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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A23L
審判 全部無効 1項1号公知  A23L
審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1176139
審判番号 無効2006-80272  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2008-03-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3650705号発明「パラチニット含有食品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の経緯の概要
本件特許第3650705号の請求項1-3に係る発明についての出願は、平成11年3月24日に出願され、平成17年2月25日にその発明について特許権設定登録がなされ、この特許に対して、平成18年12月27日付で白井重隆より特許無効審判が請求され、これに対し、平成19年3月23日付で被請求人から答弁書および訂正請求書が提出され、これに対し、平成19年5月21日付で請求人から弁駁書が提出され、平成19年6月4日付で請求人から弁駁書を補う上申書が提出され、平成19年6月21日付けで被請求人から請求人が提出した甲第5および甲第6号証の食品の和三盆および砂糖の含有量についての鑑定申出書および鑑定事項書が提出され、平成19年7月4日付で被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、平成19年7月4日に請求人欠席のもとで口頭審理を行い、論点整理を行った後、平成19年7月18日付で口頭審理の際に審理した事項について被請求人から上申書が提出され、これにつき、平成19年7月31日付で合議体は被請求人に対して審尋を行い、当該審尋に対して、平成19年8月17日付で被請求人から回答書が提出され、これらの経緯をふまえて、平成19年9月18日付で合議体から無効理由が通知され、平成19年10月22日付で被請求人から、意見書、ならびに、平成19年3月23日付の訂正請求の取下書および新たな訂正請求書が提出され、これにつき平成19年11月29日、同年12月7日および12月19日付で請求人から上申書が提出されたものである。


第2 平成19年10月22日付けの訂正の可否に対する判断
1 訂正事項
平成19年10月22日付の訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び図面を当該訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおりに訂正しようとするものである。
具体的には、特許請求の範囲については、訂正前の請求項1を下記のとおり訂正することを求めるものである。

訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 パラチニットと、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩とを含有することを特徴とする食品(但し、和三盆または砂糖を含有する食品は除く)。
【請求項2】 さらに唾液分泌促進基剤を含有することを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】 トローチ、チューインガム、タブレット、チュアブルタブレット、キャンディーおよびグミキャンディーよりなる群から選択される剤型であることを特徴とする請求項1または2記載の食品。」

訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 パラチニットと、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量が、食品の全量に基づく0.1-10重量%とを含有することを特徴とする再石灰化促進食品(但し、和三盆または砂糖を含有する食品は除く)。
【請求項2】 さらに唾液分泌促進基剤を含有することを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】 トローチ、チューインガム、タブレット、チュアブルタブレット、キャンディーおよびグミキャンディーよりなる群から選択される剤型であることを特徴とする請求項1または2記載の食品。」

また、発明の詳細な説明については、上記特許請求の範囲との整合をとるために対応する訂正をすることを求めるものである。

2 訂正事項に対する判断
上記の請求項1についての訂正は、訂正前の「食品」なる文言を「再石灰化促進食品」と訂正するとともに(以下、「訂正事項A」という。)、食品に含有される、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量を食品の全量に基づく0.1-10重量%と特定するものである(以下、「訂正事項B」という。)。
訂正事項Aについて、被請求人は「食品」なる文言を、本願の願書に添付した明細書、【0007】、【0012】中の記載に基づいて、より下位概念たる「再石灰化促進食品」と限定するものであると主張しているところ、当該訂正事項は、概念として特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、明細書の上記箇所には、「本発明の目的は、安全性が高く、歯面の再石灰化を促進し、その結果として表層下脱灰を抑制できる食品を提供することにある。」等と記載されているから、上記訂正事項Aは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項Bについて、被請求人は、当該訂正は有機酸カルシウムの配合量を明細書、【0016】中の記載に基づいて「1種または2種以上の合計量として食品の全量に基づく0.1-10重量%と規定するものである。」と主張しているところ、明細書の段落【0016】には、「本発明の食品に配合される有機酸カルシウム塩の量は、単独または2種以上の合計量として食品の全量に基づき、0.1-10重量%の範囲、好ましくは0.5-2重量%の範囲である。」と記載されていることから、明細書には有機酸カルシウムの配合量を当該範囲とすることが開示されていたと認められる。してみれば、訂正事項Bは有機酸カルシウムの配合量を明細書に記載される特定範囲に規定するものであるから、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、発明の詳細な説明の各訂正事項は、当該特許請求の範囲の訂正に整合させるために、当初明細書等に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.訂正の可否について、結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書きおよび同条第5項において準用する特許法第126条第3および4項に規定する要件を満たすものであるから、当該訂正を認める。


第3 本件特許発明
平成19年10月22日付の訂正が上述のとおり認められたので、本件特許発明1-3は、当該訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 パラチニットと、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量が、食品の全量に基づく0.1-10重量%とを含有することを特徴とする再石灰化促進食品(但し、和三盆または砂糖を含有する食品は除く)。
【請求項2】 さらに唾液分泌促進基剤を含有することを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】 トローチ、チューインガム、タブレット、チュアブルタブレット、キャンディーおよびグミキャンディーよりなる群から選択される剤型であることを特徴とする請求項1または2記載の食品。」


第4 請求人が主張する無効理由の概要
請求人白井重隆は、証拠方法として下記甲第1-11号証を提出し、訂正前の請求項1乃至3に係る発明の特許は、以下の1.および2.の理由により、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきである旨を主張している。
1.本件訂正前の請求項1-3に係る発明は、本件の特許出願前に日本国内において公然知られた発明(甲第1号証)であり(以下、「無効理由1」という。)、または少なくとも前記公然知られた発明および甲第3または甲第4号証に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから(以下、「無効理由2」という。)、特許法第29条第1項第1号の規定又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
2.本件訂正前の請求項1-3に係る発明は、本件の特許出願前に日本国内において公然知られた発明(甲第2号証)であり(以下、「無効理由3」という。)、または少なくとも前記公然知られた発明および甲第3または甲第4号証に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから(以下、「無効理由4」という。)、特許法第29条第1項第1号の規定又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

甲第1号証 「シュガーレス キレイの素 グレープフルーツキャンディ」の商品パッケージの写真の写し
甲第2号証 「glico SUPPORT TEAM VITAMIN&MINERAL」の商品パッケージの写真の写し
甲第3号証 「指定品目 1993年版 食品添加物便覧(改訂第31版)」、発行所 株式会社食品と科学社、平成5年7月15日発行
甲第4号証 特開平10-295328号公報
甲第5号証 甲第1号証の商品パッケージの現物
甲第6号証 甲第2号証の商品パッケージの現物
甲第7号証 日本食糧新聞、第9頁(1996年9月6日発行)の写し
甲第8号証 日経流通新聞、第6頁(1997年1月11日発行)の写し
甲第9号証 glico「‘98グリコ商品春のご案内」、江崎グリコ株式会社、表紙及び第20号の写し
甲第10号証 日経産業新聞、第27頁(1997年7月25日発行)の写し
甲第11号証 日経産業新聞、第20頁(1997年7月22日発行)の写し


第5 当審の判断
1 訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
(1)無効理由1について
審判請求人は、訂正前の請求項1に係る発明が、本件の特許出願日前に日本国内において公然知られた発明(甲第1号証)と同一であると主張する。
甲第1号証は、「シュガーレス キレイの素 グレープフルーツキャンディ」の商品パッケージの写真の写しであり、甲第5号証として、当該パッケージに包装された食品が提出されている。甲第1号証および甲第5号証のパッケージには、「原材料名:(略)還元パラチノース、甘味料(ステビア)、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)、(略)、パントテン酸カルシウム(略) 内容量:40g(10粒)、栄養成分・一本(10粒)当たり:(略)・糖質36g・(略)・パントテン酸カルシウム0.21mg・(略)」と記載されている。
甲第1号証により示される発明(以下、「引用発明1」という。)の「還元パラチノース」は本件発明1の「パラチニット」に相当するものである。しかしながら、上記記載によれば引用発明1は、40gあたりにパントテン酸カルシウム0.21mgを包含するものであることが明らかである。すると、引用発明1は、パントテン酸カルシウムを0.21mg/40gx100=0.000525重量%で包含する食品に係るものである。
一方、前記訂正により、本件発明1は、パントテン酸カルシウム等の有機酸カルシウム塩の1種又は2種以上の合計量が食品の全量に基づく0.1-10重量%であるものと限定されたため、引用発明1に係る食品は、本件発明1の約1/190-1/19000の配合比でパントテン酸カルシウムを包含するものである。してみれば、引用発明1は本件発明1から有機酸カルシウム塩の配合比において明らかに区別できるものである。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1とは同一でない。

(2) 無効理由2について
請求人は、訂正前の請求項1に係る発明について、引用発明1のパントテン酸カルシウムの代わりに、またはこれと組み合わせて、甲第3号証又は甲第4号証に記載のグリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムを用いることは、当業者が容易に想到し得るものである旨主張している。
しかしながら、上記(1)で指摘のとおり、引用発明1は上記訂正後の本件発明1のわずか約1/190-1/19000程度の配合比で有機酸カルシウムの一種であるパントテン酸カルシウムを包含するものである。そして、請求人が提出したいずれの証拠をみても、引用発明1において、引用発明1に記載のパントテン酸カルシウム、またはこれと組み合わせて甲第3号証又は甲第4号証に記載の各有機酸カルシウム塩を本件発明1のような190倍以上の配合比で包含させようとする動機付けとなる事項は見あたらない。さらに、請求人が提出したいずれの証拠をみても、パラチニットと、乳酸カルシウム等の特定の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量が食品の全量に基づく0.1-10重量%である食品が、顕著に脱灰を抑制して再石灰化促進をするという効果を奏することを予期することはできない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1および甲第3号証または甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3) 無効理由3について
審判請求人は、訂正前の請求項1に係る発明が、本件の特許出願日前に日本国内において公然知られた発明(甲第2号証)と同一であると主張する。
甲2号証は、「グリコサポートチーム ビタミン&ミネラル V.C.・Ca・V.B」の商品パッケージの写真の写しであり、甲第6号証として、当該パッケージに包装された食品が提出されている。甲第2号証および甲第6号証のパッケージには、「原材料:還元パラチノース、骨焼成カルシウム、(略)、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、ソーマチン)、パントテン酸Ca、(略)、乳酸Ca、(略)」と記載されている。
甲第2号証および甲第6号証からでは、甲第2号証により示される発明(以下、「引用発明2」という。)の有機酸カルシウム塩の含有量比は不明なため、合議体は平成19年10月22日付の訂正請求書の副本を審判請求人に送付するに際し、当該含有量比について弁駁書において言及するよう要請した。しかしながら、請求人は平成19年12月19日付け上申書において、当該成分比については不知であるとの回答をしている。
訂正後の請求項1に係る発明は、有機酸カルシウム塩の含有量比が一定割合である再石灰化食品に係る発明であるにもかかわらず、当該成分の含有量比について請求人が何ら明らかにしていない以上、訂正後の請求項1に係る発明は、引用発明2と同一であるということはできない。

(4)無効理由4について
請求人は、訂正前の請求項1に係る発明について、引用発明2のパントテン酸カルシウム、乳酸カルシウムの代わりに、またはこれと組み合わせて、甲第3号証又は甲第4号証に記載のグリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムを用いることは、当業者が容易に想到し得るものである旨主張している。
しかしながら、訂正後の本件発明1は、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩を単独または2種以上の合計量で、食品の全量に基づく0.1-10重量%含有するものであり、請求人が提出したいずれの証拠をみても、引用発明2において、引用発明2のパントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、またはこれと組み合わせて甲第3号証又は甲第4号証に記載の各有機酸カルシウム塩を当該特定の配合比で包含させようとする動機付けとなる事項は見あたらない。さらに、請求人が提出したいずれの証拠をみても、パラチニットと、乳酸カルシウム等の特定の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量が食品の全量に基づく0.1-10重量%である食品が、顕著に脱灰を抑制して再石灰化促進をするという効果を奏することを予期することはできない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2および甲第3号証または甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

2 訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)および訂正後の請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)について
本件発明2は本件発明1の食品についてさらに唾液分泌促進剤を含有することを特定するものであり、本件発明3は本件発明1又は2の食品の剤型を特定するものであるため、唾液分泌促進剤や、食品の剤型について検討するまでもなく、上記1と同様の理由により、本件発明2および3は、引用発明1または2と同一のものではなく、また引用発明1または2および甲第3号証または甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものでもない。


第6 その他
なお、請求人は、平成19年7月31日付上申書において、甲第1号証および甲第2号証は、特許法第29条第1項第3号の無効理由を示す証拠としても適格である旨主張している。しかしながら、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明が本件発明1-3と同一でないことは、上記「第5 1(1)(3)」および「第5 2」で指摘の通りであるから、仮に請求人の審判請求の理由が本件特許発明1-3は特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、無効にされるべきであるというものであったとしても、これらの証拠をもって本件発明1-3は無効であるとはいえない。
また、上記訂正により、平成19年9月18日付の無効理由通知で指摘された無効理由は解消された。


第7 結び
以上の通りであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件の請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とすることができない。
また、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、審判費用は、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パラチニット含有食品
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】パラチニットと、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量として食品の全量に基づく0.1-10重量%とを含有することを特徴とする再石灰化促進食品(但し、和三盆または砂糖を含有する食品は除く)。
【請求項2】さらに唾液分泌促進基剤を含有することを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】トローチ、チューインガム、タブレット、チュアブルタブレット、キャンディーおよびグミキャンディーよりなる群から選択される剤型であることを特徴とする請求項1または2記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパラチニットと有機酸カルシウム塩とを含有する食品、さらに詳しくはパラチニットと有機酸カルシウム塩とを含有する表層下脱灰を抑制し得る食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
う蝕は、初期段階では歯面の表層部を残したまま歯面表層下のヒドロキシアパタイトを構成するカルシウムイオン、リン酸イオンが溶出することによって始まり、これは「表層下脱灰」と称される。歯の表面は日常の食生活や唾液分泌量の影響を受けながら、微少環境下で脱灰と再石灰化を繰返しているが、このカルシウム移動量(脱灰量と再石灰化量)のバランスが崩れると、脱灰が亢進し、「表層下脱灰」に至ると考えられる。
【0003】
「表層下脱灰」の生じた部位は、臨床的には白色不透明な領域「白斑」として診断され、これを再石灰化させる(カルシウムイオン、リン酸イオンを表層下の脱灰部分に再結晶化させる)防御策を講じなければ、歯面表層が崩壊し、歯面に自己修復不可能な「う蝕(う窩)」を生じさせる。このため、「表層下脱灰」は、「初期う蝕」とも称される。虫歯の予防の基本は、まず、この「表層下脱灰」=「初期う蝕」を防ぐことにある。
【0004】
「表層下脱灰」を起こす酸性pH環境は、歯面に滞留する歯垢中に存在するう蝕原性細菌(Mutans cocobacillali,Lactobacillali)が蔗糖や果糖などの糖質を原料として産生する酸が歯垢内pHを5.5以下に低下させることによって生じる。その一方、再石灰化を生じさせる中性pH環境は、酸を生じる要因(う蝕原性細菌、歯垢、う蝕原性細菌により利用可能な糖質の3要因の全て)が口腔中に存在せず、唾液中のカルシウムイオンおよびリン酸イオンがエナメル質のヒドロキシアパタイトに対して飽和度の高いpH数値に維持されていることによって生じる。う蝕原性細菌により利用可能な糖質が唾液・歯垢中に存在しない場合には、歯垢のpHはpH6.5から中性付近に留まり、歯を脱灰させることはない。しかし、日常生活でいかに丁寧にブラッシングをしていても歯垢を完全に取り去ることは難しく、昼食後のブラッシングから就寝前のブラッシングまでの間隔は、成人なら10時間以上と推察されるため、日常生活内で歯垢は増加し、歯垢pHはたびたび低下していると考えられる。また、就寝時には口腔内が乾燥することにより、歯垢内のpH値が極度に低下する危険があるなど、「表層下脱灰」を引き起こす要因は日常生活の上で避けがたい。したがってブラッシングによる歯垢除去に加えて、日中や夜間におこる「表層下脱灰」を防ぐツールが歯磨剤以外で必要と考えられる。
【0005】
唾液中のカルシウムイオンおよびリン酸イオンは、エナメル質のヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)に対し高い飽和度にあることから、表層下脱灰を起こさない環境を維持している。さらに、外部から口腔中に適用されるカルシウムイオンやリン酸イオンは歯の脱灰を抑制し、再石灰化を促進させることが知られている。これらのカルシウムイオンやリン酸イオンは、医薬品、歯磨剤、食品の様々な形態で適用することが可能であるが、歯垢中でのカルシウムイオン、リン酸イオンの濃度上昇は、副作用として歯垢の石灰化を進め、歯石形成を速める危険があって、容易に適用できない。というのは、歯垢はう蝕原性細菌を主体とする細菌と多糖類グルカンを主体とする細胞外基質から成る粘着性組成物であって、この内部のカルシウムイオン濃度およびリン酸イオン濃度は唾液中での濃度よりも高く、歯垢内部のpH値が6.5から7以上になるとリン酸カルシウムの飽和度が高くなり、非晶質リン酸カルシウムの沈着がおこるということが知られているからである。さらに、この非晶質リン酸カルシウムは、長時間を経て徐々にヒドロキシアパタイトに結晶化するために、長期間残留している歯垢は徐々に、硬度の高い歯石に変化する(=石灰化する)ことが知られているからである。歯石は酸をほとんど産生しないので、それ自体はう蝕の原因とはならないが、容易にブラッシングで除去できないことから、歯垢の溜まり場となりやすく、歯石辺縁の歯肉に炎症をおこす原因となる。口腔の中性pH付近(pH6.5?pH8.0)で、この歯石形成を防ぐためには、唾液中でも(唾液中のCaイオン濃度は、およそ1.6mMと報告されている。)容易に溶解し、沈殿をおこしにくい有機酸カルシウム塩類(具体的には乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム等)を用いることが想定される。有機酸によって唾液中で安定化された遊離カルシウムイオンは、そのままでは歯面を再石灰化しないので、これら有機酸カルシウムを口腔に適用しただけでは、「表層下脱灰」の防止効果が期待できない。そこで、有機酸カルシウムによる歯面の再石灰化を促す素材の探索が必要であった。これらの観点から、従来、種々のカルシウム塩やリン酸塩と併用してフッ素イオンを供給する口中錠などが発明提示されていた(特開昭55-53212号公報、特開平4-217618号公報)が、フッ素は経口摂取による安全性に対する危惧などの欠点から、これに代わる安全な素材の探索が必要であった。
【0006】
非う蝕糖は、一般の糖質(蔗糖、果糖など)とは異なり、う蝕原性細菌によりエネルギー資源として利用されないため歯垢中で酸を産生せず、かつ、歯垢を形成するための原料としてもう蝕原性細菌に利用されないことを特長とする。このような非う蝕糖の分類範疇には糖アルコール群が存在する。糖アルコールは直鎖の糖、二糖類、三?六糖の多糖類(オリゴ糖)が存在するが、キシリトール、マルチトール、パラチニット、エリスリトールのように食品として利用可能な素材については、上記の2点の特長を備えていることから、う蝕の原因とならない糖として広く認知されている。しかし、この特長は、う蝕原性細菌に利用されないという特長に基づいており、生体側の歯質そのものに対して特長ある作用が見出されているものではない。これら糖質の用途は、チューインガム、チョコレート、キャンディ、錠菓などの菓子類に及び、すでに多くの糖が「虫歯の原因となる酸をつくらないので、歯に安心な糖」として広く認知されている。日常摂取して安心な食品素材であるが、これらの配合目的は菓子として食べた際にその菓子が原因で、歯垢により酸がつくられることがなく、う蝕を誘発されないという意図であり、全ての糖アルコールが積極的に「表層下脱灰」に対して防御的に働くとする報告はない。キシリトールに限っては、種々の実験により再石灰化効果が期待できると報告されている(非う蝕誘発性食品のう蝕予防プログラムにおける位置づけ,日本歯科評論 No.668,1998年)。しかし、多くの糖アルコールにはカルシウムイオンを安定化させ、リン酸カルシウムの飽和度を下げるという特質があるとする報告がある(口腔衛生学会誌,46巻:p.442-443,1996年)ことから、これらの糖アルコールの中のいくつかのものについては、カルシウムイオンを効率的に歯面に再石灰化させる作用を持つものがあることが期待された。
しかし、各々の糖アルコールはそれぞれに溶解性、カルシウムイオンの安定性、結晶性、歯面への浸透性などの物性値が異なるので、いずれの糖アルコールがカルシウムイオンとの併用によって、「表層下脱灰」に防止効果を現すかどうかは、実際に検証してみなければ分からなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全性が高く、歯面の再石灰化を促進し、その結果として表層下脱灰を抑制できる食品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記のう蝕予防観点から、う蝕の表層下脱灰を防御することを目的として素材探索に取り組み、中性pH付近で3mM以上の溶解性を示すものは脱灰を起こさないという従来得られている知見より、人工唾液中の遊離カルシウム濃度を4mM以上に上昇させることのできるキレート酸カルシウム塩もしくは有機酸カルシウム塩から成るカルシウムイオンを効率的に歯面の再石灰化部位へ供給し、かつ、歯面に残存する歯垢を石灰化させない素材について鋭意検討した。
【0009】
発明者らは、まず、有機酸カルシウムによる人工唾液中でのカルシウムイオン濃度上昇効果を検討した結果、人工唾液(カルシウムイオン濃度1.6mM、pH7.0、水温37℃)中のpH値をpH6.5より低い数値には下げないで、かつ、遊離カルシウム濃度を4mM以上に上昇させることのできるカルシウム塩は、有機酸カルシウム(乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム)であることが分かった。この結果に基づいて、さらに特定のカルシウム塩(乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム)が共存している脱灰溶液(pH5.0の酸性条件に調整された溶液)中で、糖アルコールやその他非う蝕糖がエナメル歯面の「表層下脱灰」を防御するかどうかを検討した。
【0010】
これらの実験結果より、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムまたはパントテン酸カルシウムなどの有機酸カルシウム塩との共存条件下で、酸性環境による歯面の「表層下脱灰」を防ぐ作用を持つ糖アルコールは、パラチニットのみであることを見い出した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、パラチニットと、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムよりなる群から選択される1種または2種以上の有機酸カルシウム塩の単独または2種以上の合計量として食品の全量に基づく0.1-10重量%とを含有する再石灰化促進食品を提供するもので、かかる食品は表層下脱灰を防ぐ効果を奏する。本発明の再石灰化促進食品には、さらに唾液分泌を促進する作用のある基剤や、pH調整剤を適宜配合することができる。
【0012】
本発明の食品によれば、高い安全性のもとに、表面下脱灰した歯面の再石灰化を促進することができ、その結果、酸性環境下での歯面の表層下脱灰を効果的に抑制することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の食品に使用されるパラチニットは二糖類の糖アルコールであり、その実体はα-D-グルコピラノシル-1,6-マンニトールおよびその異性体であるα-D-グルコピラノシル-1,6-ソルビトールの混合物である。パラチニットはシュークロースを原料とし、シュークロースを糖転移酵素によりパラチノースとした後に、水素添加反応させることによって得られる。また、パラチニットは、三井製糖(株)、Sudzucker AG(株)(和名:南独製糖(株))の商品名でもあり、還元パラチノースあるいは、イソマルトという別名称もある。パラチニットは、う触原性菌により口腔内で酸を酸性しないことに基づき、虫歯になりにくい糖、すなわち非う触糖であることが知られている。
【0014】
また、本発明の食品に配合されるパラチニットの量は、食品の剤型によっても変動するが基剤を含む食品の全量に対して少なくとも20重量%であり、例えば、食品がトローチまたは口中錠(タブレット)である場合には食品の全量に対して30-80重量%、キャンディーである場合には食品の全量に対して30-95重量%が好ましく、またチューインガムおよびグミキャンディーなどの咀嚼可能な剤型の食品である場合には、各々、食品に配合される糖質の全量に対して30-80重量%および10-40重量%が好ましい。
【0015】
次に、本発明の食品に配合されるべき有機酸カルシウム塩は、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムであり、単独または2種以上を併用することができる。これらの有機酸カルシウム塩は、後記の表1にその組成を示す人工唾液13.5mlに対して当該有機酸カルシウム塩1.5gを添加した12分後に、その人工唾液のpHを6.5以下に低下させず、かつ、人工唾液中の遊離カルシウム濃度を4.0mM以上に上昇させ得るものである。これらの有機酸カルシウム塩は、食品添加物として利用されており、商業的に入手できる。
【0016】
また、本発明の食品に配合される有機カルシウム塩の量は、単独または2種以上の合計量として食品の全量に基づき、0.1-10重量%の範囲、好ましくは0.5-2重量%の範囲である。
【0017】
また、本発明に配合される唾液分泌を促進する作用のある基剤は、食品に配合可能なものであって、かつ、味覚、食感などを介して唾液分泌量(例えば1分間あたりの分泌量)を上げる作用が見られるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、フマル酸などの有機酸や、アスパルテーム、ステビア抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、クルクリン、キシリトール、パラチノース、マルチトール、トレハロース、トレハルロース、エリスリトールなどの甘味料が挙げられ、単独または2種以上の合計量として食品の全量に基き、0.005-90重量%、好ましくは20-90重量%配合することができる。
【0018】
その他、本発明の食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、食品処方設計に用いられる添加物、食品素材、甘味料、ビタミン類、骨代謝ビタミン類、香味剤、酸化防止剤、着色料、着香料、強化剤、膨脹剤、保存料、増粘安定剤、pH調整剤、乳化剤、ガムベースなどの公知の食品添加成分を適宜配合することができる。
【0019】
また、本発明の食品の適用方法としては、後記の試験方法の結果、提供されるタブレットを口腔に有効な成分が長く滞留するような適用方法をとることが望ましく、口でなめながら成分が滞留する剤型を選ぶこと、もしくは、噛みながらカルシウムイオンやリン酸イオンを多く含む刺激唾液の分泌を促す剤型を選ぶことが、本発明品の適用方法として有用であると考えられた。したがって、糖質を主たる組成物とし、口中に長く滞留する剤型としてトローチ、口中錠(タブレット)、チュアブルタブレット、キャンディが、さらに糖質を主たる組成物とし、噛んで唾液を分泌させるチューインガム、グミキャンディ、その他の咀嚼可能な剤型組成物が望ましい剤型として挙げられるが、その他、粒カプセル、顆粒、粉末ジュースなどに処方設計することができる。また、成分を溶解もしくはゲル状ビーズに封入して分散させた飲料にすることもできる。
後記の試験結果より、口中で有効な濃度を発揮させるためには、口腔中でのパラチニット滞留時間(唾液・歯垢中の濃度10%以上)が15分間以上であることが目標となる。
【0020】
【実施例】
次に、試験例および実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。実施例中の配合量はいずれも重量%を意味する。
【0021】
試験例1
特定のカルシウム塩による、人工唾液中のカルシウムイオン濃度の増大
下記の表1に示す人工唾液(人工唾液処方1)を調製し、人工唾液13.5mlに、被験物となるカルシウム塩1.5gを添加し、強く攪拌開始12分後に溶解液5mlずつを採取し、直ちに遠心沈降させ、フィルターろ過して得られた上清中の遊離カルシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィ法にて測定した。その結果、検討した種々のカルシウム塩のうち、pHを脱灰が始まる酸性pH域であるpH6.5より低下させず、しかも、遊離カルシウムイオン濃度を上昇させたものは、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、およびパントテン酸カルシウムであった。試験結果を表2に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
したがって、表2の結果から、有機酸(乳酸、グルコン酸、グリセロリン酸、パントテン酸)とカルシウムから成る有機酸カルシウム(乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム)は、唾液中のカルシウムイオンを一時的に上昇させる作用があると期待される。
【0025】
試験例2
パラチニット+特定のカルシウム塩による、エナメル質および象牙質の脱灰抑制効果(in vitro)
酸性pHでヒドロキシアパタイト飽和度の低い脱灰溶液に、エナメル質片を浸して脱灰を起こす試験系を利用して、各種糖アルコールと有機酸カルシウムの添加による脱灰抑制効果を検討した。エナメル質は牛抜去歯から定法により調製された牛エナメル表層ブロックを用い、脱灰溶液は0.1M乳酸、0.3mMヒドロキシアパタイト、0.01%チモール、1%CMC組成の溶液をpH5.0に調整した溶液を用いた。脱灰溶液に、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムおよびパントテン酸カルシウムから選ばれた1種または2種のカルシウムを、カルシウム最終濃度が4.5mMとなるよう添加し、さらに脱灰溶液に各糖アルコール結晶を、10%w/w濃度に溶解して試験液とした。各試験液250mlにエナメル表層ブロックを浸漬し、37℃に保持しながら攪拌せずに48時間経過後、エナメル表層ブロックを蒸留水により十分に洗浄し、定法に従いマイクロラジオグラム法によりエナメル表層部の脱灰深度(μm)を測定した(Cares Research,18巻:296-301頁,1984年)。試験結果を図1に示した。
【0026】
試験結果より、一定の酸性条件におかれた中で、基準濃度のカルシウム(濃度3.0mM)とリン酸イオン(濃度1.6mM)のみ存在している対照溶液<無添加>では、エナメル質脱灰が45.6μm(ミクロン)進行したのに対し、4.5mM濃度のグルコン酸カルシウムを添加した条件<グルコン酸Ca>ではエナメル質脱灰は33μm程度の進行であった。グルコン酸Ca添加条件のもとで検討された各種糖アルコールのうち、<キシリトール+グルコン酸Ca>、<エリスリトール+グルコン酸Ca>、<マルチトール+グルコン酸Ca>は脱灰が抑制されなかったが、<パラチニット+グルコン酸Ca>は脱灰抑制作用が有意に示された。また、パラチニットと複数種のグルコン酸Caとを組合せて添加した条件においても、同様の脱灰抑制作用が認められた。糖アルコールのみ添加された条件<キシリトール>、<パラチニット>、<マルチトール>、<エリスリトール>では、これら糖アルコールは、程度の差こそあれ、十分な脱灰抑制作用を示さなかった。<パラチニット+乳酸カルシウム>条件においても、<乳酸Ca>や<パラチニット>に比べて高い脱灰抑制効果が見られた。
したがって、有機酸カルシウム塩との共存条件下で、酸性環境による歯面の「表層下脱灰」を防ぐ作用をもつ糖アルコールは、パラチニットが好ましいことを見出した。
【0027】
実施例1 チューインガム
パラチニットおよびグルコン酸カルシウムを配合したチューインガムを、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
炭酸カルシウム 4.0
グルコン酸カルシウム 1.0
茶抽出ポリフェノール 1.0
ガムベース 27.0
エリスリトール 10.0
パラチニット 38.0
マルチトール 12.0
香料 残 部
合計 100.0
【0028】
実施例2 粒カプセル糖衣錠
カプセル部160重量部を、パラチニットおよびグルコン酸カルシウムを配合した糖衣部110重量部で糖衣した口中清涼剤を作成した。
成分 配合量(重量部)
カプセル部
パセリシードオイル 12.0
紅花油 26.5
ゼラチン 36.0
ソルビトール 残 部
合計 100.0
糖衣部
グルコン酸カルシウム 1.0
アスパルテーム 0.1
アラビアガム 0.5
ゼラチン 0.2
香料 0.4
カルナウバワックス 0.1
シェラック 0.3
パラチニット 97.4
合計 100.0
【0029】
実施例3 タブレット
パラチニットおよびグリセロリン酸カルシウムを配合したタブレット(口中清涼剤)を、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
グリセロリン酸カルシウム 5.0
クエン酸 9.0
ポリデキストロース 7.0
シュガーエステル 2.0
香料 1.0
キシリトール 15.0
パラチニット 61.0
合計 100.0
【0030】
実施例4 タブレット
パラチニットおよび乳酸カルシウムを配合したタブレットを、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
乳酸カルシウム 5.00
クエン酸 9.00
ポリデキストロース 6.85
シュガーエステル 2.00
リン酸水素二ナトリウム 0.10
リン酸二水素ナトリウム 0.05
香料 1.00
キシリトール 15.00
パラチニット 61.00
合計 100.00
【0031】
実施例5 キャンディー
パラチニットおよびグルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムを配合したキャンディーを、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
桑白皮エキス 0.1
キシリトール 8.0
グルコン酸カルシウム 2.5
乳酸カルシウム 0.5
マルチトール 10.0
アスパルテーム 0.1
香料 0.2
パラチニット 78.6
合計 100.0
【0032】
実施例6 トローチ
パラチニットおよびグルコン酸カルシウムを配合したトローチを、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
マルチトール 21.00
アラビアガム 1.50
ショ糖脂肪酸エステル 2.50
粉末香料 1.00
クエン酸 4.00
グルコン酸カルシウム 10.00
油溶性甘草エキス 0.05
パラチニット 59.95
合計 100.00
【0033】
実施例7 グミキャンディー
パラチニットおよび乳酸カルシウムを配合したグミキャンディーを、次の処方で作成した。
成分 配合量(重量部)
マルチトール 60.00
パラチニット 10.00
ゼラチン 5.20
クエン酸 0.50
乳酸カルシウム 0.50
ステビア抽出物(甘味料) 0.05
香料 0.03
水 残 部
合計 100.00
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、パラチニットと特定の有機酸カルシウム塩とを配合することにより、高い安全性のもとに歯面の表層下脱灰を抑制し得る再石灰化促進食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の有機酸カルシウム塩と糖質による脱灰抑制効果を比較した棒グラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-01-22 
結審通知日 2008-01-24 
審決日 2008-02-06 
出願番号 特願平11-79640
審決分類 P 1 113・ 832- YA (A23L)
P 1 113・ 121- YA (A23L)
P 1 113・ 111- YA (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 鵜飼 健
光本 美奈子
登録日 2005-02-25 
登録番号 特許第3650705号(P3650705)
発明の名称 パラチニット含有食品  
代理人 田中 光雄  
代理人 田中 光雄  
代理人 山崎 宏  
代理人 山崎 宏  
代理人 矢野 正樹  
代理人 矢野 正樹  

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