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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20073015 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1177218
審判番号 不服2005-4440  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-14 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成 5年特許願第252424号「遊技機用情報収集表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月28日出願公開、特開平 7- 80146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年9月13日の出願であって、平成12年7月28日付け及び平成16年11月9日付けで明細書についての手続補正がされたものの、平成17年2月8日付けで拒絶の査定がされたため、同年3月14日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成12年7月28日付け、平成16年11月9日付け及び平成17年3月14日付け手続補正を却下するとともに、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成19年12月5日付けで意見書及び手続補正書を提出したが、当審では同手続補正を却下した。
結局のところ、出願後4度にわたって、明細書についての手続補正がされたが、それら手続補正はすべて当審において却下され、これら補正却下決定はすべて確定したから、本願の請求項1?3に係る発明は願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲【請求項1】?【請求項3】に記載されたとおりのものであり、その記載は次のとおりである。
【請求項1】 遊技機の動作状態を管理可能な集中管理装置において、
前記遊技機は、
遊技者に有利な大当り遊技状態を発生可能な大当り遊技状態発生手段と、
複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置と、
該可変表示装置の停止図柄に基づいて前記大当り遊技状態を遊技者に更に有利な状態で発生させる特異遊技状態発生手段と、
前記遊技機の動作状態データを外部に送信する送信手段と、を備え、
前記集中管理装置は、
前記遊技機から送信される動作状態データを受信する受信手段と、
前記遊技機が予め定められた打ち止め状態になったとき、打ち止め信号を発生する打ち止め信号発生手段と、
前記特異遊技状態発生手段により発生した特異遊技状態を検出する特異遊技状態検出手段と、
該特異遊技状態検出手段の検出信号に基づいて前記打ち止め信号の発生を制御する打ち止め信号制御手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機の集中管理装置。
【請求項2】 前記大当り遊技状態発生手段は、
所定条件を達成することにより所定の範囲内で該大当り遊技を継続可能であり、
前記可変表示装置が特別図柄で停止することにより、該大当り状態を最大継続可能回数で制御する特別大当り状態を発生可能であり、
前記特異遊技状態発生手段は、該特別大当り状態が連続して発生する状態を特異遊技状態とすることを特徴とする請求項1記載の遊技機の集中管理装置。
【請求項3】 遊技機の動作状態を管理可能な集中管理装置において、
前記遊技機は、
遊技者に有利な大当り遊技状態を発生可能な大当り遊技状態発生手段と、
複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置と、
該可変表示装置の停止図柄に基づいて前記大当り遊技状態を遊技者に更に有利な状態で発生させる特異遊技状態発生手段と、
前記遊技機の動作状態データを外部に送信する送信手段と、備え、
前記集中管理装置は、
前記遊技機から送信される動作状態データを受信する受信手段と、
前記遊技機が予め定められた打ち止め状態になったとき、打ち止め信号を発生する打ち止め信号発生手段と、
前記特異遊技状態発生手段により発生した特異遊技状態を検出する特異遊技状態検出手段と、
該特異遊技状態検出手段が特異遊技状態を検出したとき、前記打ち止め状態になると、該特異遊技状態をリセットするリセット処理手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機の集中管理装置。

第2 本件審判請求についての当審の判断
1.当審で通知した拒絶理由の骨子
当審で通知した拒絶理由は、次の2つである。
(拒絶理由1)本願は特許法37条に規定する要件を満たしていない。
(拒絶理由2)請求項1?3に係る発明は、本願出願前に頒布された特開平2-257974号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。なお以下において、進歩性(拒絶理由2)については請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)のみ検討する。

2.単一性(拒絶理由1)についての検討
特許請求の範囲の記載は上記のとおりであり、要するに請求項1,2の発明は、特異遊技状態検出手段の検出信号に基づいて打ち止め信号の発生を制御する打ち止め信号制御手段(同手段が請求項1,2発明の主要部である。)の存在を最大の特徴点としており、請求項3の発明は、打ち止め状態になると特異遊技状態をリセットするリセット処理手段(同手段が請求項3発明の主要部である。)の存在を最大の特徴点としており、これら2つの特徴点は相容れないものである。なぜなら、請求項1,2発明であれば、特異遊技状態では打ち止めにならず、請求項3発明が前提とする「特異遊技状態検出手段が特異遊技状態を検出したとき、前記打ち止め状態になる」との事態がないからである。
課題についてみても、「遊技者にとってはせっかくの連続大当り状態中であるにもかかわらず、遊技を終了しなければならず、非常に不利な状態になることがあるという問題点があった」(段落【0003】)ことが請求項1,2発明の課題であり、「遊技店の観点に立つと、・・・打ち止め台の開放時に連チャン状態が残ってしまうことがあり、次の遊技者に直ちに大当りを出されてしまうといった欠点がある」(段落【0004】)ことが請求項3発明の課題であるから、全く別の課題というべきである。
段落【0005】には「打ち止め台の開放時に連チャン状態が残らないようにできる遊技機の集中管理装置を提供することを目的としている。」との記載があり、同目的では請求項1?3が共通するように見えるが、具体的には、遊技者からみた課題であるのか、遊技店からみた課題であるのかがそもそも異なるのであるから、同一課題と認めることはできない。
したがって、請求項1?3に係る発明のうち、どれを特定発明としても、特定発明と解決しようとする課題が同一でない発明かつ特定発明と構成に欠くことができない事項の主要部が同一でない発明が存在するから、平成6年改正前特許法37条1号又は2号に規定する要件を満たさず、同条3号?5号に規定する要件も満たさない。

3.引用例の記載事項
引用例には、以下のア?オの記載が図示とともにある。
ア.「従来、連続役物を備えたパチンコ機、すなわち特別遊技状態になると短時間に大量に景品玉を遊技客に提供できる可能性のあるパチンコ機や通常のパチンコ機にあって、遊技客の打込玉と景品玉との差玉数が一定数を越えると、発射モータの電源の供給を止めるなど、遊技の継続を不能にする停止手段(いわゆる打止装置)を設けることは知られている。」(1頁左下欄14行?右下欄1行)
イ.「連続役物を備えたパチンコ機にあっては、特別遊技状態の途中で停止手段が作動した場合には、その特別遊技状態の途中で遊技が継続できなくなるため遊技客に大きな不満が残るという問題があった。
本発明は、上記した問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、特別遊技状態になった場合、その途中で遊技が終了することのないパチンコ機を提供することにある。」(1頁右下欄10?18行)
ウ.「ステップS10?ステップS90は、遊技盤6に設けられた始動入賞口11a?1lcに打球が入賞することによってデジタル表示器9a?9cが可変表示開始し、ストップスイッチ12を遊技客が押圧することによって、あるいは一定時間後に自動的にその可変状態を停止するようになっていることを示す。」(3頁右上欄13?19行)
エ.「ステップS100は、前記デジタル表示器9a?9cの表示が例えば、すべて「7」を表示する大当りの組合せとなるか否か、つまり、特別遊技状態である大当りか否か判定する。大当りの組合せでないと判断された場合には、動作の確実性を保持する意味で開閉板31を駆動するソレノイドをOFFとした後(ステップS110)、前記ステップS10に戻る。
大当りの場合は、ステップS120?ステップS260で示すように、開閉板31を30秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで開放し、しかもその開放中に開閉板31に入賞した入賞玉が役物連続作動装置であるVSW32をONしたときには、再度開閉板31が30秒または10個の入賞玉が発生するまで開放し、このような動作をVSW32を入賞玉がONするかぎり本実施例の場合には上限回数10回まで繰り返すことを示している。」(3頁右下欄14行?4頁左上欄11行)
オ.「上記実施例においては、遊技場に設置してある管理コンピュータから導出される打ち止め信号に対する処理が含まれていないが、実施例に係るパチンコ機1に対してそのような信号が発せられた場合には、その発せられたときの遊技状態が特別遊技状態、すなわち、大当り状態であるときには、無効とするように処理し、通常の遊技状態であるときには、有効として処理するように制御すればよい。」(5頁右上欄8?16行)

4.引用例記載の発明の認定
引用例の記載オの「管理コンピュータ」は、記載ウ,エのパチンコ機を管理するものであるから、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技場に設置してあり、始動入賞口及びデジタル表示器を有し、デジタル表示器の表示が大当りの組合せとなった場合に特別遊技状態となるパチンコ機を管理し、パチンコ機に対して打ち止め信号を導出する管理コンピュータ。」(以下「引用発明」という。)

5.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明が「遊技機の動作状態を管理可能」なこと、及び複数の「パチンコ機」(本願発明の「遊技機」に相当。)を管理することは明らかであるから、引用発明を「集中管理装置」ということができ、管理する以上「遊技機から送信される動作状態データを受信する受信手段」を備えている。
引用発明の管理対象であるパチンコ機の「特別遊技状態」及び「デジタル表示器」と本願発明の管理対象である遊技機の「大当り遊技状態」及び「複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置」に相違はない。当然、引用発明の管理対象であるパチンコ機も「大当り遊技状態発生手段」を備えている。また、「管理コンピュータ」は遊技機にとっては「外部」であるから、「遊技機の動作状態データを外部に送信する送信手段」を備えている。
引用発明は「パチンコ機に対して打ち止め信号を導出する」のであり、その時点が「予め定められた打ち止め状態になったとき」であることは明らかであるから、本願発明でいう「前記遊技機が予め定められた打ち止め状態になったとき、打ち止め信号を発生する打ち止め信号発生手段」を備えている。
したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技機の動作状態を管理可能な集中管理装置において、
前記遊技機は、
遊技者に有利な大当り遊技状態を発生可能な大当り遊技状態発生手段と、
複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置と、
前記遊技機の動作状態データを外部に送信する送信手段と、を備え、
前記集中管理装置は、
前記遊技機から送信される動作状態データを受信する受信手段と、
前記遊技機が予め定められた打ち止め状態になったとき、打ち止め信号を発生する打ち止め信号発生手段と
を備えた遊技機の集中管理装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉管理対象となる遊技機について、本願発明が「該可変表示装置の停止図柄に基づいて前記大当り遊技状態を遊技者に更に有利な状態で発生させる特異遊技状態発生手段」を備えるとしているのに対し、引用発明にはその限定がない点。
〈相違点2〉本願発明が「前記特異遊技状態発生手段により発生した特異遊技状態を検出する特異遊技状態検出手段」及び「該特異遊技状態検出手段の検出信号に基づいて前記打ち止め信号の発生を制御する打ち止め信号制御手段」を備えるのに対し、引用発明はこれら手段を備えない点。

6.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
本件出願当時、可変表示装置の停止図柄に基づいて大当り遊技状態を発生可能なパチンコ機において、大当り停止図柄のうちさらに特定の図柄を確変図柄とし、その後の大当り確率を向上することは周知であり、その後の大当り確率を向上することは本願発明でいう「大当り遊技状態を遊技者に更に有利な状態で発生させる」ことと異ならない。
すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を備えた遊技機は本件出願前周知であり、引用発明の管理対象をそのような遊技機とすることには何の困難性もなく、設計事項というべきである。

(2)相違点2について
引用発明(管理コンピュータ)自体は「打ち止め信号制御手段」を備えていないが、管理対象となるパチンコ機では、大当り状態であるときに、打ち止め信号を無効とするように処理しており、遊技機と集中管理装置をあわせたシステムとしては、打ち止め制御手段が引用例には記載されているということができ、この打ち止め制御手段を遊技機に備えさせるか集中管理装置に備えさせるかは設計事項というべきである。
後者を採用した場合、打ち止め信号を遊技機に送信しないことが要件となるから、打ち止め制御の具体的内容として、発生した打ち止め信号を無効とする代わりに、「打ち止め信号の発生を制御する」ことは軽微な設計変更というべきであり、遊技機が打ち止め制御する状態(本願発明では「特異遊技状態」)にあるかどうかを検出する手段(本願発明では「特異遊技状態検出手段」)を集中管理装置側に備えさせることは当然の付随事項である。
また、引用例の記載ア,イに基づく課題を達成するためには、遊技者にとって極めて有利な状態での打ち止めを制御することが要請されるところ、どのような遊技状態をその状態とするかは適宜選択決定すればよいことであり、相違点1に係る構成を備えた遊技機を管理対象とするのであれば、その状態を「特異遊技状態」とすることも設計事項である。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明、その管理対象として引用例に記載された遊技機の内容及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおり、本件出願は平成6年改正前特許法37条に規定する要件を満たしていないとともに、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明の進歩性について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-07 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平5-252424
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
川島 陵司
発明の名称 遊技機用情報収集表示装置  
代理人 鹿嶋 英實  
代理人 藤井 正弘  
代理人 須藤 淳  
代理人 後藤 政喜  

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