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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G11B
管理番号 1174124
判定請求番号 判定2007-600039  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-04-25 
種別 判定 
判定請求日 2007-05-17 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第3360634号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「情報信号記録媒体」は、特許第3360634号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、イ号製品説明書に示されるDVD-R記録媒体製品(以下、「イ号製品」という。)は、特許第3,360,634号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.背景と手続の経緯について
(1)手続の経緯
本件判定の請求は平成19年5月17日にされたものであり、その後、同年11月5日付で審尋したところ、同年12月3日付けで回答書の提出があったものである。

(2)被請求人について
判定請求書を被請求人に送達しようとしたところ、郵便による送達ができなかったため、公示送達(官報第4641号、平成19年8月7日)をしたが、被請求人からは何らの応答もなかった。
そこで、審尋において、判定請求人に対し、被請求人が現に存在する株式会社であることを証明する資料、又は被請求人の所在を正しく確認することのできる資料等の提出を求めたところ、被請求人会社がすでに解散し、清算されたことが判明した(甲第12号証参照)との回答があった。
したがって、本件判定請求については、被請求人のない判定請求と同様に扱うこととし、被請求人からの答弁を経ずに、判定をすることとする。

(3)判定の必要性の背景について
請求人は、判定請求書及び回答書において、東京税関における輸入差止申立の手続に関連して、判定の必要性について縷々事情を述べている。
その中で、台湾法人であるライテック コーポレーションらが製造し、日本国内に輸入されていると主張するDVD-Rディスクについて、「イ号製品となるべきDVD-Rディスク製品」と記載しているが、回答書において請求人も認めるとおり、「判定手続においては技術的範囲の属否のみ判断され、間接侵害の成否は判断されない」のであって、データを記録する前のディスクが、イ号製品と「なるべき」か否かの点について、本件判定においては一切判断しないことを明確にしておく。
すなわち、本件判定は、データを記録する前のディスクに対し、請求人においてデータを記録した物であるところの「イ号製品」に対して技術的属否の判断を行うものである。
また、請求人は甲第1号証を提示して、本件特許発明が、DVD-Rの規格における「必須特許」であると主張しているが、同証は単に、DVD6C LICENSING AGENCYのPatent listであって、請求人が判定を求める背景を示す資料の一つにすぎず、実際にイ号製品が本件特許発明の技術範囲に含まれるか否かとは直接関係のない証拠であるとともに、本件特許発明が実際に必須特許であるか否かについても同証からは明らかでない。

3.本件特許発明
本件特許発明は、特許第3,360,634号明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、検討の便宜上、符号を付してその構成要件を分説して示すと次のとおりである。
「(A)セクタアドレスを有する複数のセクタに分割されている周回状の情報トラックを有し、
(B)2値のデジタル信号列からなる情報信号が1つの巡回符号から得られるスクランブル信号により前記情報トラックのセクタごとにスクランブルされて記録されている情報信号記録媒体であって、
(C)前記情報トラックの全周回にわたり、隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、異なる記録パターンが形成されて、前記情報信号が記録されている
(D)ことを特徴とする情報信号記録媒体。」

4.イ号製品
〔4-1〕ユーザデータが記録される前のイ号製品とDVD-R規格との関係
請求人によると、イ号製品は、ライテック コーポレーションの製造に係るDVD-Rディスク製品に、請求人においてユーザデータを記録したものであり、具体的には、画像ファイル(.jpg)を415個、約580MB容量のものを記録したものである。
請求人は、イ号製品がDVD-R再生装置において再生されるものである以上、DVD-Rバージョン2.0の規格書(甲第2号証)に適合して製造された製品である旨主張しているので、まず、ユーザデータが記録される前のイ号製品とDVD-Rの規格との関係について検討する。

請求人が提出した証拠方法によれば、以下の事項が認められる。
i)請求人が提出した甲第4号証(イ号製品購入証明書)、甲第5号証(概観写真撮影報告書)によれば、検甲第1号証は、請求人が日本国内において購入したユーザデータが記録される前のイ号製品に、請求人においてユーザデータを記録したものである。
ii) 検甲第1号証には、内周側の透明部分にマークとともに「RiTEK」のロゴと、「1-4X DVD-R 4.7GB for Data」と印字されている。
iii)また、甲第5号証の「4.写真」の「(1)パッケージ表面」からは、マークとともに「RiTEK」のロゴ、「DVD-R」「インクジェットプリンタ対応」「データ用」「1回記録用1-4x」「4.7GB」「5パック」などの表記と、少なくともDVDのロゴマークが見て取れる。
iv)甲第6号証(イ号製品測定結果報告書)によれば、検甲第1号証は、Physical format informationの示す内容が、Book typeは「DVD-R」、Part versionは「Version 2.0x」、Disc sizeは「12 cm disc」、及びMaximum transfer rate of the discは「10.08Mbps」と、それぞれ記録されているとの記載がされている(Page 1/2 参照)。
同記載は、同証のPhysical format information(Binary data)が、
00 01 02 03 04 05・・・
0000:25 02 02 00 00 03・・・
である(Page 2/2 参照)点を、甲第2号証の「3.4.1.2.2 Physical format information (PH3-29?3-30)」の記載と突き合わせると、pre-recordedされたControl data zone内のPhysical format information中の、Book typeのフィールド(1バイト目ビットb7からb4)“0010”は「DVD-R」、Part versionのフィールド(1バイト目ビットb3からb0)“0101”は「Version 2.0x」、Disc sizeのフィールド(2バイト目ビットb7からb4)“0000”は「12 cm disc」、及びMaximum transfer rate of the discのフィールド(2バイト目ビットb3からb0)“0010”は「10.08Mbps」に、それぞれ該当することが確認できるものである。
v)甲第6号証には、Lead-in areaのPre-pit data block内のフィールドID3ないしID4には、製造者IDとして、「RITEKG04」の文字列が記録されているとの記載があるが、例えばManufacturer IDの一覧のように前記ID3ないしID4の内容の意味を確認する証拠が提出されているわけでもないので、前記記載を正しいものと確認することができない。
請求人は、甲第7号証を提出して、ユーザデータが記録される前のイ号製品がDVD-R規格に適合するもののである旨主張しているが、同証に示されたものは、単にLicenseeのリストであって、同リスト中に、Ritek Corporationが含まれていることと、特定の物品であるユーザデータが記録される前のイ号製品が、Ritek Corporationにより製造されたか否かとは直接関係のない事項であって、同証には、Ritek Corporation以外のLicensee も多数掲載されているのであるから、同証を以てユーザデータが記録される前のイ号製品をRitek Corporationの製造によるものとすること断定することはできない。また、上記ii), iii)からは、RiTEKの文字又はロゴが読み取れるものの、単に同文字又はロゴからは、Ritek Corporationまたは、本件判定請求前既に解散した被請求人会社が、製造・流通・輸入・販売等どのような立場で関与したことを示すものか明らかでない。

上記i)?v)からすると、ユーザデータが記録される前のイ号製品は、ライテック コーポレーション製造のものか、また、被請求人会社の輸入によるものか、明らかではないものの、少なくともDVD-R規格(Version 2.0x)に適合する12cmディスクであると推定することができる。

〔4-2〕 ユーザデータが記録されたイ号製品の検討
そこで、請求人においてデータを記録した後の、DVD-R規格に適合するイ号製品の構成について検討していく。
請求人の提出した判定請求書に添付されたイ号製品説明書、並びに、証拠方法として提出された甲第2号証(「DVD Specifications for Recordable Disc for General(DVD-R for General)Part1 PHYSICAL SPECIFICATIONS Version 2.0 R4.7」)、甲第3号証「検甲第1号証データ記録報告書」、甲第4号証(イ号参考製品購入証明書)、甲第5号証(概観写真撮影報告書)、甲第6号証「イ号製品測定結果報告書」、甲第8号証「イ号製品測定トラック長算出根拠」、甲第9号証「イ号製品のセクタ先頭一致箇所算出根拠詳細」、甲第10号証「JIS×6281 120mm再生専用光ディスク(CD‐ROM)日本工業規格抜粋」、及び検甲第1号証(請求人購入のDVD-Rディスクに請求人においてデータを記録した「イ号製品」)を検討すると、イ号製品について、以下の事項が認められる。

(1)「情報トラック」について
ア)DVD-R規格における定義
i)「トラックとは、記録されたマーク或いはグルーブの360°回転の連続スパイラルである。」(甲第2号証PH1-11、イ号製品説明書第1頁右欄)
ii)「グルーブとは、ウオブルド・ガイダンス・トラックである。」(甲第2号証PH1-6)
iii)「セクタとは、ディスクの情報領域(Information area)内の最小アドレス可能部分であって、他と独立してアドレス可能な部分である。セクタは、このフォーマットにおいて物理セクタ(Physical sector)と呼ばれる。」(甲第2号証PH1-10)
iv)「セクタ番号とは、ディスク上の物理セクタに割り当てられるシリアル番号である。・・・シリアルに増加する番号は、セクタに、リード・イン・エリアの開始からリード・アウト・エリアまで、割り当てられる。」(甲第2号証PH1-11)
v) (物理)セクタのレイアウトは、各セクタは2064バイト(うち、データは、2048バイト)長を有し(甲第2号証Figure 3.2.1-1)、各セクタに割り当てられるセクタ番号は、ディスクの最内周から外周に向けて増加する。各セクタ2064バイトのうち、メインデータは、2048バイト長である(甲第2号証Figure 3.1.4-1; PH1-2,“User data per sector”)。

イ)イ号製品は、工場出荷時における、ディスク購入者によるディスクへの記録前にはセクタ番号22FA0hから2FFFFhに位置するリード・イン・エリア(甲第2号証PH3-1、Figure3.1.4-1)内の、セクタ番号2F200hから2FDFFhに位置するコントロール・データ・ゾーン(甲第2号証PH3-27、Figure3.4.1.1-1)のみが、プリレコード又はエンボス加工されている(甲第2号証PH3-27)。

ウ)ユーザデータは、030000hから開始するデータエリアに記録されている。検甲第1号証においては、ユーザデータの終端アドレスは077B5Dhであって、ユーザデータの内周側にリード・イン・エリア、外周側にはリード・アウト・エリアがデータエリアと連続セクタとなるよう併せて記録され、インフォメーション・エリアとなっている(甲第2号証PH3-1,Figure 3.1.4-1)。また、インフォメーション・エリアの最外周はリード・アウト・エリアの最外周となり、その直径は70mm以上の長さの記録が必要であると規定されている(甲第2号証PH2‐16,2.1.6.7)ことから、これはDVD-Rディスク中心から半径35.000mmであり、セクタアドレスは0B2D37h、トラック長は、219.9111mmとなる(甲第8号証「イ号製品測定トラック長算出根拠」参照)。

エ)イ号製品においては、スパイラル状(周回状)のトラックが、最小アドレス可能単位である物理セクタに分割されており、かつ物理セクタのそれぞれにはディスク内周から外周に向けシリアルに増加するセクタ番号が付与されている。そして、イ号製品においては、リード・イン・エリア内のコントロール・データ・ゾーンに、そのセクタ情報、データ属性等の制御情報と共に、システムで使用されるデータ、DVDディスクの種別、バージョン、最大転送レート、記録密度等が記録され(甲第2号証PH3‐35,Table 3.4.1.4.1-1)、ユーザデータはデータエリア内に記録され、これらリード・イン・エリア、データエリア、及びリード・アウト・エリアまでの領域(甲第2号証PH3‐1,Figure 3.1.4-1参照)はいずれも物理セクタに分割された情報トラックに相当する。
したがって、イ号製品は、「セクタ番号を有する複数の物理セクタに分割されているスパイラル状の情報トラック」を有する(イ号製品説明書第1頁左欄)。

(2)物理セクタの構成について
ア)甲第2号証において、DVD-R規格上のデータフォーマットについて、以下のとおり記載されている。
蓄積されるべきデータは、メインデータと呼ばれ、ディスク上に記録される前にいくつかのステップにより配列される。当該データは、逐次、Data frame, Scrambled frame, ECC block, Recording frame, そしてPhysical sector に変換される。
一つのData frameは、2048バイトのメインデータ、12バイトのIDその他(ID,IED,CPR_MAI)、及び4バイトのエラー検出コード(EDC)からなる。
ECC演算後、2048バイトのメインデータにスクランブルデータが加わって、Scrambled frameが形成される。16のScrambled frameからなるECC blockに対してcross Reed-Solomon エラー訂正コード(ECC)がエンコードされる。
Recording frame は、ECCエンコードされ、アウターパリティ(PO)とインナーパリティ(PI)が加えられたScrambled frame である。
PO及びPIは、16Scrambled frameごとに形成される一つのECC block の範囲内で形成される。
Physical sector(物理セクタ)は、8/16変調後のセクタであって、Recording frame91バイトごとにSYNCコードが加えられる。(甲第2号証PH3-2、Figure 3.2-1, Figure 3.2.1-1)

イ)Scrambled frameの形成について、甲第2号証PH3-7、Figure 3.2.6-1に示されるフィードバックシフトレジスタにより、スクランブル前のセクタ中のメインデータ(2048バイト)の各バイトを、スクランブルする処理:
D’k =Dk+Sk (k=0 to 2047) +:論理演算XOR
が、2048回(1セクタ分)行われ、スクランブルバイトが生成される。
この際、甲第2号証PH3-7,Table 3.2.6-1に示すシフトレジスタの初期値テーブルに示されるところによると、セクタID中のセクタ番号(甲第2号証PH3‐3, IDフィールドの図)のビットb7からビットb4が、テーブル中の初期プリセット番号に相当し、連続する16セクタ(セクタ番号下位4ビット0000bから1111bまで)には1グループとして、同じ初期値(例えば、初期プリセット番号が0hの場合は、初期値0001h)がシフトレジスタに割り当てられ、16セクタ分のスクランブル処理ごとに、スクランブル初期値が変更され(初期プリセット番号が1hとなると、初期値5500h)、このスクランブル初期値は、16パターン存在し、このスクランブル16パターンが終了すると、初期プリセット番号0h、初期値0001hから再び上記初期値テーブルに示される初期値割り当てが繰り返され、このスクランブル16パターンが終了すると初期プリセット番号0h、初期値0001hから再び始まる手順で繰り返され、したがって、1スクランブル長は、16セクタ×16パターン=256物理セクタとなっている。
甲第2号証PH3-7、Figure 3.2.6-1に示されるフィードバックシフトレジスタには、出力として取り出されるビットが示されておらず、 前記レジスタから得られる巡回符号多項式は、明確でないが、少なくとも、Data frameのメインデータは、一つの巡回符号から得られるスクランブル信号によりスクランブルされることが明らかである。

ウ)甲第2号証PH3-8、Figure 3.2.7-1に示されるECC block は、情報フィールドとして連続する16のScrambled frameから構成され、172バイト×192行(172バイト×12行×16Scrambled frameに等しい)の情報フィールドに対し、172の列の各々に16バイトのPOが付加され、208(192+16)の各行に10バイトのPIが付加されて182列×208行のECC blockが構成される。

エ)甲第2号証PH3-10、Figure 3.2.8-1には、ECC blockのPOが列インターリーブされて182列×13行のRecording frame 16個に構成されることが記載されている。

オ)甲第2号証PH3-11、Figure 3.2.9-1には、Recording frameが、逐次変調され、0列と91列の前にSYNCコードが加えられ、13セット×2SYNC frame のPhysical sector(物理セクタ)が構成されることが記載されている。

カ)SYNCコードは、PH1-11のSync frameの項に記載されるとおり、8種類、32パターン存在する。「Table 3.2.9-1: SYNC codes 」によると、SYNCコードは、State1 and State2(Next state is State 1), 及びState3 and State 4(Next state is State 1)のそれぞれに対してPrimaryとSecondary の各コードが規定され、Noteによると、State1 and State2とState3 and State 4とは、先行する変調信号により使い分けられ、Annex JのRecommended DCC algorithm at modulation を参照すると、Primary とSecondaryは、DCCの必要性から使い分けられるものである。

以上ア)?カ)のことから、イ号製品は、DVD-R記録媒体であって、
「2値のデジタル信号列からなる情報信号が記録され、同信号は、
(b-1) User dataにID、IED、EDC等を付加してData frameを形成し、
(b-2) 前記Data frameを、1つの巡回符号から得られるスクランブル信号によりスクランブルしてScrambled frameを形成し、
(b-3) 前記Scrambled frameを16個集合し、アウターパリティ(PO)とインナーパリティ(PI)を付与してECC blockを形成し、
(b-4) 前記ECC blockのPOを列インターリーブして16個のRecording frameを形成し、
(b-5) 前記Recording frameを変調して、91バイトごとにSynccodeを付加して、13セット×2SYNCframeからなるPhysical sector(物理セクタ)を形成し、
(b-6) 前記Physical sector(物理セクタ)はトラック上でギャップなしに、リードインエリアからリードアウトエリアまで連続的に配置され、連続的に増加する物理セクタ番号が付されている、」の構成を有することが認められる。

(3)記録されたユーザデータについて
ア)イ号製品の情報信号記録方式
イ号製品は、DVD-Rの規格に従って、情報信号記録方式としてCLV(Constant Linear Velocity)を採用している(甲第2号証PH1-2, “Reference scannig velocityとして3.49m/sと記載されている)ものと認められる。

イ)イ号製品におけるセクタ長
DVD‐R規格上、線速度(Reference scannig velocity)は、3.49m/s、ユーザデータのビットレートは、11.08Mbpsと規定されている(甲第2号証PH1‐2)。また、1物理セクタのユーザデータの量は、2048バイトである(甲第2号証Figure 3.2.1-1;PH1-2)。
これから、イ号製品における1セクタ長は、5.16mmの固定長となる(=3.49×10^(3)×8×2048/(11.08×10^(6)))。

ウ)隣接するトラック間での物理セクタ同士の位置
イ号製品の情報トラックは、DVD-Rディスク中心から外側へ向かってスパイラル状に径を大きくしていくものであり、隣接するトラック間では、径が異なるから、あるトラック上のセクタの先頭に一致する放射線に対して、隣接するトラックのセクタの先頭位置は変位する。
但し、トラック長が物理セクタ長の整数倍となる場合には、隣接するトラック間でセクタ同士の先頭位置が一致することとなる。この放射線上にセクタの先頭が一致する箇所は、セクタ長の整数倍がトラック長(円周長)と一致する半径の箇所となり、Sをセクタ長と、rを求める半径とすると、次式で求められる。
r=Sn/2π(n=1,2,3,…)

エ)イ号製品の最内周と最外周のトラック長
イ号製品のユーザデータを記録したディスクは、DVD-Rの規格に従って、リード・イン・エリア、データ・エリア、リード・アウト・エリアで構成するインフォメーション・エリア構造とし、セクタ番号が連続して途切れなく記録され(甲第2号証PH3‐1,3.1.4)、また、DVD-R規格上、直径70mm以上の長さの記録が必要であると規定されているから(甲第2号証PH2‐16,2.1.6.7)、ディスク中心からの半径は、35.00mmであり、トラック長は、219.911mmであると認められる(甲第8号証参照)。この位置は、リード・アウト・エリアの終了アドレスに相当し(甲第2号証PH3‐1,Figure 3.1.4-1参照)、一方、情報トラックの最内周であるリード・イン・エリアの開始半径は、22.556mm(甲第2号証PH3‐27に「リード・イン・エリアの開始セクタ番号が022FA0h」であると記載されていることから、甲第8号証に記載の計算式により算出)、最内周トラック長は、141.721mmである(なお、リード・イン・エリアが情報記録領域の最内周であることは、甲第2号証PH3‐27,3.4.1.1参照)と認められる。

オ)イ号製品における隣接するトラック間における物理セクタ同士の配置は、上記のとおり、トラック長がセクタ数の整数倍となる場合には、隣接するトラック間で物理セクタ同士で先頭位置が一致すると認められるところ、情報トラックの最内周であるリード・イン・エリアの最内周トラック長は、141.721mmであるからセク夕長5.16mmの27.465倍であり、ユーザデータが記録された場合のリード・アウト・エリアの最外周トラック長、少なくとも219.911mmであるからセクタ長5.16mmの42.618倍であり(甲第8号証参照)、したがって、少なくともセクタ数28,29,30,31,32,.…,41,42となる15箇所(半径22.998,….,33.675,34.496 半径約0.8mm毎)で、トラック長が物理セクタ長の整数倍となる箇所が出現することとなる(甲第9号証「イ号製品のセクタ先頭一致箇所算出根拠詳細」参照。)。

カ)イ号製品におけるスクランブル長
上記のとおり、イ号製品における1物理セクタ長は、5.16mmであり(=3.49×10^(3)×8×2048/11.08/10^(6)))、1スクランブルは、256物理セクタであるから、1スクランブルのトラック長は1320.96mmとなる(=5.16×16×16)。

キ)イ号製品における情報トラックの最内周と最外周のトラック長
イ号製品においては、リード・イン・エリアの最内周トラック長は、141.721mmであり、最少量ユーザデータが記録されたリード・アウト・エリアの最外周トラック長は、219.911mmであるから、スクランブル全長は、イ号製品情報トラックの最内周のトラック長(リード・イン・エリアの開始セクタに相当)、最外周のトラック長(リード・アウト・エリアの終了セクタに相当)のいずれもよりも長く、従って、情報トラックの全周回にわたり、隣接するトラックの物理セクタに対して、同じスクランブルデータが使用されることはないと認められる(甲第8号証参照)。

ク)さらに、イ号製品のデータ領域全域にわたりデータが記録された場合(最大量のデータが記録された場合)にあっても、トラックの最外周のトラック長は、364.623mmであって、なお1スクランブルのトラック長1320.96mmより短いから、この場合にも、情報トラックの全周回にわたり、隣接するトラックの物理セクタに対して同じスクランブルデータが使用されることはないと認められる(甲第8号証参照)。

ケ)ここで、物理セクタの構成については、前記のように、182列×13行のRecording frameに対して、8/16変調を行った後、0番目と91番目のビットの前にSYNCコードを付けて、13セット×2SYNCframeの構造としたものである。
すると、ディスク上で、実際にマークとして記録される情報は、最終的に物理セクタとして構成されたビットが、時間的に順番にディスクの上に、ディスクの物理的状態に変更を加えることにより行われるものであるから、隣り合うトラック同士において、先頭が揃う物理セクタにおいて、当該先頭の部分で隣り合う記録マークは、隣り合う両方の物理セクタにおいて最初のSYNCコードSY0である。物理セクタの先頭のみならず、物理セクタの構成は全て同じであるから、SYNCフレームごとに隣り合う両方の物理セクタにおいて、規定されたSYNCコード、SY0ないしSY7のいずれかで同じ種類のSYNCコード同士が隣り合うことになる。
SYNCコードは、Stateに応じて2とおりと、DCCの要求に応じてPrimaryとSecondaryとで、都合4種類ずつ用意されている。

以上ア)?ケ)からすると、イ号製品は、
「情報トラックの全周回にわたり、隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士において、変調されたレコーディングフレームのデータが記録されるビットにおいては、スクランブルデータが異なることにより互いに異なるパターンとなるが、SYNCコードが記録されるビットにおいては、互いに同じ種類のSYNCコード同士が隣り合うように記録パターンが形成されて、前記情報信号が記録されている」の構成を有することが認められる。

(4)記録媒体について
イ号製品は、追記型DVDであるDVD-R記録媒体である。

〔4-3〕 イ号製品の構成についてのまとめ
上記〔4-1〕及び〔4-2〕に示した事項から、イ号製品は、分説して示すと次のとおりの構成を具備するものと認められる。

(a) セクタ番号を有する複数のセクタに分割されているスパイラル状の情報トラックを有し、
(b) 2値のデジタル信号列からなる情報信号が記録され、同信号は、
(b-1) User dataにID、IED、EDC等を付加してData frameを形成し、
(b-2) 前記Data frameを、1つの巡回符号から得られるスクランブル信号によりスクランブルしてScrambled frameを形成し、
(b-3) 前記Scrambled frameを16個集合し、アウターパリティ(PO)とインナーパリティ(PI)を付与してECC blockを形成し、
(b-4) 前記ECC blockのPOを列インターリーブして16個のRecording frameを形成し、
(b-5) 前記Recording frameを変調して、91バイトごとにSynccodeを付加して、13セット×2SYNCframeからなるPhysical sector(物理セクタ)を形成し、
(b-6) 前記Physical sector(物理セクタ)はトラック上でギャップなしに、リードインエリアからリードアウトエリアまで連続的に配置され、連続的に増加する物理セクタ番号が付されており、
(c) 前記情報トラックの全周回にわたり、隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士において、変調されたレコーディングフレームのデータが記録されるビットにおいては、スクランブルデータが異なることにより互いに異なるパターンとなるが、SYNCコードが記録されるビットにおいては、互いに同じ種類のSYNCコード同士が隣り合うように記録パターンが形成されて、前記情報信号が記録されている、
(d) DVD-R記録媒体。

5.対比・判断
そこで、イ号製品の各構成が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて、以下に検討する。

(1)構成要件(A)について
本件特許発明の構成要件(A)は、「セクタアドレスを有する複数のセクタに分割されている周回状の情報トラックを有し、」というものである。
これに対し、イ号製品の構成(a)は、「セクタ番号を有する複数の物理セクタに分割されているスパイラル状の情報トラックを有し、」というものであり、構成(a)の「スパイラル」は構成要件(A)の「周回」と同義であることは明らかである。
構成(b-6)を参照すると、「前記物理セクタはトラック上でギャップなしに、リードインエリアからリードアウトエリアまで連続的に配置され、連続的に増加する物理セクタ番号が付されている」ので、構成(a)の「セクタ番号」は、本件特許発明の「セクタアドレス」に、構成(a)の「物理セクタ」は本件特許発明の「セクタ」に、それぞれ相当する。
したがって、イ号製品は、本件特許発明の構成要件(A)を充足する。

(2)構成要件(B)について
本件特許発明の構成要件(B)は、「2値のデジタル信号列からなる情報信号が1つの巡回符号から得られるスクランブル信号により前記情報トラックのセクタごとにスクランブルされて記録されている情報信号記録媒体であって、」というものである。
これに対し、イ号製品はDVD-R記録媒体であって、その構成(b)は、
「2値のデジタル信号列からなる情報信号が記録され、同信号は、
(b-1) User dataにID、IED、EDC等を付加してData frameを形成し、
(b-2) 前記Data frameを、1つの巡回符号から得られるスクランブル信号によりスクランブルしてScrambled frameを形成し、
(b-3) 前記Scrambled frameを16個集合し、アウターパリティ(PO)とインナーパリティ(PI)を付与してECC blockを形成し、
(b-4) 前記ECC blockのPOを列インターリーブして16個のRecording frameを形成し、
(b-5) 前記Recording frameを変調して、91バイトごとにSynccodeを付加して、13セット×2SYNCframeからなるPhysical sector(物理セクタ)を形成し、
(b-6) 前記Physical sector(物理セクタ)はトラック上でギャップなしに、リードインエリアからリードアウトエリアまで連続的に配置され、連続的に増加する物理セクタ番号が付されており、」というものである。
ここで、「2値のデジタル信号列からなる情報信号が記録され」「DVD-R記録媒体」である点は本件特許発明の「2値のデジタル信号列からなる情報信号が」「記憶されている情報信号記録媒体」であることに相当する。
「1つの巡回符号から得られるスクランブル信号によりスクランブル」することは、本件特許発明において「1つの巡回符号から得られるスクランブル信号により」「スクランブルされて」記録されることに相当する。
本件特許発明は、実際にディスク上に記録される「記録パターン」すなわち「ピットとランドの形状(段落【0009】参照)」が一致することによる相関性の高まりを除去することを意図したものであるから、記録される「情報信号」としては、元のユーザデータのことであるとすることは適当でなく、実際にディスク上で記録されるデータまたはビットのことであると解するのが技術的に妥当である。
そこで、イ号製品にいて記録される情報信号であるが、構成(b)からすると、実際にディスク上で記録されるのは、「物理セクタ」を構成するデータ又はビットであるところ、「物理セクタ」は、前記(b-1)から(b-5)のとおり構成されるものであって、単に「セクタごとにスクランブルした」ものとは、その成り立ちが全く異なるものである。
それ故、イ号製品においては、次のとおり、ユーザデータ以外はスクランブルされていないと認められる。すなわち、
i)パリティ:ECC blockごとに形成される。セクタごとに形成されるものでも、セクタごとにスクランブルされるものでもない。
ii)SYNCコード:各列2つずつ(変調前のデータ91バイトごと、変調後のデータ又はビットで表現すると1456ビットごと)付加される。したがって、物理セクタごとに付加されるものでも、物理セクタごとにスクランブルされるものでもない。
以上のことから、イ号製品における「物理セクタ」においては、セクタごとにスクランブルされているのはユーザデータのみであり、一方、前記のとおり、本件特許発明において、構成(B)の「情報信号」をユーザデータのみに限定して解釈すべきではないから、イ号製品において「情報信号が」「セクタごとにスクランブルされて記録されている」とすることができない。
したがって、イ号製品は、本件特許発明の構成要件(B)を充足しない。
(3)構成要件(C)について
請求人は、構成(C)をC-1とC-2に分割して検討しているが、「放射線上に位置する前記セクタ同士において、」は、ディスク上で、ごく限られた位置でのみ起こりうる事象を特定したものであるから、「情報トラックの全周回にわたり」を含めてC-1と分節する理解は不合理である。
逆に「異なる記録パターンが形成されて」との限定は、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、」との特定を前提として初めて技術的意義を理解することができるものであるから、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、異なる記録パターンが形成されて」は、一続きのものとして解すべきであり、このような特定の下に「前記情報トラックの全周回にわたり」と、「前記情報信号が記録されている」がその間の特定事項を隔てて係り受けの関係になっていると解するのが技術的に妥当であるから、結局、構成(C)は、2つに分けることは適当でないので、一つの構成要件として扱うほかない。
これに対し、イ号製品の構成(c)は、「前記情報トラックの全周回にわたり、隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士において、変調されたRecording frameのデータが記録される記録パターンは、スクランブルデータが異なることにより互いに異なるパターンとなるが、SYNCコードが記録されるビットにおいては、互いに同じ種類のSYNCコード同士が隣り合うように記録パターンが形成されて、前記情報信号が記録されている」というものである。
ここで、イ号製品が、「前記情報トラックの全周回にわたり」「前記情報信号が記録されている」点は、本件特許発明と共通する。
イ号製品の構成(c)における「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士」は、本件特許発明の構成(C)における「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士」に相当する。
イ号製品において、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士」に記録されるデータは、SYNCコードと、Recording frameのデータを変調したデータとからなるSYNC frame が26個並んだものであって、使用されるSYNCコードは、物理セクタの中の位置に応じてSY0?SY7のいずれを用いるか決まっている。したがって、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記物理セクタ同士において」記録されるビットは、SYNCコードの種類でいうと、常に、互いに等しいということができる。
ところが、SYNCコードは、Stateの条件により2とおり、さらにPrimaryとSecondaryの各コード、都合4とおりのコードが使い分けられると解される。
すると、隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、「異なる記録パターンが形成」されるか否かは、Recording frame中のデータに応じて決定されるものであり、イ号製品において、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において」実際の記録パターンがどのようなものであるか、請求人は何らのデータも示していない。少なくともDVD-Rの規格上は、SYNCコードの選定に関してまで、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、異なる記録パターンが形成」されると認められる規定は見当たらない。
したがって、イ号製品において、「少なくとも15箇所」と認められる「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において」、常に「異なる記録パターンが形成」されているとすることはできない。むしろ、1物理セクタにつき所定位置に26個含まれるSYNCコードに対応する記録パターンにおいては、「同じ記録パターンが記録されている場合も、多々ある」と推測するのが妥当である。本件特許発明が、セクタの先頭が一致した場合に隣接トラック間での相関性を除去するものであることからすると、物理セクタの先頭及びその他の所定位置に26個含まれ、32ビットの長さを有するSYNCコードを、あえて除外する根拠もないことから、同じ記録パターンのSYNCコードが記録されている場合には、「隣接する前記情報トラック間における、放射線上に位置する前記セクタ同士において、異なる記録パターンが記録」されている場合に当たらないことは明らかである。
以上のとおりであるから、イ号製品は、本件特許発明の構成要件(C)を充足しない。

(4)構成要件(D)について
本件特許発明の構成要件(D)は、「情報信号記録媒体」というものである。
これに対し、イ号製品の構成(d)は、追記型DVDである「DVD-R記録媒体」というものであり、本件特許発明の「情報信号記録媒体」に含まれるものであることは明らかである。
したがって、イ号製品は、本件特許発明の構成要件(D)を充足する。

6.むすび
以上の検討を総合すると、イ号製品は、本件特許発明の構成要件(B)及び(C)を充足しないものであるから、イ号製品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2008-01-09 
出願番号 特願平11-3749
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 正高野 美帆子  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 江畠 博
早川 卓哉
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3360634号(P3360634)
発明の名称 情報信号記録媒体  
代理人 小西 恵  
代理人 豊岡 静男  
代理人 三好 秀和  
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