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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B60P
管理番号 1178059
審判番号 無効2007-800013  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-24 
確定日 2008-04-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3302503号発明「タンクローリ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3302503号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1) 本件特許第3302503号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成6年4月15日に出願され、平成14年4月26日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2) これに対して、請求人は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してなされたと主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
(3) 被請求人は、平成19年5月7日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。

2.訂正の可否に対する判断
(1)訂正請求の内容
当該訂正請求の内容は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は、請求項1ないし3について、「ステー部」、「タンク」、「キングピンやカプラ」の位置関係を「該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること」と限定するものである。
(2) これらの訂正事項について検討すると、上記訂正は、請求項1ないし3の「ステー部」について「ステー部」、「タンク」、「キングピンやカプラ」の位置関係を限定するものであるから、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、いわゆる、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)したがって、平成19年5月7日付けの訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書の規定、特許法第134条の2第5項の規定において準用する平成6年改正前特許法126条2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件特許第1発明ないし第3発明」という。)は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。さらに、平成19年7月13日に提出した弁駁書において周知の事例として、甲第7?11号証を提出している。

4.被請求人の主張
一方,被請求人は、甲第1号証ないし甲第6号証には本件特許第1発明ないし第3発明のステー部及びその構成が記載されていないし、示唆もされていない旨、主張し乙第1?3号証を提出している。

5.本件特許第1発明ないし第3発明
本件特許第1発明ないし第3発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、フレーム上に該タンクとそのステー部が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。
【請求項2】 タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、前端部のフレームや後端部のフレーム上にタンクやそのステー部が、予め一体的に設けられた構造よりなると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。
【請求項3】 タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレーム上に該タンクとそのステー部が、後で全体的に取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。」

6.甲第各号証と記載事項及び引用発明
(1)甲第各号証
甲第1号証:特開平5-278514号公報
甲第2号証:実願昭63-161641号(実開平2-83295号)の マイクロフィルム
甲第3号証:"Freightliner-Heil Consortium Designs Advanced Concept Safety Tank Truck " ,Trailer/Body Builders,Vo.31,No.1,November 1989,pp.38-42
甲第4号証:ドイツ特許DE4006810 A1明細書
甲第5号証:"Prototype Safety Tank Trailer ,Truck Undergoing Fleet Testing in Germany",Modern Bulk Transporter,Vol.50,No.8,February 1988,pp.58-62
甲第6号証:”FACT-The Freightliner/Heil Advanced Concept Truck", SAE Technical Paper Series 892462,Society of Automotive Engineers,Inc., Truck and BusMeeting and Exposition,Charlotte,North Carolina,November 6-9,1989,pp.1-25
また、周知例として
甲第7号証:米国特許第4,877,293号明細書
甲第8号証:実願昭47-86061号(実開昭49-43916号)の マイクロフイルム
甲第9号証:特開昭50-78025号公報
甲第10号証:米国特許第5,026,228号明細書
甲第11号証:特開昭49-87015号公報

(2)記載事項及び引用発明
(イ)上記の甲第6号証の第10頁右欄第16行?第33行には、FIG.1(FACTの写真)、FIG.26(TOPASの写真)のタンクトレーラの構成として
「Rupture resistance improvements, ・・・ ・・・ "Crush"areas have been added to both the front and the rear of the liquid vessel. ・・・ Dimensionally,the end "Crush" areas are configured as vessel "Voids". Shaped as an integral portion of the vessel itself they provide a stand off depth of 15 inches separating these end caps from the longitudinal terminations of the liquid carrying vessel.」
(「耐衝撃性の改善は、・・・ ・・・液体容器の前部および後部の両方に「クラッシュ」領域を加えた。・・・ ・・・寸法上は、端部の「クラッシュ」領域は、容器の「ボイド」として構成される。これらの領域は容器自体の一体部分として形成され、これらのエンドキャップを液体収容容器の長手方向の終端から隔離する、15インチの隔離された奥行きを設ける。」) (請求人の提出した甲第6号証の抄訳文より摘記)が記載されている。
また、FIG.1及びFIG.26には「トレーラーがトラクタに牽引されるトレーラータイプのタンクローリ」が記載されている。
ところで、上記(イ)の記載事項及びFIG.1、FIG.26の記載事項を総合すると甲第6号証には次の発明が記載されているものと認められる。
「liquid vessel(液体容器)を備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、トレーラーは、"Crush"areas(「クラッシュ」領域)とliquid vessel(液体容器)が全体的かつ一体的に設けられた構造よりなり、かつトレーラー側において、liquid vessel(液体容器)は、前後が閉鎖された筒状をなし、"Crush"areas(「クラッシュ」領域)は、 liquid vessel(液体容器)の閉鎖された前部と後部に一体部分として形成される共に閉鎖された vessel"Voids"(容器の「ボイド」)よりなるタンクローリ。」 (以下「引用発明」という。)

(ロ)トレーラとトラクタの連結関係において、トラクタ後部のカプラと、トレーラーの前端部下のキングピンとの結合により、トラクタとトレーラーが左右に揺動可能に連結されるものは周知である(例えば、実願昭51-139520号(実開昭53-56619号)のマイクロフイルム(第1図)、実公昭43-1363号公報、特開昭57-99428号公報参照)。
また、牽引型トレーラーにおいて、積荷の前後方向の荷重中心が大きく後方に移動させるように積荷の前部を、牽引車とトレーラーの接続部分に対して大きく後方に離れて位置させるものも周知である。実際、上記甲第7号証の第2欄第14?20行目及びFIG.1には
「Referring to FIG.1,the rear wheel axle assembly 20 includes a set of wheels 21 and is shown located directly under the rear end of the cargo box 18. In this position, the major portion of the cargo box load will be concentrated on the rear wheel 12 with a minimum load on the fifth wheel 12 because the front of the box is spaced from the fifth wheel 12.」
(「図1を参照すると、後輪軸アセンブリ20は、車輪21の組を含み、かつ貨物ボックス18の後端のすぐ下に位置して示される。この位置においては、貨物ボックス積荷の大部分は、後輪21に集中して、5番目の車輪12に最小の荷重がかかる。なぜなら、ボックスの前部は5番目の車輪12から離れているからである。」)(請求人の提出した甲第7号証の抄訳)が記載され、甲第10号証の「ABSTRACT」及びFIG.1には、「・・・結果的に、水圧アクチュエーター(65)のシャフト(39)にエネルギーが与えられた場合、コンテナ(27)はトレーラー(13)の縦軸に沿って後ろにスライドする。コンテナ(27)は、コンテナ(27)の後ろの通路がトレーナー(13)の後端(25)と垂直に並んでいる積荷位置と徐荷位置との間と、コンテナ(27)がトレーラーの直列方の後輪(29)とトレーラー(13)を引っ張るトラクタ(15)の後輪(31)との間の中心にある移動位置との間で移動される。」(請求人の提出した甲第10号証の抄訳)が記載されており、いずれのものも「牽引型トレーラーにおいて、積荷の前後方向の荷重中心が大きく後方に移動させるように積荷の前部を、牽引車とトレーラーの接続部分に対して大きく後方に離れて位置させる」ということが明らかである。

7.本件特許第1発明に対して
(1)対比
本件特許第1発明と上記の引用発明とを比較すると、引用発明の「liquid vessel(液体容器)」は、液体を収納する容器であるところから、閉鎖されており、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共にマンホールや底弁等の積荷用設備が付設されていることは明らかであるから、本件特許第1発明にいう「タンク」に相当する。また、「Voids (ボイド)」とは「中空」の意であり、引用発明の「vessel"Voids"(容器の「ボイド」)」は上記の記載事項6.(2)(イ)及び甲第6号証のFIG.1からみれば、liquid vessel (液体容器)の閉鎖された前部と後部に一体的に連設されると共に閉鎖された中空構造であるから、引用発明の「"Crush"areas(「クラッシュ」領域)」は本件特許第1発明の「中空構造」からなる「ステー部」と同様に、「中空構造部」を構成している点で共通している。
したがって、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、トレーラーはタンクとステー部が全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該中空構造部は該タンクに一体的に連設され、閉鎖された中空構造よりなるタンクローリ。」
相違点は、次のとおりである。
(相違点1)
本件特許第1発明は「トレーラー側のキングピンが、トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されて」いるが、引用発明ではそのような構成が不明である点。

(相違点2)
中空構造部が、本件特許第1発明は「ステー部」であり、「ステー部はタンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、積荷は積載されず積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能」となるのに対して、引用発明では「"Crush"areas(「クラッシュ」領域)」であり、この「 "Crush"areas(「クラッシュ」領域)」は、「liquid vessel(液体容器)」の閉鎖された前部と後部に一体部分として形成されており、「liquid vessel(液体容器)」と「キングピンやカプラ」との位置関係、「liquid vessel(液体容器)」と同一断面形状をなすかどうか、積荷や積荷用設備については不明である点。

(相違点3_(1))
本件特許第1発明の「トレーラーは、フレーム上に該タンクとそのステー部が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造」であるのに対して、引用発明では「タンクとそのステー部が、全体的かつ一体的に設けられた構造」よりなるが、「タンクとそのステー部」、「キングピン」、「後輪」のフレームへの取付けについては明らかでない点。

(2)相違点についての当審の判断
上記相違点について検討すると,
(イ)(相違点1)について
トレーラとトラクタの連結関係において、「トレーラー側のキングピンがトラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結され」た構造よりなるものは、上記記載事項6.(2)(ロ)に示されているように、当該技術分野において普通に知られた周知技術といえるし、また、このような周知技術の採用は、必要に応じて適宜実施されるべき通常の技術事項である。そうすると、引用発明においても、上記のような周知技術を採用して、上記相違点1で指摘した本件特許第1発明の構成と同様にすることは、当業者が容易に想到し得た設計事項といえる。

(ロ)(相違点2)について
「牽引型トレーラーにおいて、積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動できるように積荷の前部を、牽引車とトレーラーの接続部分に対して大きく後方に離れて位置させる」ことは周知の事項である(上記6.(2)(ロ)の記載事項参照)。引用発明において衝撃保護部材である「"Crush" areas 」(「クラッシュ」領域)」は「liquid vessel (液体容器)」の前部と後部の両方に形成されているが、この場合、タンク前部でも、タンク後部でも、タンクの前部と後部の両方でも、衝撃保護を必要と考える箇所に設ければよく、前部に設ければ上記の周知の事項からみて荷重中心が後方に位置することは明らかである。さらに、"Crush"areas (「クラッシュ」領域)の構成として、タンクの前部又は後部の全面を保護する必要性のあることを考慮すれば、全面にわたって "Crush"areas (「クラッシュ」領域)を設けることが通常であって、また、断面形状を変えなければならない特別の技術的必要性もない(中空構造の断面形状をタンクと同一断面形状とすることは、例えば、甲第2号証を参照)。
牽引型トレーラーにおいて、トレーラーのフレームの前部で、キングピン上に位置するキングピン取付部に補強部を設けることは、周知の技術である(例えば、実願昭54-126327号(実開昭56-43672号)のマイクロフイルム参照)。そして、引用発明の「"Crush"areas(「クラッシュ」領域)」の「vessel"Voids"(容器の「ボイド」)」は「耐衝撃性の改善」を目的とするものであるから(上記記載事項6.(2)(イ))参照)、該「 "Crush"areas(「クラッシュ」領域)」はある一定の強度をもって作られているものと認められる。引用発明におけるトレーラータイプのタンクローリも牽引型トレーラーの一形態であるから、牽引型トレーラーのキングピン取付部を補強する上記周知の技術を勘案すれば、引用発明における「liquid vessel (液体容器)」前部の「" Crush" areas (「クラッシュ」領域)」は一定の強度を有するので、キングピンやカプラ上に位置させて補強部として機能させることは可能である。
さらに、引用発明における「ボイド(中空)」の「"Crush"areas(「クラッシュ」領域)」は、「liquid vessel (液体容器)」と区別されているところからみて、積荷の積載、積荷用設備の付設が必要ないことは明らかである。
してみれば、「中空構造部」としての引用発明の「"Crush"areas(「クラッシュ」領域)」を、liquid vessel(液体容器)の前側に一体的に連設された補強用の「ステー部」とし、周知の技術であるキングピン取付部の補強部として、キングピンやカプラ上に位置させて、その断面形状をliquid vessel(液体容器)と同一断面形状をなすように設定し、liquid vessel(液体容器)の前部をキングピンやカプラに対して大きく後方に離れて位置させることを可能とし、該liquid vessel(液体容器)に積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能とすることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、そのような結果として、引用発明の「 "Crush"areas (「クラッシュ」領域)」は、本件特許第1発明の「ステー部」と同じく、「タンクの前部は確実に保持され十分に補強される」という効果も奏するものと認められる。

(ハ)(相違点3_(1))について
上記相違点2において検討したように、引用発明においてもliquid vessel(液体容器)と "Crush"areas (「クラッシュ」領域)とは全体的かつ一体的に形成されており、また、トレーラーのフレームを一体の車体フレームとすることは実願昭57-54930号(実開昭58-157736号)のマイクロフイルムに記載があり、予めタンクとフレームを一体的に設け、その後、前端部のフレームの下にキングピンを、後端部のフレーム下に後輪を設けた構造のトレーラーは特開昭57-99428号公報、特に第3図の説明に記載があり、ともに周知である。そこで、引用発明において、トレーラーのフレームを一体の車体フレームとし、フレーム上にliquid vessel(液体容器)と その"Crush"areas (「クラッシュ」領域)が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造とすると共に、該フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造とすることは単にトレーラーとタンクの組付けについての周知の手順を採用するものに過ぎず、当業者が適宜成し得る程度の設計的な事項に過ぎない。

そして、本件特許第1発明の作用効果について検討しても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

8.本件特許第2発明に対して
(1)対比
本件特許第2発明と引用発明を比較すると、一致点及び相違点1?3については、上記7.と同じであるので、以下の相違点3_(2)について検討する。
(相違点3_(2))
本件特許第2発明は「トレーラーは、前端部のフレームや後端部のフレーム上にタンクやそのステー部が、予め一体的に設けられた構造よりなると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造」であるのに対して、引用発明はそのような取付けについて明らかでない点。

(2)相違点3_(2)についての判断
上記相違点2において検討したように、引用発明においてもliquid vessel(液体容器)と "Crush"areas (「クラッシュ」領域)とが一体的に形成されており、また、前端部のフレームや後端部のフレーム上にタンクが、予め一体的に設けられた構造とすると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造のトレーラーは特開昭57-99428号公報、特に第3図の説明に記載があり周知である。そこで、引用発明において、前端部のフレームや後端部のフレーム上にliquid vessel(液体容器)と その"Crush"areas (「クラッシュ」領域)が、予め一体的に設けられた構造とすると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造とすることは単にトレーラーとタンクの組付けについての周知の手順を採用するものに過ぎず、当業者が適宜成し得る程度の設計的な事項に過ぎない。

そして、本件特許第2発明の作用効果について検討しても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

9.本件特許第3発明に対して
(1)対比
本件特許第3発明と引用発明を比較すると、一致点及び相違点1?3については、上記7.と同じであるので、以下の相違点3_(3)について検討する。
(相違点3_(3))
本件特許第3発明の「トレーラーは、フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレーム上に該タンクとそのステー部が、後で全体的に取付けられた構造」であるのに対して、引用発明はそのような取付けについて明らかでない点。

(2)相違点3_(3)についての判断
上記相違点2において検討したように、引用発明においてもliquid vessel(液体容器)と "Crush"areas (「クラッシュ」領域)とが一体的に形成されており、また、トレーラーのフレームを一体の車体フレームをすることは実願昭57-54930号(実開昭58-157736号)のマイクロフイルムに記載があり、前端部のフレームの下にキングピンが後端部のフレームの下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレーム上に該タンクが、後で全体的に取付けられた構のトレーラーは特開昭57-99428号公報、特に第1,2図の従来技術の説明に記載があり、ともに周知である。そこで、引用発明において、トレーラーのフレームを一体の車体フレームとし、フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造とすると共に、フレーム上にliquid vessel(液体容器)とその "Crush"areas (「クラッシュ」領域)が、後で全体的に取付けられた構造とすることは単にトレーラーとタンクの組付けについての周知の手順を採用するものに過ぎず、当業者が適宜成し得る程度の設計的な事項に過ぎない。

そして、本件特許第3発明の作用効果について検討しても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

10,むすび
以上のとおりであるから,本件特許第1発明ないし第3発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号に該当する。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
タンクローリ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、フレーム上に該タンクとそのステー部が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対し大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。
【請求項2】タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、前端部のフレームや後端部のフレーム上にタンクやそのステー部が、予め一体的に設けられた構造よりなると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対し大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。
【請求項3】タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのタンクローリであって、上記トレーラーは、フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレーム上に該タンクとそのステー部が、後で全体的に取付けられた構造よりなり、
上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されており、
かつ上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置しており、
該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対し大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となること、
を特徴とするタンクローリ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はタンクローリに関する。すなわち、タンクの内部に各種油その他液状の積荷を積載して運搬する、トレーラータイプのタンクローリに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来のトレーラータイプのタンクローリのトレーラーを示し、(1)図は側面概略図、(2)図は平面概略図、(3)図はトラクタ側のカプラ等と共に示した側面概略図である。同図にも示したように、トレーラータイプのタンクローリでは、タンク1を備えたトレーラー2がトラクタ3にて牽引される。そして、トラクタ3の後部フレーム4上にカプラ5が付設されると共に、トレーラー2のフレーム6の前端部下にキングピン7が垂下設されて、カプラ5に回動自在に嵌挿保持され、もって、トラクタ3にトレーラー2が左右に揺動可能に連結されている。そしてタンク1は、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷Aが積載されるが、従来、タンク1の前部にはステー8が付設されており、このようなステー8が、タンク1の前部を保持しつつキングピン7やカプラ5上に位置していた。
【0003】
すなわち、タンク1に積載された積荷Aの前後方向の荷重配分,耐荷重限界に関しては、前軸たるキングピン7やカプラ5側そしてトラクタ3や前輪9の車軸側より、後軸たるトレーラー2の後輪10の車軸側の方が、一般的に余裕がある。もって従来は、余裕のない前軸側に加わる荷重を出来るだけ軽減すべく、キングピン7やカプラ5に対しタンク1の前部は、後方つまり余裕のある後軸側に離れて位置せしめられていた。つまりキングピン7やカプラ5は、タンク1の前後方向の積荷Aの荷重中心Bから、なるべく前方に離れるように位置していた。そこで、このままでは強度上の不具合が生じるので、トレーラー2のフレーム6の前部に、補強用の支持部材たるステー8が取付けられており、このようなステー8がタンク1の前部を保持しつつ、前軸たるキングピン7やカプラ5上に位置することにより、上述した強度上の不具合を解消していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来例にあっては、次の第1,第2,第3,第4の問題が指摘されていた。第1に、このようなステー8を用いても、ステー8によるタンク1の前部の保持,補強には強度上自ずと限界があり、タンク1の前部をあまり後方に離れて位置せしめることはできなかった。そこで依然として、タンク1に積載された積荷Aについて前後方向の荷重配分のバランスが悪いという難点があり、まず▲1▼、タンク1の前軸たるキングピン7やカプラ5側そしてトラクタ3側より、後軸たるトレーラー2の後輪10の車軸側の方に、耐荷重限界上かなり余裕が存在するのに対し、▲2▼前軸のトラクタ3側は、作用する荷重に耐えるべく大きな積載能力のものが要求され、結果的に▲3▼、タンク1の積荷Aの積載量に悪影響を及ぼす、等々の問題が指摘されていた。
【0005】
第2に、タンクローリそしてトレーラー2の転倒事故時において、タンク1の前部は転倒による衝撃を受けやすく、前部の鏡板の側方に張り出した左右側部分を始め、タンク1の前部各所に損傷,亀裂が発生しやすかった。特に、タンク1の前部の鏡板の左右側部分は、側方に張り出しているので、転倒事故時の変形による応力集中により、損傷,亀裂が発生しやすいという指摘があった。そして、タンク1の前部の鏡板に損傷,亀裂が発生した場合には、タンク1内の例えば最前室たる第1室に積載された各種油等の積荷Aが、そこから外部に洩れ出して大事故につながる危険があり、安全性に問題があった。
【0006】
第3に、タンク1の支持部材たるステー8やその取付部材は、タンク1とは別体として製造された後に取付けられると共に、補強用・強度上の観点から、非常に大きく特殊な形状の複雑なフレーム構造よりなっていた。そこで、このようなステー8等について、製造コスト,タンク1への取付作業性,デザイン面等に問題が指摘されていた。
【0007】
第4に、トレーラー2側のタンク1,ステー8,フレーム6,キングピン7,トラクタ3側のカプラ5等については、加わる荷重を考慮しこれに的確に耐えるべく、製造時に相互間で微妙で精緻な位置合わせが要求されるが、従来、このような位置合わせが容易でないという指摘があった。つまり、上述の第3でも述べたように、ステー8やその取付部材が特殊で複雑な構造よりなることもあり、これらとタンク1,フレーム6,キングピン7,カプラ5間の位置合わせが容易でなく、非常に手間取るという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、上記従来例の問題点を解決すべくなされたものであって、請求項1のタンクローリのトレーラーは、フレーム上にタンクとステー部が予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなり、請求項2のタンクローリのトレーラーは、前端部や後端部のフレーム上にタンクやステー部が予め一体的に設けられた構造よりなり、請求項3のタンクローリのトレーラーは、フレーム上にタンクとステー部が後で全体的に取付けられた構造よりなる。そして請求項1,2,3共に、タンクと同一断面形状をなし前側が閉鎖された中空構造のステー部を、タンクの閉鎖された前側に一体的に連設して、キングピンやカプラ上に位置せしめたことにより、第1に、タンクに積載された積荷について、前後方向の荷重配分のバランスが向上し、第2に、転倒事故時のタンクの前部の損傷,亀裂も防止されて、安全性が向上すると共に、第3に、製造コスト,取付作業性,デザイン面等にも優れ、第4に、製造時の微妙で精緻な位置合わせも容易に実施可能な、トレーラータイプのタンクローリを提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明の技術的手段は、次のとおりである。このタンクローリは、タンクを備えたトレーラーがトラクタにて牽引される、トレーラータイプのものよりなる。そして請求項1の上記トレーラーは、フレーム上に該タンクとそのステー部が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなる。又、請求項2の上記トレーラーは、前端部のフレームや後端部のフレーム上にタンクやそのステー部が、予め一体的に設けられた構造よりなると共に、該前端部のフレーム下にキングピンが該後端部のフレーム下に後輪が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなる。更に、請求項3の上記トレーラーは、フレームの前端部下にキングピンが後端部下に後輪が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、該フレーム上に該タンクとそのステー部が、後で全体的に取付けられた構造よりなる。
【0010】
そして請求項1,2,3共に、上記トレーラー側のキングピンが、上記トラクタの後部フレーム上に付設されたカプラに回動自在に嵌挿保持され、もって、上記トレーラーがトラクタに左右に揺動可能に連結されている。これと共に上記トレーラー側において、該タンクは、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷が積載されると共に、マンホールや底弁等の積荷用設備が付設されており、該ステー部は、該タンクの閉鎖された前側に一体的に連設され、該タンクと同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、上記積荷は積載されず上記積荷用設備も付設されず、該キングピンやカプラ上に位置している。
そして該ステー部により、該タンクの前部が、確実に保持され十分に補強され、もって該タンクの前部を、キングピンやカプラに対し大きく後方に離れて位置させることが可能となり、該タンクに積載された積荷の前後方向の荷重中心を、大きく後方に移動させることも可能となる。
【0011】
【作用】
本発明は、このような手段よりなるので、次のように作用する。まず請求項1は、フレーム上にタンクとステー部が予め全体的かつ一体的に設けられ、フレーム下に後でキングピンや後輪が取付けられた、トレーラー構造よりなる。又請求項2は、前端部や後端部のフレーム上にタンクやステー部が予め一体的に設けられ、後でキングピンや後輪が取付けられた、トレーラー構造よりなる。更に請求項3は、フレーム下にキングピンや後輪が予め一体的に設けられ、フレーム上に後でタンクとステー部が全体的に取付けられた、トレーラー構造よりなる。そして、このような請求項1,2,3のトレーラータイプのタンクローリのトレーラーでは、いずれも中空構造のステー部が、タンクの前側に一体的に連設されると共に、連結用のキングピンやカプラ上に位置している。
【0012】
そこで第1に、このようなステー部により、タンクの前部は確実に保持され十分に補強される。もって、タンクの前部をキングピンやカプラから大きく後方に離れて位置させ、タンクに積載された積荷の荷重中心を後方に移動させて、キングピンやカプラを荷重中心からはるかに前方に離れて位置させること、等々が可能となる。従って荷重配分,耐荷重限界上、余裕がある後軸たる後輪の車軸側に、より大きな荷重を負担させ、その分だけ、前軸たるキングピンやカプラ側そしてトラクタ側に加わる荷重を軽減でき、荷重配分のバランスが向上し、効率的な荷重配分が実現される。
【0013】
第2に、タンクの前側は、ステー部にて覆われるように保護され補強されている。そこで転倒事故時において、タンクの前部はこのようなステー部にて緩衝され応力集中も回避され、その損傷,亀裂が防止される。第3に、しかもこのステー部は、タンクと共に簡単容易に製造でき、製造コスト面に優れると共にタンクへの取付作業上の問題もなく、更に、タンクと同一形状よりなりデザイン面にも優れている。
【0014】
第4に、タンク,ステー部,フレーム,キングピン,カプラ等は、加わる荷重に耐えるべく、製造時に相互間で微妙で精緻な位置合わせが要求される。そしてその際、このステー部はタンクと一体的であると共に、このようなタンク,ステー部とキングピンとが、フレームに対し所定の順序で、予め一体的に設けられたり後で取付けられるようになっているので、上述した位置合わせは容易に実施可能である。
【0015】
【実施例】
以下本発明を、図面に示すその実施例に基づいて、詳細に説明する。図1の(1)図は、本発明の実施例の分解状態の側面概略図、図1の(2)図は、同分解状態の背面概略図である。図2は、他の実施例の分解状態の側面概略図であり、図3は、更に他の実施例の分解状態の側面概略図である。図4の(1)図は、図1の実施例の側面図、図4の(2)図は同要部の側面図であり、図5の(1)図は、同要部の平面図、図5の(2)図は、同背面図である。
【0016】
このタンクローリは、タンク1を備えたトレーラー2がトラクタ3にて牽引される、トレーラータイプのものよりなる。そして、まず図4や図5に示したように、牽引車たるトラクタ3は、前方にキャブ11そして後方に後部フレーム4を備えると共に、前後1組の前輪9が設けられており、後部フレーム4のほぼ中央部の上面に、取付部12やピン13を介し、カプラ5が付設されている。カプラ5は、第5輪とも称され、略平板状をなすと共に中央にキングピン7の嵌挿保持部が形成され、ピン13を中心に揺動可能となっている。
【0017】
これに対しトレーラー2は、フレーム14上に後述するタンク1とその前側のステー部15とを備えてなると共に、フレーム14の前端部下の中央付近にキングピンプレート16を介しキングピン7を、フレーム14の後端部下にリヤフレーム17を介し後輪10を、それぞれ備えてなる。そしてトレーラー2側のキングピン7が、トラクタ3側のカプラ5に左右方向に回動自在に嵌挿保持され、もって、トラクタ3の後部フレーム4上にトレーラー2のフレーム14の前端部が枢支され、トラクタ3にトレーラー2が左右に揺動可能に連結されている。なお図示例では、トレーラー2の後輪10は前後1組の2軸方式よりなるが、これによらず、例えば1軸方式や3軸方式も勿論可能である。
【0018】
このようなタンクローリのトレーラー2について、更に詳述する。まず、図1更には図4,図5に示した実施例において、トレーラー2は、フレーム14上にタンク1とそのステー部15が、予め全体的かつ一体的に設けられた構造よりなると共に、フレーム14の前端部下にキングピン7が後端部下に後輪10が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなる。すなわち、この図1等に示したトレーラー2では、例えば左右2本のフレーム14上に、タンク1とステー部15が予め全体的,一体的,固定的に溶接等により設けられたものが用いられ、これに対し後で左右のフレーム14下に、キングピンプレート16を介しキングピン7が、リヤフレーム17を介し後輪10が、それぞれボルト等により取付けられている。なお、このようなトレーラー2はセミモノコックタイプのトレーラーとも称され、フレーム14はサブフレームとも称される。又、図1中、Pはブラケット,Qは板ばね,Rは軸であり、これらは、リヤフレーム17と後輪10との間に介装されている。
【0019】
次に、図2に示した実施例にあっては、トレーラー2は、前端部のフレーム18や後端部のフレーム19上にタンク1やそのステー部15が、予め一体的に設けられた構造よりなると共に、前端部のフレーム18下にキングピン7が後端部のフレーム19下に後輪10が、後でそれぞれ取付けられた構造よりなる。
【0020】
すなわち、この図2のトレーラー2では、図1等におけるフレーム14に代え、前後に大きく間隔を存して分離された、前端部のフレーム18と後端部のフレーム19とが用いられている。この前端部のフレーム18や後端部のフレーム19は、タンク1の前端部や後端部下に、部分的な補強受部として配されており、それぞれ、例えば左右2本のフレーム部材よりなるが、勿論純粋なフレーム形状のものに限定されることなく、その他各種の補強形状のものを採用可能である。そして、前端部のフレーム18上に、図示のようにステー部15のみ又はステー部15とタンク1の前部が、予め一体的,固定的に溶接等により設けられると共に、後端部のフレーム19上に、タンク1の後部が予め一体的,固定的に溶接等により設けられている。そして後で、前端部のフレーム18下に、キングピンプレート16を介しキングピン7が、又、後端部のフレーム19下に、リヤフレーム17を介し後輪10が、それぞれボルト等により取付けられている。なお、このようなトレーラー2は、モノコックタイプのトレーラーとも称される。又、この図2のトレーラー2に関し、その他の構成等は、図1,図4,図5のトレーラー2について前述したところに準じるので、その説明は省略する。
【0021】
次に、図3に示した実施例にあっては、トレーラー2は、フレーム20の前端部下にキングピン7が後端部下に後輪10が、予めそれぞれ一体的に設けられた構造よりなると共に、フレーム20上にタンク1とそのステー部15が、後で全体的に取付けられた構造よりなる。
【0022】
すなわち、この図3のトレーラー2では、例えば左右2本のフレーム20について、前端部下にキングピン7が、一体的,固定的に溶接等により設けられると共に、後端部下に後輪10が、ブラケットP,板ばねQ,軸R等を介し一体的,固定的に設けられている。そして、後でこのようなフレーム20上に、タンク1とそのステー部15が、例えば予め付設されていた補助的なフレーム21を介し、ボルト等により取付けられる。なお、このフレーム21は、シャーシフレームとも称される。又、この図3のトレーラー2に関し、その他の構成等は、図1,図4,図5のトレーラー2について前述したところに準じるので、その説明は省略する。
【0023】
図1,図2,図3,図4,図5等に示した各実施例のタンクローリのトレーラー2は、このようになっている。そして、このような各実施例を通じ、そのタンク1やステー部15は、次のようになっている。まずタンク1は、前後が閉鎖された筒状をなし、内部に各種油その他液状の積荷Aが積載されると共に、マンホール22(前述した図6の(2)図を参照)や底弁(図示せず)等の積荷用設備が付設されている。これらについて詳述すると、タンク1は、前後が鏡板23にて閉鎖された筒状をなし、内部に、ガソリン,軽油,灯油等の各種油、その他液状の積荷Aが積載される。危険物たる積荷Aを積載する場合は、内部が幅方向に沿った仕切板により2室から7室程度の複数のタンク室に区画される(図示せず)。そして積荷Aは、例えば、上部のマンホール22付近の注入口からタンク1のタンク室内に積込まれ、目的地まで積載,運搬された後、下部の底弁を介し荷卸しされる。なおタンク1は、断面形状が円形,楕円形,略船型等をなし、通常は直線的な筒状をなす。
【0024】
次に、ステー部15について述べる。このステー部15は、タンク1の閉鎖された前側に一体的に連設され、タンク1と同一断面形状をなすと共に前側が閉鎖された中空構造よりなり、積荷Aは積載されずマンホール22や底弁等の積荷用設備も付設されず、キングピン7やカプラ5上に位置している。
【0025】
これらについて詳述すると、ステー部15は、タンク1の前部の鏡板23の前側に一体的かつ同軸に連設されており、タンク1に対応した円形,楕円形,略船型等の断面形状をなし、その前側が、上述したタンク1側の鏡板23に準じた構造の鏡板24にて閉鎖され、内部には、空間室たる中空部25が形成されている。すなわちステー部15は、タンク1の胴板を前方に延出せしめて鏡板24にて閉鎖した形態、言い換えれば、タンク1の前側をあたかも一部区画して形成されたような形態よりなる。そしてステー部15は、タンク1と同様に、トレーラー2のフレーム14上に設けられるか(図1等の実施例)、前端部のフレーム18上に設けられるか(図2の実施例)、フレーム20上に取付けられている(図3の実施例)。なお図示例では、このようなステー部15のほぼ中央部付近下に、キングピン7やカプラ5が位置しているが、ステー部15の長手方向の長さCは、タンク1そしてトレーラー2の全体的な長さ等に応じて、適宜設定される。各図中26は、タンク1上に周設された防護枠であるが、図示の防護枠26は、ステー部15上をも含みつつ周設されている。
【0026】
本発明は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。まず、図1,図4,図5に示した実施例のトレーラータイプのタンクローリは、トレーラー2のフレーム14上に、タンク1とステー部15が予め全体的かつ一体的に設けられ、フレーム14下に後で、キングピン7や後輪10が取付けられた構造よりなる。又、図2に示した実施例のトレーラータイプのタンクローリは、トレーラー2の前端部や後端部のフレーム18,19上に、タンク1やステー部15が予め一体的に設けられ、前端部や後端部のフレーム18,19下に後で、それぞれキングピン7や後輪10が取付けられた構造よりなる。更に、図3に示した実施例のトレーラータイプのタンクローリは、フレーム20下にキングピン7や後輪10が予め一体的に設けられ、フレーム20上に後でタンク1とステー部15が全体的に取付けられた構造よりなる。
【0027】
そして、これら図1,図2,図3,図4,図5等に示した各実施例のトレーラータイプのタンクローリは、共に、トレーラー2のタンク1の内部に各種油その他液状の積荷Aを積載して運搬し、タンク1には、マンホール22や底弁等の積荷用設備が付設されている。そして、このタンク1の閉鎖された前側に、タンク1と同一断面形状をなし前側が閉鎖された中空構造のステー部15が、一体的に連設されている。そして、このようなステー部15が、トラクタ3とトレーラー2を連結するキングピン7やカプラ5上に位置している。そこで、これらのタンクローリでは、次の第1,第2,第3,第4のようになる。
【0028】
第1に、このような形状,構造,位置のステー部15を設けたことにより、トレーラー2のタンク1の前部をかなり後方に位置させても、強度上の不具合を生じることなく、タンク1を確実に保持し十分に補強することができるようになる。従って、前述した図6のこの種従来例に比し、タンク1の前部をキングピン7やカプラ5に対し、はるかに大きく後方に離れて位置させることが可能となる。つまり、トレーラー2のタンク1に積載された積荷Aの前後方向の荷重中心Bを、図示したように大きく後方に移動させて、キングピン7やカプラ5を、タンク1の荷重中心Bからはるかに前方に離れて位置させることが可能となる。
【0029】
もって、これらのタンクローリでは、トレーラー2のタンク1に積載された積荷Aの前後方向の荷重配分,耐荷重限界上、余裕がない前軸たるキングピン7やカプラ5側そしてトラクタ3や前輪9の車軸側より、一般的に余裕がある後軸たるトレーラー2の後輪10の車軸側の方に、前述した図6のこの種従来例に比しより大きな荷重を負担させ、その分、前軸側に加わる荷重を軽減させることができる。このようにして、これらのタンクローリでは、タンク1の荷重配分のバランスが向上し、前後方向に無駄のない効率的な荷重配分が実現される。
【0030】
第2に、タンク1の前部の鏡板23等は、中空構造のステー部15にて、覆われるように保護され十分に補強されている。そこで、タンクローリの転倒事故時やトレーラー2の転倒事故時において、前方に位置するステー部15が、衝撃を受けたり変形による応力集中により損傷,亀裂を生じても、タンク1の前部は、このようなステー部15にて緩衝されると共に、変形による応力集中も回避される。このようにして、転倒事故時におけるトレーラー2のタンク1の前部の損傷,亀裂は確実に防止され、タンク1の例えば最前室たる第1室のタンク室からの油等の洩れ出しも阻止される。
【0031】
第3に、しかもこのような補強用のステー部15は、タンク1と同形状で一体的に連設される。そこでこれらのタンクローリでは、トレーラー2のタンク1の製造時にその胴板を前方に延出せしめて、鏡板24にて閉鎖することにより、ステー部15がタンク1と共に簡単容易に製造でき、製造コスト面に優れている。特に、前述した図6のこの種従来例において、非常に特殊で複雑なフレーム構造のステー8等を別途製造して、タンク1に取付けていたのに比し、製造コストが大きく軽減される。又、このステー部15は、このようにタンク1と共に製造できるので、取付作業上の問題もなく、更に、タンク1と同一形状よりなり外見上も一体的であり、デザイン面にも優れている。
【0032】
第4に、トレーラー2側のタンク1,フレーム14(図1等の実施例),前端部のフレーム18(図2の実施例),フレーム20(図3の実施例),キングピンプレート16,キングピン7,トラクタ3側のカプラ5等々については、タンク1の積荷A側から加わる荷重を考慮し、これに効率良く的確に耐えるべく、タンクローリの製造時に、これら相互間で微妙で精緻な位置合わせが要求される。そしてその際、これらのタンクローリのトレーラー2のステー部15は、タンク1と一体的に連設されてなると共に、このようなタンク1,ステー部15とキングピン7とが、フレーム14,前端部のフレーム18,フレーム20等に対し、所定の順序で、予め一体的に設けられたり後で取付けられるようになっている。つまり図1等の実施例では、タンク1とそのステー部15が予めフレーム14上に一体的に設けられた後、キングピン7が取付けられ、図2の実施例では、ステー部15等が予め前端部のフレーム19上に一体的に設けられた後、キングピン7が取付けられ、図3の実施例では、予めキングピン7が取付けられたフレーム20上に、後でタンク1とそのステー部15が取付けられるようになっている。そこで、上述した相互間の位置合わせも、容易かつ効率良く的確に実施可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係るトレーラータイプのタンクローリは、以上説明したように、請求項1では、フレーム上にタンクとステー部が予め全体的かつ一体的に設けられたトレーラー構造よりなり、請求項2では、前端部や後端部のフレーム上にタンクやステー部が予め一体的に設けられたトレーラー構造よりなり、請求項3では、フレーム上にタンクとステー部が後で全体的に取付けられたトレーラー構造よりなる。そして請求項1,2,3共に、タンクと同一断面形状をなし前側が閉鎖された中空構造のステー部を、タンクの閉鎖された前側に一体的に連設して、キングピンやカプラ上に位置せしめたことにより、次の効果を発揮する。
【0034】
第1に、荷重配分のバランスが向上する。すなわち、このトレーラータイプのタンクローリでは、ステー部により強度上必要かつ十分な補強が行えるので、耐荷重限界上余裕のある後軸側に、より大きな荷重を負担させることができる。もってその分、前軸側に加わる荷重が軽減され、タンクの積荷の荷重配分のバランスが向上し、より積載能力の小さなトラクタを用いることが可能となり、結果的にタンクの積荷の積載量を増加させることもできる。
【0035】
第2に、転倒事故時にステー部にて、タンクの前部の損傷,亀裂が防止される。すなわち、このトレーラータイプのタンクローリでは、転倒により衝撃を受けやすく応力集中もみられたタンクの前部の鏡板等が、ステー部にて覆われるように保護され十分に補強されているので、これらは回避され損傷,亀裂の発生が防止される。もって、タンクに積載されていた各種油等の積荷が外部に洩れ出すことがなく、大事故につながる危険も回避され、安全性が大きく向上する。
【0036】
第3に、製造コスト,取付作業性,デザイン面等にも優れている。すなわち、このトレーラータイプのタンクローリでは、そのステー部が、タンクと共に製造でき、製造コストが大きく軽減されると共に、ステー部のタンクへの取付作業上の問題もなく、デザイン面にも優れている。
【0037】
第4に、しかも製造時の位置合わせも、容易に実施可能である。すなわち、トレーラー側のタンク,ステー部,フレーム,キングピン,トラクタ側のカプラ等については、加わる荷重を考慮しこれに的確に耐えるべく、製造時に相互間で微妙で精緻な位置合わせが要求されるが、このトレーラータイプのタンクローリでは、これらは簡単容易に実施可能である。このように、この種従来例に存した問題点が一掃される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るタンクローリの実施例を示し、(1)図は、分解した状態の側面概略図、(2)図は、分解した状態の背面概略図である。
【図2】
本発明に係るタンクローリの他の実施例を示す、分解した状態の側面概略図である。
【図3】
本発明に係るタンクローリの更に他の実施例を示す、分解した状態の側面概略図である。
【図4】
図1の実施例のタンクローリを示し、(1)図は側面図、(2)図は要部の側面図である。
【図5】
同実施例のタンクローリを示し、(1)図は要部の平面図、(2)図は背面図である。
【図6】
従来例のタンクローリのトレーラーを示し、(1)図は側面概略図、(2)図は平面概略図、(3)図はトラクタ側のカプラ等と共に示した側面概略図である。
【符号の説明】
1 タンク
2 トレーラー
3 トラクタ
4 後部フレーム
5 カプラ
7 キングピン
10 後輪
14 フレーム
15 ステー部
18 前端部のフレーム
19 後端部のフレーム
20 フレーム
22 マンホール
A 積荷
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-03-03 
結審通知日 2008-03-05 
審決日 2008-03-19 
出願番号 特願平6-101879
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B60P)
最終処分 成立  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 高木 進
柴沼 雅樹
登録日 2002-04-26 
登録番号 特許第3302503号(P3302503)
発明の名称 タンクローリ  
代理人 山本 秀策  
代理人 合志 元延  
代理人 合志 元延  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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