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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42F |
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管理番号 | 1178090 |
審判番号 | 不服2006-25272 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-10 |
確定日 | 2008-05-13 |
事件の表示 | 特願2004-183120「スライドオープンクリップ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日出願公開、特開2005- 7886〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年5月25日(優先権主張平成15年5月26日)に出願したものであって、平成18年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 当審においてこれを審理した結果、平成19年10月15日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対して、平成19年12月21日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成18年7月10日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】断面略コの字状のクリップと、該クリップ内に摺動可能に設けられた書類導入用のシートからなるスライドオープンクリップであり、 上記シートは、適宜形状の薄片シートからなり、略中央部を二つに折り畳み、該折り畳み箇所に略四方形乃至略円形乃至三角形の空洞部及び括れ乃至凹み乃至折り目を設けると共に、折り畳み二片を対向して形成し、 上記シートは、クリップ内に収納時にはクリップの開口部より突出しかつ横幅はクリップからはみ出していて、該シートを括れ乃至凹み乃至折り目がクリップ開口部に当たる位置まで引き出すと、折り畳み二片が外側に開くことを特徴とするスライドオープンクリップ。」 以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。 3.引用刊行物の記載事項 これに対して当審において通知した平成19年10月15日付け拒絶理由通知で引用した、本願の出願日前に頒布された特開2001-322384号公報及び特開平8-267975号公報には、以下の内容が記載されている。 3-1 引用刊行物1:特開2001-322384号公報 イ.段落【0003】?【0004】「従来例にあっては、シンプルな形状のものは、概して挟持力が弱かったり、挟んだ書類等に締め付け跡や変形が残り、且つ操作性や使用感に難点があった。また強い挟持力を持たせたものは、先端部に反り上がりや補助レバーを設けたりして嵩張るため、書類などを積み重ねたり、揃えたりする際の邪魔になるものであった。本発明は上記問題点の解決を目的とし、少なくとも二巻きされたコイル状リングの輪の隙間に、書類等を挿し込み易くするための挿入片を挾設することからなる。すなわち、この挿入片の先端部を引き出すだけで、コの字形をした挿入片の、二枚の片の密着した先端部を開かせ、書類等を挿し込むための開口部が形成されるので、固く閉じたままのコイル状リングの隙間であっても、書類等を簡単に挿し込むことを可能にするのである。これは形状がシンプルなため量産に適し、強い挟持力を有しながらも、書類等に締め付け跡を残さず、嵩張らないクリップを提供することができるものである。」 ロ.段落【0010】「挿入片とは、適当な厚さと剛性を有する短冊状シートの両先端部に反り面を設け、該反り面を外向けにして重ね合わせて中央部で折り返し、コの字形に成形したものを指す。」 ハ.段落【0012】「リング状クリップにおいては、コイル状リングから突き出た挿入片の、二枚の片の先端部は、通常はコイル状リングに挟み付けられて閉じている。そして使用する際に、コイル状リングから僅かに突き出た両先端部を引き出すとき、両先端部に設けられた反り面は挟み付けから外れて開き、開口部を形成するので、書類等を挿し込むことが容易になるものである。」 ニ.段落【0016】?【0017】「図3は本発明の標準的な形状の、リング状クリップを構成する挿入片Sを示した斜視図である。挿入片Sには堤防形のストッパーBを設け、折り返し部エから伸びた二枚の片が、反り面イによって先端部アを開き、開口部ウを形成した実施形態を示している。図4は、図3同様に挿入片Sを示す斜視図であるが、図3に示した挿入片SのストッパーBが堤防形であるのに対し、これは階段形に成形された例を示す斜視図である。ストッパーの目的である抜け出し防止の機能を果たすものであれば、その形状は図示した例に限定されない。」 ホ.段落【0018】「図5は、本発明のリング状クリップの基本形を示したものであり、コイル状リングRの隙間に挟み込まれた挿入片Sの先端部アが、引き出された状態にあり、反り面イが開いて、開口部ウが形成されたところを示した斜視図である。ここでは、挿入片Sが書類等Xを挿し込まれるに十分な態勢にあることが分かる。そして挿入片Sに設けられたストッパーBが、コイル状リングの内壁に突き当たり、挿入片Sを引き出す過程で、その抜け出しが阻止されていることが分かる。」 ヘ.段落【0020】?【0021】「挿入片Sが書類等Xと一体化しながら、コイル状リングRに挟まれつつ輪の奥まで摺動させるには、表面平滑で適当な剛性を有する短冊状シートから調製するとよい。...ストッパーBは挿入片Sの二枚ある片の、一方または両方に備えればよい。」 ト.段落【0023】「図10は、図9同様の側断面図であるが、挿入片Sの先端部アが引き出され、挟み付けから外れた反り面イが上下に開き、開口部ウを形成したところを示している。ここでは図5に示した斜視図と同様な実施形態にある挿入片Sと、コイル状リングRの位置関係を示している。そして階段形のストッパーBが抜け出しを阻止している状態がよく分かる。」 チ.図9から、挿入片Sの折り返し部に略四角形の空洞部が形成され、空洞部を形成する上片と、対向して重なった二つの片の上片との間に段差が形成されていることが看取できる。 リ.図10から、挿入片Sの折り返し部に略四角形の空洞部が形成されていることが看取できる。 3-2 引用刊行物2:特開平8-267975号公報 い.「弾性板状体を折曲した金属クリップ10と、その折曲部の内側に予め介装させた折曲紙片12を備え」(要約【構成】) ろ.図1?図4から、クリップ体13において、金属性クリップ10が断面略コの字状であること、該クリップ10内に設けられた折曲紙片12は、横幅がクリップ10からはみ出していることが看取できる。 4.刊行物1記載発明の認定 a.刊行物1記載の「リング状クリップ」は、コイル状リングに挿入片を摺動可能に設けたものであり、該挿入片を引き出せば、挿入片が上下に開く(「コイル状リングの輪の隙間に...挿入片を挾設することからなる。すなわち、この挿入片の先端部を引き出すだけで、コの字形をした挿入片の、二枚の片の密着した先端部を開かせ」(上記記載イ.))るから、「スライドオープンクリップ」である。 b.刊行物1記載の「挿入片」は、短冊形シートを中央部で折り返し、折り返し部から二枚の片が伸びたコの字形に成形されている。そのように成形すれば、先端部がコイル状リングに挟み付けられて閉じた状態の側断面図である図9、引き出された状態の図10いずれの状態においても折り返し部に略四角形の空洞部が形成されているように、折り返し部と、折り返し部から伸びた上下の片と、階段状ストッパーBにより空洞部が形成される。 c.図9では、階段形ストッパーを一片に設けているので、空洞部を形成する上片と、対向して重なった二つの片の上片との間に段差が形成されている(上記記載チ.)が、階段形ストッパーを二片に設けたもの(上記記載ヘ.)には、空洞部を形成する上片と対向して重なった上片、空洞部を形成する下片と対向して重なった下片の、それぞれの間に段差が形成されることとなる。 以上の検討からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「コイル状リングRと、コイル状リングRに挟まれつつ摺動する書類等を挿し込み易くするための挿入片Sからなるスライドオープンクリップであり、 上記挿入片Sは、適当な厚さと剛性を有する短冊状シートからなり、 短冊状シートは、その両先端部に反り面イを設け、該反り面イを外向けにして重ね合わせて中央部で折り返し、折り返し部エから二枚の片が伸びたコの字形に成形し、折り返し部エと、折り返し部エから伸びた上下の片と、挿入片Sに成形したコイル状リングRの内壁に突き当たり挿入片Sを引き出す過程でその抜け出しを阻止する階段状ストッパーBにより空洞部を形成し、階段状のストッパーBを上下片に成形することによって、空洞部を形成する上片と対向して重なった上片、空洞部を形成する下片と対向して重なった下片の、それぞれの間に段差が形成され、 上記挿入片Sは、コイル状リングRから突き出ていて、コイル状リングRから突き出た両先端部を引き出すと、両先端部に設けられた反り面イは挟み付けから外れて折り返し部エから伸びた二枚の片が、反り面イによって先端部を上下に開き、開口部ウを形成するスライドオープンクリップ」(以下,「刊行物1発明」という。) 5.本願発明と刊行物1記載発明との一致点及び相違点の認定・判断 5-1 本願発明における特定の意味内容について A.本願発明について a.「略四方形乃至略円形乃至三角形の空洞部及び括れ乃至凹み乃至折り目」について 本願発明の書類導入用のシートの折り畳み箇所に設けた「略四方形乃至略円形乃至三角形の空洞部及び括れ乃至凹み乃至折り目」は、本願明細書の「空洞部5と共に括れ乃至凹み6を設けたシート1をクリップ8から引き出すと、括れ乃至凹み6がクリップ8の先端に当たる位置で、外部に突出した折り畳み二片7が各々外側へ反転して観音開きに開くため、わざわざ指で開く必要がなく便利である。」(段落【0011】)、「空洞部5に括れ乃至凹み6がない場合、クリップ内壁16は空洞部5を押圧せず折り畳み二片7全体を押圧してしまうので観音開きは生じない」(段落【0012】)、「図8は、略三角形14の空洞部5と共に、上記括れ乃至凹み6の代わりに折り目13を設けるもので、シート1をクリップ8から引き出した時にクリップ開口部9の辺りで観音開きとなる折り目13を設けたものである。これによってクリップ8内に収納している時は折り畳み二片7は閉じ、シート1を引き出して折り目13がクリップ開口部9に当たると外側に開いて観音開きとなる。実施例1のクリップにおいては括れ乃至凹み6を設けたため観音開きが可能となり、実施例2では折り目13を設けて同様な効果を得たのである。」(段落【0018】?【0019】)の記載から、シートをクリップから引き出した時に折り畳み二片を外側に開かせる(観音開きに開かせる)ための構成と解した。 b.なお、「四方形」なる用語は一般的なものとはいえず、図面を参照するに「四角形」の意味と解するのが適切と判断した。 c.シートをクリップから引き出した時に折り畳み二片を外側に開かせるための個々の構成について i「空洞部」について 出願時の本願明細書には、「空洞部5がクリップ内壁16に押圧把握されて逸脱を防ぐストッパーをなすのである。」(【0010】)の記載があることから、空洞部5は、シート1のクリップ8からの逸脱を防ぐストッパーとしての作用を持っていると解した。 ii「括れ乃至凹み」について 本願明細書の記載及び図面からは、「括れ乃至凹み」を設けた位置が不明であると共に、どのような構成を言うのか不明であるが、本願明細書の「空洞部5に括れ乃至凹み6がない場合、クリップ内壁は16は空洞部を5を押圧せず折り畳み二片7全体を押圧してしまう」(【0012】)の記載、平成19年12月25日付意見書の「両シートが外側へ反転する括れ乃至凹み乃至折れ目を、折り曲げ空洞部に隣接して併設した。...折り曲げ空洞部に隣接して括れ乃至凹み乃至折り目を併設した構成」(第2頁第9?13行)の記載、及び、括れは「中ほどが細くせばまっていること」、凹みは「くぼむこと。くぼんだ所。へこみ。」(いずれも株式会社岩波書店 広辞苑第五版)であることから、括れ乃至凹みは、空洞部を形成した上、下片を対向して重ねるべく折り曲げたところ、あるいは上、下片を対向して重ならせた部分の空洞部と隣り合った位置に設けた細くせばまった所あるいはくぼんだ所と解した。 iii「折り目」について 本願明細書の「図8は、略三角形14の空洞部5と共に、上記括れ乃至凹み6の代わりに折り目13を設けるもので、シート1をクリップ8から引き出した時にクリップ開口部9の辺りで観音開きとなる折り目13を設けたものである。これによってクリップ8内に収納している時は折り畳み二片7は閉じ、シート1を引き出して折り目13がクリップ開口部9に当たると外側に開いて観音開きとなる。...実施例1のクリップにおいては括れ乃至凹み6を設けたため観音開きが可能となり、実施例2では折り目13を設けて同様な効果を得たのである。」(【0018】?【0019】)の記載及び図8並びに平成19年12月25日付意見書の請求人の「両シートが外側へ反転する...折れ目を、折り曲げ空洞部に隣接して併設した。...折り曲げ空洞部に隣接して...折り目を併設した構成」との主張から、折り目は、特に空洞部が三角形の場合には、空洞部に隣接して併設されたものと解した。 前記検討を踏まえて、本願発明と刊行物1記載発明とを対比する。 5-2 本願発明と刊行物1記載発明との対比 a.刊行物1発明の「コイル状リング」は、その形状からの呼び方であり、その機能に着目すれば、クリップと呼べるものであり、本願発明の「断面略コの字状のクリップ」と、「クリップ」で共通する。 b.刊行物1発明の「書類等を挿し込み易くするための短冊状シートからなる挿入片」は、本願発明の「書類導入用のシート」に相当する。 c.刊行物1発明の短冊状シートの「その両先端部に反り面イを設け、該反り面イを外向けにして重ね合わせて中央部で折り返し、折り返し部エから二枚の片が伸びたコの字形に成形し、折り返し部エと、折り返し部エから伸びた上下の片と、挿入片Sに成形したコイル状リングRの内壁に突き当たり挿入片Sを引き出す過程でその抜け出しを阻止する階段状ストッパーBにより空洞部を形成し、階段状のストッパーBを上下片に成形することによって、空洞部を形成する上片と対向して重なった上片、空洞部を形成する下片と対向して重なった下片の、それぞれの間に段差が形成され」た構成と、 本願発明の適宜形状の薄片シートの「略中央部を二つに折り畳み、該折り畳み箇所に略四方形乃至略円形乃至三角形の空洞部及び括れ乃至凹み乃至折り目を設けると共に、折り畳み二片を対向して形成し」た構成とは、 「略中央部を二つに折り畳み、該折り畳み箇所に空洞部を設けると共に、折り畳み二片を対向して形成し」た構成で共通する。 d.刊行物1発明の「挿入片Sは、コイル状リングRから突き出ていて、コイル状リングRから突き出た両先端部を引き出すと、両先端部に設けられた反り面イは挟み付けから外れて折り返し部エから伸びた二枚の片が、反り面イによって先端部を上下に開き、開口部を形成する」構成と、 本願発明の「シートは、クリップ内に収納時にはクリップの開口部より突出しかつ横幅はクリップからはみ出していて、該シートを括れ乃至凹み乃至折り目がクリップ開口部に当たる位置まで引き出すと、折り畳み二片が外側に開く」構成とは、 「シートは、クリップ内に収納時には、クリップの開口部より突出し、該シートを引き出すと、折り畳み二片が外側に開く」点で共通する。 よって、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。 〈一致点〉 「クリップと、該クリップ内に摺動可能に設けられた書類導入用のシートからなるスライドオープンクリップであり、 上記シートは、適宜形状の薄片シートからなり、略中央部を二つに折り畳み、該折り畳み箇所に空洞部を設けると共に、折り畳み二片を対向して形成し、 上記シートは、クリップ内に収納時にはクリップの開口部より突出していて、該シートを引き出すと、折り畳み二片が外側に開くスライドオープンクリップ。」 〈相違点1〉 クリップが、本願発明では、断面略コの字状であり、シートの横幅がクリップからはみ出していると特定されているのに対して、刊行物1発明では、コイル状リングであり、シートの横幅がクリップからはみ出しておらず、上記特定を有していない点 。 〈相違点2〉 シートをクリップから引き出すと、折り畳み二片が外側に開くための構成に関し、本願発明では、「括れ乃至凹み乃至折り目」を設けることが特定されているのに対して、刊行物1発明では、そのような特定を有さない点 〈相違点3〉 空洞部が、本願発明では、略四方形乃至略円形乃至三角形と特定されているのに対して、刊行物1発明では前記特定がなされていない点。 〈相違点4〉本願発明では、括れ乃至凹み乃至折り目がクリップ開口部に当たる位置まで引き出すと折り畳み二片が外側に開く」なる特定がされているのに対して、刊行物1発明では、反り面が挟み付けから外れて二枚の片が開くとされているも、前記特定と同じか定かでない点。 6.相違点に係る検討と、本願発明に係る進歩性の判断 6-1 相違点1について 当審で引用した上記刊行物2には、断面略コの字状のクリップと、該クリップ内に設けられた書類導入用のシートが、クリップ内に収納時に横幅をクリップからはみ出している点が記載されているから、刊行物1発明のコイル状リングに代えて刊行物2記載の断面略コの字状のクリップを用い、クリップを横にずらせてシートを取り外せるように、シートの横幅をクリップからはみ出すようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 6-2 相違点2について 刊行物1発明の、空洞部を形成する上片と対向して重なった上片、空洞部を形成する下片と対向して重なった下片の、それぞれの間に形成された段差及びシートの両先端部に設けた反り面イが、空洞部と共に、シートをクリップから引き出すと、折り畳み二片を外側に開かせる作用をしていることは自明であって、刊行物1発明の段差及び反り面に代えて、本願発明の括れ乃至凹み乃至折り目を、空洞部と共に、シートをクリップから引き出すと、折り畳み二片が外側に開くための構成として採用することは当業者にとって想到容易である。 なお、請求人は前記意見書において「シートを摘まんで該クリップから該括れ乃至凹み乃至折り目まで引出した場合に、もしシート両片の観音開き具合が不十分な場合、更に引出すと併設してなる空洞部がクリップ内部壁面で押圧されるので、シートの両開きは「大口」を開ける。刊行物1も両開きはするが、「反り」と言う構成を用いているので、これは本願発明と異なる。」(第2頁第13?17行)と主張しているが、これは「大口」を開けるための使用方法を主張しているだけで、構成上の差異に係るものではないとともに、「空洞部」の構造に格別の相違は認められないから、更に挿入片を引き出した際の作用について相違しているとは認められず、請求人の主張は採用できない。 6-3 相違点3について 刊行物1発明のコイル状リングに代えて刊行物2記載の断面略コの字状のクリップを採用すれば、該クリップ内に収納されるシートの空洞部は、断面略コの字状のクリップ内部の空間に納まるようになされることが当然であって、断面略コの字状のクリップ内部に納まるのに適した空洞部の形状を、略四方形乃至略円形乃至三角形と特定した点は当業者であれば、適宜になし得た程度のことである。 なお、請求人は前記意見書において「刊行物1の図面に示される断面長方形は...要するに長過ぎるという点で不適形状である故に、本願発明は その問題を解決するべく円形、四角形、三角形を採用した」(第1頁15?17行)と主張しているが、四角形は「四つの頂点をもち四つの線分に囲まれた平面図形。その線分を辺という。特に、長方形。四辺形。」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)の意味であるから、請求人の空洞部の形状に長方形は含まれないとの主張は採用できないし、仮に採用したとしても設計事項にすぎない。 6-4 相違点4について 本願発明で、折り畳み二片が外側に開くのが、括れ乃至凹み乃至折り目がクリップ開口部に当たる位置までとしたのは、当該位置に至れば開き得ることを意味するものでしかなく、この点刊行物1発明においても反り面が挟み付けから開放されれば開き得る点で同意であり、両者の差は表現上の違いでしかないものと認められる。 6-5 まとめ 以上のとおりであるから、相違点1乃至4に係る本願発明の構成を採用することは、いずれも当業者にとって、想到容易であり、これら相違点に係る構成を採用したことによる作用効果も当業者であれば推察可能なものでしかない。 7.むすび したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-07 |
結審通知日 | 2008-03-18 |
審決日 | 2008-03-31 |
出願番号 | 特願2004-183120(P2004-183120) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B42F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤木 啓二 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
尾崎 俊彦 藤井 靖子 |
発明の名称 | スライドオープンクリップ |