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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1172329
審判番号 不服2005-22527  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-22 
確定日 2008-02-07 
事件の表示 特願2004-338323「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-204284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年11月24日(優先権主張平成15年12月19日)の出願であって、平成17年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年12月21日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年12月21日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、平成17年6月20日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された、
「【請求項1】
操作部を有する筐体を備えた携帯電話機において、
前記筐体が、前記操作部に隣接した位置に、該操作部から離れる方向で且つ下り方向に傾斜した第1の斜面と、該第1の斜面よりも該操作部からさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜した第2の斜面とを有する溝を有し、
前記溝内に、指紋を検出するスイープ型指紋センサを配備し、
前記第1の斜面の長さが前記第2の斜面の長さより短い長さであることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「本願発明」という。)を、
「【請求項1】
操作部を有する筐体を備えた携帯電話機において、
前記筐体が、前記操作部に隣接した位置に、該操作部から離れる方向で且つ下り方向に傾斜し指がその表面を移動する第1の斜面と、該第1の斜面よりも該操作部からさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜し当該指がその表面を移動する第2の斜面とを有する溝を有し、
前記溝内に、指紋を検出するスイープ型指紋センサを配備し、
前記第1の斜面の長さが前記第2の斜面の長さより短い長さであることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「補正後発明」という。)に変更することを含むものである。
なお、下線部は、本願発明に対する実質的な補正箇所である。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、本願発明の「第1の斜面」及び「第2の斜面」について、「指がその表面を移動する」との限定を行い、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2-1)補正後発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で「補正後発明」として認定したとおりである。

(2-2)引用発明
(2-2-1)参考1
原審の拒絶の理由において、参考として挙示された、インターネットによって検索した電子的技術情報のアドレスである「http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/03/whatnew1218.html」(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ報道発表資料)には、概ね以下の「a.」ないし「d.」の事項が掲載されている。

a.「FOMA「900iシリーズ」を開発
-ムーバを超えたケータイへ-
<2003年12月18日>」

b.「NTTドコモ及びNTTドコモグループ8社は、2004年の年明け以降に発売を予定しているFOMAの新シリーズを開発いたしました。これに伴い、本シリーズの名称を新たに「900iシリーズ」といたします。」

c.「■F900iの主な特長および仕様(予定)」

d.「F900i」の開状態の写真

よって、これらの掲載事項及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、本願出願の優先権主張日前である平成15年12月18日には、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモから発売予定である「F900i」が公然知られたものであると認められる。

(2-2-2)参考2
同じく、原審の拒絶の理由において、参考として挙示された、インターネットによって検索した電子的技術情報のアドレスである「http://www.itmedia.co.jp/mobile/0312/18/n_f900.html」(アイティメディア株式会社)には、概ね以下の「a.」ないし「d.」の事項が掲載されている。

a.「進化した指紋センサー付き「F900i」

FOMA初となる指紋センサーは、指を滑らせるスイープ型。設置面積が小さいだけでなく、認識率も向上した。」

b.「 特徴的なのは、「F505i」からさらに進化した指紋センサーだ。面に押し当てるタイプから、指を滑らせるスイープタイプに変更され、認識率が向上。」

c.「指紋センサーの精度も向上した」との文の上の「F900i」の写真

d.上記「c.」の写真の右隣に、「第一関節をセンサーに合わせ指を押し当てながらスライドさせてください」との文が記載された画面イメージの写真

前記「c.」の写真の掲載事項によれば、「F900i」の筐体は、
(c1) 「0」や「♯」等の押しボタンを有すること、
(c2) 該(c1)の「押しボタン」に隣接した位置に、「押しボタン」から離れる方向で且つ下り方向に傾斜する斜面を有しており、それを「第1の斜面」と称することは任意であること、
(c3) 前記(c2)の斜面よりも前記(c1)の押しボタンからさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜する斜面を有しており、それを「第2の斜面」と称することは任意であること、
(c4) 前記(c2)及び(c3)の斜面により構成される部位を有すること、
(c5) 前記(c4)の部位は、指紋を読み取るための部位であることは自明であり、そこには、上記「a.」及び「b.」の記載によれば、指を滑らせるスイープ型の指紋センサーが配備されていること、が掲載されている。
さらに、前記「d.」の写真によれば、前記(c4)の部位の表面を指をスライドさせて指紋を読み取ること、が掲載されている。

よって、これらの掲載事項及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、「F900i」は、以下の構成を備えているものと認められる。

「押しボタンを有する筐体を備えたF900iにおいて、
前記筐体が、前記押しボタンに隣接した位置に、該押しボタンから離れる方向で且つ下り方向に傾斜し指がその表面をスライドする第1の斜面と、該第1の斜面よりも該押しボタンからさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜し当該指がその表面をスライドする第2の斜面とを有する部位を有し、
前記部位内に、指紋を検出するスイープ型の指紋センサーを配備するF900i。」

したがって、上記(2-2-1)及び(2-2-2)によれば、本願出願の優先権主張日前である平成15年12月18日には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が公然知られたものであると認められる。

(引用発明)
「押しボタンを有する筐体を備えたF900iにおいて、
前記筐体が、前記押しボタンに隣接した位置に、該押しボタンから離れる方向で且つ下り方向に傾斜し指がその表面をスライドする第1の斜面と、該第1の斜面よりも該押しボタンからさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜し当該指がその表面をスライドする第2の斜面とを有する部位を有し、
前記部位内に、指紋を検出するスイープ型の指紋センサーを配備するF900i。」

(2-3)対比
補正後発明と、引用発明を対比する。

引用発明の「F900i」は、携帯電話機の一種であり、
引用発明の「押しボタン」は、数字等の入力操作に用いられるものであるから、「操作部」ということができ、
補正後発明の「指がその表面を移動する」ことと、引用発明の「指がその表面をスライドする」ことには、実質的な差異はなく、
引用発明の「部位」は、下り方向に傾斜した「第1の斜面」と上り方向に傾斜した「第2の斜面」とを有するものであって、その態様は、「溝」ということができ、
引用発明の「スイープ型の指紋センサー」は、補正後発明の「スイープ型指紋センサ」に相当する。

したがって、補正後発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違する。

(一致点)
「操作部を有する筐体を備えた携帯電話機において、
前記筐体が、前記操作部に隣接した位置に、該操作部から離れる方向で且つ下り方向に傾斜し指がその表面を移動する第1の斜面と、該第1の斜面よりも該操作部からさらに離れる方向で且つ上り方向に傾斜し当該指がその表面を移動する第2の斜面とを有する溝を有し、
前記溝内に、指紋を検出するスイープ型指紋センサを配備した携帯電話機。」

(相違点)
「第1の斜面」と「第2の斜面」のそれぞれの長さの相対的な関係について、補正後発明は、第1の斜面の長さが第2の斜面の長さより短い長さであるのに対し、引用発明は、不明である点。

(2-4)判断
そこで、上記相違点について検討するに、「第1の斜面」と「第2の斜面」のそれぞれの長さの相対的な関係は、「第1の斜面が第2の斜面より短い」、「第1の斜面が第2の斜面より長い」及び「第1の斜面と第2の斜面が同一の長さ」の3つのみが想定されるところ、補正後発明は、その中で「第1の斜面が第2の斜面より短い」ものを選択したものであって、適宜選択し得る設計的な事項に過ぎず、さらにいえば、例えば、原審において周知例として挙示された、特開2001-256470号公報(特に、図1、図3、図4参照)に記載されているように、指紋照合機において、指先側の斜面の長さを指元側の斜面の長さよりも短くすることは周知技術であるから、補正後発明は、引用発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、上記相違点に係る変更によって、格別な作用・効果を奏するものともいえない。

したがって、補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(2-5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成17年12月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 平成17年12月21日付けの手続補正について」の「1.補正後の本願発明」の項において、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 平成17年12月21日付けの手続補正について」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「(2-2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成17年12月21日付けの手続補正について」の「2.補正の適否」の「(1)新規事項の有無、補正の目的要件」の項で検討したように、補正後発明から、「第1の斜面」及び「第2の斜面」について、「指がその表面を移動する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件に、さらに限定要件を付加したものに相当する補正後発明が、上記「第2 平成17年12月21日付けの手続補正について」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項で検討したように、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も同様の理由により、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明に関する作用・効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-27 
結審通知日 2007-12-04 
審決日 2007-12-17 
出願番号 特願2004-338323(P2004-338323)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土谷 慎吾永田 義仁  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 梶尾 誠哉
土居 仁士
発明の名称 携帯電話機  
代理人 山田 正紀  
代理人 三上 結  

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