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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C |
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管理番号 | 1173799 |
審判番号 | 不服2005-18020 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-20 |
確定日 | 2008-02-27 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第174050号「自動校正付き車両コンパスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月17日出願公開、特開平 8-334328〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年5月31日(パリ条約による優先権主張1995年6月5日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成17年6月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、当審における平成19年2月26日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月27日に明細書についての手続補正がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項42に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年8月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし47のうちの請求項42に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「地球磁場を検出する磁場センサと、該磁場センサに結合された処理回路と、該処理回路に結合されたディスプレイとを備える電子コンパスシステムを補償する方法であって: 第1の補償システムを用い、前記磁場センサにより出力される信号に基づいて、第1の補償値を計算し; 前記第1の補償システムとは異なる第2の補償システムを用い、前記磁場センサにより出力される信号に基づいて、第2の補償値を計算し; 前記第2の補償システムは、前記センサからの信号を継続してモニターし、走行経路を通した車両移動中の最大と最小の信号からオフセット信号を計算して前記第2の補償信号を計算し、 前記処理回路は、前記センサの複数のセンサチャネルのそれぞれの利得を等しくし、 前記センサおよび前記第1の補償値からのデータに基づいて、方位を表示し; 前記センサおよび前記第2の補償値からのデータに基づいて、方位を表示する ことを特徴とする方法。」 3.引用例 (1)一方、平成19年2月26日付け拒絶理由通知書に引用した特公平5-21408号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「特許請求の範囲 1 水平面内での地磁気磁界の方位変化により直角座標面上での直交位置が円軌跡として現われる第1と第2との信号からなる信号対を得、この信号対により上記円軌跡上に与えられる点座標により地磁気磁界の方位を検出する方式の移動体方位検知装置において、 上記円軌跡上で互いに離れた任意の3点の座標に対応して順次現われる上記信号対を保持する手段を設け、 移動体の着磁に伴う上記円軌跡の中心点座標の変化が所定値に達したとき、上記保持した3点の信号対によつて上記円軌跡の中心点の座標を算出し、算出した座標を新たな中心点座標として設定し、 少なくとも1点の新たな信号対をさらに保持し、上記新たな中心点座標に基づいて、上記新たに保持した少なくとも1点の信号対が予め定めた円軌跡の範囲内に位置するか否かを判断し、 上記円軌跡範囲内にない場合には、上記保持した3点の信号対と上記新たに保持した少なくとも1点の信号対とのうち、互いに最も離れた3点を選定し、選定された3点によつて上記円軌跡の中心点の座標を算出し、算出した座標を新たな中心点座標として設定するように構成したことを特徴とする移動体方位検知装置。」 ・「第1図は本発明の一実施例で、センサ素子Sは第2図で説明したとおりであり、このセンサ素子Sの励磁コイル2には励磁回路5を介して発振器6から周波数f(例えばf=10KHz)の交番信号が供給され、これにより検出コイル3と4からの出力信号S_(X),S_(Y)が取出されるようになつている。そして、このとき、検出コイル3又は4の一方の軸を移動体の移動方向に一致させておく。 これらの出力信号S_(X)とS_(Y)は、それぞれ正と負の交番パルス状(注:「交番パネス状」は誤記)として現われるため、検波器7,8で発振器6からの周波数2fの信号によつて同期検波され、これにより正極性のパルスとなり、積分器9,10で平滑化されて電圧信号となり、アンプ11,12により所定のレベルの出力信号V_(X),V_(Y)として取出される。 このとき、定電圧回路13からは定電圧Voが供給されており、これにより第3図で説明した中心点Oの座標となる電圧V_(XN),V_(YN)が与えられるようになつている。 つまり、Vo=V_(XN)=V_(YN)となつている。 一方、マイコンのCPUからなる演算処理部14はA/D(アナログデイジタル変換器)15を介して信号V_(X)とV_(Y)を取込み、第2図に関連して説明したように、上記(1)式の方法で方位θの算出を行ない、必要に応じて結果を表示器18で表示させる。」(5欄11行?36行) ・「なお、(7)式の条件を満しても真の中心点でない場合もあるが、本実施例としては、(7)式を満さない場合は、そのまま補正モードにとどめるが、(7)式の条件を満したときには一応着磁補正が完了したものとして、方位演算式(1)に使う中心点のデータを入れ替えるようにしてある。」(7欄21?26行) ・第1図には、検波器7等を介してセンサ素子Sが演算処理部14に結合され、また、演算処理部14が表示部18(表示器18)に結合されていることが開示されている。 ・引用例1には「移動体方位検知装置」について記載されているが、その記載内容をみると、かかる移動体方位検知装置の着磁補正方法、即ち、「移動体方位検知装置を補償する方法」についても開示されているといえる。 これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例1には、 「地磁気磁界を検出するセンサ素子と、該センサ素子に結合された演算処理部と、該演算処理部に結合された表示器とを備える移動体方位検知装置であって: 移動体の着磁に伴う円軌跡の中心点座標の変化が所定値に達したとき、円軌跡上で互いに離れた任意の3点の座標に対応する、センサ素子により出力される信号対に基づいて新たな中心点座標を算出し; 前記センサ素子および前記新たな中心点座標に基づいて、方位を表示する 移動体方位検知装置を補償する方法。」 という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。 (2)同じく、引用した特開平1-321310号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「従って、本発明の目的とするところは、上述の如き地磁気センサ(あるいは自動車)を360゜回転させる補正が行われるまでの間、暫定的な補正を行うようにした方位検出装置を提供する(注:「る」を追加)ことにある。」(2ページ右上欄13行?17行) ・「次に、前回の円Aの中心Oaと今回の円Bの中心Obの移動量が所定の値Mより小さいか否かをチエツクする(S12)、この所定の値Mとしては、例えば前回の円Aの半径rを用いることができる。 円の中心の移動量(Oa-Ob)が所定の値Mより小さければ、今回の円Bの中心Obで前回の中心Oaを置換する(S13)。 そして、前回の方位θbを出力する(S6)。 これは、第3図において、Pbからベクトルαを用いて中心Ob′を求めることは、方位θb′が方位θaに等しいとすることに他ならないからである。 一方、第4図に示すように、中心の移動量(Oa-Ob)が所定の値M以上であれば、1回転補正を促すアラームを出力する(S14)。 そして、中心Obで中心Oaを置換し(S13)、方位θaを出力する(S6)。 このように、方位を算出する基準となる円の中心座標値が更新されるので、1回転補正により正確に中心座標値が求められるまでの間、小さな誤差で方位を検出し続けられるようになる。」(3ページ右下欄3行?4ページ左上欄4行) 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、まず、引用発明の「地磁気磁界を検出するセンサ素子」は、本願発明の「地球磁場を検出する磁場センサ」に相当し、以下同様に、「演算処理部」は「処理回路」に、「表示器」は「ディスプレイ」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「移動体方位検知装置」は、移動体方位検知装置がセンサ素子(磁場センサ)の出力信号に基づいて演算処理部(処理回路)で方位を演算するものであるから、「電子コンパスシステム」に相当するといえる。 そして、引用発明の「移動体の着磁に伴う円軌跡の中心点座標の変化が所定値に達したとき、円軌跡上で互いに離れた任意の3点の座標に対応する、センサ素子により出力される信号対に基づいて新たな中心点座標を算出」することは、全体的にみれば、着磁補正という補償を行うシステムといえ、かつ、新たな中心点座標は補償値といえるので、本願発明の「第1の補償システムを用い、磁場センサにより出力される信号に基づいて、第1の補償値を計算」することに相当するということができる。これに伴って、引用発明の「センサ素子および新たな中心点座標に基づいて、方位を表示」することは、本願発明の「センサおよび第1の補償値からのデータに基づいて、方位を表示」することに相当するといえる。 よって、両者は、 「地球磁場を検出する磁場センサと、該磁場センサに結合された処理回路と、該処理回路に結合されたディスプレイとを備える電子コンパスシステムを補償する方法であって: 第1の補償システムを用い、前記磁場センサにより出力される信号に基づいて、第1の補償値を計算し; 前記センサおよび前記第1の補償値からのデータに基づいて、方位を表示する方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 ・相違点 補償システムに関し、本願発明は「第1の補償システムとは異なる第2の補償システムを用い、磁場センサにより出力される信号に基づいて、第2の補償値を計算し;前記第2の補償システムは、前記センサからの信号を継続してモニターし、走行経路を通した車両移動中の最大と最小の信号からオフセット信号を計算して前記第2の補償信号を計算し、前記処理回路は、前記センサの複数のセンサチャネルのそれぞれの利得を等しくし」たうえで、「センサおよび第2の補償値からのデータに基づいて、方位を表示する」ものであるのに対し、引用発明はかかる第2の補償システムを含んでいない点。 5.相違点についての判断 引用例2には、方位検出装置(電子コンパスシステム)の補償方法として、暫定的な補正と自動車を360°回転させる補正という相異なる2種類の補償方法を使い分ける発明(以下「引用発明2」という。)が開示されている。 また、移動体に搭載される電子コンパスの技術分野において、移動中の磁場センサの最大と最小の信号から計算したオフセット信号を電子コンパスの補正に用いること、及び、磁場センサの信号軌跡が楕円状な場合にそれを真円状にすべく複数のセンサチャネルの利得を調整して電子コンパスの補正を行うことが、共に周知の技術である(例えば、特開昭57-148210号公報2ページ右上欄12行?右下欄3行、特開昭58-24811号公報2ページ左下欄6行?右下欄15行、及び、本願明細書【0002】等で引用する米国特許第4953305号明細書6欄17?24行等を参照)。 ここで、引用発明と引用発明2とが、共に電子コンパス技術に関するものであり、また、電子コンパスの補償という共通の機能を有するものであるから、引用発明2を参考にして、引用発明に上記周知の技術を採用することで、引用発明に、第1の補償システムに加え、本願発明の第2の補償システムに相当するものを含むように構成することは当業者が容易になし得たものである。そして、これに伴って、センサ及び第2の補償値からのデータに基づいて方位を表示するよう構成することは当業者にとって格別の困難を伴うことなく実施できたことである。 そうすると、引用発明2を参考にして、引用発明に周知の技術を採用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 また、本願発明の全体構成から奏される作用効果も、引用発明及び引用発明2並びに周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用発明2並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は、特許法49条2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-28 |
結審通知日 | 2007-10-02 |
審決日 | 2007-10-15 |
出願番号 | 特願平8-174050 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 本庄 亮太郎 |
発明の名称 | 自動校正付き車両コンパスシステム |
代理人 | 三好 秀和 |