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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1175618
審判番号 不服2007-13636  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-10 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 平成10年特許願第502122号「光学式画像記録装置及び関連する処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月24日国際公開、WO97/49003、平成12年11月14日国内公表、特表2000-515255〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1997年6月17日(パリ条約による優先権主張1996年6月18日、デンマーク)を国際出願日とする出願(特願平10-502122号)であって、平成19年4月2日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年5月10日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成19年2月19日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。
本願発明1;
「光学情報を電子的に記録するカメラであって、
撮像光学系と、
前記撮像光学系が収納されるボディと、
前記ボディに収納される撮像素子とを有し、
前記撮像光学系は、第1の光学軸を有し且つ負の屈折率を有する前方レンズ群と、前記第1の光学軸を折り曲げる反射要素と、前記反射要素で折り曲げられた第2の光学軸を有し且つ少なくとも前記反射要素側に正の屈折率を有するレンズを有する後方レンズ群とを備え、
前記ボディは、前記第1の光学軸と略平行な位置関係にある側面と、前記第1の光学軸と略直交する位置関係にあり相対向する一対の面とを有し、前記側面の高さが前記一対の面方向の長さに比し、短く形成された形状とされ、
前記撮像光学系は、第1の光学軸方向における光学系厚さ(H)を、前記撮像素子に結像される撮像の対角線の長さ(D)で除した比(S)の値が1.7未満となるよう前記各レンズが構成されたことを特徴とするカメラ。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-130702号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.【0001】【産業上の利用分野】
本発明は、撮影した静止画像をディジタル化してメモリ等の記憶媒体に記憶し、そのディジタルデータをコンピュータ等へ伝送することのできるディジタル電子スチルカメラに関する。

イ.【0070】
次に、第5の具体例にはPCMCIA規格のType IIIの形態をした構造的変形例を示し、この第5の具体例について前記図8及び図9と同様に示す図15及び図16を用いて説明する。また、図17には図15の図中A-Aで示す二点鎖線で切断した場合の断面図を示す。なお、図17では図示を簡略化するため当該第5の具体例カメラの外形範囲を図中一点鎖線で示している。
【0071】
この第5の具体例の場合は、第4の具体例等と異なり、レンズ/ファインダ部355内のレンズアッセンブリは、集光/保護レンズ311と45度ミラー352と前群レンズ383,絞り312,後群レンズ313からなり、これらレンズ系の光軸が上記集光/保護レンズ311の後に上記45度ミラー352により90度曲げられてメモリカード部360の長手方向に平行となるようになされている。当該レンズアッセンブリの後群レンズ313を介した映像光がCCD撮像素子320上に結像され、当該CCD撮像素子320からの撮像信号がプリント回路基板371の信号処理系に送られる。また、この第5の具体例では、Type IIIの最大外形をはみ出さないように、レリーズボタン353,情報表示部352が凹座に形成され、レンズ311、ファインダ354a及び354bもメモリカード外形と同一面内に抑えられている。なお、上記集光/保護レンズ311後の光軸を曲げる手段としては、上記45度ミラー352の代わりに、プリズムを使用することもできる。
【0072】
この第5の具体例の特徴は、図17の断面図に示すように、45度ミラー352(又はプリズム)を用いてレンズアッセンブリ光学系を90度折り曲げた構成にしていることである。このようにすれば、レンズアッセンブリの光軸方向に長さの余裕が生まれるので、レンズアッセンブリ光学系の焦点距離fの値を大きくしたり、また焦点距離fを可変とする(すなわちズーム機能を持たせる)ことが可能となる。この方式によって、やはり電子スチルカメラの外形そのものを完全にメモリカード化することが可能なので、不要な出っ張りがなく、携帯性に優れている。当該第5の具体例によれば、言うまでもなく、カメラそのものをホスト側のTypeIII用のメモリカードスロットにそのまま挿入することが可能となる。
【0073】【発明の効果】
上述のように本発明においては、ホスト機器の所定規格のICメモリカード用スロットに装着可能な外形のスロット装着部に対して、撮像手段や光学系と共にディジタル映像信号形成手段や圧縮手段等の各種主要電装部品を一体化して構成するため、全体としての大きさはICメモリカードの大きさと近いものになる。また、本発明においては、光軸がICメモリカードに準じた外形のスロット装着部の一辺に平行になるように光学系を配置したり、ミラー又はプリズムによって光学系自体を90度折り曲げらて構成することで、厚みを薄くし、さらに照星をファインダ用途として用いることで、ファインダ用の部品点数を減らしている。

ウ.また、【図15】、【図17】の記載から、レンズ/ファインダ部355は、正の屈折率を有する集光/保護レンズ311の光軸と略平行な位置関係にある側面と、前記集光/保護レンズ311の光軸と略直交する位置関係にあり相対向する一対の面とを有し、前記側面の高さが前記一対の面方向の長さに比し、短く形成された形状とされている点、及び前群レンズ383と後群レンズ313とが、正の屈折率を有する点が、読み取れる。

したがって、上記記載事項ア.?ウ.、及び各図面から、引用例1には、
「撮影した静止画像をディジタル化してメモリ等の記憶媒体に記憶するディジタル電子スチルカメラであって、
レンズアッセンブリと、
前記レンズアッセンブリが収納されるレンズ/ファインダ部355と、
前記レンズ/ファインダ部355に収納されるCCD撮像素子320とを有し、
前記レンズアッセンブリは、集光/保護レンズ311の光軸を有し且つ正の屈折率を有する集光/保護レンズ311と、前記集光/保護レンズ311の光軸を折り曲げる45度ミラー352と、前記45度ミラー352で折り曲げられた前群レンズ383と後群レンズ313の光軸を有し且つ正の屈折率を有するレンズを有する前群レンズ383と後群レンズ313とを備え、
前記レンズ/ファインダ部355は、前記集光/保護レンズ311の光軸と略平行な位置関係にある側面と、前記集光/保護レンズ311の光軸と略直交する位置関係にあり相対向する一対の面とを有し、前記側面の高さが前記一対の面方向の長さに比し、短く形成された形状とされたカメラ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-28842号(実開平2-119634号)のマイクロフィルム(以下、「周知例」という。)には、次の事項が記載されている。
エ.第2図の記載から、負の前群レンズと正の後群レンズからなる撮影光学系が読み取れる。

4.対比
引用発明1の「撮影した静止画像をディジタル化してメモリ等の記憶媒体に記憶するディジタル電子スチルカメラ」は、本願発明1の「光学情報を電子的に記録するカメラ」に相当し、以下、同様に「レンズアッセンブリ」は「撮像光学系」に、「レンズ/ファインダ部355」は「ボディ」に、「CCD撮像素子320」は「撮像素子」に、「集光/保護レンズ311の光軸」は「第1の光学軸」に、「集光/保護レンズ311」は「前方レンズ群」に、「45度ミラー352」は「反射要素」に、「前群レンズ383と後群レンズ313の光軸」は「第2の光学軸」に、「前群レンズ383と後群レンズ313」は「後方レンズ群」に、それぞれ、相当する。

したがって、両者は、
「光学情報を電子的に記録するカメラであって、
撮像光学系と、
前記撮像光学系が収納されるボディと、
前記ボディに収納される撮像素子とを有し、
前記撮像光学系は、第1の光学軸を有する前方レンズ群と、前記第1の光学軸を折り曲げる反射要素と、前記反射要素で折り曲げられた第2の光学軸を有し且つ正の屈折率を有するレンズを有する後方レンズ群とを備え、
前記ボディは、前記第1の光学軸と略平行な位置関係にある側面と、前記第1の光学軸と略直交する位置関係にあり相対向する一対の面とを有し、前記側面の高さが前記一対の面方向の長さに比し、短く形成された形状とされたカメラ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、前方レンズ群が負の屈折率を有するのに対し、引用発明では、正の屈折率を有する点。

[相違点2]
後方レンズ群を、本願発明では、少なくとも前記反射要素側に備えているのに対し、引用発明では、そのような明示的限定がない点。

[相違点3]
本願発明では、撮像光学系は、第1の光学軸方向における光学系厚さ(H)を、撮像素子に結像される撮像の対角線の長さ(D)で除した比(S)の値が1.7未満となるように各レンズが構成されているのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

5.当審の判断
以下、各相違点について検討する。
[相違点1]について;
撮影光学系において、負の前群レンズと正の後群レンズからなるものは、上記周知例に示すように従来周知の技術事項であり、引用発明において、正の屈折率を有するレンズに代えて、負の屈折率を有するレンズとして、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって困難性はない。

[相違点2]について;
本願発明の前方レンズ群と反射要素と後方レンズ群との配置関係と、引用発明の集光/保護レンズ311と、45度ミラー352、前群レンズ383と後群レンズ313との配置関係とは、同じであるので、引用発明においても、上記相違点2に係る構成を明示的に限定することは、当業者にとって困難性はない。

[相違点3]について;
第1の光学軸方向における光学系厚さ(H)を、撮像素子に結像される撮像の対角線の長さ(D)で除した比(S)の値については、明細書(平成10年12月18日付特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付された明細書の翻訳文)に、
「S比 特に好ましいレンズ系は、4よりも小さいS比(光学系の高さHを形成された画像の周円の直径Dで除した値)を有しており、このS比は、2.55以下であるのが好ましく、1.7以下であるのがより好ましく、1.2以下であるのが最も好ましい。上記光学系の高さHは、レンズ、フィルタ、開口絞り、画像記録装置及びそのボディを含む光学系の任意の部分から第1の光学軸に投影された最大距離である。
上の説明から分かるように、S比が小さいと、コンパクトな光学装置が得られる。」と記載(第3頁)され、(撮像素子に結像される撮像の対角線の長さ(D)が一定とすれば、)S比が小さいと、コンパクトな光学装置が得られ、小さい方が好ましいことが理解されるが、「1.7未満」であることに特に臨界的意義があるとは認められない。

請求人は、平成19年6月11日付手続補正書の【請求の理由】の中で、「そして、このような比(S)を所定の値(1.7)以下に規定することは、撮像素子の大きさが一定であった場合に、光学系厚さ(H)を小さくするように各レンズを構成することを意味するものである。また、光学系厚さ(H)を小さくすることは、「ボディ」の厚み方向である「側面の高さ」方向の寸法を小さくし、カメラの小型化を実現することになり、このように、比(S)(=H/D)を所定の値以下となるように各レンズを構成することにより、カメラの小型化を実現する。」と主張しているが、特許請求の範囲に記載された発明では、撮像素子の大きさが限定されているわけではなく、比率のみを特定しているので、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって採用できない。
本願発明は、撮影光学系の光軸を反射要素で折り曲げたことにより、コンパクトな光学装置を得たものと認められるところ、この点は、引用発明と変わりがないのであるから、仮に、撮像素子の大きさを単に限定したとしても、数値限定の点に進歩性を有するものではない。

さらに、引用例1の【図17】の記載を見ると、CCD撮像素子320の対角線の長さは、記載されていないものの、対角線の長さは、少なくとも図示されている断面長さよりも長いことに鑑みれば、【図17】の記載が概略図ではあるとしても、S比は、略1よりも小さいことが読み取れ、引用発明も本願発明と同様、厚みを薄くすることを目的とするものである。

結局、引用発明において、上記相違点2に係る構成を限定することは、当業者が必要に応じてなし得る設計事項であって、困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も引用発明1、及び従来周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-24 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願平10-502122
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森内 正明
安田 明央
発明の名称 光学式画像記録装置及び関連する処理装置  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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