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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1175192
審判番号 不服2004-7950  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-19 
確定日 2008-03-24 
事件の表示 平成6年特許願第22950号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成7年9月5日出願公開、特開平7-231971〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年2月22日の出願であって、平成16年3月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されると共に平成16年5月17日付けで手続補正がなされたが、その後当審において、平成19年8月28日付けで補正却下されると共に拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成19年10月24日付けで手続補正がなされたが、平成19年11月8日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成19年12月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年12月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は特許請求の範囲の補正を補正事項に含んでおり、特許請求の範囲の補正に限ってみると、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「フロントパネルに設けたカラー画像表示装置に、スタートスイッチの操作に基づいて複数の図柄を順次高速で移動表示した後、遊技者のストップスイッチの操作に基づいて該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンには、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄のうち、遊技者に特別遊技を行わせる組合せに含まれる特定図柄の色彩情報を記憶する特定図柄色彩記憶手段と、
前記特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩記憶手段と、
前記特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩のうち、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に可能となるとともに、スタートスイッチの操作を条件に不能となる色彩選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、色彩を選択する特定図柄色彩選択手段と、
前記特定図柄色彩選択手段が選択した色彩の色彩情報と前記図柄記憶手段からの図柄情報とにもとづいて、特定図柄の画像を合成する画像合成手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」

上記補正における「スタートスイッチの操作に基づいて複数の図柄を順次高速で移動表示」する構成は、平成19年10月24日付け手続補正書の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の図柄を順次高速で移動表示」する構成を限定したものと認められるから、本件補正は、少なくとも、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)記載不備についての独立特許要件の判断
本件補正後の請求項1には、「前記特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩記憶手段」と記載されており、「特定図柄色彩記憶手段」が「色彩を選択する」ことになるが、記憶手段が選択するとは、どのような技術事項を意味するのか理解することができず、上記記載の意味を明確に把握することができない。
したがって、本願補正発明は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでないから、平成6年改正前特許法36条5項2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)進歩性欠如についての独立特許要件の判断
(3-1)引用例に記載の発明の認定
当審の拒絶理由に引用された特開平2-92385号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

記載事項1;「このように従来の絵柄組み合せゲーム機であるスロットマシンは、…」(2ページ右上欄7-8行)

記載事項2;「この絵柄組み合せゲーム機1は、遊技箱2と該遊技箱2の一側上下に固定された開閉金具8によって開閉自在に軸支される前面面扉7とから構成されている。…
前記前面扉7には、絵柄組み合せゲーム機1の各種の操作装置及び表示装置が設けられている。すなわち、絵柄表示装置17や、この絵柄表示装置17を差し変え表示させるために操作する操作台9等を含んでいる。
操作台9には、…連続投入モードか単独投入モードのいずれかのメダル投入モードを設定するためのメダル投入設定ボタン12a、12b、…前記絵柄表示装置17の差し変え表示動作を開始させるためのスタートボタン15、及び絵柄表示装置17の差し変え表示動作を停止させるためのストップボタン16a?16cが設けられている。…
前記絵柄表示装置17は、液晶(LCD)による表示装置であり、図示の実施例の場合には、フルカラーLCDを使用している。…また、絵柄表示装置17には、3つの絵柄表示部17a?17cが形成され、この絵柄表示部17a?17cによって表示される絵柄(実施例の場合には、0?9までの数字)の組み合せが、所定の組み合せであるときに賞品としてのメダルをを払い出すようになっている。なお、各絵柄表示部17a?17cの表示は、前記ストップボタン16a?16cに対応している。」(3ページ左下欄6行-4ページ右上欄14行)

記載事項3;「更に、遊技箱2内には、上記に説明した各種の装置を駆動するためのマイクロコンピュータを含む制御回路基板35a?35cが設けられている。…
上記した制御回路基板35a?35cに含まれる回路をブロック構成の回路図で示すと第3図のようになる。第3図において、絵柄組み合せゲーム機1の動作を制御するCPUカード40には、絵柄表示装置17としてのカラーLCD、出力装置41、及び入力装置42が接続されている。
CPUカード40は、制御部としてのCPU(8bit)の他、ROM、RAM(バックアップ付)、タイマー回路、入出力回路等を含んでいる。また、絵柄表示装置17としてのカラーLCDは、3つのLCDから構成され、キャラジェネ方式により絵柄や数字等を高速で差し変えながら表示している。差し変え表示の態様として、1つ1つの絵柄がフラッシュ的に差し変るように表示しても良いし、絵柄が連続して回転しながら差し変るように表示しても良い。なお、1つのLCDにより3つの絵柄を表示できるものでも良い。」(5ページ右上欄12行-左下欄16行)

記載事項4;「上記のように構成された絵柄組み合せゲーム機1の具体的な動作について、マイクロコンピュータの処理手順を示した第4A図ないし第4C図のフロー図を参照して説明する。
まず、電源が投入されると、CPUカード40に給電されるとともに、ステップ50において各種のデータを初期設定する。…しかして、遊技者は、遊技を始めるに際し、メダル投入モード設定ボタン12a、12bを押して50枚までの連続投入か、あるいは1?3枚の単独投入かを選択し(ステップ51)、単独投入を選択した場合には、既に投入されて残留しているメダルが有るか否かが判断されて(ステップ52)、有る場合には、メダルの払い出し処理が行われる(ステップ53)。…
上記したモード設定が完了した後、メダル投入口10から設定したモードに従いメダルが投入されたか否かが判断される(ステップ56)。連続投入を設定した場合には、残留メダルの数が投入枚数設定値以上あればよい。ここで、投入枚数設定値と投入済メダル枚数とが一致した場合には、スタートボタン15の動作が能動化され、スタートボタン15が押し下げされたか否かが判断される(ステップ57)、スタートボタン15が押し下げされたと判別された場合には、第4B図に示す処理に移行する。」(5ページ右下欄19行-6ページ右上欄20行)

記載事項5;「前記ステップ57において、スタートボタン15が押し下げされたと判断された場合には、絵柄表示部17a?17cの絵柄が差し変え表示される(ステップ58)。この差し変え表示は、6秒経過して強制停止されるか(ステップ59、60)、6秒経過することなくストップボタン16a?16cの押し下げ動作によって停止される(ステップ59、61)まで継続される。なお、ストップボタン16a?16cによる押し下げは、対応する絵柄表示部17a?17cだけを停止させるものである。次いで、すべての絵柄表示部17a?17Cがすべて停止したか否かが判断され(ステップ62)、停止した場合には、その停止絵柄の組み合せが所定の入賞態様であるか否かが判断される(ステップ63)。所定の入賞態様であると判断されたときには、第4C図に示す入賞による処理が行われる。」(6ページ左下欄2-19行)

記載事項6;「入賞態様として、価値の一番大きいbigボーナス(大役)と、次に大きいボーナスと、単に所定のメダルを払い出す単入賞とに分けることができる。
bigボーナスゲームは、例えば、絵柄表示部17a?17cの表示がすべて「1」を表示したときに与えられるもので、賞品としてメダルが多量(例えば、350枚)に一度に払い出されるようになっている。」(7ページ左上欄11-19行)

前記摘示の記載を含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「前面扉7に設けたカラーLCDを使用した絵柄表示装置17に、スタートボタン15が押し下げられると複数の絵柄を連続して回転しながら差し変え表示した後、遊技者のストップボタン16a?16cの押し下げ動作によって差し変え表示を停止させて、その停止絵柄の組み合せが所定の入賞態様である場合に、遊技者にbigボーナスゲームを行わせる絵柄組み合せゲーム機において、
絵柄組み合せゲーム機の動作を制御するROMを含んでいるCPUカード40と、
連続投入モードか単独投入モードのいずれかのメダル投入モードを初期設定するためのメダル投入設定ボタン12a、12bとを備えた絵柄組み合せゲーム機。」

(3-2)本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願補正発明と引用発明を対比するに際し、本願補正発明は、上記「2(2)記載不備についての独立特許要件の判断」に示したように不明確な記載を含んでいるので、この点について、本願明細書の記載を参酌すると、遊技者が選択した色彩を選択するのは、特定図柄色彩選択手段であるから、「特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩記憶手段と、」との記載は、「特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩選択手段であって、」と認定することができ、この認定を前提として、以下に両者を対比する。
引用発明の「前面扉7」は本願補正発明の「フロントパネル」に対応し、以下同様に、「絵柄表示装置17」は「カラー画像表示装置」に、「スタートボタン15が押し下げられると」は「スタートスイッチの操作に基づいて」に、「絵柄」は「図柄」に、「連続して回転しながら差し変え表示」は「順次高速で移動表示」に、「ストップボタン16a?16cの押し下げ動作によって」は「ストップスイッチの操作に基づいて」に、「その停止絵柄の組み合せが所定の入賞態様である場合」は「該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合」に、「bigボーナスゲーム」は「特別遊技」に、「絵柄組み合せゲーム機」は「スロットマシン」に各々対応すると共に以下のことがいえる。
引用発明の「絵柄組み合せゲーム機の動作を制御するROMを含んでいるCPUカード40」は、技術常識に照らしてみれば、該ROMには、絵柄表示装置17に表示される絵柄の情報が記憶されていることが明らかであるから、本願補正発明の「カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段」に対応するものである。
引用発明の「連続投入モードか単独投入モードのいずれかのメダル投入モードを初期設定するためのメダル投入設定ボタン12a、12b」は、絵柄組み合せゲーム機(スロットマシン)の動作に関して、メダル投入設定ボタン12a、12bの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択するものであるから、「選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段」との限りにおいて、本願補正発明の「特定図柄色彩選択手段」と共通するものである。

そうすると両者は、「フロントパネルに設けたカラー画像表示装置に、スタートスイッチの操作に基づいて複数の図柄を順次高速で移動表示した後、遊技者のストップスイッチの操作に基づいて該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンには、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、
選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段とを備えたスロットマシン。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段とを備える点に関して、本願補正発明は、「カラー画像表示装置に表示される図柄のうち、遊技者に特別遊技を行わせる組合せに含まれる特定図柄の色彩情報を記憶する特定図柄色彩記憶手段と、前記特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩選択手段であって、前記特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩のうち、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に可能となるとともに、スタートスイッチの操作を条件に不能となる色彩選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、色彩を選択する特定図柄色彩選択手段」を備えるのに対して、引用発明は、色彩に関する記憶及び選択手段を備えていない点。

相違点2;本願補正発明は、「特定図柄色彩選択手段が選択した色彩の色彩情報と図柄記憶手段からの図柄情報とにもとづいて、特定図柄の画像を合成する画像合成手段」を備えるのに対して、引用発明は、そのような手段を備えていない点。

(3-3)相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
相違点1について
カラー画像表示装置を備えた機器におけるユーザーインターフェースにおいて、視認性等ユーザーの特性を反映させるために、表示される文字等の色彩に関する設定の変更を可能とすることは、例えば、当審の拒絶理由に示した特開平4-16987号公報、特開平2-93587号公報又は特開昭58-208783号公報等に記載されるように一般に周知の課題であり、さらに、スロットマシンを含む遊技機分野においても、趣向等遊技者の特性を反映させ図柄に関する設定の変更を可能とするために、表示装置に表示される図柄のうち、図柄の情報を記憶した図柄記憶手段と、この図柄記憶手段に記憶された情報のうち、選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、図柄の情報を選択する図柄選択手段を備えさせることは、例えば、当審の拒絶理由に示した特開平4-54982号公報又は特開平5-38379号公報等に記載されるように、従来周知の技術であるから、選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段とを備えた引用発明においても、そのような周知の課題及び周知技術を参酌して、図柄の色彩に関する設定の変更を可能とし、具体的には、「カラー画像表示装置に表示される図柄のうち、図柄の色彩情報を記憶した図柄色彩記憶手段」、「特定図柄色彩記憶手段に色彩情報が記憶された色彩のうち、遊技者が選択した色彩を選択する特定図柄色彩選択手段」さらに「この図柄色彩記憶手段に記憶された色彩情報のうち、…色彩選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、色彩を選択する図柄色彩選択手段」とを備えさせることは、当業者が容易に想到できることである。
また、設定部を備えた機器においては、機器が使用状態にある期間や設定が変更されることで不都合が生じない期間に設定変更を可能とすることが通例であり、引用発明における機器であるところのスロットマシンに、前述したように、特定図柄色彩選択設定する構成を備えさせるに際しても、通例に従って、同様の設定変更が可能な期間を設けることは、当業者が設計的に成し得る程度のことであり、設定変更が可能な期間の起点として、遊技者がスロットマシンで遊技を開始する条件である「メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件」とすること、さらには、スタートスイッチの操作による図柄の移動表示後に色彩を変更すると、移動表示の途中で色彩が変更されることになり、遊技操作に支障を来すことは、当業者が当然の如く認識できることだから、設定変更が可能な期間の終点として、「スタートスイッチの操作を条件」とすることも、特定図柄色彩選択設定する構成を備えさせるに際して、当業者が設計的に成し得る程度のことである。
さらに、例えば、当審の拒絶理由に示した特開平4-161182号公報に、大当りとなる識別情報である「7」の光透過率を高くして他の図柄よりも鮮明に浮かび上がらせることが記載され、また、スロットマシーンにおいてボーナス遊技を行わせる図柄「7」を一般的に認識され易い色とされる赤色とする等、複数の図柄のうち特定図柄を他の図柄と区別して注目させたいという要求は、スロットマシンを含む遊技機分野における常識的な事項と認められるから、前述したように、引用発明に「図柄色彩記憶手段」及び「図柄色彩選択手段」とを備えさせる際に、該「図柄」を「遊技者に特別遊技を行わせる組合せに含まれる特定図柄」とすることは、当業者が適宜成し得る程度のことである。
ところで、引用発明の「選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段」は、該選択された内容が、具体的には、メダル投入モードに関するものであることを考慮すれば、メダル投入前に設定変更可能とすること(記載事項4)は、当業者にとって自然なことであり、このことが、メダル投入とは別の選択内容の設定変更が可能な期間を設けるに際して、前述したような期間とすることを、何ら阻害するものではない。
以上を勘案すると、引用発明に該相違点のような構成を備えさせることは、当業者が容易に想到できることである。

相違点2について
カラー画像表示装置に図柄を表示するに際して、色彩情報と図柄情報を合成することは、例えば、当審の拒絶理由に示した特開平4-17874号公報、又は、上記した特開平2-93587号公報等に記載されるように、従来周知の技術であるから、相違点1について検討した事項を具体化する手段として、そのような周知技術を参酌して、引用発明に「特定図柄色彩選択手段が選択した色彩の色彩情報と図柄記憶手段からの図柄情報とにもとづいて、特定図柄の画像を合成する画像合成手段」を備えさせることは、当業者が設計的に成し得る程度のことである。

作用効果について
本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、上記「2(1)本件補正の内容」に示した補正事項以外の補正について論じるまでもなく、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年12月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成19年10月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「フロントパネルに設けたカラー画像表示装置に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、遊技者のストップスイッチの操作に基づいて該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンには、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄のうち、遊技者に特別遊技を行わせる組合せに含まれる特定図柄の色彩情報を記憶した特定図柄色彩記憶手段と、
前記特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩情報のうち、遊技者が選択した色彩の色彩情報を、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に、出力させる特定図柄色彩選択手段と、
前記特定図柄色彩選択手段からの色彩情報と前記図柄記憶手段からの図柄情報とにもとづいて、特定図柄の画像を合成する画像合成手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」

(1)引用例に記載の発明の認定
当審の拒絶理由に引用された特開平2-92385号公報(以下「引用例」という。)は、前記「2.(3-1)引用例に記載の発明の認定」において記載した引用例と同一文献であって、この引用例の記載事項及び該記載事項に基づいて認定される発明(以下「引用発明」という。)は、前記したとおりのものである。

(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
前記「2.(3-2)本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、「フロントパネルに設けたカラー画像表示装置に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、遊技者のストップスイッチの操作に基づいて該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンには、
前記カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、
選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段とを備えたスロットマシン。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1’;カラー画像表示装置に表示される図柄の図柄情報を記憶した図柄記憶手段と、選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、選択された内容を選択する選択手段とを備える点に関して、本願発明は、「カラー画像表示装置に表示される図柄のうち、遊技者に特別遊技を行わせる組合せに含まれる特定図柄の色彩情報を記憶した特定図柄色彩記憶手段と、前記特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩情報のうち、遊技者が選択した色彩の色彩情報を、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に、出力させる特定図柄色彩選択手段」を備えるのに対して、引用発明は、色彩に関する選択手段を備えていない点。

相違点2’;本願発明は、「特定図柄色彩選択手段からの色彩情報と図柄記憶手段からの図柄情報とにもとづいて、特定図柄の画像を合成する画像合成手段」を備えるのに対して、引用発明は、そのような手段を備えていない点。

(3)相違点の判断
相違点1’及び2’について
本願発明の「特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩情報のうち、遊技者が選択した色彩の色彩情報を、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に、出力させる特定図柄色彩選択手段」との記載は、平成19年11月8日付け最後の拒絶理由通知で示したように、不明確な記載であるが、平成19年12月28日付け意見書にも主張(2ページ30-35行)されるように、本願補正発明の「特定図柄色彩記憶手段に記憶された色彩のうち、メダル投入口から投入されたメダルが少なくとも一枚検出されたことを条件に可能となるとともに、スタートスイッチの操作を条件に不能となる色彩選択スイッチの遊技者による選択操作に従って、色彩を選択する特定図柄色彩選択手段」のことを意味していると認められるから、相違点1と相違点1’に実質的な相違はなく、
さらに、相違点2と相違点2’にも実質的な相違はないから、「2.(3-3)相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断」で述べた理由(「本願補正発明」を「本願発明」と読み替える。)により、相違点1’及び2’は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到できること、又は、当業者が設計的に成し得る程度のことである。

作用効果について
本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について論じるまでもなく、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-22 
結審通知日 2008-01-24 
審決日 2008-02-05 
出願番号 特願平6-22950
審決分類 P 1 8・ 534- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小林 俊久
土屋 保光
発明の名称 スロットマシン  
代理人 竹山 宏明  
代理人 米山 淑幸  

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