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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G06K
管理番号 1179070
判定請求番号 判定2008-600006  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-07-25 
種別 判定 
判定請求日 2008-01-15 
確定日 2008-06-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3872496号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「ICカードプロテクター(両面読むタイプ)」は、特許第3872496号の請求項1または請求項5に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、判定請求書中のイ号の説明の参考図1,2及び株式会社玉川製作所のホームページにおいて解説しているものであって、被請求人が製作している「ICカードプロテクター(両面読むタイプ)(以下、「イ号物件」という。)は特許第3872496号の請求項1または請求項5に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明1及び2は、特許第3872496号の明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、これらを構成要件ごとに分説すると次のとおりである。

請求項1
A.二枚の非接触ICカードの間に挟んで両者を分離し、カードリーダが放射する所定の周波数の発振磁界に対して、前記カードリーダ側に位置する非接触ICカードのみが電磁結合し、前記カードリーダ側とは反対側に位置する非接触ICカードが電磁結合しないようにして干渉を防止するICカードアクセス制御体であって、
B.基板となる導電性シートと、
C.前記導電性シートの表面側および裏面側にそれぞれ積層した磁性シートを備え、
D.前記磁性シートの形状を、前記導電性シートの外周縁部分には前記磁性シートを積層せずに前記導電性シートの形状より小さい形状とした
E.ことを特徴とするICカードアクセス制御体。

請求項5
F.前記非接触ICカードがアンテナコイルを内蔵し、
G.前記非接触ICカードと前記ICカードアクセス制御体を重ね合わせた状態において、
H.前記導電性シートの外周縁が前記アンテナコイルが設けられているエリア外周縁より外側に位置し、
I.前記磁性シートの外周縁が前記導電性シートの外周縁より内側かつ前記アンテナコイルが設けられているエリア内周縁より外側に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のICカードアクセス制御体。

2.本件特許発明の作用、効果
本件特許発明の作用、効果は、本件特許明細書によれば次のとおりである。
「上記構成により、カードリーダとはICカードアクセス制御体を挟んで反対側に位置する磁性シートによる磁力線の引き込み・再放射の防止効果を得ることができ、ICカードアクセス制御体を挟んで存在する複数の非接触ICカードによる干渉を防止する働きを持つ。磁力線の引き込み・再放射の防止効果は、磁性シートの形状を上記のように工夫することにより、ICカードアクセス制御体の導電性シートの外周縁端のやや外側を通過した磁力線が磁性シートの外周縁端から引き込まれて磁性シート内へ回り込む磁路が形成されることを防止することにより得られる。」(段落19参照)

第3 イ号物件
1.検甲第1号証
イ号物件は、ICカードプロテクター(両面読むタイプ)として被請求人が製作している製品であり、甲第1号証として提出されたものであるが、実物であるので検甲第1号証として取り扱う。

2.イ号図面及びイ号説明書について
判定請求書に記載されたイ号の説明及び参考図1,2のうち、参考図1は「イ号物件の平面図」、参考図2は「イ号物件の使用状態の説明図」であって、請求人より、検甲第1号証及び被請求人のホームページにて「ICカードプロテクター」として公表している記述内容に基づいて本件特許発明と対応する要部箇所に本件特許発明で用いられた用語を付して作成されたものと認められる。これら参考図1及び参考図2をイ号図面とする。
また、判定請求書の記載のうち、イ号の説明部分及びインターネットのウエブサイト(URL(http://tamagawa-tht.ktpc.or.jp/))の内容を2008年1月10日時点で印刷出力したもの(甲第3号証)を、イ号説明書とする。

3.判定請求書中のイ号の説明及び参考図1,2の記載事項
株式会社玉川製作所が製作しているICカードプロテクター(両面読むタイプ)の構成要件を分説すると以下のとおりである。
『二枚の非接触ICカードの間に挟んで両者を分離し、カードリーダが放射する所定の周波数の発振磁界に対して、前記カードリーダ側に位置する非接触ICカードのみが電磁結合し、前記カードリーダ側とは反対側に位置する非接触ICカードが電磁結合しないようにして干渉を防止するICカードアクセス制御体であって、
○1(当審注:○内に数字の入った文字は○+数字で代替表記する。以下同様。)基板となる導電性シートと、
○2前記導電性シートの表面側および裏面側にそれぞれ積層した磁性シートを備え、
○3前記磁性シートの形状を、前記導電性シートの外周縁部分には前記磁性シートを積層せずに前記導電性シートの形状より小さい形状とした
ことを特徴とするICカードアクセス制御体』
また、参考図1は、イ号物件の導電性シートと磁性シートの積層状態を示す平面図、参考図2は、イ号物件の使用状態を示す説明図である。

4.株式会社玉川製作所のホームページにおけるICカードプロテクター(両面読むタイプ)(甲第3号証)の記載事項

「ICカードプロテクター読む・読まない!?
(両面タイプ)・・・特許出願及び審査請求中

ステンレス箔+13.56MHz・RFID用高透磁率軟磁性シート
スイカ、パスモなど 2枚のIC乗車券をケースに入れたまま使い分けできます。
電磁シールド層と透磁層を備えた新開発プロテクターです。両面にストライプ状の磁性シートがあり、2枚のICカードをケースに入れたまま確実に読ませたいカードだけ読取機に読ませることが可能です(注1)。
これによりカードが干渉しあい読み取りができなかったり、間違って読み込まれたりすることがなくなります。スイカ、パスモ、イコカ、ピタパなどのICカード乗車券を安心して使い分けができます。また、ナナコやエディ、ワオンなどの電子マネーも便利に使い分けができます。」

5.イ号物件の構成
上記3,4の記載によれば、イ号物件の導電性シートと磁性シートの積層状態を示す参考図1及びホームページの記載とそれに関連する写真並びに図面をみると、電磁シールド層としての導電性シートの両面に並行するストライプ状の磁性シートが積層されている。そして、並行するストライプ状の磁性シートは、導電性シートの長辺に沿って導電性シートの一方の端縁から他方の端縁まで延設した構成になっており、導電性シートの外周縁部分のうち、長辺部分については磁性シートが積層されていないものの、短辺部分については導電性シートの端縁まで磁性シートが積層される構成となっている。
イ号物件は、上記3,4の記載事項からみて、その構成を本件特許発明1の分説と対応するように分説して認定すると、次のとおりのものと認める。

a.二枚の非接触ICカードの間に挟んで両者を分離し、カードリーダが放射する所定の周波数の発振磁界に対して、前記カードリーダ側に位置する非接触ICカードのみが電磁結合し、前記カードリーダ側とは反対側に位置する非接触ICカードが電磁結合しないようにして干渉を防止するICカードプロテクターであって、
b.基板となる導電性シートと、
c.前記導電性シートの両面に積層された並行する帯状の磁性シートを備え、
d.前記並行する帯状の磁性シートの形状は、前記導電性シートの外周縁部分のうち、長辺部分については磁性シートが積層されず、短辺部分については導電性シートの端縁まで磁性シートが積層される
e.ことを特徴とするICカードプロテクター

第4 イ号物件が本件特許発明の各構成要素を充足するか否かの検討判断
1.本件特許発明1とイ号物件との対比
請求人が判定を求めるイ号物件の「ICカードプロテクター」は、2枚の非接触ICカードが電磁結合しないようにするものであり、本件特許発明の「ICカードアクセス制御体」に相当するものであるから、イ号物件の構成a,b,eは、それぞれ本件特許発明1の構成要件A,B,Eを充足している。
本件特許発明1の構成要件C,Dとイ号物件の構成c,dとは、導電性シートの両面に磁性シートが積層される構成となる点で一致しており、磁性シートが導電性シートに対してどのような形状、配置関係になるかにおいて相違している。そして、イ号物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するか否かは、磁性シートの形状、配置関係によるものであるから、その点について以下検討する。

2.磁性シートの形状、配置関係について
本件特許発明1では、磁性シートの形状、配置関係について「導電性シートの外周縁部分には磁性シートを積層せずに導電性シートの形状より小さい形状とした」ことを特徴としている。ここにおいて、「導電性シートの外周縁部分には磁性シートを積層せず」とは、文言通りに解釈すれば、導電性シートの外周縁部分のどの部分にも磁性シートを積層しないことを意味するものである。また、本件特許明細書又は図面を参酌しても、導電性シートの外周縁部分の一部に磁性シートを積層する実施例はない。更に、本件特許発明1は、ICカードアクセス制御体を挟んで反対側に位置する磁性シートによる磁力線の引き込み・再放射の防止するために、外周縁部分に磁性シートを積層しないようにしたものであるから、外周縁部分の一部にでも磁性シートを積層することは本件特許発明1の技術思想に反することになる。従って、導電性シートの外周縁部分のどの部分にも磁性シートを積層しないことは、本件特許発明1の本質的特徴と言えるものであり、請求項1に記載された「導電性シートの外周縁部分には磁性シートを積層せず」を文言通りに導電性シートの外周縁部分のどの部分にも磁性シートを積層しないことを意味すると解釈することが適切である。
イ号物件においては、磁性シートの形状、配置関係について「並行する帯状の磁性シートの形状は、前記導電性シートの外周縁部分のうち、長辺部分については磁性シートが積層されず、短辺部分については導電性シートの端縁まで磁性シートが積層される 」ものであり、導電性シートの外周縁部分のうち、短辺部分については磁性シートが積層される部分が存在している。従って、イ号物件においては、導電性シートの外周縁部分の一部に磁性シートを積層される部分が存在し、導電性シートの外周縁部分のどの部分にも磁性シートを積層しないものではないから、イ号物件の構成c,dは本件特許発明1の構成要件C,D と本質的な部分において構成を異にするものである。また、本件特許発明1とイ号物件の構成の相違は前述したように本件特許発明1の本質的部分に係るものであるから、明らかに均等論適用の要件を欠くものである。
してみると、イ号物件は本件特許発明1の技術的範囲に属しないというべきである。

3.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に対してF,G,H,Iの構成要件を追加するものである。このF,G,H,Iの構成要件は、非接触ICカードが内蔵するアンテナコイルと、ICカードアクセス制御体の導電性シートおよび磁性シートとの位置関係を限定するものであり、本件特許発明1の構成要件C,Dを何ら変更するものではない。従って、イ号物件の構成c,dが本件特許発明1の構成要件C,Dと本質的な部分において構成を異にする以上、イ号物件は、本件特許発明2についてもその技術的範囲に属しないというべきである。

第5 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1または2の構成要件を具備していないから、イ号物件は本件特許発明1または2の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2008-05-21 
出願番号 特願2005-257157(P2005-257157)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 冨吉 伸弥
野仲 松男
登録日 2006-10-27 
登録番号 特許第3872496号(P3872496)
発明の名称 ICカードアクセス制御体  
代理人 鈴木 秀昭  
代理人 笹井 浩毅  
代理人 永井 道彰  

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