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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1180325
審判番号 不服2006-19626  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-05 
確定日 2008-07-02 
事件の表示 特願2000-173231「ゲーム機における画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月30日出願公開、特開2001- 28064〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月24日に出願した特願平10-366725号(優先権主張平成10年3月16日)の一部を平成12年6月9日に新たな特許出願としたものであって、平成18年8月1日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成18年3月3日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて、その都度、ゲーム機内で演算処理手段により3次元の演算処理を行い、前記ゲーム機のゲーム画面に映像を表現するゲーム機における画像処理方法であって、前記演算処理手段が、ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと、前記演算処理手段が、ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから、ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定し、この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと、前記演算処理手段が、前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップとを含み、上記ステップを繰り返し、前記ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行うことを特徴とするゲーム機における画像処理方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-259573号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CAD、VR(仮想現実)技術等に用いられる3次元グラフィックスデータを生成する装置に関するものである。」

(b)「【0020】フレーム入力手段1は、3次元ワイヤフレームデータを入力するための手段である。例えば、キーボード、マウス、CRT表示器等を利用して、描こうとする3次元画像のワイヤフレームを入力できるものである。」

(c)「【0022】色付け手段3は、その記憶手段2に記憶されている3次元ワイヤフレームに対して、カラー、陰影、材質感等の各種色付けして3次元グラフィックスデータを生成する手段である。」

(d)「【0024】注視点入力手段5は、注視点を入力するためのキーボード、マウス、CRT表示器等である。フレーム入力手段1の機器を兼ねることも可能である。ここに、注視点とは、人間が画面を見たとき、その注視する位置を意味する。この注視点は、後に述べるように、色々な決定の仕方がある。」

(e)「【0025】現実感付与手段6は、注視点入力手段5から入力された注視点からの距離に応じて、3次元グラフィックスデータを、少なくとも注視点についてはピントを合わせ、その他の部分に付いては3次元的に全方向に、画像を平滑化することによって、ぼかしを入れ、現実感を迫真のものとする手段である。」

(f)「【0026】表示手段7は、その現実感付与手段6によって生成された現実感のある画像を生成できる3次元グラフィックスデータに従って、現実感のある3次元画像を表示するCRT、液晶、プロジェクター等の表示装置である。」

(g)「【0029】他方、注視点入力手段5から、各画面毎人間が注視するであろうと思われる点を入力する。そして、現実感付与手段6が、その注視点に基づき、上記3次元グラフィックスデータを次に様にしてぼかす。」

(h)「【0036】すなわち、注視点と2つのコンピュータグラフィックスオブジェクトA,Bの位置関係が、図2に示すような場合を考える。図において、注視点Pが投影面上になくA上の点となっているのは、両眼視差による立体視システムを考慮しているからである。いま、A,B間のz方向(奥行き方向)の距離をDzとする。また、それぞれのオブジェクト上の点P,Qの投影面への像をP’,Q’とし、これら2点間のy方向の距離をDy(x方向はDx)とする。」

(i)「【0037】効果的な奥行き感等の現実感を出すために、注視点からの奥行き方向への相対的距離Dzに応じて、投影面に透視投影されたコンピュータグラフィックス画像の輝度値を平滑化することを考える。投影画像の各画素は、それぞれに対応するコンピュータグラフィックスオブジェクト上の点として奥行き値をもっている。したがって、注視点Pが決定されると、この点からの相対的な距離画像Dz(x,y)が得られる。」

(j)引用例の図2には、3次元空間に配置されたグラフィック・オブジェクトA及びBが記載されている。

上記(a)ないし(j)の記載及び図面から、引用例には
「3次元ワイヤフレームデータを入力するフレーム入力手段1、前記ワイヤフレームに対して各種色付けして3次元グラフィックスデータを生成する色付け手段3、キーボード、マウス等の注視点入力手段5、現実感付与手段6、該現実感付与手段6によって生成された3次元グラフィックスデータに従って、3次元画像を表示する表示手段7等を備えた、3次元グラフィックスデータを生成する装置において、3次元空間にグラフィックオブジェクトA,Bを配置し、前記注視点入力手段5により、人間が画面を見たとき注視するであろう注視点、例えば前記グラフィックオブジェクトA上の点を入力し、前記現実感付与手段6により、3次元グラフィックスデータの少なくとも前記注視点についてピントを合わせ、前記注視点からの距離に応じて、注視点以外の部分については3次元的に全方向に画像を平滑化することによってぼかしを入れる処理を行い、前記平滑化に関し、注視点から奥行き方向への相対的距離に応じて、投影面に透視投影されたコンピュータグラフィックス画像の輝度値の平滑化を行う、3次元グラフィックスデータを生成する装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.対比
(ア)引用発明においては、例えばフレーム入力手段1により3次元ワイヤフレームデータを入力し、該3次元ワイヤフレームに対して色付け手段3により各種色付けして3次元グラフィックスデータを生成し、注視点入力手段5により注視点を入力し、現実感付与手段6により注視点についてはピントを合わせ、その他の部分に付いては3次元的に全方向に画像を平滑化する等の処理が行われている(前掲(b)?(e))。
引用発明を構成する前記各手段において、3次元の演算処理が行われていることは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「演算処理手段により3次元の演算処理を行」うことに相当する構成を備えている。
そして、前記「フレーム入力手段1」、「色付け手段3」、「注視点入力手段5」、及び「現実感付与手段6」を合わせたものは、本願発明の「演算処理手段」に相当する。

(イ)引用発明は、表示手段7により、3次元グラフィックスデータにしたがって、現実感のある3次元画像を表示しており(前掲(f))、本願発明の「画面に映像を表現する」ことに相当する構成を備えている。

(ウ)引用発明は、3次元グラフィックスデータを生成する装置に関するものであるが(前掲(a))、該装置は3次元グラフィックスデータを生成するための手順を実行するものであるから、「画像処理方法」に関するものであるといえる。

(エ)引用発明においては、3次元空間すなわちワールド座標系に2つのグラフィックオブジェクトA,Bを配置しており(前掲(h)、(j))、該グラフィックオブジェクトの配置はフレーム入力手段1により行われることは明らかであるから(前掲(b))、引用発明は、本願発明の「演算処理手段が、ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップ」に相当する構成を備えている。

(オ)引用発明においては、キーボード、マウス等の注視点入力手段5により、人間が画面を見たとき注視するであろう注視点を入力している(前掲(d)、(g))。
ここで、前記注視点は投影面上でなく、両眼視差による立体視システムを考慮して、例えばグラフィックスオブジェクトA上の点となっており(前掲(h))、前記A上の点は「特定のオブジェクトの特定の部位」であるといえるから、引用発明は、本願発明の「演算処理手段が、ワールド座標系に配置された複数のオブジェクトから、入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を選定」することに相当する構成を備えている。

(カ)引用発明は、現実感付与手段6により、注視点入力手段5から入力された注視点に応じて、3次元グラフィックスデータの少なくとも注視点についてピントを合わせる処理を行っており(前掲(e))、本願発明の「演算処理手段が」、「選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップ」に相当する構成を備えている。

(キ)引用発明は、現実感付与手段6により、注視点入力手段5から入力された注視点からの距離に応じて、3次元グラフィックスデータのうち、注視点以外の部分に付いては3次元的に全方向に画像を平滑化することによって、ぼかしを入れる処理を行っている(前掲(e))。
また、前記平滑化に関し、効果的な奥行き感等の現実感を出すために、注視点から奥行き方向への相対的距離に応じて、投影面に透視投影されたコンピュータグラフィックス画像の輝度値の平滑化が行われている(前掲(i))。
したがって、引用発明は、本願発明の「演算処理手段が、ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップ」に相当する構成を備えている。

以上を踏まえ、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「演算処理手段により3次元の演算処理を行い、画面に映像を表現する画像処理方法であって、前記演算処理手段が、ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと、前記演算処理手段が、ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから、入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を選定し、この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと、前記演算処理手段が、前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップとを含むことを特徴とする画像処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて、その都度、ゲーム機内で」演算処理を行い、「ゲーム機のゲーム画面に」映像を表現し、「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ」選定し、演算処理手段にて行われる各処理の「ステップを繰り返し」、「ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行う」ことを特徴とする、「ゲーム機における」画像処理方法であるのに対し、引用発明は、特にゲーム機を対象としたものではなく、上記各構成を備えていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

プレーヤが操作する操作手段からの入力信号と、ゲームプログラムとに基づき、仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理を行い、得られた表示画像をゲーム画面として形成しディスプレイにリアルタイム表示するゲーム装置は、当業者に周知である(例えば特開平6-348860号公報の段落【0016】、【0031】等参照)。
そして、このようなゲーム装置は、各種処理がリアルタイムで行われるから、操作手段から入力信号が与えられるたびに、3次元オブジェクトを操作及び表示するための演算処理が繰り返し行われることにより、前記3次元オブジェクトが動くような動画表現が得られることは当業者に明らかである。
また、仮想3次元空間内における3次元オブジェクトをリアルタイムで操作及び表示する技術は、一種のVR(仮想現実)技術であるといえる。
引用発明も、VR(仮想現実)技術に適用可能なものであり(前掲(a))、引用発明を前記周知のゲーム装置における画像処理方法に適用すること、すなわち、引用発明において行われる演算処理を「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて、その都度、ゲーム機内で」行い、前記演算処理の「ステップを繰り返し」、引用発明における3次元画像の表示方法として「ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行う」ように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明において、注視点入力手段5による注視点の入力を、「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定」するように行う点は、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。

加えて、本願発明の奏する作用効果も、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-10 
結審通知日 2007-08-21 
審決日 2007-09-04 
出願番号 特願2000-173231(P2000-173231)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋爪 正樹  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 伊知地 和之
松永 稔
発明の名称 ゲーム機における画像処理方法  
代理人 須知 雄造  

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