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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1176762
審判番号 不服2004-24258  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2008-04-25 
事件の表示 特願2000-346905「遊技装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-159629〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成12年11月14日の出願であって、平成16年10月18日付けで拒絶の査定がされたため、これに対し、同年11月25日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年5月31日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものであると認める。

「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、遊技者の操作により出力し得る所定の表示固定指示に応答してその各表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
所定の抽選の当選によって、その当選に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
特定の賞に入賞し得る特定ゲーム状態を、1種又は複数種の特定ゲーム開始賞のうち何れかへの入賞を条件に設定する特定ゲーム状態設定手段を備え、
前記表示固定手段は、表示固定指示から内部当り状態が設定されている賞の入賞条件を達成する表示内容を固定的に表示し得るまでの間が所定範囲内であることを条件に、その入賞条件を達成し得る表示内容を各表示手段に固定的に表示させるものであり、
特定ゲーム状態が設定されている場合に、内部当り設定手段による抽選が、少なくとも、特定の賞及び特定ゲーム開始賞について行われ、前記特定の賞の抽選の当選確率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に内部当り当選となる確率以上であり、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が特定の賞についての入賞条件を達成する率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に入賞する率以上であり、
特定ゲーム状態が設定されていて内部当り設定手段による特定ゲーム開始賞についての抽選に当選した場合に、当選した当該ゲームにおいては特定の賞について内部当り状態とならず入賞とならないものであり、且つ、当選した特定ゲーム開始賞についての内部当り設定手段による内部当り状態設定が特定ゲーム状態以外の状態において行われるものであることを特徴とする遊技装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-210413号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の絵柄を移動表示させるとともに所定の有効ライン上に停止させることができる可変表示装置と、
遊技者の操作により移動表示中の前記絵柄を前記有効ライン上に停止させる停止手段と、
所定の開始信号に応じて乱数を抽出し、該乱数の抽出値と遊技状態に対応して設けられた所定の確率テーブルとを照合することで、内部当たりか否かを決定する抽選処理手段と、
前記有効ライン上に停止した前記絵柄が、予め決定された入賞の組合せであるか否かを判定する入賞判定手段と、
前記抽選処理手段の抽選処理結果が特定の内部当たりとなった状態であって前記入賞判定手段の判定結果が非入賞となったとき、次回のゲームに前記特定の内部当たり状態を持ち越す特定内部当たり記憶手段と、を備えた遊技機において、
前記特定内部当たり記憶手段は、前記特定の内部当たりを2つ以上記憶可能であることを特徴とする遊技機。
【請求項2】前記入賞判定手段の判定結果が入賞となったとき、前記特定内部当たり記憶手段に記憶された特定の内部当たりに基づいて所定のボーナスゲームを実行するとともに、前記特定内部当たり記憶手段に記憶された特定の内部当たりの数を1つ減少させ、前記特定内部当たり記憶手段に残りの特定の内部当たりがあるとき、前記所定のボーナスゲームが終了した後の抽選結果を再度特定の内部当たりとするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
……
【請求項4】所定の開始信号に応じて遊技機の表示部で複数の絵柄を移動表示させるとともに、遊技者の停止操作に応じて該絵柄の移動表示を停止させる表示制御手段と、
一般遊技状態、ボーナス役の内部当たり状態及びボーナスゲーム状態の各状態で前記開始信号を受けたとき、複数の抽選役及び該抽選役の当選確率を特定する所定の確率テーブルに基づいて抽選処理を実行し、内部当たりか否かを決定する抽選処理手段と、
該抽選処理手段の抽選結果が内部当たりである場合であって前記絵柄の移動表示が停止したとき、該停止した絵柄が前記内部当たりに対応する入賞絵柄の組合せになったか否を判定する入賞判定手段と、を備えた遊技機の制御装置において、
前記抽選処理手段が、
前記ボーナス役の内部当たり状態及び前記ボーナスゲーム状態のうち少なくとも一つの利益状態における抽選処理を実行するとき、前記一般遊技状態における抽選処理の確率テーブルよりボーナス抽選確率の低い確率テーブルを使用するとともに、
該利益状態における抽選結果が内部当たりであるとき、該抽選結果を記憶する特定内部当たり記憶手段を併有し、
該特定内部当たり記憶手段に記憶した抽選結果に基づいて、前記特定の内部当たりに対応するボーナスゲーム状態が終了した後の抽選条件を変更するようにしたことを特徴とする遊技機の制御装置。」

<記載事項2>
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のようにボーナス役の内部当りに限って入賞まで内部当り状態を保持する遊技機にあっても、ボーナス役の内部当たり中はボーナス内部当たり状態専用の確率テーブルが用いられており、ボーナス役の内部当たり状態における抽選の際には、小役抽選は行うがボーナス役の抽選は行わないようになっている。そのため、ビッグボーナスやレギュラーボーナスが当選した内部当たり状態では、その内部当たりに該当する特定の絵柄が停止可能な回転範囲で遊技者の有効な停止操作がなされないと、ボーナス役が抽選されない状態が続き、言い換えれば、遊技者に不利な抽選を繰り返すことになり、初心者は十分に遊技を楽しむことができなかった。
【0010】また、一般遊技状態、ボーナス役の内部当たり状態、ボーナスゲーム状態の各状態に対応する複数の異なる確率テーブルとして、ROM内の大きなメモリ領域を確保しなければならないという問題があった。
【0011】本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、遊技者の技量に関係なく、初心者でも十分に遊技を楽しむことができる遊技機を提供するものであり、更に、確率テーブル用メモリ領域の縮小化を図った遊技機を提供するものである。」

<記載事項3>
「【0021】図1?図12は本発明の一実施形態に係る遊技機とその制御装置を示す図で、本発明をスロットマシンに適用した例を示している。図1に示すように、このスロットマシン10(遊技機)は、正面の表示パネル11に、リール部パネル12、操作部13、遊技状態表示器14、配当表示パネル15、胴部パネル16、遊技メダル払出し口17、受け皿18及びスピーカ19a、19b等を備えている。
……
【0023】また、図2及び図3に示すように、リール部パネル12には正面から見て左右に並んだ3つの表示窓31a、31b、31c(複数の表示部)が設けられており、リール部パネル12の後方には表示窓31a?31cを通して正面側から図2(a)に示すような複数種の絵柄(以下、シンボルマークという)mが見えるように、3つのリール32A、32B、32Cが設けられている。これらリール32A?32Cは、表示窓31a?31cに近接する円筒状の外周面に所定数(例えば21駒)のシンボルマークmを等間隔に配したもので、3つのステップモータ35A、35B、35C(可変速モータ)によってそれぞれ独立して回転駆動され、かつ、内方に設置された3組の表示用ランプ33A、33B、33Cによってそれぞれの正面部分に光を照射されることで、表示窓31a?31c内に所定数(例えば3駒)のシンボルマークmを表示することができる。ステップモータ35A?35Cは、例えば主軸をリール32A?32Cに同軸に連結したもので、リール32A?32Cをそれぞれ所定の最小回転角度(ステップ角)を単位として回転させることができる。前記リール部パネル12、リール32A?32C及び表示用ランプ33A?33Cは、制御装置50と共に可変表示装置を構成する。
【0024】操作部13には、表示器23の下方に位置する3つのリール停止用の停止ボタン41a、41b、41cと、その左方に位置するリール回転開始用のスタートレバー42と、表示器23の左方で貯留メダルの投入を指定する1枚投入用、2枚投入用及び3枚投入用の貯留メダル投入ボタン43a、43b、43cと、手動投入用のメダル投入口45と、多数枚自動投入用のメダル投入口46と、貯留メダル清算ボタン47と、がそれぞれ設けられている。
【0025】ここで、停止ボタン41a?41cは、遊技者によって特定種のシンボルマークmをメダル投入枚数に対応する有効本数の入賞ライン上(定位置)に停止させるべく操作され、制御装置50により所定の停止指令信号を発生するさせる停止手段となっている。また、スタートレバー42はリール32A?32Cの回転を同時に開始させるための開始操作手段である。」

<記載事項4>
「【0031】ここで、本発明の特徴にかかる部分について考察すると、マイコン54は、図5に示すように、遊技制御部54a、抽選処理部54b及び特定内部当たり記憶部54cを有しており、抽選処理部54bは、一般遊技状態、ボーナス役の内部当たり状態及びボーナスゲーム状態の各状態でスタートスイッチ61からのスタート信号(開始信号)を受けたとき、後述する所定の抽選処理を実行し、特定の内部当たりか否かを決定する抽選処理手段として機能する。また、遊技制御部54aは、所定の開始信号に応じて、表示窓31a?31c内でそれぞれ所定数のシンボルマークmを移動表示させるとともに、遊技者の停止操作に応じてそのシンボルマークmの移動表示を停止させる表示制御手段としての機能と、抽選処理部54bの抽選結果が内部当たりである場合であってリール32A?32Cによる移動表示が停止したとき、その停止したシンボルマークmが前記内部当たりに対応する特定の入賞絵柄の組合せになったか否か、すなわち入賞したか否を判定する入賞判定手段としての機能と、前記停止した絵柄が前記特定の入賞絵柄の組合せになったとき、所定の遊技メダルを払い出させる払い出し制御手段としての機能を備えている。
【0032】また、抽選処理部54bは、図6?図8に示すような複数の抽選確率テーブル111,112,113を有し、これらにより複数の抽選役及びそれら抽選役の当選確率を特定するようになっている。また、抽選確率テーブル111は投入メダル数が1枚のときに使用され、抽選確率テーブル112は投入メダル数が2枚のときに使用され、抽選確率テーブル113は投入メダル数が3枚のときに使用されるようになている。これらのテーブル111?113は、ビッグボーナス(BB)、レギュラーボーナス(RB)、スイカ、オレンジ、再遊技、4枚チェリー、2枚チェリー等の抽選役毎に、出玉率の各設定レベル(例えば1?6までの6段階)について、遊技状態に応じた抽選データを設定したデータテーブルである。なお、抽選に使用する乱数の変動幅(例えば16384)で各抽選データを除したものが抽選確率となる。また、各図の表中における「一般」は一般遊技状態を、「内部中」はBB、RBの内部当たり状態を意味する。
【0033】また、本実施形態の遊技機では、一般遊技中の当選の確率を高くする高期待値の遊技状態と、一般遊技中の当選の確率を低くする低期待値の遊技状態とに適宜切替えられるようになっており、抽選確率テーブル中の(High)はその高期待値の遊技状態を、(Low)は低期待値の遊技状態を、それぞれ示している。
【0034】ところで、抽選処理部54bは、図9に示すように、一般遊技状態で使用する高期待値及び低期待値の抽選確率テーブル部分Aを内部当たり状態でも使用するようになっており、BB,RB等のボーナス役の内部当たり状態における抽選処理を、一般遊技状態と同一の確率テーブル部分Aに基づいて実行するようになっている。そして、その内部当たり状態における抽選結果が更に内部当たりとなったときには、その抽選結果を履歴としてRAM53内の所定の抽選履歴書き込み領域である特定内部当たり記憶部54c(特定内部当たり記憶手段)に追加して記憶させる。
【0035】すなわち、特定内部当たり記憶部54cには、特定の内部当たりフラグが2つ、3つと重複してセットされることで、特定の内部当たりを2つ以上記憶可能であり、特定の内部当たり状態で抽選処理部54bによる入賞判定結果が入賞となったとき、特定内部当たり記憶部54cに記憶された特定の内部当たりのフラグ情報に基づいて所定のボーナスゲームが実行される。そして、ボーナスゲームの終了時にその特定内部当たり記憶部54cに記憶された特定の内部当たりの数(有効フラグ数)が1つ減少し、残りの特定の内部当たりがあるときには、そのボーナスゲームが終了した後の抽選結果を一般遊技状態とは異なるように変更する。
【0036】具体的には、例えば、ボーナスゲーム状態が終了した後の一般遊技の確率テーブルを高い期待値に設定したり、ボーナスゲーム状態が終了した直後の一般遊技における特定回数のゲーム(例えば1ゲーム目)からボーナスフラグ成立状態(BB,RB内部当たり中)に移行させ、遊技者がボーナス絵柄を入賞ライン上に揃えるように停止操作をすることで、再度ボーナス遊技状態に突入可能(いわゆる「連チャン」)となる。
【0037】一方、ビッグボーナスゲーム状態においては、例えば全部で30ゲームの一般遊技が可能であるが、このビッグボーナスゲーム状態における一般遊技中、抽選処理部54bは、一般遊技状態で使用する抽選確率テーブル部分Aとは異なる抽選確率テーブル部分B(各テーブル中の「BB中一般」の部分)を使用するようになっており、ビッグボーナス入賞した後(内部当たり後に特定の絵柄(例えば「7」,「7」,「7」)が入賞ライン上に並んだ後)の一般遊技中にBB、RBが再抽選されないようになっている。勿論、ビッッグボーナスゲーム状態における一般遊技中に、BB,RBを抽選可能にし、上述と同様に、RAM53内の所定の抽選履歴書き込み領域(図示していない)に記憶し、そこに記憶した抽選結果に基づいて、ボーナスゲーム状態が終了した後の抽選条件を変更するようなことも考えられる。」

<記載事項5>
「【0039】次に、作用について説明する。
【0040】上述したスロットマシン10においては、マイコン54が、ROM52内の制御プログラムに従って上述した各種スイッチやセンサ類からの信号情報、遊技者による操作の情報、スロットマシン各部の動作情報等を取り込みながら、以下に述べるような制御を実行する。
【0041】まず、その概要を説明すると、マイコン54は、毎回のゲーム開始時に乱数発生器58で発生した乱数を、乱数サンプリング回路59により所定のタイミングで、例えばスタートスイッチ61が作動された時にサンプリングし、この乱数により後述する抽選処理を行う。ここで、当選と判定された場合には、内部当たり状態となり、遊技者の停止操作によりリール停止信号回路76から送られる停止指令操作信号が、当選役に該当する絵柄を入賞ライン上に引き込める範囲内で発生した場合に、所定数だけリールを滑らせて、当選した絵柄の組合せになるよう各リール32A?32Cの停止制御を行う。そして、最終的に各有効入賞ライン上に停止した絵柄の組合せから入賞の有無を確認し、入賞時にはそれに対応するメダル払出し数等を表示器23に表示させ、メダル払い出しのための指令信号をホッパー駆動回路72に出力して、ホッパー81からメダルの払出しを行わせる。」

<記載事項6>
「【0042】以下、具体的な処理について説明すると、まず、電源投入時にマイコン54はメモリチェックや出力ポートの初期化等を行った後、図10?図12に示すような処理を実行する。
……
【0050】次いで、ステップS109でビッグボーナス(BB)入賞か否か、ステップS110でレギュラーボーナス(RB)入賞か否かが判別され、何れかのボーナス入賞と判定されれば各ボーナスゲームに進み、ボーナス入賞でないと判定されればステップS101に戻る。
……
【0057】ボーナス入賞であれば、12遊技又は8回入賞までゲーム可能なボーナスゲームに進み、ステップS121でボーナスゲームの12遊技を消化したか否かが判別され、全部消化するまで次ステップ以降の処理が繰返し実行される。
【0058】ステップS122で遊技メダルが投入され、次ステップS123でスタートレバー42が操作されると、スタートスイッチ61からの開始信号に応じて、CPU51からモータ駆動回路71に制御信号が送られ、リール32A?32Cの回転駆動が行われた後、ステップS124で所定のボーナスゲーム用の高確率、高配当の抽選処理が実行される。」

<記載事項7>
図8の記載より、3メダル遊技時の一般遊技状態(High)設定6における全ての賞についての抽選データの和は9579であることが認められる。

<引用発明>
前記摘示の記載、認定事項及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数の絵柄を移動表示させるとともに所定の有効ライン上に停止させることができる可変表示装置と、
遊技者の操作により移動表示中の前記絵柄を前記有効ライン上に停止させる停止手段と、
一般遊技状態、ボーナス役の内部当たり状態及びボーナスゲーム状態の各状態で所定の開始信号を受けたとき、複数の抽選役及び該抽選役の当選確率を特定する所定の確率テーブルに基づいて抽選処理を実行し、内部当たりか否かを決定する抽選処理手段と、
該抽選処理手段の抽選結果が内部当たりである場合であって前記絵柄の移動表示が停止したとき、該停止した絵柄が前記内部当たりに対応する入賞絵柄の組合せになったか否を判定する入賞判定手段と、を備えた遊技機において、
抽選処理で当選と判定された場合には、内部当たり状態となり、遊技者の停止操作により送られる停止指令操作信号が、当選役に該当する絵柄を入賞ライン上に引き込める範囲内で発生した場合に、当選した絵柄の組合せになるよう停止制御を行い、
前記抽選処理手段が、前記ボーナス役の内部当たり状態及び前記ボーナスゲーム状態のうち少なくとも一つの利益状態における抽選処理を実行するとき、前記一般遊技状態における抽選処理の確率テーブルよりボーナス抽選確率の低い確率テーブルを使用し、
ボーナス入賞であれば、所定のボーナスゲーム用の高確率、高配当の抽選処理が実行され、
3メダル遊技時の一般遊技状態(High)設定6における全ての賞についての抽選データの和は9579であり、抽選に使用する乱数の変動幅(例えば16384)で各抽選データを除したものが抽選確率となり、
前記抽選処理手段が、該利益状態における抽選結果が特定内部当たりであるとき、該抽選結果を記憶する特定内部当たり記憶手段を併有し、
前記特定内部当たり記憶手段は、前記特定の内部当たりを2つ以上記憶可能であり、
前記入賞判定手段の判定結果が入賞となったとき、前記特定内部当たり記憶手段に記憶された特定の内部当たりに基づいて所定のボーナスゲームを実行するとともに、前記特定内部当たり記憶手段に記憶された特定の内部当たりの数を1つ減少させ、前記特定内部当たり記憶手段に残りの特定の内部当たりがあるとき、前記所定のボーナスゲームが終了した後の抽選結果を再度特定の内部当たりとするようにした遊技機。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「複数の絵柄を移動表示させるとともに所定の有効ライン上に停止させることができる可変表示装置」は本願発明の「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段」に相当する。以下同様に、「遊技者の操作により移動表示中の前記絵柄を前記有効ライン上に停止させる停止手段」は「遊技者の操作により出力し得る所定の表示固定指示に応答してその各表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段」に、「ボーナス役」は「1種又は複数種の特定ゲーム開始賞」に、「ボーナスゲーム状態」は「特定ゲーム状態」に、「抽選処理」は「抽選」に、「遊技機」は「遊技機」及び「遊技装置」に、それぞれ相当する。

また、引用発明は、「前記絵柄の移動表示が停止したとき、該停止した絵柄が前記内部当たりに対応する入賞絵柄の組合せになったか否を判定する入賞判定手段」を備え、「前記入賞判定手段の判定結果が入賞となったとき、前記特定内部当たり記憶手段に記憶された特定の内部当たりに基づいて所定のボーナスゲームを実行する」のであるから、「前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する」ものであるといえる。

そして、引用発明の「抽選処理手段」は、「複数の抽選役及び該抽選役の当選確率を特定する所定の確率テーブルに基づいて抽選処理を実行し、内部当たりか否かを決定する」のであるから、「所定の抽選の当選によって、その当選に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段」に相当するものであるといえる。

さらに、引用発明の「所定のボーナスゲーム」が「特定の賞に入賞しうる特定ゲーム状態」であることは当業者にとって自明であり、また、引用発明は「前記入賞判定手段の判定結果が入賞となったとき、……所定のボーナスゲームを実行する」ものであるから、「特定の賞に入賞し得る特定ゲーム状態を、1種又は複数種の特定ゲーム開始賞のうち何れかへの入賞を条件に設定する特定ゲーム状態設定手段」に相当する構成を備えるといえる。

加えて、引用発明は、「抽選処理で当選と判定された場合には、内部当たり状態となり、遊技者の停止操作により送られる停止指令操作信号が、当選役に該当する絵柄を入賞ライン上に引き込める範囲内で発生した場合に、当選した絵柄の組合せになるよう停止制御を行」うものであり、引用発明においてそのような停止制御を行う手段が「停止手段」であることは明らかであるから、引用発明の「停止手段」は、「表示固定手段から内部当り状態が設定されている賞の入賞条件を達成する表示内容を固定的に表示し得るまでの間が所定範囲内であることを条件に、その入賞条件を達成し得る表示内容を各表示手段に固定的に表示させるもの」であるといえる。

そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致並びに相違するものと認められる。

<一致点>
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、遊技者の操作により出力し得る所定の表示固定指示に応答してその各表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
所定の抽選の当選によって、その当選に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
特定の賞に入賞し得る特定ゲーム状態を、1種又は複数種の特定ゲーム開始賞のうち何れかへの入賞を条件に設定する特定ゲーム状態設定手段を備え、
前記表示固定手段は、表示固定指示から内部当り状態が設定されている賞の入賞条件を達成する表示内容を固定的に表示し得るまでの間が所定範囲内であることを条件に、その入賞条件を達成し得る表示内容を各表示手段に固定的に表示させるものである遊技装置。」
である点。

<相違点1>
本願発明では、「特定ゲーム状態が設定されている場合に、内部当り設定手段による抽選が、少なくとも、特定の賞及び特定ゲーム開始賞について行われ」るのに対し、引用発明の「所定のボーナスゲーム用の高確率、高配当の抽選処理」は本願発明のように構成されていない点。

<相違点2>
本願発明では、「前記特定の賞の抽選の当選確率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に内部当り当選となる確率以上であり、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が特定の賞についての入賞条件を達成する率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に入賞する率以上であ」るのに対し、引用発明は、「3メダル遊技時の一般遊技状態(High)設定6における全ての賞についての抽選データの和は9579であり、抽選に使用する乱数の変動幅(例えば16384)で各抽選データを除したものが抽選確率とな」るものの、特定の賞の抽選の特選確率や特定の賞についての入賞条件を達成する率が、本願発明のように構成されているか否かが明らかでない点。

<相違点3>
本願発明では、「特定ゲーム状態が設定されていて内部当り設定手段による特定ゲーム開始賞についての抽選に当選した場合に、当選した当該ゲームにおいては特定の賞について内部当り状態とならず入賞とならないものであり、且つ、当選した特定ゲーム開始賞についての内部当り設定手段による内部当り状態設定が特定ゲーム状態以外の状態において行われるものである」のに対し、引用発明では、「前記抽選処理手段が、該利益状態における抽選結果が特定内部当たりであるとき、該抽選結果を記憶する特定内部当たり記憶手段を併有し、」さらに、「前記特定内部当たり記憶手段に残りの特定の内部当たりがあるとき、前記所定のボーナスゲームが終了した後の抽選結果を再度特定の内部当たりとするようにし」ているものの、特定ゲーム状態が設定されているときに内部当り設定手段による特定ゲーム開始賞についての抽選を行わない点。

(3)判断
<相違点1について>
記載事項2によれば、引用発明は、「内部当たり状態では、その内部当たりに該当する特定の絵柄が停止可能な回転範囲で遊技者の有効な停止操作がなされないと、ボーナス役が抽選されない状態が続き、言い換えれば、遊技者に不利な抽選を繰り返すことにな」るという問題を解決するものであり、そのために、「抽選処理手段が、前記ボーナス役の内部当たり状態及び前記ボーナスゲーム状態のうち少なくとも一つの利益状態における抽選処理を実行するとき、前記一般遊技状態における抽選処理の確率テーブルよりボーナス抽選確率の低い確率テーブルを使用」するという構成を採用したものと認められる。要するに、ボーナス役が抽選されない状態は遊技者にとって不利であるから、従来ボーナス役が抽選されなかった状態においても、ボーナス役の抽選を行うようにしたという技術的思想が理解できる。してみれば、特定ゲーム状態が設定されている場合も、ボーナス抽選が行われないと遊技者にとって不利であることは自明であるから、引用発明において、特定ゲーム状態が設定されている場合に、特定の賞だけでなくボーナス役(特定ゲーム開始賞)の抽選を行うようにすること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できた設計変更である。

<相違点2について>
ボーナスゲームにおいて特定の賞の当たり確率を約10分の9とすることは、周知技術(例えば、「パチンコ攻略マガジン」1998 9月号の第114頁上段には、「ほとんどのパチスロの1プレイあたりのJACゲームの当たり確率は約10分の9です。」と記載されている。)であるから、引用発明のボーナスゲームにおいて特定の賞の当たり確率を約10分の9とすることは、当業者にとって想到容易である。
特定の賞の当たり確率は、「特定の賞についての入賞条件を達成する率」に相当するから、「表示手段が固定的に表示した表示内容が特定の賞についての入賞条件を達成する率が約10分の9である」といえる。また、抽選に外れて入賞を達成することはできないため、特定の賞の抽選の当選確率は、特定の賞の当たり確率(特定の賞についての入賞条件を達成する率)より大きいことは明らかであるから、「特定の賞の抽選の当選確率が少なくとも約10分の9である」といえる。すなわち、周知技術を適用すれば、「特定の賞の抽選の当選確率が少なくとも約10分の9であり、表示手段が固定的に表示した表示内容が特定の賞についての入賞条件を達成する率が約10分の9である」であるといえる。
引用発明では、「3メダル遊技時の一般遊技状態(High)設定6における全ての賞についての抽選データの和は9579であり、抽選に使用する乱数の変動幅(例えば16384)で各抽選データを除したものが抽選確率とな」るから、「一般ゲームにおいて何れかの賞に内部当り当選となる確率」は最大でも「9579/16384」であるといえる。
ここで、「約10分の9」は「9579/16384」より大きいから、引用発明に周知技術を適用することで、「前記特定の賞の抽選の当選確率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に内部当り当選となる確率以上であり、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が特定の賞についての入賞条件を達成する率が、一般ゲームにおいて何れかの賞に入賞する率以上であ」るという条件を満たすことは、当然である。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。

<相違点3について>
相違点1において検討したように、特定ゲーム状態が設定されている場合に、内部当り設定手段による抽選が、特定の賞及び特定ゲーム開始賞について行われるようになすことは、設計変更である。そのように設計変更した遊技装置で、特定ゲーム状態が設定され、その状態で内部当り設定手段による抽選が行われ、その抽選で特定ゲーム開始賞に当選した場合には、当該ゲームにおいては特定の賞については当選していないのであるから、特定の賞について内部当り状態とはならないし、特定の賞が内部当り状態ではないから、特定の賞は入賞とならない。すなわち、設計変更した遊技装置は、「特定ゲーム状態が設定されていて内部当り設定手段による特定ゲーム開始賞についての抽選に当選した場合に、当選した当該ゲームにおいては特定の賞について内部当り状態とならず入賞とならないものであ」る。
そして、引用発明は、「前記抽選処理手段が、該利益状態における抽選結果が特定内部当たりであるとき、該抽選結果を記憶する特定内部当たり記憶手段を併有し、」さらに、「前記特定内部当たり記憶手段に残りの特定の内部当たりがあるとき、前記所定のボーナスゲームが終了した後の抽選結果を再度特定の内部当たりとするようにし」ているのであるから、「特定ゲーム状態が設定されている場合に、内部当り設定手段による抽選が、特定の賞及び特定ゲーム開始賞について行われる」ように設計変更するならば、特定ゲーム状態が設定されているときに特定ゲーム開始賞に内部当たりすれば、特定内部当たり記憶手段に該抽選結果を記憶させ、特定内部当たり記憶手段に記憶された特定内部当たりによって、所定のボーナスゲームが終了した後に特定内部当たりが設定されるものとなる。すなわち、設計変更した遊技装置は、「当選した特定ゲーム開始賞についての内部当り設定手段による内部当り状態設定が特定ゲーム状態以外の状態において行われるものである」といえる。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。

進歩性の判断>
相違点1,2,3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
本願発明が特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-08 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願2000-346905(P2000-346905)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 土屋 保光
太田 恒明
発明の名称 遊技装置  
代理人 高良 尚志  

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