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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E02B
管理番号 1178048
審判番号 無効2007-800055  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-03-16 
確定日 2008-02-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3749833号発明「コンクリート製の水路壁面改良工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3749833号の請求項4に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件は、平成13年1月30日(優先権主張、平成12年2月3日及び平成12年6月30日)に出願され、平成17年12月9日に特許登録がなされたものである。

2.本件特許に対して、平成18年3月6日に別件無効審判が請求され(無効2006-80039)、本件被請求人は平成18年5月26日に、請求項4及び請求項4に関する明細書の段落【0014】、【0032】、【0079】、【0080】について訂正を請求し、平成19年1月16日に、「訂正を認める。特許第3749833号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。特許第3749833号の請求項4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」とする審決がなされた。

3.被請求人は、上記審決の「特許第3749833号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。」との部分の取消しを求め、知的財産高等裁判所へ出訴(平成19年(行ケ)第10081号)し、その後、訂正審判(訂正2007-390059)を請求したところ、平成19年6月20日に、「『特許第3749833号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。』との部分を取り消す。」との決定がなされ、当該決定において、「訂正を認める。」との部分及び請求項4に係る発明についての審決は確定している旨判示された。

4.請求人より平成19年3月16日に本件の請求項4に係る発明についての特許に対し本件無効審判の請求がなされ、次いで、被請求人より平成19年6月8日に答弁書及び訂正請求書が提出され、これに対し、平成19年10月3日に請求人より弁駁書が提出された。

第2 請求人の主張
1.請求人は、本件の請求項4に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次のように主張するとともに、その証拠として、甲第1号証ないし甲第5号証及び甲第5号証の1を提出する。
[無効理由]
本件の請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証及び甲第5号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[証拠方法]
甲第1号証:特開平11-172654号公報
甲第2号証:特許第2913275号公報
甲第3号証:月刊誌「建築仕上技術」株式会社工文社、工学博士 西忠雄監修、昭和59年2月号(Vol.9 No.103)「技術レポート コンクリート外壁面接着増強剤エマルション塗布型工法によるモルタル塗装仕上げの経年変化実態調査報告」
甲第4号証:特開平1-126251号公報
甲第5号証:建設省技術評価書
甲第5号証の1:建設省技術評価書の「評価の詳細」の抜粋

2.また、請求人は、弁駁書とともに甲第3号証の1、甲第6号証を提出し、本件訂正請求は訂正の目的に適合していないから却下すべきである、仮に訂正が認められたとしても、訂正後の請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証及び甲第5号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、主張している。
[証拠方法]
甲第3号証の1:月刊誌「建築仕上技術」1989年1月号、「モルタル接着増強剤塗布工法の考察」の58頁、64頁、68頁
甲第6号証:株式会社アースストーンの配布したチラシ「非破壊補強工法 ゼム・ライナー更新工法」

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として次のように主張している。
(1)訂正後の請求項4に係る発明と甲第1号証?甲第5号証記載の発明とは技術分野が異なる。すなわち、訂正後の請求項4に係る発明は「補修」ではなく「改良」を目的としているのに対し、甲第1号証は「コンクリート製の水路」の補修を目的としたものであって、技術分野が異なる。また、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証は「コンクリート建築物の壁面の改修」に関する技術であって、「コンクリート製の水路」とは技術分野が異なる。また、甲第4号証は「セメント組成物」の発明であって、「コンクリート製の水路壁面改良工法」とは技術分野が異なる(答弁書5頁12?22行)。
(2)訂正後の請求項4に係る発明が具備する以下の構成は、甲第1号証ないし甲第5号証には記載されていない。
a)下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する。
b)下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する。
c)補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する(同6頁1?16行)。
(3)訂正後の請求項4に係る発明による「改良」後の水路は、耐用年数が長いという、甲第1号証記載の「補修」とは異なる格別の効果を有する(同6頁17行?8頁15行)。

第4 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正前の本件特許明細書及び請求項4に係る発明
上記第1 3.に記載したとおり平成19年(行ケ)第10081号の決定において、別件無効審判(無効2006-80039)の審決が、本件に係る特許第3749833号について、平成18年5月26日付けでなされた訂正を認めるとした部分は確定している旨判示されている。
したがって、訂正前の本件特許明細書、すなわち願書に添付された明細書は、上記平成18年5月26日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されたとおりのものであり、訂正前の請求項4に係る発明は、次の事項により特定されるものである。
「水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて下地塗工した塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネット上に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備することを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。」

(2)平成19年6月8日付け訂正請求による訂正の内容
平成19年6月8日付け訂正請求は、特許3749833号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正しようとするものであり、その内容は次のとおりのものと認める(訂正箇所には当審で下線を付した)。
(イ)訂正事項1
請求項4を次のとおりに訂正する。
「【請求項4】水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備することを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。」
(ロ)訂正事項2
段落【0014】を次のとおりに訂正する。
「【0014】
(3)水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備することを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。」
(ハ)訂正事項3
段落【0032】を次のとおりに訂正する。
「【0032】
また、本発明に係るコンクリート製の水路壁面改良工法は、前記した下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備している。」
(ニ)訂正事項4
段落【0079】を次のとおりに訂正する。
「【0079】
(4)請求項4記載の本発明では、水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備している。」
なお、訂正請求書に記載の段落【0079】に関する訂正の内容は、平成18年5月26日付けの訂正請求で訂正された内容と同じであり、この訂正については前述のとおりすでに確定している。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1について検討すると、訂正前の請求項4に記載の「下地塗工した塗工面」を「塗工した下地塗工面」とした訂正は、ガラス繊維製ネットを張設する面が「下地塗工面」であることを明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、訂正前の請求項4に記載の「ネット上」を「ネットの表面」とした訂正は、ガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程が、ネットの表面に接して設けられること、すなわち、下地塗工面に張設さられたネットが下地塗工面の上に表れており、仕上げ塗工がこのネットの表面に設けられることを明確にしたもの、あるいはネットが下地塗工面内に埋没することなく表面に露出して張設されるものに限定したといえるから、明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(2)訂正事項2ないし4について
上記訂正事項2ないし4は、上記訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4は、願書に添付された明細書の段落【0058】の「下地塗工工程にて塗工した下地塗工面5aにガラス繊維製ネット6を張設する」、同段落【0060】の「補強工程にて張設したガラス繊維製ネット6の表面に特殊モルタル5を塗工する」の記載に基づくものであり、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

なお、請求人は、平成19年10月3日付け弁駁書において、本件特許明細書には不明りょうな記載は存在しないから、本件訂正は、訂正の目的に適合しない旨主張しているが、上記のとおり、訂正事項1ないし4はいずれもは、下地塗工面、ガラス繊維製ネット、仕上塗工の位置関係をより明確にしたあるいは限定したものといえ、明りょうでない記載の釈明あるいは特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

3.むすび
したがって、上記訂正事項1ないし4は、特許法第134条の2第1項ただし書きに適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第5 本件発明
上記第4に示したとおり、本件に係る訂正が認められるから、本件の請求項4に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、上記第4 1.(2)イに示すとおりのものと認める。

第6 無効理由に対する判断
1.甲第1号証ないし甲第5号証及び甲第5号証の1の記載事項
(1)甲第1号証には、図面とともに次のことが記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンクリート水路における損傷箇所の補修工法に関する。」、
(1b)「【0004】本発明の目的とするところは、損傷が激しい水路や老朽化の進んだ古い水路においても、水路を新しく作り直すことなく、補修を施すだけで長期間に亘る使用を可能にするコンクリート水路の補修工法を提供することにある。」、
(1c)「【0007】…コンクリート水路の補修工法の全体説明をする。コンクリート水路をU字状に構成する底壁部3或いは側壁部4,4のいずれか一方又は双方に生じた損傷箇所Sに、補修部材2であるコンクリート或いはモルタルを施して水路の形状を整え、さらに上側から溶剤を混入しないポリウレタン樹脂塗料を、水路壁部の内面側に厚く塗布し、膜厚の厚い塗膜層1を形成する。」、
(1d)「【0008】補修部材2として用いるコンクリート或いはモルタルは、上記課題で示した諸原因により損なわれた水路壁部の形状を整えるために施されるもので、以下にその施工工程を示す。まず、既設コンクリート水路の損傷箇所Sから劣化したコンクリートを削り取り、補修部材2を水路の底壁部3又は側壁部4,4のいずれか又は双方に発生した損傷箇所Sに、損傷の状態に合わせて施し、水路壁部の形状を整える。…」、
(1e)「【0010】上記性質である溶剤を混入しないポリウレタン樹脂塗料を、補修部材2により形状を整えたコンクリート水路壁部に塗布し、塗膜層1を形成する施工工程を、以下に示していく。まず、コンクリート水路壁部の内面側に塗膜層1を固着させるための下地処理を施す必要があり、水路の底壁部3内面側又は側壁部4,4のいずれか一方又は双方の全域に亘り、高圧水により洗浄し、且つ両者の壁面を塗膜層1の固着を緊密にするために粗面に仕上げた後、エア-で壁面の水を吹き飛ばすと共に、壁面をバーナーで強制乾燥させる。さらに水路内に滞っているゴミや、洗浄の工程で生じたコンクリート片を十分に清掃して除去する。上記のように下地処理を施したコンクリート水路に、塗膜層1の固着をさらに緊密で強力なものにするため、下塗り工程を施す。下塗り工程として商品名ミゼロンシーラーU-60(三井金属塗料化学株式会社製造)を、1m^(2)あたり0.1?0.3kgの割合でエアレス塗装又は刷毛塗りにより、含浸させる程度に塗布する。尚、下塗り工程に用いるミゼロンシーラーU-60は、一液型ポリウレタン樹脂塗料で、組成は湿気硬化型ポリウレタン樹脂と芳香族系炭化水素系溶剤とエステル系溶剤を適応配合したものである。下塗り工程の後に、上塗り工程としてミゼロンS-100/A-1000を専用塗装機により、水路の側壁部に塗布する場合は膜厚が1.0cm厚で行い、また底壁部に塗布する場合は、膜厚が2.0cm厚になるように吹き付けて塗布する。」
(1f)「【0013】第2実施形態の水路の補修工法は、図2に示すように、まず側壁部4,4内面側における損傷箇所Sに、接着剤を塗布した後に補修部材2としてモルタルを施し、壁面が平面を成す側壁部4,4を形成する。次に養生を行い、側壁部4,4内面側及び側壁部上端面5,5の全域に、ミゼロンを前記した塗膜層1の施工工程に則って塗布し、塗膜層1を形成する。…
【0014】第3実施形態の水路の補修工法は、図3で示すように、側壁部4,4の一部分が欠けた状態の損傷箇所Sに型枠をあてて補修部材2を施し、形状を整えた側壁部4,4を形成する(モルタルを施す場合はモルタル専用の接着剤を使用する)。次に養生後、損傷箇所Sと補修部材2との接着面を完全に覆うように、側壁部4,4の内面側及び側壁部上端面5,5、側壁部4,4外面側9における地面Nからの露出部分の全域に亘り、ミゼロンを前記した塗膜層1の施工方法に則って塗布し、塗膜層1を形成する。
【0015】第4実施形態の水路の補修工法は、図4で示すように、水路壁部の内面側の至るところに生じている損傷箇所Sに補修部材2を施し、水路壁部内面側の全域に亘って平面を成す形状にする。次に養生を行った後、水路壁部の内面側全域及び両側の側壁部4,4の上端面5,5に亘り、ミゼロンを前記した塗膜層1の施工方法に則って塗布し、塗膜層1を形成する。」、
(1g)「【0016】
【発明の効果】本発明による効果は、損傷箇所に補修部材を施して水路の形状を整え、さらに上側に溶剤を混入しないポリウレタン樹脂塗料を塗布して形成した膜厚の厚い塗膜層によって、水路壁部において外界からの水の浸透を防ぐことができ、それに伴い水路壁部の伸縮を最小限に抑えられるために、補修部材であるコンクリート或いはモルタルの亀裂や剥離を防ぐことが可能である。また損傷が激しく、且つ老朽化したコンクリート水路でも、前記した補修工法を施せば、既設の水路を取り壊して新しい水路を作り直すことなく、補修後も長期間に亘る使用に耐え得るコンクリート水路を提供することが可能である。」。

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「コンクリート水路において、水路の底壁部3又は側壁部4,4に発生した損傷箇所Sから劣化したコンクリートを削り取る工程と、損傷箇所Sに、モルタルからなる補修部材2を施す工程と、溶剤を混入しないポリウレタン樹脂塗料の塗膜層1を塗布する工程を具備すると共に、補修部材2を施す工程では、損傷箇所Sに接着剤を塗布した後に上記モルタルを施すコンクリート水路の補修工法。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)

(2)甲第2号証には、図面とともに次のことが記載されている。
(2a)「【請求項1】無機質硬化物の改修部分に、イソシアネート基を0.5?10重量%及び加水分解性シラン基を(珪素原子を基準として)0.4?7.5重量%含有して分子量が3000?50000であるポリマーを主成分とする一液硬化型樹脂組成物、及び/又は透湿性ポリマーセメントペーストを塗着した後、欠損が生じている部分には多孔質骨材中に防錆剤又はアルカリ金属塩が内蔵され、且つその表面がセメントで被覆されている骨材を配合してなる下塗り用モルタル組成物を充填し、・・・その後、改修部分全面に合成樹脂を混入した中塗り用モルタル組成物を塗着すると共に無機質硬化物を補強する網材を点付けして押圧することにより網材を埋設した後、透湿性を有する上塗り用モルタル組成物を塗着するようにしたことを特徴とするハイブリッド外壁改修工法。」、
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄筋コンクリート造建築物及び同構造部材に適用できる改修工法であって、現場打設鉄筋コンクリート造は勿論、プレキャストコンクリート造、ブロック造、石造、レンガ造、ALC造等の建築構造の躯体、仕上げの劣化に対して適用できるハイブリッド外壁改修工法に関する。さらに詳しくは、構造躯体のひび割れ、中性化の進行、鉄筋腐食、表面劣化等の補修、仕上げの剥落防止、新しい表面仕上げ層の増設による躯体保護性能の強化を同時に実現できるハイブリッド外壁改修工法を提供するものである。」、
(2c)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記に鑑み提案されたもので、無機質硬化物の改修部分に、イソシアネート基を0.5?10重量%及び加水分解性シラン基を(珪素原子を基準として)0.4?7.5重量%含有して分子量が3000?50000であるポリマーを主成分とする一液硬化型樹脂組成物、及び/又は透湿性ポリマーセメントペーストを塗着した後、欠損が生じている部分には(マル1)?(マル3)(原文は丸つき数字、以下同様)に示す下塗り用モルタル組成物を充填し、・・・その後、改修部分全面に合成樹脂を混入した中塗り用モルタル組成物を塗着すると共に無機質硬化物を補強する網材を点付けして押圧することにより網材を埋設した後、以下の(マル4)?(マル8)に示す透湿性を有する上塗り用モルタル組成物を塗着するようにしたことを特徴とするハイブリッド外壁改修工法に関するものである。
【0006】前記下塗り用モルタル組成物としては以下のものを用いることができる。
(マル1)多孔質骨材中に防錆剤又はアルカリ金属塩が内蔵され、且つその表面がセメントで被覆されている骨材を配合してなるモルタル組成物。
(マル2)粒度0.06?5mm,気乾嵩比重0.1?1.5,吸水率15?500wt%の多孔質骨材を配合してなるモルタル組成物。
(マル3)粒度0.06?5mm,気乾嵩比重0.1?1.5,吸水率15?500wt%の多孔質骨材中に防錆剤又はアルカリ金属塩が内蔵され、且つその表面がセメントで被覆されている骨材を配合してなるモルタル組成物。
前記上塗り用モルタル組成物としては以下のもの、或いは以下のものを適宜に組み合わせて用いることができる。
(マル4)合成樹脂を混入したモルタル組成物。
(マル5)SiO_(2)を主成分とする無機質防水剤が含有されているモルタル組成物。
(マル6)(=(マル2))…
(マル7)(=(マル1))…
(マル8)(=(マル3))…」、
(2d)「【0007】
【発明の実施の形態】前記下塗りモルタル組成物、上塗りモルタル組成物における多孔質骨材とは、微細孔を有し、吸水性能を有するものであれば良く、特に材質及び性状を限定するものではない。したがって、無機質骨材に限らず、例えば、エチレン-酢酸ビニル発泡骨材のような有機質発泡骨材などを前記多孔質骨材として使用しても良い。…」、
(2e)「【0013】また、前記上塗りモルタル組成物における合成樹脂を混入したモルタル組成物は、アクリル系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合系エマルジョン、エチレン,酢酸ビニル,スチレン系,アクリル酸エステル系からなる多元系合成樹脂エマルジョン、SBRラテックス、エポキシ樹脂エマルジョン等をモルタル組成物中に混合して透湿性を高めたものであり、前記の防錆剤やアルカリ金属塩を配合したものでも良い。」、
(2f)「【0016】…また、モルタルの接着性を向上安定させるために、アクリル系、SBR、EVA系等のセメント混和用ポリマーディスパージョンまたはEVA系、酢酸ビニル系、アクリル系等の再乳化系粉末樹脂を透湿性が低下しない程度の範囲において使用しても良い。」、
(2g)「【0017】本発明では、まず一液硬化型樹脂組成物や透湿性ポリマーセメントペーストを塗着するが、…この一液硬化型樹脂組成物は低分子量であり且つ低粘度の溶液であるため、無機質硬化物の微細な空隙への浸透性が優れている。…したがって、上記一液硬化型樹脂組成物は、老化の著しい無機質硬化物の改修部分に塗布した場合、その表面の微細な空隙に深く浸透して極めて高い接着性を示す。…一方、透湿性ポリマーセメントペーストは、アクリル系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合系エマルジョン、エチレン,酢酸ビニル,スチレン系,アクリル酸エステル系からなる多元系合成樹脂エマルジョン、SBRラテックス、エポキシ樹脂エマルジョン等をセメントペーストに混合して透湿性を高めたものであり、前記一液硬化型樹脂組成物と同様の効果を示す。…」、
(2h)「【0020】さらに、網材の敷設施工について説明する。前記のように中塗り用モルタル組成物を塗着し、網材を金鏝等で押圧して網材を埋設する。上記中塗り用モルタル組成物は、アクリル系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合系エマルジョン、エチレン,酢酸ビニル,スチレン系,アクリル酸エステル系からなる多元系合成樹脂エマルジョン、SBRラテックス、エポキシ樹脂エマルジョン等を混合したものであり、前記の防錆剤やアルカリ金属塩を配合したものでも良い。このように網材を敷設することにより、その内面側の無機質硬化物(層)の板状性を蘇らせることができる。そして、集成板的機能が生じるので、自然環境下における温度差によるムービング及び強風時に生じる負圧等による孕み現象が抑制され、無機質硬化物(層)の剥落防止を図ることができる。」、
(2i)「【0023】このような本発明により改修された外壁は、改修部分の最下層から最上層に亙る各層においてそれぞれ優れた透湿効果、防錆効果を有するので、それら各層の相乗作用によって中性化の進行、鉄筋腐食、表面劣化等に対する防止効果が著しく高いものとなる。即ち、従来には、極めて狭い部分的な処方が行われるに過ぎず、その効果も極めて狭い範囲に限定され、しかも長期間効果が持続するものではなかったが、本発明では、欠損部分や浮き発生部分にはそれぞれに応じた補修を施し、前記のように透湿効果、防錆効果を広い範囲において長期間持続できるもので有り、それに加えて剥落防止、躯体保護性能の強化をも行う同時に行うことができるものである。」、
(2j)「【0032】試験2;ポリマーセメントモルタルの基本物性
(1)試験体の作製及び試験方法
表5に示す配合組成で各ポリマーセメントモルタルを作製し、透湿性を除く各試験項目についてはJIS A 6916に準じ、透湿性試験については日本建築仕上学会B法に準じて試験を行った。…
【表5】

」、
(2k)「【0035】試験3;ポリマーセメントモルタルの既存仕上げ材に対する付着性
(1)試験用基板
試験に用いるコンクリート基板は、水セメント比60%の建築における標準的な配合(前記表1)とし、コンクリートを練り混ぜた後、合板型枠…に打設し、…養生したものを試験用基板とした。
【0036】(2)試験体の作製
1-1)タイルの貼り付け
前記試験用基板に表7に示すタイル貼り付け用モルタルを用いてタイル〔磁器質施ゆう外装タイル(50二丁)つやあり〕を貼り付け、恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)中で材令4週まで養生して下地板とした。

【0037】1-2)建築用仕上げ塗材の塗布
前記試験用基板に各種仕上げ塗材(外装薄塗材E,複層塗材E,複層塗材RE)の標準塗布量(1.8kg/m^(2),1.5kg/m^(2) ,2.3kg/m^(2) )を仕様により塗布し、恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)で材令4週まで養生し、下地板とした。
【0038】2)ポリマーセメントの塗布
前記各下地板に前記配合例1のポリマーセメントペーストの標準塗布量(0.45kg/m^(2) )を塗布し、恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)で材令2週まで養生して試験体とした。また、表1に示すコンクリート板に、昭和高分子株式会社製一液硬化型アクリル樹脂『EX-1500』を下塗り塗着したものの上に前記配合例1のポリマーセメントペーストを塗布したものも同様に試験した。比較のため、前記比較配合例1のポリマーセメントペーストを用いたものも同様に試験した。
【0039】(3)試験方法
前記試験体をオートグラフAG-5000C(島津製作所株式会社製)にセットし、クロスヘッド速度1mm/minで引っ張り荷重を加え、最大荷重を求め、付着強さを測定した。3ケの平均値で示す。
【0040】(4)試験結果
結果は表8に示した。
【表8】

」、
(2l)「【0041】試験4;ガラス繊維ネットの既存モルタルの補強効果の確認
(1)試験用基板
試験に用いるモルタル板は、既調合モルタル…を練り混ぜた後、…養生したものを試験用基板とした。
【0042】(2)試験体の作製(n=3)
前記試験用基板の合板型枠面側に仕様に基づき、前記配合例2のポリマーセメントモルタルでガラス繊維ネット等(内容は表9に合わせて示した)を貼り付け、恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)で材令10日まで養生して試験体とした。
【0043】(3)試験方法
前記試験体を図4に示すようにオートグラフ(島津AG-5000C)にセットし、…、最大荷重、ひび割れ発生時の荷重及び試験開始時から試験終了時(フルスケールの0.5%荷重まで)までのエネルギー値を求めた。また、ガラス繊維ネット等の補強がないものと比較した。
【0044】(4)試験結果
結果は表9に示した。
【表9】

」、
(2m)「【0045】試験5;複合改修工法の耐久性試験
(1)試験体の作製(N=1,n=5)
前記試験3において説明した方法と同様に下地板を作製し、養生終了後、前記配合例1のポリマーセメントペーストを塗布した後、前記配合例2のポリマーセメントモルタル(中塗り用モルタル組成物)でガラス繊維ネット(日本電気硝子株式会社製『耐アルカリ性ガラス繊維TD5×5』)を貼り付け、恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)で材令4週まで養生して試験体とした。同様に前記比較配合例1のポリマーセメントペーストを塗布した後、前記比較配合例2のポリマーセメントモルタルを塗り、平滑として比較用とした。
【0046】(2)熱冷繰り返し試験
表面温度が70℃になるように105分間赤外線ランプを照射し、その後15分間散水することを1サイクルとして300サイクル継続した。但し、水温は15±5℃、試験体1体当たりの散水量は毎分6リットルとした。300サイクル終了した後、試験体を恒温恒湿室(温度20℃±2℃、湿度65%±10%)に24時間放置した後に試験を行なった。
【0047】(3)試験結果
熱冷繰り返し試験の終了した試験体をオートグラフ(島津AG-5000C)にセットし、クロスヘッド速度0.5mm/minで1点曲げ荷重を加え、最大荷重を求め、付着強さを測定した。また、外観を目視により観察した。結果は表10に示した。
【表10】

」、
(2n)「【0048】試験6;複合改修工法の現場施工実験
外壁薄塗材Eで仕上げてあるコンクリート構築物…で改修工事を実施した。まず、壁面を高圧水洗し、鉄筋の爆裂部分は、はつり取り、鉄筋の錆をワイヤーブラシで除去した。その後、前記配合例1のポリマーセメントペースト(透湿性ポリマーセメントペースト)に防錆剤を混入したものを塗り、防錆処理を施した。その後、配合例3のポリマーセメントモルタル(下塗り用モルタル組成物)を欠損部に塗り、補修した。この壁面を約50cm間隔で直径20cm程度のディスクサンダーで外装薄塗材Eの仕上げ部分を円形に剥がし、躯体内部の水分が抜け易くした。…その後、前記配合例2のポリマーセメントモルタル(中塗り用モルタル組成物)を全体に塗り、直ちにガラス繊維ネット(日本電気硝子株式会社製『耐アルカリ性ガラス繊維TD5×5』)を貼り、こてですり込みポリマーセメントモルタルと馴染ませた。翌日、再度配合例2のポリマーセメントモルタル(中塗り用モルタル組成物)を全体に塗り、平滑な下地とした。その後、2週間の養生期間をとり、高透湿性無機質仕上材(富士川建材工業株式会社製)で仕上げた。」。

試験6には、欠損が生じている部分に充填する下塗り用モルタル組成物として合成樹脂を混入した配合例3のモルタル組成物を塗着することが記載されているから、これらの記載によれば、甲第2号証には次の発明が記載されていると認められる。
「コンクリート構築物の壁面の鉄筋の爆裂部分をはつり取り、鉄筋の錆を除去する工程、一液硬化型樹脂組成物、及び/又は透湿性ポリマーセメントペーストを塗着する工程、欠損が生じている部分に、合成樹脂を混入しアルカリ金属塩及び骨材を配合してなる下塗り用モルタル組成物を充填する工程、全面に、合成樹脂を混入した中塗り用モルタル組成物を塗着するとともにガラス繊維ネットを貼りつけ、押圧してネットを埋設する工程、及び透湿性を有し合成樹脂を混入した上塗り用モルタル組成物を塗着する工程とを具備するコンクリート建築物壁面の改修工法。」(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)

(3)甲第3号証には、次のことが記載されている。
(3a)「1.まえがき
本調査は、鉄筋コンクリート建築物の外壁モルタル仕上げに対し、コンクリート面の接着増強剤エマルション塗布型工法(NSハイフレックスHF-1000(日本化成(株)製品を使用)で施工した建築物について、その経年変化追跡調査を実施し、その実態調査結果を報告する。」(2頁目左欄1?6行)、
(3b)「3.調査項目
建築物条件
(1)所在地=大阪市内のRC造り10階建て
(2)モルタル経時年数=●モルタル施工は「NSハイフレックスHF-1000」の3倍液塗布型工法で、1973年10月に行われ、本追跡調査は1983年6月21日行われた。約10年の経過である。●モルタルは3層仕上げ(25mm塗厚)。
(3)外装仕上げ=新築時は複層模様吹付材(Eタイプ)仕上げで、1980年4月に弾性吹付材仕上げで改装され、現在に至る。」(2頁目左欄下から9行?右欄1行)、
(3c)「6.考察
(1)モルタル経年後の接着力測定追跡調査結果では、コンクリート層破壊およびモルタル塗継ぎ面からの破断で、コンクリート界面からの破断はなく、非常に良好な接着状態であった。塗布工法によるモルタル塗装仕上げ10年経過後の今回の実態調査では、コンクリートと塗継ぎモルタルが一体であることが確認できた。

(5)試験片Aを塩酸処理剥離させた「NSハイフレックスHF-1000」のポリマーフィルムは、完全な連続皮膜ではなく網の目のような皮膜であることが目視で観察できた。「NSハイフレックスHF-1000」のポリマーフィルムは透過性があるので、同材料をコンクリート面に塗布するとガラス板面に塗布するような場合と異なり、コンクリート面の凹凸やコンクリートのポーラスな部分に不均一で欠陥部をもつフィルムが生成され、さらに打継ぎモルタルを金鏝で加圧し塗りつける時に、薄いポリマーフィルムはセメントや砂の粒子により破壊され、最終的にポリマーフィルは網目構造となるのであろう。…」(8頁目左欄4行?9頁目左欄5行)、
(3d)「7.別件の塗布工法による外壁リシン吹付け仕上げの経年(11年)変化実態調査報告
(1)調査項目
建築物条件
a.所在地=名古屋市内RC造6階建て
b.モルタル仕様
●NSハイフレックスHF-1000=1:水=2の3倍液塗布…
●モルタル配合 下塗-1:2プレーン…
上塗-1:3プレーン…
●仕上げ アクリルリシン吹付仕上げ
●施工年月 1971年4月
c.追跡調査 1982年7月14日
d.経時年数 11年3ヶ月…」(9頁目右欄1?15行)、
(3e)「8.まとめ
外壁塗布型工法の打継ぎモルタル施工後10年および11年経過した実際の建築物について追跡調査を実施した結果、「NSハイフレックスHF-1000」のEVAポリマーはコンクリート、モルタル中に長期にわたり存在しても劣化は認められず、ポリマーフィルムが網目構造であることから、下地コンクリートと打継ぎモルタルの接着は、ポリマーフィルムと打継ぎモルタルのセメント硬化物による有機と無機が一体となった相乗効果から長期に安定した接着性能が発揮していることが、今回2件の実際の施工物件で確認できたことを報告する。」(10頁目右欄4?14行)。
(3f)3頁目左下の「モルタル接着力測定断面図」には、コンクリート面にNSハイフレックスHF1000を塗布し、その上からモルタルを施工した態様が示されている。

(6)甲第4号証には、次のことが記載されている。
(4a)「<従来の技術>
セメントコンクリート構造物は古くから半永久的な耐久性を持つものとして土木、建築分野で広く使用されているが、近年コンクリート構築物の中性化、クラック、骨材による塩害、アルカリ骨材反応などから早期にコンクリートが劣化する問題がクローズアップされている。これらの問題に対して耐久性向上保護材、改修材、補修材がいろいろ検討されているが、それらの一つとしてコンクリートのクラックに追随できるポリマーセメントモルタルが期待されている。従来一般に公知のポリマーセメントモルタルは接着性改良を主体に曲げ、引張強度および水密性、気密性、摩耗性などを向上させるため、セメントモルタルに合成樹脂エマルジョン合成ゴムラテックスなどを混入したものであり、中でも合成樹脂エマルジョンのうちエチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョンがセメントのなじみにすぐれ、さらに各種下地に対する接着性がすぐれることから大量に使用されている。…
特公昭47-33054号公報では、酢酸ビニル成分の含量60?90重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョンがセメントに対し樹脂固形分として2?40重量%の割合で混入せられてなる改質されたセメント製品が提示されている。」(1頁右下欄2行?2頁左上欄7行)。

(5)甲第5号証及び甲第5号証の1には次の事項が記載されている。
甲第5号証には、甲第5号証の1の「評価の詳細」は、平成9年6月3日付けの評価書(建技評第96105号)に添付されたものであることが記載されている。
甲第5号証の1には、次の事項が記載されている。


(112頁)、

(114頁上)

(6)その他の証拠の記載事項
甲第3号証の1には、次のことが記載されている。
(31a)「モルタルが剥離(肌わかれ、浮き)するという問題から、接着を改良する目的に合成樹脂エマルションをコンクリート躰体にあらかじめ塗布し、次いでモルタルを塗りつける、いわゆる塗布工法が開発された。…使用されるエマルションは塗布型モルタル用エマルション、モルタル接着増強剤、モルタル接着補強剤、モルタルプライマーなどと呼ばれている。…昭和44年ごろからエチレン-酢酸ビニル(EVA:エバ)が出現すると、モルタルに混入できることおよび塗布におけるモルタルの追かけ塗りもできることなどから市場の多くを占め、さらに使用量が拡大していった。」(58頁本文の左欄6行?右欄9行)
(31b)「2.6.2使用上の注意 (NSハイフレックスHF-1000の場合) …
モルタルの塗りつけは、塗布したエマルションが半乾き以上になってからとし、塗布後長期間経時したものは、表面のほこり等を洗い落とすことを目的に軽く水洗いすること。」(68頁左欄16?28行)。

甲第6号証には、「ゼム・ライナー更新工法」とのタイトルとともに、「用途 用排水路の更新 コンクリート構造物の補強・補修 ガスステーション・ガソリンスタンド等磨耗の激しいコンクリート補強」と記載されている。

2.対比、判断
本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比する。
甲第1号証記載の発明の「コンクリート水路」は、本件発明の「コンクリート製の水路」に相当し、以下同様に、「側壁部」は「水路壁面」に、「損傷箇所S」は「老朽化部分」に、「コンクリートを削り取る工程」は「下地処理工程」に相当する。
甲第1号証記載の発明の「モルタルからなる補修部材2を施す工程及び、溶剤を混入しないポリウレタン樹脂塗料の塗膜層1を塗布する工程塗膜」と、本件発明の「酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程」とは、「モルタルを塗工する工程を含む塗工工程」である点で共通する。
また、甲第1号証記載の発明の「補修工法」は、コンクリート製の水路の壁面に施されるものであり、本件発明の「壁面改良工法」とは、「壁面の修理工法」である点で共通する。
さらに、甲第1号証記載の発明の「コンクリート水路」に、水圧と水流が存在することは自明な事項であり、甲第1号証記載の発明は、劣化したコンクリートを削り取るのであるから、その結果、中心部の非老朽化部分が核として残ることも、自明な事項である。
してみると、両者は、
「水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に接着剤を塗布し、モルタルを塗工する工程を含む塗工工程を具備するコンクリート製の水路壁面の修理工法。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
接着剤が本件発明は「樹脂系水性接着剤」であり、「樹脂系水性接着剤が乾燥した後に」モルタルを塗工するのに対して、甲第1号証記載の発明は、接着剤の種類が限定されておらず、接着剤が乾燥した後にモルタルを塗工するものであるか不明な点。
[相違点2]
モルタルを塗工する工程を含む塗工工程が、本件発明では、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備するのに対し、甲第1号証記載の発明は、ガラス繊維製ネットを用いた補強工程やモルタルを塗工する仕上塗工工程を具備しておらず、モルタルを塗工する工程の後に、ポリウレタン樹脂塗料の塗膜層を塗布する工程を具備している点。
[相違点3]
「壁面の修理工法」が、本件発明は「壁面改良工法」であるのに対し、甲第1号証記載の発明は「補修工法」である点。

上記の相違点につき、以下検討する。
(1)相違点1について検討する。
本件特許明細書の段落【0041】には、本件発明の樹脂系水性接着剤として、日本化成(株)製の「エヌセスハフフレックス」(甲第3号証を参酌すると、商品名(「エヌエスハイフレックス」の誤記と認められる。)を使用することができると記載されており、かつまた、甲第3号証によれば、昭和59年頃には、上記エヌエスハイフレックスが、コンクリート建築物の外壁モルタル仕上げのための接着剤として一般的に知られていたものといえる。
してみると、甲第1号証記載の発明のモルタルを塗工する際に使用される接着剤として、甲第3号証に記載されているような従来より周知の樹脂系水性接着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、接着剤を乾燥後、被接着物を配置することで強固な接着力が得られることは本件の出願前周知であり、甲第3号証の1にも「エヌエスハイフレックス」接着剤を塗布後半乾燥状態でモルタルを塗工することが記載されており(31b)、「樹脂系水性接着剤」の乾燥後にモルタルを塗工することは適宜なしうることである。

(2)相違点2について検討する。
a.甲第2号証記載の発明は、本件発明の「コンクリート製の水路壁面」と同様「コンクリート構造物」に相当する「コンクリート建築物及び構造部材」の壁面に適用する改修方法、すなわち壁面を修理する工法である。
そして、甲第2号証記載の発明の「コンクリート構築物及び構造部材の壁面の鉄筋の爆裂部分をはつり取り、鉄筋の錆を除去する工程」は、本件発明の「下地処理工程」に相当する。
甲第2号証記載の発明の「欠損部に下塗り用モルタル組成物を充填する工程、及び全面に、合成樹脂を混入しガラス繊維が配合されていない中塗り用モルタル組成物を塗着する工程」は、ガラス繊維ネットを貼り付ける前に行われる工程であるから、本件発明の「下地塗工工程」に相当する。
甲第2号証記載の発明の「ガラス繊維ネットを貼りつけ、押圧してネットを埋設する工程」は、ガラス繊維ネットにより補強するための工程であるから本件発明の「補強工工程」に相当し、甲第2号証記載の発明の「上塗り用モルタル組成物を塗着する工程」は、本件発明の「仕上げ塗工工程」に相当する。
また、甲第2号証記載の発明の「一液硬化型樹脂組成物、及び/又は透湿性ポリマーセメントペースト」はモルタルを接着するための「樹脂系接着剤」ということができる。
さらに、甲第2号証記載の発明において、合成樹脂を混入した「下塗り用モルタル組成物」、「中塗り用モルタル組成物」、及び「上塗り用モルタル組成物」として具体的に記載されている組成物は、いずれもガラス繊維が配合されていないモルタル組成物である。
そうすると、甲第2号証記載の発明は、「下地処理後、樹脂系接着剤を塗布する工程と、合成樹脂を混入しガラス繊維が配合されていないモルタル組成物を塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維ネットを貼りつけ、押圧してネットを埋設する補強工工程と、ガラス繊維が配合されていない上塗り用モルタル組成物を塗着する仕上げ塗工工程とを具備するコンクリート建築物壁面の修理工法。」といえ、これにより防錆効果を長期間持続でき、付着強度が高く、ひび割れ荷重が大きく、剥落防止、保護性能の強化を図ることができるものである(摘記事項(2b)、(2i)、(2k)?(2m))。
また、甲第2号証には、中塗り用モルタル組成物、上塗り用モルタル組成物に混入する合成樹脂として「エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン」が例示されており、また、甲第4号証には、本件発明の「コンクリート製の水路壁面」と同様にコンクリート構造物の仕上げ材に利用できるモルタル(セメント組成物)に関して、曲げ、引張強度および水密性、気密性、摩耗性などを向上させるため、セメントモルタルに合成樹脂エマルジョン合成ゴムラテックスなどを混入したものが、一般に公知であること、中でも合成樹脂エマルジョンのうちエチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョンがセメントのなじみにすぐれ、さらに各種下地に対する接着性がすぐれることから大量に使用されていることが記載されており(摘記事項(4b))、コンクリート構造物の仕上げ材に用いるモルタルに混入する合成樹脂として「酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン」は本件出願前周知であったといえる。
そして、甲第1号証記載の発明の「コンクリート製の水路壁面」においても、防錆効果を長期間持続でき、付着強度、水密性等がすぐれていることは当然求められるものであるから、これらを向上させるために、甲第1号証記載の発明の「モルタルを塗工する工程とポリウレタン樹脂塗料の塗膜層を塗布する工程」に代えて、甲第2号証記載の発明および上記周知技術を適用して「酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する工程と、同工程後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていない上塗り用モルタル組成物を塗着する仕上げ塗工工程」を採用することは、当業者が容易になしうることである。

b.ところで、甲第2号証記載の発明は、「下地塗工工程にて塗工した下地塗工面(中塗り用モルタル組成物を塗着した面)にガラス繊維ネットを貼りつけ、押圧してネットを埋設し」その後「仕上げ用(上塗り用)モルタル組成物を塗着」するものであるのに対し、本件発明は「下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維ネットを張設し、ガラス繊維製ネットの表面に仕上げ用モルタルを塗工」するものである。
この点について検討すると、甲第2号証の試験3に、養生したモルタル組成物の面にガラス繊維ネットを張設し、ガラス繊維製ネットの表面にモルタルを塗工した場合にも強度が向上することが示されている(摘記事項(2k))。また、試験5では、配合例1のポリマーセメントペーストを塗布した後、配合例2のポリマーセメントモルタルでガラス繊維ネットを貼り付けており(摘記事項(2m))、ここで、ガラス繊維ネットは配合例2のポリマーセメントモルタルにより貼り付けられているから、配合例1のポリマーセメント中に完全に埋め込まれることなく、ガラス繊維ネットの表面に配合例2のポリマーセメントモルタルが塗布されていることは明らかである。そして、付着強さはネットのないものよりすぐれていることが示されているから(【表10】)、ガラス繊維ネットは、下地塗工層(中塗り用モルタル組成物)中に完全に埋設されていなければ強度が得られないものでないことは明らかである。
そうすると、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の発明を適用してガラス繊維ネットを張設する際、下地塗工面に、ネットの表面が露出するようにガラス繊維ネットを張設し、ガラス繊維製ネットの表面に上塗り用モルタルを塗工することは当業者が容易になしうることである。
したがって、本件発明の相違点2に係る事項は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証及び甲第4号証記載の発明を適用して当業者が容易になしうることである。

c.なお、被請求人は、甲第2号証は「コンクリート建築物の壁面の改修」に関する技術であって、「コンクリート製の水路」とは技術分野が異なる、また、甲第4号証は「セメント組成物」の発明であって、「コンクリート製の水路壁面改良工法」とは技術分野が異なる旨、主張している。
しかし、甲第2号証記載の発明は、上記のとおりコンクリート製の構造躯体の鉄筋腐食防止、剥落防止、躯体保護性能の強化を実現できるものであり、このような甲第2号証記載の発明の作用効果は、建築物の壁面に限らず、コンクリート製の構造物であれば同じように奏されることは容易に予測でき、甲第2号証記載の発明をコンクリート製の水路壁面に適用することに何ら困難性はない。
また、甲第4号証記載の「セメント組成物」について甲第4号証には、「コンクリート構造物の耐久性向上材として仕上材、防水材、下地調整材、接着剤等に利用できるセメント組成物」(摘記事項(4a))と記載されており、甲第4号証記載の「セメント組成物」を、コンクリート製の水路壁面に適用することにも何ら困難性はない。

(3)相違点3について
甲第2号証には、上記(2)bに説示したとおり、合成樹脂を混入したモルタルを使用しガラス繊維ネットを貼り付けることで防錆効果を長期間持続でき、付着強度が高く、ひび割れ荷重が大きく、剥落防止、保護性能を強化できることが示され、甲第3号証には、水性接着剤を塗布することにより、長期的に安定な接着力が得られることが記載され、甲第4号証には、合成樹脂を混入したモルタルを塗工することにより、曲げ、引張強度および水密性、気密性、摩耗性などが向上することが記載されており、相違点3に係る事項は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証ないし甲第4号証記載の発明を適用して、相違点1、2に係る事項を備えた修理方法を採用した際の作用効果を「改良」と表現したにすぎない。

そして、コンクリート製の水路壁面を長期間耐久性のあるものとすることができるとの本件発明の作用効果は、甲第1号証ないし甲第4号証記載の発明から予測できる程度のものである。
したがって、本件発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項4に係る発明は、審判請求人の提出した甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンクリート製の水路壁面改良工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に、セメント、砂、ガラス繊維、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、減水材、消泡材、及び、水を配合してなる高弾性特殊モルタルを塗工する塗工工程とを具備すると共に、
塗工工程では、非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に上記高弾性特殊モルタルを塗工して、同高弾性特殊モルタルに、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力と、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力とを発現させることを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。
【請求項2】
塗工工程にて塗工した塗工面に補強用炭素繊維シートを貼付し、同補強用炭素繊維シートの表面に高弾性特殊モルタルを塗工する補強工程を具備することを特徴とする請求項1記載のコンクリート製の水路壁面改良工法。
【請求項3】
塗工工程にて塗工した塗工面に、薄肉板状の石材を同塗工面の略全面にわたって張設する補強工程を具備することを特徴とする請求項1記載のコンクリート製の水路壁面改良工法。
【請求項4】
水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備することを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一定の流量を確保しなければならないコンクリート製の水路の改修を、内部流量を減少させることなく行うことが可能なコンクリート製の水路壁面改良工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、用水路や排水路等の水路の一形態として、コンクリート製の水路があり、同水路の表面は、水圧や水流を受けているため、劣化等した表面をモルタルにより修復しても、水圧や水流がモルタルの離脱作用を高め、2?3年でモルタルが離脱しているのが実態である。
【0003】
従って、かかるモルタルでは修復が困難な上に修復費用も嵩むので、老朽化や劣化等により水路としての機能を十分に果たさなくなった場合には、やむを得ず水路を全面的に破壊して、新たに水路を構築している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように水路を破壊して、新たに水路を構築する場合には、次のような課題を有している。
【0005】
▲1▼工事費が高くついている。
【0006】
▲2▼水路の破壊作業に長時間を要し、かつ、その破壊作業中に騒音が発生して環境問題に発展することがある。
【0007】
▲3▼水路の破壊作業により、建設廃材が多く排出され、この場合も環境問題に発展することがある。
【0008】
▲4▼水路の破壊作業時に、大型建設機械を必要とする場合があり、この場合に、大規模な仮設道路が必要となる場合がある。
【0009】
▲5▼水路の破壊作業に、建設機械を導入することができない作業環境においては、人力により作業を行わなければならず、このような場合には多大な労力を要する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に、セメント、砂、ガラス繊維、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、減水材、消泡材、及び、水を配合してなる高弾性特殊モルタルを塗工する塗工工程とを具備すると共に、塗工工程では、非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に上記高弾性特殊モルタルを塗工して、同高弾性特殊モルタルに、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力と、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力とを発現させることを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、次の構成にも特徴を有する。
【0012】
(1)塗工工程にて塗工した塗工面に補強用炭素繊維シートを貼付し、同補強用炭素繊維シートの表面に高弾性特殊モルタルを塗工する補強工程を具備することを特徴とする請求項1記載のコンクリート製の水路壁面改良工法。
【0013】
(2)塗工工程にて塗工した塗工面に、薄肉板状の石材を同塗工面の略全面にわたって張設する補強工程を具備することを特徴とする請求項1記載のコンクリート製の水路壁面改良工法。
【0014】
(3)水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備することを特徴とするコンクリート製の水路壁面改良工法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
すなわち、本発明に係るコンクリート製の水路壁面改良工法は、水圧と水流を受ける表面(壁面)の補修用のモルタルの付着力を高めるために、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力を有し、かつ、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力を有する高弾性特殊モルタルを塗工する塗工工程とを具備している。
【0018】
このようにして、水路を全て破壊することなく、水路壁面の老朽化部分を除去すると共に、中心部の未だ使用に耐え得る非老朽化部分は核として残して下地処理した後に、その下地処理した部分に高弾性特殊モルタルを塗工することにより水路壁面を改良するようにしている。
【0019】
この際、高弾性特殊モルタルは、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力を有し、かつ、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力を有するため、改良した水路の耐用年数を、改良前と同等若しくはそれ以上に延長することができる。
【0020】
そして、塗工工程にて塗工した塗工面に補強用炭素繊維シートを貼付し、同補強用炭素繊維シートの表面に高弾性特殊モルタルを塗工する補強工程を具備している。
【0021】
このようにして、強度が不足する場合には、補強工程を追加することにより、簡単かつ確実に強度を確保することができる。
【0022】
また、塗工工程にて塗工した塗工面に、薄肉板状の石材を同塗工面の略全面にわたって張設する補強工程を具備させることもできる。
【0023】
このようにして、強度が不足する場合には、補強工程を追加することにより、簡単かつ確実に強度を確保することができると共に、外的美観を向上させることができる。
【0024】
ここで、高弾性特殊モルタルは、セメント、砂、ガラス繊維、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、減水材、消泡材、及び、水を配合してなるものである。
【0025】
そして、ガラス繊維は、セメントと砂と水とから形成されるモルタルを補強する補強材として配合している。そして、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンは、強度、耐久性、接着性、及び、養生性を増大させるために配合している。また、減水材は、空気が連行されて、ワーカビリティが向上するようにするために配合している。また、消泡材は、成形性を改善させるために配合している。
【0026】
かかる高弾性特殊モルタルは、▲1▼高強度・高弾性、▲2▼耐摩耗・耐衝撃性・耐ひび割れ性、▲3▼強接着性、▲4▼低透水性・少吸水量、▲5▼難燃性・断熱性、▲6▼耐海水・耐アルカリ、▲7▼耐温度疲労・耐凍結融解性・耐候性等に優れ、安全性・耐久性・経済性を良好に確保することができる。
【0027】
従って、上記した高弾性特殊モルタルにより水路壁面を改良した際には、作業性を向上させることができると共に、施工期間の大幅な短縮を図ることができる。
【0028】
この際、作業条件等によって、強度、耐久性、接着性、及び、養生性を増大させる必要性がある場合には、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンの配合割合を適宜増加することができる。
【0029】
しかも、かかる高弾性特殊モルタルを使用することにより、塗工するモルタルの肉厚を可及的に薄くすることができ、この場合に問題となるモルタルの強度不足やひび割れ性をガラス繊維により確実に解消することができる。
【0030】
さらには、仕上げ面の粗度係数を小さくすることができるため、水路内の流量を1割?2割増大させることができて、同水路の流路断面積が補強によって小さくなった場合にも、流量と水位を少なくとも従前(改良前)の水路と同一に確保することができる。
【0031】
なお、ガラス繊維、減水材、消泡材、及び、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンの配合割合は、砂の含水比によって、0?20%の範囲内で適宜増減させることができる。
【0032】
また、本発明に係るコンクリート製の水路壁面改良工法は、前記した下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備している。
【0033】
このようにして、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有するモルタルを塗工する下地塗工と仕上塗工との間に、ガラス繊維製ネットを張設する補強工を設けているため、下地塗工と仕上塗工においてモルタル中にガラス繊維が配合されていないにもかかわらず、強度を確保することができると共に、補強による水路の流路断面積の縮小を回避することができて、流量と水位の確保も図れる。
【0034】
しかも、作業性を向上させることができると共に、施工期間の大幅な短縮を図ることができる。
【0035】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る水路壁面改良工法により改良したコンクリート製の水路Aの断面正面図である。Bは基礎、Gは地面、Tは鉄筋である。
【0037】
そして、かかる水路Aを改良する作業を、図2?図7を参照しながら説明すると、次の通りである。
【0038】
▲1▼図2に示すように、水路Aの表面に劣化部分が発生したり、異物等が付着した場合には、図3に示すように、水圧と水流を受ける表面(壁面)の補修用のモルタルの付着力を高めるために、これら劣化部分や異物等の老朽化部分aを除去した後、洗浄・清掃等を行う(下地処理工程)。
【0039】
ここで、老朽化していない部分、すなわち、非老朽化部分cは、核としてそのまま残して有効利用する。
【0040】
▲2▼図4に示すように、下地処理工程にて、下地処理した水路Aの非老朽化部分cの表面bに、樹脂系水性接着剤1を塗布して水路Aの表面を中性化し、乾燥後に付着力の高い高弾性特殊モルタル2を塗工する(下地塗工工程)。
【0041】
ここで、樹脂系水性接着剤1としては、例えば、日本化成(株)製の「エヌセスハフフレックス」(商品名)を使用することができる。
【0042】
また、高弾性特殊モルタル2としては、例えば、表1に示す配合割合のものを使用することができる。
【0043】
【表1】

【0044】
ここで、ガラス繊維としては、例えば、日本電子硝子製の「AGRファイバー」(商品名)を繊維長19?25mmに形成して使用することができる。また、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンとしては、例えば、住友化学製の「スミカフレックス」(商品名)を使用することができる。また、減水材としては、例えば、花王製の「マイテイ150」(商品名)のようにアニオン系界面活性剤・ナフタリンスルホン酸塩を主成分とするものを使用することができる。また、消泡材としては、例えば、サンノプス製の「SNデフォーマー11P」(商品名)のように無機担体と非イオン系界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0045】
このようにして、高弾性特殊モルタル2としては、コンクリートに比して、付着力を(コンクリートの凝結力よりも)大きくし、かつ、浸透性を小さくし、かつ、圧縮力を大きくし、粗度係数を小さくしたものを使用することにより、改良した水路の耐用年数を、新設当時の耐用年数よりもさらに延長することができるようにしている。
【0046】
▲3▼図5に示すように、下地塗工工程にて塗工した下地塗工面2aに樹脂系接着剤1を塗布し、乾燥後に高弾性特殊モルタル2を塗工する(中間塗工工程)。
【0047】
▲4▼図6に示すように、中間塗工工程にて塗工した中間塗工面2bに補強用炭素繊維シート3を貼付する(補強工工程)。
【0048】
ここで、補強用炭素繊維シート3としては、例えば、三菱化学(株)製の「リペラーク」(商品名)を使用することができる。
【0049】
▲5▼図7に示すように、補強工程にて貼付した補強用炭素繊維シート3の表面に高弾性特殊モルタル2を塗工する(仕上塗工工程)。
【0050】
このようにして、水路Aの改良作業を完了させることができる。
【0051】
また、図8及び図9は、他の実施例としての補強工工程を示しており、同補強工工程は、前記した▲1▼の下地処理工程から▲3▼の中間塗工工程までは共通し、同中間塗工工程にて塗工した中間塗工面2bに、薄肉板状の石材4を同塗工面の略全面にわたって張設するようにしている。2cは目地部である。
【0052】
このようにして、強度が不足する場合には、補強工程を追加することにより、簡単かつ確実に強度を確保することができると共に、外的美観を向上させることができる。
【0053】
次に、他の実施例としての水路壁面改良工法について説明する。
【0054】
▲1▼前記した図2に示す下地処理工程と同様に、水圧と水流を受ける表面(壁面)の補修用のモルタルの付着力を高めるために、これら劣化部分や異物等の老朽化部分aを除去した後、洗浄・清掃等を行う。
【0055】
▲2▼図10に示すように、下地処理工程にて、下地処理した水路Aの非老朽化部分cの表面bに、樹脂系水性接着剤1を塗布して水路Aの表面を中性化し、乾燥後に付着力の高い特殊モルタル5を塗工する(下地塗工工程)。
【0056】
特殊モルタル5としては、例えば、表2に示す配合割合のものを使用することができる。
【0057】
【表2】

【0058】
▲3▼図10に示すように、下地塗工工程にて塗工した下地塗工面5aにガラス繊維製ネット6を張設する(補強工工程)。
【0059】
ここで、ガラス繊維製ネット6としては、例えば、日本電子硝子製の「ネット10」(商品名)を使用することができる。
【0060】
▲4▼図11に示すように、補強工程にて張設したガラス繊維製ネット6の表面に特殊モルタル5を塗工する(仕上塗工工程)。
【0061】
このようにして、水路Aの改良作業を簡単かつ確実に完了させることができる。
【0062】
なお、本発明にかかる水路改良工法により水路Aの改良作業を行う際に、非老朽化部分cに亀裂等がある場合には、予め付着力と強度のある接着剤(例えば、モルタル類)を亀裂部分に注入して、止水・補強処理を施しておく。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0064】
(1)請求項1記載の本発明では、水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分に、セメント、砂、ガラス繊維、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、減水材、消泡材、及び、水を配合してなる高弾性特殊モルタルを塗工する塗工工程とを具備すると共に、塗工工程では、非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に上記高弾性特殊モルタルを塗工して、同高弾性特殊モルタルに、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力と、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力とを発現させるようにしている。
【0065】
このようにして、水路を全て破壊することなく、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分を除去して下地処理することにより、非老朽化部分は核として残して有効利用し、その後、その下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に高弾性特殊モルタルを塗工することにより水路壁面を改良することができる。
【0066】
ここで、高弾性特殊モルタルは、セメント、砂、ガラス繊維、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、減水材、消泡材、及び、水を配合してなるものである。
【0067】
そして、ガラス繊維は、セメントと砂と水とから形成されるモルタルを補強する補強材として配合している。そして、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンは、強度、耐久性、接着性、及び、養生性を増大させるために配合している。
【0068】
また、減水材は、空気が連行されて、ワーカビリティが向上するようにするために配合している。また、消泡材は、成形性を改善させるために配合している。
【0069】
その結果、かかる高弾性特殊モルタルは、1)高強度・高弾性、2)耐摩耗・耐衝撃性・耐ひび割れ性、3)強接着性、4)低透水性・少吸水量、5)難燃性・断熱性、6)耐海水・耐アルカリ、7)耐温度疲労・耐凍結融解性・耐候性等に優れ、安全性・耐久性・経済性を良好に確保することができる。
【0070】
従って、上記した高弾性特殊モルタルにより水路壁面を改良した際には、作業性を向上させることができると共に、施工期間の大幅な短縮を図ることができる。
【0071】
この際、作業条件等によって、強度、耐久性、接着性、及び、養生性を増大させる必要性がある場合には、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンの配合割合を適宜増加することができる。
【0072】
しかも、高弾性特殊モルタルは、コンクリートの凝集力と同等若しくはそれよりも大きな付着力を有し、かつ、コンクリートと同等若しくはそれよりも大きな圧縮力を発現するようにしているため、改良した水路の耐用年数を、改良前と同等若しくはそれ以上に延長することができる。
【0073】
さらには、工事費が安価になり、作業時間を大幅に短縮することができると共に、作業中における騒音の発生を極力抑えることができ、かつ、建設廃材の排出を大幅に減少させることができて、環境問題に発展するのを防止することができる。
【0074】
そして、大型建設機械を必要としないことから、大規模な仮設道路も必要とせず、人力により作業を行うにもかかわらず、少ない労力にて短時間に簡単かつ確実に作業を行うことができる。
【0075】
(2)請求項2記載の本発明では、塗工工程にて塗工した塗工面に補強用炭素繊維シートを貼付し、同補強用炭素繊維シートの表面に高弾性特殊モルタルを塗工する補強工程を具備している。
【0076】
このようにして、強度が不足する場合には、補強工程を追加することにより、簡単かつ確実に強度を確保することができる。
【0077】
(3)請求項3記載の本発明では、塗工工程にて塗工した塗工面に、薄肉板状の石材を同塗工面の略全面にわたって張設する補強工程を具備している。
【0078】
このようにして、強度が不足する場合には、補強工程を追加することにより、簡単かつ確実に強度を確保することができると共に、外的美観を向上させることができる。
【0079】
(4)請求項4記載の本発明では、水圧と水流のあるコンクリート製の水路において、水路壁面の劣化部分や異物等の老朽化部分は除去すると共に、中心部の非老朽化部分は核として残して下地処理する下地処理工程と、同下地処理工程にて下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネットの表面に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する仕上塗工工程とを具備している。
【0080】
このようにして、下地処理した非老朽化部分の表面に樹脂系水性接着剤を塗布し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョンを含有しガラス繊維が配合されていないモルタルを塗工する下地塗工と仕上塗工との間に、ガラス繊維製ネットを張設する補強工を設けているため、下地塗工と仕上塗工においてモルタル中にガラス繊維が配合されていないにもかかわらず、強度を確保することができると共に、補強による水路の流路断面積の縮小を回避することができて、流量と水位の確保も図れる。
【0081】
しかも、作業性を向上させることができると共に、施工期間の大幅な短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる水路壁面改良工法により改良した水路の断面正面図。
【図2】水路の表面の劣化状態を示す断面正面図。
【図3】下地処理後の水路の断面正面図。
【図4】下地塗工後の水路の断面正面図。
【図5】中間塗工後の水路の断面正面図。
【図6】補強工後の水路の断面正面図。
【図7】仕上塗工後の水路の断面正面図。
【図8】他の実施例としての補強工後の水路の断面正面図。
【図9】同水路の断面側面図。
【図10】他の実施例としての水路壁面改良工法により改良した水路下地塗工後の水路の断面正面図。
【図11】仕上塗工後の水路の断面正面図。
【符号の説明】
A 水路
B 基礎
G 地面
T 鉄筋
a 老朽化部分
b 下地処理した水路の表面
c 非老朽化部分
1 樹脂系水性接着剤
2 高弾性特殊モルタル
2a 下地塗工面
2b 中間塗工面
2c 目地部
3 補強用炭素繊維シート
4 石材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-12-06 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-27 
出願番号 特願2001-22301(P2001-22301)
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (E02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 小山 清二
伊波 猛
登録日 2005-12-09 
登録番号 特許第3749833号(P3749833)
発明の名称 コンクリート製の水路壁面改良工法  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 中村 宏  

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