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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
管理番号 1173036
審判番号 不服2006-3770  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-02 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2001-258068「車両制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 7日出願公開、特開2003- 67896〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月28日の出願であって、平成18年1月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、平成19年8月6日に明細書についての補正がなされ、当審における同年8月23日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月29日に意見書のみが提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年8月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ACC(アダプティブクルーズコントロール)制御、渋滞追従制御およびステアリング制御の少なくとも一つを行う車両主制御手段と、車両前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像に基づいて道路設定速度を複数の区分に分類する道路状態判定手段とを備え、
前記道路設定速度が前記複数の区分のうち最も低い区分に分類されたとき、前記車両主制御手段は前記ACC制御、前記渋滞追従制御または前記ステアリング制御の動作を禁止することを特徴とする車両制御装置。」

3.引用例
一方、上記当審における拒絶理由に引用した特開2000-233661号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば高速道路本線を走行している自車が当該本線からの取付道へ進入した際に、安全で違和感のない走行を可能とする技術に関する。」

・「【0006】ところで、本線からの取付道としては、例えばパーキングエリア、サービスエリア、料金所などに接続される取付道や、走行中の本線と別の本線とを接続する取付道など種々のものが挙げられる。そして、一般的に取付道に対して設定される法定速度は、本線に対して設定される法定速度に比べて低くなっている。例えば本線の法定速度が100km/hであるのに対して、取付道の法定速度は40?60km/hという具合である。したがって、特開平10-44827号公報に開示された技術では、取付道への進入時に十分に車速が小さくなっている場合は良いものの、進入時の車速が取付道を走行する上で大きすぎる場合には、取付道の走行中に進入時の車速を維持する範囲で加速制御がなされるため、運転者に恐怖感を与える可能性が高い。そして、本線から取付道への進入速度について考えると、上述した定速走行制御の実行中に本線から取付道へ進入すれば、設定車速に近い速度で進入することになる。この設定車速は、本線の法定速度に近い速度である可能性が高い。また、車間制御の実行中に本線から取付道へ進入すれば、先行車と同等の速度で進入することになるが、この先行車が、本線の法定速度に近い速度で走行していれば、進入時の速度も本線の法定速度に近い速度となる。すなわち、取付道への進入時の速度は、その後、取付道を走行する上で大きすぎて妥当でない場合が多い。そして、このような場合には、上述したように運転者に恐怖感を与えてしまう可能性が高い。
【0007】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本線からの取付道を自車が走行する際、例えば運転者に恐怖感を与えないような、より運転者の感覚に合致した車両挙動を実現することを目的とする。」

・「【0011】以上のような基本機能に加え、本発明では、特に、取付道走行判断手段によって自車が本線からの取付道を走行中であると判断されると、制御手段が自車を減速させる。つまり、一般的に取付道に対して設定される法定速度は、本線に対して設定される法定速度に比べて小さくなっており、しかも、取付道への進入時の車速が比較的大きくなる場合が多いということに着目して自車を減速させるのである。
【0012】ここで自車を減速させるとあるのは、制御手段が、例えば加速制御がなされる可能性のある走行制御自体を中止することが考えられる。」

・「【0029】
【発明の実施の形態】図1は、上述した発明が適用されたクルーズ制御装置のシステム構成を概略的に示すブロック図であり、車間制御用電子制御装置(以下、「車間制御ECU」と称す。)2、エンジン制御用電子制御装置(以下、「エンジンECU」と称す。)6及びブレーキ電子制御装置(以下、「ブレーキECU」と称す。)4を中心に構成されている。」

・「【0034】画像処理装置7は、車両前方の画像を取り込むためのビデオセンサとマイクロコンピュータとを中心として構成されている電子回路であり、ビデオセンサにて取り込まれた画像をデジタル処理し、前方画像として車間制御ECU2へ出力する。」

・「【0038】・・・このクルーズ制御では、車間制御及び定速走行制御が所定条件下で選択的に実行されることになる。」

・「【0041】次に、図2のフローチャートに基づいて、クルーズ制御を説明する。・・・まず最初のステップS100において、現在走行中の道路が取付道であるか否かを検出する。この検出は、ビデオセンサを備える画像処理装置7及びナビゲーション装置5からの出力に基づいて行われる。」

・「【0050】車間制御ECU2は、ナビゲーション装置5からの走行路情報として、このようなセグメント情報及びノード情報を取得する。そして、上述したように画像処理装置7からの前方画像及びナビゲーション装置5からの走行路情報に基づいて、現在走行中の道路が取付道であるか否かを検出する。例えば、ナビゲーション装置5からの道路区分が「1」(一般高速)又は「2」(都市高速)であるとき、画像処理装置7から出力される前方画像から道路の両サイドに引かれた白線を検出し、進行方向左側の白線を跨いで取付道へ進入したか否かを判断するという具合である。」

・「【0100】以上、本発明はこのような実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。・・・したがって、画像処理装置7のみを用い、ナビゲーション装置5を用いずにクルーズ制御装置を構成することも考えられる。」

・「【0103】・・・取付道を走行中であると判断した場合に、車間制御あるいは定速走行制御等の走行制御を中止するようにしてもよい。この場合、惰性によって車両は走行することになるが、このような惰性による走行では、スロットル全閉となるため、エンジンブレーキや空気抵抗による緩やかな減速がなされ、運転者の加速操作に無関係な加速制御は行われない。したがって、この場合も、運転者の意思に反する加速制御がなくなるため、運転者に恐怖感を与える可能性が小さくなり、より運転者の感覚に合致した車両挙動とすることができる。」

これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、

「車間制御及び定速走行制御が所定条件下で選択的に実行されるクルーズ制御を行う手段と、車両前方の画像を取り込む画像処理装置と、前記画像処理装置の出力に基づいて自車が本線から取付道へ進入したか否かを検出する車間制御ECUとを備え、
自車が本線から取付道へ進入したと検出されたとき、前記クルーズ制御を行う手段は前記クルーズ制御を中止するクルーズ制御装置。」

という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、まず、一般的に、ACC制御とは、定速走行制御であるクルーズコントロールに車間距離制御などによる速度調整機能を付加したものであって、前方に車両が存在しなければ定速走行制御を行い、前方に車両が存在すれば該車両との安全な車間距離を維持するよう速度制御を行うものであるから、引用発明の「車間制御及び定速走行制御が所定条件下で選択的に実行されるクルーズ制御を行う手段」は本願発明の「ACC(アダプティブクルーズコントロール)制御、渋滞追従制御およびステアリング制御の少なくとも一つを行う車両主制御手段」に相当するといえる。
また、引用発明の「車両前方の画像を取り込む画像処理装置」は本願発明の「車両前方を撮像する撮像手段」に相当する。
次に、本願発明の「撮像手段により取得した画像に基づいて道路設定速度を複数の区分に分類する道路状態判定手段」という構成は、「道路設定速度を複数の区分に分類する」という表現により特許請求の範囲の記載からは必ずしも一義的に解釈することができないため、本願明細書の発明の詳細な説明の項を参酌すると、【0026】には、「道路状態判定手段30は、道路状態検知手段10からの情報と障害物検知手段20からの情報とに基いて、自車両1が走行している道路が自動車専用道路なのか自動車専用道路以外なのか、自車両1が走行している車線が走行車線なのか追い越し車線なのか、自車両1が走行している道路設定速度がいくらなのか、自車両1がこの先走行しようとする道路状態(曲率半径、工事等)がどのようになっているのか、及び、自車両1の周辺に障害物が存在するのか、等を認識するものである。」と記載され、また、【0035】には、「・・・第一実施例は、撮像装置5に基づいて道路状態検知手段10が、自車両の走行車線の情報を検知した時の走行制御の制御状態、即ち、自車両1の走行車線の情報に基づき道路設定速度の区分けを行い、その区分け情報に(注:「を」は誤記)基づき、車両制御装置が車両制御切換えを行うものであり、・・・。」と記載されている。これらの記載によれば、「道路設定速度を複数の区分に分類する」とは「自車両の走行している道路の道路設定速度を複数の速度区分のいずれか一の区分に分類する」という意味であると解される。
一方、引用発明の「車間制御ECU」にて「自車が本線から取付道へ進入したか否かを検出する」のは、上記「3.」で摘記した引用例の【0006】、【0007】、【0011】及び【0012】の記載内容によると、現在走行中の道路が法定速度の高い本線か法定速度の低い取付道かを検出することにあたり、法定速度の異なる道路に対応した走行制御を行うための検出であるといえる。そうすると、引用発明の「車間制御ECU」は、実質的に、自車両の走行している道路の道路設定速度(法定速度)を、高速区分か低速区分かのいずれか一の区分に分類することを行っているといえる。
したがって、引用発明の「画像処理装置の出力に基づいて自車が本線から取付道へ進入したか否かを検出する車間制御ECU」は本願発明の「撮像手段により取得した画像に基づいて道路設定速度を複数の区分に分類する道路状態判定手段」に相当し、引用発明の「自車が本線から取付道へ進入したと検出されたとき」は本願発明の「道路設定速度が複数の区分のうち最も低い区分に分類されたとき」に相当するということができる。
そして、本願発明の「車両主制御手段はACC制御、渋滞追従制御またはステアリング制御の動作を禁止する」態様と、引用発明の「クルーズ制御を行う手段はクルーズ制御を中止する」態様とは、「車両主制御手段はACC制御、渋滞追従制御またはステアリング制御の動作を制御する」という概念で共通する。
さらに、引用発明の「クルーズ制御装置」は本願発明の「車両制御装置」に相当する。

そうすると、両者は、
「ACC(アダプティブクルーズコントロール)制御、渋滞追従制御およびステアリング制御の少なくとも一つを行う車両主制御手段と、車両前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像に基づいて道路設定速度を複数の区分に分類する道路状態判定手段とを備え、
前記道路設定速度が前記複数の区分のうち最も低い区分に分類されたとき、前記車両主制御手段は前記ACC制御、前記渋滞追従制御または前記ステアリング制御の動作を制御する車両制御装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点
道路設定速度が複数の区分のうち最も低い区分に分類されたときの車両主制御手段の制御が、本願発明ではACC制御等を「禁止」する制御であるのに対し、引用発明ではACC制御等を「中止」する制御である点。

5.相違点についての判断
引用発明は、上記「3.」で摘記した引用例【0001】に記載されるように安全で違和感のない走行を可能にするためのものであることに照らせば、ACC制御等を「中止」することは、本線走行中に行うACC制御等を取付道走行中には行うべきでないことを示唆していると解することができる。
また、ACC制御の一機能である定速走行制御を低速走行中に禁止することは、本願出願前に周知の技術(例えば、実願平4-3784号(実開平5-63956号)のCD-ROM【0012】や、特開昭61-36026号公報1ページ右欄16?18行を参照)である。
そうすると、引用発明において、上記周知の技術を考慮することで、ACC制御等を行うべきでない際に「中止」するのに代えて「禁止」することとし、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

また、本願発明の全体構成から奏される作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は、特許法49条2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-05 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-26 
出願番号 特願2001-258068(P2001-258068)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 丸山 英行
本庄 亮太郎
発明の名称 車両制御装置  
代理人 平木 祐輔  

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