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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) A61B
管理番号 1174121
判定請求番号 判定2007-600027  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-04-25 
種別 判定 
判定請求日 2007-03-23 
確定日 2008-02-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3309276号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面ならびにその説明書に示す「蛍光電子内視鏡システム」は、特許第3309276号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1.請求の趣旨

本件判定の請求の趣旨は、イ号図面ならびにその説明書に示す「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」,「EVIS LUCERA 気管支ビデオスコープ OLYMPUS BF TYPE F260」、「EVIS LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」そして「EVIS LUCERA 大腸ビデオスコープ OLYMPUS CF TYPE FH260A Zシリーズ」(以下、まとめて「対象製品」という。)は、特許第3309276号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。(以下、便宜的に「第1の請求」という。)
そして、オリンパスメディカルシステムズ株式会社(以下「オリンパス」という。)が提供した自家蛍光電子内視鏡システムを用いて作成し、2004年10月25日以降になされた学会・論文発表も特許第3309276号発明の権利侵害である、との判断を求めたものである。(以下、便宜的に「第2の請求」という。)
以下、「第1の請求」について「第2.」乃至「第5.」において判断し、「第2の請求」について「第6.」において判断する。

第2.本件特許発明

1.本件特許発明の構成
特許第3309276号発明の構成は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(判定請求人は、対象製品が請求項1の技術範囲に属すると主張しているので、以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明」という。)は、構成要件ごとに(A)?(G)の符号を付して分説すると、次のとおりである。

(A)蛍光内視鏡検査において、
(B)励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に 組織に照射し、
(C)組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に励起光は通過 させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおいて、
(D)励起光(例えば、青)が組織に当たって蛍光(例えば、黄色)を発 生させたタイミングで濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの 3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば 、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して、
(E)励起光以外の光(例えば、緑と赤)の時はCCDの残りの2つのチ ャンネル(例えば、緑と赤)にて背景の映像を拾い、
(F)送信後の3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映 像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るところを特 徴とする
(G)光診断装置。」

2.本件特許発明の目的及び作用効果
本件特許明細書の記載によれば、本件特許発明は、「第一に、蛍光内視鏡の映像は暗く、撮影はhigh speedcolor film(ASA160)を用い、シャッタースピード 1/8?1/15 で、4?8 倍に増感現像しなければならない。勝らが使用した励起フィルターはfluoresceinisothiocyanate(FITC)干渉フィルター(千代田光学)であり、fluoresceinの励起光の波長(495nm)を選択的に透過するものであった。ファイバースコープでは、フィルムの現像ができあがるまで所見の確認はできず臨床においてあまり実用的ではない。
第二に、電子スコープがファイバースコープに取って代わって広く使われるようになったことである。電子スコープにFITC干渉フィルターをセットしてフルオレセイン蛍光内視鏡検査を行おとすると映像が非常に暗くなり、観察不可能になる。この問題を解決するためには強烈な光源が必要とされるが、今まで実現されなかった。また、FITC干渉フィルターは薄いフィルム状のフィルターを重ねたものであり、これらのフィルム状のフィルターは通常の電子スコープの光源の熱でさえ長くは耐えられない。
第三に、ファイバースコープでは濾過フィルターの差し込みと取り外しは簡単にできた。電子スコープでは濾過フィルターをスコープの先端にあるCCDの前に置く必要があるので、体内に挿入したあとでは簡単に差し込むと取り外しができなくなる。電子スコープを使うと通常と蛍光内視鏡検査を行うためには、通常の内視鏡と蛍光検査用の内視鏡を別々に2度挿入しなければならない。ということは、患者の苦痛が2倍、また、検査の時間も2倍になるわけである。
一方、最近開発された自家蛍光内視鏡システムでは、蛍光の映像は濃い青の正常粘膜に赤っぽい病変という暗いもので、この蛍光の映像を見ながら生検や粘膜切除の作業は危険である。作業する時は通常の内視鏡の映像に繰り変えてからでなければならないため、病変の特定は容易でないことも少なくない。」(本件特許明細書【0004】?【0007】)という課題を解決することを目的として、
上記「第2.1.本件特許発明の構成」を採用することにより、
「【発明の効果】以上、上記説明でも明らかなように本発明の請求項1に記載の蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見る方法は、励起光と調整フィルターで調整した光を交互に被観察物に照射し、白黒ないしカラーのCCDの前に濾過フィルターをおいて、蛍光を励起光から取り出し、それを3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光しかつ強調して、残りの2つのチャンネル(例えば、赤と緑)にて、調整フィルターで調整した光で背景の映像を拾い、送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に映像にすることによって、背景の中に蛍光を発しているところを特定しやすくするだけでなく、従来の蛍光だけの映像と比べて視野が明るく生検や粘膜切除などの操作が、蛍光を見ながら簡単にできるほか、フィルムやカラープリンターでの写真の撮影も通常観察時と同じ条件でできるところにある。」(本件特許明細書【0047】)という効果を奏するものである。

第3.イ号物件

1.イ号図面ならびにその説明書について
判定請求書に添付されたイ号図面において、「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」は、「EVIS LUCERAビデオシステムセンター OLYMPUS CV-260SL」と「EVIS LUCERA高輝度光源装置 OLYMPUS CLV-260SL」から構成されており、ビデオスコープ部分の構成は含まれないものであるところ、「EVIS LUCERA 気管支ビデオスコープ OLYMPUS BF TYPE F260」、「EVIS LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」及び「EVIS LUCERA 大腸ビデオスコープ OLYMPUS CF TYPE FH260AZシリーズ」は、観察部位に特化したビデオスコープであり、内視鏡ビデオスコープシステム「EVIS LUCERA SPECTRUM」を構成する「EVIS LUCERAビデオシステムセンター OLYMPUS CV-260SL」及び「EVIS LUCERA高輝度光源装置 OLYMPUS CLV-260SL」との組み合わせにより使用が可能である旨が記載されていることから、請求人の主張の全趣旨に照らせば、「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」と「EVIS LUCERA 気管支ビデオスコープ OLYMPUS BF TYPE F260」とを組み合わせたもの、「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」と「EVIS LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」とを組み合わせたもの、「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」と「EVIS LUCERA 大腸ビデオスコープ OLYMPUS CF TYPE FH260AZシリーズ」とを組み合わせたものが、請求人が「対象製品」とするイ号物件を示すものと認められる。(以下、この「対象製品」を「イ号物件」という。)

2.判定請求人が主張するイ号物件の構成
判定請求人は、判定請求書において、甲第4号証として提出したオリンパスの通告回答書第2頁の記載を引用して、イ号物件を構成ごとに符号イ?トを付して次のとおり分説している。

イ 蛍光内視鏡検査において
ロ 励起光(390?470nm(青)と第1の照明光(540?56 0nm)(緑))と第2の照明光(540?560nm(緑))を 交互に組織に照射し、
ハ 組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に、励起光を通 過させないが、470?690nmの光を通す濾過フィルターをお いて、
ニ 励起光が組織に当たって蛍光を発生させるタイミングで、濾過フィ ルターを通過できた蛍光をCCDの時系列な3の撮像タイミング( 赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し、励起 光から蛍光を取り出し、
ホ 第1の照明光(緑)の時はCCDの時系列な3の撮像タイミング( 赤、緑、青)のうちの赤の撮像タイミング、また第2の照明光(緑 )の時には青の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、
ヘ 緑の撮像タイミングで得られた信号を蛍光の映像(緑)、赤の撮像 タイミングで得られた信号を背景の映像とし、2つを合成する一方 、青の撮像タイミングで得られた信号は捨てることで、蛍光の映像 と背景の映像を同時にかつ同じ画面で見るところを特徴とする。
ト 光診断装置

3.判定被請求人が主張するイ号物件の構成
これに対し、判定被請求人は、答弁書において、イ号物件には「内視鏡ビデオスコープシステム EVIS LUCERA SPECTRUM」、「EVIS LUCERA 気管支ビデオスコープ OLYMPUS BF TYPE F260」、「EVIS LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」、「EVIS LUCERA 大腸ビデオスコープ OLYMPUS CF TYPE FH260AZ シリーズ」が含まれるとし、イ号物件を構成ごとに符号(a)?(g)を付して次のとおり分説している。

(a)蛍光内視鏡検査において
(b)励起光(390?440nm(青)または390?470nm(青 ))と照明光(540?560nm(緑))を交互に組織に照射し 、
(c)組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に、励起光は通 過させないが、470?690nmまたは500?630nmの光 を通す濾過フィルタをおいて、
(d)励起光が組織に当たって蛍光を発生させたタイミングで、濾過フィ ルタを通過できた蛍光をCCDの時系列な3つの撮像タイミング( 赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し、励起 光から蛍光を取り出し、
(e)照明光(緑)の時はCCDの時系列な3つの撮像タイミング(赤、 緑、青)のうちの赤の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、
(f)緑の撮像タイミングで得られた信号を蛍光の映像(緑)、赤の撮像 タイミングで得られた信号を背景の映像とし、2つを合成すること で蛍光の映像と背景の映像を同時にかつ同じ画面でみるところを特 徴とする
(g)光診断装置

4.イ号物件の構成
イ号物件の構成については、上記2.及び3.のように判定請求人及び判定被請求人の間に一部争いがあるものの、イ号物件が、甲第5号証(別紙参照)の「対象製品説明書」の第2頁に示された構成を有していることに、判定請求人及び判定被請求人の間に争いはない。そして、甲第5号証の「対象製品説明書」の第3頁の説明が、第2頁に示された構成の説明をしているものであるから、甲第5号証の第2頁及び第3頁の記載内容を参酌して、イ号物件の構成は、次のとおりのものであると認める。

(α)蛍光内視鏡検査において
(β)励起光R(390?440nm(青)または390nm?470n m(青))と照明光G1(540?560nm(緑))と照明光G 2(540?560nm(緑))を交互に組織に照射し、
(γ)組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に、励起光Rは 通過させないが、470?690nmまたは500?630nmの 光を通す濾過フィルターをおいて、
(δ)励起光Rが組織に当たって蛍光Fを発生させたタイミングで、濾過 フィルターを通過できた蛍光をCCDの時系列な3つの撮像タイミ ング(赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し 、励起光Rから蛍光Fを取り出し、
(ε)照明光G1(緑)の時はCCDの時系列な3つの撮像タイミングの (赤、緑、青)のうちの赤の撮像タイミングにて背景の映像を拾い 、また、照明光G2(緑)の時は青の撮像タイミングにて背景の映 像を拾い、
(ζ)赤の撮像タイミングで得られた信号は緑画像信号G1-1、G1-2 、・・・として同時化メモリのRに書き込まれた後マトリクス回路 に出力され、緑の撮像タイミングで得られた信号は蛍光Fの蛍光画 像信号F-1、F-2、・・・として同時化メモリのGに書き込まれ た後マトリクス回路に出力され、青の撮像タイミングで得られた信 号を緑画像信号G2-1、G2-2、・・・として同時化メモリのB に書き込まれた後マトリクス回路に出力され、その後、マトリクス 回路において、赤の撮像タイミングで得られた緑画像信号G1-1 、G1-2、・・・は1倍処理したG1’(R)と0.5倍処理し た0.5G1’に変換され、蛍光画像信号F-1、F-2、・・・は 1倍処理したF(G)に変換される一方で、緑画像信号G2-1、 G2-2、・・・は不要な信号として排除され、その後、G1’( R)、0.5G1’、F(G)は後処理回路に入力され、G1’( R)信号を赤の映像信号(R)、F(G)信号を緑の映像信号(G )、0.5G1’を青の映像信号(B)としてモニターに出力して 、モニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同 じ画面でみるところを特徴とする
(η)光診断装置。

第4.本特許発明及びイ号物件についての当事者の主張

本件特許発明の構成要件(B)?(F)の充足性について争いがあり、判定請求人及び判定被請求人は、以下のとおり主張している。

1.判定請求人の主張の概要
(1)構成要件Bについて
ア.「判定請求人が、明細書や意見書で励起光に青、反射光に緑と赤を使用すると記載したのは実施例の説明であって、
請求項1では、
「励起光に青、それ以外の光に緑と赤」と記載せずに、
「励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)と意図的に書いたことから分かるように、「励起光」は必ず「青」でなければならないとは限らない。また、「それ以外の光」も必ず「緑と赤」の二色でなければならないとは限らない。
実施例で励起光に「青」を使用したから「励起光(例えば、青)」と、また、それ以外の光に「緑と赤」を使用したから「それ以外の光(例えば、緑と赤)」と記載しただけのことである。
・・・
このように、本特許発明の請求項1の「励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)」という記述は「2以上の波長の光。一つの波長は、蛍光の励起光であり、他の波長は、非励起光である。」との記述と等しいと考えられる。そして、照射光として、「励起光に青、非励起光(それ以外の光)に赤」の2色しか使用しなくてもこの記述の範囲に入ることは明確である。」
(請求人が提出した平成19年10月9日付け上申書第2頁第4行?33行)

(2)構成要件Cについて
ア.「請求範囲の【請求項1】をみると、「蛍光内視鏡検査において、励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に組織に照射し、組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に励起光を通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおいて、...」とあり、「それ以外の光」とは背景を拾うために「励起光と交互に組織に照射される光」であり、「励起光以外の光」を意味するものではない。
濾過フィルターを置く目的は、励起光から蛍光を取り出すところにある。濾過フィルターは、特に白黒CCDの場合励起光を完全にカットしないといけないが、できるだけ蛍光を多く通しかつ背景の映像を拾うのに使用する「励起光と交互に組織に照射される光」を遮断しないものが理想的である。
対象製品で使われている500-630nmの光を通す濾過フィルターも、励起光(390-470nm)は通過させないが、背景の映像を拾うのに使う緑の光(540?560nm)をすべて通しているので、本特許発明と同じ構成の濾過フィルターを使用している他にならない。従って、当該被請求人の主張は、本件発明の誤った解釈に基づくものであり、失当であると言わざるを得ない。(請求人が提出した平成19年10月9日付け上申書第6頁第10?23行)

(3)構成要件D,E,Fについて
ア.「まず、下に示す甲第7号証(図3)から分るように、ここでいうチャンネルとは通常カラーモニターに映像の信号を配信する「赤、緑、青」の3つのチャンネルを指す。」(判定請求書第6頁第4?6行)

イ.「対象製品では、途中で1つの撮像タイミングで受光した反射光の映像を複製し、モニタへの別の配信ルートにも流し、オリンパス自身も「チャンネル」と読んでいるビデオシステムセンターからモニタ端子までの間において、蛍光の映像はGch(緑チャンネル)、そして背景の映像はR,Bch(赤と青チャンネル)に配信し、モニタ上では緑の蛍光映像と、赤と青の背景の映像を融合させ3色からなる映像を作っている。
つまり、ビデオシステムセンターの段階で、必要性のない本特許発明の下位概念、或いは利用である2つある緑光信号のうち1つを「捨てること」、残った1つの緑光の信号を2つに「複製すること」をしているが、最終的には明るい背景の中で蛍光がどこで発生しているのかをはっきり観察できるように、白黒CCDの3つあるチャンネルのうち1つのチャンネルで蛍光を受光し、残りの2つのチャンネルで背景の映像を拾い、蛍光の映像と背景の映像を融合させ同時にかつ同じ画面で見るという本特許発明1が特許性を認められた技術を対象製品が用いていることは明白である。
よって、対象製品の構成d,e,fも本件発明の構成に相当する。」(請求人が提出した平成19年10月9日付け上申書第10頁第27行?第11頁第3行)

2.判定被請求人の主張の概要
(1)構成要件Bについて
ア.「本件特許発明は、励起光以外の光(以下「照明光」という。)を2種類用いるいわゆる3色型蛍光内視鏡であり、その点は次のような点から明らかである。
1 クレームの文言には、「それ以外の光(例えば、緑と赤)」と記載されており「緑と赤」は「緑及び赤」の意味であることは明確であり、「それ以外の光」が2種類の光であることは文言上明確である。よって、不明確な点がないため明細書の記載等を参酌するまでもなく、「それ以外の光」は2種類の光であると文言上解釈されるべきである。
しかるに、対象製品は、励起光以外の光としては、1種類しか用いていない。よって、対象製品は、構成要件Bを充足していない。
・・・
これらの記載からも明らかなように、本件特許発明は、三原色の照射光を用いて照射し、CCDの3つあるチャンネルのうち1つのチャンネルで蛍光画像を取得し、他の2つのチャンネルで赤と緑の反射光を拾い、これらを合成することによって、なるべく自然の画像に近い合成画像を得ながら、青信号の増幅等により蛍光画像の明瞭化を図ったものである。
よって、構成要件Bは、励起光以外に2種類の照明光を用いるもの(三色型蛍光内視鏡)である。
(判定請求答弁書第7頁第8行?第8頁第20行)

イ.「3 本件特許発明に関する異議決定書(異議2003-70284、乙第13号証)において、御庁では、「引用発明は、蛍光内視鏡検査において、励起光(青(B))とそれ以外の光(緑(G)と赤(R))を交互に被検部位に照射するものである。そして、刊行物1の被検部位と本件発明1の組織との間に格別の相違があるものとはいえない。したがって、引用発明は、本件発明の構成Aを有する」としている(9頁13行目から17行目)。
ここで、引用発明は、「この回転フィルタ30には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各波長領域の光を通過するフィルタが、周方向に沿って配列されている」(275頁左上欄下から5行目ないし3行目)と記載されているように、赤、緑、青の3色の光を用いる蛍光内視鏡である。ここでは、青(B)が励起光として用いられ(275頁右下欄上から12行目ないし13行目)、緑(G)、赤(R)の反射光と合わさって「被検部位のカラー画像が得られる」(276頁左上欄上から5行目)のである。
このように本異議決定においては、励起光及び2色の照明光の合計3色の光を用いる引用発明と、本件特許発明の間に相違を認めておらず、本件特許発明が3色型であることは明らかである。
なお、請求人自身も本特許異議申立に対する意見書(平成15年7月10日付、以下「本意見書」という。)において、「甲第1号証である・・・では、面順次方式電子内視鏡を用いているという点と、赤と緑の光より青の光を多く照射するという点では本特許と同じである」(1頁下から12行目ないし9行目)と述べており、本件特許発明が、赤、緑及び青の光を用いるものであることを認めている。(判定請求答弁書第8頁第21行?第9頁第11行)

(2)構成要件Cについて
ア.「本件特許発明は、「それ以外の光をすべて通す濾過フィルタ」を備えている。つまり、励起光以外の光はすべて濾過フィルターを通過することとなるのである。
しかしながら、対象製品では、次のような構成を備えている。
1 気管支用の場合:
・励起光の波長は、390?440nm
・470?690nmの光を通す濾過フィルタを用いており、470 nmまでも波長の光(励起光を完全に含む。)及び690nmを越 える波長の光は濾過フィルタを通過することはできない。
よって、励起光以外であり、かつ690nmを越える波長の光は濾 過フィルタを通過することはできず、構成要件Cを充足しない。
2 消化器用の場合:
・励起光の波長は、390?470nm
・500?630nmの光を通す濾過フィルタを用いており、500 nmまでの波長の光及び630nmを越える波長の光は濾過フィル タを通過することはできない。
よって、励起光以外であり、かつ470?500nm及び630n mを越える波長の光濾過フィルタを通過することはできず、構成要 件Cを充足しない。
したがって、対象製品は、構成要件Cを有していない。」(判定請求答弁書第9頁第14行?第10頁第3行)

(3)構成要件Dについて
ア.「請求人は、「ここでいうチャンネルとは通常カラーモニターに映像の信号を配信する「赤、緑、青」の3つのチャンネルを指す」と「チャンネル」の新たな定義付けを試みているが、本件発明1の構成要件Dに「蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して」との記載があるように、「チャンネル」とは、CCDに備わっている信号出力端子を示す文言である。
したがって、当該新たなチャンネルの定義は、本件特許発明のクレーム文言中の記載に基づく定義と一致せず、本件特許発明の解釈としては無効である。明細書の起案者がクレーム文言の辞書編纂者(lexicographer)である、ということは特許法上の重要な原則である。」
(判定請求答弁書第16頁下から2行?第17頁第6行)

イ.「本件特許請求の範囲においては、本件発明1の構成要件Dに「蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して」との記載があるように、「チャンネル」とは、CCDに備わっている信号出力端子を示す文言であることは明確である。白黒CCDの場合には、構造上端子は一つだけなので、この信号出力端子は特定の「撮像タイミング」を指すこととなる。もし、このチャンネルが、モニターに備わっているR,G,B入力装置を指すのであれば、クレームの文言は、「・・・信号をモニターのRチャンネルに入力し・・・」などと記載されるはずである。
(判定被請求人が提出した平成19年11月19日付け上申書第8頁第2?9行)

(4)構成要件(E)について
ア.「本意見書によれば、本件特許発明の最大の特徴は、「蛍光の映像をCCDの3つあるチャンネルのうち一つのチャンネルを用いて受信し、背景の映像を残りの2つのチャンネルで受信し、その後のモニター上3つのチャンネルの信号を融合させるという点」にあるとしている(1頁16行目ないし19行目)。また、「緑と赤で受信した背景の映像と融合させている」(5頁2行目ないし3行目)としている。さらには、「通常のカラー映像に蛍光の映像を融合させる方法だと、蛍光の映像と背景の映像には波長的に重なる部分があり、蛍光の変化を感知することが難しい」、「蛍光の発するところは青信号だけでなく、背景の緑と赤も加わるので、白く明るく見える。そのため、高感度のCCDを使うことなく鮮明かつ明るい映像が得られる。」と主張している。(2頁下から8行目ないし6行目、3頁下から5行目ないし2行目)。したがって、本件特許発明では、背景の映像用として2色の光を用いており、その反射光をCCDの2つのチャンネルで拾っていることが明確である(白く見えるためには、3色の光が重なることが必要である。)。
しかしながら、対象製品は、励起光を受信したチャンネルからの信号及び緑の照明光を受信したチャンネルからの信号の2つの信号のみを用いて、すなわち背景の映像用としては1つの信号のみを用いて映像を得ている。
また、本意見書によれば、「本特許の映像は青、緑、赤3色から構成されている」(4頁下から8行目ないし9行目)としているが、対象製品は、緑の撮像タイミングで得られた信号と赤の撮像タイミングで得られた信号の2つしか用いていない。
したがって、対象製品は、構成要件Eを有していない。」(判定請求答弁書第10頁第5?22行)

(5)構成要件(F)について
ア.「上記のように、本件特許発明は3つのチャンネルの信号を融合させるものであり、対象製品は2つのチャンネルの信号を融合させるものである。
よって、対象製品は、構成要件Fを有していない。」(判定請求答弁書第10頁下から3行目?最下行)

第5.対比及び判断

1.本件特許発明の各構成要件とイ号物件の各構成との対応関係
本件特許発明とイ号物件は、上記「第2.1.本件特許発明の構成」及び上記「第3.4.イ号物件の構成」において分説したとおりの構成を有しているものであるところ、イ号物件の各構成(α)?(η)は、それぞれ本件特許発明の各構成要件(A)?(G)に対応するものである。
そこで、イ号物件の上記各構成が、対応する本件特許発明の上記各構成要件を充足するかを以下に検討する。

2.本件特許発明の構成要件(A)について
イ号物件の構成「(α)蛍光内視鏡検査において、」は、本件特許発明の構成要件「(A)蛍光内視鏡検査において、」と一致するから、イ号物件の構成(α)は、本件特許発明の構成要件(A)を充足する。

3.本件特許発明の構成要件(B)について
本件特許発明の構成要件(B)は、「励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に照射し、」であるところ、「励起光(例えば、青)」及び「それ以外の光(例えば、緑と赤)」という記載中のそれぞれ括弧内の記載である「(例えば、青)」及び「(例えば、緑と赤)」は、「例えば」と記載されているように、励起光として「青」、それ以外の光として「緑と赤」を用いることが出来るという例示をしているにとどまり、励起光が「青」、それ以外の光が「緑と赤」に限定されるものではなく、また、励起光が「1種類の光」、それ以外の光が「2種類の光」に限定されるものではない。
また、「それ以外の光」の「それ」とは、「励起光」を指していることが明らかであるから、「それ以外の光」とは、「励起光以外の光」ということができる。
そして、本件明細書には、「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、charge coupled device’(CCD)にて蛍光の画像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見る方法に関するものである。」、「【0009】・・・我々の方法は本発明の請求項1に記載してあるように、蛍光の画像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見る方法であることが分かった。つまり、励起光と調整フィルターで調整した光を交互に被観察物に照射し、白黒ないしカラーCCDの前に濾過フィルターをおいて、蛍光を励起光から取り出し、それを3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光しかつ強調して、残りの2つのチャンネル(例えば、赤と緑)にて、調整フィルターで調整した光で背景の映像を拾い、送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に画像にするところを特徴とする方法である。」と記載されているように、励起光以外の光とは、被観察物を観察するために励起光と共に用いる照明光と解することができる。
以上の前提を踏まえてイ号物件の構成「(β)励起光R(390?440nm(青)または390nm?470nm(青))と照明光G1(540?560nm(緑))と照明光G2(540?560nm(緑))を交互に組織に照射し、」と本件特許発明の構成要件「(B)励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に照射し、」とを対比すると、イ号物件の構成(β)の「励起光R(390?440nm(青)または390nm?470nm(青))」が、構成要件(B)の「励起光(例えば、青)」に相当し、また、構成(β)の「照明光G1(540?560nm(緑))」と「照明光G2(540?560nm(緑))」を合わせて構成要件(B)の「それ以外の光(例えば、緑と赤)」に相当することは明らかである。

なお、判定被請求人は、判定請求答弁書において、本件特許発明に関する異議決定においては、励起光及び2色の照明光の合計3色の光を用いる引用発明と、本件特許発明との間に相違を認めておらず、本件特許発明が3色型であることは明らかである旨、主張しているが、上記異議決定においては、引用例との一致点を判断しただけであって、本件特許が3色型のものを含むものであれば構成は一致するのであるから、判定被請求人の主張は、本件特許発明を3色型に限定して解する根拠とすることはできない。
また、判定請求人は、請求人が異議申立に対する意見書において、「甲第1号証である・・・では、面順次式電子内視鏡を用いているという点と、赤と緑の光より青の光を多く照射するという点では本特許と同じである」と述べている旨、主張しているが、請求人は、単に甲第1号証との一致点を述べたものにすぎず、その点に特許性に関する主張をしているものではないから、その主張があるからといって、本願発明の構成を3色型に限定的に解釈することはできない。
したがって、イ号物件の構成(β)は、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。

4.本件特許発明の構成要件(C)について
本件特許発明の構成要件「(C)組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に励起光は通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおいて、」とイ号物件の構成「(γ)組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に、励起光Rは通過させないが、470?690nmまたは500?630nmの光を通す濾過フィルターをおいて、」とを対比すると、イ号物件の構成(γ)の「励起光R」が、本件特許発明の構成要件(C)の「励起光」に相当するところ、組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前におく濾過フィルターの構成について、イ号物件の構成(γ)では「励起光Rは通過させないが、470?690nmまたは500?630nmの光を通す濾過フィルター」であるのに対して、本件特許発明の構成要件(C)では「励起光は通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルター」である。
そこで検討するに、本件発明の構成要件(C)の「それ以外の光」とは、上記「3.構成要件(B)において」で検討したように、被観察物を観察するために励起光と共に用いる照明光であると解されるところ、イ号物件の照明光G1、照明光G2の波長は、イ号物件の構成(β)に記載されたとおり540?560nmであり、また、イ号物件の濾過フィルターはイ号物件の構成(γ)に記載されたとおり470?690nmまたは500?630nmの光を通すものであるから、イ号物件の濾過フィルターは、イ号物件の照明光G1、照明光G2の波長をすべて通すものとなることは明らかである。
したがって、イ号物件の構成(γ)は、本件特許発明の構成要件(C)を充足する。

5.本件特許発明の構成要件(D)について
本件特許発明の構成要件「(D)励起光(例えば、青)が組織に当たって蛍光(例えば、黄色)を発生させたタイミングで濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して、」とイ号物件の構成「(δ)励起光Rが組織に当たって蛍光Fを発生させたタイミングで、濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの時系列な3つの撮像タイミング(赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し、励起光Rから蛍
光Fを取り出し、」を対比すると、イ号物件の構成(δ)の「励起光R」及び「蛍光F」が、本件特許発明の構成要件(D)の「励起光(例えば、青)」及び「蛍光(例えば、黄色)」に相当するところ、励起光から蛍光を取り出す構成として、イ号物件の構成(δ)では「濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの時系列な3つの撮像タイミング(赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し」ているのに対して、本件特許発明の構成要件(D)では、「濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し」ているものである。
そこで、先ず、構成要件(D)の「CCDのチャンネル」について検討する。
本件特許の明細書及び図面の記載を参酌すると、段落【0021】には、「考察:実験に使った光源装置では、光源の前に三原色RGBのbandpass filtersを置き、それを回転させて順次に三原色の光を作り出し、被観察物に照射する。そして、被観察物から順次に反射してくる三原色の光を内視鏡先端の白黒のcharge coupled device(CCD)にて受光し電気信号に変える。つまり、三原色の赤の時はCCDで受けた電気信号は赤チャンネルとして、緑の時は緑チャンネルとして、そして、青の時は青チャンネルとして扱い、送信後ビデオシステムセンターによってモニター上に画像を再構成している。」と記載されている。また、図6には、赤色光を被観察物に照射したタイミングで反射光を白黒CCDで受けて電気信号に変換して出力する構成を赤チャンネル、緑色光を被観察物の照射したタイミングで反射光を白黒CCDで受けて電気信号に変換して出力する構成を緑チャンネル、青色光を被観察物に照射したタイミングで反射光を白黒CCDカメラで受けて電気信号に変換して出力する構成を青チャンネルとした図が、示されている。そして、構成要件(D)の「CCD」が構成要件(C)の「白黒CCD」であることに鑑みると、構成要件(D)の「CCDのチャンネル」とは、「白黒CCDの時系列的な各色の撮像タイミング」を意味するものであると解することができる。
以上の点を踏まえて、イ号物件の構成(δ)の「濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの時系列的な撮像タイミング(赤、緑、青)のうちの一つの撮像タイミング(緑)で受光し、」をみるに、イ号物件の特定の根拠である甲第5号証によれば、濾過フィルターを通過できた蛍光Fは、RGBの撮像タイミングの内のGの撮像タイミングで白黒CCDで受光し電気信号に変換された信号が、同時化メモリの3つあるR,G,Bの内の一つであるGに書き込まれるのであるから、この場合、Gの撮像タイミングが「CCDの一つのチャンネル」に相当することになり、イ号物件の構成(δ)も、励起光により発生した蛍光をCCDの一つのチャンネルで受光していることとなる。
判定被請求人は、「本件特許請求の範囲においては、本件発明1の構成要件(D)に「蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して」との記載があるように、「チャンネル」とは、CCDに備わっている信号出力端子を示す文言であることは明確である。」と、主張しているが、「チャンネル」を「CCDに備わっている出力端子」と解すると、構成要件(D)は、「CCDの3つある信号出力端子で受光し」となるが、構成要件(D)の「CCD」は、構成要件(C)に記載の「白黒CCD」のことであることは明らかであって、白黒CCDの信号出力端子は1つであることは技術常識であるから、構成要件(D)の「CCD」は出力端子が3つあることになり技術常識に反することになるから、「チャンネル」を「CCDに備わっている出力端子」ということはできない。
したがって、イ号物件の構成(δ)は、本件特許発明の構成要件(D)を充足する。

6.構成要件(E)について
本件特許発明の構成要件「(E)励起光以外の光(例えば、緑と赤)の時はCCDの残りの2つのチャンネル(例えば、緑と赤)にて背景の映像を拾い、」とイ号物件の構成「(ε)照明光G1(緑)の時はCCDの時系列な3つの撮像タイミングの(赤、緑、青)のうちの赤の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、また、照明光G2(緑)の時は青の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、」を対比すると、イ号物件の構成(ε)の「照明光G1(緑)」及び「照明光G2(緑)」は、励起光ではなく照明光であるから、構成要件(E)の「励起光以外の光(例えば、緑と赤)」に相当するところ、イ号物件の構成(ε)の「照明光G1(緑)の時はCCDの時系列的な3つの撮像タイミングの(赤、緑、青)のうちの赤の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、」とは、上記甲第5号証によれば、照明光G1(緑)は、CCDにより信号化されて、同時化メモリの3つあるチャンネルR,G,BのうちのRに書き込まれる構成であり、また、「照明光G2(緑)の時は青の撮像タイミングにて背景の映像を拾い、」とは、照明光G2(緑)は、CCDにより信号化されて、同時化メモリの3つあるチャンネルR,G,Bの内のBに書き込まれる構成である。このことは、上記「5.構成要件(D)について」の中で、「CCDのチャンネル」について検討したように、CCDの3つあるチャンネルのうち励起光で用いたチャンネル以外の残りの2つのチャンネルにて背景の映像を拾っていることに他ならない。
したがって、イ号物件の構成(ε)は、本件特許発明の構成要件(E)を充足する。

7.構成要件(F)について
イ号物件の構成(ζ)と本件特許発明の構成要件(F)を対比すると、上記「5.構成要件(D)について」で検討したように、「CCDのチャンネル」とは、「白黒CCDの時系列的な各色の撮像タイミング」と解すべきものであるところ、イ号物件の構成(ζ)の「緑画像信号G1-1、G1-2、・・・として同時化メモリのRに書き込まれた」信号、「蛍光Fの蛍光画像信号F-1、F-2、・・・として同時化メモリのGに書き込まれた」信号及び「青の撮像タイミングで得られた信号を緑画像信号G2-1、G2-2、・・・として同時化メモリのBに書き込まれた」信号の3つの信号が、構成要件(F)の「3つのチャンネルの信号」に相当するものである。
そして、本件特許発明の構成要件(F)は、「送信後の3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るところを特徴とする」であるから、3つのチャンネルの信号をすべて用いて再構成することに限定されるものではなく、3つのチャンネルの信号を再構成し、少なくともモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るものであれば足るものと解される。
そこで、イ号物件の構成(ζ)の構成についてみると、同時化メモリから送信された各信号のうち緑画像信号G2-1、G2-2・・・は不要な信号として排除されてはいるが、緑画像信号G1-1、G1-2・・・及びFの蛍光画像信号F-1、F-2・・・は変換され、背景の赤の映像信号(R)、背景の青の映像信号(B)及び蛍光の緑の映像信号(R)としてモニターに出力され、モニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るものであるから、イ号物件の構成(ζ)も送信後3つのチャンネルの信号を再構成してモニターに出力され、モニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るものである。
したがって、イ号物件の構成(ζ)は、本件特許発明の構成要件(F)を充足する。

8.構成要件(G)について
イ号物件の構成「(η)光診断装置。」は、本件特許発明の構成要件「(G)光診断装置。」と一致するから、イ号物件の構成(η)は、本件特許発明の構成要件(G)を充足する。

9.イ号物件の効果について
イ号物件は、白黒CCDの3つあるチャンネルのうち、一つのチャンネルで蛍光を受光し、残りの2つのチャンネルで励起光以外の背景の映像を拾い、蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時に同じ画面で見る構成を有しているものであるから、上記「第2 2.」で挙げた本件特許発明と同様の効果を奏することは明らかである。

したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)ないし構成要件(G)のすべての構成要件を充足する。

第6.第2の請求について
第2の請求は、オリンパスが提供した自家蛍光電子内視鏡システムを用いて作成し、2004年10月25日以降になされた学会・論文発表も本件特許発明の権利侵害であるとの判断を求めたものであるが、係る請求は、特許法第71条で規定する特許発明の技術的範囲について判定を求めたものであるということはできないから、判断を行わない。

第7.むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明のすべての構成要件を充足するものであるから、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2008-02-18 
出願番号 特願平11-114022
審決分類 P 1 2・ 1- YA (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 後藤 時男
黒田 浩一
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3309276号(P3309276)
発明の名称 蛍光電子内視鏡システム  
代理人 平井 昭光  

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