのキー溝6に嵌まり込むことにより、装着部材2に対して引込棒4が軸方向に移動可能に、かつ、軸に回転方向には同体的に回転するようになつている。
ワーククランプ装置1は、この装着部材2に円盤状の本体11をボルト12…で同軸上に固定することにより旋盤の主軸に装着される。この本体11には、張り駒13…13′…を支持するためのボス状のホルダ部14が前方側に突出形成され、前方ほど外径が大きくなるテーパ面を前端部に形成したテーパ軸15が軸方向に往復移動可能となるように、かつ、軸の回転方向に回動可能となるように貫通している。また、本体11の後部には連結軸16の前端部に形成されたフランジ部17が嵌まり込み、かつ、この本体11の後端部にボルト18…で同軸上に固定したキャップ19によってこの連結軸16の軸部20が軸受けされることにより、この連結軸16が軸方向に往復移動可能となるように、かつ、軸の回転方向に回動可能となるように取り付けられている。この連結軸16は、後方側に鍔部21が突出形成され、この鍔部21を引込棒4の連絡部5に形成されたU字構に嵌入することにより、引込棒4と同体的に往復移動し、かつ、引込棒4に対して回動可能となるように連結されている。また、この連結軸16の前端部には、テーパ軸15の後端部に形成されたねじ部22が同軸上に螺着している。従って、このテーパ軸15は、引込棒4と同体的に往復移動し、かつ、本体11及び引込棒4とは独立して回動可能となる。連結軸16におけるフランジ部17の周囲には、軸方向のV字薄23…が等間隔に6箇所形成されている。また、本体11の下方には、半径方向に摺動可能となるように上ピン24及び下ピン25が圧縮ばね26を介して埋設され、この圧縮ばね26に付勢された上ピン24の上端部が連結軸16におけるフランジ部17のいずれかのV宇溝23に嵌まり込むことができるようになっている。さらに、本体11の下端部近傍にそれ自体で回動可能に嵌合された押圧軸27の偏心軸部28に下ピン25の下端を当接させ、この偏心軸部28が上方に偏心している場合に、上ピン24の上端部がフランジ部17のV字溝23に嵌まり込んだ位置で、上ピン24の下端部及び下ピン25の上端部に圧縮ばね26を取り囲むようにそれぞれ形成された緑部同士が略当接する状態となるようにしている。従って、押圧軸27を回勤させて偏心軸部28を上方に偏心させると、下ピン25が上ピン24の下方への移動を妨げるので、この上ピン24の上端部がフランジ部17のV字溝23から外れなくなり、連結軸16の回動を規制する。また、この偏心軸部28を下方に偏心させると、下ピン25が圧結ばね26に付勢されて下方に移動し上ピン24との間隔が開くので、連結軸16を強制的に回動させた際に、圧縮ばね26に付勢された上ピン24の上端部がフランジ部17の各V字溝23ごとにノツチ動作を行う。この押圧軸27は、前端面に穿設された六角穴29に六角レンチを挿入して回すことにより回動する。また、本体11の下端から螺合された止めねじ30を締め付けると、この止めねじ30の先端が押圧軸27の軸部に押し当たり、不用意に偏心軸部28が回転するのを防止できるようになっている。なお、本体11の上方には、本体11の上端から止めねじ31が半径方向に蝶合され、この止めねじ31を締め付けて先端部を連結軸16におけるフランジ部17のいずれかのV字溝23に嵌め込んだ場合にも、連結軸16が回動しないようにすることができる。
本体11のホルダ部14には、軸方向の長孔32…が円周方向に等間隔に6箇所形成され、この長孔32…には、6片の張り駒13…13′…がそれぞれ半径方向に摺動可能なように嵌め込まれている。また、このホルダ部14の内周には、テーパ軸15の前端部が嵌入し、このテーパ軸15の往復移動の際に前端部のテーパ面が干渉しないような略テーパ孔が形成されている。6片の張り駒13…13′…、はホルダ部14の長孔32…に嵌り込むことにより全体として略円筒形の一部を構成し、この張り駒13…13′…の各内面は、それぞれ内向きの凸状面を形成しつつ、全体としてその包絡面がテーパ軸15前端部におけるテーパ面と同じ勾配のテーパ面を形成している。」
(v)周知事項
甲第3?5号証の以上の摘記事項及び図面の記載からみて、次の事項が従来周知であると認められる。
<周知事項1>
『クランプ装置において、
係合具を保持する押上力を発生するサポート手段に、ばねに代えて、油圧力を受けるピストンを用いること。』
また、甲第7号証の以上の摘記事項及び図面の記載からみて、次の事項が従来周知であると認められる。
<周知事項2>
『クランプ装置において、
駆動部材にテーパ軸を着脱自在に連結すること。』

第6.対比
(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、後者の「ケーシング9」が前者の「ハウジング11」に、後者の「プランジャ15」が前者の「駆動手段15」に、後者の「引っ張りロッド11」は前者の「プルロッド12」に、後者の「テーパ形状の接触面13」が前者の「テーパ外周面12a」に、後者の「材料3」が前者の「被固定物1」に、後者の「穴4」が前者の「係合孔2」に、後者の「歯型部分20」及び「歯型21」が前者の「係合具14」に、後者の「バランススプリング25」及び「ディスク26」が前者の「サポート手段29」に、それぞれ相当することは、各部材の構造、機能から明らかである。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
ハウジングに設けた駆動手段と、その駆動手段によって軸心方向へ往復移動されるプルロッドと、その軸心方向の基端へ向けてすぼまるように上記プルロッドに設けたテーパ外周面と、そのテーパ外周面の外周空間に配置されて被固定物の係合孔へ挿入される係合具と、その係合具が基端へ変位するのを所定の支持力によって阻止すると共にその支持力よりも大きな力によって上記の係合具が同上の基端へ変位するのを許容するサポート手段とを備え、
上記プルロッドを基端へ駆動することによって、上記テーパ外周面が上記の係合具を半径方向の外方の係合位置へ切換えて前記の係合孔に係合させると共に同上の係合具を前記サポート手段に抗して基端へ変位させ、これにより、上記プルロッドの駆動力を上記の被固定物へ伝達可能に構成し、上記プルロッドを先端へ駆動することによって同上の係合具が半径方向の内方の係合解除位置へ切換わるのを許容する、クランプ装置。
<相違点1>
前者は、上記の駆動手段に上記プルロッドを半径方向へ移動可能に連結するとともに、そのプルロッド及び上記の係合具を前記ハウジングに対して半径方向へ移動可能に構成するのに対して、後者はそのように構成されていない点。
(2)本件発明2について
本件発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1及び下記の点で相違する。
<相違点2>
前者は、「前記プルロッドに環状部材を軸心方向へ移動可能に外嵌して、その環状部材の周壁に前記の係合具を設けた」のに対して、後者はそのように構成されていない点。
(3)本件発明3について
本件発明3と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1、2及び下記の点で相違する。
<相違点3>
前者は、「前記の環状部材をコレットによって構成して、そのコレットの周壁によって前記の係合具を構成した」のに対して、後者はそのように構成されていない点。
(4)本件発明4について
本件発明4と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1?3及び下記の点で相違する。
<相違点4>
前者は、「前記のサポート手段が、前記の係合具を所定の力で支持する押上げピストンを備える」のに対して、後者はそのように構成されていない点。
(5)本件発明5について
本件発明5と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1、2及び下記の点で相違する。
<相違点5>
前者は、「前記ハウジングの先端部と前記の環状部材の外周面との間に環状隙間を設けて、上記ハウジングに設けたクリーニング流体の供給口を上記の環状隙間へ連通させた」のに対して、後者はそのように構成されていない点。
(6)本件発明6について
本件発明6と甲第1号証記載の発明とを対比すると、後者の「押圧バネ」が前者の「バランススプリング」に相当することは、各部材の構造、機能から明らかである。
してみると、前者の、「前記サポート手段が、前記の係合具を先端へ向けて付勢する押圧バネを備える」との点は、後者も備えている事項であり、新たな相違点はない。
(7)本件発明7について
本件発明7と甲第1号証記載の発明とを対比すると、後者の「アダプターブロック」が前者の「蓋」に相当すること、及び、その「蓋」が、ねじで着脱自在に取り付けられていることは、各部材の構造、機能及び第1図の記載から明らかである。
してみると、前者の、「ハウジングの先端部に、被固定物を受け止めるアダプターブロックを着脱自在に設けて、そのアダプターブロックに前記プルロッドを軸心方向へ移動可能に挿入した」との点は、後者も備えている事項であり、新たな相違点はない。
(8)本件発明8について
本件発明8と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点及び本件発明6,7の事項で一致し、上記相違点1?5及び下記の点で相違する。
<相違点6>
前者は、「前記プルロッドを前記の駆動手段に着脱自在に連結した」のに対して、後者はそのように構成されていない点。

第7.当審の判断
上記相違点1?6について、以下検討する。
(1)相違点1について
甲第2号証記載の「伝動スリーブ24」及び「駆動部材20」は、その構造及び機能からみて、それぞれ本件発明1?8の「プルロッド」及び「駆動手段」というべきものであり、甲第2号証記載の「操作具36」によって伝動スリーブ24の移動に伴って半径方向に移動する「係合具(ボール)37」が、本件発明1?8の「係合具」に相当する。
そうすると、甲第2号証には、クランプ装置において、「駆動手段にプルロッドを半径方向へ移動可能に連結するとともに、そのプルロッド及び係合具をハウジングに対して半径方向へ移動可能に構成する」との事項が示されていると認められる。
そして、甲第1号証記載の発明と当該甲第2号証記載の事項とは、「クランプ装置」という同一の技術分野に属するものであるから、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の事項を組み合わせ、甲第1号証記載の発明の相違点1に係る構成を本件発明1?8のそれとすることは、当業者が容易になし得ることである。
なお、被請求人は、甲第1号証記載の発明と甲第2号証記載の事項とを組み合わせることについて、
(イ)『甲第2号証の「心ズレ修正」を甲第1号証に仮に適用しても訂正後の本件特許発明1の具体的構成には当然にはならないこと
請求人は、「甲第1号証のクランプ装置に、甲第2号証の、上記の伝動スリーブ24と操作具36とを水平方向へ移動させることで心ズレを自動修正させる技術思想を組み合わせることにより、本件発明1の構成要件[F]を容易に想到することができる。」と主張する(請求書第12頁第11行?第13行)。
しかしながら請求人は、単に技術分野が共通するから適用が容易であると主張するだけで、甲第2号証のどの部材を甲第1号証のどの部材に付加あるいは交換すれば訂正後の本件特許発明1に到達し得る等の具体的な主張を何ら行っていない。
また、念のために指摘するが、前記(相違点)に係る訂正後の本件特許発明1の特徴の一つは、『上記の駆動手段の出力部内に上記プルロッドの入力部を半径方向へ移動可能に連結する』ことである。
この点、甲第2号証は、駆動ピストン20の下面(出力部)を伝動スリーブ24のフランジ24a(入力部)の上面に連結しており、『出力部内に・・・連結する』構成になっていない。そのほか、甲第2号証を精査しても、上記の具体的な構成を開示する記載はどこにも全くないし、示唆する記載もない。
従って、仮に当業者が、甲第2号証の開示事項から具体的構成を捨象して「心ズレ修正」という抽象的思想だけを抜き出し、甲第2号証と甲第1号証との基本的構成の違い及び技術思想の矛盾(詳しくは後述)を乗り越えて上記抽象的思想を甲第1号証へ組み合わせることに思い至ったとしても、それをもって直ちに訂正後の本件特許発明1の具体的な構成を備えることにはならない。
特に、『駆動手段の出力部内にプルロッドの入力部を半径方向へ移動可能に連結する』という本件特許発明1の特徴を、甲第1号証に「心ズレ修正」の思想を適用するだけでどうして備えることになるのか、具体的な根拠を請求人は何ら示していない。』、
(ロ)『甲第2号証の「心ズレ修正」と甲第1号証の「心出し」とは技術思想同士が相容れないこと
被請求人は答弁書で、甲第1号証及び甲第2号証のそれぞれの文献に表明されている技術思想の課題ないし目的が、本質的な部分で互いに矛盾しているから、当業者が両者を組み合わせることは極めて困難であると指摘した(答弁書第12頁第13行?第16行)。
この点につき、審判官殿は、上記「口頭審理審理事項(別紙)」で、「答弁書第11頁第5行?第12頁第16行『しかしながら、?極めて困難である。』で、述べていることは、両者を組み合わせることの阻害要因とまではいえないのではないか?」とのご見解を表明された。
しかしながら、答弁書で示したとおり、甲第2号証に明確に現れている「心ズレを修正(=心ズレの許容)」という目的と、甲第1号証に開示されている「心出し」という目的とが、互いを真っ向から否定する矛盾した関係であることは疑いの余地がない。従って、甲第2号証と甲第1号証のそれぞれの目的を当業者が通常有する技術的理解力をもって正しく把握したならば、両技術思想同士が全く矛盾することに気づいて、組み合わせを躊躇する心理的状態に陥ることは当然である。いくら甲第2号証と甲第1号証とが技術分野を共通にするからといっても、目的が180度異なるものを組み合わせることは、通常の創作能力を有する当業者にとっては思いも寄らないことである。
このように、甲第1号証と甲第2号証の技術思想同士が明らかに矛盾するにもかかわらず、その矛盾を「阻害要因とまではいえない」と評価できるためには、『通常のレベルの創作能力を有するに過ぎない当業者でも、上記の大きな矛盾を乗り越えて両者を組み合わせ得るほどの極めて大きな動機付けがあったこと』の論理付けが必要になると考える。しかしながら、そのような極めて強力な動機付けがあったことの根拠については、請求人が提出した審判請求書にも何ら示されていない。』と主張する。
上記の主張(イ)について検討するに、被請求人が、同主張の根拠としている本件発明1の具体的構成、即ち、駆動手段の「出力部内」及びプルロッドの「入力部」は、平成16年12月24日付け訂正請求書の取り下げに伴い削除され、同主張は、その根拠を失うこととなった。
してみれば、具体的構成を伴わない相違点1は、甲第2号証の段落【0011】(上記、第5.2.(2)(ハ)参照。)に示される技術思想を適用することにより、容易になし得たものといわざるをえず、同主張は採用できない。
上記の主張(ロ)について検討するに、被請求人は、「甲第2号証に明確に現れている『心ズレを修正(=心ズレの許容)』という目的と、甲第1号証に開示されている『心出し』という目的とが、互いを真っ向から否定する矛盾した関係である」と、主張している。
この点についてみると、この種のクランプ装置において、基準部材に、ワークやパレット等の可動部材を複数個所でクランプする場合には、いずれかのクランプ装置で位置決めし、他のクランプ装置は心ズレを許容しながらクランプしたり、位置決めは他の手段により行いクランプ装置は心ズレを許容しながらクランプしたりすることは、基準部材及び可動部材の寸法公差吸収のため、当然に必要となる構成であり、心ズレ修正クランプ装置と心出しクランプ装置はクランプ機構に関して多くの部分を共通にしており、しかも、互いに補完しあう関係にあることを考えれば、これらのクランプ装置は、いわば、表裏一体の関係にあるものである。
してみれば、「心ズレ修正」と「心出し」、それぞれのクランプ装置が、一見、相反する事項を目的としているかの如き関係であるとしても、どちらか一方のみが、独立して存在するものではなく、『互いを真っ向から否定する矛盾した関係である』との主張は、採用できない。
そして、「心ズレ修正」のための技術を開発するに当たり、他の技術分野のからの技術転用よりも前に、先ず、クランプ装置という、同じ技術分野の中の技術の転用を図るのが自然であり、それは、とりもなおさず、それぞれのクランプ装置の技術の組み合わせるための動機付けとなりうる。
以上のとおりであるから、当該クランプ装置の技術分野における当業者にとって、それぞれのクランプ装置の技術思想の転用を阻害する要因があるとまではいえず、被請求人の上記主張(ロ)は採用できない。
(2)相違点2及び3について
クランプ装置において、「プルロッドに環状部材を軸心方向へ移動可能に外嵌して、その環状部材の周壁に前記の係合具を設けた」こと、及び「前記の環状部材をコレットによって構成して、そのコレットの周壁によって前記の係合具を構成した」ことは、従来周知の事項(例えば、甲第8号証参照。)であって、これらの点が周知であることについては被請求人も認めている。(第3.2.(1)参照)
そうすると、甲第1号証記載の発明に上記周知事項を組み合わせ、甲第1号証記載の発明の相違点2及び3に係る構成を本件発明2?8のそれとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(3)相違点4について
クランプ装置において、「サポート手段が、係合具を所定の力で支持する押上げピストンを備える」ことは、従来周知の事項である(第5.(3)(v)<周知事項1>参照)。
そうすると、甲第1号証記載の発明に上記周知事項を組み合わせ、甲第1号証記載の発明の相違点4に係る構成を本件発明4?8のそれとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(4)相違点5について
甲第2号証には、クランプ装置において、「ガイド孔17に操作具36及び係合具37を環状隙間22をあけて設け、下ハウジング部分12に設けたクリーニング流体の供給口47を上記の環状隙間22へ連通させた」との事項が記載されている。
そして、甲第1号証記載の発明と当該甲第2号証記載の事項とは、「クランプ装置」という同一の技術分野に属するものであるから、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の事項を組み合わせ、甲第1号証記載の発明の相違点5に係る構成を本件発明1?8のそれとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(5)相違点6について
クランプ装置において、「駆動部材にテーパ軸を着脱自在に連結する」ことは、従来周知の事項である(第5.(3)(v)<周知事項2>参照)。
そうすると、甲第1号証記載の発明に上記周知事項を組み合わせ、甲第1号証記載の発明の相違点6に係る構成を本件発明8のそれとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(6)作用効果について
本件発明1?8の作用効果は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項及び上記各周知事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明1?8は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-12 
結審通知日 2005-04-14 
審決日 2005-04-26 
出願番号 特願平9-354553
審決分類 P 1 123・ 121- Z (B23Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 佐々木 正章
菅澤 洋二
登録日 2004-04-30 
登録番号 特許第3550010号(P3550010)
発明の名称 クランプ装置  
代理人 梶 良之  
代理人 森田 俊雄  
代理人 野田 久登  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 桂川 直己  
代理人 深見 久郎  
代理人 吉田 昌司  
代理人 荒川 伸夫  

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