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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1176443
審判番号 不服2006-13303  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-26 
確定日 2008-04-14 
事件の表示 平成11年特許願第91237号「現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月13日出願公開、特開2000-284595〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年3月31日の出願であって、平成15年3月27日付けで手続補正がなされ、平成17年9月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月6日付けで手続補正がなされたが、平成18年5月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月26日付けで審判請求がなされたものである。
そして、平成17年12月6日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに記載されている。

「【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体に対向し、その内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性粒子とを含む2成分現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体とギャップを有し、該現像剤担持体上に担持されて搬送される現像剤の量を規制する現像剤量規制部材と、該現像剤量規制部材の規制によって掻き落とされた現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤担持体の表面とギャップを有する仕切壁で該現像剤収容部と仕切られ、該現像剤収容部に対して前記現像剤担持体表面移動方向上流側に位置し、かつ該仕切壁に対向する現像装置ケーシング部分と該仕切壁との間に形成されるトナー補給口と、該トナー補給口及び前記ギャップを介して該現像剤収容部に連接されたトナーを収容するトナー収容部とを備え、
前記現像剤担持体上に前記現像剤収容部内の現像剤を磁力で担持させ、前記現像剤規制部材のギャップを通過させることによって前記現像剤の量を規制した後に、前記潜像担持体と対向する現像領域に搬送すると共に、前記現像剤担持体に担持されて該現像領域を通過してきた現像剤に接触する前記トナー補給口内のトナーを現像剤の移動により取り込んで上記仕切壁のギャップを介して前記現像剤収容部内に取り込む現像装置において、
前記現像剤収容部の現像剤量を全現像剤量の50%以上にすることを特徴とする現像装置。」

ここで、「前記現像剤収容部の現像剤量を全現像剤量の50%以上にする」という記載中の「全現像剤量」に、「トナー収容部」内の「トナー」が含まれるか否かが、請求項1の記載からは明確でない。よって、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌することにする。発明の詳細な説明には次の記載がある。「全現像剤量に対する現像剤収容室15内に収容された現像剤量の割合が所定割合より少ない場合、トナー濃度自己制御のトナー濃度の変化が大きくなり、目標とするトナー濃度(トナー濃度14乃至20wt%)から外れてしまう。」(段落【0020】)。また、図2(a)及びこれに対応する発明の詳細な説明には、黒べた又は白べたが5枚連続した場合に、前記割合が20%のときはトナー濃度が7乃至24wt%の範囲で大きく変動し、前記割合が50%のときはトナー濃度が14乃至20wt%の範囲に維持されることが記載されている。このようなトナー濃度の変動に、「トナー収容部」内のトナーの量が大きく影響するとは考えにくい。また、当該割合を50%以上にすることに加えて、「本実施形態では、現像剤収容室15内の現像剤8の量は全現像剤量の75%程度とする。」(段落【0021】)とも記載されている。そして、図1には、現像剤収容室15の容積に比べて、数倍程度の容積を有するトナーホッパ12(トナー収容部)が記載又は示唆されており、「全現像剤量」に「トナー収容部」内の「トナー」が含まれるとした場合には、当該割合は50%又は75%よりもきわめて小さいものと考えられる。したがって、この点からも「全現像剤量」に「トナー収容部」内の「トナー」が含まれるとは理解できない。
よって、前記「全現像剤量」とは、「トナー収容部」内の「トナー」を含まないもの、すなわち、出願人が審判請求の理由で主張するように、現像剤収容部内の現像剤と、現像剤収容部外で現像担持体表面に担持された現像剤との総量であると解釈する。
また、請求項1の「前記ギャップを介して該現像剤収容部に連接された」との記載以前には、現像剤量規制部材と現像剤担持体とのギャップ、及び仕切壁と現像剤担持体とのギャップが記載されており、「前記ギャップ」がどちらを意味するのかが明確でない。よって、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌して、「前記ギャップ」は、仕切壁と現像剤担持体とのギャップであると解釈する。

そして、その他の点ついては、前記請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という)を認定する。

2.引用文献
2.1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-230702号公報(以下「引用文献1」という)には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審で付与)。

(a)「【0009】また、図7は、従来から提案されている現像剤担持体4と現像剤規制部材6との配置を示した図である。この図に示すように、現像剤担持体4表面に対して所定の間隔をもって設けられた現像剤規制部材6と現像剤担持体表面とのギャップを通過する現像剤は、現像剤搬送方向の上流側に配設された図示しないサイドシールにより現像器内で存在し得る幅Wdが規制されている。よって、現像剤規制部材6によって現像剤担持体上の単位面積当たりの現像剤量が現像剤担持体表面からほぼ均一に例えば0.04g/cm^(2)の厚さに規制され、現像剤規制部材と現像剤担持体とのギャップを通過した際の現像剤は、図8に現像剤量分布bで示すようにように、上記幅Wdで分布する。」

(b)「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を画像形成装置である電子写真複写機(以下、「複写機」という。)に用いる現像装置に適用した一実施形態について説明する。図1(a)は本実施形態に係る現像装置の概略構成を示す部分断面図である。この現像装置は画像形成装置に用いられる潜像担持体である円筒状の感光体ドラム1の側方に配設され、感光体ドラム1に向けて開口部が形成された現像器ケース2、該開口部から一部が露出した、トナー及び磁性粒子(以下「キャリア」という。)からなる現像剤3を表面に担持する現像剤担持体としての現像スリーブ4、現像スリーブ4の内部に固定配置した磁界発生手段としての固定磁石群からなるマグネットローラ5、現像スリーブ4上に担持されて搬送されている現像剤3の量を規制する現像剤規制部材としてのドクタ6、現像スリーブ4に対向する開口部を有し、該スリーブ4上方に滞留する現像剤の収容空間である現像剤収容部Aを形成するための剤収容室形成部材7などを備えている。また、上記現像器ケース2の、現像スリーブ4を挟んで感光体1と反対側の部分で、トナー収容部としてのトナーホッパ8が形成されている。
【0029】上記剤収容室形成部材7の側壁内面は、現像スリーブ4表面との間に所定の間隔を持っており、現像スリーブ4との間に、感光体ドラム1との対向部の現像位置に供給されずにドクタ6で進行が阻止された現像剤を収容する現像剤収容部Aを形成している。この現像剤収容部Aに対向する現像スリーブ4の内側にはマグネットローラ5の磁極が配置している。現像剤収容部Aと上記トナーホッパ8内とを区画すべく、ドクタ6近傍からひさしのように延び出してから下方に屈曲した上記側壁部分であるドクタ前ヒサシ部7aの下端縁は、上記トナーホッパ8の現像スリーブ4側での仕切を形成すべく上方に隆起した現像器ケース2の底部と、所定の間隙をおいて対向する。この下端縁と上記底部との間隙が、現像剤搬送方向における現像剤収容部Aの上流側に隣接して現像スリーブ4表面と対向するトナーホッパ8のトナー補給開口部8aになっている。トナーホッパ8内の、該トナー補給開口部8aに隣合ったスペースには、トナーをトナー補給開口部8aに向けて撹拌しながら送り出すトナー送りだし部材としてのアジテータ9が配設されている。
【0030】図示の例のアジテータ9は、図1(a)に示すようにホッパ8内のトナー補給用開口部8aに隣合った位置に、その断面が正方形である軸部9aがトナー送り出し方向の幅方向に平行に設けられ、この軸部9aの向かい合う平行な2辺には、軸部9aの回転方向の下流側に一定の幅だけまっすぐに延在するように、PET等から形成される板状部材9bが設けられている。このアジテータは、軸部9aの回転に伴って板状部材9aがホッパ8内のトナーを撹拌し、現像剤収容部側に送り出す。従って、軸部9aの回転中心から板状部材9aの先端までの距離がある程度長いほど、トナーを撹拌する能力が高く、また、トナーを効率良く現像剤収容部A側に送りだすことができる。
【0031】上記構成の現像装置において、現像スリーブ4上の現像剤3は、該スリーブ4の矢印方向の回転に伴って搬送され、ドクタ6により規制されて薄層化される。薄層化された現像剤3は、矢印方向に回転している感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送される。そして、現像領域では、感光体ドラム1上に形成されている静電潜像にトナーが供給され、該静電潜像の可視像化が行われる。この可視像化に使用されなかった現像剤3は、現像スリーブ4の回転に伴って搬送され、アジテータ9で送り出されてトナー補給開口部8aから供給された新しいトナーを取り込んだ後、現像剤収容部Aに戻る。
【0032】ホッパ8からの新しいトナーを取り込んだ現像剤3が戻ってきた現像剤収容部A内では、ドクタ6の規制によって生じる現像剤の内圧が増加し、現像剤3のトナー分散とトナー帯電とが行われる。このように現像剤収容部Aにおける現像剤の内圧増加により、現像スリーブ4上の現像剤3中のトナーを帯電することができるので、パドルやスクリュウ等の現像剤3を帯電あるいは撹拌するための複雑な撹拌機構が不要となる。
【0033】一方、上記現像領域に供給されずにドクタ6で進行が阻止された現像剤3の一部は、現像剤収容部A内で現像剤3自身の内圧及び重力によってトナーホッパ8のトナー補給開口部8aに向かって移動する。トナー補給開口部8a付近まで移動してきた現像剤3は、現像スリーブ4の回転に伴ってドクタ6側に循環するように搬送される。
【0034】図2(a)乃至(c)は、上述した現像剤収容部Aにおける現像剤3の移動状態を示したものである。ドクタ6に突き当たるように現像スリーブ4の回転方向下流側に搬送される現像剤3の一部は、現像スリーブ4の上方をドクタ前ヒサシ部7aの方向へ流れ、現像剤収容部A内で回動運動をするようになる。この回動運動は、高速ビデオを用いた側面拡大観察により、現像剤中へ異色トナーを取り込む様子を、200コマ/秒、10倍速程度で撮影することにより観察できる。
【0035】トナーホッパ8内のトナーは、図2(a)中の記号aで示す流れと記号bで示す流れとの合流点c付近から現像剤中に取り込まれる。このときの現像剤は現像スリーブ4の表面近傍を約100mm/secで移動しており、また、現像剤収容部Aにはまだ十分な空隙が存在しているので、現像剤滞留層の回動速度は約10mm/secである。
【0036】図2(b)は、トナーの取り込みが開始された状態を示している。キャリアにトナーが取り込まれるにつれて、次第にトナー濃度、及び現像剤容積が上昇すると、現像剤移動層が膨張し、該合流点cが徐々に現像スリーブ4の表面近傍から遠ざかるとともに、現像スリーブ4の表面近傍の現像剤の流速aも低下する。このとき、現像剤3は該表面近傍を約65mm/secの速度で移動しており、現像剤滞留層の回動速度は約5mm/secである。
【0037】そして、図2(c)示すように、現像剤3に補給されたトナーが多くなってトナー濃度が高まるとともに現像剤3の嵩が増加し、現像剤収容部Aに空隙がなくなってくると、現像剤3の流動性は次第に悪くなる。このため、現像剤移動層が膨張するにつれて、該合流点cがドクタ前ヒサシ部7aの下端へ近づいてくる。これにより、もはや現像剤3にはトナーが取り込まれなくなる。このとき、現像剤滞留層の回動速度は約1mm/secとなっている。しかしながら、現像剤滞留層には、まだゆるい充填状態で現像剤が滞留している部分があり、この部分の現像剤3は他の部分よりも比較的トナーコンテンツが高く、非常に遅い流れの速度にはなっているが回動運動が続いており、そこでは、現像剤中へのトナー分散及び帯電の立ち上げが進行している。
【0038】そして、現像によってトナーが消費され、現像剤収容部A内のトナー濃度が低下し、現像剤3の嵩が減少してくると、図2(a)の状態に戻るので、再び現像剤中へのトナー取り込みを始めるようになる。このとき、新たに現像剤中に取り込んだトナーだけでなく、上述したように現像剤収容部A内で回動しながら該現像剤中に分散し、かつ帯電電荷が立ち上がっているトナーも当然現像領域に搬送されるので、現像に供されるトナー量が多く、現像剤中に多量のトナーを取り込んだ場合であっても、上記特公平5-67233号公報記載の装置のように、トナーの帯電不足に起因して地汚れやトナー飛散などがひどくなるといった問題は発生しにくくなる。
【0039】以上の動作によって現像剤3のトナー濃度が一定の濃度範囲内に保たれる。このようにトナー濃度をコントロールできるので、トナー濃度センサやトナー補給部材などを用いた複雑なトナー濃度制御機構が不要となる。
【0040】そして、本実施形態の現像装置においては、現像装置への現像剤のセット作業を楽にするための構成を採用している。すなわち、この現像装置における上記剤収容室形成部材7は、図1(a)に示すように、内部にキャリアを収容し、シャッター部材としてのシール11により現像剤収容部Aの内部と現像器本体とを連通させる開口部を塞いだ状態で、現像器本体にセットできよう、脱着可能な構成にされている。上記シール11は、図1(c)に示すように、剤収容室形成部材の上面に上端部11aが接着され、ドクタ6に対向する部分から上記開口部の下端縁まで、開口部全体を覆うように延出させた後に現像剤収容部A側に折り返され、この折り返された部分11bで、上記開口部の下端縁に相当する上記ドクタ前ヒサシ7aの下端部に接着され、更に現像剤収容部A側に折り返された部分の上端を部11cが上記開口部の上端縁に相当する剤収容室形成部材部分に接着されている。このシール11は、その上端部11aを、剤収容室形成部材表面から剥がして上方に引っ張ることにより、開口部を開けることができる構造になっている。
【0041】以上の剤収容室形成部材7を用いて新しいキャリアを現像剤収容部A内に納めるときは、あらかじめ内部に新しい現像剤が入っている状態でシール11によって開口部を閉じた状態の剤収容室形成部材7を、そのまま現像装置本体に装着する。そして、上記シール11を上方に引き抜くことによって開口部を開封紙、収容キャリアを自重で現像スリーブ1上に流下させて、キャリアの供給を行う。これでキャリア供給作業が完了するので、作業を容易に行うことができる。
【0042】図1(d)はあらかじめ内部に新しい現像剤が入っている状態でシール11によって開口部を閉じた状態の剤収容室形成部材7の斜視図である。この図はシール部材11を部分的に破断した状態を示している。なお、符号7bは端壁部、符号14は該端壁部の現像スリーブ対向面に設けられたサイドシールである。」

(c)現像スリーブ4とドクタ6との間にギャップが存在することは明記されてはいないが、ドクタ6の奏する機能及び各図面の記載から、当該ギャップが存在することは明らかである。

(d)現像剤量の規制及び搬送、並びに現像剤収容部A内へのトナーの取り込みについて、前記(a)及び(b)で摘記したところから、現像スリーブ4上に現像剤収容部A内の現像剤を磁力で担持させ、ドクタ6のギャップを通過させることによって現像剤の量を規制した後に、感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送すると共に、現像スリーブ4に担持されて現像領域を通過してきた現像剤に接触するトナー補給開口部8a内のトナーを現像剤の移動により取り込んでドクタ前ヒサシ部7のギャップを介して現像剤収容部A内に取り込むことは明らかである。

したがって、上記摘記事項及び図面の記載を総合的に勘案すると、引用文献1には、以下の発明が実質的に記載されている。

「潜像を担持する感光体ドラム1に対向し、その内部にマグネットローラ5を有し、トナーと磁性粒子とからなる2成分現像剤を担持する現像スリーブ4と、該現像スリーブ4とギャップを有し、該現像スリーブ4に担持された搬送される現像剤の量を規制するドクタ6と、該ドクタ6の規制によって掻き落とされた現像剤を収容する現像剤収容部Aと、前記現像スリーブの表面とギャップを有するドクタ前ヒサシ部7aで前記現像剤収容部Aと仕切られ、該現像剤収容部Aに対して前記現像スリーブA表面移動方向上流側に位置し、かつ該ドクタ前ヒサシ部7aに対向する現像器ケース2部分と該ドクタ前ヒサシ部7aとの間に形成されるトナー補給開口部8aと、該トナー補給開口部8a及び前記現像スリーブ4と前記ドクタ6とのギャップを介して該現像剤収容部Aに連接されたトナーを収容するトナーホッパ8とを備え、
前記現像スリーブ4上に前記現像剤収容部A内の現像剤を磁力で担持させ、前記ドクタ6のギャップを通過させることによって前記現像剤の量を規制した後に、前記感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送すると共に、前記現像スリーブ4に担持されて該現像領域を通過してきた現像剤に接触する前記トナー補給開口部8a内のトナーを現像剤の移動により取り込んで上記ドクタ前ヒサシ部7のギャップを介して前記現像剤収容部A内に取り込む現像装置。」

3.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比
引用文献1に記載された発明の「感光体ドラム1」、「マグネットローラ5」、「現像スリーブ4」、「ドクタ6」、「現像剤収容部A」、「ドクタ前ヒサシ部7a」、「現像器ケース2部分」、「トナー補給開口部8a」及び「トナーホッパ8」は、それぞれ、本願発明1の「潜像担持体」、「磁界発生手段」、「現像剤担持体」、「現像剤量規制部材」、「現像剤収容部」、「仕切壁」、「現像装置ケーシング部分」、「トナー補給口」及び「トナー収容部」にそれぞれ相当する。
してみると両者は、

「潜像を担持する潜像担持体に対向し、その内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性粒子とを含む2成分現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体とギャップを有し、該現像剤担持体上に担持されて搬送される現像剤の量を規制する現像剤量規制部材と、該現像剤量規制部材の規制によって掻き落とされた現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤担持体の表面とギャップを有する仕切壁で該現像剤収容部と仕切られ、該現像剤収容部に対して前記現像剤担持体表面移動方向上流側に位置し、かつ該仕切壁に対向する現像装置ケーシング部分と該仕切壁との間に形成されるトナー補給口と、該トナー補給口及び前記現像剤担持体と前記現像剤量規制部材とのギャップを介して該現像剤収容部に連接されたトナーを収容するトナー収容部とを備え、
前記現像剤担持体上に前記現像剤収容部内の現像剤を磁力で担持させ、前記現像剤規制部材のギャップを通過させることによって前記現像剤の量を規制した後に、前記潜像担持体と対向する現像領域に搬送すると共に、前記現像剤担持体に担持されて該現像領域を通過してきた現像剤に接触する前記トナー補給口内のトナーを現像剤の移動により取り込んで上記仕切壁のギャップを介して前記現像剤収容部内に取り込む現像装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

3.1 相違点
現像剤収容部の現像剤量が、本願発明1は、現像剤収容部内の現像剤と、現像剤収容部外で現像担持体表面に担持された現像剤との総量に対して50%以上であるのに対して、引用文献1に記載された発明は、当該現像剤量が前記総量に対してどの程度であるのかが不明である点。

4.判断
引用文献1に記載された発明において、現像剤収容部を設けるのは、ここに現像剤を滞留させることにより、トナ-補給口からのトナーの取り込み量を制御し、ひいてはトナー濃度を一定の範囲内に制御するという効果を奏するためである。したがって、現像剤収容部内に一定程度の量の現像剤が滞留することが必要であり、その量の下限は、前記効果を奏するという観点から、現像剤中のトナー濃度、現像剤収容部の位置、形状及び容積、トナー補給口の位置及び大きさ等に応じて当業者が適宜設定する設計的事項である。
また、現像剤担持体が担持する2成分現像剤の量は、一般的には現像剤担持体表面1cm^(2)当たり数mgから数十mgであることが、当業者に周知であり、例えば、0.04g/cm^(2)(40mg/cm^(2))であることが引用文献1に(段落【0009】)、2.8?28.2mg/cm^(2)であることが特開平9-251239号公報に(段落【0042】)、50mg/cm^(2)であることが特開平9-50186号公報に(段落【0051】)、及び5?40mg/cm^(2)であることが特開平10-20611号公報に(【請求項4】)、それぞれ記載されている。そして、一般的な外形を有する現像剤担持体として、例えば、本願明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載されている現像スリーブを想定し(直径16mm、段落【0027】)、その長さをA4用紙の横の長さに対応する約30cmとすると、その表面積は、約150cm^(2)となり、これに担持される現像剤担持体表面1cm^(2)当たりの現像剤量を、上記周知な事項より下限を2.8mg/cm^(2)として、上限を50mg/cm^(2)としてそれぞれ計算すると、それぞれが約0.4g、及び約7.5gとなり、いずれにしても少量であることがわかる。
そして、引用文献1の図1(b)及び図2(b)には、現像剤収容部に現像剤がほぼ充填されること、及び現像剤収容部は相当程度の容積を有することが記載又は示唆されている。また、段落【0037】には、現像剤収容部Aに隙間がなくなってくることも記載されている。
これらを勘案すれば、現像剤量を、現像剤収容部内の現像剤と、現像剤収容部外で現像担持体表面に担持された現像剤との総量に対して50%以上とすることは、引用文献1に示唆されているともいえる。
さらに、本願発明1と同様に、現像剤収容部に現像剤を滞留させてトナーの取り込み量を制御する現像装置において、特に現像剤の量が比較的少ない現像装置として100g以下の現像剤を用いることが特開平8-185052号公報に(段落【0026】)、同様の現像装置において、キャリアの5乃至20wt%が現像剤担持体に担持され、残りのキャリアが現像剤収容部に充填されることが、特開平9-22178号公報(段落【0124】)に記載されている。
以上のところを総合的に勘案すれば、引用文献1に記載された発明において、トナー濃度を一定の範囲に制御するという効果を奏するために設定する、現像収容部内の現像剤の量としての、現像剤収容部内の現像剤と、現像剤収容部外で現像担持体表面に担持された現像剤との総量に対して50%以上という値自体も、当業者が普通に想起できる値であると認められる。

本願発明1が奏する効果について以下に検討を加える。
本願発明1と同様に、現像剤収容部に現像剤を滞留させてトナーの取り込み量を制御する現像装置において、トナー濃度を一定の範囲に制御するためには、本願発明1が規定する現像剤収容部内の現像剤の量と同様に、少なくとも、現像剤収容部の位置、形状及び容積、並びにトナー補給口の位置及び大きさが重要である。これに関して、現像剤収容部の形状及び容積が重要なことが、例えば、引用文献1(段落【0035】乃至【0039】)、及び前記特開平9-22178号公報(段落【0109】)に記載又は示唆されている。よって、本願明細書の段落【0020】乃至【0021】及び図2(以下「本願図2等」という)で示される、黒ベタ又は白べたが5枚続いた場合にも、トナー濃度を14乃至20wt%の範囲に制御できるという効果は、本願発明1が特定の前提のもとでのみ奏するものというべきである。そして、本願発明1が当該特定の前提を規定していない以上、前記効果を本願発明1が奏する効果と認めることができない。
仮に、本願図2等で示される前記効果を本願発明1の奏する効果と認めた場合でも、本願発明1と引用文献1に記載された発明とは、上述したように、現像剤収容部内の現像剤の量についての数値限定の有無でのみ相違するものである。そして、両者は、トナー濃度を一定の範囲に制御するとういう同質の効果を有する。したがって、本願発明1に進歩性が認められるためには、その数値限定に臨界的意義があること、すなわち、有利な効果について、その数値限定の内と外で量的に顕著な差異が存在しなければならない。しかし、本願図2等に示される効果は、黒ベタ又は白べたが5枚続いた場合にも、14乃至20wt%の範囲にトナー濃度を制御できるというものであり、、これが有利な効果ではあるとしても、前記臨界的意義までをも認めることはできない。よって、この場合においても、本願発明1に進歩性を認めることはできない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-18 
結審通知日 2008-02-22 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願平11-91237
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大仲 雅人小牧 修  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 下村 輝秋
小宮山 文男
発明の名称 現像装置  
代理人 黒田 壽  

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