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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680216 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1172995
審判番号 無効2007-800094  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-15 
確定日 2008-01-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2831984号発明「パチンコゲーム機の管理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2831984号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願からの主だった経緯は次のとおりである。

・平成1年12月28日 親出願である特願平1-344380号の出願
・平成8年12月19日 本件出願(上記特願平1-344380号の一部 を新たな特許出願としたもの)
・平成10年9月25日 本件出願が特許第2831984号として設定登 録(請求項1)
・平成19年5月15日 請求人より本件審判請求
・同年 7月30日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
・同年 9月 6日 請求人より弁駁書提出
・同年 9月13日 当審にて(弁駁書に対し)補正許否の決定
・同年 10月18日 被請求人より答弁書提出

第2.訂正の適否
被請求人は、平成19年7月30日の訂正請求により、本件特許明細書の訂正を請求しているので、この訂正の適否について検討する。
1.訂正の内容
平成18年7月30日の訂正請求の内容は、以下の訂正事項のとおりである。
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「パチンコゲーム機側」を「動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側」と訂正する。

・訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の「アウト玉数信号及びセーフ玉数信号」を「アウト玉数信号、セーフ玉数信号、及び特賞信号、」と訂正する。

・訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1の「個々のパチンコゲーム機についての前記管理用データ」を「個々のパチンコ機について前記特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データ」と訂正する。

・訂正事項d
段落0005の「パチンコゲーム機側」を「動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側」と訂正する。

・訂正事項e
段落0005の「アウト玉数信号及びセーフ玉数信号」を「アウト玉数信号、セーフ玉数信号、及び特賞信号、」と訂正する。

・訂正事項f
段落0005の「個々のパチンコゲーム機についての前記管理用データ」を「個々のパチンコ機について前記特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データ」と訂正する。

・訂正事項g
段落0006の「個々のパチンコゲーム機についての前記管理用データ」を「個々のパチンコ機について特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データ」と訂正する。

2.訂正の適否の判断
・訂正事項aについて
当該訂正は、「パチンコゲーム機」について「動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、これは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

・訂正事項bについて
当該訂正は、収支演算の基となる信号について「特賞信号」を含むものと限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、これは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

・訂正事項cについて
当該訂正は、「管理用データ」について「特賞状態の発生及び終了毎の」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、これは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

・訂正事項d、e、f、gについて
当該訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴い、記載を整合するため発明の詳細な説明を訂正をするものであり、明瞭でない記載の釈明に当り、又、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

以上のとおりであるから、上記各訂正は、特許法134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条5項において準用する同法126条3項及び4項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

第3.本件発明
第2に記載のとおり、上記各訂正が認められたので、特許第2831984号に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。
「【請求項1】 動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数信号、セーフ玉数信号、及び特賞信号、並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機側から出力される貸出信号に基づいてパチンコゲーム機の収支演算を行うようにしたパチンコゲーム機の管理装置において、
前記各玉数信号に基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況を示す管理用データを演算する管理用データ演算手段と、
前記貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況を示す売上データを演算する売上データ演算手段と、
個々のパチンコゲーム機について前記特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データに対して当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機についての前記売上データを組み合わせた履歴データを作成して出力するデータ処理手段とを備えたことを特徴とするパチンコゲーム機の管理装置。」

第4.当事者の主張
1.請求人の主張の概略
請求人は、審判請求書において、本件発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、本件特許発明は甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとの理由を挙げて、特許法123条1項2号の規定により無効とされるべきである、と主張した。
その後、平成19年9月6日付け弁駁書において、甲第5号証を追加するとともに、無効の理由を、本件特許発明は甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである、と補正した。そして、当該補正は許可された(平成19年9月13日「補正許否の決定」を参照)ので、無効審判請求人の主張は次のとおりである。

本件特許発明は、甲第1号証と甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法123条1項2号の規定により無効とすべきである。

<証拠方法>
(1)甲第1号証:特開昭62-379号公報
(2)甲第5号証:特開平1-303175号公報

なお、平成19年9月6日付け弁駁書において、甲第4号証を提出しているが、これは甲第1号証の第9図に加筆したものであって「参考図面」であるので、甲第1号証に含めて検討を行う。

2.被請求人の主張の概略
被請求人は、平成19年7月30日及び10月18日に提出された答弁書において、概略、次のように主張している。
・甲第1号証に記載の発明は、新機種の試打データの収集を効率良く行うことを目的としたパチンコ遊技機のデータ集計装置である。
・甲第1号証には、特賞状態と管理用データ及び売り上げデータとを対応させた履歴データが記載されておらず、特賞状態の発生及び終了毎の管理用データつまり特賞状態の発生時点及び終了時点を区切りとする各区間毎の管理用データについても記載されていない。
・甲第5号証には特賞状態の各期間における管理用データを記憶することは記載されているが、特賞状態でない期間における管理用データを記憶することは記載されていない。つまり、甲第5号証には、特賞状態の終了毎の管理用データは記載されているが、特賞状態の発生及び終了毎の管理用データ及びそれに組み合わされる売上データは記載されていない。
・甲第1号証及び甲第5号証には、特賞状態の発生及び終了毎の管理用データが記載されていないため、甲第1号証記載の発明に甲第5号証の発明を適用しても、パチンコホールにとっての利益情報(非特賞期間)と損失情報(特賞期間)とを個別に対比させ得る履歴データを作成することができない。甲第1号証記載の発明と甲第5号証記載の発明とを組み合わせたとしても当業者が本件発明を容易に発明することができない。
・本件発明は、特許法123条1項2号の規定により無効にされるべきではなく、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

第5.当審の判断
1.甲号証の記載事項
(a)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が図面と共に記載されている。
・記載事項1-1
「[利用分野]この発明は、データ集計システムに関し例えば複数個のパチンコ遊技機のデータ収集及び集計を自動的に行うシステムに利用して有効な技術に関する。」(1頁右下欄16?20行)

・記載事項1-2
「この遊技領域の中央には、ゲーム装置としての可変表示装置4が、またその下方には通常は遊技領域の一部を成しているが、可変表示装置4における特定態様の発生により入賞領域に変換する特別変動入賞装置5が設けられている。」(2頁右下欄18行?3頁左上欄3行)

・記載事項1-3
「自動的に可変表示が停止され、そのとき表示されている数字の組合せによって特定態様が発生される。
特定態様が発生すると、特別変動入賞装置5が開状態に変換されてそこへの入賞確率がゼロから非常に高い状態に移行される。その結果、比較的短い時間内に多数の入賞球が発生し、多くの商品球が遊技者に与えられるようになる。」(3頁右下欄7?14行)

・記載事項1-4
「賞球導出路122の後側には、制御装置を載せた制御基板130が着脱可能に取り付けられている。」(5頁左上欄15?17行)

・記載事項1-5
「ここまでの構成は、パチンコ遊技店に設置される遊技機と同じ構成である。しかして、この実施例のシステムでは、データ採集の対象となる遊技機の一側(ヒンジ側)に沿って貸玉装置40が配設されている。」(5頁右上欄2?6行)

・記載事項1-6
「貸玉装置40内には、貸玉数を検出するための検出器が設けられている。」(5頁左下欄2?4行)

・記載事項1-7
「上記のような構成の貸玉装置40は、通常パチンコ遊技店において遊技機と遊技機との間に配設されているハンバーガと呼ばれる貸玉機と同じ構造もしくはこれを利用してその排出口にシャッターの代わりに上記ノズル42を取り付けてやることにより容易に構成することができる。」(5頁左下欄5?10行)

・記載事項1-8
「遊技機の背面下部には、アウト口10から回収されたアウト玉および各入賞口より入賞して入賞球制御器112を動作させた後の入賞球を回収玉として検出する検出器34を内蔵した回収玉処理装置80が設けられている。」(6頁右上欄13?17行)

・記載事項1-9
「作動樋114の流下端部の下方には、入賞球制御器112を動作させた入賞球を検出するセーフ玉検出器35が設けられている。」(6頁右上欄20行?左下欄2行)

・記載事項1-10
「パチンコ遊技機とその周辺の補助装置に対応して、各遊技機ごとに制御状態報知機能を有するインタフェース・ボックス90がそれぞれ設けられ、そのインタフェース・ボックス90は、複数の遊技機を制御する収集制御機200(後述)に接続され、対応するパチンコ遊技機と収集制御機200との間の信号のインタフェースを行う。」(6頁左下欄3?10行)

・記載事項1-11
「インタフェース・ボックス90はインタフェース回路部91と駆動回路部92とからなる。インタフェース回路部91は、パチンコ遊技機に設けられた検出器31?35等合計9種類の検出信号と制御器130の特定態様の発生を知らせる信号とをレベル変換して収集制御機200に渡す」(7頁左上欄1?7行)

・記載事項1-12
「この収集制御機200はこの制御機内のタイミングと前記パチンコ遊技機周辺の補助装置(40,50,60)の動作の制御およびデータの収集を行うCPUボード210(中略)とから構成されている。」(7頁左下欄3?14行)

・記載事項1-13
「CPUボード210は、Z80のようなマイクロプロセッサ(CPU)211(中略)等からなり」(8頁右上欄6?11行)

・記載事項1-14
「上記RAM213はカウンタ機能を有しており、パチンコ遊技機に設けられている(中略)セーフ玉検出器34、回収玉検出器35等からの検出信号を検出器ごとにそれぞれ計数し、その結果を保持するようになっている。」(8頁右上欄15?20行)

・記載事項1-15
「上記ステップS7→S14→S15の動作は、遊技中に供給皿102上の球がなくなったとき、受皿103に球があれば遊技者がそれを供給皿102へ移すという作業を代替したもので、本実施例ではそのような作業を行なう装置がないので、これを玉抜装置50と貸玉装置40とで擬似的に行なうようにしたのである。従って、この場合には、ステップS15で貸玉装置40を動作させて供給皿へ補給を行なってもRAM213内の買玉数を増加させないとともに、代わりに受皿103からの抜玉数を25個だけ減少させる。」(10頁左下欄13行?右下欄3行)
・記載事項1-16
「これに対し、ステップS8で、抜玉数の残量と受皿103内の球数との和が25個以上ないと判断すると、ステップS9へ進んで、貸玉装置40を動作させて供給皿102上へ補給するとともに、買玉数の累積をその数だけ増してやる。」(10頁右下欄20行?11頁左上欄4行)

・記載事項1-17
「CPU211が上記手順に従った制御を行いながら、各種検出器からの検出信号や特別遊技態様発生信号を受け取って演算を行なって各種データを収集し、一分ごとにそのデータを集計機300に渡す。収集制御機200で収集し、集計機300へ渡すデータは、例えば買玉数,ファール玉数,セーフ玉数,アウト玉数、回収玉数,補給玉数,賞球タンク内玉数(残量),供給皿内玉数,受皿内玉数,還元玉数,抜玉数,出玉(供給皿内玉数+受皿内玉数+抜玉数),打止め数などある。」(11頁左上欄10?19行)

・記載事項1-18
「集計機300は収集制御機200から受け取った上記のような各種データを加工し、更に自ら割数(出玉÷買玉×10)やスランプ度(1分間のセーフ玉数)などのデータを演算し、例えば第9図に示すような折線グラフや第10図に示すような棒グラフを作成して、CRTディスプレイ装置330に表示したり、プリンタ340によって印字するようになっている。(11頁右上欄15行?左下欄2行)

・記載事項1-19
「上記実施例では、遊技機自体に切替シャッター72を除きテストのために特別な装置はほとんど設けられないので、遊技店での遊技状態に近い状態で稼働テストを行えるため、極めて正確なデータを収集することができる。」(11頁左下欄14?18行))

・記載事項1-20
第9図、第10図において、グラフのX軸には「0:10」、「0:20」等が付されていると共に、Y軸(「機種名」の下の縦線)に記載された「買玉」から右方向へ延びる直線上で、3個所で短い縦線が描かれている。
また、第9図、第10図の上部には「台番号:1-0」と記載されている。

上記記載事項1-15及び1-16によれば、貸玉装置40が動作して所定条件(供給皿102上の玉がなくなり、抜玉数の残量と受皿103内の玉数との和が25個以上ない場合)の時に、RAM213に記憶した買玉数の累積が増やされるものである。
上記記載事項1-1?1-20及び図面の記載並びに当業者の常識により、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「特定態様の発生により入賞領域に変換して入賞確率が非常に高い状態に移行される特別変動入賞装置5を備え、可変表示装置4における数字の組合せによって特定態様が発生すると特別変動入賞装置5が開状態に変換されて比較的短い時間内に多数の入賞球が発生するパチンコ遊技機に、アウト口10から回収されたアウト玉および各入賞口より入賞して入賞球制御器112を動作させた後の入賞球を回収玉として検出する回収玉検出器34、入賞球を検出するセーフ玉検出器35を設けるとともに、
パチンコ遊技機の一側(ヒンジ側)に沿って配設された貸玉装置40と、
貸玉装置40が動作して所定条件の時に記憶した買玉数の累積が増やされるRAM213と、
各種検出器からの検出信号や特別遊技態様発生信号を受け取って一分毎に集計機300に渡すCPU211を有する収集制御機200と、
収集制御機200から受け取った各種データを加工し、データを演算する集計機300とからなるパチンコ遊技機のデータ集計システムにおいて、
集計機300は、セーフ玉数、アウト玉数の検出信号を加工し、割数(出玉÷買玉×10)やスランプ度(1分間のセーフ玉数)などのデータを演算し、買玉の項目を付した折線グラフや棒グラフを作成して、CRTディスプレイ装置330に表示したり、プリンタ340によって印字する、
パチンコ遊技機のデータ集計システム。」

(b)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が図面と共に記載されている。
・記載事項2-1
「1.パチンコ玉の打込みに応じて特定状態を呈したときに動作されて入賞率を高めた状態を所定の条件が成立するまで保持する電気役物を備えたパチンコゲーム機を、そのパチンコゲーム機からの信号により得た管理用データに基づいて集中的に管理するための装置において、前記パチンコゲーム機側に設けられ前記電気役物の動作期間中検知信号を発生する信号発生手段と、前記パチンコゲーム機からの信号を前記検知信号が出力された期間と出力停止された期間とに分類しながら前記管理用データの演算を行なう演算手段とを備えたことを特徴とするパチンコホール用集中管理装置。」(特許請求の範囲)

・記載事項2-2
「ところで、このようなパチンコゲーム機にあっては、特賞発生時と非発生時とでその出玉特性が大幅に異なるものであり、従ってその釘調整を行なう場合には、前記管理用データを、特賞状態にない期間と特賞状態にある期間とに区分して得ることが、その釘調整を緻密に行なう上で望ましい。」(2頁左上欄5?10行)

・記載事項2-3
「4はパチンコゲーム機1の背面下部に設けられた第1の計数器で、この第1の計数機4は、パチンコゲーム機1の盤面1aに打込まれたパチンコ玉(以下、アウト玉と称する)を計数するように設けられており、一定数(例えば10個)のアウト玉を計数する毎に1個の計数パルスP1を発生する。」(2頁左下欄19行?右下欄5行)

・記載事項2-4
「28は信号発生手段10からの検知信号Sdを前記インバータ27を介して書込み端子Wに受けるように設けられた記憶回路で、これは書込み端子Wに対する入力が立上がる毎(検知信号Sdが消失する毎)に減算回路25の演算内容を順次記憶するように構成されている。従って、このように第1及び第2の補助計数回路23及び24,減算回路25,遅延回路26及び記憶回路28が設けられた結果、上記記憶回路28の各記憶内容は、電気役物6が動作された各期間(検知信号Sdが出力された各期間)におけるアウト玉数及びセーフ玉数の差(差玉数)、換言すれば電気役物6が動作された特賞状態期間中において放出されたパチンコ玉数に相当したものとなる。」(3頁右下欄18行?4頁左上欄12行)

・記載事項2-5
「記憶回路20,28の記憶内容及び数値信号S5,S8(夫々電気役物6が動作された期間の出玉率,電気役物6が動作停止された期間の出玉率を示す)は、他のデータと共に必要に応じて印字或は表示器に表示されるようになっている。」(4頁左下欄3?8行)

・記載事項2-6
「上記した本実施例によれば、電気役物6が動作された期間(特賞期間)における出玉率を示す数値信号S5と、電気役物6が動作されていない期間(特賞状態以外の期間)における出玉率(電気役物に設けられた入賞孔6b,6c,6d以外の入賞孔7,8,9及び11による出玉率)を示す数値信号S6とを得ることができる。」(4頁左下欄9?15行)

2.対比
本件発明と引用発明1を比較する。
引用発明1の「パチンコ遊技機」、「貸玉装置40」は、それぞれ本件発明の「パチンコゲーム機」、「玉貸機」に相当する。
そして、引用発明1について、以下のことがいえる。
(1)「特定態様の発生により入賞領域に変換して入賞確率が非常に高い状態に移行される特別変動入賞装置5を備え、可変表示装置4における数字の組合せによって特定態様が発生すると特別変動入賞装置5が開状態に変換されて比較的短い時間内に多数の入賞球が発生するパチンコ遊技機」について
一般に、本件出願前、いわゆるデジパチタイプのパチンコゲーム機又は遊技機において、始動口へ遊技球が入ると乱数による抽選が行われ、抽選の結果大当り(特賞)となった場合、可変表示装置における数字の組み合わせによる表示が行われた後、「可動入賞装置」である大入賞口が開放し、「可動入賞装置」への短時間での大量の入球により遊技者が大量の賞球を得ることができるものが普通である。また、その場合に「可動入賞装置」としては電動のもの(電気役物)を用いることも普通に行われていたことであり、それが開放している時を動作状態と言うことができる。
そうすると、引用発明1の「特別変動入賞装置5」は「通常は遊技領域の一部を成しているが、可変表示装置4における特定態様の発生により入賞領域に変換する」ものであるから上記「可動入賞装置」であって本件発明の「電気役物」に相当し、引用発明1の「入賞領域に変換して入賞確率が非常に高い状態に移行される」は大当りの時に開放することを意味するから本件発明の「動作状態で入賞率が極端に高くなる」に相当する。
また、引用発明1の「可変表示装置4における数字の組合せによって特定態様が発生すると」は、抽選による大当りが発生する場合のことを意味しているから、本件発明の「所定の条件が成立したときに」に相当するものである。更に、引用発明1の「特別変動入賞装置5が開状態に変換されて比較的短い時間内に多数の入賞球が発生する」は、大当りの時のパチンコ遊技機の状態を表しているから、本件発明の「電気役物を動作させる特賞状態を呈する」に相当するものである。
したがって、引用発明1は、「動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機」なる構成を実質的に具備するものである。

(2)「アウト口10から回収されたアウト玉および各入賞口より入賞して入賞球制御器112を動作させた後の入賞球を回収玉として検出する回収玉検出器34、入賞球を検出するセーフ玉検出器35を設けるとともに、パチンコ遊技機の一側(ヒンジ側)に沿って配設された貸玉装置40と、貸玉装置40が動作して所定条件の時に記憶した買玉数の累積が増やされるRAM213と、各種検出器からの検出信号や特別遊技態様発生信号を受け取って一分毎に集計機300に渡すCPU211を有する収集制御機200と、収集制御機200から受け取った各種データを加工し、データを演算する集計機300とからなるパチンコ遊技機のデータ集計システムにおいて」について
(a)回収玉検出器34及びセーフ玉検出器35はパチンコ遊技機に設けられるものである(記載事項1-14参照)。
また、各検出器は検出信号を発するもの(記載事項1-14参照)であるから、回収玉検出器34はアウト玉を含む回収玉検出信号を出力するものであり、セーフ玉検出器35はセーフ玉検出信号を出力するものである。ここで、本件発明では「アウト玉数信号」「セーフ玉数信号」となっているが、本願の発明の詳細な説明の「10個のセーフ玉が発生する毎にセーフ玉数信号たる計数パルスP2が1パルス出力される」(段落0009)との記載等からみて検出信号であることは明らかであり、この点で引用発明1の「・・検出信号」と本件発明の「・・数信号」は差異はないので、引用発明1の上記「セーフ玉検出信号」は、「セーフ玉数信号」と言い換えることができる。
引用発明1の「回収玉信号」はアウト玉と回収玉に基づくものであるから、「アウト玉数に関する信号」という点で、本件発明の「アウト玉数信号」と一致している。
したがって、引用発明1は、「パチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数に関する信号、セーフ玉数信号」なる構成を実質的に具備している。
(b)貸玉装置40は、パチンコ遊技機の一側(ヒンジ側)に沿って配設されるものであるから、パチンコ遊技機と1対1で対応して設置されたものと言うことができる。
また、RAM213に記憶された買玉数はRAM213から出力される場合に「信号」として出されることは自明であって、これは「買玉数信号」と言うことができる。そして、RAM213に記憶された買玉数は、貸玉装置40が作動した時のうち所定条件の時にその累積が増やされるものである(記載事項1-15、1-16参照)から、玉貸機に関連するデータと言うことができ、上記「買玉数信号」は、「玉貸機に関連する信号」という点で、本件発明の「玉貸機から出力される貸出信号」と一致する。
したがって、引用発明1は、「パチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機に関連する信号」なる構成を実質的に具備している。
また、買玉数は貸玉装置40が作動した時のうち特定の条件の時にその累積が増やされるものであるから、そのための演算手段を有することは自明であり、買玉数は買玉状況を示すデータであるから、引用発明1は「貸玉装置毎の買玉状況を示すデータを演算する演算手段」を実質的に具備している。 そして、引用発明1の「貸玉装置毎の買玉状況を示すデータを演算する演算手段」は、「玉貸機毎の状況を示すデータを演算する演算手段」という点で、本件発明の「貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況を示す売上データを演算する売上データ演算手段」と一致する。
(c)パチンコ遊技機に設けられた制御機130の「特定態様の発生を知らせる信号」(記載事項1-4,1-11参照)は、CPU211が受け取って演算を行う「特別遊技態様発生信号」に対応するものであるから、「特別遊技態様発生信号」は、パチンコ遊技機から出力されるものであり、本件発明の「特賞信号」に相当するものである。
したがって、引用発明1は、「パチンコゲーム機側から出力される特賞信号」との構成を実質的に具備している。
(d)収集制御機200で収集し、集計機300へ渡された各種データは、集計機300で加工されて割数などのデータが演算される(記載事項1-18参照)ものであって、「割数」は収支に関するものであるから、引用発明1は「各種信号に基づいてパチンコ遊技機の収支演算を行う」との構成を実質的に具備している。
上記(a)?(d)をまとめると、引用発明1は、「パチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数に関する信号、セーフ玉数信号及び特賞信号並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機に関連する信号に基づいてパチンコゲーム機の収支演算を行うようにしたパチンコゲーム機のデータ集計システム」なる構成及び「玉貸機毎の状況を示すデータを演算する演算手段」なる構成を実質的に具備している。

(3)「集計機300は、セーフ玉数、アウト玉数の検出信号を加工し、割数(出玉÷買玉×10)やスランプ度(1分間のセーフ玉数)などのデータを演算し、折線グラフや棒グラフを作成して、CRTディスプレイ装置330に表示したり、プリンタ340によって印字する」について
(a)「割数(出玉÷買玉×10)やスランプ度(1分間のセーフ玉数)」はパチンコ遊技機の出玉の状況を示す管理用データであることは明らかである。また、第9図、第10図上部の「台番号:1-0」との記載等からみて、1台毎に演算が行われることは明らかである。
したがって、引用発明1は、「各玉数信号に基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況を示す管理用データを演算する管理用データ演算手段」なる構成を実質的に具備している。
(b)検出信号や特別遊技態様発生信号は一分毎に集計機300に渡されるものであることを参酌しつつ、第9図、第10図を検討すると、第9図のグラフのX軸には「0:10」、「0:20」等が付されているが、これは時間を示していることは当業者にとって明らかであり、それに対応する第10図の「供給皿」及び「受皿」の棒グラフ(○を縦に並べたもの)は1分毎に、「出玉」の棒グラフ(逆台形の図形を縦に並べたもの)は5分毎に描かれていると解され、1分毎及び5分毎の上記データは、「所定時間毎の管理用データ」と言い換えることができる。そして、所定時間毎のデータを時系列に並べたものは、履歴データと言うことができる。
また、第9図及び第10図には「買玉」について特定の時点に短い縦線が引かれており、これは買玉が行われていることすなわち「買玉状況」を示していると解され、引用発明1の「買玉状況」は、「玉貸機の状況を示すデータ」という点で、本件発明の「売上データ」と一致する。
更に、データをグラフ化する際に、データを処理する手段は不可欠である。
したがって、引用発明1は、「個々のパチンコゲーム機について所定時間毎の管理用データに対して当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機の状況を示すデータを組み合わせた履歴データを作成して出力するデータ処理手段」なる構成を実質的に具備している。

(4)引用発明1の「データ集計システム」と本件発明の「管理装置」は、どちらもパチンコゲーム機の各種データを処理しているから、「データ処理装置」である点で一致している。

以上の点から、本件発明と引用発明1は次の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数に関する信号、セーフ玉数信号及び特賞信号並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機に関連する信号に基づいてパチンコゲーム機の収支演算を行うようにしたパチンコゲーム機のデータ処理装置において、
各玉数データに基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況を示す管理用データを演算する管理用データ演算手段と、
玉貸機毎の状況を示すデータを演算するデータ演算手段と、
個々のパチンコゲーム機について管理用データに対して当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機の状況を示すデータを組み合わせた履歴データを作成して出力するデータ処理手段とを備えたパチンコゲーム機のデータ処理装置。」

<相違点1>
「アウト玉数に関する信号」が、本件発明では「アウト玉数信号」であるのに対して、引用発明1では「アウト玉及び回収玉に基づく信号」である点。
<相違点2>
「玉貸機に関連する信号」が、本件発明では「玉貸機側から出力される貸出信号」であるのに対して、引用発明1では「貸玉装置が作動した時のうち特定の条件の時にその累積が増やされる買玉数信号」である点。
<相違点3>
「データ処理装置」が、本件発明では「管理装置」であるのに対し、引用発明1では「データ集計システム」である点。
<相違点4>
「玉貸機毎の状況を示すデータを演算するデータ演算手段」が、本件発明では「貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況を示す売上データを演算する売上データ演算手段」であるのに対して、引用発明1では「貸玉装置毎の買玉状況を示すデータを演算する演算手段」である点。
<相違点5>
個々のパチンコ遊技機及びこれに対応した玉貸機に関する履歴データを、本件発明では「特賞状態の発生及び終了毎の管理用データに対して玉貸機の売上データを組み合わせたもの」としているのに対して、引用発明1では「所定時間毎の管理用データに対して買玉状況を組み合わせたもの」としている点。
3.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
パチンコゲーム機において、アウト玉とは遊技台に打ち込んだ玉を指し、アウト玉数とは遊技台に打ち込んだ玉数のことを指すということは、当業者にとって常識である。なお、このことは、引用文献2において「パチンコゲーム機1の盤面1aに打込まれたパチンコ玉(以下、アウト玉と称する)」(記載事項2-3参照)と記載されていることからも、裏付けされている。
そして、引用発明1では、アウト口10から回収されたものをアウト玉とし、アウト玉及び入賞玉を回収玉として回収玉検出器34が検出している(記載事項1-8、1-14参照)が、遊技台に打ち込んだ玉はアウト口又は入賞口からパチンコ盤面外に排出されるのであるから、引用発明1の回収玉検出器34が検出しているものは上記常識における「アウト玉」であり、回収玉検出器34が発している信号すなわち回収玉信号は実質的に「アウト玉数信号」であるということができる。
したがって、本件発明と引用発明1とに、この点で実質的な差異はない。

<相違点2?4>について
相違点2?4は関連しているので、まとめて検討する。
(1)引用発明1は、その前提として、新機種を開発した場合にその遊技機の特性を明らかにして遊技店の経営者等に伝えるために、データ収集し管理用データを演算するものである。そして、引用発明1は実際の遊技店での装置、遊技状態に近い状態で稼働テストを行おうとするもの(記載事項1-5、1-19参照)であり、その際に演算されている管理用データは「割数」や「スランプ度」等の実際に遊技店の管理において用いられているものである。
一方、遊技店において各種データを収集し管理用データを得る管理装置は、甲第5号証に示されるように従来周知のものである(なお、甲第3号証も周知例とすることができる)。
したがって、引用発明1も従来周知の管理装置もパチンコゲーム機の各種データを収集し管理用データを得る点で相違はないから、引用発明1を「管理装置」として用いることにより、相違点3に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到したことである。
(2)引用発明1は、「遊技中に供給皿102上の球がなくなったとき、受皿103に球があれば遊技者がそれを供給皿102へ移すという作業(以下。「補給作業」という)を代替したもので、本実施例ではそのような作業を行なう装置がないので、これを玉抜装置50と貸玉装置40とで擬似的に行なうようにした」(記載事項1-15参照)ものであり、「抜玉数の残量と受皿103内の球数との和が25個以上ないと判断すると、ステップS9へ進んで、貸玉装置40を動作させて供給皿102上へ補給するとともに、買玉数の累積をその数だけ増してやる」(記載事項1-16参照)ものである。これは、通常の遊技店においては供給皿102上の球がなくなり受皿103に球があれば遊技者は補給作業をして遊技を続行するが、引用発明1では遊技者なしで自動的に当該行為を行うためである。そして、引用発明1では、補給作業のためにも貸玉装置を作動させているため、その作動だけでは遊技者への貸出しなのか補給作業なのか不明であるため、収集制御機200で収集し集計機300へ渡すデータである「買玉数」を得るため「貸玉装置40が作動した時のうち特定の条件の時にその累積が増やされる」ようにしているのである。したがって、遊技者がいる遊技店に引用発明1を用いた場合は、上記補給作業は不要となるので買玉数を知るためには単純に貸玉装置40の作動を検出すればよいこととなる。
一方、一般に、遊技店に設置されている貸玉装置において、その貸玉装置に検出器を設けて貸出信号を発生させ、玉貸機毎の売上状況を示す演算をし管理することは、従来周知の技術手段である(周知例として、必要ならば、甲第2号証の特開昭64-27580号公報、甲3号証の特開昭55-40586号公報、特開昭63-242289号公報を参照)。
そうすると、(1)で述べたように引用発明1を「管理装置」として用いる際に、その玉貸機を従来周知の構成のものとし、「玉貸機に関する信号」として「玉貸機側から出力される貸出信号」を用い、「玉貸機毎の貸出状況を示すデータを演算するデータ演算手段」として「貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況を示す売上データを演算する売上データ演算手段」を用いることとし、相違点2及び4に係る本件発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到したことである。

<相違点5>に対して
特賞状態のときに動作する電気役物を備えたパチンコゲーム機において、特賞状態のときと特賞状態にないときにその出玉特性が大きく異なり、特賞状態の発生及び終了を契機として出玉特性が変化することは、当業者にとって技術常識である。
そして、甲第5号証に記載された発明では、「電気役物6が動作された期間(特賞期間)における出玉率を示す数値信号S5と、電気役物6が動作されていない期間(特賞状態以外の期間)における出玉率(電気役物に設けられた入賞孔6b,6c,6d以外の入賞孔7,8,9及び11による出玉率)を示す数値信号S6とを得」(記載事項2-6参照)ているが、特に「書込み端子Wに対する入力が立上がる毎(検知信号Sdが消失する毎)に減算回路25の演算内容を順次記憶するように構成されている」(記載事項2-4参照)ことからみて特賞期間の管理データは各特賞期間毎に記憶されているものと認められる。
一方、引用発明1の履歴データは「所定時間毎の管理用データ」を基にしたものであり、所定の時間(1分毎又は5分毎)を契機として集計したものである。しかし、上記のように特賞状態の発生及び終了が出玉特性の変化にとって契機であることが常識であり、甲第5号証に記載された発明に示されるように特賞状態と非特賞状態でデータを別に演算することが出願前公知であることを参酌すると、引用発明1において管理データの集計の契機を所定の時間に代えて特賞状態の発生及び終了とすること、すなわち「特賞状態の発生及び終了毎の管理用データ」を履歴データの基とすることは当業者であれば容易に想到したことである。
また、「<相違点2?4>について」で示したように玉貸機毎の売上状況を示す演算をし管理することが従来周知であることから、引用発明1において、管理用データに組み合わされる「買玉状況」を「玉貸機の売上データ」とすることも当業者であれば容易に想到したことである。
したがって、引用発明1において、甲第5号証に記載された発明、周知技術、技術常識を考慮すれば、履歴データを「特賞状態の発生及び終了毎の管理用データに対して玉貸機の売上データを組み合わせたもの」とし、相違点5に係る本件発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到したことである。

以上のとおりであるから、相違点1は実質的に相違点ではなく、相違点2?5に係る本件発明の構成とすることが当業者にとって容易想到であり、これらの構成によって格別の作用効果を認めることもできない。

第6.むすび
以上のとおり、本件発明は引用発明1、甲第5号証に記載された発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであって、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコゲーム機の管理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数信号、セーフ玉数信号、及び特賞信号、並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機側から出力される貸出信号に基づいてパチンコゲーム機の収支演算を行うようにしたパチンコゲーム機の管理装置において、
前記各玉数信号に基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況を示す管理用データを演算する管理用データ演算手段と、
前記貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況を示す売上データを演算する売上データ演算手段と、
個々のパチンコゲーム機について前記特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データに対して当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機についての前記売上データを組み合わせた履歴データを作成して出力するデータ処理手段とを備えたことを特徴とするパチンコゲーム機の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、パチンコゲーム機の管理を、そのパチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数信号及びセーフ玉数信号並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機側から出力される貸出信号に基づいた演算により行うようにしたパチンコゲーム機の管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パチンコホールにおいては、良く知られているように、パチンコゲーム機に対し所謂釘調整を行うことによってそのパチンコゲーム機の出玉率の調節を図るようにしている。このような釘調整のためには、従来より、パチンコゲーム機における出玉状況(差玉数、出玉率、打止回数など)の推移を示す管理用データを利用することが行われており、このような管理用データの集計を複数台のパチンコゲーム機について行うための管理装置が設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、パチンコゲーム機の釘調整をより的確に行うためには、パチンコゲーム機毎の出玉状況の推移の他に、そのパチンコゲーム機と対応して設置されている玉貸機での売上状況の推移も加味することが望ましいとされている。しかしながら、従来では、このような玉貸機での売上状況を示す売上データを、前記パチンコゲーム機についての管理用データとは別のデータとして得るようにしているため、その売上データを上述したような釘調整に利用するためには、当該売上データの推移状態をパチンコゲーム機毎の出玉状況の推移状態と一々突き合わせる必要があってきわめて面倒であり、この点が未解決の課題となっていた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パチンコゲーム機の出玉状況の推移を示す管理用データと当該パチンコゲーム機と対応するように設置された玉貸機での売上状況の推移とを示す売上データとを有機的に結合させた状態で把握できるようになり、以て上記のような管理用データ及び売上データに基づいたパチンコゲーム機の釘調整を容易且つ的確に行い得るなどの効果を奏するパチンコゲーム機の管理装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、所定の条件が成立したときに前記電気役物を動作させる特賞状態を呈するパチンコゲーム機側から出力されるアウト玉数信号、セーフ玉数信号、及び特賞信号、並びにそのパチンコゲーム機と1対1で対応するように設置された玉貸機側から出力される貸出信号に基づいてパチンコゲーム機の収支演算を行うようにしたパチンコゲーム機の管理装置において、
前記各玉数信号に基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況の推移を示す管理用データを演算する管理用データ演算手段と、前記貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況の推移を示す売上データを演算する売上データ演算手段と、個々のパチンコゲーム機について前記特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データに対して当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機についての前記売上データを組み合わせた履歴データを作成して出力するデータ処理手段とを備えた構成としたものである。
【0006】
この構成によれば、パチンコゲーム機で遊技が行われている状態時には、そのパチンコゲーム機側からアウト玉数信号及びセーフ玉数信号が出力されるようになり、管理用データ演算手段が、それらの各玉数信号に基づいてパチンコゲーム機毎の出玉状況の推移を示す管理用データを演算するようになる。また、玉貸機においてパチンコ玉の貸出動作が行われたときには、当該玉貸機側から貸出信号が出力されるようになり、売上データ演算手段が、その貸出信号に基づいて玉貸機毎の売上状況の推移を示す売上データを演算するようになる。さらに、データ処理手段が、個々のパチンコゲーム機について特賞状態の発生及び終了毎の前記管理用データに対して、当該パチンコゲーム機に対応した玉貸機についての前記売上データを組み合わせた履歴データを作成して出力するようになる。
【0007】
つまり、パチンコゲーム機の出玉状況の推移を示す管理用データと当該パチンコゲーム機と対応するように設置された玉貸機での売上状況の推移とを示す売上データとを有機的に結合させたデータとして自動的に得ることができるものであり、斯様に結合された管理用データ及び売上データに基づいてパチンコゲーム機の釘調整を容易且つ的確に行い得るようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
第1図には、パチンコゲーム機の管理装置の電気的構成のうち、本発明の要旨に関連した部分のみが機能ブロックの組合わせにより示されている。但し、上記管理装置は、実際にはコンピュータにより構成されて多数台のパチンコゲーム機を集中的に管理するようになっているが、第1図では説明の便宜上1台のパチンコゲーム機に関連した機能ブロックのみを示した。
【0009】
即ち、パチンコゲーム機1からは、10個のアウト玉が発生する毎にアウト玉数信号たる計数パルスP1が1パルス出力されると共に、10個のセーフ玉が発生する毎にセーフ玉数信号たる計数パルスP2が1パルス出力される。このパチンコゲーム機1は、動作状態で入賞率が極端に高くなる電気役物を備え、遊技中に所定の条件が成立したときに上記電気役物を動作させる特賞状態を呈するようなっており、特賞状態にある期間中は特賞信号Sf(ハイレベル信号)を連続的に発生する。
【0010】
また、玉貸機2は、パチンコゲーム機1での遊技者が遊技状態のままパチンコ玉の貸出を受け得るようにそのパチンコゲーム機1と1対1で対応して設置されており、この玉貸機2からは、100円分のパチンコ玉の貸出動作を行う毎に貸出信号たる計数パルスP3が1パルス出力されるようになっている。
【0011】
上記各計数パルスP1?P3及び特賞信号Sfは、管理装置3に信号ラインを介して与えられるものであり、以下この管理装置3について述べる。
4はアウト玉数を示す計数パルスP1を入力部5を介して受けるアウト玉計数部で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP1を順次加算してその加算結果を上記初期化後におけるアウト玉数を示す数値信号N1として出力する。
【0012】
6はセーフ玉数を示す計数パルスP2を前記入力部5を介して受けるセーフ玉計数部で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP2を順次加算してその加算結果を上記初期化後におけるセーフ玉数を示す数値信号N2として出力する。
【0013】
7は減算部で、これは数値信号N1により示されるアウト玉数から数値信号N2により示されるセーフ玉数を減算し、その減算結果を各計数部4、6の初期化後におけるパチンコゲーム機1の差玉数を示す数値信号N3として出力する。
【0014】
8は上記数値信号N2に対する数値信号N1の百分率比(つまりセーフ玉数に対するアウト玉数の比)を演算する除算部で、その演算結果をパチンコゲーム機1の出玉率を示す数値信号N0として出力する。
【0015】
9は玉貸機2による貸出高を示す前記計数パルスP3を入力部10を介して受ける貸出高計数部(本発明でいう売上データ演算手段に相当)で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP3を順次加算してその加算結果を上記初期化後における貸出高をパチンコ玉数に換算して示す数値信号N4として出力する。
【0016】
そして、上述した数値信号N1は、パチンコゲーム機1のアウト玉数データとして後述する情報処理部11に入力され、同じく数値信号N3、N0及びN4は、夫々パチンコゲーム機1の差玉数データ、出玉率データ及び当該パチンコゲーム機1での遊技者が玉貸機2から貸出を受けたパチンコ玉量を示す売上データ(貸出高データ)として情報処理部11に入力される。尚、上記数値信号N0、N1、N3は、本発明でいうパチンコゲーム機1毎の管理用データに相当し、数値信号N4は本発明でいう玉貸機2毎の売上データに相当する。
【0017】
12は入力部5を経た後の計数パルスP1をトランスファゲート12aを介して受けるアウト玉計数部で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP1を順次加算してその加算結果を上記初期化後におけるアウト玉数を示す数値信号N5として出力する。尚、トランスファゲート12aは、そのゲート端子にハイレベル信号が与えられた状態でのみ信号の通過を許容するようになっている。
【0018】
13は計数パルスP2を入力部5を介して受けるセーフ玉計数部で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP2を順次加算してその加算結果を上記初期化後におけるセーフ玉数を示す数値信号N6として出力する。
【0019】
14は減算部で、これは数値信号N5により示されるアウト玉数から数値信号N6により示されるセーフ玉数を減算し、その減算結果を各計数部12、13の初期化後におけるパチンコゲーム機1の差玉数を示す数値信号N7(本発明でいう管理用データに相当)として出力する。そして、この数値信号N7は、パチンコゲーム機1における遊技者の持玉数データとして前記情報処理部11に入力される。
【0020】
15は打止設定値記憶部で、これには任意に変更可能な打止設定値Nz(負の値)が記憶されている。16は打止制御用の比較部で、これは上記打止設定値Nzと前記減算部14からの数値信号N7とを比較し、Nz≧N7の関係となったとき、つまりパチンコゲーム機1の差玉数が打止設定値Nzに達したときにパルス状の打止信号Szを出力するようになっており、この打止信号Szは前記情報処理部11のセット端子A2に対して、パチンコゲーム機1毎の管理用データの一部として与えられる。
【0021】
17は信号保持部で、これは打止信号Szが出力された時点からリセット端子Rを通じて初期化されるまでの期間その打止信号Szの出力状態を保持するように構成されている。そして、斯かる信号保持部17から打止信号Szが出力された状態では、パチンコゲーム機1へのパチンコ玉の新規供給を停止したり或はパチンコ玉発射装置の電源を遮断するなどして当該パチンコゲーム機1での遊技を禁止した打止状態に切換えられる構成となっている。
【0022】
また、18は打止回数計数部で、これは打止信号Szの出力回数を計数し、その計数結果をパチンコゲーム機1の打止回数を示すデータ(本発明でいう管理用データに相当)として記憶部19に記憶させるようになっている。
【0023】
20は打込設定値記憶部で、これには任意に変更可能な打込設定値Naが記憶されており、この実施例では打込設定値Naを零としている。21は比較部で、これは上記打込設定値Naと前記減算部14からの数値信号N7とを比較し、Na≦N7の状態時、つまりパチンコゲーム機1が打込状態(アウト玉数がセーフ玉数より多い状態)となってその差玉数が零以上あるときに、ハイレベル信号より成る打込信号Saを出力した状態を呈し、他の状態ではローレベル信号を出力した状態を呈するようになっている。そして、上記比較部21の出力は、インバータ22により反転された後に前記トランスファゲート12aのゲート端子に与えられるようになっている。
【0024】
23は外部操作に応じてリセットパルスRPを出力する開放手段で、そのリセットパルスRPによって、前記アウト玉計数部12、セーフ玉計数部13がOR回路24を通じて初期化されると共に、前記アウト玉計数部4、セーフ玉計数部6、貸出高計数部9がOR回路24、25及び遅延回路26を通じて初期化されるようになっており、また、上記リセットパルスRPにより前記信号保持部17も同時に初期化されるようになっている。尚、遅延回路26は、入力された信号を所定の短時間だけ遅延させる構成である。
【0025】
27は玉貸機2の貸出高を示す前記計数パルスP3を前記入力部10を介して受ける貸出高計数部で、これはリセット端子Rを通じて初期化されるようになっており、入力される計数パルスP3を順次加算してその加算結果を上記初期化後における貸出高を示す数値信号N8として出力する。28は基準額記憶部で、これには任意に変更可能な基準額設定値Nxが記憶されており、この実施例では基準額設定値Nxを500円相当値としている。29は比較部で、これは上記基準額設定値Nxと前記貸出高計数部27からの数値信号N8とを比較し、Nx≦N8の状態となったとき、つまり玉貸機2により500円相当量以上のパチンコ玉が貸出されたときにハイレベル信号を出力した状態を呈し、他の状態でローレベル信号を出力した状態を呈するようになっており、その出力はトランスファゲート30のゲート端子に与えられる。尚、このトランスファゲート30も、そのゲートにハイレベル信号が与えられた状態でのみ信号の通過を許容するようになっている。
【0026】
31は差玉設定値記憶部で、これには任意に変更可能な負の差玉設定値Nyが記憶されており、この実施例では差玉設定値Nyを「-1」としている。32は比較部で、これは上記差玉設定値Nyと前記減算部14からの数値信号N7とを比較し、Ny≧N7の状態時、つまりパチンコゲーム機1の差玉数が負の値にある状態では出力端子Qからハイレベル信号を出力すると共に出力端子Q′からローレベル信号を出力し、Ny<N7の状態時、つまりパチンコゲーム機1の差玉数が零若しくは正の値にある状態では出力端子Qからローレベル信号を出力すると共に出力端子Q′からハイレベル信号を出力するようになっている。
【0027】
そして、比較部32の出力端子Qからのハイレベル信号は、前記トランスファゲート30を通じて第1の検出信号S1として出力されるものであり、この第1の検出信号S1によって、前記アウト玉計数部12、セーフ玉計数部13がOR回路24を通じて初期化されると共に、前記アウト玉計数部4、セーフ玉計数部6、貸出高計数部9がOR回路24、25及び遅延回路26を通じて初期化されるようになっている。また、上記第1の検出信号S1は、情報処理部11のセット端子A3にも与えられる。
【0028】
34は第1の客交替回数計数部で、これは前記第1の検出信号S1の出力回数を計数し、その計数結果をパチンコゲーム機1における第1の客交替数(パチンコ玉の貸出を伴う遊技客の交替数)を示すデータ(本発明でいう管理用データに相当)として記憶部19に記憶させるようになっている。
【0029】
パチンコゲーム機1から出力される特賞信号Sfは、入力部35介した後にOR回路36aに対して直接並びにインバータ36bを介して入力されるようになっており、上記OR回路36aの出力は前記OR回路25に入力されるようになっている。従って、アウト玉計数部4、セーフ玉計数部6、貸出高計数部9は、特賞信号Sfの出力開始時及び出力停止時において、遅延回路26の遅延時間経過後に初期化される。また、上記OR回路36aの出力は、情報処理部11のセット端子A1に与えられるようになっている。尚、37は特賞回数計数部で、これは入力部35を介して入力される特賞信号Sfを計数し、その計数結果をパチンコゲーム機1における特賞回数を示すデータ(本発明でいう管理用データに相当)として記憶部19に記憶させるようになっている。
【0030】
前記比較部21からの打込信号Saは、トランスファゲート38のゲート端子にも入力されてこれを導通させるようになっており、このトランスファゲート38が導通された状態では、前記減算部7からの数値信号N3が3比較部39に与えられる。この比較部39は、上記数値信号N3と前記貸出高計数部9からの数値信号N4とを比較し、N3>N4の関係になった場合、つまり減算部7の初期化後における差玉数が貸出高計数部9の初期化後における玉貸機2による貸出高に対応したパチンコ玉数より多い場合には、第2の検出信号S2を出力するものであり、この第2の検出信号S2は、前記OR回路24の入力端子並びに情報処理部11のセット端子A4に与えられる。
【0031】
40は持込玉数計数部で、これは上記第2の検出信号S2が出力された時点からの前記数値信号N3の増加量を計数し、その計数結果を示す数値信号N9を遊技者による持込パチンコ玉数(他のパチンコゲーム機から持込んだパチンコ玉数)データ(本発明でいう管理用データに相当)として情報処理部11に与える。尚、この持込玉計数部40は、前記OR回路24及び36aの出力によりOR回路40aを通じて初期化されるようになっている。また、41は第2の客交替回数計数部で、これは第2の検出信号S2の出力回数を計数し、その計数結果をパチンコゲーム機1における第2の客交替数(パチンコ玉を持込んだ遊技者の交替数)を示すデータ(本発明でいう管理用データに相当)として記憶部19に記憶させるようになっている。
【0032】
尚、上述したアウト玉計数部4、12、セーフ玉計数部6、13、減算部7、14、除算部8などによって本発明でいう管理用データ演算手段33が構成されるものである。
【0033】
さて、前記情報処理部11は、前記記憶部19と共に本発明でいうデータ処理手段43を構成するものであり、そのセット端子A1?A4に立上がり信号が与えられる毎に各数値信号N0、N1、N4、N3、N7、N9を記憶部19に記憶させるという記憶制御動作を行う構成となっている。具体的には、情報処理部11は、各セット端子A1?A4に対する信号入力状態に応じて、以下▲1▼?▲4▼の動作を行う。
【0034】
▲1▼セット端子A1に立上り信号が与えられたとき、つまり特賞信号Sfの入力時及び入力停止時には、数値信号N0、N1、N3、N5、N7により示される出玉率、アウト玉数、差玉数、貸出高、持玉数の各データを記憶部19に記憶させる。
▲2▼セット端子A2に立上り信号が与えられたとき、つまり打止信号Szが出力されたときには、上記各データを打止発生を示すデータと共に記憶部19に記憶させる。
▲3▼セット端子A3に立上り信号が与えられたとき、つまり第1の検出信号S1が出力されたときには、上記各データを客交替を示すデータと共に記憶部19に記憶させる。
▲4▼セット端子A4に立上り信号が与えられたとき、つまり第2の検出信号S2が出力されたときには、上記各データ及び数値信号N9により示される持込玉数を示すデータを客交替を示すデータと共に記憶部19に記憶させる。
そして、記憶部19の記憶内容は、プリンタ42を通じてプリントアウトできるように構成されている。
【0035】
次に、上記構成の作用のうち、本発明の要旨に直接的に関連した部分についてのみ説明する。
パチンコゲーム機1で遊技が行われている状態時には、そのパチンコゲーム機1から計数パルスP1及びP2が出力され、計数パルスP1を加算するアウト玉計数部4及び12から夫々アウト玉数を示す数値信号N1及びN5が出力されると共に、計数パルスP2を加算するセーフ玉計数部6及び13から夫々セーフ玉数を示す数値信号N2及びN6が出力される。これにより、減算部7及び14は、上記数値信号N1、N2の差及び数値信号N5、N6の差を順次演算して、各演算結果を夫々パチンコゲーム機1の差玉数を示す数値信号N3及びN7として出力する。また、除算部8は、数値信号N1、N2に基づいた演算により出玉率を示す数値信号N0を出力する。
【0036】
この場合、減算部14からの数値信号N7が零以上ある状態、つまりパチンコゲーム機1が打込状態にあるときには、比較部21から打込信号Sa(ハイレベル信号)が出力されるようになり、その打込信号Saはインバータ22によりローレベル信号に反転されてトランスファゲート12aのゲート端子に与えられることになる。
【0037】
このため、トランスファゲート12aが計数パルスP1の通過を阻止するようになり、従ってパチンコゲーム機1が打込状態にある期間には、アウト玉計数部12による計数パルスP1の加算動作が停止され、これによりパチンコゲーム機1において遊技者により打込状態となったパチンコ玉数については、これが減算部14での差玉数の演算結果に反映されないようになる。この結果、パチンコゲーム機1が二以上の遊技者による遊技を経て打止に至った場合に、遊技者が獲得するパチンコ玉数が打止設定値Nzより多くなる事態が防止される。
【0038】
一方、上記数値信号N7が負の値にある状態、つまり遊技者がパチンコ玉を獲得した状態にあるときには、比較部21から打込信号Saが出力されることがないから、トランスファゲート12aが計数パルスP1の通過を許容している。この状態で、遊技者が獲得するパチンコ玉数が増加して減算部14により演算される差玉数が負の方向に増大し、以て数値信号N7が打止設定値Nzに達したときには、比較部16から打止信号Szが出力されると共に、これを信号保持部17が保持するようになるから、この打止信号Szに基づいてパチンコゲーム機1が打止状態に切換えられる。
【0039】
尚、斯かる打止状態を解除するには、開放手段23を操作してこれからリセットパルスRPを出力させ、以てアウト玉計数部12、セーフ玉計数部13及び信号保持部17を初期化すれば良い。また、上記打止信号Szは打止回数計数部18により計数され、その計数結果つまりパチンコゲーム機1の打止回数は記憶部19に記憶されるようになる。
【0040】
さて、差玉数を示す前記数値信号N7が負の値にある状態では、比較部32は、その出力端子Qからハイレベル信号を出力し、出力端子Q′からローレベル信号を出力している。この状態で、貸出高計数部27からの数値信号N8、つまり玉貸機2からの計数パルスP3の計数結果を示す数値信号N8が基準額設定値Nx(500円相当値)に達したときには、比較部29からハイレベル信号が出力されてトランスファゲート30が信号の通過を許容した導通状態となる。
【0041】
従って、数値信号N7が負の値にある状態で玉貸機2が500円相当量以上のパチンコ玉の貸出動作を行なったときには、トランスファゲート30から第1の検出信号S1が出力されて、アウト玉計数部12、セーフ玉計数部13の計数内容が初期化されるため、減算部14の計数内容が初期化されるようになる。
【0042】
ここで、前記数値信号N7が負の値にある状態、つまりパチンコゲーム機1での遊技者がパチンコ玉を獲得した状態にあるときには、当然のことながら当該遊技者は玉貸機2から500円相当量ものパチンコ玉の貸出を受けることがない。従って、数値信号N7が負の値にある状態において前述のように第1の検出信号S1が出力された場合には、これを遊技者が交替したものと判断することができる。
【0043】
即ち、斯様に第1の検出信号S1が出力されたときには、パチンコゲーム機1での遊技者交替が行われたものとして減算部14の演算内容が初期化されるものであり、これにてパチンコゲーム機1が二以上の遊技者による遊技を経て打止に至った場合に、遊技者が獲得するパチンコ玉数が打止設定値Nzより少なくなる事態を未然に防止できるようになる。尚、上記第1の検出信号S1は、第1の客交替回数計数部34により計数され、その計数結果つまりパチンコゲーム機1での第1の客交替回数は記憶部19に記憶されるようになる。
【0044】
また、減算部7からの数値信号N3により示される差玉数が貸出高計数部9からの数値信号N4により示される貸出高(玉貸機2による貸出高)に対応したパチンコ玉数より多い状態、即ち他のパチンコゲーム機1からパチンコ玉が持込まれた状態では、比較部39が第2の検出信号S2を発生し、これによりOR回路24などを通じて各計数部4、5、9、12、13が初期化されるものであり、このように検出信号S2が出力された場合には、パチンコゲーム機1において遊技者が交替したものと判断することができる。尚、上記第2の検出信号S2は、第2の客交替回数計数部41により計数され、その計数結果つまりパチンコゲーム機1での第2の客交替回数は記憶部19に記憶されるようになる。
【0045】
一方、上述のように第1の検出信号S1及びリセットパルスRPが出力された各場合には、アウト玉計数部4、セーフ玉計数部6、貸出高計数部9が遅延回路26を通じて初期化されるようになる。また、これらアウト玉計数部4、セーフ玉計数部6、貸出高計数部9は、パチンコゲーム機1から特賞信号Sfが出力開始されたとき及び出力停止されたときにも遅延回路26を通じて初期化される。従って、情報処理部11に対して与えられる数値信号N0、N1、N3及びN4、つまりパチンコゲーム機1の出玉率データ、アウト玉数データ、差玉数データ及び玉貸機2の売上データは、以下(a)?(e)の各時点からの各データを示すことになる。
【0046】
(a)パチンコゲーム機1の遊技者が交替して当該遊技者が玉貸機2から貸出を受けたパチンコ玉で遊技を開始した時点(第1の検出信号S1の出力時点)。
(b)パチンコゲーム機1の遊技者が交替して当該遊技者が他から持ち込んだパチンコ玉で遊技を開始した時点(第2の検出信号S2の出力時点)。
(c)パチンコゲーム機1の打止状態が開放手段23により解除された時点(リセットパルスRPの出力時点)。
(d)パチンコゲーム機1での特賞状態発生時点(特賞信号Sfの出力開始時点)。
(e)パチンコゲーム機1での特賞状態終了時点(特賞信号Sfの出力停止時点)。
【0047】
この場合、情報処理部11は、特賞信号Sfの出力時点及び出力停止時点、打止信号Szの出力時点、第1及び第2の検出信号S1及びS2の出力時点において、前記各数値信号N0、N1、N3、N4を減算部14からの数値信号N7、及び持込玉数計数部40からの数値信号N9、並びに打止発生を示すデータ、客交替を示すデータと共に記憶部19に記憶させる構成となっており、従って記憶部19には、前記(a)?(e)の各時点からのパチンコゲーム機1の出玉率データ、アウト玉数データ、差玉数データ及び玉貸機2の売上データが記憶されると共に、数値信号N7により示される遊技者の持玉、数値信号N9により示される遊技者による持込玉、並びに打止発生、客交替を示すデータが同時に記憶されるものである。
【0048】
そして、記憶部19の記憶内容は、プリンタ42によって例えば第2図のようにプリントアウトされるようになっている。具体的には、パチンコゲーム機1での遊技者の交替毎、打止の発生毎、特賞状態の発生及び終了毎におけるアウト玉数、差玉数、出玉率などのデータ、つまり本発明でいうパチンコゲーム機1毎の管理用データに対して、当該パチンコゲーム機1に対応した玉貸機2についての売上データを組み合わせた履歴データAがプリントアウトされるようになっている。尚、上記履歴データA中には、パチンコゲーム機1での打止回数、特賞回数、第1の客交替回数、第2の客交替回数についてのデータも含まれている。
【0049】
要するに、本実施例の構成によれば、パチンコゲーム機1の出玉状況の推移を示す管理用データと当該パチンコゲーム機1と対応するように設置された玉貸機2での売上状況の推移とを示す売上データとを有機的に結合させた履歴データ(図2に符号Aにより示す)を自動的に得ることができるものであり、斯様な履歴データに基づいてパチンコゲーム機の釘調整を容易且つ的確に行い得るようになる。
【0050】
尚、第2図中において、「*」印は打止発生を示すデータ或は客交替を示すデータに対応し、持込玉数、アウト玉数、差玉数、持玉数の各データは、実際の数値の1/10を示す。
【0051】
また、上記実施例において、開放手段23からリセットパルスRPが出力された時点においても情報処理部11による記憶部19への記憶制御動作を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】
記憶部の記憶内容の出力例を示す図
【符号の説明】
図面中、1はパチンコゲーム機、2は玉貸機、3は管理装置、4、12はアウト玉計数部、6、13はセーフ玉計数部、9は貸出高計数部(売上データ演算手段)、11は情報処理部、19は記憶部、33は管理用データ演算手段、43はデータ処理手段を示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-11-05 
結審通知日 2007-11-09 
審決日 2007-11-20 
出願番号 特願平8-339452
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷部 善太郎秋山 斉昭  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 中槙 利明
土屋 保光
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2831984号(P2831984)
発明の名称 パチンコゲーム機の管理装置  
代理人 堀江 真一  
代理人 佐藤 強  
代理人 堀江 真一  
代理人 佐藤 強  

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