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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B22D
管理番号 1175732
判定請求番号 判定2007-600098  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-12-20 
確定日 2008-03-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第2909110号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スライディングゲート用プレートの上固定盤」は、特許第2909110号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書(甲第1号証)に示す「スライディングゲート用プレートの上固定盤」(以下「イ号物件」という。)は、特許第2909110号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件発明の構成要件
本件発明は、平成11年4月2日に設定登録された願書に添付された明細書及び図面(以下「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成要件を分説すると次のとおりとなる(以下、分説したものを「構成要件A」ないし「構成要件G」という。)
A タンディッシュからモールドに鋳造されるときに使用されるスライディングゲート用プレートの上固定盤において、
B 突出部が形成されたプレート本体と、このプレート本体に嵌装されて開口部及び突出部の少なくとも一部を形成するガスチャンネルと、
C 前記ガスチャンネルを囲繞するように前記プレート本体に形成された環状スリットと、
D 前記ガスチャンネルの側壁に一端が前記開口部に、他端が前記環状スリットにそれぞれ連通するように放射状に設けられた複数のガス吹き孔と、
E 前記環状スリットに連通したガス導入路を有し、
F 前記開口部が上部方向に向かって突出部上端にいたるまで径が広がっている第1開口部及びこの第1開口部に連通した円筒状の第2開口部からなる溶鋼流出孔を形成し、かつ
G 前記第1開口部の最大直径をD_(1)、第2開口部の直径をD_(2)及び第1開口部の傾斜角度をαとしたとき下記式を満たすことを特徴とするスライディングゲート用プレートの上固定盤。 D_(2)<D_(1)≦D_(2)×5、10mm≦D_(2)≦100mm、5度≦α≦80度

第3 イ号物件の構成
判定請求書に添付されたイ号説明書(甲第1号証)の記載内容と図面を参考にすると、イ号物件は、次のa?fの構成からなるものとすることが相当であると認める(以下、「構成a」ないし「構成g」という。)。
a タンディッシュからモールドに鋳造されるときに使用されるスライディングゲート用プレートの上固定盤において、
b 突出部が形成されたプレート本体と、このプレート本体に嵌装されて開口部及び突出部の少なくとも一部を形成するガスチャンネルと、
c 前記開口部を囲繞するように前記ガスチャンネルの外周に形成され鉄皮で覆われた環状ガスプールと、
d 前記ガスチャンネルの側壁に一端が前記開口部に、他端が前記環状ガスプールにそれぞれ連通するように放射状に設けられた複数のガス吹き孔と、
e 前記環状ガスプールに連通したガス導入路を有し、
f 前記開口部が上部方向に向かって突出部上端に至るまで径が広がっている第1開口部及びこの第1開口部に連通した円筒状の第2開口部からなる溶鋼流出孔を形成し、かつ
g 前記第1開口部の最大直径が125mm、第2開口部の直径が第1開口部の約半分、第1開口部の傾斜角度が約30度である、
スライディングゲート用プレートの上固定盤」

第4 当審の判断
1 本件発明とイ号物件との対比
本件発明とイ号物件を対比すると、イ号物件が本件発明の構成要件A、B及びD?Fと文言上一致する構成を備え、構成gの数値は構成要件Gの各式を満たすことが明らかであるので、イ号物件は本件発明の構成要件A、B及びD?Gを充足するといえる。
次に、構成要件Cと構成cの充足関係について検討する。
イ号物件における「環状ガスプール」は本件発明における「環状スリット」に対応するので、構成要件Cと構成cは、いずれも環状スリットに関する技術事項である。そして、当該環状スリットは、本件発明では「プレート本体に」形成されているのに対し、イ号物件では「ガスチャンネルの外周に形成され鉄皮で覆われ」ているので、ガスチャンネル内の外周部に鉄皮で覆われてガスチャンネルと一体化して形成されているといえる。
したがって、その形成位置に関しては両者は相違するので、イ号物件は本件発明の構成要件Cを充足しない。

2 均等論の適用の可否について
そこで、本件発明の構成中にイ号物件とは異なる部分があることになるので、最高裁判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成6年(オ)1083号)が判示する次の5つの要件に従って、均等論の適用の余地があるか否かにつき検討する。
すなわち、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品と異なる部分が存在する場合であっても、(1)その部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)その部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)このように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく、(5)かつ、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、その対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。

3 要件(5)について
(i) 要件(5)は、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解される行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らして許されないことを根拠とするものである。
このため、特許権者たる出願人が、特許出願過程における補正により特許請求の範囲を減縮してその技術的範囲から特定の技術事項を除外した場合には、出願人がそのような補正をしたことが、当該技術事項を特許発明の技術的範囲から意識的に除外したと外形的に解される行動に当たると解すべきである。
(ii) これを本件発明において検討するに、本件発明において出願人たる請求人は、本件特許出願手続における平成7年9月8日付け手続補正書において、本件発明の構成要件Cを請求項1に付加する補正(以下「本件補正」という。)を行うと共に、同日付けで提出した意見書において、当該補正に係る本件発明は、拒絶理由通知で提示された引例1?4と構成において著しく相違し、これらの従来技術からは容易に想到できたものではない旨を主張した。
そこで、本件補正を具体的に検討すると、本件補正により請求項1に加入された構成要件Cは、環状スリットが設置される位置を「ガスチャンネルを囲繞するようにプレート本体」に特定するものである。そして、本件補正は、判定請求書における請求人の主張によれば、「環状スリット」の他に補正により加入された「ガスチャンネル」、「ガス導入路」という構成と共に、溶鋼流出路中にガスを吹き込むことを明確にする事項により本件発明の構成を明確にしたものである。
(iii) しかし、ガスを吹き込むことを明確にするならば、環状スリットの設置場所までをも特定することは必ずしも必要とは言い難く、環状スリットはガスチャンネルの周囲に存在し、ガスチャンネルを囲繞するとすれば十分であったはずである。
そうであるとすれば、出願当初明細書の請求項1の記載は、ガスを吹き込むことについて不明確であったが、本件補正により、環状ガススリットを設置すること、そしてその設置場所を「ガスチャンネルを囲繞するようにプレート本体に」設置すると限定することにより、これ以外の設置場所に環状ガススリットを設置すること、すなわちガスチャンネル内に設置することは、請求項1から意識的に除外したと外形的には解すべきである。
したがって、イ号物件は、均等の第5要件を充足しないこととなり、その余の均等の要件を判断するまでもなく、本件発明と均等であるとは認められない。

第5 まとめ
以上によれば、イ号物件は本件特許発明の構成要件Cを充足せず、また、本件特許発明と均等であるとも認められないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものではない。

 
別掲
 
判定日 2008-03-18 
出願番号 特願平1-301919
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀ヶ谷 明久岡田 和加子  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 小川 武
綿谷 晶廣
登録日 1999-04-02 
登録番号 特許第2909110号(P2909110)
発明の名称 スライディングゲート用プレートの上固定盤  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 小堀 益  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 堤 隆人  
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