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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1177268
審判番号 不服2006-5974  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-30 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 特願2002-116077「流量測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日出願公開、特開2003-315116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年4月18日の出願であって、平成18年2月17日付(発送日:平成18年2月28日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成18年3月30日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成18年4月19日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「被測定空気を導入して流通させる流路と、該流路内に設けられ、検出面を被測定空気に曝して被測定空気の流量測定を行うセンシング部とを有する流量測定装置において、
前記センシング部よりも前記被測定空気の流通方向の直上流位置で流路方向に略平行に板状部材を設けて、被測定空気の流れを整流する整流部材とし、前記流路の断面形状が四角形であり、前記センシング部と前記整流部材との間隔の、流路の1辺の大きさに対する比率が1.6以下であることを特徴とする流量測定装置。」

3 引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-146652号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項1?7が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【請求項1】低伝熱性の基板上に発熱抵抗体,測温抵抗体を流体の通流方向に沿い並置形成してセンサチップを構成し、該センサチップを被測定流体の流路内に配置して流体の通流に伴う測温抵抗体の温度変化から流量を測定するマスフローセンサにおいて、前記センサチップと一体に、その主面側の測温抵抗体,発熱抵抗体に沿って被測定流体を層流状態で通流させる整流ガイド部材を組合せたことを特徴とするマスフローセンサ。
【請求項2】請求項1記載のマスフローセンサにおいて、整流ガイド部材がセンサチップの主面側を包囲してその基板に接合したトンネル状の仕切カバーを基体として、該基体にセンサチップ側の抵抗体形成領域を挟んでその前後に流体の流れ方向と平行に複数条の整流ブレードが並ぶ整流部を形成した構成になることを特徴とするマスフローセンサ。」(第2頁【特許請求の範囲】)
・記載事項2
「【発明の属する技術分野】
本発明は、管路内を流れるガスなどの流体流量を測定する電子式のマスフローセンサに関する。」(第2頁【0001】)
・記載事項3
「【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図4に対応する同一部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
まず、図1(a),(b) に実施例の基本構成を示す。すなわち、シリコン製のチップ基板1の主面側に形成した酸化シリコン膜2の上に薄膜抵抗で発熱抵抗体3,および第1,第2の測温抵抗体4,5を形成したセンサチップ6に対し、基板1の主面側に整流ガイド12を一体接合してマスフローセンサを構成している。」(第3頁【0011】)
・記載事項4
「ここで、整流ガイド12はセンサチップ6の主面側を矢印P方向に流れる被測定流体を層流状態に整える役目を果たすものであり、センサチップ6の主面側を包囲してそのチップ基板1に接合したトンネル状の仕切カバー12aを基体として、センサチップ6に形成した抵抗体3?5の形成領域を挟んで基体12aの前後両端部に流体の流れ方向Pと平行に複数条の整流ブレード12b-1が並ぶた整流部12bを形成した構成になる。なお、12b-2は整流ブレード12b-1の間に形成された溝状流路である。」(第3頁【0012】)
・記載事項5
「前記構成のマスフローセンサを被測定流体の流れる流路に対し、流体の流れ方向Pと平行に配置することにより、流体は整流ガイド12の上流側整流部12bを通過する過程で層流となり、この層流状態を保ったまま発熱抵抗体3,第1,第2の測温抵抗体4,5の領域を通流する。したがって、マスフローセンサの周囲を流れる流体に乱流があってもその影響を受けることなく、整流ガイド12の中を流れる流体は常に層流状態に保持たれるので高い測定精度が確保できる。」(第3頁【0013】)
・記載事項6
「また、整流部12bを構成する整流ブレード12b-1は層流を形成する機能に深く係わり合うことから、整流ガイド12の設計に際しては整流部12bの溝状流路12b-2を通過する流体の流れが臨界レイノズル数以下となるように整流ブレード12b-1の長さ,厚さ,条数,配列ピッチなどを設定し、かつ性能テストで確認して最適な値に決定するものとする。」(第3頁【0015】)
・記載事項7
「【発明の効果】
以上述べたように、本発明の構成になるマスフローセンサによれば、センサチップと一体に、その主面側の測温抵抗体,発熱抵抗体に沿って被測定流体を層流状態に通流させる整流部付きの整流ガイド部材を組合せたことにより、整流ガイド部材の整流部を経てセンサチップの主面側を流れる被測定流体を、周囲の通流状態に影響されることなく常に層流状態に保って発熱抵抗体,測温抵抗体の形成領域を流すことができ、これにより乱流に起因するノイズを排除して高い測定精度が得られる。したがって、マスフローセンサを被測定流体の配管路に設置する場合でも、従来のように主管路にバイパス管路,およびそのバイパス管路内に設置する整流板を省略して主管路に直接設置しても精度良く測定が行えるので、それだけ設置面での制約が少なくなってマスフローセンサの汎用性が向上する。」(第4頁【0019】)
・図面の記載事項
図1、図2には、「トンネル状の仕切カバー12a」を「チップ基板1」に接合して形成した被測定流体の流路の断面形状を四角形にしたものが描かれている。また、板状部材の「整流ブレード12b-1」が、「センサチップ6」に形成した「第1の測温抵抗体4」、「発熱抵抗体3」、「第2の測温抵抗体5」の形成領域を挟んで流体の流れ方向Pの直上流位置と直下流位置に流体の流れ方向Pと平行に設けたものが描かれている。

以上、記載事項1?7と図面の記載事項によれば、引用文献1には次の発明が開示されていると認めることができる。
「ガスなどの被測定流体を導入して流通させる流路と、該流路内に設けられ、検出面を被測定流体に曝して被測定流体の流量測定を行う、センサチップ6に形成した第1の測温抵抗体4、発熱抵抗体3、第2の測温抵抗体5の形成領域とを有する流量測定装置において、前記形成領域よりも前記被測定流体の流れ方向Pの直上流位置で流路方向に略平行に板状部材を設けて、被測定流体の流れを整流する整流ブレード12b-1とし、前記流路の断面形状が四角形である流量測定装置。」(以下、「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ガスなどの被測定流体」は、本願発明の「被測定空気」に相当し、同様に、「センサチップ6に形成した第1の測温抵抗体4、発熱抵抗体3、第2の測温抵抗体5の形成領域」は「センシング部」に、「整流ブレード12b-1」は「整流部材」に、それぞれ相当する。

以上により、本願発明と引用発明は、
「被測定空気を導入して流通させる流路と、該流路内に設けられ、検出面を被測定空気に曝して被測定空気の流量測定を行うセンシング部とを有する流量測定装置において、
前記センシング部よりも前記被測定空気の流通方向の直上流位置で流路方向に略平行に板状部材を設けて、被測定空気の流れを整流する整流部材とし、前記流路の断面形状が四角形であることを特徴とする流量測定装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、「センシング部と前記整流部材との間隔の、流路の1辺の大きさに対する比率が1.6以下である」のに対し、引用発明では、この比率について、特定されていない点。

5 当審の判断
上記相違点について検討する。
上記「記載事項6」に、「整流部12bを構成する整流ブレード12b-1は層流を形成する機能に深く係わり合うことから、整流ガイド12の設計に際しては整流部12bの溝状流路12b-2を通過する流体の流れが臨界レイノズル数以下となるように整流ブレード12b-1の長さ,厚さ,条数,配列ピッチなどを設定し、かつ性能テストで確認して最適な値に決定するものとする。」とあるように、引用発明において、整流ブレード12b-1の長さ,厚さ,条数,配列ピッチなどは、被測定流体を常に層流状態に保つために、最適な値に設計すべき事項である。
ここでとりわけ整流ブレード12b-1の長さというファクターについてみると、上記「記載事項7」に、「整流ガイド部材の整流部を経てセンサチップの主面側を流れる被測定流体を、周囲の通流状態に影響されることなく常に層流状態に保って発熱抵抗体,測温抵抗体の形成領域を流すことができ」とあるように、被測定流体は整流ブレード12b-1を経て形成領域に達するから、整流ブレード12b-1の長さは、形成領域とその直上流位置の整流ブレード12b-1の長さ方向終端部との間隔というファクターにも直接関係するファクターであるということができる。
したがって、整流ブレード12b-1の長さの最適設計にあたっては、その単純長さ(絶対長さ)のみならず、形成領域との相対的関係にある上記間隔も当然考慮すべきファクターになるというべきである。
そして、上記間隔(距離)の最適設計にあたっては、間隔もそれ自体の絶対距離のみならず、被測定流体の流路断面積等と相対的関係にあるファクターであるというべきだから、流路断面が四角形であれば、その1辺の長さと上記間隔との相対比、つまり間隔の流路の1辺の大きさに対する比率を設計ファクターに採用することは容易になしうることである。
ところで、整流ブレード12b-1の長さ方向終端部が形成領域に近いほど、つまり上記間隔が小さい(短い)ほど、形成領域にとって整流効果が高まるであろうことは容易に予測できることであるから、上記比率は最適設計上なるべく小さくすべきことは容易に予想できることであり、上記比率を特に「1.6以下」とした点のうち特に「1.6」という数値限定には、格別の臨界的意味も見いだせないから、適宜限定しえた事項というべきである。
そして、本願発明の主たる作用効果も、被測定空気の整流性がセンシング部位置で特に良好であり、被測定空気にのってパーティクルが流れても、センシング部の検出面の実質的な衝突面積が減じられるというものであって、引用文献にはパーティクルの記載はないが、引用発明も、本願発明と同等の構成を採ることで、被測定空気の整流性をセンシング部位置で特に良好にするものであるから、被測定空気にのってパーティクルが流れても、センシング部の検出面の実質的な衝突面積が減じられるという作用効果は、引用発明においても当業者が予測できる範囲のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願2002-116077(P2002-116077)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山下 雅人
山田 昭次
発明の名称 流量測定装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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