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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1171517
審判番号 不服2005-18175  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-22 
確定日 2008-01-17 
事件の表示 平成11年特許願第 81094号「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 6日出願公開、特開2000-275666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成11年3月25日の出願であって、平成17年6月27日に手続補正がなされ、同年8月18日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月21日に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成17年10月21日付けの手続補正書についての補正の却下の決定

[結論]
平成17年10月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容
本件補正は、平成17年6月27日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載を展開した、

「【請求項2】
液晶を介して対向配置された基板のうち一方の基板の液晶側の面に複数の画素により構成される画素領域を有し、
前記画素領域のそれぞれの画素に信号を供給する信号線を形成し、
前記一方の基板と他方の基板の間に前記画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され、
前記信号線は前記画素領域から前記シール剤を越えて前記一方の基板の端子部まで延在され、
該シール剤を越えて延在される信号線は、その信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって、前記端子部の周辺に配置された有機樹脂の配置箇所まで被われており、
各画素には保護膜で被われた薄膜トランジスタを備え、
前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜は、それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記保護膜と同一の材料であることを特徴とする液晶表示装置。」を、

「【請求項1】
液晶を介して対向配置された基板のうち一方の基板の液晶側の面に保護膜で被われた薄膜トランジスタを備えた複数の画素により構成される画素領域を有し、
前記画素領域のそれぞれの画素に信号を供給する信号線を形成し、
前記一方の基板と他方の基板の間に前記画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され、
前記信号線は前記画素領域から前記シール剤を越えて前記一方の基板の端子部まで延在され、
該シール剤を超えて延在される信号線は、その信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって、前記シール剤の外側であって、前記他方の基板端から前記信号線の延在方向に及んで前記端子部の周辺に配置された有機樹脂の配置箇所まで被われており、
前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜は、それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている前記保護膜と同一の材料で、前記シール剤の下側から延在されて形成されていることを特徴とする液晶表示装置。」に変更する補正事項を含むものである。

なお、本件補正前の請求項2には「各画素領域には保護膜で被われた薄膜トランジスタを備え、」が記載されているが、本願明細書に画素領域が複数あるとの記載はなく、本願明細書の記載において、薄膜トランジスタを備えているのは画素であるから、上記記載の「各画素領域」は「各画素」の明らかな誤記である。よって、「各画素領域」は「各画素」の誤記であると認め、本件補正前の請求項2に係る発明を上記のように認定した。

上記補正後の請求項1に係る補正は、補正前の請求項2の発明特定事項である「前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜」に関し、「前記シール剤の下側から延在されて形成されている」ことを限定するものであるから、平成14年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物記載の発明

拒絶査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の平成7年6月2日に頒布された刊行物である特開平7-142533号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶等と組み合わせて画像表示装置を構成するための薄膜トランジスタ(以降TFTと呼ぶ)を多数配置した半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のTFTアレイの製造方法について、図3(a)?(d)を用い以下に説明する。
【0003】まず第1の工程では絶縁性透明基板としてガラス基板1上にアンダーコート膜としてSiO2膜2を全面形成する。次に第2の工程では前記基板1上にゲート電極3となる第1の金属膜として、例えばAl膜もしくはAl合金膜をパターン形成する。この時信号入力用引出し電極となる、ゲート側のTAB実装用電極3aは前記ゲート配線3の延長端部に引き出され同ゲート材で配置される(図3(a)参照)。
【0004】次に第3の工程では、ゲート絶縁膜4、シリコン半導体層5、及びチャネル保護膜6を成膜する。第4の工程では、ゲ-ト電極3上のチャネル保護膜6をパタ-ニングする(図3(b)参照)。次に第5の工程では、n+:シリコン膜を形成し、将来TFTが形成されるように該n+:シリコン膜及びシリコン半導体層5をパターニングする。
【0005】第6の工程では、画素電極8として透明導電膜ITOを成膜しパタ-ン形成する(図3(c)参照)。
【0006】第7の工程ではソース・ドレイン電極9となる第2の金属膜として例えばTi/Alをパターン形成する。このとき信号入力用引出し電極として、ソース側のTAB実装用電極は前記ソース配線9の延長端部に引き出され同ソース材で配置される。
【0007】そして第8の工程では絶縁保護膜10となるSiNx膜を形成することで、前記ゲート側のTAB実装用電極上3aには層間絶縁膜4及び絶縁保護膜10としてのSiNx膜が載置され、ソース側のTAB実装用電極上には絶縁保護膜10としてのSiNx膜が載置される。
【0008】最後に第9の工程として、該絶縁保護膜10をパターン形成する。この時、前記層間絶縁膜4及び絶縁保護膜10としてのSiNx膜は、例えばSF_(6)ガスによるドライエッチングにてエッチ除去されることで個々の電極材が露出され、TFTアレイ基板11が完成する(図3(d)参照)。
【0009】そして、ゲートおよびソースの実装電極部にTAB実装を施し、信号入力用電極を引き出す。TAB実装構成を図4(a)および(b)に示す。TABは有機フィルム12に印刷されたTAB電極13とTFTアレイ基板側の前記実装電極とを接着性異方膜14中に含有させた導電粒子15を介して電気的接続をするものである。そしてその後、保護用として例えばシリコン樹脂16をTAB実装周囲に塗布、硬化させて完成する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来構成では、図5に示すように、実装電極であるゲートおよびソースの金属膜面を露出させた状態でTAB実装を施して高温高湿試験にかけたところ、試験環境に曝される部分17ではAl消失18が見られ、断線に至るものがあった。それは、TAB実装工程までの電極面汚染や、TAB実装不備による実装電極保護不良によるものであった。」

(イ)引用例には、段落0001に「液晶等と組み合わせて画像表示装置を構成するための薄膜トランジスタ(以降TFTと呼ぶ)を多数配置した半導体装置」と記載され、この半導体装置は、段落0008に記載の「TFTアレイ基板11」であることが明らかである。
また、TFTアレイ基板と液晶のみでは画像表示装置を構成することはできず、他に、TFTアレイ基板の画素電極に対向する対向電極を備えた対向基板や、液晶を挟んでTFTアレイ基板と対向基板とを貼り付け液晶を封止するためのシール剤が必要であることが当業者に自明である。
そうすると、上記記載の「液晶等」とは、「対向電極を備えた対向基板」及び「シール剤」を含む意味であり、「TFTアレイ基板11と液晶等と組み合わせて画像表示装置を構成する」とは、「TFTアレイ基板と対向基板とを画素電極と対向電極とが対向するように液晶を挟んで対向させシール剤で両基板を貼り付けて液晶を封止する」ことを含む意味であると解される。

(ウ)引用例の図4の記載から、その延長端部に引き出されているゲート配線3(図4においては3a)は、その信号線側から、ゲート絶縁膜4及び絶縁保護膜10によって、前記ゲート配線3の延在方向に及んでTAB実装周囲に塗布、硬化させたシリコン樹脂16配置箇所まで被われていることが見てとれる。

(エ)上記(ア)?(ウ)によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。

「基板1上に、Al膜である第1の導電体層を被着形成し、ゲート電極3、ゲート配線3及び該ゲート配線3の延長端部に引き出され同ゲート材で配置されたゲート側の実装電極3aをパターン形成し、ゲート絶縁膜4、シリコン半導体層5、及びチャネル保護膜6を成膜し、チャネル保護膜6をパタ-ニングし、n+:シリコン膜を形成し、該n+:シリコン膜及びシリコン半導体層5をパターニングし、画素電極8として透明導電膜ITOを成膜しパタ-ン形成し、ソース・ドレイン電極9となる第2の金属膜をパターン形成し、絶縁保護膜10を形成することで、前記ゲート側の実装電極3a上にはゲート絶縁膜4及び絶縁保護膜10が載置され、最後に該絶縁保護膜10をパターン形成して完成する薄膜トランジスタ(TFT)及び前記画素電極8が多数配置されているTFTアレイ基板11と、
液晶と、
対向電極を備えた対向基板と、
シール剤とを組み合わせ、
前記TFTアレイ基板11と前記対向基板とを前記画素電極8と前記対向電極とが対向するように前記液晶を挟んで対向させ前記シール剤で両基板を貼り付けて前記液晶を封止するものであり、
ゲート側の実装電極3a部にTAB実装を施した後、シリコン樹脂16をTAB実装周囲に塗布、硬化させて完成する液晶表示装置であって、
前記実装電極3aまで引き出されているゲート配線3は、その信号線側から、ゲート絶縁膜4及び絶縁保護膜10によって、前記ゲート配線3の延在方向に及んでTAB実装周囲に塗布、硬化させたシリコン樹脂16配置箇所まで被われていて、
実装電極3aであるAl膜面を露出させた状態でTAB実装を施して高温高湿環境に曝される部分でAlが消失し断線に至るものがあるという課題がある液晶表示装置。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。

(ア)引用発明の「液晶」、「TFTアレイ基板11」、「対向電極を備えた対向基板」、「対向させ」、「基板1上」、「絶縁保護膜10」、「薄膜トランジスタ(TFT)」、「ゲート配線3」、「シール剤」、「ゲート絶縁膜4」、「シリコン半導体層5」、「絶縁保護膜10」、「実装電極3a」、「シリコン樹脂16」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、本願補正発明の「液晶」、「一方の基板」、「他方の基板」、「対向配置され」、「液晶側の面」、「保護膜」、「薄膜トランジスタ」、「画素に信号を供給する信号線」、「シール剤」、「『第1絶縁膜』及び『薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜』」、「薄膜トランジスタを構成する半導体層」、「第2絶縁膜」、「端子部」、「有機樹脂」及び「液晶表示装置」に相当する。

(イ)引用発明の「薄膜トランジスタ(TFT)及び画素電極8が多数配置されている」それぞれの領域が、本願補正発明の「画素」に相当することが当業者に自明であり、引用発明の「薄膜トランジスタ(TFT)及び画素電極8が多数配置されている」領域が、本願補正発明の「画素領域」に相当することも当業者に自明である。

(ウ)引用発明の「前記TFTアレイ基板11と前記対向基板とを前記画素電極8と前記対向電極とが対向するように前記液晶を挟んで対向させ前記シール剤で両基板を貼り付けて前記液晶を封止する」際に、「薄膜トランジスタ(TFT)及び前記画素電極8が多数配置されている」領域を囲うようにしてシール剤を形成することが当業者に自明であるから、引用発明は、本願補正発明の「前記一方の基板と他方の基板の間に前記画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され」る事項を備えている。

(エ)引用発明の「前記実装電極3aまで引き出されているゲート配線3」は、「ゲート絶縁膜4」によって被われていて、該「ゲート絶縁膜4」は「薄膜トランジスタ(TFT)」の「ゲート絶縁膜4」と同じ膜であるから、引用発明は、本願補正発明の「前記第1絶縁膜は、薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜と同一の材料で形成されている」事項を備えているといえる。

(オ)引用発明の「ゲート配線3」は、その延長端部に引き出され同ゲート材で「ゲート側の実装電極3a」を配置するから、引用発明の「ゲート配線3」と本願補正発明の「信号線」とは「前記画素領域から・・・前記一方の基板の端子部まで延在され」ている点で一致する。

(カ)したがって、両発明は、
「液晶を介して対向配置された基板のうち一方の基板の液晶側の面に保護膜で被われた薄膜トランジスタを備えた複数の画素により構成される画素領域を有し、
前記画素領域のそれぞれの画素に信号を供給する信号線を形成し、
前記一方の基板と他方の基板の間に前記画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され、
前記信号線は前記画素領域から前記一方の基板の端子部まで延在され、
該延在される信号線は、その信号線側から第1絶縁膜及び第2絶縁膜によって、前記信号線の延在方向に及んで前記端子部の周辺に配置された有機樹脂の配置箇所まで被われており、
前記第1絶縁膜は、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜と同一の材料で、延在されて形成されている液晶表示装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

相違点:
本願補正発明においては、(a)前記信号線は「前記シール剤を越えて」延在しており、(b)そのシール剤を超えて延在される信号線を被っている層が「第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜」で、「それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている前記保護膜と同一の材料」であり、(c)その被われている範囲は「前記シール剤の外側であって、前記他方の基板端から前記信号線の延在方向に及んで」おり、その被っている層すべては「前記シール剤の下側から延在されて形成されている」のに対して、
引用発明においては、前記延在される信号線を被っている層が「第1絶縁膜及び第2絶縁膜」であり、「半導体膜」では被われていないから上記(b)のようになっておらず、前記シール剤が配置される具体的場所や前記他方の基板がどこまで存在するのかが不明であるから上記(a)、(c)のようになっているのか否か不明である点。

(4)判断

上記相違点について検討する。

相違点(a)について:

(ア)引用発明において、「前記信号線は前記画素領域から前記一方の基板の端子部まで延在され」、かつ「画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され」ているから、前記信号線は「前記シール剤を越えて」延在することが明らかである。

相違点(b)について:

(イ)「液晶表示装置に用いる薄膜トランジスタアレイ基板であって、画素領域から基板の端子部まで延在される走査信号線が、その走査信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって被われている走査信号線であって、その第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜は、それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている保護膜と同一の材料である走査信号線が形成されている薄膜トランジスタアレイ基板」は本願出願前に周知である(例.特開平6-250211号公報(段落0077?0082及び図28?図31、段落0083?0093及び図32?図35参照。)、特開平7-120782号公報(段落0003、段落0035?0036、図15及び図16、段落0037?0038、図15及び図17、参照。)、特開平9-236827号公報(段落0022?0031及び図27?図33参照。))。

(ウ)上記(イ)の周知技術は、「走査信号線(ゲート線)に同時にTFTを内蔵させる」こと(上記特開平6-250211号公報の段落0008及び0009、上記特開平7-120782号公報の段落0057参照。)、「ゲート絶縁膜が必ず覆うべき部分、すなわちゲート線およびゲート電極も保護膜および半導体で覆い、保護膜をエッチングするときパッド上部の保護膜もエッチングしてパッドが露出され得るようにする」こと(上記特開平9-236827号公報の段落0010?0013及び0040参照。)などにより、大幅に工数を低減させることができるから、引用発明の薄膜トランジスタ(TFT)及びゲート配線3の構造として、上記(イ)の周知技術の構造を採用し、大幅に工数を低減させることができる構造のTFTアレイ基板となすことには十分な動機があるといえる。
そして、上記(イ)の周知技術を採用した結果、そのシール剤を越えて(上記(ア)参照。)延在される信号線を被っている層が「第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜」で、「それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている前記保護膜と同一の材料」であるものとなることが明らかである。

相違点(c)について:

(エ)引用発明は、実装電極3aであるAl膜面を露出させた状態でTAB実装を施して高温高湿環境に曝される部分でAlが消失し断線に至るものがあるという課題があることを認識しているから、前記信号線が前記画素領域からシール剤を越えて(上記(ア)参照。)一方の基板の端子部まで延在されているとき、実装電極3a以外の箇所でも保護膜を無くして高温高湿環境に曝される部分をさらに設けることは避けるべきであることが当業者に自明である。
また、保護膜で被われた信号線が、「シール剤の外側であって、他方の基板端から前記信号線の延在方向に及んでおり、その被っている層すべては、前記シール剤の下側から延在されて形成されている液晶表示装置の薄膜トランジスタアレイ基板」は本願出願前に周知である(特開平2-68524号公報(5頁右下欄7?18行及び第7図参照。)、特開平7-84270号公報(段落0020?0023、図3、段落0024?0031、図4、段落0034?0043及び図1参照。))。

(オ)上記(ア)?(エ)によれば、引用発明において、前記信号線は前記画素領域から前記シール剤を越えて前記一方の基板の端子部まで延在しており、該シール剤を超えて延在される信号線は、その信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって、前記シール剤の外側であって、前記他方の基板端から前記信号線の延在方向に及んで被われており、前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜は、それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている前記保護膜と同一の材料で、前記シール剤の下側から延在されて形成されているようにすることは、引用発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

本願補正発明の効果について:

(カ)本件補正後の明細書に記載されている「第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁層は、各画素を形成する際に並行して形成することができることから、製造工程の増大をもたらすことがない」(段落0005)という効果は、上記(イ)の周知技術から(上記(ウ)参照。)、当業者が予測できたものである。

(キ)導電膜を被う膜を複数にすることによりピンホールが生じてもその影響を少なくできることは、液晶表示装置の技術分野において周知の技術事項である(例.特開平3-38620号公報(3頁右下欄6行?4頁左上欄15行、4頁左下欄14行?同頁右下欄7行、5頁右下欄11行?6頁右下欄5行、第1図及び第2図参照。)、特開平3-38621号公報(3頁左下欄13行?4頁左上欄2行、4頁右上欄9?15行、同頁右下欄3行?6頁左上欄7行、第1図及び第2図)、特開平3-72320号公報(3頁右下欄16行?4頁右上欄5行、同頁右下欄10?20行、5頁右下欄17行?8頁左上欄3行、第1図及び第2図参照。))。

(ク)本件補正後の明細書に記載の「延在される信号線を第1の絶縁膜、半導体膜、及び第2絶縁膜の順次積層体によって被うことによって、第1の絶縁膜、半導体膜、及び第2絶縁膜のそれぞれにピンホール等の欠陥が生じていても、それらの欠陥の箇所が信号線上において重なりあることは極めて希となる」(段落0004参照。)といった作用効果は、上記(キ)の周知の技術事項及び上記(イ)の周知技術から当業者が予測できたものである。

(ケ)よって、本願補正発明の効果は、引用発明、及び上記各周知技術及び上記(キ)の周知の技術事項から、当業者が予測することができた程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

平成17年10月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年6月27日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

「【請求項1】
液晶を介して対向配置された基板のうち一方の基板の液晶側の面に複数の画素により構成される画素領域を有し、
前記画素領域のそれぞれの画素に信号を供給する信号線を形成し、
前記一方の基板と他方の基板の間に前記画素領域を囲うようにしてシール剤が形成され、
前記信号線は前記画素領域から前記シール剤を越えて前記一方の基板の端子部まで延在され、
該シール剤を越えて延在される信号線は、その信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって、前記端子部の周辺に配置された有機樹脂の配置箇所まで被われていることを特徴とする液晶表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断

本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜」に関する限定事項である「前記第1絶縁膜、前記半導体層、及び前記第2絶縁膜は、それぞれ、該薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜、半導体層、及び前記薄膜トランジスタを被っている前記保護膜と同一の材料で、前記シール剤の下側から延在されて形成されている」との限定を省き、「『シール剤を超えて延在される信号線』が『その信号線側から第1絶縁膜、半導体層、及び第2絶縁膜によって、』『前記端子部の周辺に配置された有機樹脂の配置箇所まで被われて』いる」の限定事項である「前記シール剤の外側であって、前記他方の基板端から前記信号線の延在方向に及んで」との限定を省くとともに、「複数の画素」の限定事項である「保護膜で被われた薄膜トランジスタを備えた」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例に記載された発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-15 
結審通知日 2007-11-20 
審決日 2007-12-03 
出願番号 特願平11-81094
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 里村 利光
三橋 健二
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 秋田 収喜  

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