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審決分類 |
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C11D 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C11D |
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管理番号 | 1172997 |
審判番号 | 訂正2006-39011 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2006-01-27 |
確定日 | 2008-01-31 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3609532号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3609532号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判事件等の手続の経緯は、次のとおりである。 特許出願 :平成8年4月5日 特許権の設定登録:平成16年10月22日 特許権者 :株式会社ニイタカ 発明の名称:「自動食器洗浄機用粉末洗浄剤」 特許番号 :特許第3609532号 請求項数 :6 訂正審判請求 :平成18年1月27日 審決(送達日) :平成18年5月11日 審決の結論:「本件審判の請求は、成り立たない。」 審決取消訴訟提起:平成18年6月9日 (平成18年(行ケ)第10268号) 判決言渡日 :平成19年11月28日 (以下、この判決を「本件判決」という。) 本件判決の主文:「1 特許庁が訂正2006-39011号 事件について平成18年5月1日にした 審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。」 第2 請求の要旨 本件審判請求の要旨は、特許第3609532号(以下、「本件特許」という。)の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるというものであって、具体的には、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の 「0. 5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0. 5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。」を、 「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。」(審決注:下線を追加している。) に訂正することを求めるものである(以下、この訂正を「本件訂正」という。)。 第3 当審の判断 1 本件訂正の目的の適否 本件訂正審判請求書によれば、訂正前の請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であり、本件訂正は、その誤記の訂正を目的とするものであるとされているので、以下「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であるかについて、検討する。 (1) 願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の記載 ア 特許請求の範囲の記載について 当初明細書の特許請求の範囲請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする自動食器洗浄器用粉末洗浄剤。」 イ 発明の詳細な説明の記載について 当初明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。本件の手続では、明細書の発明の詳細な説明について、補正や訂正はされていない。 a 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、自動食器洗浄機における自動供給に適する粉末洗浄剤の新規な組成に関する。」 b 「【0003】液状の洗浄剤については、ポンプ等による供給が可能であることから、その供給量の制御が容易であるとの利点はあるが、一般に含有水量が多くなって製品重量が過大となるという欠点、・・・凍結してしまうという欠点、・・・等の欠点があった。 【0004】このため、従来においてもこのような液状洗浄剤における欠点がない・・・固形洗浄剤の利用が考慮され、その自動供給方法も開発されるに至っている。この自動供給方法・・・によれば、速やかな溶解性とそれに伴なう洗浄剤濃度の安定性の点で、粉状洗浄剤が他の固体状洗浄剤と比べて優れている。」 c 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】 このような用法に適う粉状洗浄剤としては、・・・低濃度で比較的に高い洗浄力が得られることから、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの苛性アルカリを20乃至50重量%の高濃度で配合されたものが使用されてきた。 【0011】しかし、この洗浄剤では洗浄操作時における洗浄水のPH値が高くなって公害源となり、またそれ自体医薬用外劇物に該当するため、その取り扱いにおいて危険を伴うのに加えて、その溶解時に生じる発熱量が大きくその溶液が異常に高温(例えば、100℃以上)となって洗浄機内に供給されるため、その洗浄機の流水系を破損し、さらには被洗浄物たる食器に傷を付ける等の傷害を与えるおそれが大きい。) 【0012】このため、洗浄剤について苛性アルカリの配合量を減じて洗浄水について低PH値化を図る場合に、一定の洗浄力を確保するためにトリポリリン酸ナトリウムを大量に配合する組成も考えられる。しかし、トリポリリン酸ナトリウムは、水分を含むと容易に固化する性質があり、・・・固化してしまうと水に対する溶解性は極めて悪くなる。 【0013】従って、トリポリリン酸ナトリウムを多量に含む粉状洗浄剤が前記した自動供給に使用される場合、噴射水の照射によって生じた空洞aの壁面が強固に固化してしまい、その後噴射水が照射するときに、特にトリポリリン酸ナトリウムの溶解性が悪くなって、洗剤の供給に時間が費るという弊害がある。 【0014】また、トリポリリン酸ナトリウムは・・・オルソリン酸ナトリウムに分解され易く、またこのオルソリン酸ナトリウムは使用水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して不溶性の非晶質リン酸カルシウムや非晶質リン酸マグネシウムを生成し、これがスケールとして洗浄機内・・・に付着し、・・・強固に蓄積されることになる。 【0015】また、このオルソリン酸ナトリウムとカルシウムイオン等の硬度成分との結合反応はPH値が低くなるほど起こり易いと考えられており、従って、苛性アルカリの減量は・・・スケールの発生の抑制にとっては不利である。 【0016】そこで、本発明では・・・噴射水による自動供給に適合する流動性と高い溶解性を常に保持すると共に、十分な洗浄力を有する非劇物処方の粉末洗浄剤、並びにさらにスケールの発生が少ない粉末洗浄剤の提供を目的とした。 【0017】 【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するため、本発明は自動食器洗浄機用粉末洗浄剤につき次のような組成とした。 即ち、0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする。」 d 「【0020】上記した本発明に係る各成分の配合組成においては、所定の洗浄力を得るためのアルカリ性を維持するために水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、又はこれらの混合剤が必須成分として配合される。この場合、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムは必須成分について0.5重量%(以下、単に「%」という。)以上5%以下であることが必要である。またこれはこれらの混合剤である場合にも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれについての必要条件でもある。これらの配合量が、0.5%未満であると洗浄効果が不十分となるし、また5%を超えると、取り扱い上において危険を伴うことになるし、また法律上の医薬用外劇物の該当品となって規制の対象となる点で不利となる。 【0021】また、オルソケイ酸塩は、上記した苛性アルカリの減量分を補って洗浄剤におけるアルカリ性をなおも有効に維持するために配合される。」 e 「【0024】また、トリポリリン酸ナトリウムは洗浄力をより向上させるために、配合する。 【0025】また、メタケイ酸ナトリウム5水塩は洗浄剤全体の溶解性を向上させるために配合する。 【0026】・・・必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムはその合計量が当該洗浄剤全体について50%以上配合されることによって、その洗浄剤水溶液が低濃度となってもその洗浄効果は有効に発揮される。」 f 「【0031】 【実施例】 次に、本発明の実施例を説明する。 次表1に示した成分配合の粉末洗浄剤を得た。 【表1】 なお、表中の数値単位は重量%である。」 (2) 「0.5重量%以下の水酸化カリウム」が誤記であるか ア 「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載の明確性について (ア) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。」と記載されており、「0.5重量%以下」との記載は、その記載自体を独立したものとして見る限り、数値及びその範囲として明確であり、疑問が生じることはない。 (イ) しかしながら、特許請求の範囲の意味内容を確定する場合には、当該記載の前後の単語・文章、文脈、当該請求項の全体の意味内容との関係で検討すべきであり、問題となった記載を前後から切り離して取り上げて意味内容を把握し、その単純な総和として、確定すべきものではない。 そこで、「0.5重量%以下の水酸化カリウム」という記載をその前後の単語・文章、文脈、当該請求項の全体の意味内容との関係で検討すると、次のとおりである(ここでは、便宜上、A、A’、B、・・・及びand/or などの記号を必要に応じて用いることとする。)。 「一定量の水酸化ナトリウム(A)又は/及び一定量の水酸化カリウム(A’)、一定量のオルソケイ酸塩(B)、一定量のトリポリリン酸ナトリウム(C)と及び一定量のメタケイ酸ナトリウム5水塩(D)とを必須成分とし、水酸化ナトリウム(A)又は/及び水酸化カリウム(A’)、オルソケイ酸塩(B)並びにトリポリリン酸ナトリウム(C)の合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする」 これによれば、請求項1は、次のように理解されることになる。 (i) 「(Aand/orA’)、(B)、(C)、(D)を必須成分とし、(Aand/orA’)、(B)、(C)の合計量が50重量%以上であることを特徴とする。」 そうすると、(Aand/orA’)、及び、(B)、(C)、(D)それぞれが常に成分として含有されているものと理解される。 (ii) AとA’は、「and/or」の関係で結ばれており、両者は、化合物として、性質・作用等も類似していることから、多くの場合、相互に代替性・補完性があると考えられ、その双方又はいずれか一方が必須の成分であると理解するのが自然であり、双方とも必須成分から外れることはないとするのが通常の理解である。 (iii) しかるところ、A’が「0.5重量%以下」とされていて下限値が特に表示されていないことから、A’が「0重量%」の場合を含むとするのが通常の理解であり、しかも、AとA’が「and/or」で結ばれているため、結局、論理上、A及びA’の双方共に含有されない場合を含むのではないか、との疑問が生じることになる。 (ウ) 以上のように、請求項1を概観すると、その記載に接した当業者は、A’の含有量が0の場合も発明に含まれるのか、含まれるとすれば、AもA’も共に含有量が0になる場合も発明に含まれるのではないか、と容易に疑問を抱くことになり、その疑問を解決するために、請求項1の記載だけでは解決するに足りず、発明の詳細な説明を参酌確認する契機をもつものといわざるを得ない。 イ 本件訂正前の請求項1の記載と発明の詳細な説明との対応について ここで、本件訂正前の請求項1の記載と発明の詳細な説明との対応を検討すると、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」が含まれるとする場合における「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の意味は、本件判決が示すとおりである。すなわち、 『(ア) 本件明細書によれば、水酸化カリウムが「0.5重量%以下」の場合については、発明の詳細な説明には、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」(【0017】)、「水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムは必須成分について0.5重量%以上5%以下であることが必要である。」(【0020】)との記載があり、実施例9は「水酸化ナトリウム0重量%、水酸化カリウム3重量%」であり、実施例10は「水酸化ナトリウム0重量%、水酸化カリウム5重量%」であるから、これらは「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」に対応していない(本件補正前(審決注:当初明細書)の請求項1ないしこれと同一記載の訂正後の請求項1には対応している。)。 (イ) 他方、実施例1ないし7は「水酸化ナトリウムが0.5重量%以上5重量%以下、水酸化カリウムが0重量%」であり、これらは「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」の場合にあたかも対応しているかのようではあるが、注意深くみると、水酸化カリウムが0重量%のときに、水酸化ナトリウムは常に0.5重量%以上5重量%含まれることを要件としているから、上記の場合のうち「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」のときのみに対応しているのであって、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は0.5重量%以下の水酸化カリウム」の場合、すなわち、水酸化ナトリウムが全く含まれない場合には対応していないことになる(本件補正前(審決注:当初明細書)の請求項1ないしこれと同一記載の訂正後の請求項1には対応している。)。 (ウ) 以上に対し、実施例8は「水酸化ナトリウム0重量%、水酸化カリウム0.5重量%」であるから、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」のうち「水酸化ナトリウムが0で、水酸化カリウムが0.5重量%」の場合についてだけではあるが、対応しているということになる。』。 ウ 本件訂正前の請求項1の「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以下の水酸化カリウム」と本件明細書の発明の詳細な説明との対応は、上記イのとおりであり、これらによれば、その発明は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの双方又はいずれか一方を含むものとして記載されており、その双方とも含まないことを前提とした記載は一切なく、本件訂正前の請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載は、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であると容易に理解するに至ることは明らかである。 エ したがって、本件訂正前の請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の記載は、特許法第126条第1項本文及び同第2号にいう「特許請求の範囲」の「誤記」に該当するものということができる。 (3) まとめ 以上のとおり、本件訂正は、本件訂正前の請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との誤記を「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」と訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。 2 本件訂正の特許請求の範囲の拡張・変更、新規事項、本件訂正後の発明の独立特許要件の存否 本件訂正前の請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の記載は、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であるとする場合、この2つの文言のみに即して形式的に考察すると、「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲は、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲と明らかに異なるから、その限りでは特許請求の範囲が変更となるのではないかという問題があるかのようであるが、請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」とある記載は、上述のとおり、特許請求の範囲の記載からだけでは不明確であり、そこで、発明の詳細な説明を参酌すると、「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は、「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であることが明らかであるというのであるから、その実質を捉えて考察すると、本件訂正は、特許請求の範囲の拡張や変更をするものではないということができ、さらに、本件訂正は、当初明細書に記載した事項の範囲内でしたものであるということができる。 そして、本件訂正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由はみあたらない。 そうすると、本件訂正は、特許法第126条第3項、第4項及び第5項の規定に適合するものである。 第3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 自動食器洗浄機用粉末洗浄剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【請求項2】 オルソケイ酸塩の平均含水量が13重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1の自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【請求項3】 トリポリリン酸ナトリウムが、15重量%以上30重量%以下の配合量であることを特徴とする請求項1又は2の自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【請求項4】 マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩がさらに必須成分として配合されていることを特徴とする請求項1,2又は3の自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【請求項5】 マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩が、0.5重量%以上10重量%以下の配合量で配合されていることを特徴とする請求項4の自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【請求項6】 0.5重量%以上10重量%以下のマレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩と共に、0.5重量%以上10重量%以下のヘキサメタリン酸ナトリウムがさらに必須成分として配合されていることを特徴とする請求項4の自動食器洗浄機用粉末洗浄剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、自動食器洗浄機における自動供給に適する粉末洗浄剤の新規な組成に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、自動食器洗浄機において、その洗浄剤の自動供給が図られてきた。この自動供給用の洗浄剤としては、液状、固体状乃至粒状、粉状の剤型のものがあり、それぞれ一定容量の容器内に収容し、これを自動食器洗浄機上にセットし、この容器を定期的に交換する用法が採られてきた。 【0003】 このうちの液状の洗浄剤については、ポンプ等による供給が可能であることから、その供給量の制御が容易であるという利点はあるが、一般に含有水量が多くなって製品重量が過大となるという欠点、また低温の環境条件下で使用されると、洗浄剤自体が容器内で凍結してしまうという欠点、また洗浄剤自体についての均一性の点で配合できる成分の組み合わせに制限があったり、また配合が可能であっても、例えばトリポリリン酸ナトリウムのように10重量%以上の配合量となると沈澱分離し易くなる場合がある等の欠点があった。 【0004】 このため、従来においてもこのような液状洗浄剤における欠点がない固体状、粒状及び粉状の固形洗浄剤の利用が考慮され、その自動供給方法も開発されるに至っている。この自動供給方法については次に示すが、この方法によれば、速やかな溶解性とそれに伴なう洗浄剤濃度の安定性の点で、粉状洗浄剤が他の固体状洗浄剤と比べて優れている。 【0005】 この粉状洗浄剤について上記した自動供給方法を実行するための従来装置の構成例を図1に示した。この図示した洗浄剤の自動供給装置1は、粉末洗浄剤Aを収容するカートリッジ容器2とこれを支持するホルダー7等からなる。 【0006】 このカートリッジ容器2は、その容器本体3の先頭部4端の口部上に装着されたキャップ部5を備え、このキャップ部5の端面上には多数の穿孔6を有する。またホルダー7は先頭部4の外形状に合致した凹部形をなし、その下部に連継口部8を備えると共に、その凹部形内の中空位置にノズル9がそのノズル孔が上向きにある状態で支持プレート10によって支持されている。 【0007】 なお、11はこの支持プレート10面上に有する開孔であって洗浄剤Aの粉末を容易に流通させることができる。またこのノズル9には給水管12、また連継口部8には供給用ホース13がそれぞれ連結され、またこのホルダー7は支持フレーム14を介して自動食器洗浄機の機枠フレーム16上に固設されている。 【0008】 また、カートリッジ容器2はその先頭部4が下向きにある状態でホルダー7の凹形部内にセットされる。このセット状態においてノズル9から加圧水が噴射されると、その噴射水は対面するキャップ部5上の各穿孔6面から容器本体3内にまで及びその収容する粉状洗浄剤Aを順次その粉状のままあるいは溶解して各穿孔6から流出させる。 【0009】 なお、空洞aは、この流出した洗浄剤Aの部分を示す。次いで、この流出した洗浄剤Aは前記した噴射水に基づく流下水に伴って供給用ホース13から自動食器洗浄機内の洗浄タンク内に供給される。またこの洗浄剤Aの供給量はこの洗浄タンク内での洗浄剤濃度をセンサーによって検知することによって制御される。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 このような用法に適う粉状洗浄剤としては、従来、低コストであることに加えて、低濃度で比較的に高い洗浄力が得られることから、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの苛性アルカリを20乃至50重量%の高濃度で配合されたものが使用されてきた。 【0011】 しかし、この洗浄剤では洗浄操作時における洗浄水のPH値が高くなって公害源となり、またそれ自体医薬用外劇物に該当するため、その取り扱いにおいて危険を伴うのに加えて、その溶解時に生じる発熱量が大きくその溶液が異常に高温(例えば、100℃以上)となって洗浄機内に供給されるため、その洗浄機の流水系を破損し、さらには被洗浄物たる食器に傷を付ける等の障害を与えるおそれが大きい。 【0012】 このため、洗浄剤について苛性アルカリの配合量を減じて洗浄水について低PH値化を図る場合に、一定の洗浄力を確保するためにトリポリリン酸ナトリウムを大量に配合する組成も考えられる。しかし、トリポリリン酸ナトリウムは、水を含むと容易に固化する性質があり、また一旦固化してしまうと水に対する溶解性は極めて悪くなる。 【0013】 従って、トリポリリン酸ナトリウムを多量に含む粉状洗浄剤が前記した自動供給に使用される場合、噴射水の照射によって生じた空洞aの壁面が強固に固化してしまい、その後噴射水が照射するときに、特にトリポリリン酸ナトリウムの溶解性が悪くなって、洗剤の供給に時間が費るという弊害がある。 【0014】 また、トリポリリン酸ナトリウムは高温状態の水溶液中において、オルソリン酸ナトリウムに分解され易く、またこのオルソリン酸ナトリウムは使用水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して不溶性の非晶質リン酸カルシウムや非晶質リン酸マグネシウムを生成し、これがスケールとして洗浄機内のコンベヤベルトやタンクに付着し、さらには除去が困難な状態で強固に蓄積されることになる。 【0015】 また、このオルソリン酸ナトリウムとカルシウムイオン等の硬度成分との結合反応はPH値が低くなるほど起こり易いと考えられており、従って、苛性アルカリの減量は上記したようなスケール発生の抑制にとっては不利である。 【0016】 そこで、本発明では前記した噴射水による自動供給に適合する流動性と高い溶解性を常に保持すると共に、十分な洗浄力を有する非劇物処方の粉末洗浄剤、並びにさらにスケールの発生が少ない粉末洗浄剤の提供を目的とした。 【0017】 【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するため、本発明は自動食器洗浄機用粉末洗浄剤につき次のような組成とした。 即ち、0.5重量%以上5重量%以下の水酸化ナトリウム又は/及び0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウムと、平均含水量が10重量%以上25重量%以下である10重量%以上60重量%以下のオルソケイ酸塩と、10重量%以上40重量%以下のトリポリリン酸ナトリウムと及び10重量%以上30重量%以下のメタケイ酸ナトリウム5水塩とを必須成分とし、この必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸塩並びにトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50重量%以上配合されていることを特徴とする。 【0018】 この本発明に係る粉末洗浄剤は常温下に上記した各成分を単純混合する方法によって製造することができる。この場合、配合すべき各成分について混入する順序については特に制限はない。従って、予め必須成分を配合し、これを洗浄剤を構成する他の成分中に混合する方法によることもできる。 【0019】 また、上記の配合各成分の粒度は均一混合が容易となるように、各成分の粒径を、例えば約1000μmに揃えておくことが好ましく、また前記したカートリッジ容器2におけるキャップ部5上の穿孔6…からの定量的な流出の安定化を図るため、その粒径は穿孔6…内を容易に流通させ得る大きさであって1000μm以下のものが50%以上含まれる割合となることが好ましい。またこのようにして得られる本発明の粉末洗浄剤は、従来品同様に、カートリッジ容器2内に3000?5000gを給入して使用することができる。 【0020】 上記した本発明に係る各成分の配合組成においては、所定の洗浄力を得るためのアルカリ性を維持するために水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、又はこれらの混合剤が必須成分として配合される。この場合、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムは必須成分について0.5重量%(以下、単に「%」という。)以上5%以下であることが必要である。またこれはこれらの混合剤である場合にも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれについての必要条件でもある。これらの配合量が、0.5%未満であると洗浄効果が不十分となるし、また5%を超えると、取り扱い上において危険を伴うことになるし、また法律上の医薬用外劇物の該当品となって規制の対象となる点で不利となる。 【0021】 また、オルソケイ酸塩は、上記した苛性アルカリの減量分を補って洗浄剤におけるアルカリ性をなおも有効に維持するために配合される。なお、水に対する溶解性の点から、このオルソケイ酸塩とは、前記した洗浄剤のアルカリ性を有効に維持させ、しかも水に対する良好な溶解性の点からナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属との塩であって、Mをアルカリ金属とするときのM2OとSiO2とのモル比が約1対0.5のものである。 【0022】 また、このオルソケイ酸塩について、含水量が10%未満であると水に対する溶解性が悪くなって種々の供給上の問題が起こる。この含水量が25%を超えると、その含有水が放出され易くなり、この放出水が洗浄剤中に存在するとその部分が固化してしまい、このため洗浄剤全体について流動性の低下をきたす。この結果、調合時や充填時における作業性の低下、さらには前記した自動供給の不良の原因ともなる。なお、このオルソケイ酸塩の含水量について、上記した欠点が生じずかつその機能を安定的に発揮させるのに、13%?20%の範囲内であることが好ましい。 【0023】 また、この洗浄剤の必須成分についてこのオルソケイ酸塩が、10%未満であると、その効果が十分に発揮されず、また60%を超えると、他の必須成分の減量を招き、それらの効果を有効に発揮できなくなる。 【0024】 また、トリポリリン酸ナトリウムは洗浄力をより向上させるために配合する。この必須成分中における配合量が、10%未満では洗浄力の向上が不十分であり、また40%を超えると前記したような溶解性の低下をきたすことになる。 なお、洗浄力の発揮の点から、20%?30%の配合量であることが好ましい。 【0025】 また、メタケイ酸ナトリウム5水塩は洗浄剤全体の溶解性を向上させるために配合する。この必須成分中における配合量が10%未満では製剤の溶解性が不十分となり、また30%を超えると嵩密度が小さくなり、このため洗浄剤全体の嵩が過大となって使用性が悪くなる。 【0026】 また、当該粉末洗浄剤は、通常の場合0.08?0.15%濃度範囲の洗浄剤水溶液として好ましく利用されるが、前記した必須成分のうち水酸化ナトリウム又は/及び水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムはその合計量が当該洗浄剤全体について50%以上配合されることによって、その洗浄剤水溶液が低濃度となってもその洗浄効果は有効に発揮される。なお、その有効な洗浄効果を安定して発揮させるためには、上記した合計量が60%以上であるのが好ましい。 【0027】 また、上記した本発明の粉末洗浄剤については、特に、洗浄剤の水溶液中に生じることがあるスケールの発生を有効に防止するために、前記した必須成分に加えて、マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩を必須成分として配合することができる。このマレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、ナトリウムあるいはカリウムがある。またその分子量については特に制限はないが、実効性の点から、50000?70000のものであることが好ましい。またこのマレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩は、0.5%以上の配合量でその効果が有効に発揮される。なお、10%を超える場合には過剰となり、他の必須成分の配合量が少なくなって洗浄効果等が不十分となる。 【0028】 また、スケールの発生防止効果をさらに向上させるために、マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩と共にヘキサメタリン酸ナトリウムを必須成分としてさらに配合した組成も本発明に含まれる。この組成においては、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.5%以上10%以下の配合量で配合できると共に、マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩について配合量を低減させる場合にも、その効果を有効に得ることができる。 【0029】 なお、この組成において、マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩とヘキサメタリン酸ナトリウムのいずれかの配合量が0.5%未満であるときは、その効果が有効に発揮されず、またヘキササメタリン酸ナトリウムの配合量が10%を超えるときは過剰となって、他の必須成分の配合量が少なくなって洗浄効果等が不十分となる。 【0030】 また、上記した本発明の粉末洗浄剤には、上記の必須成分たる各配合成分の機能及び前記した自動供給に支障を与えない限りにおいて、必要に応じて、オルソリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムなどのリン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、ニトリロ三酢酸ナトリウム塩、エチレンジアミン酸ナトリウム塩などのキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子電解質、イソシアヌル酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどの漂白剤、無水硫酸ナトリウムなどの増量剤、非イオン界面活性剤等を配合することができる。 【0031】 【実施例】 次に、本発明の実施例を説明する。 (1)次表1に示した成分配合の粉末洗浄剤を得た。 【表1】 なお、表中の数値単位は重量%である。 【0032】 本発明に係る粉末洗浄剤を実施No1?10で示したが、この粉末洗浄剤は、それぞれ各配合成分を順に常温下に混入し、さらに均一に混合する方法によって得られたものである。また比較例1?5は本発明の範囲に含まれないものであり、上記同一の方法により得た。 【0033】 次に、これらの粉末洗浄剤について、洗浄力テストを次の方法によって行なった。 (1)被洗浄食器に対する前処理 先ず、ガラスコップを5%水酸化ナトリウム水溶液中に約2時間浸漬し、次いで、このガラスコップを取り出して湯水ですすぎ洗いを行なった後、100℃の恒温乾燥機内で1時間に亘って乾燥処理し、これを常温にまで放冷して処理対象とした。 【0034】 (2)汚垢材料の調製 小麦粉、牛乳、卵黄、バター、天ぷら油及び口紅を汚垢材料とした。なお、小麦粉についてはその10gを精製水90g中に加えて攪拌し、これを加熱して80?90℃の温度状態で約10分間保ち小麦粉を糊化させ、その後これを常温にまで放冷した。また牛乳、卵黄、バター及び天ぷら油をそれぞれ20gずつ順に同一のビーカー内に加入して混合した。この混合材中に前記した小麦粉の糊化材20gを混入して混合し、これを30?40℃の温度状態で混ぜて液状汚垢材料とした。 【0035】 (3)汚垢の塗布 前記▲1▼において処理したガラスコップに対し上記▲2▼の汚垢材料を塗布した。先ず、前記の液状汚垢材料の約1gを丸筆にてガラスコップの内面上に口縁部から底部に向ってラセン状に塗布した。またこのガラスコップの外面上にはその口縁部付近に口紅を軽く触れて付着させ、これを被洗浄食器とした。 【0036】 (4)洗浄操作 前記した表1の各粉末洗浄剤をそれぞれ用いて、上記の被洗浄食器に対する洗浄操作を次のように実行した。 この洗浄操作は、図2に示した自動食器洗浄機15(ダイキン(株)製WM30型)を利用した。 【0037】 この洗浄機15は、機枠16内に洗浄及びすすぎ操作をバッチ式に行なう室部17のみからなり、ドアタイプと呼ばれている。またこの室部17内には、上方部に洗浄ノズル18及び19が上下に離間して、またこれらに並設してすすぎノズル20及び21が上下に離間してそれぞれ配設され、下方部にはポンプ23を伴う24l容量の洗浄液タンク22とポンプ25を伴うすすぎ水タンク24とが並設されている。また各洗浄ノズル18と19及びすすぎノズル20と21との中間位置には被洗浄食器27、28を支持する網材からなるラック26を備えている。また洗剤供給装置1は機枠16の外側面上に固設され、その供給用ホース13は洗浄タンク22内に通ずるように配されている。 【0038】 この洗浄機15では、洗浄時において、洗浄液タンク22内の洗浄液をポンプ23により洗浄ノズル18、19に送り出して被洗浄物27、28…に噴射する。この際の噴射液は再度洗浄タンク22内に流入する。この操作が一定時間繰り返えされた後、今度はすすぎ操作される。このすすぎ時においては、すすぎタンク24内のすすぎ水をすすぎノズル20、21…に送り出して被洗浄物27、28に噴射する。このすすぎに係る噴射液も洗浄液タンク22内に流入する。このため、すすぎ操作の度に洗浄液濃度は低下することになる。 【0039】 なお、すすぎタンク24内においてすすぎ水は常時外部から補給されるため、その水量は常に一定量が確保される。また洗剤供給装置1からは、前記した機能により洗浄液が設定濃度となるようにカートリッジ容器2内から洗浄剤を補給する。 【0040】 この洗浄操作においては、先ず、洗浄液タンク22内に湯水(57±3℃)を給入し、これに前記した粉末洗浄剤を24g加えて0.10%濃度の洗浄液とした。また前記した被洗浄食器であるガラスコップの1つをその口部が下向きあるようにラック26上にセットした。 【0041】 次いで、前記した洗浄処理を65秒間、その後すすぎ洗いを15秒間行なわせ、さらにその後2分間放置することを1サイクルとし、計5サイクルを繰り返すように動作させた。なお、この間、洗浄剤については補給することはないが、被洗浄食器については1サイクル毎に取り替えた。 【0042】 この洗浄処理の結果を洗浄度、口紅の処理度及びスポットの発生率について次の表2-1、表2-2及び表2-3にそれぞれの実施Noに対応して示した。 【表2-1】 【表2-2】 【表2-3】 【0043】 なお、各表中濃度は洗浄剤溶液中の洗浄剤濃度の変化を重量%で示した。また洗浄度につき、◎は汚れが全く付着していないとき、○は汚れが僅かに付着しているがほとんど除去されているとき、△は汚れが少量残留しているとき及び×は汚れが多量に残留しているとき、である。また口紅の処理度についても上記と同じ基準によった。またスポットの発生率につき、◎は全くないとき、○は僅かに付着が認められるがほとんどないとき、△は少しあるとき、及び×は多くあるとき、である。 【0044】 表2-1、表2-2及び表2-3に示した結果から、本発明に係る実施No1?10の粉末洗浄剤によれば、比較例1の苛性アルカリを多量に含むものに匹敵あるいはそれ以上の洗浄効果が得られることを確認することができる。 【0045】 また比較例2及び3についての結果からトリポリリン酸ナトリウムが過少の場合、また比較例4についての結果から必須成分たるアルカリ性成分及びトリポリリン酸ナトリウムの合計量が50%未満の場合、また比較例5についての結果からオルソケイ酸塩が過少である場合には、それぞれ洗浄効果が不十分となることも判る。 【0046】 (2)次に、上記の結果から洗浄効果の有効性が確認された本発明に係る粉末洗浄剤について、特にオルソケイ酸塩の含水量が当該洗浄剤の流動性に与える影響について、次表3に示す実施No11?19の配合成分からなる粉末洗浄剤を前記同様に調製し、次のテストを行ないその結果を示した。 【表3】 【0047】 なお、比較例6及び7は本発明の範囲には含まれない比較例である。またこれらの粉末洗浄剤につき配合されているオルソケイ酸ナトリウムの平均含水量及びその純分の量を次表4にまとめた。 【表4】 また、表3及び表4中の数値単位は重量%である。 【0048】 表3に示す配合組成の粉末洗浄剤のそれぞれについて次のテストを行なった。先ず、粉末洗浄剤をガラスビーカーに入れ、これをスパーテルでよく攪拌し混ぜた。次いで、これを水分を吸湿しないようにして密閉容器に移して、50℃の恒温乾燥室内に1週間放置して後その流動性をテストした。 【0049】 なお、流動性は洗浄剤の粉末粒間における固着状態を確認することを次の基準により判定した。即ち、○は全く固着化が生じていないとき、△は一部に固着化が生じているとき、×は全体的に固着化が生じているとき、である。 【0050】 表3に示した結果から、配合されたオルソケイ酸塩についてその平均含水量が多くなるほど、流動性について低下傾向となるが、その平均含水量が25%以下であれば前記した自動供給に使用可能な流動性が維持されること。また比較例6及び7についての結果から、その平均含水量が25%を超える場合にはその粉末剤の流動性が悪化することが判る。 【0051】 (3)次に、特にオルソケイ酸塩等が当該粉末洗浄剤の溶解性に与える影響について、次表5に示す実施No19?26の配合成分からなる本発明に係る粉末洗浄剤を前記同様の方法により調製し、次のテストを行なってその結果を示した。 【表5】 【0052】 また、これらの粉末洗浄剤につき配合されているオルソケイ酸ナトリウムの平均含水量を次表6に示した。 【表6】 なお、比較例8?10は本発明の範囲には含まれないものであり、比較対照とした。また表5及び6中の数値単位は重量%である。 【0053】 この溶解性テストでは、図3に示したコンベア式自動食器洗浄機30を利用した。この洗浄機30は機枠31内に洗浄室32とすすぎ室33とを連続して別個に設け、またこれら各室内に通じるように入口34、継口35及び出口36に対し貫通状に配されたコンベア45を備える。 【0054】 また、洗浄室32内には、上方部に洗浄ノズル37及び38が上下に離間して配され、下方部に90l容量の洗浄液タンク39が設けられている。またすすぎ室33内には、上方部にすすぎノズル40及び41とこれに並設された仕上げ用のすすぎノズル42及び43とがそれぞれ上下に離間して配され下方部にはすすぎ水タンク44が設けられている。また洗剤供給装置1は機枠31の外側面上に固設され、その供給用ホース13は洗浄液タンク39内に及んでいる。 【0055】 この洗浄機30は次のように機能する。即ち、コンベア45は支軸回りに循環して起動する。このコンベア45の起動に伴って、図示はしないが、洗浄液タンク39、すすぎ水タンク44に通ずるそれぞれのポンプ及びタンク39内の洗浄剤濃度の検知センサーが動作する。これに伴って各ノズル37、38、40、41、42及び43から洗浄液あるいはすすぎ水がコンベア45面に上載されて移動される被洗浄食器46…に対し順次散布され、洗浄及びすすぎ操作が連続的に実行される。これにより被洗浄食器46は矢印方向に移動されるうちに洗浄処理され、出口からは洗浄食器47として得られる。 【0056】 なお、この際、洗浄液は一定範囲の設定濃度に応じて前記検知センサーの作動により自動供給装置1から洗浄剤が自動的に供給される。この洗浄液はタンク39内にあって、またすすぎ水はタンク44内にあって、それぞれ循環使用されるが、ノズル42及び43の仕上げすすぎ水は常時新たに給水され、その散水はタンク44内に流入する。この流入水によりタンク44内が過剰となるとオーバーフローして排水される。またタンク39内において洗浄液の量を常に一定に維持するため、このタンク39内へは毎秒10?30mlの水が連続的に供給される。このため、洗浄液濃度は低下傾向にある。 【0057】 この溶解性テストは、カートリッジ容器2内に前記した粉末洗浄剤を4000g充填して洗剤供給装置1上にセットし、また湯水(60℃)を洗浄液タンク39及びすすぎ水タンク44内に満たし、この状態で洗浄機30を10分間作動させた。この際、カートリッジ容器2内から洗浄剤がタンク39内に供給される。 【0058】 この状態で24時間放置後、タンク39内の溶液を除いて新たに湯水(60℃)を満した。この状態で洗浄機30を作動させる場合において、タンク39内の湯水が0.10%濃度の洗浄液となるまでの時間を測定することによって、洗浄剤の溶解性を次の基準により判定した。つまり、その時間が3分間以内のとき○、10分間以内のとき△、及び10分間以上あるいはその濃度にまで達しないとき×、とした。なお、供給に用いられる噴射水の条件は、20℃、毎秒40mlである。 【0059】 表5に示した結果から、実施No19?26の本発明に係る粉末洗浄剤については、良好な溶解性を保持していること、またこの点はマレイン酸アクリル共重合体ナトリウム塩及びヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する場合も変らないことを確認することができる。また比較例8及び10から、オルソケイ酸塩の平均含水量が10%未満であると溶解性が不十分となること、また比較例9からメタケイ酸ナトリウム5水塩の配合量が溶解性に影響することが判る。 【0060】 (4)次に、次表7の成分配合で前記同様の方法により本発明に係る実施No27?41の粉末洗浄剤を調合し、次のスケール防止能テストを行ないその結果を示した。 【表7】 【0061】 また表7中の数値単位は重量%である。 このスケール防止能テストは、洗浄剤タンクについてのスケール防止能とすすぎ水タンクについてのスケール防止能についての二種のテストと、その総合評価からなる。 【0062】 ▲1▼洗浄液タンクについてのスケール防止能テスト このテストは前記した自動食器洗浄機15を利用して次のように行なった。つまり、先ず、炭酸カルシウム硬度に換算して150mg/lに調整された塩化カルシウム水溶液を硬度水として多量に用意し、この硬度水を60℃の温度状態で洗浄液タンク22及びまた80℃の温度状態ですすぎ水タンク24に満たした。また前記した粉末洗浄剤の4000gをカートリッジ容器2内に充填し洗剤供給装置1上にセットした。 【0063】 この状態で、洗浄液の設定濃度を0.10%とし、洗浄時間2分45秒間、すすぎ時間15秒間及び停止時間2分間を1サイクルとして20時間に亘ってこの洗浄機15を動作させた。なお、この間3回洗浄液タンク内の硬度水溶液を入れ替えた。 【0064】 このテストは、この間に洗浄液タンク内に付着するスケールの状態により次の基準で評価した。即ち、洗浄剤タンクの表面にスケールが全く付着していないとき○、スケールが少し付着しているとき△、及びスケールが多量に付着しているとき×、とした。 【0065】 ▲2▼すすぎ水タンクについてのスケール防止能テスト このテストは、前記した自動食器洗浄機30を利用して次のように行なった。つまり、先ず、炭酸カルシウム硬度が約50mg/lの水道水を60℃の温度状態で洗浄剤タンク39及び80℃の温度状態ですすぎ水タンク44に満たし、また仕上げすすぎ水温度も80℃とした。また前記した粉末洗浄剤の4000gをカートリッジ容器2内に充填し洗剤供給装置1上にセットした。 【0066】 この状態で、洗浄液の設定濃度を0.10%とし、この洗浄機30を20時間動作させた。なお、この間3回タンク39及び44の洗浄液及びすすぎ水を入れ替えた。 【0067】 このテストは、この間にすすぎ水タンク44内に付着するスケールの状態により次の基準で評価した。即ち、タンク表面に、スケールが全く付着していないとき○、スケールが少し付着しているとき△、及びスケールが多量に付着しているとき×、とした。 【0068】 また、スケール防止能の総合評価は、上記した▲1▼及び▲2▼の評価を総合判断したものであり、いずれもの評価が○のとき○、いずれか一方の評価が○である場合であっても他方が△又は×であるとき△又は×、いずれか一方の評価が△である場合であっても他方が×であるとき×、とした。 【0069】 表7に示した実施No27?32、No34及びNo35の結果から、所定量のマレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩を必須成分として配合し、あるいは、さらにヘキサメタリン酸ナトリウムを必須成分として配合した本発明に係る粉末洗浄剤によれば、自動食器洗浄機において使用水に起因するスケールの発生をも有効に防止できることが判る。また、ヘキサメタリン酸ナトリウムの配合によりマレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩を減量し得る効果があることも判る。 【0070】 【発明の効果】 上述したように本発明は構成されることから、次のような効果が発揮される。先ず、苛性アルカリの配合量を法定制限内の量としたことから、洗浄水のPH値を低く抑えることができる。従って、安全に使用できると共に公害の発生を防止でき、さらに洗浄剤として医薬用外劇物に該当することもないから経済的に製造、保管できる。 【0071】 また、アルカリ性成分としてオルソケイ酸塩を配合したことから、低PH値下においても優れた洗浄効果が発揮される。 【0072】 また、オルソケイ酸塩についてその平均含水量を一定範囲内に制限したことから、自動供給に適した流動性と溶解性を粉末洗浄剤について確保できる。 【0073】 また、使用水が高い硬度を有する場合であっても、本発明の特に、マレイン酸アクリル酸共重合体アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を必須成分とする粉末洗浄剤によれば、スケールの発生を上記した洗浄性能、流動性及び溶解性について支障なく有効に防止できる。従って、自動食器洗浄機におけるスケールの堆積に原因する障害を未然に防止でき、また洗浄食器の表面に固形物が付着することもない。 【図面の簡単な説明】 【図1】洗浄剤の自動供給装置の部分縦断面図 【図2】自動食器洗浄機の縦断面正面図 【図3】同縦断面正面図 【符号の説明】 A粉末洗浄剤 1自動供給装置 2カートリッジ容器 5キャップ部 6穿孔 15、30自動食器洗浄機 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-04-11 |
結審通知日 | 2006-04-17 |
審決日 | 2008-01-21 |
出願番号 | 特願平8-110077 |
審決分類 |
P
1
41・
855-
Y
(C11D)
P 1 41・ 852- Y (C11D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井上 典之 |
特許庁審判長 |
柳 和子 |
特許庁審判官 |
安藤 達也 鈴木 紀子 |
登録日 | 2004-10-22 |
登録番号 | 特許第3609532号(P3609532) |
発明の名称 | 自動食器洗浄機用粉末洗浄剤 |
代理人 | 倉内 義朗 |
代理人 | 倉内 義朗 |