• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1176663
審判番号 不服2005-6035  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 平成6年特許願第298026号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月28日出願公開、特開平8-131633〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年11月8日の出願であって、平成16年10月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成16年12月8日付けで手続補正がなされたが、平成17年3月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年4月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年4月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月22日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は特許請求の範囲の補正を補正事項に含んでおり、特許請求の範囲の補正に限ってみると、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「外枠の前面に、窓部を有する内枠を開閉可能に取り付け、上記窓部に臨ませた状態で遊技盤を内枠に装着する遊技機において、
前記内枠は、その後面側にフレーム部を備えて合成樹脂により一体成型され、
前記フレーム部は、
前記内枠の窓部の周縁から後方へ向かって突設した周囲壁と、
該周囲壁の後端側を閉塞する方向に延在し、前記遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するための開口部を開設した後壁と、
を有し、
前記開口部の上縁及び下縁のほぼ中央から前記フレーム部を含む内枠の上端及び下端に向かって脆弱部を上下方向に設け、
前記脆弱部が設けられたフレーム部の周囲壁により前記遊技盤を支持するとともに前記脆弱部と遊技盤とが重合する状態でフレーム部の後壁に遊技盤の背面を当接して、前記フレーム部に遊技盤を収納装着することを特徴とする遊技機。」

上記補正における「前記遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するための開口部を開設した後壁」は、平成16年12月8日付け手続補正書の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「後壁」を限定したものと認められ、以下同様に、「前記開口部の上縁及び下縁のほぼ中央から前記フレーム部を含む内枠の上端及び下端に向かって脆弱部を上下方向に設け」は「前記フレーム部を含む内枠のほぼ中央に脆弱部を上下方向に設け」を、「前記脆弱部と遊技盤とが重合する状態で…当接して」は「当接して」を、それぞれ限定したものと認められるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例に記載の発明の認定
原査定の拒絶理由に引用された特開平6-198053号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0009】上記したパチンコ機にあって、それぞれの主体枠A,B,C,Dと、遊技盤Eを除くそれぞれの主要構成部F,G,H,I,Jについては、基本的な構成部材がすべて着色による装飾可能な合成樹脂成形されてなるものであって、図6?図13にそれぞれ略示するように、外枠A、前枠B、装飾ガラス扉C、及びセット枠Dが個々に一体成形又はユニット構成されていると共に、それぞれの主要構成部F?Jが対応する主体枠A?Dに組み付け設置されており、そして前記4つの主体枠A?Dが個々に枠単位で取扱得るようになっている。このように、本実施例における主体枠A?Dは、すべて合成樹脂によって構成されるので、従来のように合成樹脂、木、金属が混在して構成されるパチンコ機と比較して、装飾効果を高めるばかりでなく回収後におけるリサイクル処理が行い易く、環境に優しいパチンコ機とすることができる。…
【0027】[セット枠D]セット枠Dは、その正面内部に遊技盤Eを収容セットする一方、背面に後述する球処理機構部J及び各種の電気的部材等を装備するものとして、外枠Aの開口内側に横開き及び着脱が可能に組み付けられている。そして、基本的な構成として、主として図12、図13、図32、図33、図59、及び図60に示すように、外郭本体枠をなす基枠部91と、遊技盤用のセット面域93及び窓口94を開設した正面内側の収容枠部92と、遊技盤Eと整合されて遊技球の打球位置を形成する正面下段部の遊技補助枠部101とが適宜段差及び間隔をもって連設成形されて主体とされており、そしてこれらの各枠部に必要な部材が設置されると共に、球処理径路等が成形されて全体が単一枠で取扱得るように構成されている。
【0028】より具体的には、前記収容枠部92では、セット面域93内の上下端部に遊技盤Eに対する位置決め用ボス95,95が前向きに突設されている一方、セット面域93の下部にセーフ球用の導出径路とされた左側上段の第1案内路96と、右側下段の第2案内路97が互いに適宜勾配で成形されて、第2案内路96が裏側に成形された集合排出路98に連絡されており、また、セット面域93の下端面、つまり遊技補助枠部101上端の整合受け面102の中央にアウト球用の受け口99が開口されて裏側の処理路271に連絡されている。ただし、第2案内路96の下流部前面には、区画蓋板100が取着されて受け口99と区画されている(図33及び図34参照)。
【0034】[遊技盤E]前述のセット枠D内にセットされる遊技盤Eは、図2、図4、及び図10に示すように、収容枠部92のセット面域93内周に適合する方形に成形されて、その前面に取着された円弧形の案内レール131内に所要のゲーム内容を展開し得る遊技領域132が構成されており、そして、前記位置決めボス95に対する孔133と左右に必要に応じて形成された指掛け部134及び後述するセット保持手段137を利用して前記遊技補助枠部101の整合受け面102に基準合わせしたもとで前面側から着脱交換可能にセットされる。…

前記摘示の記載を含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「外枠Aの前面に、セット枠Dを開閉可能に取り付け、収容枠部92のセット面域93内周に適合する方形に成形された遊技盤Eをセット枠Dに装着するパチンコ機において、
前記セット枠Dは、その後面側に収容枠92を備えて合成樹脂により一体成形され、
前記収容枠92は、窓口94を開設し、
セット面域93内周に適合する方形に成形された遊技盤Eが収容セットされるパチンコ機。」

(3)本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明の「外枠A」は本願補正発明の「外枠」に対応し、以下同様に、「セット枠D」は「内枠」に、「遊技盤E」は「遊技盤」に、「パチンコ機」は「遊技機」に、「収容枠92」は「フレーム部」に、「窓口94」は「開口部」に各々対応するとともに以下のことがいえる。

引用発明の「セット枠Dを開閉可能に取り付け、収容枠部92のセット面域93内周に適合する方形に成形された遊技盤Eをセット枠Dに装着する」点について、引用例の図12等の図面を参酌すると、セット枠D(内枠)には、本願補正発明の「窓部」に相当する部分の存在が認められ、「窓部」及び遊技盤E(遊技盤)の位置関係を考慮すれば、遊技盤E(遊技盤)の装着状態は、「窓部に臨ませた状態」となるから、引用発明は、本願補正発明の「窓部を有する内枠を開閉可能に取り付け、上記窓部に臨ませた状態で遊技盤を内枠に装着する」構成を実質的に備えるものである。

引用発明の「収容枠92は、窓口94を開設」する点について、引用例の図18、22、37及び73等の図面を参酌すると、引用発明の「収容枠92」は、少なくとも「内枠の窓部の縁から後方へ向かって突設した壁」を有し、また、「壁の後端側を閉塞する方向に延在し、開口部を開設した後壁」に相当する部分の存在が認められ、該開口部が遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するためのものであることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明と本願補正発明は、「前記フレーム部は、前記内枠の窓部の縁から後方へ向かって突設した壁と、該壁の後端側を閉塞する方向に延在し、前記遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するための開口部を開設した後壁と、を有し、」との限りにおいて共通するものである。

引用発明の「セット面域93内周に適合する方形に成形された遊技盤Eが収容セットされる」点について、引用例の図18、22、37及び73等の図面を参酌すると、引用発明は、遊技盤E(遊技盤)の収容セット状態において、収容枠92(フレーム部)の上部及び下部等に遊技盤E(遊技盤)の背面を当接しているものと認められるから、引用発明と本願補正発明は、「フレーム部の壁により前記遊技盤を支持するとともにフレーム部の後壁に遊技盤の背面を当接して、前記フレーム部に遊技盤を収納装着する」限りにおいて共通するものである。

そうすると両者は、「外枠の前面に、窓部を有する内枠を開閉可能に取り付け、上記窓部に臨ませた状態で遊技盤を内枠に装着する遊技機において、
前記内枠は、その後面側にフレーム部を備えて合成樹脂により一体成型され、
前記フレーム部は、
前記内枠の窓部の縁から後方へ向かって突設した壁と、
該周囲壁の後端側を閉塞する方向に延在し、前記遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するための開口部を開設した後壁と、
を有し、
フレーム部の壁により前記遊技盤を支持するとともにフレーム部の後壁に遊技盤の背面を当接して、前記フレーム部に遊技盤を収納装着する遊技機。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;「壁」について、本願補正発明は、「周囲壁」であるのに対して、引用発明は、下部が囲まれておらず、「周囲」になっていない点。

相違点2;本願補正発明は、「開口部の上縁及び下縁のほぼ中央からフレーム部を含む内枠の上端及び下端に向かって脆弱部を上下方向に設け」るとともに、フレーム部の後壁に遊技盤の背面を当接して、フレーム部に遊技盤を収納装着するに際し、「脆弱部と遊技盤とが重合する状態」であるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(4)相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
相違点1について;
合成樹脂により一体成型された枠を備えた遊技機において、内枠の窓部の縁から後方へ向かって突設した壁を、「周囲」とすることは、例えば、特開平6-126035号公報、特開平5-146550号公報又は特開平4-307082号公報等に記載されるように、周知技術(以下「周知技術A」という。)であるから、周知技術Aに倣って相違点1に係るような構成とすることは、当業者が適宜成し得る設計事項である。

相違点2について;
引用例には、「このように、本実施例における主体枠A?Dは、すべて合成樹脂によって構成されるので、従来のように合成樹脂、木、金属が混在して構成されるパチンコ機と比較して、装飾効果を高めるばかりでなく回収後におけるリサイクル処理が行い易く、環境に優しいパチンコ機とすることができる。」(段落0009)と記載されており、この記載によれば、引用発明は、リサイクル処理について考慮されたものである。
ところで、リサイクル処理は使用済みの物品が廃棄・回収されたものを再度利用可能にする処理のことであるが、廃棄・回収するにあたっては、部材の大きさを小さくすることが望ましいことは、回収作業における運搬等の効率を考慮すれば当然のことである。さらに、部材の大きさを小さくするために、脆弱部を設けて、折曲や分離等をし易くすることは、例えば、特開平6-217835号公報、特開平5-193648号公報又は特開平5-103931号公報等に記載されるように、合成樹脂製品一般における周知技術(以下「周知技術B」という。)であるから、引用発明においても、そのような周知技術Bに倣って、収容枠92(フレーム部)の所定位置に脆弱部を設けることは、当業者が容易に想到できることである。
その際に、折曲や分離等をする部材の一端から他端まで脆弱部を設けることは、上記周知技術Bもそうであるように、必然的なことであり、また、一端と他端をどのような位置に設定するかは、部材の形状やどの程度小さくするか等の諸条件を考慮して適宜設計する事項であり、引用発明においても、フレーム部をほぼ半分の大きさにできる位置として、「開口部の上縁及び下縁のほぼ中央からフレーム部を含む内枠の上端及び下端に向かって脆弱部を上下方向に設け」る構成を採用することは、当業者にとって格別創意工夫を要することではない。
そして、該構成の採用によって、フレーム部の上部及び下部にも脆弱部が設けられることになり、前述したように、引用発明は、そもそもフレーム部の上部及び下部において遊技盤の背面と当接状態にある以上、フレーム部の上部及び下部に設けられた脆弱部も遊技盤と当接状態、即ち、「脆弱部と遊技盤とが重合する状態」となることは、当然の帰結といえることである。
以上を勘案すると、引用発明に相違点2に係る構成を備えさせることは、当業者が容易に想到できることである。

本願補正発明の作用効果についても、引用発明並びに周知技術A及びBから当業者が予測できる域を超えるものではない。
なお、審判請求書において主張される「フレーム部を遊技盤で補強することができる。したがって、運搬時や遊技時においてはフレーム部に遊技盤を取り付けて遊技機の強度を維持することができ」るとの作用効果について検討すると、脆弱部を設けることにより部材の強度が低下すること、さらに、低下した強度を補うために他の強度を有する部材との装着状態にて使用することは、上記周知技術Bもそうであるように、当業者にとって技術常識といえることであり、そもそも引用発明は、フレーム部の後壁に盤上の釘等を安定的に保持し得る強度を有する合板からなる遊技盤の背面を装着してあるのだから、その装着状態において十分な強度が維持されることは、当然予測し得るものといえる。

したがって、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年4月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年12月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりである。
「外枠の前面に、窓部を有する内枠を開閉可能に取り付け、上記窓部に臨
ませた状態で遊技盤を内枠に装着する遊技機において、
前記内枠は、その後面側にフレーム部を備えて合成樹脂により一体成型され、
前記フレーム部は、
前記内枠の窓部の周縁から後方へ向かって突設した周囲壁と、
該周囲壁の後端側を閉塞する方向に延在する後壁と、
を有し、
前記フレーム部を含む内枠のほぼ中央に脆弱部を上下方向に設け、
前記脆弱部が設けられたフレーム部の周囲壁により前記遊技盤を支持するとともに前記脆弱部が設けられたフレーム部の後壁に遊技盤の背面を当接して、前記フレーム部に遊技盤を収納装着することを特徴とする遊技機。」

(1)引用例に記載の発明の認定
原査定の拒絶理由に引用された特開平6-198053号公報(以下「引用例」という。)は、前記「2.(2)引用例に記載の発明の認定」において記載した引用例と同一文献であって、この引用例の記載事項及び該記載事項に基づいて認定される発明(以下「引用発明」という。)は、前記したとおりのものである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)本件補正の内容」で検討した本願補正発明の「前記遊技盤に設けられた遊技装置の後方部分を挿通するための開口部を開設した後壁」を「後壁」と、「前記開口部の上縁及び下縁のほぼ中央から前記フレーム部を含む内枠の上端及び下端に向かって脆弱部を上下方向に設け」を「前記フレーム部を含む内枠のほぼ中央に脆弱部を上下方向に設け」と、「前記脆弱部と遊技盤とが重合する状態で…当接して」を「当接して」として、それぞれ限定事項を削除するもので、概念的に上位にしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに概念的に下位にしたものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断」に記載したとおり、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-25 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-11 
出願番号 特願平6-298026
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽飯野 茂  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 土屋 保光
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 津久井 照保  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ