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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1174762
審判番号 不服2007-14562  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-21 
確定日 2008-03-10 
事件の表示 特願2002-157737「データパケットを伝送するための経路を発見するためのネットワーク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月10日出願公開、特開2003- 8629〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本件は,平成14年5月30日(パリ条約による優先権主張 平成13年5月31日米国)の出願であって,平成19年2月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年6月20日付けで手続補正がなされたものである。
この手続補正は,請求人が,平成19年6月20日付で手続補正された審判請求書の「(3)」の項の冒頭で述べているように,補正前の特許請求の範囲の請求項1,2を削除し,同請求項3?5を各々新たな請求項1?3としたものであるから,請求項の削除を目的としたものということができる。
したがって,特許法第17条の2第4項第1号に適合する。
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,この手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。)
「ネットワークを構成する複数の相互にリンクされたノードを介して,
発信元ノードから宛先ノードへと少なくとも1つのデータパケットを伝送するための経路を発見するための方法であって,
(a)前記発信元ノードから前記複数のネットワークノードのうちの少なくとも第1の受信ノードへと,前記宛先ノードを識別するフィーラーデータ及び前記発信元ノードを識別するノード通過ログデータを含む第1のフィーラーパケットを送るステップと,
(b)前記宛先ノードから前記複数のネットワークノードのうちの少なくとも第2の受信ノードへと,前記宛先ノードを識別するノード通過ログデータを含む第2のフィーラーパケットを送るステップと,
(c)前記第1のフィーラーパケットが前記第1の受信ノードにおいて受信されたことに応答して,
(c.1)受信された前記第1のフィーラーパケット中のノード通過ログデータに前記第1の受信ノードを識別するデータを加えることにより,補足された第1のフィーラーパケットを構成するステップと,
(c.2)前記第1の受信ノードにおいて,前記宛先ノードを識別するノード通過ログデータを有する前記第2のフィーラーパケットを識別するステップと,
(c.2.1)前記第2のフィーラーパケットを見つけた場合は,少なくとも1つのデータパケットを前記発信元ノードから前記宛先ノードへと前記ネットワークを介して伝送するための発見された経路を提供するために,前記受信された第1のフィーラーパケット及び第2のフィーラーパケットのノード通過ログデータを結合するステップと,
(c.2.2)そうでない場合は,前記補足された第1のフィーラーパケットのコピーを前記複数のネットワークノードのうちの次のノードへと送るステップと,
(d)前記発信元ノードへと,前記発見された経路を表す結合されたノード通過ログデータのコピーを送るステップと,
(e)前記発見された経路を表すデータを前記発信元ノードにおいて記憶するステップと,
(f)前記記憶された経路データの経年度,
前記発信元ノードにおける,前記宛先ノードへの経路に対する要求の尺度,および,
前記記憶された経路データにより提示される経路のコストの尺度,
のうちの1つに応答して,前記第1のフィーラーパケットを送るステップ(a)を繰り返すステップと,
を含む方法。」

第2 引用発明
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-327710号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている。
(1)「【0008】
【実施例】以下,図面を用いて本発明の実施例を説明する。図1乃至図4は,本発明の一実施例の動作の説明図である。なお,この図は,上り・下りパスを意識した説明図であり,ULは上りパス(メッセージ用),DLは下りパス(メッセージ用),UPは上りパス(ユーザ情報用),DPは下りパス(ユーザ情報用)である。例えば,網内の伝送路20に障害が発生すると,障害端の両方のノード11,12がセンダとなり,以下に示す4段階のフェーズ(起動フェーズ,探索フェーズ,応答フェーズ,確認フェーズ)により迂回路を探索し,障害が復旧する。
【0009】(1)起動フェーズ:図1に見られるように,網内の伝送路20に障害が発生すると,両ノード11,12共,アラーム情報により伝送路障害を認識する。そこで,障害端の両ノード11,12が,同時に迂回路探索のために必要な探索メッセージ15を隣接ノードに同報し,それと同時に,両ノード11,12共,チューザとなる。この時,探索メッセージ15は,障害の生じた上りパス及び下りパスを救済するために必要な情報を合わせ持っている。
【0010】(2)探索フェーズ:図2に見られるように,探索メッセージ15を受信したノード(例えば,ノード13)は,探索メッセージ15を受信した後に,そのメッセージを処理し,新たな探索メッセージ16を隣接のノードに対して同報する。次に,この探索メッセージ16を受信したノードは,同様の処理を行うことにより隣接ノードに対して探索メッセージを同報する。
【0011】このように探索メッセージを受信した網内の各ノードは,上述の動作を障害端の両方のノードからの探索メッセージが衝突するまで繰り返す。ここで,衝突について図7を用いて説明する。“衝突”とは,網内のノードが,障害端の一方のノードから同報された探索メッセージを受信した後に,もう一方のノードからも探索メッセージを受信することをいう。しかし,障害端の両方のノードから送出された探索メッセージが,網内の途中のノードで同時刻に衝突する可能性は少ないため,一般には同一迂回路上において,衝突の生じるノードは2つ(33,34)存在すると考えられる。」(第3頁第3欄)
(2)「【0013】(3)応答フェーズ:図3に見られるように,障害端の両方から送出された探索メッセージは,途中のノード(例えば,14)で衝突する。探索メッセージの衝突したノード14では,一方のノード(例えば,11)から転送されてきた探索メッセージの内容に,もう一方のノード(例えば,12)から転送されてきた探索メッセージの内容(例えば,通過してきた伝送路に関する情報)を付加する。お互いの内容を統合したメッセージを,応答メッセージ17として,探索メッセージの発送元のノード11,12に対して,転送する。この時,応答メッセージ17が転送される経路としては,探索メッセージが障害端のノード11,12から衝突の生じたノード14まで経由してきた経路と同様の経路を通過する。
【0014】(4)確認フェーズ:図4に見られるように,チューザとなっている障害端の両ノード11,12は,一定時間経過後,複数の迂回路の候補の中から適切な迂回路を選択し,その迂回路に対して確認メッセージ18を送出することにより,迂回路を設定する。この時,一方のチューザ(例えば,11)が,障害伝送路内を双方向に張られているパスのうち,一方向のパスの迂回路を,そして,もう一方のチューザ(例えば,12)が,もう一方向のパスの迂回路を,それぞれが独立に選択する。」(第3頁第4欄)

上記摘記事項(1)?(2)に記載された「パス」はリンクを形成し,
上記摘記事項(1)及び図面によれば,ノード14はノード11からの「探索メッセージ」を受信しているから,これを第1の受信ノードということができ,
同様に,ノード13はノード12からの「探索メッセージ」を受信しているから,これを第2の受信ノードということができ,
また,上記2つの「探索メッセージ」をそれぞれ第1の探索メッセージ,第2の探索メッセージということができ,
上記摘記事項(2)によれば,「探索メッセージ」には,通過してきた伝送路に関する情報が含まれており,また,これに関係した上記摘記事項(1)の段落【0010】の記載を併せると,受信したノードでは,伝送路に関しての自ノードに係る情報を加える処理を行っており,
上記摘記事項(1)の段落【0011】には,「“衝突”とは,網内のノードが,障害端の一方のノードから同報された探索メッセージを受信した後に,もう一方のノードからも探索メッセージを受信することをいう。」と記載されており,この衝突を契機に上記摘記事項(2)の段落【0013】に係る処理をしている以上,当然,第2の探索メッセージを識別しており,
上記摘記事項(2)の段落【0013】中の「お互いの内容を統合したメッセージを,応答メッセージ17として,探索メッセージの発送元のノード11,12に対して,転送する。」との記載,及び,この「応答メッセージ」を受け取ったノード11が,同段落【0014】に記載されているように,迂回回路の選択していることからして,前記「統合」は,ノード11からノード12へと網を介して伝送するための発見された迂回路を提供するためのものであり,「付加」し,「統合」された応答メッセージは,各「通過してきた伝送路に関する情報」の結合されたものということもでき,
上記摘記事項(2)には,「両ノード11,12は,一定時間経過後,複数の迂回路の候補の中から適切な迂回路を選択し」(段落【0014】)と記載されているから,発見された経路を表す情報を当然記憶している。
したがって,上記摘記事項及び図面を総合すると,引用文献1には,
「網を構成する複数の相互にリンクされたノードを介して,
一方のノード(11)から他方のノード(12)へと少なくとも1つのメッセージ及びユーザ情報を伝送するための迂回路を発見するための方法であって,
(a)前記一方のノード(11)から前記複数の網ノードのうちの少なくとも第1の受信ノードへと,通過してきた伝送路に関する情報を含む第1の探索メッセージを送るステップと,
(b)前記他方のノード(12)から前記複数のネットワークノードのうちの少なくとも第2の受信ノードへと,通過してきた伝送路に関する情報を含む第2の探索メッセージを送るステップと,
(c)前記第1の探索メッセージが前記第1の受信ノードにおいて受信されたことに応答して,
(c.1)受信された前記第1の探索メッセージ中の通過してきた伝送路に関する情報に伝送路に関しての自ノードに係る情報を加えることにより,補足された第1の探索メッセージを構成するステップと,
(c.2)前記第1の受信ノードにおいて,前記通過してきた伝送路に関する情報を有する前記第2の探索メッセージを識別するステップと,
(c.2.1)前記第2の探索メッセージを見つけた場合は,少なくとも1つのメッセージ及びユーザ情報を前記一方のノード(11)から前記他方のノード(12)へと前記網を介して伝送するための発見された迂回路を提供するために,前記受信された第1の探索メッセージ及び第2の探索メッセージの通過してきた伝送路に関する情報を結合するステップと,
(c.2.2)そうでない場合は,前記補足された第1の探索メッセージを前記複数のネットワークノードのうちの次のノードへと送るステップと,
(d)前記一方のノード(11)へと,前記発見された迂回路を表す結合された通過してきた伝送路に関する情報を送るステップと,
(e)前記発見された経路を表す情報を前記一方のノード(11)において記憶するステップと,
を含むセルフヒーリング方法。」(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。

また,原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-122119号公報(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている。
(3)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ルーティング方式に関し,特にパケットデータの無線伝送を行うネットワークにおける移動局と固定局との間のルーティング方式に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のルーティング方式は,自動車等の移動局を対象とした無線通信によってパケット交換を行うネットワークで,他の移動局での中継を前提として,移動局と固定局との間のパケット交換を行うには,各々の移動局および固定局が移動局と固定局との間のルート情報を把握し,さらに,各移動局の位置変化が激しいために,定期的にそのルート情報を最新のものに更新する必要がある。
【0003】一例としては,各移動局が定期的に固有の識別符号を付けたルート探索パケットを発信し,同パケットを受信した他の移動局は,同パケットが自局で中継したものでなければ,同パケットに自局の識別符号を中継局として付加して再送信し,同パケットは,何局かを経由して目的とする固定局に到達する。
【0004】そして,固定局には,発信した移動局から様々なルートを通ってきたパケットが到達するが,その中から最短のものを選択して採用し,そのルートにより中継局を逆にたどって,発信した移動局に通知している。」(第2頁第1欄)
(4)「【0022】なお,このルート探索パケットの発信は,各移動局が固定局とデータ交換中か否かに関係なく定期的に行い,移動局および固定局の双方で,そのルート情報を常に最新のものにしておき,データ交換に備えている。」(第3頁第4欄)

上記摘記事項において,「ルート」は経路のことであるから,
摘記事項(3)(4)及び関連図面によれば,
「移動局から固定局へ,探索パケットを定期的に発信することで,定期的にその経路情報を最新のものにする方法。」(以下,「引用発明2」という。)が記載されている。

また,原査定の拒絶の理由に引用された“藤井 裕順,吉開 範章著「両方向探索型セルフヒーリング方式の提案と特性評価」,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.90,No.244,IN90-66,社団法人電子情報通信学会発行,1990年10月16日”(以下,「引用文献3」という。)には,次の事項が記載されている。
(5)「3.提案方式の概要3.1特微(1)両方向探索
提案方式は,図2のように,障害発生検出と同時に障害端の両方のノードともSENDERとなり,両方のノードから探索メッセージ(図中マル1)(なお,引用文献3原文においては,マル1は丸数字の1で記載されている。)を同報すると同時に,両ノード共CHOOSERになることを最も主要な特徴とする。基本動作については,3.2節で述べる。
(2)IDスタンプ方式の利用
探索ノッセージの転送の際,IDスタンプ方式の概念を積極的に利用することを特徴とする。
IDスタンプ方式(6)は,本来,SDH網(7)におけるネットワーク運用管理の高度化を実現する一つの手段として提案されている方式である。これは,メッセージがネットワーク内の装置を通過する毎に,各装置に予め割り当てられた装置ID等の設備データをメッセージ内に逐次付加して伝送する方式である。
図3に,IDスタンプ方式による情報収集の概念図を示す。SENDER内のOAMM(オペレーション・モジュール)から送出されたメッセージ(図中マル1)は,その中に逐次IDが付加されていき,この情報を用いることにより,最終的にCHOOSER内のOAMMでは,メッセージの通過してきた経路を知ることができる。本提案方式においては,探索メッセージ内に逐次付加していく情報として,ノードID情報や伝送路の空き容量情報等を与える。」(第14頁左欄第1?26行)

第3 対比
本願発明と引用発明1を対比すると,
引用発明1中の「網」はネットワークとも呼ばれ,
引用発明1中の「メッセージ及びユーザ情報」も本願発明中の「データパケット」も情報であり,
引用発明1中の「迂回路」は一種の経路であり,
本願発明中の「ノード通過ログデータ」は,通過してきた伝送路に関する情報の一形態であり,
引用発明1中の「探索メッセージ」も本願発明中の「フィーラーパケット」も,経路の探索をするためのものという意味で,探索子ということができ,
本願発明1の(c.1)中の「第1の受信ノードを識別するデータ」は,伝送路に関しての自ノードに係る情報の一種であり,
データは情報の一形態であるから,
両者は,
「ネットワークを構成する複数の相互にリンクされたノードを介して,
一方のノードから他方のノードへと少なくとも1つの情報を伝送するための経路を発見するための方法であって,
(a)前記一方のノードから前記複数のネットワークノードのうちの少なくとも第1の受信ノードへと,通過してきた伝送路に関する情報を含む第1の探索子を送るステップと,
(b)前記他方のノードから前記複数のネットワークノードのうちの少なくとも第2の受信ノードへと,通過してきた伝送路に関する情報を含む第2の探索子を送るステップと,
(c)前記第1の探索子が前記第1の受信ノードにおいて受信されたことに応答して,
(c.1)受信された前記第1の探索子中の通過してきた伝送路に関する情報に伝送路に関しての自ノードに係る情報を加えることにより,補足された第1の探索子を構成するステップと,
(c.2)前記第1の受信ノードにおいて,前記通過してきた伝送路に関する情報を有する前記第2の探索子を識別するステップと,
(c.2.1)前記第2の探索子を見つけた場合は,少なくとも1つの情報を前記一方のノードから前記他方のノードへと前記ネットワークを介して伝送するための発見された経路を提供するために,前記受信された第1の探索子及び第2の探索子の通過してきた伝送路に関する情報を結合するステップと,
(c.2.2)そうでない場合は,前記補足された第1の探索子を前記複数のネットワークノードのうちの次のノードへと送るステップと,
(d)前記一方のノードへと,前記発見された経路を表す結合された通過してきた伝送路に関する情報を送るステップと,
(e)前記発見された経路を表す情報を前記一方のノードにおいて記憶するステップと,
を含む方法。」の点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は,データパケットの「経路」を発見するための方法に関する発明であるのに対し,引用発明1は,(障害発生時の)迂回路を発見するためのセルフヒーリング方法に関する発明である。
(相違点2)
伝送される情報が,本願発明では,「データパケット」であるのに対して,引用発明1では「メッセージ及びユーザ情報」である。
(相違点3)
上記情報を伝送するノードに関しても,本願発明では,「発信元ノード」「宛先ノード」であるのに対し,引用発明1では,障害発生時の処理に係る発明のため,両者とも単に「ノード」である。
(相違点4)
通過してきた伝送路に関する情報に関して,本願発明では,「ノード通過ログデータ」であるのに対して,引用発明1では,ノード通過ログデータを用いているか不明である。
(相違点5)
探索子に関して,本願発明では,「フィーラーパケット」であるのに対して,引用発明1では,「探索メッセージ」である。
(相違点6)
第1の探索子に関して,本願発明では,「宛先ノードを識別するフィーラーデータ」を付加し,さらに「発信元ノードを識別する」ものであるとの限定も付加しているが,引用発明1では,不明である。同様に,第2の探索子に関して,本願発明では,「宛先ノードを識別する」ものであるとの限定を付加しているが,引用発明1では,不明である。
(相違点7)
本願発明では,(c.1)で,「伝送路に関しての自ノードに係る情報」として,「第1の受信ノードを識別するデータ」を用いているが,引用発明1では不明である。
(相違点8)
本願発明では,(c.2.2)において,「補足された第1の探索子」は,そのコピーを送っている。また,(d)においても,「通過してきた伝送路に関する情報」は,そのコピーを送っている。
(相違点9)
本願発明では,「(f)前記記憶された経路データの経年度,
前記発信元ノードにおける,前記宛先ノードへの経路に対する要求の尺度,および,
前記記憶された経路データにより提示される経路のコストの尺度,
のうちの1つに応答して,前記第1のフィーラーパケットを送るステップ(a)を繰り返すステップと,」の構成があるが,引用発明1にはない。

第4 当審の判断
上記相違点について検討する。
・(相違点1)について
本願発明も,引用発明1も,探索子を用いて,ネットワークの経路を探索する技術という点で,軌を一にし,また,探索子を用いて発信元ノードから宛先ノードの経路探索をすること自体も,例えば,引用発明2に示されているように周知である。そして,引用発明1の経路探索手法を,発信元ノードから宛先ノードの経路探索に利用することに格別の阻害事由があるわけでもない。したがって,この程度の転用に格別な創意を要するものとはいえない。
・(相違点2)及び(相違点5)について
ネットワークにおいて,情報を伝送する場合,ほとんどがパケット化されており,引用文献1に明示的記載がないものの,データパケットとして伝送されていることは自明の域を出ない。(相違点2)同様に,探索メッセージをパケット化して「フィーラーパケット」とする点も,格別な創意工夫を要するとはいえない。(相違点5)
・(相違点3)について
引用発明1を,発信元ノードから宛先ノードの経路探索に転用することにより,自動的に導かれる事項にすぎない。
・(相違点4),(相違点6)及び(相違点7)について
通過してきた伝送路に関する情報として,通過したノードのアドレスを用いることは,最も普通の手法である。また,引用文献1は,引用文献3に関して特許法30条第1項の適用申請を伴うものであって,引用文献1と引用文献3には同様の発明が開示されているのであるが,この引用文献3に関しての上記摘記事項(5)には,「ノード通過ログデータ」が事実上開示されているから,通過してきた伝送路に関する情報として,「ノード通過ログデータ」を用いる程度のことは,引用文献1に開示されているに等しい事項ということもできる。(相違点4)そして,これらの「ノード通過ログデータ」に基づいて,迂回路が発見される以上,第1のフィーラーパケット(探索メッセージ)に,「宛先ノードを識別するフィーラーデータ」及び「発信元ノードを識別する」ノード通過ログデータを含ませることは,ほとんど自明の事項である。また,第2のフィーラーパケット(探索メッセージ)も同様である。(相違点6)また,同様に,「ノード通過ログデータ」である以上,「伝送路に関しての自ノードに係る情報」として,「第1の受信ノードを識別するデータ」を用いることも自明の域を出ない。(相違点7)
・(相違点8)について
経路の管理上,コピーとする点は,単なる設計的事項にすぎない。
・(相違点9)について
引用発明2の「移動局」及び「固定局」はネットワークを構成しており,ネットワークの構成としてみると,「移動局」は発信元ノードであり,「固定局」は宛先ノードであるから,発信元ノードから宛先ノードへ,本願発明の「フィーラーパケット」と同様の機能を持つ「探索パケット」を定期的に発信する方法であり,定期的とすることによって,必要な,最新の経路情報を得ているものということができるが,これは,経路情報を新しておくことの必要性の認識に立っていることは明らかで,当然,その前提として,「経年度」が考慮されていることも,明らかである。また,通信経路において,宛先ノードへの経路に対する要求の尺度,および,経路のコストの尺度を考慮することも,当然の技術的事項ということができるから,「(f)前記記憶された経路データの経年度,
前記発信元ノードにおける,前記宛先ノードへの経路に対する要求の尺度,および,
前記記憶された経路データにより提示される経路のコストの尺度,
のうちの1つに応答して,前記第1のフィーラーパケットを送るステップ(a)を繰り返すステップと,」の構成が格別な創意工夫ということはできない。
さらに,本願発明に関する作用・効果も,引用発明1,2,3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第5 むすび
したがって,本願発明は引用文献1,2,3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-05 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-10-26 
出願番号 特願2002-157737(P2002-157737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
中木 努
発明の名称 データパケットを伝送するための経路を発見するためのネットワーク装置  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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